【実施例】
【0033】
図1は、本発明に係るプローブ装置及びプローブ方法を適用した、ウェーハ上のチップを検査するシステムの概略構成図である。同図において、プローバ装置10は、基台11と、その上に設けられた移動ベース12と、Y軸ステージ13と、X軸ステージ14と、Z軸ステージ15と、Z軸移動台16と、θ回転部17と、チャックプレート18と、プローブの位置を検出する針位置合わせカメラ19と、支柱20及び21と、ヘッドステージ22と、図示していない支柱に設けられたアライメントカメラ23と、ヘッドステージ22に設けられたカードホルダ24と、そのカードホルダ24に取り付けられるプローブカード25と、制御部27等により構成されている。
【0034】
前記プローブカード25には、検査する半導体チップ上に形成された電極パッドの位置に対応して配置された、カンチレバーやスプリングピン等の複数のプローブ26が設けられている。このプローブカード25は、検査するデバイスに応じて交換される。
【0035】
前記移動ベース12と、Y軸ステージ13と、X軸ステージ14と、Z軸ステージ15と、Z軸移動台16と、θ回転部17は、チャックプレート18を3軸方向及びZ軸の回りに回転する移動・回転機構を構成しており、ステージ移動制御部33により制御される。そのステージ移動制御部33は、制御部27により制御される。また、移動・回転機構については広く知られているので、ここでは説明を省略する。
【0036】
前記プローブ26は、バネ特性を有している。また、プローブ26は、電気的特性の検査を行うときに、電極パッドがオーバドライブの状態で接触されると、プローブ26の先端が電極パッドの表面にめり込み、その電極パッドの表面にそれぞれ針跡を形成するようになっている。
【0037】
前記チャックプレート18は、
図3に示すように円板状に形成されている。また、
図1に示すように、チャックプレート18内には、そのチャックプレート18を高温または低温にするための冷却液が循環するヒータ・冷却液路28が設けられている。そのヒータ・冷却液路28内の冷却液の温度は、ヒータ・冷却液路28内のヒータに供給する電力を温度制御部29で制御することによりに調整される。なお、温度制御部29による制御は制御部27で制御される。これにより、チャックプレート18を、高温から低温の間の所望の温度に調整することができ、それに応じてチャックプレート18に保持されたウェーハWを所定の温度にして検査を行うことができるようになっている。
【0038】
また、チャックプレート18は、θ回転部17及びZ軸移動台16を介してZ軸ステージ35上に取り付けられている。そのチャックプレート18とθ回転部17との間には、3つの荷重センサ34が配設されている。これら3つの荷重センサ34は、
図3に示すように、三角点A、B、Cで結ばれる3箇所の位置に各々配設されて、θ回転部17上に配設したステージ部35でチャックプレート18を支えており、プローブ26からチャックプレート18に付与される荷重を検出して制御部27に入力できるようになっている。
【0039】
前記テスタ30は、テスタ本体31と、テスタ本体31に設けられたコンタクトリング32とを有する。前記プローブカード25には、各プローブ26に接続される端子が設けられており、コンタクトリング32はこの端子に接触するように配置されたスプリングプローブを有する。テスタ本体31は、図示していない支持機構により、プローバ10に対して保持される。
【0040】
前記アライメントカメラ23は、いわゆる光学顕微鏡であり、このアライメントカメラ23の下に位置されたウェーハW上の電極パッドの外形形状、ウェーハW上の回路パターン、及び、プローブ26と電極パッドとを接触させてできる電極パッド上の針跡に光を当てて撮像された画像データから、それぞれの位置情報などを制御部27に出力することができるようになっている。
【0041】
前記制御部27は、システム全体を決められた手順に従って制御をするものであり、主に各種演算等を行うCPU(中央処理装置)と、CPUで用いられるプログラムが記憶されたROM及びデータを一時記憶しておくRAMを有したメモリと、各種データの授受を行うインターフェース等とからなるマイクロコンピュータによって構成されている。
