特許第6158032号(P6158032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6158032反応ガスをリサイクルした塩素化プロパンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158032
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】反応ガスをリサイクルした塩素化プロパンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/275 20060101AFI20170626BHJP
   B01J 31/28 20060101ALI20170626BHJP
   C07C 19/01 20060101ALI20170626BHJP
   C07C 17/38 20060101ALI20170626BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170626BHJP
【FI】
   C07C17/275
   B01J31/28 Z
   C07C19/01
   C07C17/38
   !C07B61/00 300
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-215464(P2013-215464)
(22)【出願日】2013年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-97978(P2014-97978A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2016年7月12日
(31)【優先権主張番号】特願2012-229707(P2012-229707)
(32)【優先日】2012年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 聡洋
(72)【発明者】
【氏名】小松 康尚
(72)【発明者】
【氏名】山東 篤生
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−087106(JP,A)
【文献】 特開2012−106934(JP,A)
【文献】 特開2012−158530(JP,A)
【文献】 特開昭62−263134(JP,A)
【文献】 特開2012−036190(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0225166(US,A1)
【文献】 特表2004−524272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/275
C07C 19/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密可能な少なくとも1つの反応器A、及び反応器Aとは別なる気密可能なガス回収容器を用い、四塩化炭素(液相)と、気体状のエチレン化合物とを反応させることにより、塩素化プロパンをバッチ式で繰り返して製造する方法であって、
(1)四塩化炭素(液相)が入れられた反応器A内に気体状のエチレン化合物を導入し、反応させて塩素化プロパン(液相)を生成させる工程、
(2)ガス回収容器に四塩化炭素(液相)を入れる工程、
(3)反応器Aでの反応終了後、生成した塩素化プロパン(液相)を取り出す前に気相ガスの少なくとも一部を、ガス回収容器内の四塩化炭素(液相)に吸収させる回収工程、
の各工程を有する第1バッチ製造を実施し、次いで、
上記(3)回収工程から得られる、反応器A内の気相ガスの少なくとも一部を吸収した四塩化炭素(液相)を反応原料として用いて、第2バッチ製造を実施することを特徴とする塩素化プロパンの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の各工程に、更に、
(4)反応器A内から生成した塩素化プロパン(液相)を取り出す工程、
(5)上記(3)回収工程より得られる、反応器A内の気相ガスの少なくとも一部を吸収した四塩化炭素(液相)を反応器Aに移送する工程、及び、
(6)反応器A内に更に気体状のエチレン化合物を導入し、反応させて塩素化プロパン(液相)を生成させる工程、
の各工程を加えることにより、塩素化プロパンの第2バッチ製造を実施する請求項1記載の塩素化プロパンの製造方法。
【請求項3】
気密可能な反応器Bを用意し、請求項1記載の各工程に、更に、
(7)上記(3)回収工程より得られる、反応器A内の気相ガスの少なくとも一部を吸収した四塩化炭素(液相)を反応器Bに移送する工程、及び、
(8)反応器B内に更に気体状のエチレン化合物を導入して反応させ塩素化プロパン(液相)を生成させる工程、
の各工程を加えることにより、塩素化プロパンの第2バッチ製造を実施する請求項1記載の塩素化プロパンの製造方法。
【請求項4】
反応器Aとは別なる気密可能なガス回収容器が反応器Cを兼ねており、
請求項1記載の各工程に、更に、
(9)該反応器C内に更に気体状のエチレン化合物を導入して反応させ塩素化プロパン(液相)を生成する工程、
を加えることにより、塩素化プロパンの第2バッチ製造を実施する請求項1記載の塩素化プロパンの製造方法。
【請求項5】
(3)回収工程における、反応器A内の気相ガスの、ガス回収容器内の四塩化炭素(液相)への吸収を、反応器Aの気相圧とガス回収容器の気相圧が平衡となるまで行う請求項1〜4のいずれか一項に記載の塩素化プロパンの製造方法。
【請求項6】
