特許第6158002号(P6158002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158002
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170626BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   H01L21/78 L
   H01L21/78 P
   H01L21/78 F
   H01L21/68 A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-186217(P2013-186217)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-53432(P2015-53432A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【審査官】 川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−295050(JP,A)
【文献】 特開2000−299369(JP,A)
【文献】 特開2002−299286(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0034742(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/67−21/683
H01L 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたウエーハを切削する切削ブレードを備えた切削手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に切削送り方向に移動せしめる切削送り手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に切削送り方向と直交する割り出し送り方向に移動せしめる割り出し送り手段と、紫外線の照射によって粘着力が低下するダイシングテープに貼着され該ダイシングテープを介して環状のフレームに支持されたウエーハを収容したカセットを載置するカセット載置台を備えたカセット載置機構と、該カセット載置台上に載置された該カセットに収容されているウエーハを仮置き領域に搬出する搬出手段と、該仮置き領域に搬出されたウエーハを該保持手段に搬送する搬送手段と、を具備する切削装置において、
該搬出手段によって搬出されウエーハの表面に紫外線を照射して親水性を付与するとともに該ダイシングテープに紫外線を照射して粘着力を低下せしめる紫外線照射手段を備え、
該紫外線照射手段は、ウエーハの表面に照射してオゾンを生成するとともに活性酸素を生成する波長および該ダイシングテープに照射して粘着力を低下せしめる波長を含む紫外線を照射する紫外線照射ランプと、該紫外線照射ランプの下側に配設されウエーハを該ダイシングテープを介して支持する該環状のフレームを支持する第1のフレーム支持手段と、該紫外線照射ランプの上側に配設されウエーハを該ダイシングテープを介して支持する該環状のフレームを支持する第2のフレーム支持手段とを具備し、
ウエーハの表面に紫外線を照射して親水性を付与する際にはウエーハを該ダイシングテープを介して支持する該環状のフレームを該第1のフレーム支持手段によって支持し、該ダイシングテープに紫外線を照射して粘着力を低下せしめる際にはウエーハを該ダイシングテープを介して支持する該環状のフレームを該第2のフレーム支持手段によって支持する、
ことを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該紫外線照射ランプは、低圧水銀ランプである、請求項1記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等のウエーハを切削加工するための切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列形成された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。また、サファイヤ基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハも分割予定ラインに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等の分割予定ラインに沿った切断は、通常、ダイサーと呼ばれている切削装置によって行われている。この切削装置は、半導体ウエーハ等のウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切削ブレードを備えた切削手段と、保持手段と切削手段とを相対的に切削送り方向に移動せしめる切削送り手段と、保持手段と切削手段とを相対的に切削送り方向と直交する割り出し送り方向に移動せしめる割り出し送り手段と、紫外線の照射によって粘着力が低下するダイシングテープに貼着され該ダイシングテープを介して環状のフレームに支持されたウエーハを収容したカセットを載置するカセット載置台を備えたカセット載置機構と、該カセット載置台上に載置された該カセットに収容されているウエーハを仮置き領域に搬出する搬出手段と、該仮置き領域に搬出されたウエーハを保持手段に搬送する搬送手段と、を具備している。切削手段は、回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードおよび回転スピンドルを回転駆動する駆動機構を備えたスピンドルユニットを含んでおり、切削時には切削ブレードによる切削部に切削水を供給しつつ切削する。
