(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、略円板形状の半導体ウエーハの表面に格子状に分割予定ラインが形成され、分割予定ラインにより区画された領域にIC、LSI等の回路が形成される。そして、半導体ウエーハは、切削装置により分割予定ラインに沿って切削され、個々の半導体チップに分割される。このようにして分割された半導体チップは、パッケージングされて携帯電話やパソコン等の電気機器に広く利用される。
【0003】
一般に、このような半導体ウエーハを分割する切削装置においては、半導体ウエーハの加工部分に向けて切削水を噴射しながら切削が行われる(例えば、特許文献1参照)。この切削装置は、切削ブレードの外周を覆うブレードカバーに、切削水を噴射する複数のノズルを固定ねじでねじ止めして構成される。切削装置は、切削ブレードを高速回転させると同時に、複数のノズルから切削水を半導体ウエーハの加工部分や切削ブレードに噴射し、切削屑の洗浄や加工部分の冷却および潤滑等を行っている。そして、切削装置は、切削ブレードを半導体ウエーハに一定量切り込ませた状態で、分割予定ラインに沿って切削送りすることにより半導体ウエーハを切削する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
切削ブレードの両側から切削水を噴射するいわゆる冷却ノズルは、特許文献2のように加工点に向けて噴射したり、特許文献3のように切削ブレードに向けて噴射したりとその向きは適宜調整される場合がある。しかし、冷却ノズルは、略L字型のパイプ形状に形成されて、ブレードカバーに一体に形成されていたため、噴射する方向に対し1つの冷却ノズルが形成されており、ブレードカバーを適宜交換して噴射する向きを選択していた。
【0006】
本発明は、上記問題にかんがみなされたもので、その目的は、ブレードカバーを交換することなく切削水の噴射方向を変更することができる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該被加工物を切削するための切削ブレードを備えた切削手段と、を備えた切削装置であって、該切削手段は、該切削ブレードを前端に装着したスピンドルを回転自在に支持するスピンドルハウジングと、該スピンドルハウジングの前端部に該切削ブレードを挟んで両側に配設され該切削ブレードに両側から切削水を供給するための切削水供給ノズルを備えたブレードカバーと、を備え、該切削水供給ノズルは、加工高さまで上下方向に延伸する剛性ブラケットと、該剛性ブラケットの下端に装着され水平方向に延伸し且つその側面に噴射スリットを有する円筒形状のパイプノズルと、からなり、該剛性ブラケット及び該パイプノズルの内部には切削水供給路が形成され、該切削水供給路は切削水源に連通しており、該パイプノズルは、装着された該剛性ブラケットに対し、円筒形状の周方向に回転させて該噴射スリットの噴射方向を調整する調整部と、回転を規制する固定部とを有することを特徴とする。
【0008】
また、前記切削装置では、前記切削水供給ノズルは、前記パイプノズルの回転方向での向きを示す目盛と表示マークとからなる位置表示手段を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の切削装置では、切削水供給ノズルが剛性ブラケットとパイプノズルで構成されており、パイプノズルの向きを周方向に回転させてから固定することで切削水の噴射方向を容易に調整することができると言う効果を奏する。また、切削装置は、回転方向でのパイプノズルの向きを表示する位置表示手段があるので、一対のパイプノズルの向きを容易に揃えることができ、切削ブレードの倒れや切削屑の付着の偏り等を防ぐ事ができると言う効果も奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る切削装置を図面に基いて説明する。
図1は、実施形態に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2は、実施形態に係る切削装置の切削手段の構成例を示す斜視図である。
図3は、実施形態に係る切削装置の切削手段の構成例を分解して示す分解斜視図である。
図4は、
図3中のIV−IV線に沿う断面図である。
【0013】
切削装置1は、
図1に示すように、被加工物Wを保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持された被加工物Wを切削するための切削ブレード21を備えた切削手段20と、チャックテーブル10をX軸方向に移動させるX軸移動手段(図示せず)と、チャックテーブル10をZ軸と平行な軸心回りに回転させる回転駆動源(図示せず)と、Y軸移動手段40と、Z軸移動手段50と、制御手段(図示せず)等を備えている。切削装置1は、X軸移動手段と、Y軸移動手段40と、Z軸移動手段50及び回転駆動源により、チャックテーブル10と切削手段20とをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びZ軸回りに相対的に移動させて、被加工物Wを切削してチップに分割するものである。
