特許第6158169号(P6158169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6158169液晶媒体用化合物および高周波数部品用のそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158169
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】液晶媒体用化合物および高周波数部品用のそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 25/24 20060101AFI20170626BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20170626BHJP
   H01P 1/18 20060101ALI20170626BHJP
   H01Q 3/36 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   C07C25/24CSP
   C09K19/18
   H01P1/18
   H01Q3/36
【請求項の数】22
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2014-506783(P2014-506783)
(86)(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公表番号】特表2014-514325(P2014-514325A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】EP2012001365
(87)【国際公開番号】WO2012146340
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年3月27日
(31)【優先権主張番号】102011018768.5
(32)【優先日】2011年4月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】ライフェンラート、 フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ヤスパー、 クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】パウルート、 デトレフ
(72)【発明者】
【氏名】真辺 篤孝
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第1730452(CN,A)
【文献】 特開2011−74074(JP,A)
【文献】 特開2004−285085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 25/00−25/28
C09K 19/00−19/60
H01P 1/00−1/397
H01Q 3/00−3/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物。
【化1】
(式中、
は、1〜15個のC原子を有する分岐状または非分岐状のアルキル、または、2〜15個のC原子を有する分岐状または非分岐状のアルケニルを表し、ただし加えて、これらの基における1個以上の隣接していない「−CH−」基は−O−で置き換えられていてもよく、および/または、1個以上のH原子はハロゲン原子で置き換えられていてもよく、
11は、1〜12個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、
12は、Fを表し、
13は、Hを表し、
14は、FまたはHを表し、
は、F、Cl、CFまたはOCFを表し、
【化2】
は、それぞれの出現で互いに独立に、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、2,6−ナフチレン、1,4−アントラセニレン、2,6−アントラセニレン、2,7−ピレニレン、2,7−フェナントレニレン(ただし加えて、1個または2個の「CH」基はNで置き換えられていてもよく、ただし同様に必要に応じて、環構造は1〜12個のC原子を有する直鎖状のアルキル基または3〜6個のC原子を有するシクロアルキル基で置換されていてもよい。)から選択される芳香族またはヘテロ芳香族環構造を表すか、1,4−シクロヘキシレンから選択される脂環式環構造(ただし加えて、1個または2個の隣接していない「CH」基は−O−および/または−S−で置き換えられていてもよい。)を表すか、1,4−シクロヘキセニレンまたは1,4−ビシクロオクチレンを表し、
は、それぞれの出現で互いに独立に、単結合、−C≡C−、−CF=CF−、−CH=CH−、−OCF−、−CH−CH−または−OCH−を表し、
nは、0〜3の範囲内の整数を表す。)
【請求項2】
11は、エチル基を表すことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
14は、Fを表すことを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
は、FまたはOCFを表すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
は、Fを表すことを特徴とする請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
nは1〜3の範囲内の整数であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
【化3】
を表す(式中、パラメータは、式Iで与えられる意味を有する。)ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
【化4】
を表す(式中、L11は、式Iで与えられる意味を有する。)ことを特徴とする請求項に記載の化合物。
【請求項9】
以下の式I−1〜I−4の化合物から成る群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化5】
(式中、パラメータは、式Iで与えられる意味を有する。)
【請求項10】
以下の式の化合物から成る群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化6】
【化7】
(式中、Rは、式Iで与えられる意味を有する。)
【請求項11】
nは1を表し、
環A11およびA12は無置換の1,4−フェニレンを表し、および
は単結合を表す
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
以下の式の化合物から成る群より選択されることを特徴とする請求項11に記載の化合物。
【化8】
(式中、パラメータは、式Iで与えられる意味を有する。)
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の式Iの1種類以上の化合物を含むことを特徴とする液晶媒体。