(3)回収工程における、反応器A内の気相ガスの、ガス回収容器内の四塩化炭素(液相)への吸収を、反応器A内のガス温度が100℃以上塩素化プロパンの沸点未満の条件下に行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の塩素化プロパンの製造方法。
【請求項7】
請求項4記載の各工程に、更に
(11)反応器A内から生成した塩素化プロパン(液相)を取り出す工程、
(12)反応器Aに新たな四塩化炭素(液相)を入れる工程、
(13)反応器Cでの反応終了後、上記反応器Aをガス回収容器として兼ねさせ、上記反応器C内の気相ガスの少なくとも一部を、該反応器A内の四塩化炭素(液相)に吸収させる回収工程、及び、
(6)反応器A内に更に気体状のエチレン化合物を導入して反応させ塩素化プロパン(液相)を生成させる工程、
の各工程を加えることにより、更に塩素化プロパンの第3バッチ製造を実施する請求項4記載の塩素化プロパンの製造方法。
【請求項8】
(13)回収工程における、反応器C内の気相ガスの、ガス回収容器を兼ねた反応器A内の四塩化炭素(液相)への吸収を、反応器Cの気相圧と該反応器Aの気相圧が平衡となるまで行う請求項7記載の塩素化プロパンの製造方法。
【請求項9】
(13)回収工程における、反応器C内の気相ガスの、ガス回収容器を兼ねた反応器A内の四塩化炭素(液相)への吸収を、反応器C内のガス温度が100℃以上塩素化プロパンの沸点未満の条件下に行うことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の塩素化プロパンの製造方法。
【請求項10】
四塩化炭素とエチレン化合物との反応を、鉄−非プロトン極性溶媒触媒下で行う請求項1〜9のいずれか一項に記載の塩素化プロパンの製造方法。
【請求項11】
四塩化炭素とエチレン化合物との反応を、鉄−リン酸エステル触媒下で行う請求項1〜9のいずれか一項に記載の塩素化プロパンの製造方法。
【請求項12】
気密可能な少なくとも1つの反応器A、気密可能なガス回収容器、反応器Aへエチレン化合物を導入するガス導入管、及び反応器Aとガス回収容器とを接続するガス流通管、該ガス流通管の途中に設けられた少なくとも1つの開閉バルブを有する塩素化プロパンのバッチ式製造装置。
【請求項13】
気密可能な少なくとも2つの反応器A及び反応器B、気密可能なガス回収容器、反応器A及び反応器Bへ各々エチレン化合物を導入するガス導入管、反応器Aとガス回収容器とを接続する反応器A用ガス流通管、反応器Bとガス回収容器とを接続する反応器B用ガス流通管、及び該反応器A用ガス流通管及び反応器B用ガス流通管の各途中に夫々設けられた少なくとも1つの開閉バルブを有する塩素化プロパンのバッチ式製造装置。
【請求項14】
気密可能な少なくとも1つの反応器A、気密可能な反応器Cを兼ねたガス回収容器、反応器A及びガス回収容器(反応器C)へ各々エチレン化合物を導入するガス導入管、及び反応器Aとガス回収容器(反応器C)とを接続するガス流通管、該ガス流通管の途中に設けられた少なくとも1つの開閉バルブを有する塩素化プロパンのバッチ式製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化プロパンを製造するための方法に関する。より詳しくは、バッチ方式で塩素化プロパンを製造する場合に生じる、有機塩素化合物を含むガスを有効利用する製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素化炭化水素は、農薬、医薬品、フロン代替材料等の各種製品を製造するための原料ないし中間体として重要である。例えば1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンから出発して1,1,2,3−テトラクロロプロペンを経て、除草剤として有用なトリクロロアリルジイソプロピルチオカルバメートを製造することができる。
【0003】
このような塩素化炭化水素の製造方法としては、例えば炭素数2の不飽和化合物(非置換又は塩素で置換されたエチレン)に四塩化炭素を付加して塩素化プロパンを得る第一反応と、該塩素化プロパンを脱塩化水素して塩素化プロペンを得る第二反応と、該塩素化プロペンにさらに塩素を付加して目的の塩素化プロパンを得る第三反応とからなる三段階反応が知られている。このうちの第一反応として、例えば特許文献1に、エチレンと四塩化炭素との付加反応を、金属鉄とホスホリル化合物の存在下で行って1,1,1,3−テトラクロロプロパンとする例が記載されている。
【0004】
この第一反応は、四塩化炭素からなる液相と、主として炭素数2の不飽和化合物からなる気相とからなる反応系中において、バッチ方式で行われることが多い。塩素化プロパンの合成方法として、触媒成分として用いるリン酸類を多段に分けて追加添加する方法(例えば、特許文献2)、加圧/減圧操作を行い各バッチ反応の前に気相部の置換を行う連続バッチ反応方法(例えば、特許文献3)、塩素化プロパンの繰り返しバッチを伴う製造方法において、前バッチの反応混合液の一部を反応器内に残存させて次バッチの反応を行う方法(例えば、特許文献4)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平2−47969号公報
【特許文献2】特開2012−36190号公報
【特許文献3】特開2012−87106号公報
