【実施例】
【0031】
つぎに、本発明の実施例について、説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
(レスベラトロール、プテロスチルベン)
(1)レスベラトロール(cayman chemical社製)
(2)プテロスチルベン(東京化成工業社製)
【0033】
(細胞)
細胞は、下記(1)〜(4)の細胞を使用した。
(1)MDA-MB231D3H2LN細胞(Xenogen社製)
(2)MCF7-ADR細胞(入手元:American Type Culture Collection)
(3)Ago2強制発現MDA-MB231D3H2LN細胞(Xenogen社製)
(4)Ago2強制発現HEK293細胞(Xenogen社製)
【0034】
(個体動物)
(1)マウス(日本チャールズリバー社製)
【0035】
(浸潤率(% invasion))
浸潤率は、下記の試薬器具を使用し、製造元の説明書の記載に従って測定した。
マトリゲル インベージョン チャンバー 24ウェル 8μm(BD社製)
【0036】
(細胞生存率(%))
細胞生存率は、下記の試薬を使用し、製造元の説明書の記載に従って測定した。
TetraColor One(生化学バイオビジネス社製)
【0037】
図1(C)に示す発光量は、下記のようにして測定、解析した。すなわち、まず、マウスにD-ルシフェリン(150mg/kg, Promega) を腹腔投与し、10分後にIVIS イメージングシステム(Xenogen)を用いて、発光量(Photon/sec)を測定した。前記発光量の測定結果を、LIVINGIMAGE 2.50 software(Xenogen)を用いて解析した。
【0038】
(腫瘍残存率(% of tumor))
腫瘍残存率は、下記のようにして測定した。すなわち、まず、前記機器であるIVISイメージングシステム(Xenogen)を用いて、発光量を測定した。前記発光量の測定結果を、LIVINGIMAGE 2.50 software(Xenogen)を用いて解析した。この解析結果から、腫瘍残存率を測定した。
【0039】
(フローサイトメトリー)
がん幹細胞の割合を測定するために、下記の試薬および機器を使用した。
・抗ヒトCD44-FIT抗体(Becton Dickinson社製, clone L178)
・抗ヒトCD24-APC抗体(Biolegend社製, clone ML5)
・デスクトップセルソーターJSAN(ノベルサイエンス社製)
【0040】
(miRNAおよびAgo2のmRNA発現量の測定)
(1)トータルRNAの抽出
がん細胞(MDA-MB231D3H2LN細胞またはMCF7-ADR細胞)に、レスベラトロールまたはプテロスチルベンを所定濃度で添加した。前記添加から48時間後に、RNA精製前の細胞の溶解液を、Qiazol(キアゲン社製)で処理した。前記処理した溶液から、miRNeasy Mini Kit(50)(キアゲン社製)を用いて、total RNAを抽出した。
【0041】
(2)リアルタイムPCT
(2−1)miRNAのリアルタイムPCR
miRNAに関しては、逆転写反応は、Taqmn miRNA assays Kitを用いて行った。すわなち、total RNA 1μgに、100mM dNTPs(with dTTP) 0.05μL、MultiScribe(登録商標)Reverse Transcriptase(50U/μL) 0.33μL、10×Reverse Transcription Buffer 0.50μL、RNase Inhibitor(20U/μL) 0.063μL、Nuclease-free water 1.387μL、そしてそれぞれのmiRNAに対応する5×RT primer(ID number; miR-16:000391、miR-141:000463、miR-143:002249、miR-200c:002300)を添加した。この混合物を、16℃・5分間、42℃・30分間、85℃・30分間反応させた。
【0042】
リアルタイムPCRは、TaqMan 2X Universal PCR Master Mix, No AmpErase UNG 5μL、20×TaqMan(登録商標)Small RNA Assay 0.5μL、鋳型として4倍希釈したRT反応物を4.5μL添加した、10μLの反応系で行った。リアルタイムPCRのプログラムは、95℃で10分間反応させたのち、95℃・15秒、60℃・60秒の反応を1サイクルとし、このサイクルを40回繰り返すプログラムとした。蛍光強度を、60℃の反応終了時に測定した。
