特許第6159102号(P6159102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159102
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】重防錆用プライマー
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20170626BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20170626BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170626BHJP
   C09D 129/02 20060101ALI20170626BHJP
   C09D 161/06 20060101ALI20170626BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20170626BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20170626BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20170626BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20170626BHJP
   C09D 127/12 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D5/00 D
   C09D7/12
   C09D129/02
   C09D161/06
   C09D167/00
   C09D133/00
   C09D163/00
   C09D175/04
   C09D127/12
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-42386(P2013-42386)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-169406(P2014-169406A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】513052631
【氏名又は名称】株式会社プラザ・オブ・レガシー
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】刀根 如人
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−258597(JP,A)
【文献】 特開2004−256696(JP,A)
【文献】 特開2005−054073(JP,A)
【文献】 特開平06−049392(JP,A)
【文献】 特開昭63−010673(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/020665(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/00
B05D 7/00−7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基を有するキレート剤、樹脂及び亜鉛粉末を含有することを特徴とする重防錆用プライマー。
【請求項2】
前記キレート剤が水酸基を有する請求項1に記載の重防錆用プライマー。
【請求項3】
前記キレート剤が、クエン酸、コハク酸、L−リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸エチレンジアミン四酢酸、ニトロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、及び3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸並びにそれらの塩化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のキレート剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の重防錆用プライマー。
【請求項4】
前記キレート剤の含有量が、0.1質量%〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の重防錆用プライマー。
【請求項5】
前記樹脂が、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びフッ素樹脂、並びにそれらの変性体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の重防錆用プライマー。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂の平均分子量が5000以下であることを特徴とする請求項に記載の重防錆用プライマー。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂は、一液性及び二液性エポキシ樹脂であり、主剤及び硬化剤からなる二液性エポキシ樹脂の場合、前記硬化剤が、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、脂環族ポリアミン、ポリアミドアミン及びエポキシアダクトアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項又はに記載の重防錆用プライマー。
【請求項8】