【0004】
しかるに、上述した切削装置においては、切削ブレードによってウエーハを切削した際に発生する切削屑が切削水に混入してウエーハの表面を漂い、ウエーハの表面に切削屑が付着して汚染するという問題がある。即ち、ウエーハの切削によって発生した切削屑は、切削水に混入してウエーハの表面を漂っている際にウエーハの表面に付着するとともに、切削水が撥水して乾燥するとウエーハの表面に強固に付着する。
【0005】
このような問題を解消するために、上記カセット載置台の下側に配設されウエーハに紫外線を照射して親水性を付与する第1の紫外線照射手段およびダイシングテープに紫外線を照射して粘着力を低下せしめる第2の紫外線照射手段を備え、ウエーハを切削する前にウエーハの表面に紫外線を照射してオゾンを生成するとともに活性酸素を生成して切削面に親水性を付与し切削の際に生じる切削屑がウエーハの表面に付着するのを防止するとともに、ウエーハが個々のデバイスに分割された後はダイシングテープに紫外線を照射して粘着力を低下させ次のピックアップ工程を容易にした切削装置が下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−295050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、上述した切削装置においては、ウエーハに紫外線を照射して親水性を付与する第1の紫外線照射手段とダイシングテープに紫外線を照射して粘着力を低下せしめる第2の紫外線照射手段がそれぞれ独立して配設されており、装置内の空間が制約されて装置の小型化を阻害する要因となっている。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハに紫外線を照射して親水性を付与して切削時に発生する切削屑がウエーハの表面に付着するのを防止することができるとともに、ウエーハが個々のデバイスに分割された後はダイシングテープに紫外線を照射して粘着力を低下させることができる紫外線照射手段をコンパクトに構成した切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたウエーハを切削する切削ブレードを備えた切削手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に切削送り方向に移動せしめる切削送り手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に切削送り方向と直交する割り出し送り方向に移動せしめる割り出し送り手段と、紫外線の照射によって粘着力が低下するダイシングテープに貼着され該ダイシングテープを介して環状のフレームに支持されたウエーハを収容したカセットを載置するカセット載置台を備えたカセット載置機構と、該カセット載置台上に載置された該カセットに収容されているウエーハを仮置き領域に搬出する搬出手段と、該仮置き領域に搬出されたウエーハを該保持手段に搬送する搬送手段と、を具備する切削装置において、
該搬出手段によって搬出されウエーハの表面に紫外線を照射して親水性を付与するとともに該ダイシングテープに紫外線を照射して粘着力を低下せしめる紫外線照射手段を備え、
該紫外線照射手段は、ウエーハの表面に照射してオゾンを生成するとともに活性酸素を生成する波長および該ダイシングテープに照射して粘着力を低下せしめる波長を含む紫外線を照射する紫外線照射ランプと、該紫外線照射ランプの下側に配設されウエーハを該ダイシングテープを介して支持する該環状のフレームを支持する第1のフレーム支持手段と、該紫外線照射ランプの上側に配設されウエーハを該ダイシングテープを介して支持する該環状のフレームを支持する第2のフレーム支持手段とを具備し、
ウエーハの表面に紫外線を照射して親水性を付与する際にはウエーハを該ダイシングテープを介して支持する該環状のフレームを該第1のフレーム支持手段によって支持し、該ダイシングテープに紫外線を照射して粘着力を低下せしめる際にはウエーハを該ダイシングテープを介して支持する該環状のフレームを該第2のフレーム支持手段によって支持する、
ことを特徴とする切削装置が提供される。
【0010】
上記紫外線照射ランプは、低圧水銀ランプであることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明による切削装置は、搬出手段によって搬出されウエーハの表面に紫外線を照射して親水性を付与するとともにダイシングテープに紫外線を照射して粘着力を低下せしめる紫外線照射手段が、ウエーハの表面に照射してオゾンを生成するとともに活性酸素を生成する波長およびダイシングテープに照射して粘着力を低下せしめる波長を含む紫外線を照射する紫外線照射ランプと、紫外線照射ランプの下側に配設されウエーハをダイシングテープを介して支持する環状のフレームを支持する第1のフレーム支持手段と、紫外線照射ランプの上側に配設されウエーハをダイシングテープを介して支持する環状のフレームを支持する第2のフレーム支持手段とを具備し、ウエーハの表面に紫外線を照射して親水性を付与する際にはウエーハをダイシングテープを介して支持する環状のフレームを第1のフレーム支持手段によって支持し、ダイシングテープに紫外線を照射して粘着力を低下せしめる際にはウエーハをダイシングテープを介して支持する環状のフレームを第2のフレーム支持手段によって支持するようにしたので、ウエーハの表面に紫外線を照射して親水性を付与する親水性付与工程とダイシングテープに紫外線を照射して粘着力を低下せしめる粘着力低下工程を1個の紫外線照射ランプで実施することができる。従って、親水性付与用の紫外線照射ランプと粘着力低下用の紫外線照射ランプを配設する必要がないため、切削装置内の空間の制約が緩和され装置の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に従って構成された切削装置の斜視図。