【0043】
(2−2)Ago2のリアルタイムPCR
Ago2に関しては、逆転写反応は、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kitを用いて行った。total RNA 1μgに、100mM dNTPs(with dTTP) 0.8μL、MultiScribe(登録商標)Reverse Transcriptase(50U/μL) 0.8μL、10×Reverse Transcription Buffer 2μL、RNase Inhibitor(20U/μL) 0.5μL、10×RT random Primer 2μLを添加し、そして、Nuclease-free waterを、混合物全体が20μLになるように添加した。この混合物を、25℃・10分間、37℃・120分間、85℃・1分間反応させた。
【0044】
リアルタイムPCRは、Platinum qPCR SuperMix-UDG with ROX 5μL、20×TaqMan(登録商標)probe(ID number; Ago2:Hs01085579_m1、TARBP2:Hs00366328_m1、DICER1:Hs00229023_m1、DROSHA6:Hs00203008_m1、DGCR8:Hs00377897_m1) 0.5μL、鋳型として10倍希釈したRT反応物を4.5μL添加した、10μLの反応系で行った。リアルタイムPCRのプログラムは、50℃・2分間および95℃・2分間反応させたのち、95℃・15秒、60℃・30秒の反応を1サイクルとし、このサイクルを45回繰り返すプログラムとした。蛍光強度を、60℃の反応終了時に測定した。
【0045】
図1〜6におけるグラフについて、「*」は、P<0.05を示し、「**」は、P<0.01を示し、「***」は、P<0.001を示す。
【0046】
[実施例1−1]
本実施例では、レスベラトロールの、がん細胞の浸潤への影響を確認した。
【0047】
がん細胞は、MDA-MB231D3H2LN細胞を使用した。前記がん細胞に、レスベラトロールを5μM(μmol/L)〜50μM(μmol/L)で添加した。前記がん細胞について、顕微鏡観察、浸潤率(% invasion)の測定を行った。コントロール(vehicle)は、レスベラトロールに代えて、DMSOを添加し、同様にして顕微鏡観察、浸潤率の測定を行った。
【0048】
図1(A)の写真およびグラフに示すように、レスベラトロールは、濃度依存的に、悪性度の高いMDA-MB231D3H2LN細胞の浸潤を抑制することが確認された。すなわち、
図1(A)の顕微鏡写真に示すとおり、がん細胞を示す黒点は、レスベラトロール濃度依存的に減少し、この結果は、同図のグラフにおいて、浸潤率(% invasion)がレスベラトロール濃度依存的に減少したことと一致した。
【0049】
[実施例1−2]
本実施例では、レスベラトロールの、がん細胞のドセタキセルに対する薬剤感受性への影響を確認した。
【0050】
がん細胞は、MDA-MB231D3H2LN細胞を使用した。前記がん細胞に、レスベラトロールを25μM(μmol/L)およびドセタキセル(Docetaxel)を2.5nM(nmol/L)添加した。前記がん細胞について、細胞生存率(Cell viability(%))の測定を行った。コントロール(vehicle)は、レスベラトロールおよびドセタキセルに代えて、DMSOを添加し、同様にして細胞生存率の測定を行った。
【0051】
図1(B)のグラフに示すように、レスベラトロールは、MDA-MB231D3H2LN細胞の抗がん剤であるドセタキセルに対する薬剤感受性を向上させることが確認された。
【0052】
[実施例1−3]
本実施例では、レスベラトロールの、
in vivoでの腫瘍形成および薬剤感受性への影響を確認した。
【0053】