【特許文献4】特開2012−158530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているように、鉄−リン酸エステル触媒を用いた四塩化炭素とエチレン化合物との反応において塩素化プロパンを得た場合、反応終了後の気相部ガスは有機塩素化合物を含むため、系内ガス排気のため大気放出した場合、環境負荷の増加が懸念される。これを回避する手段として、ガスの焼却処理及び無害化を行うプロセスが妥当であるが、建設費や維持費等で発生するコストもガスの処理量に比例して高くなる。そのため、工業的にスケールアップを行う上で、反応後のガス排出量を抑制するためのプロセス改良が不可欠であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来反応終了後に生じる排ガスが、反応に使用する四塩化炭素に溶存するところに注目し、密閉した容器中に充填した四塩化炭素に対してガスを吸収させ、排ガス回収を行った。また、同液を再度反応に使用することで塩素化プロパン製造に利用できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
即ち本発明は、気密可能な少なくとも1つの反応器A、及び反応器Aとは別なる気密可能なガス回収容器を用い、四塩化炭素(液相)と、気体状のエチレン化合物とを反応させることにより、塩素化プロパンをバッチ式で繰り返して製造する方法であって、
(1)四塩化炭素(液相)が入れられた反応器A内に気体状のエチレン化合物を導入し、反応させて塩素化プロパン(液相)を生成させる工程、
(2)ガス回収容器に四塩化炭素(液相)を入れる工程、
(3)反応器Aでの反応終了後、生成した塩素化プロパン(液相)を取り出す前に気相ガスの少なくとも一部を、ガス回収容器内の四塩化炭素(液相)に吸収させる回収工程、
の各工程を有する第1バッチ製造を実施し、次いで、
上記(3)回収工程から得られる、反応器A内の気相ガスの少なくとも一部を吸収した四塩化炭素(液相)を反応原料として用いて、第2バッチ製造を実施することを特徴とする塩素化プロパンの製造方法である。

【発明の効果】
【0009】
ガスを気体のままガスホルダー等の容器に回収しようとする場合、非常に大容量の容器が必要となるが、本発明によれば、反応終了後に気相中に残存するガスを、四塩化炭素に吸収させることにより、設備サイズを最適化してコスト削減に繋げることが可能となる。さらに、ガスを吸収させた四塩化炭素を、別バッチの反応の原料として使用することができるため原料の使用効率が高く、かつ廃棄されるガス成分も低減できる。従って本発明の方法は、工業的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明を実施するための製造装置の一例を示す模式図である。
図2図2は本発明を実施するための製造装置の別の一例を示す模式図である。
図3図3は本発明を実施するための製造装置の更に別の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は四塩化炭素と、気体状のエチレン化合物(以下、単にエチレン化合物ともいう)とを反応させることにより塩素化プロパンをバッチ式で繰り返して製造する方法に係わる。以下に本発明の詳しい実施態様を、各工程に分けて説明する。
【0012】
まず、気密可能な反応器Aを用いて、
(1)四塩化炭素が入れられた反応器A内に気体状のエチレン化合物を導入して反応させて塩素化プロパンを生成させる工程であるが、この反応自体は前掲特許文献1乃至4に示されるように周知である。簡単に説明すると以下の通りである。
【0013】
四塩化炭素が付加するエチレン化合物としては、常温・常圧下で気体状の化合物であればよく、具体的には、エチレン、塩化ビニル等が挙げられる。
【0014】
本発明の付加反応は、四塩化炭素が入れられた反応器A内に気体状のエチレン化合物を導入することにより、液相と気相とが存在するバッチ式反応器内における液相の反応系中で進行する。このとき、エチレン化合物は、通常、気相に供給された後、液相に溶解して、四塩化炭素との付加反応に供される。消費された分量に相当する量のエチレン化合物を随時気相に追加し、気相部の圧力が反応中ほぼ一定に維持されることが好ましい。
【0015】
付加反応の反応温度は、高い転化率と高い選択率とを両立するために、90〜160℃とすることが好ましく、105〜130℃とすることがさらに好ましい。反応圧力(気相圧力)は、上記反応温度において反応系が液相を維持し得る圧力であればよい。25℃に換算した反応圧力として、0.13〜0.54MPa(abs)であることが好ましく、0.17〜0.37MPa(abs)であることがより好ましい。
【0016】
上記反応を効率良く進めるためには、触媒の存在下で行うことが好ましい。用いる触媒としては、鉄−リン酸エステル系触媒、鉄−非プロトン極性溶媒触媒、銅−アミン触媒等が知られており、なかでも鉄−リン酸エステル系触媒、及び鉄−非プロトン極性溶媒触媒であることが好ましい。
【0017】
ここで使用される鉄としては、例えば金属鉄、純鉄、軟鉄、炭素鋼、フェロシリコン鋼、鉄を含む合金(例えばステンレス鋼等)等を挙げることができる。鉄の形状としては、例えば粉末状、粒状、塊状、棒状、球状、板状、繊維状等の任意の形状であることができるほか、これらを用いてさらに任意の加工をした金属片、蒸留充填物等であってもよい。リン酸エステル及び反応物、又は非プロトン性溶媒及び反応物との接触面積を十分に確保する観点から、形状は粉末状又は繊維状であることが好ましい。同様の観点から、窒素を吸着質としてBET法により測定した鉄の比表面積は0.001〜5m/gであることが好ましい。
【0018】