図2図1に示す切削装置に装備されるカセット載置機構の斜視図。
図3図1に示す切削装置に装備されるカセット載置機構を構成するカセット載置台を第1の搬出入位置に位置付けた状態を示す説明図。
図4図1に示す切削装置に装備されるカセット載置機構を構成するカセット載置台を第2の搬出入位置に位置付けた状態を示す説明図。
図5図1に示す切削装置に装備されるカセット載置機構を構成するカセット載置台を第3の搬出入位置に位置付けた状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるウエーハの切削方法および切削装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明によって構成された切削装置の斜視図が示されている。
図示の実施形態における切削装置は、略直方体状の装置ハウジング2を具備している。この装置ハウジング2内には、被加工物としてのウエーハを保持する保持手段3が切削送り方向である矢印Xで示す切削送り方向に移動可能に配設されている。保持手段3は、吸着チャック支持台31と、該吸着チャック支持台31上に装着された吸着チャック32を具備しており、該吸着チャック32の表面である保持面上に被加工物である例えば円板状のウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。また、保持手段3は、図示しない回転機構によって回動可能に構成されている。
【0015】
図示の実施形態における切削装置は、切削手段としてのスピンドルユニット4を具備している。スピンドルユニット4は、図示しない移動基台に装着され矢印Xで示す切削送り方向と直交する矢印Yで示す割り出し方向および吸着チャック32の表面である保持面に垂直な矢印Zで示す切り込み方向に移動調整されるスピンドルハウジング41と、該スピンドルハウジング41に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転駆動される回転スピンドル42と、該回転スピンドル42に装着された切削ブレード43とを具備している。この切削ブレード43の両側には図示しない切削水供給源に接続された切削水供給ノズル44が配設されている。
【0016】
図示の実施形態における切削装置は、上記保持手段3を構成する吸着チャック32の表面に保持されたウエーハの表面を撮像し、上記切削ブレード43によって切削すべき領域を検出したり、切削溝の状態を確認したりするための撮像手段5を具備している。この撮像手段5は顕微鏡やCCDカメラ等の光学手段からなっている。また、図示の実施形態における切削装置は、撮像手段5によって撮像された画像を表示する表示手段6を具備している。
【0017】
図示の実施形態における切削装置は、被加工物としてのウエーハを収容するカセット10を具備している。カセット10は、被加工物であるウエーハを出し入れするための被加工物搬出入開口101を備えており、両側壁の内面にはウエーハを載置するための複数個のラック棚102が上下方向に対向して設けられている。カセット10に収納される被加工物であるウエーハ11は、図1に示すように円板形状に形成されており、その表面に格子状に形成された分割予定ライン111によって区画された多数の領域にIC、LSI等のデバイス112が形成されている。このように形成されたウエーハ11は、環状のフレーム12に装着されたダイシングテープ13の表面に貼着されている。ダイシングテープ13の粘着層は所定波長の紫外線を照射することによって粘着力が低下する所謂UVテープが用いられている。ウエーハ11を収容したカセット10は、被加工物搬出入開口101を仮置き領域14に向けてカセット載置機構7のカセット載置台71上に載置される。カセット載置台71の上面には、カセット10を載置したとき位置決めするための位置決め部材711が設けられている。なお、カセット載置機構7については、後で詳細に説明する。
【0018】
図示の実施形態における切削装置は、カセット10に収容された被加工物としてのウエーハ11を仮置き領域14に搬出するとともに切削加工後のウエーハ11をカセット10に搬入する搬出入手段15と、該搬出入手段15によって搬出されたウエーハ11を上記保持手段3上に搬送する第1の搬送手段16と、保持手段3で切削加工されたウエーハ11を洗浄する洗浄手段17と、保持手段3で切削加工されたウエーハ11を洗浄手段17へ搬送する第2の搬送手段18を具備している。
【0019】
次に、上記カセット載置機構7について、図2および図3を参照して説明する。
図示の実施形態におけるカセット載置機構7は、上記カセット載置台71の下側に配設された紫外線照射手段8と、カセット載置台71を上下方向に移動させるための昇降手段72を具備している。
【0020】
