特許第6157188号(P6157188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6157188半導体装置、電池監視装置および過電流遮断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157188
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】半導体装置、電池監視装置および過電流遮断方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/087 20060101AFI20170626BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170626BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   H02H3/087
   H02J7/00 S
   H02H7/18
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-85100(P2013-85100)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-207818(P2014-207818A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩二
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−318781(JP,A)
【文献】 特開平05−152517(JP,A)
【文献】 特開平06−197445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/087
H02H 7/18
H02J 7/00
H01L 27/04
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御端子に供給される制御電圧に応じてオンオフする第1のスイッチング素子を含む第1の電流経路と、
第2の制御端子に供給される制御電圧に応じてオンオフし、前記第1のスイッチング素子がオン状態からオフ状態に移行する制御電圧においてオン状態を維持する第2のスイッチング素子を含み、且つ前記第1の電流経路に並列に接続された第2の電流経路と、
前記第2の電流経路に流れる電流の大きさに応じて前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子のうち、前記第1のスイッチング素子がオン状態からオフ状態に移行するように前記第1の制御端子および前記第2の制御端子に供給する制御電圧を変化させる制御回路と、
を含む半導体装置。
【請求項2】
前記第2のスイッチング素子のオン抵抗は、前記第1のスイッチング素子のオン抵抗よりも大である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の電流経路は、前記第2のスイッチング素子に直列接続された第2の抵抗素子を含む請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の電流経路は、前記第1のスイッチング素子に直列接続された第1の抵抗素子を含み、
前記第2の抵抗素子の抵抗値は、前記第1の抵抗素子の抵抗値よりも大である請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第2の抵抗素子の端子間に生じる電位差に応じてオン状態となる第3のスイッチング素子を含む請求項3または4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第3のスイッチング素子は、NPNトランジスタにより構成される請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第3のスイッチング素子は、MOSFETにより構成される請求項5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記制御回路は、前記第2の抵抗素子の端子間に生じる電位差を増幅して前記第3のスイッチング素子に供給する増幅器を更に含む請求項5乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1および第2の電流経路がバッテリの充放電経路を形成する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置を含むバッテリ監視装置。
【請求項10】