鉄の使用量としては、高い反応転化率及び高い選択率を両立するとの観点から、使用する四塩化炭素の1モルに対して、0.001モル以上とすることが好ましく、0.005モル以上とすることがより好ましく、特に0.01モル以上とすることが好ましい。鉄の使用量の上限は特に限定されない。鉄の使用量を多くしても、活性及び選択性にはほとんど影響しないが、鉄の体積相当量分、反応器に導入できる原料の絶対量が少なくなり、また反応に関与せずに無駄となる鉄が多くなる点で、経済上不利益となる。かかる観点から、鉄の使用量は使用する四塩化炭素の1モルに対して、10モル以下とすることが好ましく、5モル以下とすることが好ましく、1モル以下とすることがさらに好ましく、特に0.1モル以下とすることが好ましい。
【0019】
リン酸エステル系触媒の具体例としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸ジエチル、リン酸ジブチル、リン酸モノフェニル、リン酸モノブチル、リン酸ジメチルフェニル、リン酸ジエチルフェニル、リン酸ジメチルエチル、リン酸フェニルエチルメチル等を挙げることができる。これらのうち、リン酸トリアルキルエステルが好ましく、特にリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル又はリン酸トリブチルが好ましい。
【0020】
リン酸エステルの使用量は、高い転化率及び高い選択率を担保するとの観点から、使用する四塩化炭素の1モルに対して、0.001モル以上とすることが好ましく、0.002モル以上とすることがより好ましい。リン酸エステルの使用量の上限は特に限定されないが、使用量を過度に多くすると、発熱により反応の制御が難しくなり、また反応に関与せずに無駄となるリン酸エステルが多くなる点で、経済上不利益となる。かかる観点から、リン酸エステルの使用量は、四塩化炭素の1モルに対して、1モル以下とすることが好ましく、0.1モル以下とすることがより好ましく、0.05モル以下であってもよい。
【0021】
鉄とリン酸エステルとの反応系への添加は、反応開始前に鉄及びリン酸エステルの各全量を反応系中に一度に投入して行う方法によるか、あるいは鉄の全量及びリン酸エステルの一部を反応開始前に添加し、リン酸エステルは付加反応の進行中に追加添加する方法により行うことができる。
【0022】
他方、非プロトン性極性溶媒の具体例としては、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。これらのうち、アミド系溶媒が好ましく、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。上記リン酸エステルに変えて、非プロトン性極性溶媒を用いる場合において、使用量、及び添加方法はリン酸エステルと同様でよい。上記付加反応は、四塩化炭素の転化率が30〜100%となるまで続ければよく、より好ましくは80〜98%となるまで続ければよい。四塩化炭素の転化率は不飽和化合物の消費量から判断することができるし、反応混合液を直接、ガスクロマトグラフィーなどによって分析することによっても把握できる。
【0023】
また反応時間は特に限定されるものではないが、上述した如き条件下では、その合計の反応時間が1〜12時間となることが多く、2〜10時間となるのが一般的である。この範囲から大幅に外れる場合には不飽和化合物の供給速度や反応温度を適宜変更することが望ましい。
【0024】
本発明において、上記(1)工程における反応が終了した後、反応器Aの気相部に残存するガスを有効利用するため、反応器Aとは別に気密可能なガス回収容器を用意し、四塩化炭素を内部に充填する。即ち、(2)ガス回収容器に四塩化炭素を入れる工程を、上記(1)工程とは別に行う。この(2)工程は、上記(1)工程の終了前に行っても良いし、(1)工程の終了後、(3)工程に進む前に行ってもよい。上記(2)工程においてガス回収容器に入れる四塩化炭素の量は、反応終了後の反応器Aの気相部に残存するガスの一部を吸収するのに十分な量あれば特に限定されず、多ければ多いほどガスの回収率が向上するが、ガスを吸収した四塩化炭素の消費を考慮すれば、次バッチで原料として使用する量とすることが好ましい。上記ガス回収容器の大きさは、上記四塩化炭素を受容できる十分な容積があれば特に制限されないが、ガス回収容器の容積が大きいほどガスの回収率を向上できる。例えば、反応器Aの容積と同程度とすれば良い。
【0025】
続く(3)工程では、反応器Aでの反応終了後、反応器Aにおける気相ガスの少なくとも一部を、上記(2)工程においてガス回収容器内に充填した四塩化炭素に吸収させる回収工程を行う。反応器Aでの反応終了後、当該(3)工程において、反応後の気相部に存在するガスをガス回収容器内の四塩化炭素へ吸収させるにあたり、該四塩化炭素の液温は特に限定されないが、低温を維持することが好ましい。
【0026】
液体に対する気体の吸収率は、低温かつ高圧の液体に比例して高くなることは既知の事実であることから、容器内圧を高くし、液温を低く維持することで気相ガスの吸収率を高め、ガス回収の向上に繋げることはプロセス的に非常に有効である。気相ガスを回収するにあたり、四塩化炭素を充填したガス回収容器内に、気相部ガスの吐出ノズルを四塩化炭素中に設置することはガス吸収効率を高める上で望ましい。この場合、ノズル先端に気泡を微細化するためのリアクターを附属するとより良い。また、ガス回収容器内に、撹拌翼、バッフル等を設置して回収容器内の四塩化炭素を撹拌しながらガスを吸収させる方法も、ガス吸収効率を高める上で同様に好ましい。
【0027】
気相部のガスの供給源である反応器Aにおいて、ガス回収容器へのガス移送時に、反応を終えて得られた塩素化プロパンを主成分とする反応生成物液体を撹拌しながら抜気する方法が好ましい。塩素化プロパン中に溶存するガスは、反応器Aの内圧を脱圧するのみでは抜気しにくいことから、塩素化プロパンを撹拌することで溶存したガスを系内から追い出すことは、ガスの移送に要する時間の短縮に有効である。