【請求項14】
式IIの化合物より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項13に記載の液晶媒体。
【化9】
(式中、
21は、R21またはX21を表し、
22は、R22またはX22を表し、
21およびR22は、互いに独立に、1〜17個のC原子を有するフッ素化されていないアルキルまたはフッ素化されていないアルコキシ、2〜15個のC原子を有するフッ素化されていないアルケニル、フッ素化されていないアルキニル、フッ素化されいないアルケニルオキシまたはフッ素化されていないアルコキシアルキル、好ましくは、アルキルまたはフッ素化されていないアルケニルを表し、
21およびX22は、互いに独立に、F、Cl、Br、−CN、−NCS、−SCN、−SF、1〜7個のC原子を有するフッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2〜7個のC原子を有するフッ素化アルケニル、フッ素化アルケニルオキシまたはフッ素化アルコキシアルキルを表し、
p、qは、独立に、0または1を表し、
21〜Z23は、互いに独立に、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−C≡C−または単結合を表し、および
【化10】
を表し、
23は、1〜5個のC原子を有するアルキル、2〜5個のC原子を有するアルケニルまたは3〜6個のC原子を有するシクロアルキルを表す。)
【請求項15】
媒体における式Iの化合物の濃度は、全体で、5%〜95%の範囲内であることを特徴とする請求項13または14に記載の液晶媒体。
【請求項16】
液晶媒体における、請求項1〜12のいずれか1項に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項17】
高周波数技術用の部品における、請求項1〜12のいずれか1項に記載の式Iの化合物の使用。
【請求項18】
1種類以上の式Iの化合物を1種類以上の更なる化合物と、任意成分として1種類以上の添加剤と混合する請求項1315のいずれか1項に記載の液晶媒体を調製する方法。
【請求項19】
請求項1315のいずれか一項に記載の液晶媒体を含むことを特徴とする高周波数技術用の部品。
【請求項20】
1個以上の機能的に連結された位相シフト器であることを特徴とする請求項19に記載の部品。
【請求項21】
高周波数技術用の部品における、請求項1315のいずれか1項に記載の液晶媒体の使用。
【請求項22】
請求項19または20に記載の1個以上の部品を含むことを特徴とする「フェーズドアレー(phased−array)」アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゼン環の2,3−位に置換基を有する1,4−エチニルベンゼン誘導体(請求項の式I参照)と、高周波数部品用のそれらの使用と、該化合物を含む液晶媒体と、これらの媒体を含む高周波数部品(特にアンテナ、特にギガヘルツ領域用)とに関する。該液晶媒体は、例えば、調整可能な「フェーズドアレー(phased−array)」アンテナのためのマイクロ波の位相シフトに役立つ。
【背景技術】
【0002】
液晶媒体は、情報を表示するために、電気光学的ディスプレイ(液晶ディスプレイ、Liquid Crystal Displays、LCD)において、長らく使用されてきた。
【0003】
1,4−ジエチニルベンゼン誘導体は、欧州特許出願公開第0968988号公報(特許文献1)、ドイツ国特許出願公開第19907941号公報(特許文献2)、ドイツ国特許出願公開第10120024号公報(特許文献3)および日本国特許出願公開第08012599公報(特許文献4)において、液晶成分として提案されている。しかしながら、それらにおける特定の置換は、本発明の記載内容で現される化合物の置換パターンに対応していない。
【0004】
しかしながら、最近、例えば、ドイツ国特許出願公開第10 2004 029 429号公報(特許文献5)および特開2005−120208号公報(特許文献6)などにおいて、マイクロ波技術用の部品における使用のためにも液晶媒体が提案された。
【0005】
高周波数技術における液晶媒体の工業的に有用な用途は、可変電圧により、特にギガヘルツ領域用に液晶媒体の誘電的特性を制御できるという液晶媒体の特性に基づく。よって、可動部を有しない調整可能なアンテナを設計できる(A.Gaebler、A.Moessinger、F.Goeldenら、「Liquid Crystal−Reconfigurable Antenna Concepts for Space Applications at Microwave and Millimeter Waves」、International Journal of Antennas and Propagation、2009巻、論文ID 876989号、7頁、2009年、doi:10.1155/2009/876989(非特許文献1))。
【0006】
A.Penirschke、S.Muller、P.Scheele、C.Weil、M.Wittek、C.HockおよびR.Jakobyの発表:「Cavity Perturbation Method for Characterization of Liquid Crystals up to 35 GHz」、34回European Microwave Conference−アムステルダム、545〜548頁(非特許文献2)には、とりわけ、9GHzの周波数における既知の単一の液晶物質K15(メルク社、ドイツ国)の特性が記載されている。
【0007】
下ではビストラン化合物とも呼ぶ、中央のフェニレン環上にアルキル置換を有する1−(フェニルエチニル)トランが、当業者に既知である。例えば、S.−T.Wu、C.−S.Hsu、K.−F.Shyuの発表、Appl.Phys.Lett.(1999年)、74巻(3号)、344〜346頁(非特許文献3)には、横方向にメチル基を有する下式の種々の液晶ビストラン化合物が開示されている。
【0008】
【化1】
横方向のメチル基を有するこのタイプの液晶ビストラン化合物に加えて、また、C.S.Hsu、K.F.Shyu、Y.Y.Chuang、S.−T.Wu Liq.Cryst.(2000年)、27巻(2号)、283〜287頁(非特許文献4)には、横方向のエチル基を有する対応する化合物が開示されており、および、とりわけ、「液晶光学的フェーズドアレー」におけるそれらの使用が提案されている。
【0009】
ドイツ国特許出願公開第10 2004 029 429号公報(上を参照、特許文献5)には、マイクロ波技術、とりわけ位相シフト器において、従来の液晶媒体を使用することが記載されている。そこでは、対応する周波数領域における液晶媒体の特性について、液晶媒体が既に検討されている。
【0010】
しかしながら、これまで知られている組成物または個々の化合物は、一般に、多くの不利益を有している。他の欠陥に加えて、殆どの不利益は、不都合に高い損失および/または不充分な位相シフトまたは不充分な材料特性に帰結する。
