(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂製基板がポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製基板である請求項1記載の熱可塑性樹脂製基板とオルガノポリシロキサン樹脂硬化物とを接着する方法。
紫外線硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物が(B)成分以外のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有しないものである請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂製基板とオルガノポリシロキサン樹脂硬化物とを接着する方法。
光活性型白金錯体硬化触媒がβ−ジケトン白金錯体又は環状ジエン化合物を配位子に持つ白金錯体である請求項1〜3のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂製基板とオルガノポリシロキサン樹脂硬化物とを接着する方法。
光活性型白金錯体硬化触媒が、トリメチル(アセチルアセトナト)白金錯体、トリメチル(2,4−ペンタンジオネ−ト)白金錯体、トリメチル(3,5−ヘプタンジオネート)白金錯体、トリメチル(メチルアセトアセテート)白金錯体、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金錯体、ビス(2,4−へキサンジオナト)白金錯体、ビス(2,4−へプタンジオナト)白金錯体、ビス(3,5−ヘプタンジオナト)白金錯体、ビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオナト)白金錯体、ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)白金錯体、(1,5−シクロオクタジエニル)ジメチル白金錯体、(1,5−シクロオクタジエニル)ジフェニル白金錯体、(1,5−シクロオクタジエニル)ジプロピル白金錯体、(2,5−ノルボラジエン)ジメチル白金錯体、(2,5−ノルボラジエン)ジフェニル白金錯体、(シクロペンタジエニル)ジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)ジエチル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジフェニル白金錯体、(メチルシクロオクタ−1,5−ジエニル)ジエチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)エチルジメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)アセチルジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリヘキシル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(ジメチルフェニルシリルシクロペンタジエニル)トリフェニル白金錯体、(シクロペンタジエニル)ジメチルトリメチルシリルメチル白金錯体から選ばれる1種又は2種以上である請求項4記載の熱可塑性樹脂製基板とオルガノポリシロキサン樹脂硬化物とを接着する方法。
積層体が、ナノインプリント用マスター部材、曲面印刷用パッド材、オフセット印刷用ブランケット材又は3Dプリンタ用形状形成材用である請求項6記載の積層体の製造方法。
【背景技術】
【0003】
従来シリコーンゴムは、その優れた耐熱性、耐寒性、電気特性等を活かして、いろいろな分野で広く利用されている。特に、流動性がよく、コイル状の主鎖からメチル基が表面に表れているため表面張力が小さいという特徴から、ナノインプリント用マスター部材、曲面印刷用パッド材、オフセット印刷用ブランケット材又は3Dプリンタ用形状形成材としても注目を集めるようになってきた。
オフセット印刷は、版に付けられたインキを直接被印刷体へ転写せずにゴム状の弾性を持った中間転写体へ転写(オフ)し、被印刷体へ印刷(セット)する印刷技術であり、ゴム状のシートのことをブランケットと呼ぶ。大量印刷に適し、インクジェットプリンタやレーザープリンタよりも鮮明な印刷が可能であるため、商業印刷の大部分がオフセット印刷で行われている。
【0004】
これらブランケットの用途には、有機樹脂などと組み合わせた部品として使用される事例も少なくない。従来、付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と有機樹脂とが一体化した物品を得る方法は数多く提案されている。成形樹脂表面にプライマーを塗布し、その上から未硬化のシリコーンゴム組成物を塗布・硬化させて接着させる方法、接着剤を界面に塗布して両者を一体化させる方法、2色成形で両者の嵌合等により一体化させる方法、自己接着性シリコーンゴム組成物を成形樹脂の上から硬化させる方法などが代表的である。しかしながら、接着剤やプライマーを使用する方法は、工程が増えてしまうだけでなく、塗布方法によっては非接着面を汚してしまうなどの問題点もあった。また、2色成形による方法では、一体化品の形状が制約されたり、界面の密着性が不十分であるなどの問題があった。
【0005】