紫外線照射手段8は、カセット載置台71が上壁を構成するハウジング81を具備している。図2および図3に示すようにハウジング81は、搬出入手段15側(図3において右側)に開口811aが形成された紫外線照射室811を備えている。ハウジング81の紫外線照射室811には、上下方向中間部にウエーハ11の表面に照射してオゾンを生成するとともに活性酸素を生成する波長およびダイシングテープ13に照射して粘着力を低下せしめる波長を含む紫外線を照射する紫外線照射ランプ82が配設されている。この紫外線照射ランプ82は、波長が150nm〜400nmの紫外線を照射する低圧水銀ランプからなっている。また、ハウジング81に形成された紫外線照射室811には、紫外線照射ランプ82の下側においてウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持する環状のフレーム12を支持するための第1のフレーム支持手段83が配設されているとともに、紫外線照射ランプ82の上側においてウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持する環状のフレーム12を支持するための第2のフレーム支持手段84が配設されている。第1のフレーム支持手段83は紫外線照射ランプ82の下側においてハウジング81を構成する側壁812、813の内面にそれぞれ対向して設けられた一対の支持棚831、831とからなり、第2のフレーム支持手段84は紫外線照射ランプ82の上側においてハウジング81を構成する側壁812、813の内面にそれぞれ対向して設けられた一対の支持棚841、841とからなっている。
【0021】
上述した紫外線照射手段8を構成するハウジング81も後壁814には、図2および図3に示すように昇降手段72によって昇降せしめられる移動ブロック73および被案内部材74が装着されている。
【0022】
図示の実施形態における昇降手段72は、図2に示すように上下方向に配設された案内手段721と、該案内手段721に沿って上記移動ブロック73を移動せしめる移動手段722とからなっている。案内手段721は、互いに平行に配設され被案内部材74に設けられた一対の被案内溝741、741と摺動可能に嵌合する一対の案内レール721a、721aを備えている。移動手段722は、案内手段721を構成する一対の案内レール721aと721aとの間に上下方向に配設され上端部が案内手段721に取り付けられた軸受け721bに回転可能に支持された雄ねじロッド722aと、該雄ねじロッド722aを回転せしめる正転および逆転可能なパルスモータ722bとからなっており、図3に示すように雄ねじロッド722aが移動ブロック73に設けられた雌ねじ穴731に螺合するようになっている。従って、パルスモータ722bを一方向に回転駆動すると移動ブロック73および被案内部材74は雄ねじロッド722aおよび一対の案内レール721aと721aに沿って上昇せしめられ、パルスモータ722bを他方向に回転駆動すると移動ブロック73および被案内部材74は雄ねじロッド722aおよび一対の案内レール721aと721aに沿って下降せしめられる。このように昇降せしめられる移動ブロック73および被案内部材74は、図3に示すようにカセット載置台71に載置されたカセット10が上記搬出入手段15と対向する第1の搬出入位置と、図4に示すように紫外線照射手段8のハウジング81に配設された第2のフレーム支持手段84が搬出入手段15と対向する第2の搬出入位置と、図5に示すように紫外線照射手段8のハウジング81に配設された第1のフレーム支持手段83が搬出入手段15と対向する第3の搬出入位置に位置付けられる。なお、第1の搬出入位置においては、昇降手段72はカセット載置台71に載置されたカセット10に収容されているウエーハの収容位置に対応して位置調整する。
【0023】
図示の実施形態における切削装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
ウエーハ11の切削を行うに際しては、ウエーハ11を収容したカセット10を、カセット載置機構7のカセット載置台71上の所定位置に載置する。なお、カセット載置台71上にカセット10を載置する場合には、カセット載置台71は図3に示すように第1の搬出入位置に位置付けられている。図3に示すように第1の搬出入位置においてカセット10がカセット載置台71上の所定位置に載置されることにより、カセット10に収容されたウエーハ11の切削作業の準備が完了する。
【0024】
上述したように切削作業の準備が完了したならば、切削加工開始スイッチ(図示せず)が投入されると、カセット載置機構7の昇降手段72を作動してカセット載置台71に載置されたカセット10の所定位置を図3に示す第1の搬出入位置に位置付ける。カセット10が図3に示す第1の搬出入位置に位置付けられたら、搬出入手段15を作動してカセット10の所定の棚上に載置されたウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持する環状のフレーム12を把持する。このように、搬出入手段15によってウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持する環状のフレーム12を把持したならば、搬出入手段15を図3おいて2点差線で示す位置に位置付ける。
【0025】