【0011】
高周波数技術において使用するためには、特に、従来から見るとかなり異常で標準的ではない特性または特性の組み合わせを有する液晶媒体が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0968988号公報
【特許文献2】ドイツ国特許出願公開第19907941号公報
【特許文献3】ドイツ国特許出願公開第10120024号公報
【特許文献4】日本国特許出願公開第08012599公報
【特許文献5】ドイツ国特許出願公開第10 2004 029 429号公報
【特許文献6】特開2005−120208号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】A.Gaebler、A.Moessinger、F.Goeldenら、「Liquid Crystal−Reconfigurable Antenna Concepts for Space Applications at Microwave and Millimeter Waves」、International Journal of Antennas and Propagation、2009巻、論文ID 876989号、7頁、2009年、doi:10.1155/2009/876989
【非特許文献2】A.Penirschke、S.Muller、P.Scheele、C.Weil、M.Wittek、C.HockおよびR.Jakoby:「Cavity Perturbation Method for Characterization of Liquid Crystals up to 35 GHz」、34回European Microwave Conference−アムステルダム、545〜548頁
【非特許文献3】S.−T.Wu、C.−S.Hsu、K.−F.Shyu Appl.Phys.Lett.(1999年)、74巻(3号)、344〜346頁
【非特許文献4】C.S.Hsu、K.F.Shyu、Y.Y.Chuang、S.−T.Wu Liq.Cryst.(2000年)、27巻(2号)、283〜287頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
よって、改良された特性を有する液晶媒体用の新規な成分が必要である。特に、マイクロ波領域における損失が低減されていなければならず、材料品質(η)が改良されていなければならない。また、調整可能なアンテナのためには、セルの電極間の電圧変化に対して速い反応時間を有する液晶媒体も必要である。
【0015】
加えて、成分の低温挙動を改良する要求がある。この場合、動作特性と、また寿命の両者を改良することが不可欠である。
【0016】
従って、対応する実際の用途に適する特性を有する液晶媒体に対する多大な要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことに、1個の芳香族環上のオルト位に2個の置換基を有する本発明による化合物は、対応する1置換の化合物または置換基が互いにオルト位には配置されていない二置換の化合物と比較して、著しく高い透明点(ネマチック相から等方相への転移)を有することが見出された。同時に、より少ない置換基を有するかオルト位に置換基のない比較化合物よりも、回転粘度(γ)が著しく低い。この効果は、固いエチニレン架橋で環構造の間隔が固定されている化合物で生じる。この効果を活かし、ここで驚くべきことに、本発明による化合物によって、適切なネマチック相範囲および高いΔnを有し、先行技術の材料の不具合を有していないか、少なくとも著しく低減された程度にのみ有する液晶媒体を達成できることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、式Iの化合物に関する。
【0019】
【化2】
式中、
は、1〜15個のC原子を有する分岐状または非分岐状のアルキル、または、2〜15個のC原子を有する分岐状または非分岐状のアルケニルを表し、ただし加えて、これらの基における1個以上の隣接していない「−CH−」基は−O−で置き換えられていてもよく、および/または、1個以上のH原子はハロゲン原子、好ましくはF原子で置き換えられていてもよく、
は、F、Cl、1〜4個のC原子を有するフッ素化アルキル、1〜4個のC原子を有するフッ素化アルコキシ、2〜4個のC原子を有するフッ素化アルケニル、2〜4個のC原子を有するフッ素化アルケニルオキシ、CN、NCSまたはSF、好ましくは、F、CFまたはOCF、特に好ましくは、FまたはOCFを表し、
11およびL13は、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有する分岐状または非分岐状のアルキル、2〜12個のC原子を有する分岐状または非分岐状のアルケニルまたはアルキニル(ただし加えて、これらの基における1個以上の隣接していない「−CH−」基は−O−で置き換えられていてもよい。)を表し、または、置換または無置換のシクロアルキル、シクロアルケニル、置換または無置換のフェニル、置換または無置換のアリールエチニルを表し、あるいは、L13は、また、Hも表し、
12およびL14は、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CN、1〜12個のC原子を有する分岐状または非分岐状のアルキル、2〜12個のC原子を有する分岐状または非分岐状のアルケニルまたはアルキニル(ただし加えて、これらの基における1個以上の隣接していない「−CH−」基は−O−で置き換えられていてもよい。)を表し、または、それぞれ1〜12個のC原子を有する置換または無置換のシクロアルキル、シクロアルケニル、置換または無置換のフェニル、置換または無置換のアリールエチニル、フッ素化アルキル、または、フッ素化アルコキシ、それぞれ2〜12個のC原子を有するフッ素化アルケニルまたはフッ素化アルケニルオキシを表し、あるいは、L14は、また、Hも表し、
【0020】
【化3】
は、それぞれの出現で互いに独立に、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、2,6−ナフチレン、1,4−アントラセニレン、2,6−アントラセニレン、2,7−ピレニレン、2,7−フェナントレニレン(ただし加えて、1個または2個の「CH」基はNで置き換えられていてもよく、ただし同様に必要に応じて、環構造は置換基L11で置換されていてもよい。)などの芳香族またはヘテロ芳香族環構造を表すか、1,4−シクロヘキシレンなどの脂環式環構造(ただし加えて、1個または2個の隣接していない「CH」基は−O−および/または−S−で置き換えられていてもよい。)を表すか、1,4−シクロヘキセニレンまたは1,4−ビシクロオクチレン、好ましくは、それぞれの場合で互いに独立に、
a)1,4−フェニレン、ただし、1個以上、好ましくは1個または2個の、好ましくは隣接していない「CH」基はNで置き換えられていてもよく、