電流を、第1の制御端子に供給される制御電圧に応じてオンオフする第1のスイッチング素子を含む第1の電流経路と、第2の制御端子に供給される制御電圧に応じてオンオフし、前記第1のスイッチング素子がオン状態からオフ状態に移行する制御電圧においてオン状態を維持する第2のスイッチング素子を含み且つ前記第1の電流経路に並列に接続された第2の電流経路と、に分流し、前記第2の電流経路に流れる電流の大きさに応じて前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子のうち、前記第1のスイッチング素子がオン状態からオフ状態に移行するように前記第1の制御端子および前記第2の制御端子に供給する制御電圧を変化させる過電流遮断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路内に流れる過電流を遮断する過電流保護回路を備えた半導体装置、電池監視装置および過電流遮断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路内に流れる過電流を検出してこれを遮断する過電流保護回路を有する半導体装置としては、以下に記載のものがある。例えば特許文献1には、負荷をスイッチングする第1のMOSFETと、第1のMOSFETとドレイン及びゲートが共通に接続された第1のMOSFETよりもセル数の小さいカレントミラー用の第2のMOSFETと、第1のMOSFETのソースと第2のMOSFETのソース間に接続された検流抵抗と、ドレインが第1及び第2のMOSFETのゲートに接続され、ゲートが検流抵抗と第2のMOSFETのソースとの接続点に接続され、ソースが第1のMOSFETのソースに接続された金属ゲートFET又は接合型FETと、を備えた半導体装置が開示されている。
【0003】
一方、特許文献2には、保護対象となる主半導体装置の主電流に対応した電流が流れるモニタ用半導体装置と、オン状態で主半導体装置のゲートに印加される電圧の分圧回路を形成する、動作点の互いに異なる複数のスイッチング素子と、各スイッチング素子のゲートに接続され且つモニタ用半導体装置に電流が流れることによって各スイッチング素子のゲートに電圧を印加する抵抗と、を含む短絡保護回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−318781号公報
【特許文献2】特開平5−152517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電流経路上に過電流が流れた場合に、過電流を遮断する従来の過電流保護回路は、例えば、電流経路上に設けられ且つ過電流の非検出状態においてオン状態とされるスイッチング素子と、該スイッチング素子に直列に接続された電流検出抵抗と、該電流検出抵抗の端子間の電位差が所定値に達したときに該スイッチング素子をオフ状態に制御する制御回路と、含んで構成される。このような構成の過電流保護回路によれば、過電流によってスイッチング素子がオフ状態とされると、過電流が完全に遮断されるので、電流検出抵抗の端子間の電位差はなくなる。これにより、制御回路はスイッチング素子のオフを解除し、スイッチング素子は再びオン状態となる。その結果、電流経路上には再び過電流が流れ、スイッチング素子は再びオン状態となる。そして、このような動作が繰り返され、最終的には、平衡状態となって電流経路上には一定の電流が流れる。このように、従来の過電流保護回路の構成によれば、過電流の検出時において、スイッチング素子がオンオフを繰り返す発振状態となってしまうという問題があった。上記特許文献2に記載の技術によれば、負荷短絡時において複数の短絡保護回路を順次動作させることにより発振波形をなめらかにすることができる、とされているが、主半導体装置とモニタ用半導体装置のオフ動作が連動するものと考えられるので、上記の発振の問題を解決することはできない。
【0006】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、過電流検出時における発振を防止することができる半導体装置、電池監視装置および過電流遮断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る半導体装置は、第1の制御端子に供給される制御電圧に応じてオンオフする第1のスイッチング素子を含む第1の電流経路と、第2の制御端子に供給される制御電圧に応じてオンオフし、前記第1のスイッチング素子がオン状態からオフ状態に移行する制御電圧においてオン状態を維持する第2のスイッチング素子を含み、且つ前記第1の電流経路に並列に接続された第2の電流経路と、前記第2の電流経路に流れる電流の大きさに応じて前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子のうち、前記第1のスイッチング素子がオン状態からオフ状態に移行するように前記第1の制御端子および前記第2の制御端子に供給する制御電圧を変化させる制御回路と、を含む。
【0008】
また、本発明に係る電池監視装置は、前記第1および第2の電流経路がバッテリの充放電経路を形成する上記の半導体装置を含んでいる。
【0009】
また、本発明に係る過電流遮断方法は、電流を、第1の制御端子に供給される制御電圧に応じてオンオフする第1のスイッチング素子を含む第1の電流経路と、第2の制御端子に供給される制御電圧に応じてオンオフし、前記第1のスイッチング素子がオン状態からオフ状態に移行する制御電圧においてオン状態を維持する第2のスイッチング素子を含み且つ前記第1の電流経路に並列に接続された第2の電流経路と、に分流し、前記第2の電流経路に流れる電流の大きさに応じて前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子のうち、前記第1のスイッチング素子がオン状態からオフ状態に移行するように前記第1の制御端子および前記第2の制御端子に供給する制御電圧を変化させる、というものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る半導体装置、電池監視装置および過電流遮断方法によれば、過電流検出時における発振を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】比較例に係る電池監視ICを含む電池パックの構成を示す図である。