【0028】
また、移送するガスは、出来得る限り全量回収することが望ましいが、このようにするためには反応器Aからガス回収容器へガスを全量移送する場合、両容器の間に設置したガス流通管の間に、コンプレッサー等の昇圧機を設置しなければならない。一番簡易かつ安価にガスの一部を回収する方法として、両容器の気相圧が平衡、均圧になるまでガスを流通し、四塩化炭素中にガスを吸収させて回収するプロセスが好ましく挙げられる。
【0029】
上記ガス移送時における、反応器A内の反応生成物液体及びガスの温度は特に制限されないが、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることが更に好ましい。また、塩素化プロパンの沸点未満に保つことが好ましい。これも上記に同じく、反応生成物液体の液温が高い状態では液中に溶存するガス量が低くなること、また、気相中においても温度が高い程、単位容積当たりのガス量が小さくなることを理由としている。即ち、特に、上記反応器A内の気相ガスの、ガス回収容器内の四塩化炭素への吸収を、反応器Aの気相圧とガス回収容器の気相圧が平衡となるまで行う態様において、ガス回収率を向上させるために有効な方法となる。なお、塩素化プロパンの沸点以上になると、本来目的とする反応生成物の回収率が低下する。即ち、本発明において、気相ガスの回収は、反応器Aにおける反応終了後、液温が下がらないうちに、開始することにより、反応後の熱を効率的に利用できる。
【0030】
そして本発明は、(3)工程より得られた、上記ガス回収容器内の、反応器A内の気相ガスの少なくとも一部を吸収した四塩化炭素を反応原料として、塩素化プロパンの第2バッチ製造を実施する。本発明の方法によれば、上記方法により、反応器A内の反応後の気相ガスの少なくとも一部を、安価に、効率良く回収し、そして、次バッチでの反応原料として使用するため、反応後のガス排出量を画期的に低減できる。
【0031】
本発明において、反応器A内の気相ガスを効率良く回収した四塩化炭素を反応原料として、塩素化プロパンの第2バッチ製造を実施すれば良く、第2バッチ製造の態様は特に限定されない。例えば、上記(1)工程、(2)工程、(3)工程に、更に、(4)反応器Aから液相を取り出す工程、(5)上記(3)回収工程より得られる、反応器A内の気相ガスの少なくとも一部を吸収した四塩化炭素を反応器Aに移送する工程、及び、(6)反応器A内に更にエチレン化合物を導入し、反応させて塩素化プロパンを生成させる工程、の各工程を加えることにより、塩素化プロパンの第2バッチ製造を実施することができる(第2バッチ第I態様)。
第2バッチ第I態様において、上記(4)工程では、反応器A内から液相、即ち、反応を終えて得られた塩素化プロパンを主成分とする反応生成物液体を全量取り出してもよいが、全量取り出さずに一部を残存させてもよい。例えば、特許文献4に開示されているように、反応器Aでの反応終了後、反応生成物液体の排出量を、全反応生成物液体量の98体積%以下とし、反応器内に2体積%以上の量の反応生成物液体を残存させた状態とすることが好ましい。より好ましくは、反応生成物液体の排出量を、全反応生成物液体の95体積%以下とし、反応器内に5体積%以上の量の反応生成物液体を残存させた状態とする。この操作によって次の2バッチ目における付加反応の反応速度、エチレンの流入開始時間(反応開始時間)が第1バッチ目より早くなり、同様の操作を2バッチ目以降において各バッチ毎に行うことで、以降のバッチ反応を安定的に反応を継続することができる。
上記残存させた反応生成物液体が、上記効果を奏するにあたっての詳細なメカニズムは定かではないが、触媒である鉄表面の活性が起因しているのではないかと推測している。即ち、第1バッチ目においては鉄の表面の活性が低いため、例えば、110℃でリン酸エステルが存在している場合でも、反応はすぐには始まらず、リン酸トリエチルを加えたり、時間が経過することによって、鉄表面が活性を持つようになり、鉄が四塩化炭素中に溶けやすい状態になると推測される。一方、反応後の反応混合液を一定量以上残すことにより、鉄−リン酸エステル触媒が反応初期から反応系内に存在することにより、反応開始(エチレンの流入開始時間)が早くなるのだと推測している。従って、第2バッチ目以降においては、各バッチ毎にこの操作を行えば、これら第2バッチ目以降の反応は安定的に反応を継続できる。
【0032】
上記(4)工程にて反応器Aから反応後液を取り出した後、(5)工程において、上記(3)回収工程より得られる、反応器A内の気相ガスの少なくとも一部を吸収した四塩化炭素を反応器Aに移送する。移送する四塩化炭素の液量は、次バッチに必要とする四塩化炭素量に応じて充填すれば良く、続く(6)工程において、反応器A内にエチレン化合物を導入し、反応させて塩素化プロパンを生成させる。塩素化プロパンを生成させる工程は上記(1)工程と同様であり、既に詳述しているため省略する。
【0033】
また、別態様の第2バッチ第II態様として、機密可能な反応器Bを別に用意し、上記(1)工程、(2)工程、(3)工程に、更に、(7)工程として、上記(3)回収工程より得られる、反応器B内の気相ガスの少なくとも一部を吸収した四塩化炭素を反応器Bに移送する工程、及び、(8)工程として、反応器B内に更にエチレン化合物を導入し、反応させて塩素化プロパンを生成させる工程、の各工程を加えることにより、塩素化プロパンの第2バッチ製造を実施する事もできる。かかる第2バッチ第II態様において、(7)工程は、上記(5)工程と、(8)工程は、上記(1)工程と同様であり、既に詳述しているため省略する。 当該態様に寄れば、反応器Aとは別に、反応器Bを設けることにより、(3)工程において、ガス回収容器内の四塩化炭素に、ガスを吸収させて回収した後、反応器A内の反応生成物液体の移液にかかる時間を待機する必要がないため、効率良く第2バッチ製造を開始することができる点で好ましい。