個体動物は、SCID Hairless Outbred(SHO)マウスを使用した。前記動物の腹部に、がん細胞であるMDA-MB231D3H2LN細胞を移植した。この状態で、前記動物に、レスベラトロールを、16.5mg/kg/dayで投与した。また、別個体の前記動物に、レスベラトロールおよびドセタキセルを、16.5mg/kg/dayおよび10mg/kg/weekで投与した。前記投与後の動物における腹部のがん細胞について、発光量(Photon/sec)の測定および解析、ならびに腫瘍残存率(% of tumor)の測定を行った。レスベラトロールを投与した実験のコントロール(vehicle)は、レスベラトロールに代えて、エタノールを投与し、同様にして発光量の測定および解析を行った。レスベラトロールおよびドセタキセルを投与した実験のコントロール(vehicle)は、ドセタキセルを投与し、同様にして腫瘍残存率を測定した。
【0054】
図1(C)の写真およびグラフ、ならびに
図1(D)のグラフに示すように、レスベラトロールは、
in vivoで、MDA-MB231D3H2LN細胞の腫瘍形成を抑制し、抗がん剤であるドセタキセルに対する薬剤感受性を向上させることが確認された。
図1(C)左側の写真に示すように、コントロール(vehicle)マウスでは、同図中「a」および「b」で示す円で囲った位置に、腹腔内の腫瘍に由来する発光が確認された。これに対し、
図1(C)右側の写真に示すレスベラトロール投与マウスは、発光量が小さいために(
図1(C)のグラフ参照)、この写真では発光が確認できなかった。また、
図1(D)のグラフに示すように、レスベラトロール投与マウスは、投与後22日(Day 22)および29日(Day 29)のいずれでも、コントロール(vehicle)マウスより腫瘍残存率(% of tumor)が小さく、特に、投与後29日では、腫瘍残存率がきわめて低くなっていた。
【0055】
[実施例2−1]
本実施例では、レスベラトロールの、がん細胞のがん幹細胞の割合(CD24-/CD44+)への影響を確認した。
【0056】
がん細胞は、MDA-MB231D3H2LN細胞を使用した。前記がん細胞に、レスベラトロールを5μM(μmol/L)〜50μM(μmol/L)で添加した。前記がん細胞について、フローサイトメトリー測定を行った。コントロール(0μM(μmol/L))は、レスベラトロールに代えて、DMSOを添加し、同様にしてフローサイトメトリー測定を行った。
【0057】
図2(A)のフローサイトメトリーおよびグラフに示すように、レスベラトロールは、濃度依存的に、MDA-MB231D3H2LN細胞のがん幹細胞(CD24-/CD44+)の割合(Percentage of CD24-/CD44+)を減少させることが確認された。
【0058】
[実施例2−2]
本実施例では、レスベラトロールの、がん細胞におけるがん幹細胞を抑制するmiRNAであるmiR-200cの発現への影響を確認した。
【0059】
がん細胞は、MDA-MB231D3H2LN細胞を使用した。前記がん細胞に、レスベラトロールを25μM(μmol/L)または50μM(μmol/L)で添加した。前記がん細胞について、相対的miRNA発現量を測定した。コントロール(0μM(μmol/L))は、レスベラトロールに代えて、DMSOを添加し、同様にして相対的miRNA発現量(Comparative expression of miR-200c)を測定した。
【0060】
図2(B)のグラフに示すように、レスベラトロールは、MDA-MB231D3H2LN細胞におけるがん幹細胞を抑制するmiRNAであるmiR-200cの発現を上昇させることが確認された。
【0061】
上記実施例2−1および実施例2−2の結果から、レスベラトロールがmiRNAの発現(転写)を促進することが確認され、この結果、がん幹細胞が抑制されることが確認された。
【0062】
[実施例3−1]
本実施例では、レスベラトロールの、がん細胞におけるがん抑制的なmiRNAであるmiR-16、miR-141、miR-143の発現への影響を確認した。
【0063】
がん細胞は、MDA-MB231D3H2LN細胞を使用した。前記がん細胞に、レスベラトロールを25μM(μmol/L)または50μM(μmol/L)で添加した。前記がん細胞について、相対的miRNA発現量(Comparative expression of miR-16、miR-141、miR-143)を測定した。コントロール(0μM(μmol/L))は、レスベラトロールに代えてDMSOを添加し、同様にして相対的miRNA発現量を測定した。
【0064】
図3(A)のグラフに示すように、レスベラトロールは、MDA-MB231D3H2LN細胞におけるがん抑制的なmiRNAであるmiR-16、miR-141、miR-143の発現を上昇させることが確認された。