次に、カセット載置機構7の昇降手段72を作動してカセット載置台71の下側に配設された紫外線照射手段8を図5に示す第3の搬出入位置に位置付ける。紫外線照射手段8が図5に示す第3の搬出入位置に位置付けられると、紫外線照射手段8のハウジング81に配設された第1のフレーム支持手段83が搬出入手段15と対向する位置となる。紫外線照射手段8が図5に示す第3の搬出入位置に位置付けられたら、搬出入手段15を作動してウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持した環状のフレーム12を開口811aを通して紫外線照射室811内に挿入し、環状のフレーム12を第1のフレーム支持手段83を構成する一対の支持棚831、831上に載置する。従って、一対の支持棚831、831上に載置された環状のフレーム12にダイシングテープ13を介して支持されたウエーハ11は表面が紫外線照射ランプ82と対向して位置付けられる。このように、ウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持した環状のフレーム12を第1のフレーム支持手段83を構成する一対の支持棚831、831上に載置したならば、搬出入機構15を図5おいて2点差線で示す位置に位置付ける。
【0026】
上述したようにウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持した環状のフレーム12を第1のフレーム支持手段83を構成する一対の支持棚831、831上に載置し、搬出入機構15を図5おいて2点差線で示す位置に位置付けたならば、紫外線照射室811に配設された紫外線照射ランプ82を点灯し、波長が150nm〜400nmの紫外線をウエーハ支持部材82上に載置されたウエーハ11に向けて照射する。この結果、波長が184.9nmの紫外線によって酸素分子を分解してオゾン(O3)が生成され、波長が253.7nmの紫外線によってオゾン(O3)が分解され高エネルギーの活性酸素が生成される。このようにして生成された活性酸素がウエーハ11の表面に作用することにより、ウエーハ11の表面は親水性が向上せしめられる(親水性付与工程)。このようにして親水性付与工程を実施したならば、紫外線照射ランプ82を消灯する。
【0027】
上述した親水性付与工程を実施したならば、搬出入機構15を作動して第1のフレーム支持手段83を構成する一対の支持棚831、831に支持されているウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持した環状のフレーム12を把持する。このように、ウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持した環状のフレーム12を把持した搬出入機構15は、ウエーハ11(以下、ウエーハ11をダイシングテープ13を介して環状のフレーム12に支持された状態のウエーハ11を単にウエーハ11という)を仮置き領域14に搬出する。仮置き領域14に搬出されたウエーハ11は、第1の搬送手段16の旋回動作によって上記保持手段3を構成する吸着チャック32の保持面に搬送され、該吸着チャック32に吸引保持される。このようにしてウエーハ11を吸引保持した保持手段3は、撮像手段5の直下まで移動せしめられる。保持手段3が撮像手段5の直下に位置付けられると、撮像手段5によってウエーハ11に形成されている分割予定ライン111が検出され、スピンドルユニット4の割り出し方向である矢印Y方向に移動調節して精密位置合わせ作業が行われる。
【0028】
その後、ウエーハ11を吸引保持した保持手段3を切削送り方向である矢印Xで示す方向(切削ブレード43の回転軸と直交する方向)に移動することにより、保持手段3に保持されたウエーハ11は切削ブレード43により所定の分割予定ライン111に沿って切断される(切削工程)。即ち、切削ブレード43は割り出し方向である矢印Yで示す方向および切り込み方向である矢印Zで示す方向に移動調整されて位置決めされたスピンドルユニット4に装着され、回転駆動されているので、保持手段3を切削ブレード43の下側に沿って矢印Xで示す切削送り方向に移動することにより、保持手段3に保持されたウエーハ11は切削ブレード43により所定の分割予定ライン111に沿って切断される。このようにウエーハ11を分割予定ライン111に沿って切断することにより、個々のデバイスに分割される。分割されたデバイスは、ダイシングテープ13の作用によってバラバラにはならず、環状のフレーム12にダイシングテープ13を介して支持されたウエーハ11の状態が維持されている。
【0029】
上述した切削工程においては、切削水供給ノズル44から切削ブレード43によるウエーハ11の切削部に切削水が供給される。従って、切削ブレード43による切削によって生成された切削屑が切削水に混入してウエーハ11の表面である切削面に漂うことになる。しかるに、ウエーハ11の表面である切削面は上述した親水性付与工程によって親水性が向上せしめられ濡れた状態が維持されるので、切削屑がウエーハ11の表面である切削面に強固に付着することはない。
【0030】
上述したようにして切削工程が終了したら、環状のフレーム12にダイシングテープ13を介して支持されている分割されたデバイス(以下、切削加工後のウエーハ11という)は、最初にウエーハ11を吸引保持した位置に戻され、ここで切削後のウエーハ11の吸引保持を解除する。次に、切削加工後のウエーハ11は、第2の搬送手段18によって洗浄手段17に搬送され、ここで上記切削時に生成された切削屑が洗浄除去される(洗浄工程)。この洗浄工程においては、上述したようにウエーハ11の上面である切削面に親水性が付与され切削時に生成された切削屑が強固に付着していないので、切削屑は容易に除去される。このようにして洗浄された切削加工後のウエーハ11は、第1の搬送手段16によって仮置き領域14に搬送される。