図2】比較例に係る電池監視ICの動作を示すタイムチャートである。
図3】本発明の実施形態に係る電池監視ICを含む電池パックの構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る電池監視ICを構成する第1および第2のFETの特性を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る電池監視ICの動作を示すタイムチャートである。
図6】本発明の他の実施形態に係る電池監視ICの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する前に、本発明の比較例に係る半導体装置について説明する。
【0013】
図1は、本発明の比較例に係る過電流保護機能を有する半導体装置である電池監視IC10xを備えた電池パック100xの構成を示す図である。電池パック100xは、充電を行うことにより繰り返し使用することが可能な二次電池20と、二次電池20の正極側および負極側にそれぞれ接続された正極端子51および負極端子52と、二次電池20の各端子電圧を監視するとともに、二次電池20における充電電流および放電電流を監視する半導体集積回路によって構成される電池監視IC10xと、を含んでいる。
【0014】
電池監視IC10xは、負極端子52と二次電池20の負極との間において電流経路を形成する、互いに直列に接続された、充電電流制御用のFET(Field Effect Transistor)12と、放電電流制御用のFET13と、電流検出抵抗14と、を含んでいる。また、電池監視IC10xは、電流検出抵抗14の端子間の電位差に応じてFET12およびFET13のオンオフを制御する制御回路11を含んでいる。制御回路11は、FET12のゲートに接続された充電制御端子CFETと、FET13のゲートに接続された放電制御端子DFETと、FET13のソースと電流検出抵抗14との接続点に接続された電流検出端子ISと、電流検出抵抗14と二次電池20の負極との接続点に接続されたグランド端子GNDと、二次電池20の各出力端子に接続された電圧検出端子VC1、VC2およびVC3と、を有している。図1には、電池パック100xの正極端子51と負極端子52との間で短絡(負荷短絡)が生じた場合が示されている。
【0015】
図2は、図1に示すような負荷短絡が生じた場合における電池監視IC10xの動作を示すタイムチャートである。
【0016】
電池監視IC10xの充電電流制御用のFET12および放電電流制御用のFET13は、過電流の非検出状態において、共にオン状態が維持される。電池パック100xの正極端子51と負極端子52との間で短絡(負荷短絡)が生じた場合には、図1において破線矢印で示す経路に短絡電流が流れる。これにより、電流検出抵抗14の端子間に電位差が発生し、この電位差が電流検出電圧として制御回路11の電流検出端子ISに入力される。制御回路11は、電流検出端子ISに入力される電圧が所定の過電流保護作動閾値Tに達すると、放電制御端子DFETから出力する制御電圧の電圧レベルをハイレベルからローレベルに遷移させる。これにより、放電電流制御用のFET13はオフ状態となり、短絡電流が遮断される。短絡電流が遮断されると、検出端子ISに入力される電流検出電圧が、過電流保護作動閾値Tよりも小さくなるので、制御回路11は、放電制御端子DFETから出力する制御電圧の電圧レベルをローレベルからハイレベルに遷移させる。これにより、放電電流制御用のFET13は再びオン状態となって短絡電流が再び経路上を流れる。このように、比較例に係る電池監視IC10xの構成によれば、負荷短絡が生じた場合に、放電電流制御用のFET13がオンオフを繰り返して発振を生じる結果となる。
【0017】
[第1の実施形態]
図3は、本発明の第1の実施形態に係る過電流保護機能を有する半導体装置である電池監視IC10を備えた電池パック100の構成を示すブロック図である。なお、図3において、上記した比較例に係る電池パック100xと同一の構成要素については同一の参照符号を付与している。
【0018】
本実施形態に係る電池パック100は、充電を行うことにより繰り返し使用することが可能な二次電池20と、二次電池20の正極側および負極側にそれぞれ接続された正極端子51および負極端子52と、二次電池20の各端子電圧を監視するとともに、二次電池20における充電電流および放電電流を監視する半導体集積回路によって構成される電池監視IC10と、を含んでいる。
【0019】