付加型の加熱硬化型シリコーンゴム組成物のプライマーレス成形において、有機樹脂と接着させる方法は数多く報告されており、例えば自己接着性をもつ付加架橋性のシリコーンゴム組成物(特許文献1:特開2001−200162号公報、特許文献2:特表2008−537967号公報及び特許文献3:特開2014−37507号公報)において、一分子中にSiH結合及び芳香族骨格を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを接着性向上剤としてシリコーンゴム組成物中に添加した場合、短時間の成型でも有機樹脂や金属に対して接着させることが可能であった。
【0006】
しかしながら、付加反応硬化型の液状シリコーンゴム組成物は通常加熱による硬化が用いられており、シリコーンゴム及び有機樹脂が熱により膨張又は収縮してしまうため、光硬化性樹脂のナノインプリント時の微細パターンの反転や、曲面印刷に使用されるパッド材料やオフセット印刷に使用されるブランケット材料では、所定の寸法のパターンが転写、印刷できないなどの問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、従来技術の問題点を解決し、耐熱性や耐久性に優れるナノインプリント用マスター部材、曲面印刷用パッド材、オフセット印刷用ブランケット材又は3Dプリンタ用形状形成材として、シリコーンゴム組成物とPET基板等の熱可塑性樹脂製基板の一体成形体を得る場合において、ゴムの硬さが高い場合においても樹脂との接着が可能で、かつ室温硬化のため、フィルムとの線膨張係数を要因とした反りが生じない良好な積層構造が得られる、熱可塑性樹脂製基板とオルガノポリシロキサン樹脂硬化物とを接着する方法、及び、該接着方法を用いた積層体の製造方法、並びに、それにより製造される積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂製の基板上に、特定の組成からなる紫外線硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を塗布積層して、熱可塑性樹脂製基板と未硬化のオルガノポリシロキサン樹脂組成物との積層体を作製し、該オルガノポリシロキサン樹脂組成物の外表面から紫外線を照射して、架橋硬化を実施することで、ゴム硬度(JIS A硬度)が40超、特には50超の高硬度であり、なおかつ、接着助剤を抜いた処方においても、PET等の熱可塑性樹脂製基板に対して安定的に優れた接着性を発現し得る熱可塑性樹脂製基板と硬化したオルガノポリシロキサン樹脂からなる積層体が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記の熱可塑性樹脂製基板とオルガノポリシロキサン樹脂硬化物とを接着する方法、及び、該接着方法を用いた積層体の製造方法、並びに、それにより製造されるナノインプリント用マスター部材、曲面印刷用パッド材、オフセット印刷用ブランケット材、3Dプリンタ用形状形成材等の積層体を提供する。
〔1〕
熱可塑性樹脂製の基板上に、
(A)(A−1)一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有する直鎖のオルガノポリシロキサン:(A)成分の50〜90質量%及び(A−2)R
12R
2SiO
1/2単位、R
13SiO
1/2単位、及びSiO
2単位(式中、R
1はアルケニル基を除く非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、R
2はアルケニル基)を含有し、SiO
2単位に対するR
12R
2SiO
1/2単位及びR
13SiO
1/2単位の合計のモル比;(R
12R
2SiO
1/2+R
13SiO
1/2)/SiO
2が0.5〜1.5であり、かつ1×10
-4〜50×10
-4mol/gのアルケニル基を含有する三次元網状オルガノポリシロキサンレジン:(A)成分の10〜50質量%((A−1)成分と(A−2)成分の合計で100質量%):100質量部、
(B)一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有し、分子中にアルコキシ基を含有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分と(D)成分が有するアルケニル基の合計に対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の合計のモル比が0.5〜7.0となる量、
(C)光活性型白金錯体硬化触媒:有効量、
(D)R
12R
2SiO
1/2単位又はR
12R
2SiO
1/2単位及びR
13SiO
1/2単位と、R
1SiO
3/2単位と(式中、R
1はアルケニル基を除く非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、R
2はアルケニル基)を含有し、SiO
2単位を含まない一分子中にアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサンオリゴマー:(A)成分と(D)成分中のアルケニル基の合計に対する(D)成分中のアルケニル基のモル比が0.01〜0.6となる量
を含有してなる紫外線硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を塗布積層して、熱可塑性樹脂製基板と該未硬化のオルガノポリシロキサン樹脂組成物との積層体を作製し、該オルガノポリシロキサン樹脂組成物の外表面から紫外線を照射して該オルガノポリシロキサン樹脂組成物を硬化する工程を含む、熱可塑性樹脂製基板とオルガノポリシロキサン樹脂硬化物とを接着する方法。
〔2〕