前記亜鉛粉末の平均粒径は、500μm以下であり、前記エポキシ樹脂との比率が、20/1〜1/20であることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の重防錆用プライマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤、樹脂及び亜鉛粉末を含有する水系又は溶剤系重防錆用プライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ジンクリッチペイントの鉄に対する防食効果は古くから知られており、亜鉛を高濃度で含む防食塗料が使用されている。このジンクリッチペイントのビヒクルは、有機系と無機系に分けられている。有機系は、無機系に比べ防食性は劣るもののハンドリング、増膜性、密着性の面で有利である。
近年、戦後復興期に建てた橋、道路をはじめとする建築物は、老朽化の時期を迎え、そのメンテナンス方法及び費用は莫大であり検討が必要である。現工法では老朽化した鉄部の処理としてサンドブラスト、ショットブラスト等を行っているが騒音、環境、コスト面で問題となっている。
【0003】
一般的な重防食塗料としては、ビスフェノールA型から構成されるエポキシ樹脂やウレタン樹脂が使用されているが、サンドブラストは必要である(例えば、特許文献1)。
そこでこれらの樹脂の中にタルク等の扁平顔料を用いて防食の向上を図っているがこの場合もサンドブラストは必要である。
また、水系又は溶剤系のジンクリッチペイントを用いた防錆塗料は数多くあるが、鉄部の処理はサンドブラストを必要であり抜本的な解決には至っていない(例えば、特許文献2又は特許文献3)。
一方、アクリル樹脂、ウレタン樹脂と有機キレート剤を混ぜることにより還元性を持たせた樹脂材料も提唱されているが、この方法も塩水噴霧試験72時間程度の試験の結果が開示されている(例えば特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−46564号公報
【特許文献2】特開平11−124520号公報
【特許文献3】特開2008−272666号公報
【特許文献4】特開2011−168757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サンドブラスト不要かつ塩水に対して長時間耐えうることができる重防錆用プライマーは提供できていなく、改良の余地がある。
本発明は上記事情に鑑みられたものであって、サンドブラストを行わず、3種ケレン程度で鉄部処理が簡略化でき、且つ、塩水に対して長時間耐えうることができる重防錆用プライマーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、還元剤、樹脂及び亜鉛粉末を含有することを特徴とする重防錆用プライマーである。
前記還元剤としては、クエン酸ナトリウム、コハク酸、L−リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、グルコン酸、りん酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)、ビタミンA、ビタミンE、カテキン、縮合型タンニン、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)、及びポリフェノール、並びにそれらの塩化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のキレート剤であることが好ましい。
前記還元剤の含有量は、0.1質量%〜30質量%であることが好ましい。
前記樹脂がブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びフッ素樹脂、並びにそれらの変性体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記エポキシ樹脂の平均分子量は、5000以下であることが好ましい。
前記エポキシ樹脂は、一液性及び二液性エポキシ樹脂であり、主剤及び硬化剤からなる二液性エポキシ樹脂の場合、前記硬化剤が、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、脂環族ポリアミン、ポリアミドアミン及びエポキシアダクトアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記亜鉛粉末の平均粒径は、500μm以下あり、前記エポキシ樹脂との比率が、20/1〜1/20であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、サンドブラストを行わず、3種ケレン程度で鉄部処理が簡略化でき、且つ、塩水に対して長時間耐えうることができる重防錆用プライマーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の重防錆用プライマーは、還元剤、樹脂及び亜鉛粉末を含有することを特徴とする。
【0009】
前記還元剤としては、クエン酸、コハク酸、L−リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、グルコン酸、りん酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTMP)、ビタミンA、ビタミンE、カテキン、縮合型タンニン、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)、ピロガロ−ル及びポリフェノール、並びにそれらの塩化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のキレート剤であることが好ましい。これらの中でも、クエン酸、EDTA、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)及びピロガロ−ル又はこれらの塩化合物がより好ましく、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)及びピロガロ−ルが特に好ましい。
前記還元剤の含有量は、0.1質量%〜30質量%であることが好ましい。
【0010】
本発明の重防錆用プライマーにおいて、前記還元剤は、0.1質量%〜30質量%含有することが好ましく、0.2質量%〜20.0質量%含有することがより好ましく、0.5質量%〜10.0質量%含有することが特に好ましい。