b)トランス−1,4−シクロヘキシレンまたはシクロヘキセニレン、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は−O−および/または−S−で置き換えられていてもよく、ただし、HはFで置き換えられていてもよく、
c)下式の基
【0021】
【化4】
または、
d)群1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、シクロブタン−1,3−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、チオフェン−2,4−ジイル、フラン−2,5−ジイル、フラン−2,4−ジイル、
【0022】
【化5】
からの基を表し、
ただし、群a)、b)、c)およびd)において、また、1個以上のH原子は、Br、Cl、F、CN、−NCS、−SCN、SF、C〜C10アルキル、C〜C10アルコキシ、または、一フッ素化または多フッ素化C〜C10アルキルまたはアルコキシ基で置き換えられていてもよく、
ただし、存在する環A11およびA12の少なくともいずれか一方は、好ましくは、a)による環を表し、
11は、それぞれの出現で互いに独立に、単結合、−C≡C−、−CF=CF−、−CH=CH−、−OCF−、−CH−CH−または−OCH−、好ましくは、単結合または−C≡C−を表し、
nは0〜3、好ましくは1〜3の範囲内の整数、特に好ましくは1または2を表し、
および好ましくは、
【0023】
【化6】
を表す。
【0024】
本発明による化合物は、高い透明点、低い融点、非常に高い光学異方性(Δn)を有する。驚くべき低い回転粘度γによって、速い応答時間が達成される。よって、位相シフト器は、より速く調節できる。また、マイクロ波スペクトルにおける比較的低い損失率も有利である。単独または更なるメソゲン成分との混合物において、本発明の化合物は、広い温度範囲にわたってネマチック相を有する。これらの特性によって、本発明の化合物は、特に、高周波数技術用の部品、特に液晶位相シフト器における使用に適する。本発明による液晶媒体は、対応する特性、例えば、広い相範囲、速い応答時間、および加えて、良好な低温安定性を有する。
【0025】
式Iの好ましい化合物は、1つ以上の以下のパラメータを選択することを特徴とする。
【0026】
指数nは、好ましく、1または2、特に好ましくは、1である。
【0027】
環基A11およびA12は、それぞれの出現で互いに独立に、好ましくは、1,4−フェニレンであり、ただし加えて、1個以上のH原子は、Br、Cl、F、CN、アルキル(C〜C10)、メトキシ、一フッ素化または多フッ素化メチルまたはメトキシ基で置き換えられていてもよい。
【0028】
架橋基Zは、それぞれの出現で互いに独立に、好ましくは、単結合、−C≡C−、−CF=CF−または−CH=CH−であり、特に好ましくは、存在する架橋基Zの1つは−C≡C−であり、その他は、存在するのであれば、好ましくは、単結合である。
【0029】
従って、好ましい構造は、以下の式I−1〜I−4より選択される構造である。
【0030】
【化7】
式中、パラメータは、式Iにおいて上で与えられる意味を有し、好ましくは、
11は、1〜12個のC原子を有する非分岐状のアルキル、2〜12個のC原子を有する非分岐状のアルケニルまたはアルキニル、好ましくは、エチルを表し、および/または
14はFを表し、XはFを表すか、または、L14はHを表し、XはOCFを表す。
【0031】
は、好ましくは、1〜15個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上の「−CH−」基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接連結しないようにして、−C≡C−、−CH=CH−、−(CO)O−、−O(CO)−、−(CO)、−O−で置き換えられていてもよい。基Rは、好ましくは、2〜7個のC原子を有するアルキルである。ここで例えば、Rは、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシルを表す。
【0032】
従って、本発明の好ましい実施形態は、以下の例示構造より選択される。
【0033】
【化8】
【0034】
【化9】
式中、Rは上で示される意味を有し、好ましくは、2〜7個のC原子を有するアルキル基、例えば、プロピル基およびヘキシル基またはプロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル基を表す。
【0035】
式Iの化合物は、以下の一般的な反応スキーム(反応スキーム1〜3)に従い、有利に得ることができる。反応スキームにおいて、パラメータR、Z、L11〜L14およびn、および環A11およびA12は、上および下で定義される通りである。
【0036】
【化10】
<反応スキーム1>環A11およびA12は、それぞれ、式Iにおいて
【0037】
【化11】
に対して上で与えられる意味を有し、他のパラメータは、同様に、式Iに対して上で与えられる意味を有する。
【0038】
【化12】


<反応スキーム2>alkylは、好ましくは、1〜4個のC原子を有するn−アルキル、または、シクロアルキルを表す。
【0039】
【化13】
<反応スキーム3>alkylおよびalkylは、好ましくは互いに独立に、1〜4個のC原子を有するn−アルキル、または、シクロアルキルを表す。
【0040】
本発明による液晶媒体は、1種類以上の式Iの化合物と、任意成分として、少なくとも1種類の更なる、好ましくはメソゲン化合物とを含む。従って、液晶媒体は、好ましくは、2種類以上の化合物を含み、該化合物は、好ましくは、液晶である。好ましい媒体は、好ましい式Iの化合物を含む。
【0041】
液晶媒体の更なる成分は、好ましくは、式IIの化合物より選択される。
【0042】
【化14】
式中、
21は、R21またはX21を表し、
22は、R22またはX22を表し、
21およびR22は、互いに独立に、1〜17個、好ましくは3〜10個のC原子を有するフッ素化されていないアルキルまたはフッ素化されていないアルコキシ、2〜15個、好ましくは3〜10個のC原子を有するフッ素化されていないアルケニル、フッ素化されていないアルキニル、フッ素化されいないアルケニルオキシまたはフッ素化されていないアルコキシアルキル、好ましくは、アルキルまたはフッ素化されていないアルケニルを表し、
21およびX22は、互いに独立に、F、Cl、Br、−CN、−NCS、−SCN、−SF、1〜7個のC原子を有するフッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2〜7個のC原子を有するフッ素化アルケニル、フッ素化アルケニルオキシまたはフッ素化アルコキシアルキル、好ましくは、フッ素化アルコキシ、フッ素化アルケニルオキシ、FまたはClを表し、
p、qは、独立に、0または1を表し、
21〜Z23は、互いに独立に、トランス−CH=CH−、トランス−CF=CF−、−C≡C−または単結合を表し、および
【0043】
【化15】
を表し、