熱可塑性樹脂製基板がポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製基板である〔1〕記載の熱可塑性樹脂製基板とオルガノポリシロキサン樹脂硬化物とを接着する方法。
〔3〕
紫外線硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物が(B)成分以外のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有しないものである〔1〕又は〔2〕記載の熱可塑性樹脂製基板とオルガノポリシロキサン樹脂硬化物とを接着する方法。
〔4〕
光活性型白金錯体硬化触媒がβ−ジケトン白金錯体又は環状ジエン化合物を配位子に持つ白金錯体である〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂製基板とオルガノポリシロキサン樹脂硬化物とを接着する方法。
〔5〕
光活性型白金錯体硬化触媒が、トリメチル(アセチルアセトナト)白金錯体、トリメチル(2,4−ペンタンジオネ−ト)白金錯体、トリメチル(3,5−ヘプタンジオネート)白金錯体、トリメチル(メチルアセトアセテート)白金錯体、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金錯体、ビス(2,4−へキサンジオナト)白金錯体、ビス(2,4−へプタンジオナト)白金錯体、ビス(3,5−ヘプタンジオナト)白金錯体、ビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオナト)白金錯体、ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)白金錯体、(1,5−シクロオクタジエニル)ジメチル白金錯体、(1,5−シクロオクタジエニル)ジフェニル白金錯体、(1,5−シクロオクタジエニル)ジプロピル白金錯体、(2,5−ノルボラジエン)ジメチル白金錯体、(2,5−ノルボラジエン)ジフェニル白金錯体、(シクロペンタジエニル)ジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)ジエチル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジフェニル白金錯体、(メチルシクロオクタ−1,5−ジエニル)ジエチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)エチルジメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)アセチルジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリヘキシル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(ジメチルフェニルシリルシクロペンタジエニル)トリフェニル白金錯体、(シクロペンタジエニル)ジメチルトリメチルシリルメチル白金錯体から選ばれる1種又は2種以上である請求項4記載の熱可塑性樹脂製基板とオルガノポリシロキサン樹脂硬化物とを接着する方法。
〔6〕
〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法による熱可塑性樹脂製基板と硬化したオルガノポリシロキサン樹脂からなる積層体の製造方法。
〔7〕
積層体が、ナノインプリント用マスター部材、曲面印刷用パッド材、オフセット印刷用ブランケット材又は3Dプリンタ用形状形成材用である〔6〕記載の積層体の製造方法。
〔8〕
〔7〕記載の製造方法により製造される、ナノインプリント用マスター部材、曲面印刷用パッド材、オフセット印刷用ブランケット材又は3Dプリンタ用形状形成材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性や耐久性に優れるナノインプリント用マスター部材、曲面印刷用パッド材、オフセット印刷用ブランケット材又は3Dプリンタ用形状形成材として、シリコーンゴム組成物とPET基板等の熱可塑性樹脂製基板の一体成形体を得る場合において、ゴムの硬さが高い場合においても樹脂との接着が可能で、かつ室温硬化のため、フィルムとの線膨張係数を要因とした反りが生じない良好な積層構造が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明について更に詳しく説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンであり、(A−1)アルケニル基含有直鎖状ジオルガノポリシロキサンと(A−2)アルケニル基含有オルガノポリシロキサンレジンとからなる。
(A−1)成分のオルガノポリシロキサンは、この組成物の主剤(ベースポリマー)であり、一分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上(通常、2〜50個)、特には2〜20個程度有する直鎖状のオルガノポリシロキサンであり、代表的には、主鎖がジオルガノポリシロキサン単位の繰返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。
【0013】
(A−2)成分のオルガノポリシロキサンレジンは、R
12R
2SiO
1/2単位、R
13SiO
1/2単位及びSiO
2単位(式中、R
1はアルケニル基を除く非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、R
2はアルケニル基)を含有し、SiO
2単位に対するR
12R
2SiO単位及びR
13SiO
