特許第6157293号(P6157293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6157293タッチパネルおよびタッチパネルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6157293
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】タッチパネルおよびタッチパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20170626BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   G06F3/041 490
   G06F3/044 125
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-189799(P2013-189799)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-56068(P2015-56068A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】須田 具和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 明久
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 達巳
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正樹
(72)【発明者】
【氏名】榎田 吉朗
(72)【発明者】
【氏名】本間 裕章
(72)【発明者】
【氏名】松崎 淳介
(72)【発明者】
【氏名】大野 幸亮
【審査官】 間野 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/150668(WO,A1)
【文献】 特表2013−526741(JP,A)
【文献】 特開2013−127792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネル上に配置され、操作面に触って操作される静電容量方式のタッチパネルであって、
透明基板と、
前記透明基板の前記操作面の裏面側に、X方向に形成された複数のX電極と、前記X方向と直行するY方向に形成された複数のY電極と、
を有し、
前記複数のX電極と、前記複数のY電極が、
前記裏面側の同一面に形成された複数の透明電極と、
前記X電極と前記Y電極が絶縁部を介して互いに交差する交差部において、隣り合う前記X電極の透明電極もしくは隣り合う前記Y電極の透明電極のいずれかを立体的に接続するジャンパ線と、を有し、
前記ジャンパ線は、前記透明電極に接続する第一層と、該第一層に積層された第二層とを有し、
前記第一層が金属酸化膜からなり前記第二層が金属膜からなり、前記第一層と前記第二層の主たる金属が銅を含むものとされ、
前記第一層における可視光域での反射率が、前記第二層の反射率の半分以下であることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記第一層における比抵抗が前記第二層より高いことを特徴とする請求項1記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記第一層の膜厚が50nm以上、400nm以下とされてなることを特徴とする請求項1または2記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記第一層の比抵抗が1.0×10〜1.0×10μΩcmとされてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記第二層の膜厚が200nm以上、10000nm以下とされてなることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記第二層の比抵抗が1.5μΩcm以上、3μΩcm以下とされてなることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記第一層が、銅合金の酸化膜とされた場合、ニッケルを含有することを特徴とする請求項1から6のいずれか記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記第二層が、銅、もしくは、銅およびニッケルを含有する銅合金からなることを特徴とする請求項1から7のいずれか記載のタッチパネル。
【請求項9】