23は、1〜5個のC原子を有するアルキル、2〜5個のC原子を有するアルケニルまたは3〜6個のC原子を有するシクロアルキルを表す。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、液晶媒体は、式Iの1種類以上の化合物と、式IIの1種類以上の化合物とを含む。
【0045】
本出願による液晶媒体は、好ましくは、式Iの化合物を全体で5〜95%、好ましくは10〜90%、特に好ましくは15〜80%含む。
【0046】
本発明による液晶媒体は、式IおよびIIの化合物群より選択される化合物を、好ましくは含み、より好ましくは主としてこれらより成り、更に好ましくは実質的にこれらより成り、非常に好ましくは完全にこれらより成る。
【0047】
本出願において、組成物に関して「含む」は、関連する物、即ち、媒体または成分が、示される1種類の成分または複数種類の成分、または1種類の化合物または複数種類の化合物を、好ましくは10%以上、非常に好ましくは20%以上の総濃度で含有することを意味する。
【0048】
この関係において、「主としてこれらより成る」は、関連する物が、55%以上、好ましくは60%以上、非常に好ましくは70%以上の、示される1種類の成分または複数種類の成分、または1種類の化合物または複数種類の化合物を含有することを意味する。
【0049】
この関係において、「実質的にこれらより成る」は、関連する物が、80%以上、好ましくは90%以上、非常に好ましくは95%以上の、示される1種類の成分または複数種類の成分、または1種類の化合物または複数種類の化合物を含有することを意味する。
【0050】
この関係において、「完全にこれらより成る」は、関連する物が、98%以上、好ましくは99%以上、非常に好ましくは100.0%の、示される1種類の成分または複数種類の成分、または1種類の化合物または複数種類の化合物を含有することを意味する。
【0051】
本出願による液晶媒体は、好ましくは、式IおよびIIの化合物を全体で10〜100%、好ましくは20〜95%、特に好ましくは25〜90%含む。
【0052】
本発明によれば、式IIの化合物は、混合物全体の好ましくは10%〜90%、より好ましくは15%〜85%、更により好ましくは25%〜80%、非常に好ましくは30%〜75%の総濃度で使用される。
【0053】
加えて、液晶媒体は、安定化剤、キラルドーパントおよびナノ粒子などの更なる添加剤を含んでもよい。個々の添加された化合物は、0.005〜6%、好ましくは0.1〜3%の濃度で用いられる。これらの更なる構成成分の総濃度は、混合物全体を基礎として、0%〜10%、好ましくは0.1%〜6%の範囲内である。しかしながら、液晶混合物の残りの構成成分、即ち、液晶またはメソゲン化合物のための濃度データは、これらの添加剤の濃度を考慮せずに示される。
【0054】
液晶媒体は、好ましくは0〜10重量%、特に0.01〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%の安定化剤を含む。媒体は、好ましくは、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンまたは2−ベンゾトリアゾール−2−イルフェノールより選択される1種類以上の安定化剤を含む。これらの助剤は当業者に既知であり、例えば、光安定化剤として商業的に入手可能である。
【0055】
従って、本発明の実施形態は、また、1種類以上の式Iの化合物を、1種類以上の更なる化合物と、および、任意に、1種類以上の添加剤と混合することを特徴とする液晶媒体の調製方法でもある。この更なる化合物は、好ましくは、上で示される通りの式IIの化合物、および、任意に、1種類以上の更なる化合物より選択される。
【0056】
本出願において、誘電的に正との表現はΔε>3.0の化合物または成分を記載し、誘電的に中性は−1.5≦Δε≦3.0のものを記載し、誘電的に負はΔε<−1.5のものを記載する。それぞれの化合物の誘電異方性は、ネマチックホスト混合物におけるそれぞれ個々の化合物の10%溶液の結果より決定される。ホスト混合物におけるそれぞれの化合物の溶解度が10%未満の場合、濃度を5%に低下する。試験混合物の容量は、ホメオトロピック配向を有するセルおよびホモジニアス配向を有するセルの両者において決定する。両タイプのセルのセル厚は、およそ20μmである。印加される電圧は1kHzの周波数および典型的には0.5V〜1.0Vの有効値を有する矩形波であるが、常にそれぞれの試験混合物の容量閾値よりも低く選択される。
【0057】
Δεは(ε−ε)と定義され、一方、εaverageは(ε+2ε)/3である。
【0058】
誘電的に正の化合物用に使用されるホスト混合物は混合物ZLI−4792であり、誘電的に中性および誘電的に負の化合物用に使用されるのは混合物ZLI−3086で、両者ともドイツ国メルク社製である。化合物の誘電率の絶対値は、興味ある化合物を添加した際の、ホスト混合物のそれぞれの値の変化より決定される。その値を、興味ある化合物の濃度100%に外挿する。
【0059】
20℃の測定温度においてネマチック相を有する成分は、そのままで測定され、他の全ても化合物と同様に処理される。
【0060】
両方の場合において他に明言しない限り、本出願において閾電圧との用語は光学的閾値について言及し、10%相対的コントラスト(V10)についてであり、飽和電圧との用語は光学的飽和について言及し、90%相対的コントラスト(V90)についてである。フレデリクス閾値(VFr)とも呼ばれる容量的閾電圧(V)は、明示的に述べる場合にのみ使用する。
【0061】
本出願で示されるパラメータの範囲は、他に明示しない限り、全て限界値を含む。
【0062】
互いの組み合わせにおいて特性の各種の範囲に示される異なる上限および下限の値は、追加の好ましい範囲とする。
【0063】
本出願を通じて、他に明示しない限り、以下の条件および定義を適用する。全ての濃度は重量パーセントで示され、それぞれ混合物全体に関するものであり、全ての温度は、摂氏度であり、全ての温度差は差異度である。液晶については典型的な全ての物理的特性は、「Merck Liquid Crystals、Physical Properties of Liquid Crystals」、1997年11月刊、ドイツ国メルク社に従って決定され、他に明言しない限り、20℃の温度においてである。光学異方性(Δn)は、589.3nmの波長で決定される。誘電異方性(Δε)は、1kHzの周波数で決定される。閾電圧ならびに他の全ての電気光学的特性は、ドイツ国メルク社で製造された試験セルを使用して決定される。Δεの決定のための試験セルは、およそ20μmのセル厚を有している。電極は、1.13cmの面積および保護リングを有する円形ITO電極である。配向層は、ホメオトロピック配向(ε)用には日本国日産化学社製SE−1211、ホモジニアス配向(ε)用には日本国日本合成ゴム社製ポリイミドAL−1054である。容量は、0.3Vrmsの電圧を有する正弦波を使用するSolatron1260周波数応答解析装置を使用して決定する。電気光学的測定において使用される光は、白色光である。ドイツ国Autronic−Melchers社製の商業的に入手可能なDMS装置を使用する装置構成を、本明細書においては用いる。特性電圧を、垂直観察の下で決定する。閾値(V10)、中間灰色(V50)および飽和(V90)電圧を、それぞれ、10%、50%および90%相対コントラストに対して決定する。