【0014】
なお、被加工物Wは、本実施形態では、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。また、本発明では、被加工物Wは、電子部品に使用される各種セラミック基板、樹脂基板、ガラス基板などであってもよい。被加工物Wは、
図1に示すように、粘着シートSに貼着され、粘着シートSに環状フレームFが貼着されて、粘着シートSを介して環状フレームFに装着される。
【0015】
チャックテーブル10は、保持面10a上に粘着シートSを介して被加工物Wが載置されて、保持面10a上に載置された被加工物Wを吸引保持するものである。チャックテーブル10は、保持面10aを構成する部分がポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面10aに載置された被加工物Wを粘着シートSを介して吸引することで保持する。チャックテーブル10は、回転駆動源によりZ軸回りに回転される。また、チャックテーブル10の周囲には、エアーアクチュエータにより駆動して被加工物Wの周囲の環状フレームFを挟持するクランプ部11が複数設けられている。
【0016】
切削手段20は、チャックテーブル10に保持された被加工物Wに切削溝を供給しながら切削(加工)するものである。切削手段20は、チャックテーブル10に保持された被加工物Wに対して、Y軸移動手段40によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動手段50によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0017】
切削手段20は、Y軸移動手段40及びZ軸移動手段50により、Y軸方向及びZ軸方向に移動されて、チャックテーブル10の表面の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。また、切削手段20は、被加工物Wの上面を撮像する撮像手段80が、スピンドル22と一体的に移動するように固定されている。撮像手段80は、チャックテーブル10に保持された切削前の被加工物Wの切削すべき領域を撮像するCCDカメラを備えている。CCDカメラは、チャックテーブル10に保持された被加工物Wを撮像して、被加工物Wと切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するための画像を得、得た画像を制御手段に出力する。
【0018】
切削手段20は、
図2及び
図3に示すように、略リング形状を有する極薄の切削砥石である切削ブレード21と、切削ブレード21を前端に装着したスピンドル22と、スピンドル22を回転自在に支持するスピンドルハウジング23と、ブレードカバー24とを備えている。スピンドル22は、切削ブレード21を回転させることで被加工物Wを切削する。スピンドル22は、スピンドルハウジング23内に収容され、スピンドルハウジング23は、Z軸移動手段50に支持されている。切削手段20のスピンドル22及び切削ブレード21の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。
【0019】
ブレードカバー24は、スピンドルハウジング23の前端部に取り付けられるブレードカバー本体25と、ボルト26などによりブレードカバー本体25に取り付けられる切削水供給ノズル27とを備えている。切削水供給ノズル27は、ブレードカバー本体25に取り付けられかつブレードカバー本体25から加工高さまでZ軸方向と平行な上下方向に延伸する剛性ブラケット28と、一対のパイプノズル29とからなる。剛性ブラケット28は、ブレードカバー本体25に設けられた通し孔25a内に通されたボルト26がねじ孔28aにねじ込まれることで、ブレードカバー本体25に取り付けられる。
【0020】
パイプノズル29は、スピンドルハウジング23の前端部に切削ブレード21を挟んでY軸方向の両側に配設され、切削ブレード21にY軸方向の両側から切削水を供給するためのものである。即ち、切削水供給ノズル27は、パイプノズル29を備えることで、スピンドルハウジング23の前端部に切削ブレード21を挟んで両側に配設され切削ブレード21に両側から切削水を供給するためのものである。パイプノズル29は、剛性ブラケット28の下端に装着され、X軸方向と平行に水平方向に延伸し、且つその側面に切削水を噴射する噴射スリット29aを有する円筒形状に形成されている。パイプノズル29は、被加工物Wの加工箇所から数mm高い位置に配置されている。噴射スリット29aは、各パイプノズル29にX軸方向に間隔をあけて複数(本実施形態では、3つ)設けられている。噴射スリット29aは、パイプノズル29の外壁の一部を貫通し、かつパイプノズル29の長手方向に直交する方向に延伸している。また、各パイプノズル29に設けられた複数の噴射スリット29aは、パイプノズル29の長手方向に並ぶ位置に配置されている。