前記ジャンパ線が、前記第二層に積層された第三の金属膜からなる第三層を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか記載のタッチパネル。
【請求項10】
前記第三層が、銅もしくは銅合金からなることを特徴とする請求項9記載のタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーシートと一体化して形成したタッチパネルおよびタッチパネルの製造方法に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、表示画面上の透明な面を操作者が指またはペンでタッチすることにより、接触した位置を検出してデータ入力できる入力装置の構成要素となるものであって、キー入力より直接的、かつ直感的な入力を可能とする。このため、近年、携帯電話機や、携帯情報端末、カーナビゲーションシステムを始め、様々な電子機器の操作部に多用されるようになってきた。
【0003】
前記タッチパネルは、入力装置として、液晶パネル等の平面型表示装置の表示画面上に貼り合わせて使用することができる。タッチパネルの検出方式には、抵抗式、静電容量式、超音波式、光学式等多種あり、その構造は多様となる。
静電容量式タッチパネルは、表面型と投影型とに大別できる。表面型は2点以上の接触点を同時に検知することは困難である。投影型は2点以上の接触点を同時に検知することが可能である。投影型は、静電容量式タッチパネル用の電極板として、透明基板に第一の透明電極パターン層と第一の絶縁層と第二の透明電極パターン層と端子電極となる金属電極パターン層と第二の絶縁層との各層が一般にこの順に形成される積層構造を有する。
【0004】
また、投影型の静電容量式タッチパネルを平面型表示装置の表示画面上に重ねて使用する形態は、タッチパネル独立型とは別に、全体を薄型化することができるカバーガラス一体型もある。
すなわち、タッチパネル独立型では、平面型表示装置の表示面側にエアギャップを介して、独立型のタッチパネルを貼り合わせ、さらにその前面に額縁等の加飾パターンを有して表面を保護するためのカバーガラス(前面板)に代表される透明カバーシートを設ける(特許文献1参照)。
一方、カバーガラス一体型では、平面型表示装置の表示面側に、同様のエアギャップを介してカバーガラス一体型タッチパネルを貼り合わせる。なお、タッチパネルを構成する電極や端子、配線等のパターンの向きは、パターンを直接支持する基板の位置が、タッチパネル独立型とカバーガラス一体型とでは逆の関係になるので、視認側からの向きが反対になる。
【0005】
投影型の静電容量式タッチパネルの電極構造は、カバーガラス一体型で代表される透明カバーシート一体型の例で示すと、透明カバーシートの同一平面上に2次元配置したセンサ電極である複数の透明導電膜パターンと、透明導電膜パターン間を電気的に接続するジャンパ部と、ジャンパ部での層間の電気的短絡を防ぐ絶縁部と、センサ電極から配線を導いて端子部に至る配線部とから構成される。センサ電極にはITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電膜を用いる。一方、ジャンパ部にはITOより導電性の良好な金属材料を用いる。このようなタッチパネルにおいては、同一平面上に規則的に配置するセンサ電極を立体的につなぐための絶縁部とジャンパ部との構造が不可欠である。
【0006】
ジャンパ部や、等の配線としては、Cuなどの導電性に優れた材料がもちいられる(特許文献2)。
【0007】
また、ジャンパ部は、表示領域である操作平面領域内に位置しているので、この部分の反射率を低減し、表示装置の視認性を向上したいという要求があった。特許文献3では、図6に示すように、モリブデンを含む膜で、反射率を小さくしたことが示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−084025号公報
【特許文献2】特開昭58−166431号公報
【特許文献3】特開2013−020347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2に示すとおり、ジャンパ部等の配線を銅などの金属膜で形成した場合、タッチパネルの視認性に影響を及ぼすという問題がある。また、特許文献3に示すとおり、モリブデンやアルミニウムから形成した場合には、ITOに対して抵抗率が大きすぎるためこれを改善したいという要求があった。さらに、可視光領域において反射率を改善したいという強い要求が存在している。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.ジャンパ線において導電率と反射率とを同時に好ましい範囲とすること。
