【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「イットリウム系超電導電力機器開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3の超電導線材は、前記充填材よりも低い融点の材料からなる融着部によって、前記第1の超電導線材と前記第2の超電導線材に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導線材の接続構造。
前記第3の超電導線材の超電導層と、前記第1の超電導線材及び前記第2の超電導線材の超電導層が前記融着部を介して接続されていることを特徴とする請求項2に記載の超電導線材の接続構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の場合、超電導ケーブルの敷設現場に大掛かりな蒸着装置を持ち込むことは困難であり、実用的な接続方法ではなかった。
また、超電導線材の端末をレーザーカット加工機によって切断すれば、その切断面は熱により融着するため、超電導層が剥離するなどのトラブルは生じないが、超電導ケーブルの敷設現場に大掛かりなレーザーカット加工機を持ち込むことも困難であり、実用的な接続方法ではなかった。
【0006】
本発明の目的は、安定した超電導性能を得ることができる超電導線材、超電導線材の接続構造、超電導線材の接続方法及び超電導線材の端末処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
基板上に超電導層を有する超電導線材同士が接続された超電導線材の接続構造であって、
少なくとも前記超電導層が除去された凹部と、前記凹部に充填材が充填された充填部とが設けられた端末を有する第1の超電導線材と第2の超電導線材が、前記端末同士が対向するように配置されており、
前記第1の超電導線材と前記第2の超電導線材の両方に接続された第3の超電導線材を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超電導線材の接続構造において、
前記第3の超電導線材は、前記充填材よりも低い融点の材料からなる融着部によって、前記第1の超電導線材と前記第2の超電導線材に接続されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の超電導線材の接続構造において、
前記第3の超電導線材の超電導層と、前記第1の超電導線材及び前記第2の超電導線材の超電導層が前記融着部を介して接続されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の超電導線材の接続構造において、
前記第1の超電導線材の基板と前記第2の超電導線材の基板は、溶接によって接合されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の超電導線材の接続構造において、
前記超電導線材は、前記基板の一方の面側にのみ前記超電導層が形成されており、
前記第3の超電導線材と前記第1の超電導線材、及び前記第3の超電導線材と前記第2の超電導線材は、それぞれ前記超電導層が形成された側の面同士で接続されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、
基板上に超電導層を有するテープ状の超電導線材であって、
少なくとも前記超電導層がその幅方向において全て除去された凹部を長手方向において部分的に有し、
前記凹部に充填材が充填された充填部を有
し、
前記凹部の一部が当該超電導線材の端末に形成されており、前記端末の端面には前記充填部と前記基板の界面が露出していることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の超電導線材において、
前記基板と前記超電導層の間に中間層を有し、前記凹部において前記中間層の少なくとも一部が除去されていることを特徴とする。
【0015】
請求項
8に記載の発明は、請求項
6又は7に記載の超電導線材において、
前記端末には、前記充填材よりも低い融点の材料からなる融着部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項
9に記載の発明は、
基板上に超電導層を有する超電導線材同士を接続する超電導線材の接続方法であって、
前記超電導層が除去された凹部と、前記凹部に充填材が充填された充填部とが設けられている端末を有する第1の超電導線材と第2の超電導線材を、前記端末同士を対向させるとともに、
前記第1の超電導線材と前記第2の超電導線材に第3の超電導線材を跨らせて接続することを特徴とする。
【0017】
請求項
10に記載の発明は、請求項
9に記載の超電導線材の接続方法において、
前記超電導線材は、前記基板の一方の面側にのみ前記超電導層が形成されており、
前記第1の超電導線材および前記第2の超電導線材に前記第3の超電導線材を跨らせるとともに、前記第3の超電導線材と前記第1の超電導線材、及び前記第3の超電導線材と前記第2の超電導線材を、それぞれ前記超電導層が形成された側の面を対向させて接続することを特徴とする。
【0018】
請求項
11に記載の発明は、
基板上に超電導層を有する超電導線材の端末処理方法であって、
少なくとも前記超電導層を除去して凹部を形成する工程と、
前記凹部に充填材を充填して充填部を形成する工程と、