電池監視IC10は、負極端子52と二次電池20の負極との間において第1の電流経路を形成する、互いに直列に接続された充電電流制御用のFET12と、放電電流制御用のFET13(以下、第1のFET13と称する)と、電流検出抵抗14(以下、第1の抵抗素子14と称する)と、を含んでいる。また、電池監視IC10は、上記第1の電流経路に並列接続された第2の電流経路を形成する、互いに直接接続された放電電流制御用のFET15(以下、第2のFET15と称する)と、電流検出抵抗17(以下、第2の抵抗素子17と称する)と、を含んでいる。第2のFET15のゲート(第2の制御端子)は、第1のFET13のゲート(第1の制御端子)に接続されている。なお、本実施形態においては、第1のFET13および第2のFETをNチャネルMOSFETで構成する場合を例示しているが、これらをPチャネルMOSFETで構成してもよいし、バイポーラトランジスタ(NPNトランジスタまたはPNPトランジスタ)で構成してもよい。第1のFET13は、本発明における第1のスイッチング素子に対応し、第1のFET13のゲートは、本発明における第1の制御端子に対応する。また、第2のFET15は、本発明における第2のスイッチング素子に対応し、第2のFET15のゲートは本発明における第2の制御端子に対応する。
また、電池監視IC10は、第1の抵抗素子14の端子間に生じる電位差に応じて充電電流制御用のFET12、放電電流制御用の第1のFET13および第2のFET15のオンオフを制御する制御回路11を含んでいる。制御回路11は、充電電流制御用のFET12のゲートに接続された充電制御端子CFETと、放電制御用の第1のFET13のゲートおよび第2のFET15のゲートにそれぞれ抵抗素子18を介して接続された放電制御端子DFETと、第1のFET13のソースと第1の抵抗素子14との接続点に接続された電流検出端子ISと、第1の抵抗素子14と二次電池20の負極との接続点に接続されたグランド端子GNDと、二次電池20の各出力端子に接続された電圧検出端子VC1、VC2およびVC3と、を有している。
【0020】
また、電池監視IC10は、第2の抵抗素子17の端子間に生じる電位差が所定の大きさになったときに、第1のFET13と第2のFET15のゲートに供給される制御電圧を、これらのFETがオフする方向(低下する方向)に制御するスイッチング素子16を含んでいる。本実施形態では、スイッチング素子16は、NPNトランジスタで構成されている。このNPNトランジスタのベースは第2のFET15のソースと第2の抵抗素子17との接続点に接続され、エミッタは第2の抵抗素子17の他方の端部に接続され、コレクタが第1のFET13のゲートおよび第2のFET15のゲートにそれぞれ接続されている。すなわち、第2の電流経路に流れる電流が所定の大きさに達したときに、スイッチング素子16がオン状態となって、第1のFET13および第2のFET15のゲートに供給される制御電圧を低下させる構成となっている。例えば、スイッチング素子16は、ベース・エミッタ間の電圧が0.7Vとなるとオン状態となる特性を有している。なお、スイッチング素子16を、NチャネルMOSFETまたはPチャネルMOSFETで構成することも可能である。制御回路11およびスイッチング16は、本発明における制御回路に対応する。
【0021】
第1のFET13および第2のFET15は、例えばNチャネルMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)により構成されおり、第2のFET15は、第1のFET13よりも大きいオン抵抗値を有している。また、第2の抵抗素子17は、第1の抵抗素子14よりも大きい抵抗値を有している。これにより、第2の電流経路に流れる電流の大きさは、第1の電流経路を流れる電流の大きさよりも小さくなる。本実施形態では、第1の電流経路上に設けられる第1のFET13のオン抵抗が9.5mΩ、第1の抵抗素子14の抵抗値が1mΩとされ、第2の電流経路上に設けられる第2のFET15のオン抵抗が0.5Ω、第2の抵抗素子17の抵抗値が10Ωとされている。すなわち、第1の電流経路上の合成抵抗値は10.5mΩとされ、第2の電流経路上の合成抵抗値は、10.5Ωとされている。この場合、第1の電流経路上を流れる電流と、第2の電流経路上を流れる電流の比率は、1000:1となる。なお、各素子の抵抗値や第1の電流経路と第2の電流経路の電流の比率は例示であり、上記したものに限定されるものではない。
【0022】
また、第1のFET13と第2のFET15は、互いに異なる動作特性(VGS−IDS特性)を有している。図4は、第1のFET13および第2のFET15のゲート・ソース間電圧VGSとドレイン・ソース間電流IDSとの関係(VGS−IDS特性)の一例を示す図である。図4に示すように、第2のFET15は、第1のFET13よりも小さいゲート・ソース間電圧でオン状態となることができる。換言すれば、第2のFET15は、第1のFET13がオフ状態となるゲート・ソース間電圧VGSでもオン状態を維持することが可能である。
【0023】
図3には、電池パック100の正極端子51と負極端子52との間で短絡(負荷短絡)が生じた場合が示されている。図5は、図3に示すような負荷短絡が生じた場合における本実施形態に係る電池監視IC10の動作を示すタイムチャートである。
【0024】
電池監視IC10の充電電流制御用のFET12、放電電流制御用の第1のFET13および第2のFET15のゲートには、過電流の非検出状態において、制御回路11から例えば5Vの制御電圧が供給され、これらのFETは全てオン状態が維持される。
【0025】