2.波長依存性を低減し、可視光域の全域で反射率を均一にすること。
3.エッチング特性、シート抵抗値、下地との密着性に関して、従来と同程度の特性を維持すること。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のタッチパネルは、表示パネル上に配置され、操作面に触って操作される静電容量方式のタッチパネルであって、
透明基板と、
前記透明基板の前記操作面の裏面側に、X方向に形成された複数のX電極と、前記X方向と直行するY方向に形成された複数のY電極と、
を有し、
前記複数のX電極と、前記複数のY電極が、
前記裏面側の同一面に形成された複数の透明電極と、
前記X電極と前記Y電極が絶縁部を介して互いに交差する交差部において、隣り合う前記X電極の透明電極もしくは隣り合う前記Y電極の透明電極のいずれかを立体的に接続するジャンパ線と、を有し、
前記ジャンパ線は、前記透明電極に接続する第一層と、該第一層に積層された第二層とを有し、
前記第一層が金属酸化膜からなり前記第二層が金属膜からなり、前記第一層と前記第二層の主たる金属が銅を含むものとされ、
前記第一層における可視光域での反射率が、前記第二層の反射率の半分以下であることにより上記課題を解決した。
本発明の前記第一層における比抵抗が前記第二層より高いことが好ましい。
本発明の前記第一層の膜厚が50nm以上、400nm以下とされてなることが好ましい。
本発明の前記第一層の比抵抗が1.0×10〜1.0×10μΩcmとされてなることが好ましい。
本発明の前記第二層の膜厚が200nm以上、10000nm以下とされてなることが好ましい。
本発明の前記第二層の比抵抗が1.5μΩcm以上、3μΩcm以下とされてなることが好ましい。
本発明の前記第一層が、銅合金の酸化膜とされた場合、ニッケルを含有することが好ましい。
本発明の前記第二層が、銅、もしくは、銅およびニッケルを含有する銅合金からなることが好ましい。
本発明の前記ジャンパ線が、前記第二層に積層された第三の金属膜からなる第三層を有することが好ましい。
本発明の前記第三層が、銅もしくは銅合金からなることが好ましい。
【0012】
本発明のタッチパネルは、表示パネル上に配置され、操作面に触って操作される静電容量方式のタッチパネルであって、
透明基板と、
前記透明基板の前記操作面の裏面側に、X方向に形成された複数のX電極と、前記X方向と直行するY方向に形成された複数のY電極と、
を有し、
前記複数のX電極と、前記複数のY電極が、
前記裏面側の同一面に形成された複数の透明電極と、
前記X電極と前記Y電極が絶縁部を介して互いに交差する交差部において、隣り合う前記X電極の透明電極もしくは隣り合う前記Y電極の透明電極のいずれかを立体的に接続するジャンパ線と、を有し、
前記ジャンパ線は、前記透明電極に接続する第一層と、該第一層に積層された第二層とを有し、
前記第一層が金属酸化膜からなり前記第二層が金属膜からなり、前記第一層と前記第二層の主たる金属が銅を含むものとされ、
前記第一層における可視光域での反射率が、前記第二層の反射率の半分以下であることにより、ジャンパ線において導電性を確保しつつ、視認側から見て、交差部における反射率を低減するとともに、可視光の波長全域に対して、均一におさえることが可能となる。
【0013】
本発明は、前記第一層における比抵抗が前記第二層より高いことや、前記第一層の膜厚が50nm以上、400nm以下とされてなることや、前記第一層の比抵抗が1.0×10〜1.0×10μΩcmとされてなることや、前記第二層の膜厚が200nm以上、10000nm以下とされてなることや、前記第二層の比抵抗が1.5μΩcm以上、3μΩcm以下とされてなることや、前記第一層が、銅合金の酸化膜とされた場合、ニッケルを含有することや、前記第二層が、銅、もしくは、銅およびニッケルを含有する銅合金からなることができ、これらのいずれかにより、交差部における抵抗と反射率とを所望の状態にすること、ジャンパ線の密着性を向上することができる。
【0014】
本発明の前記ジャンパ線が、前記第二層に積層された第三の金属膜からなる第三層を有することや、前記第三層が、銅もしくは銅合金からなることにより、ジャンパ線における導電性を維持することが容易となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、交差部を上述のように構成したことにより、ジャンパ線における良好な導電性を有するとともに、同時に、可視光領域で好ましい反射率を実現し視認性を向上するとともに、可視光領域の全域で反射率均一性を維持して色味の正確性を担保することができるという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るタッチパネルの一実施形態の概略を示す模式平面図である。