前記基板と前記充填部とが積層されており、前記基板と前記充填部の間に前記超電導層が介在しない部分を切断する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項
12に記載の発明は、請求項
11に記載の超電導線材の端末処理方法において、
前記基板と前記超電導層の間に中間層が形成されており、
前記凹部において、前記中間層の少なくとも一部が除去されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、安定した超電導性能を得ることができるように超電導線材を容易に接続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0023】
図1は、超電導線材の層構成を示す説明図である。
【0024】
超電導線材10は、例えば、
図1に示すように、基板1上に中間層2、超電導層3、保護層4が順に積層された積層体と、その積層体の周囲を被覆する安定化層5を備えているテープ状の超電導線材である。
基板1は、例えば、テープ状の金属基板である。また低磁性の金属基板やセラミックス基板でもよい。金属基板の材料としては、例えば、強度及び耐熱性に優れた、Co、Cu、Cr、Ni、Ti、Mo、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Ag等の金属又はこれらの合金が用いられる。特に、耐食性及び耐熱性が優れているという観点からハステロイ(登録商標)、インコネル(登録商標)等のNi基合金、またはステンレス鋼等のFe基合金を用いることが好ましい。また、これら各種金属材料上に各種セラミックスを配してもよい。また、セラミックス基板の材料としては、例えば、MgO、SrTiO
3、又はイットリウム安定化ジルコニア等が用いられる。
中間層2は、超電導層3において高い面内配向性を実現するために形成された層である。このような中間層2は、例えば、熱膨張率や格子定数等の物理的な特性値が基板1の材料と超電導層3を構成する超電導体との中間的な値を示す。また、中間層2は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。多層構造の場合、その層数や種類は限定されないが、非晶質のGd
2Zr
2O
7−δ(δは酸素不定比量)等を含むベッド層と、結晶質のMgO等を含みIBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法により成形された強制配向層と、LaMnMO
3+δ(δは酸素不定比量)を含むLMO層と、CeO
2等を含むキャップ層と、を順に積層した構成となっていてもよい。
超電導層3は、酸化物超電導体からなる超電導層であり、例えば、MOCVD法により成膜された層である。超電導層3は、特に銅酸化物超電導体を含んでいることが好ましい。銅酸化物超電導体としては、高温超電導体としてのREBa
2Cu
3O
7−δ(以下、RE系超電導体と称す)が好ましい。なお、RE系超電導体中のREは、Y,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm,YbやLuなどの単一の希土類元素又は複数の希土類元素であり、これらの中でもBaサイトと置換が起き難い等の理由でYであることが好ましい。また、δは、酸素不定比量であって、例えば0以上1以下であり、超電導転移温度が高いという観点から0に近いほど好ましい。なお、酸素不定比量は、オートクレーブ等の装置を用いて高圧酸素アニール等を行えば、δは0未満、すなわち、負の値をとることもある。
保護層4は、例えば、スパッタ法により成膜された銀薄膜であり、超電導層3を保護するために形成された層である。この保護層4は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。多層構造の場合、その層数や種類は限定されないが、銀からなる銀安定化層と、銅からなる銅安定化層を順に積層した構成となっていてもよい。
安定化層5は、例えば、メッキ法によって形成された銅被膜であり、線材を電気的に安定させるために形成されたものである。
この超電導線材10の層構成は、後述する第1の超電導線材11、第2の超電導線材12、第3の超電導線材13に共通するものであるが、中間層2、安定化層5がない場合であっても超電導特性を十分発揮するもの(臨界電流を実用レベル程度有するもの)であればよい。
【0025】
次に、テープ状の超電導線材同士を接続するための超電導線材の端末構造と、その端末構造を形成するための超電導線材の端末処理方法について説明する。
【0026】
まず、
図2Aに示すように、超電導線材10の超電導層3側から中間層2が露出するまで切削して凹部9aを形成する。つまり、超電導線材10の基板1側とは反対側の面(超電導層3側の面)を、例えばリューターで削って、安定化層5、保護層4、超電導層3を除去し、中間層2を露出させた露出面を有する凹部9aを形成する。なお、中間層2を全て除去し、基板1を露出させた露出面を有する凹部9aを形成してもよい。
次いで、
図2Bに示すように、超電導線材10の一部を除去して形成した凹部9aに、充填材を充填して充填部9を形成する。充填材には、半田や樹脂材料などを用いることができ、溶融した充填材を凹部9aに流し込み固化させることで露出面を被覆する充填部9を形成する。また充填材としての金属ペーストなどの導電性接着剤を凹部9aに塗布することで、充填部9を形成してもよい。このとき、充填材と安定化層5の熱膨張係数の差を小さくすることで、熱の変化時における凹部9aの露出面の損傷を抑制することができる。そのため、充填材には、10×10