【0065】
[実施例3−2]
本実施例では、がんの浸潤を抑制するmiR-141の発現減少による、レスベラトロールの浸潤抑制効果への影響を確認した。
【0066】
がん細胞は、MDA-MB231D3H2LN細胞を使用した。前記がん細胞に、Anti-miR-141(Ambion社製)を、トランスフェクション試薬であるDharmaFECT 1(0.2μL)を用いて、100nM(nmol/L)で添加した。ついで、Anti-miR-141を添加したがん細胞(Anti-miR-141)および添加していないがん細胞(Anti-miR-NC)に、レスベラトロールを50μM(μmol/L)で添加した。前記がん細胞について、顕微鏡観察および浸潤率(% invasion)の測定を行った。コントロール(0μM(μmol/L))は、レスベラトロールに代えて、DMSOを添加し、同様にして浸潤率を測定した。
【0067】
図3(B)の写真およびグラフに示すように、浸潤を抑制するmiR-141の発現を減少させると、MDA-MB231D3H2LN細胞に対するレスベラトロールの浸潤抑制効果が低下することが確認された。すなわち、
図3(B)の写真に示すように、Anti-miR-141を添加した場合(Anti-miR-141)の方が、添加しなかった場合(Anti-miR-NC)よりも、がん細胞を示す黒点が多く、この結果は、同図のグラフにおいて、Anti-miR-141の方がAnti-miR-NCよりも浸潤率(% invasion)が高かったことと一致した。
【0068】
[実施例3−3]
本実施例では、がんの細胞増殖を抑制するmiR-143の発現減少による、レスベラトロールの細胞増殖抑制効果への影響を確認した。
【0069】
がん細胞は、MDA-MB231D3H2LN細胞を使用した。前記がん細胞に、Anti-miR-143(Ambion社製)を、トランスフェクション試薬であるDharmaFECT 1(0.2μL)を用いて、100nM(nmol/L)で添加した。ついで、前記がん細胞に、レスベラトロールを50μM(μmol/L)で添加した。前記がん細胞について、細胞生存率(cell viability (%))測定を行った。コントロール(0μM(μmol/L))は、レスベラトロールに代えて、DMSOを添加し、同様にして細胞生存率を測定した。
【0070】
図3(C)のグラフに示すように、細胞増殖を抑制するmiR-143の発現を減少させると、MDA-MB231D3H2LN細胞に対するレスベラトロールの細胞増殖抑制効果が低下することが確認された。すなわち、同図に示すように、Anti-miR-141を添加した場合(Anti-miR-141)の方が、添加しなかった場合(Anti-miR-NC)よりも、細胞生存率(cell viability (%))が高かった。
【0071】
上記実施例3−1〜3−3の結果から、レスベラトロールがmiRNAの発現(転写)を促進することにより、がん細胞の増殖を抑制することが確認された。
【0072】
[実施例4−1]
本実施例では、レスベラトロールの、がん細胞におけるがん抑制的なmiRNAの発現への影響を、マイクロアレイを使用して確認した。
【0073】
がん細胞は、MDA-MB231D3H2LN細胞を使用した。前記がん細胞に、レスベラトロールを25μM(μmol/L)で添加した。コントロール(0μM(μmol/L))は、レスベラトロールに代えて、DMSOを添加した。前記添加から48時間後に、RNA精製前の細胞の溶解液を、Qiazol(キアゲン社製)で処理した。前記処理した溶液から、miRNeasy Mini Kit(50)(キアゲン社製)を用いて、total RNAを抽出した。前記total RNAを、マイクロアレイ(Agilent社製)に供して、miRNAの発現を測定した。
【0074】
図4(A)のグラフに、前記マイクロアレイによるmiRNA発現の測定結果を示す。
図4(A)において、縦軸は、レスベラトロールを25μM(μmol/L)で添加した群の個々のmiRNAの発現量を、横軸はレスベラトロール(0μM(μmol/L))を添加しなかった群の個々のmiRNAの発現量を示している。あるmiRNAの発現量がレスベラトロールを25μM(μmol/L)で添加した群とレスベラトロールを添加しなかった群とで等しい場合、直線(y=x)上にプロットが存在する。また、あるmiRNAの発現量がレスベラトロールを25μM(μmol/L)で添加した群がレスベラトロールを添加しなかった群より高い場合、直線(y=x)より上にプロットが存在する。