図2】本発明に係るタッチパネルの一実施形態を備える表示装置を示す模式図である。
図3】本発明に係るタッチパネルの一実施形態における交差部付近を示す拡大断面図である。
図4】本発明に係るタッチパネルの一実施形態における測定方法を示す概念図である。
図5】本発明に係るタッチパネルの一実施形態における測定結果を示すグラフである。
図6】本発明に係るタッチパネルの一実施形態における測定結果を示すグラフである。
図7】本発明に係るタッチパネルの一実施形態における測定結果を示すグラフである。
図8】本発明に係るタッチパネルの一実施形態における測定結果を示すグラフである。
図9】本発明に係るタッチパネルの一実施形態における測定結果を示すグラフである。
図10】本発明に係るタッチパネルの一実施形態における測定結果を示すグラフである。
図11】本発明に係るタッチパネルの他の実施形態における交差部付近を示す拡大断面図である。
図12】本発明に係るタッチパネルの他の実施形態における交差部付近の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るタッチパネルの一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるタッチパネルを示す模式平面図であり、図2は、タッチパネルを備える表示装置を示す断面図、図3は、図1の断面構造を示す拡大断面図である。
【0018】
本実施形態におけるタッチパネル10は、図1図2に示すように、液晶や有機ELなどの表示パネル2上に配置され、操作面10Aに触って操作される静電容量方式のタッチパネルであって、透明基板11と、透明基板11の操作面10Aの裏面11b側に、X方向に形成された複数のX電極12Xと、X方向と直行するY方向に形成された複数のY電極12Yと、を有する。
【0019】
本実施形態における静電容量方式のタッチパネルは、図1図3に示すように、透明基板11の視認側と反対側となる裏面11bにおいて、例えばY方向に延在し、Y方向と交差するX方向に所定の配列ピッチで並設される複数のX電極と、この複数のX電極と交差して第X方向に延在し、Y方向に所定の配列ピッチで並設される複数のY電極とを有する。透明基板11としては、例えばガラスや耐熱透明プラスチック等の透明な基板が用いられている。 複数のX電極12X及び複数のY電極12Yは、高い透過性を有する材料、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明性導電材料で形成される。
【0020】
複数のX電極12Xと複数のY電極12Yが、裏面11b側の同一面に形成された複数の透明電極12と、X電極12XとY電極12Yが絶縁部13を介して互いに交差する交差部14において、隣り合うX電極12Xもしくは隣り合うY電極12Yの透明電極12のいずれかを立体的に接続するジャンパ線15と、を有する。
【0021】
複数のY電極12Y及びX電極12Xが配置された領域が有効タッチ領域16であり、この有効タッチ領域16の周囲には、図1に示すように、複数のY電極の各々と、複数のX電極の各々とからの配線を縦横方向の周辺部に導いて端子部(図示せず)に至る複数の配線17が配置されている。
【0022】
複数のX電極の各々は、細線部12Xaと、この細線部12Xaの幅よりも広い幅のパッド部12Xbとが、Y方向に交互に複数配置された電極パターンで形成されている。複数のY電極の各々は、細線部12Yaと、この細線部12Yaの幅よりも広い幅のパッド部12Ybとが、X方向に交互に複数配置された電極パターンで形成されている。
【0023】
平面的に見たとき、Y電極12Yのパッド部12Ybは、隣り合う2つのX電極12Xの細線部12Xaの間に配置され、X電極12Xのパッド部12Xbは、隣り合う2つのY電極12Yの細線部12Yaの間に配置されている。これらの電極12はダイヤモンド構造と通称される。X電極12Xのパッド部12XbとY電極12Yのパッド部12Xbは、一辺の長さが100μm〜600μm程度とされる。X電極12XとY電極12Yとのpit委幅は、2mm〜8mm、3mm〜7mmとすることができる。
【0024】
また、絶縁部13は、例えば、SiO、SiN、SiONもしくは樹脂からなる膜で構成される。絶縁部13の幅は50μm以上、100μm以上、150μm〜350μm以下とすることができる。
【0025】
交差部14において、Y電極12Yの細線部12Yaであるジャンパ線15と配線部(配線)17とは、図1図3に示すように、同一構成の多層構造とされ、透明電極12や絶縁部13との界面における視認側から見た際の反射率を小さくして反射特性を最適化するとともに、ジャンパ線15および配線部17における導電性を大きくする。