1/2単位の合計のモル比;(R
12R
2SiO
1/2+R
13SiO
1/2)/SiO
2が0.5〜1.5、好ましくは0.7〜1.0であり、かつ1×10
-4〜50×10
-4mol/gのアルケニル基を含有する三次元網状オルガノポリシロキサンレジンである。なお、(A−2)成分の三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジンは、通常、分子中に三官能性のシロキサン単位を含有しないものであることが好適であるが、分子中にSiO
2単位を必須に含有するものである点において、後述する(D)成分の分岐状オルガノポリシロキサンオリゴマーとは明確に差別化されるものである。
【0014】
なお、上記(A−2)成分のオルガノポリシロキサンレジンには、更に上記単位に加えてR
12SiO単位、R
1R
2SiO単位、R
22SiO単位、R
1SiO
3/2単位、R
2SiO
3/2単位を含有しても差支えないが、その含有量は、(A−2)成分のオルガノポリシロキサンレジン中30質量%以下(0〜30質量%)、特に20質量%以下(0〜20質量%)とすることが好ましい。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量は400〜100,000、特に、500〜30,000であることが、安定して硬化物を補強できる点で好ましい。重量平均分子量が小さすぎると硬化物の補強効果がなくなる場合があり、大きすぎると安定して製造できない場合がある。
【0015】
(A)成分中(即ち、(A−1)成分及び(A−2)成分)に含まれるケイ素原子に結合するアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等の、通常、炭素原子数2〜8個、好ましくは炭素原子数2〜6個程度のものが挙げられ、特に、ビニル基が好ましい。
【0016】
(A−1)成分のアルケニル基の結合位置(即ち、分子中におけるケイ素原子に結合するアルケニル基の位置)としては、例えば、分子鎖末端のケイ素原子及び/又は分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合したアルケニル基が挙げられるが、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するものであることが好ましい。
【0017】
(A−1)成分において、アルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基(例えば、非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等の、通常、炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8個程度の、非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基が挙げられ、特に、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0018】
(A−1)成分の25℃における粘度は、組成物の取扱作業性(例えば、十分な流れ性)が良好であり、また、得られる硬化物の物理的特性(例えば、硬さ(軟らかさ)、強度、伸び)が良好であるために、10〜500,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に、100〜100,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。なお、本発明において、粘度は通常、25℃において回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型等)によって測定することができる。
【0019】
上記(A−1)成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖片末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され分子鎖の他方の末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン・メチルビニルポリシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルポリシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物等が挙げられる。
【0020】
上記(A−2)成分のオルガノポリシロキサンレジンとしては、例えば、式:R
13SiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:R
12R
2SiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:R
12SiOで示される単位と式:SiO
2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R
13SiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:R
12R
2SiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO
2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R
12R
2SiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:R