【0021】
また、剛性ブラケット28と、剛性ブラケット28の下端に装着されたパイプノズル29の内部には、
図4に示すように、切削水供給路30が形成されている。切削水供給路30は、剛性ブラケット28の上端に取り付けられた連結部28bを介して、切削水を供給する切削水源100に連通している。切削水供給路30は、連結部28bを介して切削水源100から供給された切削水を噴射スリット29aまで導き、噴射スリット29aから切削ブレード21及び被加工物Wの切削ブレード21の加工箇所等に向けて切削水を噴射する。
【0022】
パイプノズル29は、
図4に示すように、噴射スリット29aを有しかつ剛性ブラケット28の下端に装着される円筒形状のノズル本体31と、ノズル本体31の一端部に設けられかつ剛性ブラケット28の下端部に設けられた差込穴28c内に挿入される調整部32と、固定部としてのいもねじ33とを有している。調整部32は、差込穴28c内に挿入されて、ノズル本体31即ちパイプノズル29が装着された剛性ブラケット28に対し、ノズル本体31即ちパイプノズル29を円筒形状の周方向に回転させて、噴射スリット29aの切削水の噴射方向を調整するものである。調整部32は、差込穴28c内に挿入されて、ノズル本体31即ちパイプノズル29をX軸方向と平行な姿勢に保ち、ノズル本体31即ちパイプノズル29のX軸方向と平行な軸心回りの向きを変更可能とする。
【0023】
いもねじ33は、ノズル本体31即ちパイプノズル29の回転を規制するものである。いもねじ33は、剛性ブラケット28の下端の上面に開口しかつ剛性ブラケット28の下端の上面から差込穴28cに向かって延伸したねじ孔28dにねじ込まれて、先端が調整部32に当接することで、ノズル本体31即ちパイプノズル29を剛性ブラケット28に固定して、ノズル本体31即ちパイプノズル29の軸心回りの回転を規制する。
【0024】
切削水供給ノズル27は、ノズル本体31即ちパイプノズル29の軸心回りの回転方向での向きを示す目盛35と、表示マーク36とからなる位置表示手段37を備えている。目盛35は、パイプノズル29のノズル本体31のそれぞれに、パイプノズル29のノズル本体31の回転方向即ち軸心回りに等間隔に複数設けられている。目盛35は、パイプノズル29のノズル本体31の長手方向に直線状に延伸している。一対のパイプノズル29のノズル本体31に設けられた複数の目盛35は、切削ブレード21に向かう位置関係において、互いに、噴射スリット29aとの相対的な位置が等しくなる位置に設けられている。即ち、一方のパイプノズル29のノズル本体31に設けられた複数の目盛35の噴射スリット29aとの相対的な位置は、他方のパイプノズル29のノズル本体31に設けられた複数の目盛35の噴射スリット29aとの相対的な位置と等しい。
【0025】
表示マーク36は、剛性ブラケット28の下端の差込穴28cの周りに設けられ、X軸方向に直線状に延伸している。即ち、表示マーク36は、剛性ブラケット28の下端に一対設けられている。これら一対の表示マーク36は、切削ブレード21との相対的な位置が等しくなる位置に配設されている。
【0026】
また、それぞれのパイプノズル29のノズル本体31に設けられた複数の目盛35は、互いに異なる色や長さ、模様等の異なる態様で形成されているのが望ましい。この場合、一方のパイプノズル29のノズル本体31に設けられた目盛35と、他方のパイプノズル29のノズル本体31に設けられた目盛35とは、噴射スリット29aとの相対的な位置が等しいもの同士が同じ色や長さ、同じ模様などの同じ態様に形成されているのが望ましい。
【0027】
位置表示手段37は、いもねじ33によりノズル本体31即ちパイプノズル29を剛性ブラケット28に固定する際に、パイプノズル29に設けられた複数の目盛35のうちのいずれかの目盛35を表示マーク36とX軸方向に並ぶ位置に位置付けることで、ノズル本体31即ちパイプノズル29を所望の回転方向の向きに固定することができる。一対のパイプノズル29のノズル本体31に設けられた目盛35の噴射スリット29aとの相対的な位置が等しいもの同士が同じ色や長さ、同じ模様に形成されている場合には、同じ色や長さ、同じ模様の目盛35を表示マーク36とX軸方向に並ぶ位置に位置付けることで、一対のパイプノズル29のノズル本体31の回転方向の向きを容易に一致させることができる。
【0028】
