【実施例】
【0034】
<実施例1〜15>
まず、原料としてMgO、MgF
2、GeO
2、MnCO
3を正確に秤量する。さらに、MgOまたはGeO
2を置換する元素の原料として、Sc
2O
3またはGa
2O
3を正確に秤量した後、これらの原料を羽根撹拌式混合機で混合した。この混合した原料を、大気中において1000〜1300℃で6時間焼成することにより、組成式が以下の表1に示される実施例1〜15の蛍光体を得た。
<比較例>
また、比較例の蛍光体として、上述した非特許文献1に記載された水銀ランプ用の蛍光体であり、組成式が3.5MgO・0.5MgF
2・GeO
2:0.015Mn
4+で表される蛍光体を、上記実施例と同じ原料および焼成条件で作製した。
【0035】
【表1】
【0036】
<実施例1〜15の粉体輝度測定結果>
上記実施例1〜15について、その粉体輝度を分光蛍光光度計:F-4500(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で測定した。その結果を以下の表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2右欄の「相対発光強度」は、440nmの青色光で励起したときの各試料の相対発光強度を示す。すなわち、各実施例における相対発光強度は、波長が440nmの光で励起したとき、3.5MgO・0.5MgF
2・GeO
2:0.015Mn
4+蛍光体(比較例)の発光強度を100%として、各実施例の相対的な発光強度(%)である(後述の各実施例における「相対発光強度」について同じ。)。
【0039】
実施例1〜5では、MGF蛍光体の成分元素のうち、MgOのMgの一部をScで置換している。これにより、表2に示されるように、Scで置換していない比較例に対して発光強度が大きくなっていることが分かる。しかし、Scの置換量が過剰になると、発光強度が小さくなることが分かる。したがって、Scの置換量のより好ましい範囲は、モル比で、0.05以上0.3以下である。
【0040】
実施例6〜10では、MGF蛍光体の成分元素のうち、GeO
2のGeの一部をGaで置換している。これにより、表2に示されるように、Gaで置換していない比較例に対して発光強度が大きくなっていることが分かる。しかし、Gaの置換量が過剰になると、発光強度が小さくなることが分かる。したがって、Gaの置換量のより好ましい範囲は、モル比で、0.05以上0.3以下である。
【0041】
実施例11〜15では、MGF蛍光体の成分元素のうち、MgOのMgの一部をScで置換するとともに、GeO
2のGeの一部をGaで置換している。これにより、表2に示されるように、ScまたはGaで置換していない比較例に対して発光強度が大きくなっていることが分かる。また、ScまたはGa単独で置換している実施例に対して発光強度が大きくなっていることが分かる。その一方、ScおよびGaの置換量が過剰になると、発光強度が小さくなることが分かる。
【0042】
図3は、比較例の蛍光体(細実線)と、実施例3の蛍光体(細点線)と、実施例8の蛍光体(太点線)と、実施例13の蛍光体(太実線)についての励起スペクトルを示す図である。
【0043】
図3に示されるように、実施例3においてSc単独で置換したり、実施例8においてGa単独で置換したりすることにより、発光ダイオードを励起光源とした場合の波長350〜500nm(近紫外から可視領域)の励起強度が大きくなっていることが分かる。そのため、各実施例で測定した波長440nm励起における発光強度も大きくなる。さらに、実施例13は、ScおよびGaで共置換した実施例であり、さらに発光強度が大きくなる。
<実施例16〜21>
まず、原料としてMgO、MgF
2、GeO
2、MnCO
3を正確に秤量する。さらに、MgOまたはGeO
2を置換する元素の原料としてSc
2O
3またはGa
2O
3を正確に秤量した後、これらの原料を羽根撹拌式混合機で混合した。この混合した原料を、大気中において1000〜1300℃で6時間焼成して、組成式が以下の表3に示される実施例16〜21の蛍光体を得た。
<比較例>
また、比較例の蛍光体として、上述した非特許文献1に記載された水銀ランプ用の蛍光体であり、組成式が3.5MgO・0.5MgF
2・GeO
2:0.015Mn
4+で表される蛍光体を、上記実施例と同じ原料および焼成条件で作製した。
【0044】
【表3】
【0045】
<実施例16〜21の粉体輝度測定結果>
上記実施例16〜21について、その粉体輝度を分光蛍光光度計:F-4500(株式会社 日立ハイテクノロジーズ製)で測定した。その結果を以下の表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
実施例16〜21では、MGF蛍光体の成分元素のうち、MgOのMgの一部をScで置換するとともに、MGF蛍光体の成分元素のうち、GeO
2のGeの一部をGaで置換している。各実施例の置換量は同じである。
【0048】