12SiOで示されるシロキサン単位と式:SiO
2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、及び、これらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物等が挙げられる。
【0021】
なお、上記式中のR
1は、アルケニル基以外の非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基を表し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等である。また、上記式中のR
2はアルケニル基を表し、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基等である。
【0022】
なお、(A−1)成分と(A−2)成分との配合比率は、質量比で(A−1)成分/(A−2)成分=90/10〜50/50、特に85/15〜60/40程度であることが好ましい。この範囲において組成物の取扱作業性(例えば、十分な流れ性)が良好であり、また、得られる硬化物の物理的特性(例えば、硬さ(軟らかさ)、強度、伸び)が最適となる。この範囲を外れると取扱作業性、硬化物の物理的特性が得られないため、精度の良いパターン転写が不可能となる。
【0023】
[(B)成分]
(B)成分は、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個含有し、分子中にアルコキシ基を含有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、この組成物において架橋剤として作用するものである。即ち、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、典型的には、(A)成分及び(D)成分中のアルケニル基とのヒドロシリル化付加反応に関与し得る官能性基としてのSiH基以外には、分子中に他の官能性基(例えば、上記したアルコキシ基や、エポキシ基、アミノ基、エステル基、カルボニル基、(メタ)アクリル基等、通常、硬化性シリコーンゴム組成物に接着性付与の目的で添加される官能性基)を含有しないものである。
【0024】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、前記(A)成分(即ち、(A−1)成分及び(A−2)成分)と反応し、架橋剤として作用するものであり、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている、例えば直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、三次元網状構造(樹脂状)等各種のものが使用可能であるが、一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のケイ素原子に結合した水素原子(SiHで表されるヒドロシリル基)を有する必要があり、通常2〜300個、好ましくは3〜200個、より好ましくは4〜100個程度のSiH基を有することが望ましい。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(1)で示されるものが用いられる。
R
4bH
cSiO
(4-b-c)/2 (1)
【0025】
上記式(1)中、R
4は、脂肪族不飽和結合を含まない、好ましくは炭素数1〜10の、ケイ素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基であり、このR
4における非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等が挙げられる。R
4の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cが0.8〜3.0を満足する正数であり、好ましくはbは1.0〜2.0、cは0.01〜1.0、b+cが1.5〜2.5である。
【0026】
一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上含有されるSiH基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は通常2〜300個、好ましくは3〜200個、より好ましくは4〜100個程度のものが望ましく、組成物の取扱作業性(例えば、十分な流れ性)が良好であり、また、得られる硬化物の物理的特性(例えば硬さ(軟らかさ)、耐熱性)が良好であるために、25℃における粘度が、通常、1〜1,000mPa・s、特に5〜500mPa・s程度の室温(25℃)で液状のものが好適に使用される。
【0027】
なお、本発明において、重合度(又は分子量)は、例えば、トルエン等を展開溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析における重量平均重合度(又は重量平均分子量)等として求めることができる。また、粘度は、25℃において回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型等)によって測定することができる。
【0028】
式(1)で示される(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位と(CH
3)
3SiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)