【0031】
一方、カセット載置機構7は、紫外線照射手段8を図4に示す第2の搬出入位置に位置付けている。そして、搬出入手段15を作動して上述したように仮置き領域14に搬送された切削加工後のウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持した環状のフレーム12を開口811aを通して紫外線照射室811内に挿入し、環状のフレーム12を第2のフレーム支持手段84を構成する一対の支持棚841、841上に載置する。従って、一対の支持棚841、841上に載置された環状のフレーム12に装着されたダイシングテープ13の裏面が紫外線照射ランプ82と対向して位置付けられる。このように、切削加工後のウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持した環状のフレーム12を第2のフレーム支持手段84を構成する一対の支持棚841、841上に載置したならば、搬出入機構15を図4おいて2点差線で示す位置に位置付けるとともに、紫外線照射室811に配設された紫外線照射ランプ82を点灯し、波長が150nm〜400nmの紫外線を切削加工後のウエーハ11が貼着されたダイシングテープ13に向けて照射する。この結果、ダイシングテープ13に照射される波長が300〜400nmの紫外線によって、ダイシングテープ13の粘着力が低下せしめられる(粘着力低下工程)。このように粘着力低下工程を実施することにより、次工程であるピックアップ工程においては、個々に分割されたデバイスをダイシングテープ13から剥離するのでピックアップが容易となる。
【0032】
上述したように紫外線照射手段8に搬送された切削加工後のウエーハ11が貼着されているダイシングテープ13に紫外線を照射したら、紫外線照射ランプ82を消灯する。次に、搬出入手段15を作動して上記粘着力低下工程を実施することによって粘着力が低下せしめられたダイシングテープ13に貼着されている切削加工後のウエーハ11を搬出する。そして、カセット載置機構7の昇降手段72を作動してカセット10を図3に示す第1の搬出入位置に位置付けた後、再度搬出入手段15を作動して切削加工後のウエーハ11を第1の搬出入位置に位置付けられているカセット10の所定位置に収容する。このようにして、切削加工後のウエーハ11をカセット10の所定位置に収容したならば、搬出入手段15を作動して次に切削すべきウエーハをカセット10から搬出し、上述した切削作業を繰り返し実施する。
【0033】
なお、上述した切削作業においては、親水性付与工程が実施されたウエーハ11に対して切削工程を実施している間に、次に切削すべきウエーハ11をカセット10から搬出して親水性付与工程を実施し、親水性が付与されたウエーハ11をカセット10に戻して準備しておくことで、作業効率を向上することができる。
【0034】
以上のように、図示の実施形態における紫外線照射手段8は、ハウジング81の紫外線照射室811に配設され波長が150nm〜400nmの紫外線を照射する低圧水銀ランプからなる紫外線照射ランプ82と、紫外線照射ランプ82下側に配設されウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持する環状のフレーム12を支持するための第1のフレーム支持手段83と、紫外線照射ランプ82の上側に配設されウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持する環状のフレーム12を支持するための第2のフレーム支持手段84を具備し、ウエーハ11の表面に紫外線を照射して親水性を付与する際にはウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持する環状のフレーム12を第1のフレーム支持手段83によって支持し、ダイシングテープ13に紫外線を照射して粘着力を低下せしめる際にはウエーハ11をダイシングテープ13を介して支持する環状のフレーム12を第2のフレーム支持手段84によって支持するようにしたので、ウエーハの表面に紫外線を照射して親水性を付与する親水性付与工程とダイシングテープに紫外線を照射して粘着力を低下せしめる粘着力低下工程を1個の紫外線照射ランプ82で実施することができる。従って、親水性付与用の紫外線照射ランプと粘着力低下用の紫外線照射ランプを配設する必要がないため、切削装置内の空間の制約が緩和され装置の小型化が可能となる。
【0035】
以上のように本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではない。図示の実施形態においては、親水性付与工程を切削装置に装備された紫外線照射手段8によって実施する例を示したが、切削装置に隣接して配置した紫外線照射手段によって親水性付与工程を実施してもよい。
【符号の説明】
【0036】
2:装置ハウジング
3:保持手段
4:スピンドルユニット
43:切削ブレード
44:切削水供給ノズル
5:撮像手段
6:表示手段
7:カセット載置機構
71:カセット載置台
72:昇降手段
8:紫外線照射手段
81:ハウジング
811:紫外線照射室
82:紫外線照射ランプ
83:第1のフレーム支持手段
84:第2のフレーム支持手段
10:カセット
11:ウエーハ
12:環状のフレーム
13:ダイシングテープ
15:搬出入手段
16:第1の搬送手段
17:洗浄手段
18:第2の搬送手段
図1
図2
図3
図4
図5