【0026】
ジャンパ線15は、図3に示すように、透明基板11側から順に銅酸化膜(第一層)C1、銅膜(第二層)C2、銅ニッケル(第三層)C3がすくなくとも積層された構造を有する。細線部12Xaとジャンパ線15の線幅は0.5μm〜10μmとされ、1μm〜8μm、2μm〜5μmとすることができる。
【0027】
第一層C1および第二層C2は、例えば銅とされる同じ金属を主に含み、この銅の酸化物である第一の金属酸化膜からなる第一層C1と、銅または銅合金からなる導電層とされる第二層C2とからなる。第一層C1および第二層C2はたとえば、ニッケルを含むこともできる。第一層C1および第二層C2においては、第一層C1の反射率が、第二層C2より低くなり、具体的には第一層C1の反射率が、第二層C2の反射率の半分以下とされるとともに、第一層C1における酸素の含有率が第二層MC2より高く、第一層C1における比抵抗が第二層C2より高い。
【0028】
第一層C1は、銅、または、主として銅を含有する合金の酸化膜からなることができる。本実施形態では、銅からなる単層の酸化膜、あるいは、ニッケルを含む銅合金の酸化膜を挙げることができる。第一層C1は、絶縁部13や透明電極12に対して第二層C2を成膜性および密着性を向上する下地層となることもできる。
【0029】
第二層C2は、銅、または、主として銅を含有する合金からなることができる。本実施形態では、銅からなる単層膜、あるいは、ニッケルを含む銅合金、または、銅ニッケル層と銅単層とが積層された構成、さらに、銅ニッケル層と銅単層と銅ニッケル層とが積層された構成とすることができる。
これら、第一層C1と第二層C1とは、ジャンパ線としての良好な導電性を維持するとともに、後述するように、光の吸収効果により視認側から見た際の反射率を小さくする。
【0030】
第三層C3が、第一層C1および第二層C2に含有される金属と同じ主として銅を含有する合金からなる膜とされることができる。本実施形態ではニッケルを含む銅合金からなることができる。第三層C3は、第一層C1および第二層C2を保護するキャップ層となっている。
ジャンパ線15の膜構成をこのようにすることで、光の吸収効果により視認側から見た際の反射率を小さくすることを達成できる。
【0031】
第一層C1の膜厚等の特性としては、一例として次に上げるように設定することができる。ここで、第二層C2の膜厚を200nmに設定し、第一層C1の膜厚と酸素含有量を変化させた。表においてO2とは、成膜時の酸素ガス流量を示すものであり、膜中の酸素含有量の多寡を示している。また、R%は可視域における反射率の平均値を示すものである。
【表1】
【0032】
なお、ここでは、積層されたジャンパ線15の電気特性として、シート抵抗Rs0.2[Ω/ロ]以下を示す。
図4は、本実施形態におけるジャンパ線15における膜特性の測定例を示すものであり、シート抵抗評価および反射率評価を示す概念図である。また、比較のため、第一層C1が無い状態でも測定をおこなった。
【0033】
分光反射率の測定は、市販の分光光度計を利用して可能である。測定は、図4に示すように、光源(モノクロメータ)L1からの分光された照射光が測定試料膜に照射され、鏡面反射された光を測定器LSで受光して光の強度を測定する。モノクロメータL1からの分光照射光の波長を測定波長380nm〜780nmとされる可視光域の全域で連続的に変化させて分光反射率を測定する。
ここで、測定におけるリファレンスを絶対反射率が既知の所定の膜とする。すなわち、以後の各測定試料における100%の基準を例えばアルミニウム単層膜で得られた強度を既知の絶対反射率で割った値とする。
【0034】
図5図6に示すように、第一層C1の膜厚を50nm以上、400nm以下、より好ましくは200〜400nmとすることで、第一層C1の反射率を、第二層C2の反射率の半分以下とすることができる。また、第一層C1を低酸素含有状態(酸化度低)として上限膜厚にした場合には、さらに反射率を低減でき、第一層C1を高酸素含有状態(酸化度高)として、膜厚200nmとすると、第二層C2の反射率の1/4以下とすることができる。
また第一層C1の比抵抗が1.0×10〜1.0×10μΩcmとされているので、導体として充分機能することができる。
第一層C1の膜厚を上記の範囲に設定することにより、抵抗が高くなること、成膜時の膜表面に無視できない凹凸が生じること、成膜時間が長くなりすぎることを防止することができる。


【0035】
さらに、図7に示すように、第一層C1を低酸素含有状態(酸化度低)として、可視光域の波長480nmにおいて、膜厚200nmおよび膜厚400nmで第二層C2の反射率の5/7以下とすることができ、波長680nmにおいて、膜厚200nmで第二層C2の反射率の45/95以下とすることができ、波長680nmにおいて、膜厚400nmで第二層C2の反射率の25/95以下とすることができる。