【0064】
液晶媒体を、A.Penirschkeら、「Cavity Perturbation Method for Characterization of Liquid Crystals up to 35 GHz」、第34回European Microwave Conference、アムステルダム、545〜548頁に記載される通り、マイクロ波周波数領域における液晶媒体の特性について検討する。これについては、A.Gaeblerら、「Direct Simulation of Material Permittivites(以下省略)」、12MTC2009、International Instrumentation and Measurement Technology Conference、シンガポール、2009年(IEEE)、463〜467頁、および、ドイツ国特許出願公開第10 2004 029 429号公報も比較されたい。これらにも測定方法が同様に詳細に記載されている。
【0065】
液晶をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または石英製の毛細管内に導入する。毛細管は180μmの内径および350μmの外径を有する。有効長は2.0cmである。充填された毛細管を、共振周波数が30GHzのキャビティの中心に導入する。このキャビティは6.6mmの長さ、7.1mmの幅および3.6mmの高さを有する。次いで、入力信号(ソース)を印加し、市販のベクトルネットワークアナライザを使用して出力信号の結果を記録する。他の周波数(例えば、19GHz)については、毛細管の寸法を相応に適合させる。
【0066】
液晶で充填された毛細管がある状態での測定と、液晶で充填された毛細管がない状態での測定との間における共振周波数およびQ因子の変化を、A.Penirschkeらの上述の発表、第34回European Microwave Conference、アムステルダム、545〜548頁において、そこで記載される通り、式10および11を用いて、対応する目的とする周波数における誘電定数および損失角を決定するために使用する。
【0067】
液晶のダイレクターに垂直および平行な成分に対する特性の値は、磁界中の液晶の配向より得られる。このためには、永久磁石の磁界を使用する。磁界の強さは0.35テスラである。磁石の配置を対応して設定し、次いで、対応して90°回転する。
【0068】
マイクロ波領域における誘電異方性は、
Δε≡(εr,‖−εr,⊥
の通り定義される。
【0069】
変調能(modulatability)または調整能(tuneability)(τ)は、
τ≡(Δε/εr,‖
の通り定義される。
【0070】
材料品質(η)は、
η≡(τ/tanδεr,max
の通り定義され、最大誘電損失係数tanδεr,maxは、
tanδεr,max≡max{tanδεr,⊥;tanδεr,‖
であり、tanδεrに対して測定された値の最大値に起因する。
【0071】
好ましい液晶材料の材料品質(η)は5以上、好ましくは6以上、好ましくは8以上、好ましくは10以上、好ましくは15以上、好ましくは17以上、特に好ましくは20以上、非常に特に好ましくは25以上である。
【0072】
対応する成分において、好ましい液晶材料は、15°/dB以上、好ましくは20°/dB以上、好ましくは30°/dB以上、好ましくは40°/dB以上、好ましくは50°/dB以上、特に好ましくは80°/dB以上、非常に特に好ましくは100°/dB以上の位相シフト特性を有する。
【0073】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、それぞれの場合において少なくとも−20℃〜80℃、好ましくは−30℃〜85℃、非常に特に好ましくは−40℃〜100℃のネマチック相を有する。この相は、特に好ましくは、120℃以上まで、好ましくは140℃以上まで、非常に特に好ましくは180℃以上にまで及ぶ。本明細書において、ネマチック相を有するとの表現は、一方でスメクチック相および結晶化が対応する温度における低温で確認されないことを意味し、他方でネマチック相から加熱しても透明化が起きないことを意味する。低温における検討は対応する温度において流動粘度計中で行なわれ、5μmのセル厚を有する試験用セルにおいて少なくとも100時間保存して確認する。高温においては、従来法により毛細管中で透明点を測定する。
【0074】
本発明による液晶媒体は、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更により好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上、非常に特に好ましくは170℃以上の透明点を有する。
【0075】
本発明による液晶媒体のΔεは、1kHzおよび20℃において、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、非常に好ましくは3以上である。
【0076】
本発明による液晶媒体のΔnは、589nm(Na)および20℃において、好ましくは0.20以上〜0.90以下の範囲内、より好ましくは0.25以上〜0.90以下の範囲内、更により好ましくは0.30以上〜0.85以下の範囲内、非常に特に好ましくは0.35以上〜0.80以下の範囲内である。
【0077】
本出願の好ましい実施形態において、本発明による液晶媒体のΔnは、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.55以上である。
【0078】
更に、本発明による液晶媒体は、マイクロ波領域における高い異方性により特徴付けられる。複屈折率は、例えば、およそ8.3GHzにおいて、好ましくは0.14以上、特に好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.20以上、特に好ましくは0.25以上、非常に特に好ましくは0.30以上である。加えて、複屈折率は、好ましくは、0.80以下である。
【0079】
用いられる液晶は、個別の物質または混合物のいずれかである。それらは、好ましくは、ネマチック相を有する。
【0080】
本出願においては、他に明言しない限り、化合物との用語は、1種類の化合物および複数種類の化合物の両者を意味する。
【0081】