【0034】
更に、別態様の第2バッチ第III態様として、気密可能なガス回収容器が反応器Cを兼ねており、上記(1)工程、(2)工程、(3)工程に、更に、(9)該反応器C内に更にエチレン化合物を導入して反応させ塩素化プロパンを生成する工程、を加えることにより、塩素化プロパンの第2バッチ製造を実施することもできる。第2バッチ第III態様において、(2)工程では、四塩化炭素の液量は、次バッチに必要とする四塩化炭素量に応じて充填すれば良い。また(9)工程は、上記(1)工程と同様であり、既に詳述しているため省略する。当該態様は、ガス回収容器に反応器としての機能を持たせるため、設備的なコストがかかるが、(3)工程においてガスを吸収させて回収した後、四塩化炭素を移液することなく、(9)工程にかかることができるため、効率良く第2バッチ製造を開始することができる。
【0035】
本発明において、上記第2バッチ製造終了後の第3バッチについて特に制限されないが、第2バッチ製造終了後、各々の態様において、反応容器の気相部に存在するガスを、前述の通り、ガス回収容器内の四塩化炭素に吸収させて回収し、空の反応器に移液し、次バッチ製造の反応原料として使用することができる。塩素化プロパンの生成にかかる反応時間や、反応を終えて得られた反応生成物液体の移液を完了するまでにかかる時間等を考慮すれば、たとえば、1つのガス回収容器に対して、複数の反応器を順に反応させて、効率良くバッチ製造を繰り返して塩素化プロパンを製造することが可能である。
【0036】
また、前述の第2バッチ第III態様、即ち、気密可能なガス回収容器が反応器Cを兼ねている態様においては、以下の方法により第3バッチを実施することができる。すなわち、(11)工程として反応器A内から液相を取り出し、(12)工程として反応器Aに新たな四塩化炭素を入れて、(13)工程として、(9)工程における反応器Cでの反応終了後、上記反応器Aをガス回収容器として兼ねさせ、上記反応器C内の気相ガスの少なくとも一部を、該反応器A内の四塩化炭素に吸収させて回収し、及びさらに、(6)工程として、反応器A内に更にエチレン化合物を導入して反応させ塩素化プロパンを生成させて、塩素化プロパンの第3バッチ製造とする方法である。上記(11)工程、及び(12)工程は、反応器C内で塩素化プロパンを生成させる上記(9)工程の終了前に行っても良いし、若しくは(9)工程の終了後(13)工程に進む前に行っても良い。上記(11)工程については前記(4)工程と、(12)工程については前記(2)工程と、(13)工程については前記(3)工程と、それぞれ同様であり、既に詳述しているため省略する。(6)工程についても、既に詳述しているため省略する。
【0037】
上気ガス回収容器が反応器を兼ねる態様(第2バッチ第III態様)において、反応器としてA、Cの2つを用い、A→C→A→C→Aというように交互に用いる例を説明したが、反応器は2つに限定されるものではなく、必要に応じて3つ以上の反応器を用いても良い。例えば、3つの反応器を用いるのであれば、A→C→D→A→C→Dというように使用することが可能である。
【0038】
本発明において使用する反応装置の態様を例示すれば、図1図2図3
に示す形式が挙げられる。図1に示される例は、前記第2バッチ第I態様として、1つの反応器と1つのガス回収容器を用いた例であり、図2に示される例は、第2バッチ第II態様として、2つの反応器と1つのガス回収容器を用いた例であり、図3に示される例は、第2バッチ第III態様として、2つの反応器を用いた、即ちガス回収容器が反応器を兼ねる態様である。
以下、図1に示す形式を例に本発明の反応装置について説明する。即ち、原料及び生成した反応混合物を溜める反応器A(1)及び、ガス回収容器(2)、反応器Aにエチレン化合物、四塩化炭素等、原料を供給する原料供給管A(3)、反応器内の液を均一に撹拌するための撹拌翼(5)、反応器Aの下部より反応生成物液体を抜き出すための液抜出管A(7)、ガス回収容器に、四塩化炭素等を供給する原料供給管B(4)、ガス回収容器下部より反応器気相部に存在するガスを吸収した四塩化炭素を抜き出して反応器へ移液するためのポンプ(6)および液抜出管B(8)、反応器A(1)及びガス回収容器(2)の気相部を接続するガス流通管(9)、該ガス流通管を開閉する開閉バルブ(10)を有してなる。
【0039】
上記装置を使用した反応は、以下のようにして行うことができる。ここでは、エチレン化合物としてエチレンを用い、触媒として鉄−N,N−ジメチルアセトアミドを用いた例で説明する。
【0040】
先ず、反応器A(1)に原料である四塩化炭素、N,N−ジメチルアセトアミド、鉄類を所定量充填し、反応器と反応器内に充填した液の中間にある気相部をエチレンにて置換する。置換後の反応器は加熱して昇温し、反応を行わせるための目標の温度に到達した後にN,N−ジメチルアセトアミドおよびエチレンを連続的に反応器内へ供給、撹拌翼(5)を用いて液を撹拌し、第1バッチ目の反応を行う(N,N−ジメチルアセトアミド供給のための供給管は図示していない)。なお、開閉バルブ(10)は閉じた状態を維持しておく。
【0041】
この反応器で反応を行わせている間に、ガス回収容器(2)においては所定量の四塩化炭素を仕込んで待機する。
【0042】