【0042】
ここで、チャックプレート18とθ回転部17との間に設けられた、三角点A、B、Cで結ばれる3箇所の位置にそれぞれ1個ずつ配設されている、3つの荷重センサ34につ
いて、その作用を説明する。その3つの荷重センサ34は、
図3に示すように、チャックプレート18の下面に当接して設けられており、θ回転部17に配設されたステージ部35を介してチャックプレート18を支えている。したがって、プローブ26とチャックプレート18とがオーバドライブ状態で当接され、プローブ26からチャックプレート18に付与されるコンタクト荷重は、三角点A、B、Cの各位置に配置されている3つの荷重センサ34で受けられる。
【0043】
また、コンタクト荷重は、A点に配置された荷重センサ34で検出された荷重WAと、
B点に配置された荷重センサ34で検出された荷重WBと、C点に配置された荷重センサ
34で検出された荷重WCの総和WT、すなわち(WA+WB+WC=WT=W0)となる。す
なわち、
図4の実験結果に示すように、Z軸ステージ15が上昇されてコンタクト荷重W0が変化すると、このコンタクト荷重W0の変化に伴って、A点に配置された荷重センサ34で検出された荷重WA、B点に配置された荷重センサ34で検出された荷重WB、C点に配置された荷重センサ34で検出された荷重WCもそれぞれ変化し、その総和WTもコンタクト荷重W0に比例して増加する。
【0044】
なお、
図4の場合では、チャックプレート18の全体がC点及びB点側へ傾いている場合である。したがって、このチャックプレート18の全体がC点及びB点側へ傾いている状態で、チャックプレート18にコンタクト荷重W0が付加されると、
図4に示す実験結
果のように、C点の荷重センサ34で検出される荷重WCと、B点の荷重センサ34で検
出された荷重WBは共にプラス側に変位し、A点の荷重センサ34で検出される荷重WAはマイナス側に変位する。そして、トータルとしては(WA+WB+WC=WT=W0)となる。
【0045】
したがって、従来装置で行っていたように、移動距離を基準としてオーバドライブ量を形成するのでは、プローバ装置10におけるプローブ26等の構造物の弾性変形によるコンタクト状態の変化の影響や、プローブ26等の構造物が熱膨張で変形し、各部材の距離が変わる場合には、その影響を受ける。しかも、本発明の実施例のように、コンタクト荷重により制御した場合では、プローブ26等における構造物の弾性変形によるコンタクト状態の変化や熱膨張による変形等により各部材の距離が変わる場合でも、同じコンタクト荷重W0でのコンタクトを実現できる。
【0046】
そして、ウェーハWにおける半導体チップ(電子デバイス)の検査を行う場合には、制御部27及びステージ移動制御部33の制御により、針位置合わせカメラ19がプローブ26の下に位置するようにZ軸移動台16を移動させ、針位置合わせカメラ19でプローブ26の先端位置を検出する。このプローブ26の先端位置の検出は、プローブカードを交換した時には必ず行う必要があり、プローブカード25を交換しない時でも所定個数のチップを測定するごとに適宜行われる。
【0047】
次に、ステージ18に検査するウェーハWを保持した状態で、ウェーハWがアライメントカメラ23の下に位置するように、Z軸移動台16を移動させ、ウェーハW上の電子デバイスの電極パッドの位置を検出する。なお、ここでは1チップの全ての電極パッドの位置を検出する必要はなく、幾つかの電極パッドの位置が検出される。
【0048】
図5は、本発明のプローブ装置におけるウェーハWとプローブ26をオーバドライブ状態で接触させて電気特性の検査を行う基本動作の一例を示すフローチャートである。
図5に示すように、本発明のプローブ装置によれば、ステップS1でアライメント動作を行い、ステップS2でアライメント動作の結果に基づいてプローブ26とウェーハWとの間に予め決められた接触荷重を掛けてなる接触動作を行う。
【0049】
