特許第6156978号(P6156978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6156978-強還元性海塩の製法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6156978
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】強還元性海塩の製法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/40 20160101AFI20170626BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20170626BHJP
   C01D 3/04 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   A23L27/40
   A23L33/16
   C01D3/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-55996(P2013-55996)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-180235(P2014-180235A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(73)【特許権者】
【識別番号】502061596
【氏名又は名称】ジュゲン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100077263
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 純博
(72)【発明者】
【氏名】森口 哲次
(72)【発明者】
【氏名】小森 拓也
(72)【発明者】
【氏名】神尾 幸徳
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−147933(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0097650(KR,A)
【文献】 国際公開第03/024244(WO,A1)
【文献】 特開2010−273661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水塩100重量部と多孔質の竹炭10重量部以上とからなる配合物又は混合物を、空気遮断し、800℃〜1200℃で加熱することを特徴とする、塩分濃度20%の水溶液における酸化還元電位(ORP)値が−300mV以下の値を呈する強還元性海塩の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水から得られた強い還元力を有する塩製法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常市販されている塩の酸化還元電位(ORP/Oxidation−Reduction Potential)を計測すると、120〜390mVの範囲の酸化力を示す。しかし、特殊な岩塩や特定の方法で加熱処理した塩は、ORP値がマイナス、即ち還元力を示すものがあり、これらは還元性塩として、健康食品や美容・化粧品等として利用されている。
【0003】
例えば、ヒマラヤの岩塩や韓国の伝統製法竹塩等は還元性塩として知られている。ヒマラヤの岩塩は天然のままで還元性あるが、韓国の竹塩は、天然の海塩を輪切りにした竹に入れ、周囲を黄土で満たした後加熱する、という方法で古くから製造されているものである。そして、これらの還元性塩の還元性の指標としてのORP値は、−150mV〜−200mV程度で、比較的低いものであることが知られている。また、韓国の竹塩のごとき製造方法では長時間を要し、取得率も平均60%程度と低いものである。
【0004】
皮膚疾患の改善や美容、あるいは口腔衛生の改善のために、竹塩を用いることも提案されている(例えば、特許文献1〜3)。また、竹筒に詰めた塩を、竹チップを投入した還元雰囲気炭化炉で蒸し焼きする方法で、竹炭の微粒子を含む還元性の竹炭塩を製造する方法も提案されている(特許文献4)。しかし、かかる方法で得られた竹炭塩も、ORP値が十分に低いものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−76510号公報
【特許文献2】特開平9−291015号公報
【特許文献3】特開2008−17820号公報
【特許文献4】特開2010−273661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、従来の竹からの炭化反応に附随した生産法では、極めて時間がかかり、炭化乾留時の効果が全く反映されないことを改善し、工業的に有利な製法を開発することを試みた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、還元性付与に多孔質竹炭を用いることに着目し、海水塩(海洋塩)に強い還元性を付与されたものを木質類の炭化反応に頼ることなく作成することに成功した。
【0008】
【0009】
本発明の塩分濃度20%の水溶液における酸化還元電位(ORP)値が、−300mV以下の値を呈する強還元性海塩は、海水塩100重量部と多孔質の竹炭10重量部以上とからなる配合物又は混合物を、空気遮断し、800〜1200℃で加熱することによって得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強還元性海塩を、比較的短い作成時間及び加熱時間で得ることができ、且つ、80%以上の高収率で作成することができる。そして、得られた還元性海塩のORP値は、20%水溶液で−300mV以下に及び、還元力の持続性も極めて良好である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例で用いた炭化容器の概略説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の強還元性海塩は、塩分濃度20%の水溶液における酸化還元電位(ORP)値が、−300mV以下、好ましくは−400mV以下の値を呈するものである。そして、かかる強還元性海塩は、海水から得られる海水塩100重量部と多孔質の竹炭10重量部以上とからなる配合物又は混合物を、空気遮断し、800〜1200℃、好ましくは800〜1000℃で加熱することによって得られる。