−6/℃以上27×10
−6/℃以下の線膨張係数を有する材料を用いることが好ましい。
この充填部9は、少なくとも中間層2と超電導層3の界面を被覆する部分に設けられていればよい。充填材を半田や金属ペーストなどの金属材料を含有したものとした場合には、特に凹部9aに基板1が露出ししている状態とし、基板1と充填材(充填部9)の密着性を向上させることが好ましい。基板1と充填材を接触させる場合には、基板1と充填材の熱膨張係数が近いもの好ましいことから、特に線膨張係数が10×10
−6/℃以上23×10
−6/℃以下の充填材が好ましい。凹部9aにおいて基板1を露出させた場合には、充填部9は基板1と中間層2の界面、中間層2と超電導層3の界面の両方を被覆していることが好ましい。
なお、充填部9は、凹部9a内に収まるように形成されることに限らず、凹部9aから充填材がはみ出すように流し込み固化させることで、その一部が安定化層5の表面を被覆する充填部9を形成するようにしてもよい。
【0027】
次いで、
図3A、
図3Bに示すように、超電導線材10において基板1と中間層2と充填部9とが積層されている部分を切断し、その切断面に充填部9が露出し、かつ少なくとも超電導層3が露出しない端面10bを形成する。この端面10bには、基板1と中間層2と充填部9が隣接した状態で露出している。つまり、超電導線材10の幅方向において超電導層3が全て除去されている部分を切断すればよい。この端面10bが形成された切断箇所が、超電導線材10の端末10aである。端末10aを有する超電導線材10は、端末10aに凹部9aと充填部9のそれぞれ一部を有した状態となる。なお、切断前の凹部9aにおいて基板1を露出させた場合、又は中間層2を有しない積層体の場合には、この端面10bでは基板1と充填部9が隣接した状態で露出していることとなる。
このように、本発明に係る超電導線材の端末構造は、超電導線材10の超電導層3側から中間層2又は基板1が露出するまで除去した部分に、少なくとも中間層2と超電導層3の界面及び/又は基板1と超電導層3の界面を被覆する充填部9を備えており、超電導線材10同士を接続するために対向配置させる端末10aに、充填部9が露出し、かつ少なくとも超電導層3が露出しない端面10bを有している。
【0028】
このような超電導線材の端末構造であれば、超電導線材10を切断して端末10aを形成する際に、中間層2と超電導層3の界面及び/又は基板1と超電導層3の界面は充填部9によって被覆されているので、超電導層3の剥離や損傷を抑制することができる。また、切断後も中間層2と超電導層3の界面及び/又は基板1と超電導層3の界面は充填部9によって被覆されているので、超電導線材10同士を接続するにあたって、超電導線材10の端末10aを取り扱う際にも超電導層3の剥離や損傷を抑制することができる。
こうして超電導線材10の端末10aにおける超電導層3の剥離や損傷を抑制することができるので、超電導線材10の接続後に、超電導層3の損傷箇所から劣化が進行してしまうことはなく、超電導線材10の接続構造体の超電導性能が低下してしまうトラブルを低減することができる。
つまり、超電導線材10同士を接続する場合、本発明に係る超電導線材の端末構造を有する超電導線材10を用いるようにすれば、安定した超電導性能を得ることができる。
【0029】
次に、テープ状の超電導線材同士を接続してなる超電導線材の接続構造と、超電導線材の接続方法について説明する。
図4、
図5は、上述した端末10aを有する第1の超電導線材11と第2の超電導線材12を、接続用の第3の超電導線材13で接続した超電導線材の接続構造を示している。
【0030】
図4、
図5に示すように、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12は、互いの端末10aを離間させた配置で対向しており、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12が隙間をあけて対向している箇所に第3の超電導線材13が融着部6を介して接続されている。
この第3の超電導線材13は、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12の端末10a同士が対向配置された箇所に、第1の超電導線材11および第2の超電導線材12の長手方向に沿って配されており、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12に跨るように、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12の両方に接続されている。
【0031】
特に、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12と第3の超電導線材13とに融着して、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12と第3の超電導線材13とを電気的に接続する融着部6は、充填部9(充填材)よりも低い融点の導電性の材料からなることを特徴としている。例えば、充填部9が融点200℃以上のSn−Zn系の半田やSn−Cu系の半田からなる場合、融着部6には融点が180℃程度のSn−Pb系の半田や銀ペーストを用いることが好ましい。