接触動作実行時に、テスタ30からの電気的信号や導通情報、及び接触抵抗値などの物理的情報を得る。ここで良否判定のステップS3を行う。例えば、テスタ30が所定の信号を得られるか否か判定する。また、例えば、接触抵抗値が所定の状態であるか否かを判定する。
【0050】
また、別の方法として、この接触動作を終えた後、ウェーハWをアライメントカメラ23の下、すなわち検出位置に戻す。続いて、接触動作が終了したウェーハWの電極パッドの表面について、アライメントカメラ23を用いた針跡の観察によって良否判定のステップS3を行う。例えば針跡からプローブ26とウェーハWとの接触が所定の状態で行われているか否かを判定する。これらの良否判定によって、ここで、所望する接触が行われていないと判定された場合は、ステップS2に戻され、接触荷重WTを増加または減少させ
て再度接触動作が行われる。
【0051】
これに対して、所望する接触が行われたと判定された場合は、ステップS4へ移行し、この接触で行われた接触荷重の総和WT、すなわち(WA+WB+WC)を制御部27が記憶する。そして、以降は、この総和WTを、チャックプレート18上のウェーハWとプローブ
26とに加えるコンタクト荷重W0として、制御部26がステージ移動制御部33を介し
てZ軸移動台16を制御し、チャックプレート18をプローブ26側に上昇させて、チャックプレート18上のウェーハWとプローブ26との間にコンタクト荷重W0を掛けて検
査を行う。
【0052】
したがって、このようにオーバドライブ量を移動距離でなく、コンタクト荷重W0によ
り制御することで、ウェーハWとプローブカード25の平行誤差、及びプローバ装置における各構造物の弾性変形や熱膨張変形によるコンタクト状態の変化の影響等を受けることなく、常に最適なコンタクト状態を作り出すことができる。
【0053】
なお、ウェーハWとプローブ26をオーバドライブ状態で接触させるのは、チャックプレート18を上昇させてウェーハWをプローブ26に接触させる、あるいはプローブ26を下降させてウェーハWに接触させる、のいずれであってもよい。
【0054】
また、制御部26には、ウェーハWとプローブ26との間に付加されるコンタクト荷重が、制御部26内に記憶されているコンタクト荷重を越えて荷重オーバーとなっている場合、あるいは不足している場合に、その過不足を検出して、例えばランプやブザー等で警告を発生する手段を設けてもよい。このように、警告を発生する手段を設けた場合では、常に最適なオーバドライブ量を得て、最適なコンタクトを維持することができる。
【0055】
荷重の総和WTを一定にする制御の他に、各コンタクト位置それぞれにおいて、最適なコンタクトを行うことも出来る。例えば
図6に示すように、前記各X軸ステージ14、Y軸ステージ13で移動されて、前記プローブ26と接触された各コンタクト位置P1、P2、P3での荷重をそれぞれ記憶し、以降のウェーハWはその記録されたウェーハWの各コンタクト位置P1、P2、P3で荷重を再現するように接触させると、最適なコンタクト状態を維持することができる。
【0056】
また、制御部27は、基準となるウェーハWがプローブ26と接触された各コンタクト位置P1、P2、P3における各荷重を、プローブ26のバネ定数及び本数からなる針立て情報と共に記録し、以降のウェーハWはその記録されたウェーハWの各コンタクト位置P1、P2、P3の荷重を再現するように接触させると、針立て情報を加えて補正された荷重をコンタクト荷重W0として付加させ、更に精度の高い最適なコンタクト荷重を付与
することができる。
【0057】
また、コンタクトの荷重に水平方向成分があり、かつ、水平方向の荷重を管理する必要がある場合は、荷重センサを水平方向の荷重を検知する方向にも配置することで、測定可能になり、同様に荷重制御が可能になる。
【0058】
また、チャックプレート18とステージ部35との間に配置される荷重センサ34は、必ずしも3箇所の位置に設けずに、1箇所以上の位置に設けるようにしてもよい。
【0059】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。