還元剤の含有量を前記範囲の下限値より多くすることにより防錆効果を高めることができ、上限値より少なくすることにより膜の密着性及び耐水性の劣化を防ぐことができる。
【0011】
前記樹脂はブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂及びその変性体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
ブチラール樹脂の具体例としてはポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。
【0013】
エポキシ樹脂の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビスフェノール類とエピクロロヒドリンの共重合体等が挙げられる。これらビスフェノール類は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0014】
フェノール樹脂の具体例としては、熱可塑性ノボラック樹脂、熱硬化性レゾール樹脂等が挙げられる。
【0015】
ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0016】
アクリル樹脂の具体例としては、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、アクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘキシル等や、これらの共重合体等が挙げられる。
【0017】
ウレタン樹脂の具体例としては、一液湿気硬化性ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0018】
フッ素樹脂の具体例としては、ルミフロン(旭硝子(株)製)、Duflon(日本ペイント(株)製)、ボンフロン(AGCコーテック(株)製)等が挙げられる。
【0019】
前記樹脂としては、水系樹脂又は溶剤系樹脂であることが好ましい。
水系樹脂とは、上記に例示した樹脂のうち、水を溶媒として用いたものをいう。
溶剤系樹脂とは、上記に例示した樹脂を、有機溶剤に溶解したものをいう。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類等が挙げられる。
【0020】
前記樹脂pHは、特に限定されないが、pH3〜10が好ましく、pH4.0〜pH10が更に好ましく、pH7〜pH9.5が特に好ましい。
前記樹脂のpHが3以上であることにより、塩水に対する長時間耐久性があり、pHが7以上であれば特に塩水噴霧試験1000時間以上という高い耐久性が得られる。
【0021】
前記樹脂としては、濡れ性及び鉄部と密着する樹脂であれば使用可能であるが、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
前記樹脂がエポキシ樹脂である場合、該エポキシ樹脂の分子量は5000以下であることが好ましく、200〜3000であることがより好ましく、300〜2000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂の分子量が前記範囲内であることにより、分子量が大きすぎると膜が硬くなりすぎ、割れが発生したり、密着性が劣る。
【0022】
本発明においては、前記エポキシ樹脂は、一液性及び二液性エポキシ樹脂であり、主剤及びアミン硬化剤からなる二液性エポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤として、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、脂環族ポリアミン、ポリアミドアミン及びエポキシアダクトアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、脂肪族ポリアミンがより好ましい。
【0023】
前記亜鉛粉末としては、従来公知のものを使用できるが、亜鉛粉末の粒度は、500μm以下あり、前記エポキシ樹脂との比率が、20/1〜1/20であることが好ましい。
亜鉛粉末の粒度は、より好ましくは3μm〜100μmであり、特に好ましくは3μm〜50μmである。
前記亜鉛粉末と前記エポキシ樹脂との比率は1/10〜10/1であることがより好ましく、1/1〜10/1であることが特に好ましい。
【0024】
前記樹脂には、pHを調整するために添加剤を添加してもよい。添加剤としては、クエン酸等の有機酸やケイ酸塩、メタノール、水、等が挙げられる。
【0025】
本発明によれば、サンドブラストを行わず、3種ケレン程度で鉄部処理が簡略化でき、且つ、塩水噴霧試験1000時間以上耐えうる重防錆用プライマーを提供することができる。
その理由は定かではないが、以下のように推測される。
鉄部を還元させるとさびの発生が抑えられることは鉄のpH−電位のプールベ図で説明される。一般的な鉄の電位は、−0.42mV〜−0.44mVであり、この図を引用するとこの電位が−0.6mV以下になるとpH=9.0以下で鉄は、安定領域(錆びない領域)になる。つまり、鉄部に還元が強くかかるとこの領域になる。これは、鉄を還元焼成すると錆びにくくなることと似ていると考えられる。
本発明における重防錆用プライマーは、3種ケレンを行っても未だ赤錆(FeO(OH))が存在している鉄部を処理対象とすることも想定している。赤錆に含まれる鉄はFe3+である。ここで、重防錆用プライマーに使用するキレート剤に、水酸基及びカルボキシ基が存在すると、これら水酸基およびカルボキシ基が、赤錆を構成するFe3+直接的及び間接的に結合し、Fe3+を還元することが考えられる。その結果、赤錆を構成する鉄の価数が小さくなると思われる。
このような構造を持つキレート剤としては、有機キレート剤では没食子酸が挙げられる。無機キレート剤でもリン酸及びそれの化合物は、この考えに当てはまるが還元力を考慮すると有機キレート剤を使用することが有利である。
上記反応の結果、赤錆を構成する鉄の価数が小さくなると、赤錆は黒錆(Fe)に変化する。非可逆である黒錆の粒子は、非常に小さいため防食効果も期待できると考えられる。