表4に示されるように、実施例16は、その組成にMgF
2を含んでおらず、発光強度が小さくなっている。実施例17〜21は、MGF蛍光体の組成中のMgF
2の含有量が異なる。MgF
2の含有量が大きくなると、発光強度が大きくなるが、MgF
2の含有量が大きくなりすぎると、発光強度は小さくなることが分かる。したがって、MgF
2の含有量の好ましい範囲は、モル比で、0.25以上1.5未満である。
<実施例22〜25>
まず、原料としてMgO、GeO
2、MnCO
3を正確に秤量する。さらに、MgOまたはGeO
2を置換する元素の原料としてSc
2O
3またはGa
2O
3を正確に秤量した後、これらの原料を羽根撹拌式混合機で混合した。この混合した原料を、大気中において1000〜1300℃で6時間焼成して、組成式が以下の表5に示される実施例22〜25の蛍光体を得た。
<比較例>
また、比較例の蛍光体として、上述した非特許文献1に記載された水銀ランプ用の蛍光体であり、組成式が3.5MgO・0.5MgF
2・GeO
2:0.015Mn
4+で表される蛍光体を、上記実施例と同じ原料および焼成条件で作製した。
【0049】
【表5】
【0050】
<実施例22〜25の粉体輝度測定結果>
上記実施例22〜25について、その粉体輝度を分光蛍光光度計:F-4500(株式会社 日立ハイテクノロジーズ製)で測定した。その結果を以下の表6に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
本実施例22〜25の蛍光体は、他の組成比は一定にしてMnの含有量を変化させたものである。表6に示されるように、Mnの含有量を大きくしていくと発光強度が大きくなるが、Mnの含有量がモル比で0.05mol以上になると、濃度消光と考えられる影響により、発光強度が小さくなることが分かる。したがって、Mn含有量のより好ましい範囲は、モル比で、0.005以上0.03以下である。
<実施例26〜37>
まず、原料としてMgO、MgF
2、GeO
2、MnCO
3を正確に秤量した。さらに、MgOを置換する元素の原料としてSc
2O
3、K
2CO
3、Y
2O
3、La
2O
3、Lu
2O
3、Ta
2O
5またはMoO
3を、GeO
2を置換する元素の原料としてGa
2O
3、H
3BO
3またはAl
2O
3を正確に秤量した後、これらの原料を羽根撹拌式混合機で混合した。この混合した原料を、大気中において1000〜1300℃で6時間焼成して、組成式が以下の表7に示される実施例26〜37の蛍光体を得た。
<比較例>
また、比較例の蛍光体として、上述した非特許文献1に記載された水銀ランプ用の蛍光体であり、組成式が3.5MgO・0.5MgF
2・GeO
2:0.015Mn
4+で表される蛍光体を、上記実施例と同じ原料および焼成条件で作製した。
【0053】
【表7】
【0054】
<実施例26〜37の粉体輝度測定結果>
上記実施例26〜37について、その粉体輝度を分光蛍光光度計:F-4500(株式会社 日立ハイテクノロジーズ製)で測定した。その結果を以下の表8に示す。
【0055】
【表8】
【0056】
表8に示されるように、MgOのMgをScで置換するか、もしくはGeO
2のGeをGaで置換することにより、発光強度が大きくなっており、さらにScおよびGaで同時に置換することにより、さらに発光強度が大きくなることが分かる。
【0057】
さらに、表8の実施例30〜37に示されるように、MgOのMgをK,Y,La,Lu,TaまたはMoで置換したり、GeO
2のGeをAlまたはBで置換したりしても、ScまたはGaで置換する実施例と同様に発光強度が大きくなることが分かる。
<実施例38〜40>
まず、原料としてMgO、MgF
2、CaF
2、GeO
2、MnCO
3を正確に秤量した。さらに、MgOまたはGeO
2を置換する元素の原料としてSc
2O
3またはGa
2O
3を正確に秤量した後、これらの原料を羽根撹拌式混合機で混合した。この混合した原料を、大気中において1000〜1300℃で6時間焼成して、組成式が以下の表9に示される実施例38〜40の蛍光体を得た。
<比較例>
また、比較例の蛍光体として、上述した非特許文献1に記載された水銀ランプ用の蛍光体であり、組成式が3.5MgO・0.5MgF
2・GeO
2:0.015Mn
4+で表される蛍光体を、上記実施例と同じ原料および焼成条件で作製した。
【0058】
【表9】
【0059】
<実施例38〜40の粉体輝度測定結果>
上記実施例38〜40について、その粉体輝度を分光蛍光光度計:F-4500(株式会社 日立ハイテクノロジーズ製)で測定した。その結果を以下の表10に示す。
【0060】
【表10】
【0061】
表10に示されるように、本実施例38〜40の蛍光体は、その組成としてMgF
2とともにCaF
2を含むことにより、発光強度が最大で比較例の2倍近く大きくなることが分かる。したがって、CaF
2含有量のより好ましい範囲は、モル比で、0.05以上0.75以下である。