本発明による液晶媒体または少なくとも1種類の化合物を含む好ましい部品は、位相シフト器、バラクター、アンテナアレー(例えば、ラジオ、モバイル通信、マイクロ波/レーダーおよび他のデータ伝送用)、「整合回路適応フィルター」およびその他である。上で定義される通りの高周波数技術用の部品が好ましい。また、異なる印加電圧で変調できる部品も好ましい。非常に特に好ましい部品は位相シフト器である。好ましい実施形態において、複数の位相シフト器が機能的に連結され、例えば、位相制御されたグループアンテナ(一般に、「フェーズドアレー」アンテナと呼ばれる。)を与える。グループアンテナは、干渉を介して束化を達成するために、行列(マトリクス)に配置された送信または受信素子の位相シフトを使用する。行(row)または格子の形態の位相シフト器の並列配置によって、所謂「フェーズドアレー」の構築が可能となり、高周波数(例えば、ギガヘルツ領域)用の調整可能な送信または受信アンテナとして機能できる。本発明による「フェーズドアレー」アンテナは、非常に広範に使用可能な受信錐体(reception cone)を有する。
【0082】
好ましい用途は、自動車、船舶、航空機、宇宙旅行および衛星技術の分野からの有人または無人の運搬体上でのレーダー設備およびデータ伝送機器である。
【0083】
適切な部品、特に、位相シフト器を製造するために、本発明による液晶媒体を、典型的には、1mm未満の厚み、数mmの幅および数センチメートルの長さを有する矩形キャビティ内へ導入する。キャビティは、2つの長手側に沿って搭載された対向電極を有する。そのような配置は、当業者によく知られている。アンテナの異なる周波数または方向を設定するために、可変電圧を印加することで、アンテナを動作させながら液晶媒体の誘電特性を調整できる。
【0084】
用語「ハロゲン」または「ハロゲン化」は、F、Cl、BrおよびI、特にFおよびCl、特にはFを表す。
【0085】
用語「アルキル」は、好ましくは、1〜15個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状のアルキル基、特に、直鎖状の基であるメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルを包含する。2〜10個の炭素原子を有する基が、一般に好ましい。
【0086】
用語「アルケニル」は、好ましくは、2〜15個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状のアルケニル基、特に、直鎖状の基を包含する。特に好ましいアルケニル基は、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニル、C〜C−4−アルケニル、C〜C−5−アルケニルおよびC−6−アルケニル、特に、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニルおよびC〜C−4−アルケニルである。更に好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニルなどである。5個までの炭素原子を有する基が、一般に好ましい。
【0087】
用語「アルコキシ」は、好ましくは、式C2n+1−O−の直鎖状の基を包含し、ただし、nは1〜10を表す。nは、好ましくは、1〜6である。好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−ヘプトキシ、n−オクトキシ、n−ノノキシ、n−デコキシである。
【0088】
用語「オキサアルキル」または「アルコキシアルキル」は、好ましくは、式C2n+1−O−(CHの直鎖状の基を包含し、ただし、nおよびmは、それぞれ互いに独立に、1〜10を表す。好ましくは、nは1で、mは1〜6である。
【0089】
用語「フッ素化アルキル基」は、好ましくは、一フッ素化または多フッ素化された基を包含する。ペルフッ素化された基も含む。CF、CHCF、CHCHF、CHF、CHF、CHFCFおよびCFCHFCFが特に好ましい。
【0090】
用語「フッ素化アルコキシ基」は、一フッ素化または多フッ素化された基を包含する。ペルフッ素化された基も含む。OCF基が特に好ましい。
【0091】
用語「置換されたシクロアルキル」は、アルキル、特に1〜8個の炭素原子を有するアルキルで一置換または多置換されているシクロアルキルを包含する。
【0092】
用語「置換されたフェニル」は、Rなどで定義される基で一置換または多置換されているフェニル、特に、F、Cl、アルキルまたはアルコキシで置換されたフェニルを包含する。
【0093】
本出願において、高周波数技術とは、1MHz〜10THz、好ましくは1GHz〜3THz、より好ましくは2GHz〜1THz、特に好ましくは5〜300GHzの範囲内の周波数を有する用途を意味する。該用途は、好ましくは、「フェーズドアレー(phased−array)」モジュールを送信および受信アンテナにおいて使用できる通信転送に適するマイクロ波スペクトルまたは隣接領域で応用される。
【0094】
本発明による液晶媒体は、1種類以上の化合物、好ましくは2〜30種類、より好ましくは3〜20種類、非常に好ましくは3〜16種類の化合物から成る。これらの化合物は、慣用的な方法で混合される。一般に、より少ない量で使用される化合物の所望量を、より多い量で使用される化合物に溶解する。より高い濃度で用いられる化合物の透明点より温度が高い場合には、溶解過程の完了を観察するのは特に容易である。しかしながら、他の慣用の方法、例えば、化合物の同族または共融混合物であってよい、例えば、所謂プレ混合の使用や、構成成分自身が使用可能な状態の混合物である所謂「マルチ・ボトル」系を使用して媒体を調製することも可能である。
【0095】
例えば、液晶の融点T(C,N)またはT(C,S)、スメクチック(S)からネマチック(N)相への転移T(S,N)および透明点T(N,I)などの全ての温度は、摂氏度である。全ての温度差は差異度である。
【0096】
本出願および以下の例において、液晶化合物の構造は頭字語を用いて示され、化学式への変換は下の表AおよびBに従って行われる。全ての基C2n+1およびC2m+1は、それぞれnおよびm個のC原子を有する直鎖状のアルキル基であり;n、mおよびkは整数で、好ましくは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を表す。表Bにおけるコードは自明である。表Aにおいては、親構造に対する頭字語のみが示されている。個々の場合において、親構造に対する頭字語の後に、ダッシュで区切られて、置換基R1*、R2*、L1*およびL2*に対するコードが続く。
【0097】
【表1】
適切な混合物成分を表AおよびBに与える。
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
以下の例は、本発明を一切制限することなく本発明を説明する。
【0101】
しかしながら、物理的特性より、当業者に対しては、いかなる特性が達成可能であるか、およびどの範囲で特性を改変できるかが明らかとなる。よって、特に、好ましく達成することができる種々の特性の組み合わせが、当業者のために十分規定される。
【0102】
以下の略号を使用する。
【0103】
DMPU 1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン
DBU 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンまたは2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロピリミド[1,2−a]アゼピン(IUPAC)