反応終了後、N,N−ジメチルアセトアミド、及びエチレンの連続供給を停止し、装置を降温し、反応生成物液体の温度が塩素化プロパンの沸点以下になったら、反応器A(1)およびガス回収容器(2)の気相部を繋ぐガス流通管(9)上の開閉バルブ(10)を開き、反応器の気相部に存在するエチレンおよび塩素化プロパンを含むガスをガス回収容器(2)へ移送する。ガス回収容器(2)中に充填した四塩化炭素に向けて、反応器(1)の気相部ガスを溶存させる。
【0043】
気相部ガスを移送した後は開閉バルブ(10)を閉じ、反応器A(1)中に存在する反応生成物液体は液抜出管A(7)を通じて液を槽内より取り出す。反応器A(1)の反応生成物液体を抜き出した後、続いてポンプ(6)を起動し、ガス回収容器(2)内の溶存したガスを含む四塩化炭素を液抜出管B(8)を通じて反応器A(1)へ移送する。そして、反応器A(1)内にN,N−ジメチルアセトアミド、鉄類を所定量充填し、反応器と反応器内に充填した液の中間にある気相部をエチレンにて置換し、前述の第1バッチ目の反応と同様に、反応を行うことにより第2バッチ製造を実施する。
【0044】
上記の如き本発明の製造装置の大きさは、反応スケールに応じて適宜設定すればよい。また、上記ガス回収容器内に、ガスを効率よく回収させるために撹拌翼を設置したり、ガス回収容器内の四塩化炭素の温度上昇を抑制するための冷却システムを設置することもできる。また材質も、用いる原料及び反応生成物に対して耐食性があればよく、例えば、ガラス、ホーロー、ステンレス等で構成することができる。
上記本発明の反応装置において、第2バッチ第II態様では、図2に示すように反応器を2つ以上として製造を実施する。また、第2バッチ第III態様では、図3に示すようにガス回収容器として反応器C(13)を用い、ガス回収容器が反応器を兼ねて製造を実施する。この場合、図3に示す通り、それぞれの反応器に、エチレン化合物、四塩化炭素等、原料を供給する原料共給管A(3)、反応器内の液を均一に撹拌するための撹拌翼(5)、反応器の下部より反応生成物液体を抜き出すための液抜出管A(7)、反応器A(1)及び反応器C(2)の気相部を接続するガス流通管(9)、該ガス流通管を開閉する開閉バルブ(10)を有してなる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明をより具体的に説明するため、実施例を示すが、本発明は当該実施例に何ら制限されるものではない。
<実施例1>
撹拌機を備えた容積2LのSUS316製オートクレーブAに、四塩化炭素11mol、鉄0.07mol(四塩化炭素を100mol%として0.65mol%)、N,N−ジメチルアセトアミド0.01mol(四塩化炭素を100mol%として0.1mol%)を仕込み、密閉した。
【0046】
オートクレーブA内の空気を窒素置換した後、続いてエチレン置換を行い、350rpmで撹拌しながら110℃まで昇温、オートクレーブ圧力は0.5MPaGを維持するように系内へエチレンを連続的に供給、あわせてN,N−ジメチルアセトアミドも0.0001mol/minで連続的に系内へ供給し1バッチ目の反応を行った。7時間後、反応を終了し、40℃まで降温した時のオートクレーブA内圧は0.2MPaGとなった。一方、上記オートクレーブAにおいて反応を行っている間に、機密可能な容積2LのSUS316製ガス回収容器に、四塩化炭素11molを供給した。
【0047】
続いてオートクレーブAおよびガス回収容器を接続するライン上に設置したバルブを開にし、オートクレーブAの気相部に充満するガスを、ガス回収容器にあらかじめ入れておいた四塩化炭素中に3.2NLフローしてラインを閉じた。結果、オートクレーブA内圧は0.1MPaGとなった。この後、オートクレーブAを脱圧して常圧に戻した際に発生したガス量は4.2NLであったことから、排ガス回収率は43%でであった。
【0048】
続いてオートクレーブAから液組成を抜き出した。オートクレーブAから抜き出した液組成は、四塩化炭素の転化率95%、目的物である1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率98%の反応液を得ることができた。
【0049】
続いて、ガス回収容器より、回収したガスを溶存した四塩化炭素をオートクレーブAに全量移送し、鉄及びN,N−ジメチルアセトアミドを所定量仕込んで、110℃に昇温、エチレン圧0.5MPaGを維持して、1バッチ目と同様に反応を実施した。結果、四塩化炭素の転化率98%、目的物である1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率97%の反応液を得ることができた。
<実施例2>
撹拌機を備えた容積1Lのガラス製オートクレーブAに、四塩化炭素5.5mol、鉄0.04mol(四塩化炭素を100mol%として0.65mol%)、N,N−ジメチルアセトアミド0.01mol(四塩化炭素を100mol%として0.1mol%)を仕込み、密閉した。
【0050】
オートクレーブA内の空気を窒素置換した後、続いてエチレン置換を行い、400rpmで撹拌しながら130℃まで昇温、オートクレーブ圧力は0.6MPaGを維持するように系内へエチレンを連続的に供給、あわせてN,N−ジメチルアセトアミドも0.0001mol/minで連続的に系内へ供給し1バッチ目の反応を行った。5時間後、反応を終了し、100℃まで降温した時のオートクレーブA内圧は0.5MPaGとなった。一方、上記オートクレーブAにおいて反応を行っている間に、機密可能な容積1LのSUS316製ガス回収容器に、四塩化炭素5.5molを供給した。当該ガス回収容器は水浴中にて保持し、四塩化炭素温度を25℃で維持した。
【0051】