電池パック100の正極端子51と負極端子52との間で短絡(負荷短絡)が生じた場合には、図3において破線矢印で示す経路に短絡電流が流れる。負極端子52から流れ込む放電電流(短絡電流)は、第1のFET13のドレインと、第2のFET15のドレインとの接続点であるノードAにおいて、第1の電流経路と第2の電流経路に分流する。
【0026】
第2の電流経路上を流れる放電電流(短絡電流)iが約70mAに達すると、第2の抵抗素子17(抵抗値10Ω)の端子間の電位差は0.7Vとなる。これにより、スイッチング素子16のベース・エミッタ間に0.7Vの電圧が印加されることとなるので、スイッチング素子16がオン状態となる。なお、第2の電流経路上を流れる放電電流(短絡電流)が70mAに達したとき、第1の電流経路上を流れる放電電流(短絡電流)iは70Aに達する(電流比1000:1)。スイッチング素子16がオン状態となると、ノードBにおいて電圧降下が生じ、制御回路11から抵抗素子18を介して第1のFET13および第2のFET15のゲートに供給される制御電圧は5Vから例えば1.8Vにまで低下する。
【0027】
図4に示すように、ゲート・ソース間電圧VGSが1.8Vとなった場合には、第1のFET13がオフ状態となる一方、第2のFET15はオン状態を維持する。すなわち、第1の電流経路においては、短絡電流が遮断される一方、第2の電流経路においては、短絡電流が継続して流れる。かかる状態は、正極端子51と負極端子52との間で生じた短絡が解消されるまで維持される。従って、放電電流(短絡電流)の大部分が流れる第1の電流経路において電流の遮断状態が維持されるとともに、短絡電流が第2のFET15のオン抵抗および第2の抵抗素子17によって制限される。
【0028】
このように、本実施形態に係る半導体装置である電池監視IC10によれば、第2の電流経路上の合成抵抗値は、第1の電流経路上の合成抵抗値よりも大きいので、短絡電流の大部分を第1の電流経路に流すことができる。また、第2の抵抗素子17の抵抗値を第1の抵抗素子14の抵抗値よりも大きくすることで、短絡による過電流が生じたときの検出感度を高めることが可能となる。更に、第2のFET15は、第1のFET13よりも小さいゲート・ソース間電圧でオン状態となることができるので、第1の電流経路を遮断しつつ、第2の電流経路に継続して短絡電流を流すことが可能となる。これにより、第1の電流経路の遮断後においても、第2の電流経路上において過電流を継続して検出することが可能となるので、比較例に係る電池監視ICにおける発振の問題を解消することが可能となる。
【0029】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態に係る過電流保護機能を有する半導体装置である電池監視IC10aを備えた電池パック100aの構成を示すブロック図である。なお、図6において、上記した第1の実施形態に係る電池パック100と同一の構成要素については同一の参照符号を付与している。
【0030】
上記第1の実施形態に係る電池監視IC10においては、スイッチング素子16のベース・エミッタ間に第2の抵抗素子17が直接接続されるものであった。これに対して、第2の実施形態に係る電池監視IC10aにおいては、スイッチング素子16のベースと、第2のFET15のソースと第2の抵抗素子17の接続点との間に非反転増幅回路19が設けられている。
【0031】
非反転増幅回路19は、OPアンプ(演算増幅器)19a、抵抗素子19b(抵抗値R1)および抵抗素子19c(抵抗値R2)を含んで構成されている。OPアンプ19aの非反転入力端子は、第2のFET15のソースと第2の抵抗素子17の接続点に接続され、OPアンプ19aの出力端子は、スイッチング素子16のベースに接続されている。抵抗素子19aおよび19bは、OPアンプ19aの出力端子とグランド端子GNDとの間において直列接続されている。OPアンプ19aの反転入力端子は、抵抗素子19bと19cの接続点に接続されている。このように、非反転増幅回路19を設けることにより、第2の抵抗素子17と第2のFET15のソースとの接続点に生じる電圧が(1+R2/R1)倍されてスイッチング素子16のベースに印加される。
【0032】
本実施形態に係る電池監視IC10aの負荷短絡発生時における基本的な動作は、上記した第1の実施形態に係る電池監視IC10と同様である。第1の実施形態に係る電池監視IC10においては、NPNトランジスタにより構成されるスイッチング素子16がオン状態となるためには、第2の抵抗素子17の端子間に生じる電圧が0.7V以上となることが必要とされるので、第1の電流経路が遮断に至る過電流の大きさの調整(すなわち、過電流保護が作動する電流値の調整)が困難な場合がある。一方、第2の実施形態に係る電池監視IC10aによれば、第2の抵抗素子17の端子間に生じる電圧を抵抗素子19bと抵抗素子19cの抵抗比に応じた増幅率で増幅してスイッチング素子16に供給することができるので、過電流保護が作動する電流値の調整を容易に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
10、10a 電池監視IC(半導体装置)
11 制御回路
13 第1のFET
14 第1の抵抗素子
15 第2のFET
16 スイッチング素子
17 第2の抵抗素子
20 二次電池
19 非反転増幅回路
100 電池パック
図1
図2
図3
図4
図5
図6