THF テトラヒドロフラン
Li−TMP リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド
【実施例】
【0104】
用いるアセチレンおよびボロン酸は商業的に入手可能であるか、スキームI〜VIIIまたは既知の合成に類似して調製できる。基「C」は、非分岐状のn−ブチル基を表す。C、C13およびその他にも適用する。
【0105】
<合成例1:下の化合物の調製>
【0106】
【化16】
<工程1.1>
【0107】
【化17】
100gの1−ブロモ−3,4,5−トリフルオロベンゼンおよび50mlのヨードエタンを1lのTHF中に溶解し、THF中の91gのリチウムテトラメチルピペリジドの溶液を0℃において滴下で加える。次いで、反応混合物を放置して周囲温度まで温め、水を使用してバッチを加水分解し、25%HClを使用して酸性とし、抽出操作を行う。粗生成物を分別蒸留で精製し、0.2バールで125℃の沸点を有する70gの無色の液体を得る。
【0108】
<工程1.2>
【0109】
【化18】

最初に、5gの4−(4−ブチルフェニルエチニル)エチニルベンゼンを50mlのTHF中に導入し、−78℃まで冷却する。この溶液に、ヘキサン中のリチウムビス(トリメチルシリル)アミドの1M溶液20mlを滴下で添加し、混合物を放置して、−78℃で1時間反応させる。次いで、メトキシ−9−BBNの1M溶液20mlを滴下で添加し、混合物を2時間−78℃で撹拌する。最初に、40mlのTHF中に溶解した1−ブロモ−2−エチル−3,4,5−トリフルオロベンゼン4.6gを、0.2gのトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムおよび0.35gの2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニルより作製した触媒と共に第2の装置に導入し、それに第1の反応からの反応溶液を室温で加える。混合物を還流で15時間加熱する。水を使用してバッチを加水分解し、抽出操作を行う。粗生成物を、クロマトグラフィー(ペンタン/シリカゲル)で精製する。ペンタンより再結晶し、3.6gの標題の生成物を得る。
【0110】
【表5】
この合成例(1)からの化合物を、混合物例1および2で使用する。
【0111】
<合成例2>
【0112】
【化19】
例1に類似して、上の化合物を調製する。
【0113】
【表6】
この合成例(2)からの化合物を、混合物例3および4で使用する。
【0114】
<合成例3>
【0115】
【化20】

例1に類似して、上の化合物を調製する。
【0116】
【表7】
この合成例(3)からの化合物を、混合物例5および6で使用する。
【0117】
<合成例4>
【0118】
【化21】
例1に類似して、上の化合物を調製する。
【0119】
【表8】
この合成例(4)からの化合物を、混合物例7および8で使用する。
【0120】
<比較例1〜3>
【0121】
【化22】
【0122】
【表9】
<比較例1〜3>
略号PTP(2)TP−6−3の液晶物質をHsu、C.S.、Shyu、K.F.、Chuang、Y.Y.およびWu、S.−T.、Liq.Cryst.、27巻(2号)、(2000年)、283〜287頁の方法で調製し、その物性を、特にマイクロ波範囲において検討する。該化合物は、ネマチック相および114.5℃の透明点(T(N,I))を有する。更なる物性は、20℃において、ne(589.3nm)=1.8563;Δn(589.3nm)=0.3250;ε(1kHz)=3.40;Δε(1kHz)=+0.8およびγ=2100mPa・sである。該化合物は、マイクロ波範囲および/またはミリ波範囲おける用途、特に、位相シフト器に適している。
【0123】
【表10】
加えて、化合物n−1−ペンチル−4’−シアノビフェニル(「PP−5−N」または「5CB」とも呼ぶ。)および液晶混合物ZLI−4792(ドイツ国、ダルムスタット市、メルク社の製品)を、19GHzにおいて特性につき検討する。結果を表2にまとめる。
【0124】
【表11】
<混合物例1>
以下の表に示される通りの組成および特性を有する液晶媒体M−1を調製する。化合物(1)(No.1)は、合成例1に由来する。
【0125】
【表12】
この混合物は、マイクロ波範囲および/またはミリ波範囲おける用途、特に、位相シフト器に非常に適している。
【0126】
【表13】
比較のために、媒体M−1の第2〜15の化合物より化合物(1)を含まない媒体C−1を調製し、ただし、第2〜15の化合物は同一の相対量で存在している。
【0127】
<混合物例2>
以下の表に示される通りの組成および特性を有する液晶混合物M−2を調製する。
【0128】
【表14】
この混合物を、マイクロ波範囲における用途、特に、「フェーズアレー」アンテナのための位相シフト器用に使用する。
【0129】
【表15】
この混合物は、マイクロ波範囲および/またはミリ波範囲おける用途、特に、位相シフト器に非常に適している。
【0130】
<混合物例3>
以下の表に示される通りの組成および特性を有する液晶媒体M−3を調製する。化合物(2)(No.1)は、合成例2に由来する。
【0131】
【表16】
この混合物は、マイクロ波範囲および/またはミリ波範囲おける用途、特に、位相シフト器に非常に適している。
【0132】
【表17】
<混合物例4>
以下の表に示される通りの組成および特性を有する液晶混合物M−4を調製する。
【0133】
【表18】
この混合物は、マイクロ波範囲および/またはミリ波範囲おける用途、特に、位相シフト器に非常に適している。
【0134】
【表19】
<混合物例5>
以下の表に示される通りの組成および特性を有する液晶媒体M−5を調製する。化合物(3)(No.1)は、合成例3に由来する。
【0135】
【表20】
この混合物は、マイクロ波範囲および/またはミリ波範囲おける用途、特に、位相シフト器に非常に適している。
【0136】
【表21】
<混合物例6>
以下の表に示される通りの組成および特性を有する液晶混合物M−6を調製する。
【0137】
【表22】
この混合物は、マイクロ波範囲および/またはミリ波範囲おける用途、特に、位相シフト器に非常に適している。
【0138】
【表23】
<混合物例7>
以下の表に示される通りの組成および特性を有する液晶媒体M−7を調製する。化合物(4)(No.1)は、合成例4に由来する。
【0139】
【表24】
この混合物は、マイクロ波範囲および/またはミリ波範囲おける用途、特に、位相シフト器に非常に適している。
【0140】
【表25】
<混合物例8>
以下の表に示される通りの組成および特性を有する液晶混合物M−8を調製する。
【0141】
【表26】
この混合物は、マイクロ波範囲および/またはミリ波範囲おける用途、特に、位相シフト器に非常に適している。
【0142】
【表27】
また、本発明の実施形態および改変の更なる組み合わせも、記載に従って以下の請求項より生じる。