融着部6が充填部9よりも融点が低い材料からなるので、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12の端末10aに、例えば、融着部6となる低融点の半田を溶融して付着させて第3の超電導線材13を接合する際に、高融点の半田からなる充填部9が溶融して脱落してしまうことがないので、その充填部9は中間層2と超電導層3の界面を良好に被覆して保護することができる。
【0032】
そして、この接続部分において、互いの超電導層3側の面を向かい合わせるように、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12に対し、第3の超電導線材13を表裏逆向きに配した状態で接合している。
なお、第3の超電導線材13の超電導層3と、第1の超電導線材11及び第2の超電導線材12の超電導層3は、融着部6を介して接続されている。
【0033】
このような超電導線材の接続構造であれば、超電導線材の端末10aにおける中間層2と超電導層3の界面は充填部9によって被覆されているので、超電導線材同士を接続するにあたって第1の超電導線材11と第2の超電導線材12を取り扱う際に、その端末10aにおける超電導層3の剥離や損傷を抑制することができる。
つまり、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12を接続する際に、超電導線材の端末10aにおける超電導層3の剥離や損傷を抑制することで、その接続後に超電導層3の損傷箇所から劣化が進行しにくくなり、超電導線材の接続箇所で超電導性能が低下してしまうトラブルを低減することができる。
【0034】
また、第3の超電導線材13が、第1の超電導線材11の端末10aにおいて充填部9が設けられていない領域から、第2の超電導線材12の端末10aにおいて充填部9が設けられていない領域に亘る長さを有していることにより、第1の超電導線材11と第3の超電導線材13が充填部9を挟まずに超電導層3側の面同士が対向する配置を取ることができるとともに、第2の超電導線材12と第3の超電導線材13が充填部9を挟まずに超電導層3側の面同士が対向する配置を取ることができるので、各超電導線材に亘る電流経路を好適に確保することができる。
【0035】
従って、本発明に係る超電導線材の接続構造であれば、安定した超電導性能を得ることができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、
図6に示すように、第3の超電導線材13の両端の端末10aに充填部9を形成してもよい。第3の超電導線材13の両端の端末10aに対しても同様に充填部9を形成することで、超電導線材の接続箇所における超電導層3の劣化をより効果的に抑制することができ、超電導性能に優れた超電導線材の接続構造を得ることができる。
また、
図6に示すように、第3の超電導線材13の全体を覆うように設けられた融着部6によって、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12に第3の超電導線材13を融着して、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12と第3の超電導線材13とを電気的に接続するようにしてもよい。このような構造であれば、第3の超電導線材13が脱落してしまうことを低減し、より強固な接続構造とすることができる。
【0037】
また、上記実施形態では、
図2Aに示すように、凹部9aを形成する箇所において超電導線材10を切削する深さを、超電導線材10の長手方向に沿って徐々に変化させて、曲面状の露出面を有する凹部9aを形成したが、
図7Aに示すように、凹部9aを形成する箇所において超電導線材10を切削する深さを一定にして、側面視矩形状の凹部9aを形成してもよい。このように切削深さを一定にすることで、凹部9aの露出面と凹部9aに充填する充填材の接触面積が増え、充填部9と超電導線材10との接着がより強固になるという利点がある。
この側面視矩形状の凹部9aに充填材を充填することで、
図7Bに示すように、直方体状の充填部9を形成することができる。
【0038】
そして、
図7Bに示す超電導線材10において、基板1と中間層2と充填部9とが積層されている部分を切断することで、
図8A、
図8Bに示すように、その切断面に基板1と中間層2と充填部9が隣接した状態で露出する端面10bを有する端末10aを形成することができる。
また、
図7Aで示したように、中間層2を露出させる深さで超電導線材10を切削することに限らず、中間層2と基板1の界面に達する深さで超電導線材10を切削してもよく、この場合、
図8Cに示す端面10bを有する端末10aを形成することができる。
また、基板1を露出させる深さで超電導線材10を切削してもよく、この場合、
図8Dに示す端面10bを有する端末10aを形成することができる。
なお、第3の超電導線材13を融着部6のみによって第1の超電導線材11と第2の超電導線材12に接続し、その接続部分の引張り強度を維持する場合には、
図8Bのように、その切削深さを深くし過ぎず中間層2までとすることが好ましい。金属を含有している充填材を用いて充填部9を形成する場合には、
図8C、
図8Dのように、中間層2を全て除去して基板1を露出させることで、充填部9の密着性を向上させることができる。
【0039】
また、
図9A、
図9Bに超電導線材の接続構造の他の実施形態を示す。