図4(A)に示すように、レスベラトロールは、多数のがん抑制的なmiRNAの発現を上昇させることが確認された。
【0075】
[実施例4−2]
本実施例では、レスベラトロールの、がん細胞におけるAgo2の発現への影響を確認した。
【0076】
がん細胞は、MCF7-ADR細胞を使用した。前記がん細胞に、レスベラトロールを50μM(μmol/L)で添加した。前記がん細胞について、Ago2の相対的mRNA発現量を測定した。
【0077】
図4(B)のグラフに、Ago2の相対的mRNA発現量の測定結果を示す。
図4(B)において、縦軸は、相対的mRNA発現量(Comparative expression of mRNA(normalized with DMSO))を示し、横軸の1〜5は、それぞれ、1:Ago2、2:TARBP2、3:DICER1、4:DROSHA6、5:DGCR8を示す。Ago2、TARBP2、DICER1、DROSHA6、DGCR8は、全てmiRNAの生合成に関与する遺伝子である。
図4(B)に示すように、レスベラトロールは、MCF7-ADR細胞において、Ago2の発現を上昇させることが確認された。
【0078】
上記実施例4−1および4−2の結果から、レスベラトロールは、miRNAの発現(転写)、およびAgo2の発現の両方を促進することが確認された。
【0079】
[実施例4−3]
本実施例では、Ago2を強制発現させたがん細胞における、miR-16およびmiR-143の発現を確認した。
【0080】
がん細胞は、Ago2を強制発現させたMDA-MB231D3H2LN細胞(Ago2 O/E)を使用した。前記がん細胞について、相対的miRNA発現量を測定した。コントロール(NC)は、Ago2を強制発現させていないMDA-MB231D3H2LN細胞について、同様にして相対的miRNA発現量(Comparative expression of miR-16、miR-143)を測定した。
【0081】
図4(C)のグラフに示すように、MDA-MB231D3H2LN細胞においてAgo2を強制発現させた結果、miR-16、miR-143発現の上昇が確認された。
【0082】
[実施例4−4]
本実施例では、Ago2を強制発現させた細胞における、RNA干渉効果の持続性を確認した。
【0083】
正常細胞として、Ago2強制発現HEK293細胞(HEK293 Ago2 O/E)を使用した。前記正常細胞について、相対的miRNA発現量を測定した。コントロール(HEK293)は、Ago2を強制発現させていないHEK293細胞について、同様にして相対的miRNA発現量を測定した。前記相対的miRNA発現量の測定は、
図4(D)のグラフに示すように、前記各細胞におけるレニラルシファラーゼに対して規格化されたホタルルシファラーゼ活性に基づいて行った。前記各細胞におけるRNA干渉の効果を確認した。
【0084】
図4(D)のグラフに示すように、HEK293細胞においてAgo2を強制発現させた結果、RNA干渉の効果がより持続されることが確認された。すなわち、同図に示すように、Ago2強制発現後5日(day 5)において、Ago2強制発現HEK293細胞(HEK293 Ago2 O/E)の方が、Ago2を強制発現させていないHEK293細胞(HEK293)よりも、ルシフェラーゼ活性(luciferase activity)が低かったことから、RNA干渉の効果がより持続されることが確認された。
【0085】
上記実施例4−1〜4−4の結果から、細胞種に関わりなく、Ago2の発現が促進されることで、miRNAの発現(転写)が促進され、RNA干渉の効果が持続されることが確認された。すなわち、レスベラトロールにより、Ago2の発現およびmiRNAの転写が促進され、miRNAによるRNA干渉の効果が向上することが明らかである。
【0086】
[実施例5−1]
本実施例では、レスベラトロールおよびプテロスチルベンの、がん細胞の細胞増殖への影響を確認した。
【0087】
がん細胞は、MCF7細胞を使用した。前記がん細胞に、レスベラトロールを25μM(μmol/L)〜100μM(μmol/L)、または、プテロスチルベンを25μM(μmol/L)〜100μM(μmol/L)で添加した。前記がん細胞について、細胞生存率(cell viability (%))測定を行った。コントロール(0μM(μmol/L))は、レスベラトロールおよびプテロスチルベンに代えて、DMSOを添加し、同様にして細胞生存率測定を行った。