【0013】
本発明の強還元性海塩は、海水塩と多孔質の竹炭を、重量比で10対1以上の比率で、炭化装置や電気還元炉等の中に入れ、空気を遮断して、800〜1200℃に加熱することによって得られる。本発明では、還元剤として従来知られていた竹ではなく多孔質の竹炭を使用するので、還元力が強く、かつ、海水塩と固体の炭粉との接触面積が増加するので、還元反応が非常に進みやすくなり、それらの結果、比較的短時間にORP値の低いものが得られるという特徴がある。
【0014】
本発明において原料として用いる海水塩は、海水から得られるいわゆる粗塩を意味し、市販されている食用等の精製塩とは異なる。
【0015】
本発明において用いられる多孔質の竹炭とは、竹を高温〜中温(400〜700℃)で人為的に炭化させた微細孔が多数存在する炭である。微細孔はその半径が15〜27nmのものであり、通常の木炭などに比べて小さいものである。竹炭の炭化温度によってその表面積は異なり、通常、竹炭1g中の孔の表面積は、炭化温度200℃で1.7m、800℃で724.8m程度であることがられている。本発明においては、400〜700℃で炭化させた多孔質の竹炭が好ましく用いられる。
【0016】
本発明の強還元性海塩は、海水塩100重量部と多孔質の竹炭10重量部以上とからなる配合物又は混合物を、空気遮断し、800〜1200℃、好ましくは800〜1000℃で加熱・炭化することによって得られる。空気を遮断して加熱するための装置は、特別なものである必要はなく、空気を遮断して、配合物又は混合物を焼成でき、かつ、加熱温度を容易にコントロールできるものであれば、どのようなものでもかまわない。
【0017】
海水塩と多孔質の竹炭の配合又は混合割合は、海水塩100重量部当たり多孔質の竹炭が10重量部以上、好ましくは20〜50重量部である。
【0018】
本発明において、海水塩と多孔質の竹炭の配合物又は混合物は、空気遮断して、通常の単槽釜又は二重槽釜からなる炭化容器で電気還元炉に配置し焼成される。800℃以上に加熱することによって、多孔質竹炭の加熱によって原子状炭素や一酸化炭素ガスを発生させつつ、塩を溶融還元し、高収率(90%程度にもなる)で、塩水が低濃度でもORP値が−300mV以下の強還元塩を得ることができる。加熱時間は4〜9時間が適当である。
【0019】
炭化容器の材質・形状は、特に限定されるものではないが、例えば、外容器の中に内容器が配置された二重容器(2重槽釜)が適当である。この場合、外容器は銅製又はステンレス製のものが好ましく、内容器としては、炭化ケイ素製、アルミナ製、セラミック製、又は素焼き陶磁器製のものが好ましく用いられる。
【0020】
化学的には、市販の純粋なNaCl塩は還元されないが、海水塩には、硫酸塩・硝酸塩などが含まれており、これらも本発明の方法で還元され、例えば、SO→SO→Sなど複雑な複合還元性塩になっている還元塩が得られるものと考えられる。
【0021】
本発明の還元力のある塩は、酸化還元電位測定計で大きなマイナス値を示す還元性の塩であるから、体表の皮膚や毛根から、酸化すると悪臭を発する分泌皮脂の酸化を防止するものと考えられる。また、生体内あるいは食品中のフリーラジカル捕促効果に優れているので、人の美容や健康に寄与するものと考えられる。特に老化や疾病の元凶である体内で発生する活性酸素(フリーラジカル)の捕促効果によって、人の健康増進を図ることができるとも言われている。以下、実施例により本発明を詳述する。
【実施例1】
【0022】
炭化容器としては、図1に示したようなものを用いた。蓋付きのセラミック製あるいはSUS316L製の外容器1の内部に、上部は開口した銅製の内容器2を入れ、両容器の隙間には竹炭3を配置し、海水塩を内容器に入れ、全体を加熱炉(図示せず)中に置き900℃で5時間加熱した。なお、内容器の側壁と底面には、必要に応じてガス透過性の小孔を多数開けておいた。なお、竹炭の配置の位置や状態は特に限定されるものではないが、一部を内容器に配置しておくとより効率的ではある。
【0023】
佐賀県産及び沖縄産の海洋塩と多孔質高温〜中温竹炭を、適切な比率の小型の炭化試験装置内に入れ空気は遮断し、窒素を150ml/分で流しながら、所定温度で6時間、多孔質竹炭の加熱によって原子状炭素や一酸化炭素ガスを発生させつつ塩を溶融還元した。生成したすべての還元塩で収率は、80〜90%程度で良好で、それらの還元性ORP値(20%及び1%水道水溶液)測定を行い、その還元性の強度と持続性について測定し、結果を表1(佐賀県産)と表2(沖縄産)に示した。比較のために示した水道水は、微量の酸化性の塩素を含んでいるために、約600mVのORP値(pH=7.6)を示していた。
【0024】
表より、800〜1200℃で塩と炭の比が4:1以上の場合に、還元力の優れた還元塩が得られていることが分かる。また、ORP値が、溶解直後と7時間又は100時間放置した後でも、余り変わらないことから、本発明の還元塩の還元力の持続力も優れていることが分かる。なお、pHとORP値の上段は溶解直後の測定値で、下段は溶解7時間(塩分濃度1%のとき)又は100時間(塩分濃度20%のとき)後の測定値である。また、海水塩は、前処理として100℃で約12時間、予備乾燥したものを使用した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の製法によって得られる塩は、還元性食品、栄養補助食品、入浴剤、石鹸添加剤、皮膚洗浄剤、食品保存剤等に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 外容器(蓋付)
2 内容器
3 竹炭
4 海水塩
図1