この実施形態では、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12の基板1同士を溶接などによって機械的に接続している。
図9Aに示す超電導線材の接続構造の場合、基板1同士が接続用基板14を介して機械的に接続されている。
図9Bに示す超電導線材の接続構造の場合、基板1同士が直接機械的に接続されている。
このように、基板1同士を機械的に接続することで、より強度の高い接続構造体を提供することができる。特に超電導線材同士を接続した上でコイル化するような場合には、高強度の接続構造が必要となるため、
図9A、
図9Bに示す超電導線材の接続構造が適している。
【0040】
図9Aに示す超電導線材の接続構造は、以下のようにして形成することができる。
まず、超電導線材10の超電導層3側から基板1が露出するまで、かつ基板1の一部を切削して凹部9aを形成する。次いで、超電導線材10の基板1が露出した凹部9a部分を切断する。この工程を2本の超電導線材10に対して行うことで、基板1が露出した状態の端末を有する第1の超電導線材11と第2の超電導線材12が得られる。
なお、超電導線材10を切断した後、その切断面を有する端末における前述の凹部に相当する部分を切削し基板1を露出させて、基板1が露出した状態の端末を有する第1の超電導線材11と第2の超電導線材12を形成してもよい。
次いで、基板1が露出した状態の端末を隙間をあけて対向させるように、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12を配置し、接続用基板14を互いの基板1上に跨らせるように配して、その基板1同士を機械的に接続する。ここでは、基板1と接続用基板14を例えば電気溶接によって機械的に接続する。なお、接続用基板14は、基板1と同じ材料からなることが好ましい。
次いで、接続用基板14上に充填材を流し込み固化させて充填部9を形成する。
次いで、
図4と同様に、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12が対向配置されている箇所の上面に、融着部6を介して第3の超電導線材13を接続する。このとき第3の超電導線材13は、第1の超電導線材11および第2の超電導線材12の長手方向に沿い、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12に跨るように配されている。
こうして、
図9Aに示す超電導線材の接続構造が形成される。
なお、
図9A中、接続用基板14の下面側である第1の超電導線材11と第2の超電導線材12の端末の隙間には融着部6を設けているが、充填部9を設けることでその隙間を埋めてもよい。また、その隙間には何も設けず、空間を残すようにしてもよいが、機械的強度の観点から、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12の端末の隙間には融着部6又は充填部9を設けることが好ましい。
【0041】
図9Bに示す超電導線材の接続構造は、以下のようにして形成することができる。
まず、
図9Aに示す超電導線材の接続構造の場合と同様に、基板1が露出した状態の端末を有する第1の超電導線材11と第2の超電導線材12を形成する。
次いで、一方の超電導線材、ここでは第1の超電導線材11の基板1下の安定化層5を削り取る。
次いで、第1の超電導線材11の基板1を第2の超電導線材12の基板1上に重ね合わせ、その基板1同士を機械的に接続する。ここでは、基板1同士を直接電気溶接によって機械的に接続する。
次いで、基板1上に充填材を流し込み固化させて充填部9を形成する。
次いで、
図4と同様に、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12が対向配置されている箇所の上面に、融着部6を介して第3の超電導線材13を接続する。このとき第3の超電導線材13は、第1の超電導線材11および第2の超電導線材12の長手方向に沿い、第1の超電導線材11と第2の超電導線材12に跨るように配されている。
こうして、
図9Bに示す超電導線材の接続構造が形成される。
なお、
図9B中、基板1を重ね合わせた箇所における安定化層5の段差部分の空間には融着部6を設けているが、充填部9を設けることでその空間を埋めてもよい。また、その段差部分には何も設けず、空間を残すようにしてもよいが、機械的強度の観点から、段差部分には融着部6又は充填部9を設けることが好ましい。
【0042】
また、
図9A、
図9Bに示す超電導線材の接続構造の場合、基板1の一部を切削する工程において、基板1の厚みを半分程度にする切削を行うことが望ましい。
基板1の厚みを半分程度にする切削を行うことで、基板1部分の強度を保ちつつ、その切削した空間内で基板1同士の接続を好適に行うことができ、第3の超電導線材13を配する面を平坦にすることができる。
【0043】
なお、以上の実施の形態においては、基板1の一方の面側にのみ超電導層3が設けられた超電導線材10を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、基板1の両面側に超電導層3が設けられた超電導線材であっても、同様の接続構造をとることができ、安定した超電導性能が得られる。
【0044】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。