3SiO
1/2単位とからなる共重合体や、これらの例示化合物においてメチル基の一部又は全部が他のアルキル基やフェニル基等で置換されたものなどが挙げられ、特に下記分子式(2)で示されるものが好適に用いられる。
【0029】
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、mは0≦m、nは1≦nの整数であり、m+nは1〜299の整数である。)
【0030】
(B)成分は、公知の製造方法によって得ることが可能である。一般的な製造方法を挙げると、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン及び/又はテトラメチルシクロジシロキサンと末端基となり得るヘキサメチルジシロキサン或いは1,1'−ジハイドロ−2,2',3,3'−テトラメチルジシロキサン単位を含む化合物とを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に−10〜+40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。
【0031】
(B)成分の配合量は、(A)成分と(D)成分のオルガノポリシロキサンが有するアルケニル基の合計に対する(B)成分のケイ素原子に結合した水素原子のモル比が0.5〜6.0、好ましくは1.0〜5.0となる量である。前記モル比が0.5未満や6.0を超えると、組成物は十分に硬化しない。
【0032】
[(C)成分]
本発明に使用される(C)成分は、光活性型白金錯体硬化触媒であり、光を照射して活性化すると、(A)成分、(B)成分、(D)成分との付加反応を促進する触媒作用を有する。本発明において、該(C)成分である光活性型白金錯体硬化触媒となる化合物は、好適にはβ−ジケトン白金錯体又は環状ジエン化合物を配位子に持つ白金錯体を意味する。
【0033】
ここで、β−ジケトン白金錯体としては、例えば、トリメチル(アセチルアセトナト)白金錯体、トリメチル(2,4−ペンタンジオネ−ト)白金錯体、トリメチル(3,5−ヘプタンジオネート)白金錯体、トリメチル(メチルアセトアセテート)白金錯体、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金錯体、ビス(2,4−へキサンジオナト)白金錯体、ビス(2,4−へプタンジオナト)白金錯体、ビス(3,5−ヘプタンジオナト)白金錯体、ビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオナト)白金錯体、ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)白金錯体等が挙げられる。また、環状ジエン化合物を配位子に持つ白金錯体としては、例えば、(1,5−シクロオクタジエニル)ジメチル白金錯体、(1,5−シクロオクタジエニル)ジフェニル白金錯体、(1,5−シクロオクタジエニル)ジプロピル白金錯体、(2,5−ノルボラジエン)ジメチル白金錯体、(2,5−ノルボラジエン)ジフェニル白金錯体、(シクロペンタジエニル)ジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)ジエチル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジフェニル白金錯体、(メチルシクロオクタ−1,5−ジエニル)ジエチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)エチルジメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)アセチルジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリヘキシル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(ジメチルフェニルシリルシクロペンタジエニル)トリフェニル白金錯体、(シクロペンタジエニル)ジメチルトリメチルシリルメチル白金錯体等が挙げられる。
【0034】
上記(C)成分の含有量は、触媒としての有効量であればよいが、例えば、(A)成分の質量に対して、白金金属として1〜5,000ppmとなる量、好ましくは10〜500ppmの範囲で用いられる。前記配合量が1ppm未満では付加反応が著しく遅くなるか、もしくは硬化しなくなる。
【0035】
[(D)成分]
本発明に使用される(D)成分の分岐状オルガノポリシロキサンオリゴマーは、この組成物において補強剤として用いられるものであり、R
1SiO
3/2単位と、R
12R
2SiO
1/2単位又はR
12R
2SiO
1/2単位及びR
13SiO
1/2単位と(式中、R
1はアルケニル基を除く非置換又はハロゲン置換の一価炭化水素基、R
2はアルケニル基)を含有し、一分子中にアルケニル基を2個以上含有する分岐状オルガノポリシロキサンオリゴマーである。(D)成分は、分子中にSiO
2単位を含有しないものである点において、前述の(A−2)成分の三次元網状オルガノポリシロキサンレジンとは明確に差別化されるものである。
【0036】
この場合、R
1SiO
3/2単位に対するR
12R
2SiO
1/2単位とR
13SiO
1/2単位の合計量の割合(モル比)は(R
12R
2SiO
1/2+R
13SiO
1/2)/R
1SiO