【0036】
さらに、図9に示すように、第一層C1を例えば膜厚50nmおよび膜厚200nmとされる所定膜厚としてその含有酸素濃度を変化させることで、反射率を変えて、所望の反射率となるように制御することができる。なお、図9における横軸は、成膜雰囲気に供給した雰囲気ガスのアルゴンガスに対する酸素ガスの流量比(O2/Ar ratio[%])である。
【0037】
同様に、図10に示すように、第一層C1を例えば膜厚50nmおよび膜厚200nmとされる所定膜厚としてその含有酸素濃度を変化させた場合、成膜雰囲気に供給した雰囲気ガスのアルゴンガスに対する酸素ガスの流量比(O2/Ar ratio[%])が45より大きくなると、比抵抗の値はほぼ一定になる。つまり、含有酸素濃度を変化させても、比抵抗を気にせずに、光学特性を設定することが可能となる。同様に、図10における横軸は、成膜雰囲気に供給した雰囲気ガスのアルゴンガスに対する酸素ガスの流量比である。
また、この場合、酸素ガスの流量比を45から増加させるに従い、第一層C1の透過率が増加していく。つまり、酸化は進行してもこの酸化膜の電気的な膜質(抵抗)がほぼ一定であることがわかる。
【0038】
また、第二層C2の膜厚を200nm〜10000nmとすることで、ジャンパ線15としての抵抗が変化しないにも変わらず過剰に膜厚が大きいこと、成膜時の膜表面に無視できない凹凸が生じること、成膜時間が長くなりすぎることを防止することができる。
【0039】
さらに、図8に示すように、第一層C1を高酸素含有状態(酸化度高)として、可視光域の波長380nmにおいて、膜厚100nmで第二層C2の反射率の20/35以下とすることができ、波長380nmにおいて、膜厚200nmで第二層C2の反射率の18/35以下とすることができ、波長480nmにおいて、膜厚100nmで第二層C2の反射率の21/51以下とすることができ、波長480nmにおいて、膜厚200nmで第二層C2の反射率の18/50以下とすることができ、波長580nmにおいて、膜厚100nmで第二層C2の反射率の40/80以下とすることができ、波長580nmにおいて、膜厚200nmで第二層C2の反射率の24/80以下とすることができ、波長680nmにおいて、膜厚100nmで第二層C2の反射率の55/95以下とすることができ、波長680nmにおいて、膜厚200nmで第二層C2の反射率の15/95以下とし、波長780nmにおいて、膜厚100nmで第二層C2の反射率の60/95とすることができ、波長780nmにおいて、膜厚200nmで第二層C2の反射率の10/95以下とすることができる。
【0040】
図7図8に示すとおり、本実施形態を構成する多層膜は、従来の多層膜と比較して、測定波長380nm〜780nmとされる可視光域の全域で反射率を抑制するとともに、可視光域の全域で反射率をほぼ均一な値とすることができる。同時に、良好な導電性を有するためジャンパ線15の幅寸法をモリブデンなどを用いた場合に比べて小さくすることができ、平面視した大きさを小さくして表示装置に対する視認性を向上することができる。
【0041】
なお、本実施形態において、銅およびニッケルを含む多層膜形成をスパッタリング法で行う場合は、スパッターターゲットを銅−ニッケルの2元で準備して、酸化膜の成膜時には所定量の酸素ガスとアルゴン等の不活性ガスを導入する反応性スパッタリングにより、ソース電源を増結することなく可能である。
【0042】
具体的には、銅酸化積層膜C1の成膜において、成膜条件のうちガス流量を、アルゴン:酸素流量を、200:320(sccm)または、200:2280(sccm)とし、この状態から、銅膜C2の成膜において、200:0(sccm)のように変化させることが好ましい。
【0043】
さらに、本実施形態では、銅酸化膜(第一層)C1と銅膜(第二層)C2との比抵抗が、透明電極12に接続される側から銅ニッケル膜(第三層)C3側へ連続して低下するように構成されていることもでき、この場合、二つの異なる比抵抗の値を持たなくても、比抵抗が厚さに応じて連続的に変化する構成とすることもできる。
【0044】
本実施形態のタッチパネルの製造方法の一例を説明する。
本実施形態のタッチパネルの製造方法は、透明基板11に、センサ導電膜パターンである透明電極12を形成する工程と、絶縁部13を形成する工程と、ジャンパ線15と配線部17とを一括して形成する工程と、を有する。
【0045】
また、本実施形態のタッチパネルの製造方法は、ジャンパ線15と配線部17とを一括して形成する工程、絶縁部13を形成する工程、透明電極12を形成する工程を、この順におこなうこともできる。