続いてオートクレーブAおよびガス回収容器を接続するライン上に設置したバルブを開にし、オートクレーブAの気相部に充満するガスを、ガス回収容器にあらかじめ入れておいた四塩化炭素中に2.5NLフローしてラインを閉じた。結果、オートクレーブA内圧は0.1MPaGとなった。この後、オートクレーブAを脱圧して常圧に戻した際に発生したガス量は1.6NLであったことから、排ガス回収率は60%であった。
【0052】
続いてオートクレーブAから液組成を抜き出した。オートクレーブAから抜き出した液組成は、四塩化炭素の転化率95%、目的物である1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率98%の反応液を得ることができた。
【0053】
続いて、ガス回収容器より、回収したガスを溶存した四塩化炭素をオートクレーブAに全量移送し、鉄及びN,N−ジメチルアセトアミドを所定量仕込んで、130℃に昇温、エチレン圧0.6MPaGを維持して、1バッチ目と同様に反応を実施した。結果、四塩化炭素の転化率96%、目的物である1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率98%の反応液を得ることができた。
<実施例3>
撹拌機を備えた容積2LのSUS316製オートクレーブAに、四塩化炭素11mol、鉄0.07mol(四塩化炭素を100mol%として0.65mol%)、N,N−ジメチルアセトアミド0.01mol(四塩化炭素を100mol%として0.1mol%)を仕込み、密閉した。
【0054】
オートクレーブA内の空気を窒素置換した後、続いてエチレン置換を行い、350rpmで撹拌しながら110℃まで昇温、オートクレーブ圧力は0.5MPaGを維持するように系内へエチレンを連続的に供給、あわせてN,N−ジメチルアセトアミドも0.0001mol/minで連続的に系内へ供給し1バッチ目の反応を行った。6時間後、反応を終了し、40℃まで降温した時のオートクレーブA内圧は0.2MPaGとなった。一方、上記オートクレーブAにおいて反応を行っている間に、機密可能な容積2LのSUS316製ガス回収容器に、四塩化炭素11molを供給した。
【0055】
続いてオートクレーブAおよびガス回収容器を接続するライン上に設置したバルブを開にし、オートクレーブAの気相部に充満するガスを、ガス回収容器にあらかじめ入れておいた四塩化炭素中に3.3NLフローしてラインを閉じた。結果、オートクレーブA内圧は0.1MPaGとなった。この後、オートクレーブAを脱圧して常圧に戻した際に発生したガス量は4.4NLであったことから、排ガス回収率は43%でであった。
【0056】
オートクレーブAから抜き出した液組成は、四塩化炭素の転化率94%、目的物である1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率98%の反応液を得ることができた。
【0057】
続いて、ガス回収容器より、回収したガスを溶存した四塩化炭素をオートクレーブAと同形状のオートクレーブBに全量移送し、鉄及びN,N−ジメチルアセトアミドを所定量仕込んで、110℃に昇温、エチレン圧0.5MPaGを維持して、1バッチ目と同様に反応を実施した。結果、四塩化炭素の転化率95%、目的物である1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率98%の反応液を得ることができた。
<実施例4>
撹拌機を備えた容積2LのSUS316製オートクレーブAおよび同形状のオートクレーブCに、各々四塩化炭素11mol、鉄0.07mol(四塩化炭素を100mol%として0.65mol%)、リン酸トリエチル0.01mol(四塩化炭素を100mol%として0.1mol%)を仕込み、密閉した。
【0058】
オートクレーブA内の空気を窒素置換した後、続いてエチレン置換を行い、350rpmで撹拌しながら110℃まで昇温、オートクレーブ圧力は0.5MPaGを維持するように系内へエチレンを連続的に供給、あわせてリン酸トリエチルも0.0001mol/minで連続的に系内へ供給した。7時間後、反応を終了し、40℃まで降温した時のオートクレーブA内圧は0.2MPaGとなった。
【0059】
続いてオートクレーブAおよびC気相部を接続するライン上に設置したバルブを開にし、オートクレーブAの気相部に充満するガスを、オートクレーブCにあらかじめ入れておいた四塩化炭素中に3.4NLフローしてラインを閉じた。結果、オートクレーブA内圧は0.1MPaGとなった。この後、オートクレーブAを脱圧して常圧に戻した際に発生したガス量は4.1NLであったことから、排ガス回収率は45%となった。
【0060】
また、オートクレーブAから抜き出した液組成は、四塩化炭素の転化率95%、目的物である1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率98%の反応液を得ることができた。
【0061】
オートクレーブAの反応後ガスを一部回収して充填したオートクレーブCは110℃に昇温、エチレン圧0.5MPaGを維持してオートクレーブAと同様に反応を実施した。結果、四塩化炭素の転化率98%、目的物である1,1,1,3−テトラクロロプロパンの選択率98%の反応液を得ることができた。
【符号の説明】
【0062】
塩素化プロパンの製造装置
(1)反応器A
(2)ガス回収容器
(3)原料供給管A
(4)原料供給管B
(5)撹拌翼
(6)ポンプ
(7)液抜出管A
(8)液抜出管B
(9)ガス流通管
(10)開閉バルブ
(11)反応器B
(12)バルブ
(13)反応器C
図1
図2
図3