3/2=0.1〜10、特に0.5〜5が好ましい。また、この(D)成分に含まれるアルケニル基の量は0.0001〜0.05(mol/g)、特に0.0002〜0.02(mol・g)であることが好ましい。アルケニル基量が少なすぎると硬化物の補強硬化が弱く、多すぎると組成物は十分に硬化しないおそれがある。また、25℃における回転粘度計による粘度は1〜1,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に10〜100mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0037】
(D)成分は、公知の製造方法によって得ることが可能である。一般的な製造方法を挙げると、例えば、メチルトリクロルシランの水、メタノールによる加水分解物をヘキサメチルジシロキサン及び/又はテトラメチルジビニルジシロキサンを含む化合物と、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に+50度以下の温度で攪拌し、水を+65度以下の温度で滴下して共加水分解させることによって容易に得ることができる。
【0038】
(D)成分の配合量は、(A)成分と(D)成分中のアルケニル基の合計に対する(D)成分中のアルケニル基のモル比が、0.01〜0.6となる量である。前記モル比が0.01未満であると硬化物の補強効果がなくなる場合があり、0.6を超えると、組成物は十分に硬化しない場合がある。なお(A)成分と(D)成分との配合比率は、質量比で(A)成分/(D)成分=99.99/0.01〜50/50、特に99.95/0.05〜60/40程度であることが好ましい。
【0039】
[その他の配合成分]
本発明の組成物は、上記(A)成分〜(D)成分以外の任意の成分として、付加硬化反応を抑制・制御する効果を有する化合物(ヒドロシリル化反応制御剤)を含有することができる。このような化合物としては、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物:硫黄含有化合物、アセチレン系化合物、アルケニル基を2個以上有する化合物、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体などが挙げられる。当該化合物による硬化遅延効果の度合いは、その化学構造によって大きく異なる。従って、その添加量は、使用する化合物の個々について最適な量に調整すべきであるが、一般的には、その添加量が少な過ぎると室温での長期貯蔵安定性が得られず、逆に多過ぎると硬化が阻害される。
【0040】
また、その他の任意の成分として、透明性を損なわない程度に、例えば、ヒュームドシリカ、ポリオルガノシルセスキオキサン等の無機質充填剤、及び、これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面処理した充填剤を使用してもよい。
【0041】
更に、本発明の組成物には、例えば、耐熱性付与剤、難燃性付与剤等を含有させることも任意である。
【0042】
[紫外線硬化]
本発明の熱可塑性樹脂製基板とオルガノポリシロキサン樹脂硬化物とを接着する方法は、オルガノポリシロキサン樹脂硬化物と熱可塑性樹脂との強固な接着性を発現させるために、PET等の熱可塑性樹脂製基板(基材)が変形、溶融、変質しない温度、硬化時間、紫外線強度、照射時間で行うことが好ましい。即ち、熱可塑性樹脂製の基板上に、上記(A)〜(D)成分を含有してなる紫外線硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を流し、塗布積層して、熱可塑性樹脂製基板と該未硬化のオルガノポリシロキサン樹脂組成物との積層体を作製し、本組成物側から(即ち、該オルガノポリシロキサン樹脂組成物の外表面から)紫外線を照射して該オルガノポリシロキサン樹脂組成物を硬化する工程を含むものである。紫外線の照射する条件としては、常温下(20℃±15℃)において紫外線を照射することが望ましく、波長は200〜500nmが望ましい。紫外線照射するランプは波長が200〜500nmの紫外線を供給できるものなら特に制限されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、紫外線LEDランプ等が挙げられる。紫外線照射量は、使用する光活性型白金錯体の種類や量により異なるが、光活光活性型白金錯体が活性化するのに十分な量であればよく、10〜1,000mW/cm
2、特に20〜400mW/cm
2の紫外線強度を0.1秒〜5分、特に0.5秒〜1分程度照射することが好ましい。
必要であれば紫外線照射後の加熱も効果的であり、60℃以下で3分〜30分程度、特に50℃以下で5分〜15分程度の硬化条件で一体成形体を得ることが可能である。
なお、熱可塑性樹脂製の基板(基材)上に、上記(A)〜(D)成分を含有してなる紫外線硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を流し、塗布積層する以前に、予め、熱可塑性樹脂製の基板表面に紫外線を照射して該基材表面をオゾン処理することは任意である。
【0043】
得られたナノインプリント用マスター部材、曲面印刷用パッド材、オフセット印刷用ブランケット材、3Dプリンタ用形状形成材等の版材に使用されるシリコーン硬化物(オルガノポリシロキサン樹脂硬化物)は、デュロメーターA硬度計による硬度が通常40以上、特に50以上、引裂き強度[クレセントタイプ]が1kN/m以上、特に2kN/m以上である。ここで、硬度及び引裂き強度はJIS−K6249に記載の方法により測定できる。
【0044】