【0046】
さらに、タッチパネルの製造方法の他の例としては、配線部17をパターン形成する工程と、透明電極12を形成する工程と、絶縁部13を形成する工程と、ジャンパ線15を形成する工程とを有することもできる。
なお、これらの方法では、最終工程として透明樹脂等による全面均一な保護膜13Aを塗布形成することができる。
【0047】
本実施形態のタッチパネルの製造方法をさらに具体的に説明すると、(a)センサ電極である透明電極12パターンを、例えばITOの成膜後に、前工程のパターン位置との合わせを前提として、フォトリソグラフィー法によるフォトレジストのパターニングを行い、その後のエッチングと残留レジストの除去を経て形成する。次に、(b)絶縁部13を形成するための感光性樹脂材料を塗布し、フォトリソグラフィー法により、交差部14と位置合わせしてパターン形成する。次に、(c)ジャンパ線15と配線部17とを構成するための前述の同一構成の多層成膜を行い、フォトレジストの塗布、露光、現像、を含むフォトリソグラフィー法とその後のエッチングと残留レジストの除去を経て一括形成することができる。
【0048】
図11は、本発明の他の実施形態におけるタッチパネルの交差部を示す拡大断面図である。
【0049】
本発明において、図3に示す例では、絶縁部13を交差部14に対応する部分のみ形成したが、図11に示す例では、透明基板(ガラス)11全面に絶縁部13が設けられ、交差部14にスルーホール13bが設けられて、このスルーホールにおいて第一層C1と透明電極12とが接続されている。
このような構成の場合、電極となるITOパターンを形成した後、絶縁部13となる膜を基板11全面に形成して、交差部14と位置あわせしてスルーホール13bを形成し、その後、ジャンパ線15と配線部17とを多層膜として構成する。
【0050】
本発明においては、第一層C1の反射率と、第一層C1の抵抗値および第一層C1と第二層C2の膜厚を上記のように設定することで、良好な導電性を維持しつつ可視光域における低反射率化を実現することができる。具体的には、次のような範囲をそれぞれ選択して組み合わせることができる。
第一層C1の抵抗値(酸素含有量):1.0×10〜1.0×μΩcm
第一層C1の反射率:35%以下(λ=300〜800nm Average)
第一層C1の膜厚:50nm〜400nm
第二層C2の膜厚:200nm〜10000nm
【0051】
さらに、第二層C2の比抵抗:1.5μΩcm〜3μΩcmとすることができる。
ここで、第二層C2は、
スパッタで成膜した場合、
膜厚:200nm〜1000nm
シート抵抗Rsの範囲:0.015〜0.15Ω/口
蒸着及びメッキで成膜した場合
膜厚:1000nm〜10000nm
シート抵抗Rsの範囲:0.0015〜0.3Ω/口
に設定することができる。
【0052】
さらに、本発明においては、図12に示すように、CuOxとされる第一層C1、Cuからなる第二層C2、CuNiからなる第三層C3が積層されるとともに、第二層C2の第一層C1側に、CuOxからの酸化を防止するために、CuNiからなる第一層側第二層C4を設けることができる。これにより、Cuからなる第二層の酸化を防止し、電気特性の変動を防止することができる。
【0053】
さらに、第一層C1において、成膜温度を変化させて、酸素濃度二値および膜厚ごとのシート抵抗Rsを測定した。
【表2】
【表3】
この結果から、成膜温度によって、シート抵抗を制御することが可能となることがわかる。
【0054】
本発明は、透明な基材と多層膜の配線パターンとの界面を簡単な方法で低反射率化するとともに、良好な導電性を維持しつつ可視光域における反射率の均一性を向上して、視認側からの配線パターンに対する視認性を小さくすることができる。同様な方策によって、他の電子部品等の表示性能に関係する特性品質を高めることが容易に考えられる。例えば、透明導電膜をさらに低抵抗化するための金属層を含む補助配線パターンの視認性を向上することができる。また、一般に表示装置に関係する配線を始めとして、電子部品における各種配線パターンに金属層を適用できる範囲を拡大することができ、製品設計の自由度を大幅に高めることが可能になる。
【符号の説明】
【0055】
10…タッチパネル
10A…操作面
11…透明基板
12…透明電極
12X…X電極
12Y…Y電極
12Xa,12Ya…細線部
12Xb,12Yb…パッド部
13…絶縁部
13b…スルーホール
14…交差部
15…ジャンパ線
17…配線部
C1…銅酸化積層膜(第一層)
C2…銅膜(第二層)
C3…銅ニッケル膜(第三層)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12