【0088】
図5(A)のグラフに示すように、レスベラトロールおよびプテロスチルベンは、MCF7細胞の細胞増殖抑制効果を有することが確認された。プテロスチルベンは、レスベラトロールよりさらに優れた、MCF7細胞の細胞増殖抑制効果を有することが確認された。
【0089】
[実施例5−2]
本実施例では、レスベラトロールおよびプテロスチルベンの、がん細胞におけるAgo2の発現への影響を確認した。
【0090】
がん細胞は、MDA-MB231D3H2LN細胞を使用した。前記がん細胞に、レスベラトロールを50μM(μmol/L)、またはプテロスチルベンを50μM(μmol/L)で添加した。前記がん細胞について、Ago2の相対的mRNA発現量(Relative expression of Ago2)を測定した。コントロール(vehicle)は、レスベラトロールおよびプテロスチルベンに代えて、DMSOを添加し、同様にしてAgo2の相対的mRNA発現量を測定した。
【0091】
図5(B)のグラフに示すように、レスベラトロールおよびプテロスチルベンは、MDA-MB231D3H2LN細胞におけるAgo2の発現を上昇させることが確認され、プテロスチルベンは、レスベラトロールよりさらに優れて、MDA-MB231D3H2LN細胞におけるAgo2の発現を上昇させることが確認された。
【0092】
[実施例5−3]
本実施例では、レスベラトロールおよびプテロスチルベンの、がん細胞におけるmiRNAであるmiR-141、miR-143、miR-200cの発現への影響を確認した。
【0093】
がん細胞は、MDA-MB231D3H2LN細胞を使用した。前記がん細胞に、レスベラトロールを25μM(μmol/L)、またはプテロスチルベンを25μM(μmol/L)で添加した。前記添加から48時間後に、RNA生成前の細胞の溶解液を、Qiazol(キアゲン社製)で処理し、total RNAを抽出した。前記total RNA 1μgに、100mM dNTPs(with dTTP) 0.05μL、MultiScribe(登録商標)Reverse Transcriptase(50U/μL) 0.33μL、10×Reverse Transcription Buffer 0.50μL、RNase Inhibitor(20U/μL) 0.063μL、Nuclease-free water 1.387μL、そしてそれぞれのmiRNAに対応する5×RT primer(ID number; miR-16:000391、miR-141:000463、miR-143:002249、miR-200c:002300)を添加することにより、逆転写反応を行った。その後、リアルタイムPCRでmiR-141、miR-143、miR-200cを定量解析することにより、前記がん細胞について、miR-141、miR-143、miR-200cの相対的miRNA発現量(Relative expression of mRNA)を測定した。コントロール(vehicle)は、レスベラトロールおよびプテロスチルベンに代えて、DMSOを添加し、同様にして相対的miRNA発現量を測定した。
【0094】
図6のグラフに示すように、レスベラトロールおよびプテロスチルベンは、MDA-MB231D3H2LN細胞におけるmiR-141、miR-143、miR-200cの発現を上昇させることが確認され、プテロスチルベンは、レスベラトロールよりさらに優れて、MDA-MB231D3H2LN細胞におけるmiR-141、miR-143、miR-200cの発現を上昇させることが確認された。
【0095】
上記実施例5−1〜5−3の結果から、レスベラトロールに加えて、プテロスチルベンも、Ago2の発現とmiRNAの発現(転写)を促進することが確認され、その結果、がん細胞の増殖を抑制することが確認された。
【0096】
以上の実施例の結果から、レスベラトロールおよびプテロスチルベンは、miRNAの発現(転写)およびAgo2の発現を促進することが確認され、前記促進により、miRNAによるRNA干渉効果が促進されることが確認された。このため、本発明の促進剤は、例えば、特定の遺伝子が関連する疾患に対して、前記遺伝子に対するmiRNAのRNA干渉作用を促進することで、前記疾患の治療等に有用といえる。