特に本組成物の接着性を有効に生かすためには、PET等の熱可塑性樹脂製の基板(基材)上に未硬化の本組成物を接触硬化させて両者を一体化した成型物を得る方法などが好ましい。
【0045】
また、得られたナノインプリント用マスター材料、曲面印刷用パッド材、オフセット印刷用ブランケット材、3Dプリンタ用形状形成材等の版材に使用されるシリコーン硬化物の膨張防止性能としては、硬化前後の線収縮率を測定し、この変化がより小さいことが好ましく、本発明の組成物の場合、そのJIS−K6294に基づく線収縮率は通常0.5%以下(0〜0.5%)、特に0.3%以下(0〜0.3%)である。
【0046】
本発明の付加硬化型自己接着性シリコーンゴム組成物(紫外線硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物)は、硬化物(シリコーンゴム)の硬さが高い場合においてもPET等の熱可塑性樹脂製の基板(基材)との接着が可能なものであり、硬化物のゴム硬度(JIS A硬度)が40超、特には50超の高硬度においても、上述した各種有機樹脂に安定的に優れた接着性を発現し得るものである。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限られるものではない。なお、粘度は25℃における測定値であり、部とは質量部である。
【0048】
以下の例で(A)〜(D)成分の内容と略号は以下のとおりである。なお、Viはビニル基を、Meはメチル基を表す。
(A−1)成分:
a−1:粘度1,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン。ビニル基含有量0.000125mol/g
a−2:粘度5,000mPa・sの分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン。ビニル基含有量0.00006mol/g
(A−2)成分:
a−3:Me
3SiO
1/2単位、ViMe
2SiO
1/2及びSiO
2単位からなる樹脂質共重合体[(Me
3SiO
1/2単位+ViMe
2SiO
1/2単位)/SiO
2単位=0.85(モル比)、ビニル基含有量0.0009mol/g、重量平均分子量3,800]
(B)成分:
両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度64、SiH基量0.0112mol/g)
(C)成分:
ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金錯体の酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル溶液(濃度1質量%)
(D)成分:
MeSiO
3/2単位、Me
2ViSiO単位からなり、アルケニル基を0.0054mol/g含有する粘度24mPa・sのオルガノポリシロキサンオリゴマー。Me
2ViSiO単位/MeSiO
3/2単位=1/1(モル比)
【0049】
[実施例1]
(A)成分として、(a−1)成分14部と、(a−2)成分60部と、(a−3)成分26部とを用い、これに、(B)成分5.0部、(C)成分0.48部、(D)成分0.61部を均一に混合して、紫外線硬化性オルガノポリシロキサン組成物[(A)成分と(D)成分中のアルケニル基の合計に対する(B)成分中のSiH基のモル比[H/Vi];約1.9、25℃でのBL型粘度計、ローター4番、60rpmでの測定結果が2.7Pa・s]を調製した。
上記組成物を厚さ2mmの型に流し、室温(25℃)で42mW/cm
2,48秒間(=2,000mJ/cm
2)の紫外線照射条件で硬化させた。紫外線照射後、室温(25℃)で1時間静置後脱型し、JIS−K6249に基づき、硬さを測定した。
また、PET基板上に上記組成物を厚さ2mmの型に流し、室温(25℃)で42mW/cm
2,48秒間(=2,000mJ/cm
2)の紫外線照射条件で硬化させた。紫外線照射後、室温(25℃)で1時間静置後脱型し、厚さ2mmのPETとの積層フィルムを成型した。一体化した成型物を手で剥がし、凝集破壊率(ゴム破壊率)によって接着性を評価した。なお、凝集破壊率(ゴム破壊率)とは、一体化した上記成型物を手で剥がした際の、接着面積全体に対して試料が界面剥離することなく凝集破壊(ゴム破壊)した面積の比率(%)を測定したものである。以上の結果を表1に示した。
【0050】
[比較例1]
(A)成分として、(a−1)成分14部と、(a−2)成分60部と、(a−3)成分26部とを用い、これに、(B)成分5.0部、(C)成分0.48部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.02部、塩化白金酸の2−エチルヘキサノール溶液(Pt濃度1質量%)0.1部を均一に混合して、熱硬化性シリコーン組成物[(A)成分中のアルケニル基に対する(B)成分中のSiH基のモル比[H/Vi];約1.9、25℃でのBL型粘度計、ローター4番、60rpmでの測定結果が2.9Pa・s]を調製した。
このシリコーンゴム組成物の硬度、及び凝集破壊率を実施例1と同様に測定した。以上の結果を表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
[試験、測定、評価方法]
シリコーン硬化物の硬さの試験、測定、評価方法は下記の通りである。
硬化性シリコーン組成物を42mW/cm
2,48秒間(=2,000mJ/cm
2)の紫外線照射条件で硬化させ、厚さ2mmの硬化シートを作製した。このシリコーン硬化物を3枚重ね、その硬さをJIS K6253に規定のタイプAデュロメーターにより測定した。