制御手段は、切削装置1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御して、被加工物Wに対する切削加工を切削装置1に行わせるものである。具体的には、制御手段は、チャックテーブル10と切削手段20とを相対的にX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させるとともに、Z軸と平行な軸心回りにチャックテーブル10を回転させて、被加工物Wに対する切削加工を切削装置1に行わせる。なお、制御手段は、例えばCPU等で構成された演算処理装置やROM、RAM等を備える図示しないマイクロプロセッサを主体として構成されている。
【0029】
次に、本実施形態に係る切削装置1の加工動作について説明する。まず、オペレータが加工内容情報を制御手段に登録して、切削手段20から離間したチャックテーブル10に被加工物Wを載置し、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に、切削装置1が加工動作を開始する。加工動作において、制御手段は、チャックテーブル10に載置された被加工物Wを吸引保持し、被加工物Wを吸引保持したチャックテーブル10を切削手段20の下方に移動させる。
【0030】
そして、制御手段は、アライメントを実行した後、切削手段20が加工内容情報に基いて、切削水供給ノズル27から切削水を供給しながら被加工物Wを切削する。制御手段は、切削が終了すると、切削手段20を被加工物Wから離間させた後、チャックテーブル10を切削手段20の下方から離間させる。そして、制御手段は、チャックテーブル10が切削手段20の下方から離間すると、チャックテーブル10の吸引保持を解除し、オペレータがチャックテーブル10上の切削済みの被加工物Wを取り除き、切削加工前の被加工物をチャックテーブル10に載置する。このような工程を繰返して、切削装置1は、被加工物Wを切削する。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る切削装置1によれば、切削水供給ノズル27が剛性ブラケット28とパイプノズル29で構成されており、パイプノズル29が噴射スリット29aの噴射方向を調整する調整部32と、パイプノズル29の回転を規制するいもねじ33を有する。このために、切削装置1は、パイプノズル29の向きを周方向に回転させてから剛性ブラケット28に固定することができ、切削水の噴射方向を容易に調整することができる。よって、切削装置1は、ブレードカバー24を交換することなく切削水の噴射方向を変更することができる。
【0032】
また、切削装置1は、回転方向でのパイプノズル29の向きを表示する位置表示手段37を備えている。このために、切削装置1は、一対のパイプノズル29の向きを容易に揃えることができる、即ち、一対のパイプノズル29の噴射スリット29aの切削ブレード21の相対的な位置を、等しくすることができ、切削ブレード21の倒れや切削屑の付着の偏り等を防ぐ事ができる。一方のパイプノズル29のノズル本体31に設けられた目盛35と、他方のパイプノズル29のノズル本体31に設けられた目盛35とが、噴射スリット29aとの相対的な位置が等しいもの同士が同じ色や長さ、同じ模様などの同じ態様に形成されている場合には、一対のパイプノズル29の噴射スリット29aの切削ブレード21の相対的な位置を容易に等しくすることができる。
【0033】
また、前述した実施形態に記載された切削装置1の切削水供給ノズル27の噴射スリット29aは、パイプノズル29の長手方向に直交しかつパイプノズル29の長手方向に間隔をあけて複数設けられている。しかしながら、本発明では、
図5(a)に示すように、噴射スリット29aをパイプノズル29の長手方向に直線状に延伸させてもよい。
図5(a)は、実施形態の変形例に係る切削装置の切削手段の断面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のb部を拡大して示す断面図である。なお、
図5において、前述した実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
また、本発明では、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、パイプノズル29の調整部32に目盛35に対応した凹み29bを設け、いもねじ33の先端に凹み29bに侵入する凸部33aを設けても良い。この場合、凹み29bを対応する目盛35とパイプノズル29の長手方向に並ぶ位置に配置するのが望ましい。この場合には、パイプノズル29を剛性ブラケット28に固定するいもねじ33の凸部33aが凹み29bに侵入する。このために、切削装置1は、いもねじ33をねじ込む際に、いもねじ33に当接したパイプノズル29が回転することなく、目盛35と表示マーク36とがパイプノズル29の長手方向に並ぶ位置にパイプノズル29を剛性ブラケット28に固定することができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。