他方、鉄表面に他の化合物を形成することにより防食を持たせる方法があり一般的には酸性領域でリン酸、リン酸亜鉛等のリン酸化合物がある。
【0026】
しかしながら本発明においては、亜鉛粉末との併用系であるため、鉄表面に防食性化合物を形成させることとは抜本的に思想が異なる。本発明は、電気的考察が必要であり亜鉛粉末との通電性が必要条件となる。通電性を持たせる範囲での還元であることが必要となると思われる。
加熱硬化型及び常温硬化型のエポキシ樹脂系であり水系及び溶剤系でも可能である。このシステムは、一液性や、二液性の場合はアミンを硬化剤としており亜鉛粉末及びキレート剤が配合されている。水系の場合、ジンクリッチペイントは非常に不安定になることが知られているが溶剤を水溶性溶媒(アルコール系)にすることにより解消した。又、亜鉛の分散を考えるとその粒度は、小さい方が好ましいと考えられる。
ジンクリッチペイントの犠牲防食は、一般的に知られており、これは金属のイオン化傾向で説明されている。しかし、ジンクリッチペイントのみでは、長時間(塩水噴霧1000時間以上)は実現できないと考えられる。
従って、本発明ではキレート剤及びジンクリッチペイントの組み合わせにより内部及び外部からの腐食を遮断し、さらには鉄部処理としてサンドブラストを行う必要がなく3種ケレン程度で済み長時間(塩水噴霧1000時間以上)が実現可能となったと推測される。
本発明の重防錆プライマーを用いることにより老朽化した橋、船舶、プラント、建物等さらには鉄を使用しているあらゆる部分に対し3種ケレン程度で重防食性を発揮し環境面、コスト面で非常に有利である。従って、本発明は、産業上極めて有用である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
銅板を約3カ月間放置し錆を発生させ、3種ケレン処理を行った基板を以下用いた。
【0029】
(参考例)
キレート剤と水性樹脂の種類及びその樹脂のpHの安定性に関する試験である。以下に使用樹脂、キレート剤及びその他の添加剤とその配合量を記載する。また、表1における配合量は質量%とする。
【0030】
【表1】
エポキシ樹脂;アデカ(株)製;アデカレジンEM−101−50(試験4,5,6)、EM−0461N(試験2,3)、EM−0108(試験1)
没食子酸;関東化学(株)製試
クエン酸;昭和化学(株)製
EDTA;キレスト(株)製
メタノール;日本ケミカルズ(株)製
【0031】
表1に示すエポキシ樹脂を表1中の配合比で室温中約20分混合し、所定の塗料を得た。各種塗料を鉄鋼部に全塗膜厚約100μmの厚みで塗布し3日室温放置後特性を評価した。表1中の二液性エポキシ樹脂は、主剤及びアミン硬化剤を混合しているものである。また、エポキシ樹脂の種類は、使用pHに応じて変えている。
表1の結果から、キレート剤を添加した系において密着性及び耐水性は、大きく異なる。この結果は、鉄部に対する樹脂の構造からのぬれ性が起因していると考えられる。
【0032】
(実施例)
キレート剤を配合した水性塗料と亜鉛粉末の比率に対する安定性の試験である。以下に使用樹脂、キレート剤及びその他の添加剤とその配合量を記載する。また、表2における配合量は質量部とする。
【0033】
【表2】
エポキシ樹脂;アデカ(株)製;アデカレジンEM−101−50
没食子酸;関東化学(株)
メタノール;日本ケミカルズ(株)製
亜鉛粉末粒度4μm〜5μ
【0034】
表2に試験6の配合を基本として亜鉛粉末の比率に対する樹脂及びキレート剤の安定性を測定した。試験4の配合の樹脂部分と亜鉛粉末を上記表2中の配合比で室温中約20分混合し、所定の塗料を得た。各種塗料を鉄部に約100μmの厚みで塗布し3日室温放置後特性を評価した。亜鉛粉末の含有量が80質量部までは、塗膜物性は良好であることが判った。
【0035】
(実施例、比較例)
上記表2中の実施例3(試験9)において、JIS Z 2371に準じた中性塩水噴霧試験を行った。結果を以下表3に示す。また、表3における配合量は質量部とする。なお、比較例として亜鉛粉末の有無、キレート剤の有無を行った。
実施例4(試験11)のキレート剤有り、亜鉛粉末有りでは中性塩水噴霧試験1000時間を達成することができた。
【0036】
【表3】
【0037】
(参考例)
キレート剤と溶剤系樹脂の種類の安定性に関する試験である。以下に使用樹脂、キレート剤及びその他の添加剤とその配合量を記載する。
【0038】
【表4】
エポキシ樹脂;アデカ(株)製アデカレジンEP−5100−75X
アクリル樹脂;DIC(株)製;アクリディック 52−204
ウレタン樹脂;DIC(株)製;バーノック
没食子酸;関東化学(株)
メタノール;日光ケミカルズ(株)製
アセトン;デルタ(株)製
【0039】
ポキシ樹脂、アクリル樹脂及びウレタン樹脂を上記表中の配合比で室温中約20分混合し、所定の塗料を得た。各種塗料を鉄部に約100μmの厚みで塗布し3日室温放置後特性を評価した。表4中の二液性エポキシ樹脂は、主剤及びアミン硬化剤を混合して用いている。試験14が良好であることが判る。この結果は、鉄部に対する樹脂の構造からのぬれ性が起因していると考えられる。
【0040】
(実施例)
キレート剤を配合した溶剤塗料と亜鉛粉末の比率に対する安定性の試験である。以下に使用樹脂、キレート剤及びその他の添加剤とその配合量を記載する。
エポキシ樹脂;(株)アデカ製;アデカレジンEP−5100−75
没食子酸;関東化学(株)
メタノール;日本ケミカルズ(株)製
アセトン;デルタ(株)製
亜鉛粉末粒度4μm〜5μ
【0041】
【表5】
【0042】
上記表5に試験14の配合を基本として亜鉛粉末の比率に対する安定性を評価した結果を示す。試験14の配合の樹脂部分と亜鉛粉末を表5中の配合比で室温中約20分混合し、所定の塗料を得た。各種塗料を鉄部に全塗膜厚約100μmの厚みで塗布し3日室温放置後特性を評価した。
【0043】
(実施例、比較例)
表5中試験19をJIS Z 2371に準じた中性塩水噴霧試験を行った。結果を表6に示す。尚、比較として亜鉛粉末有りで、キレート剤の有無を行った。
【0044】
【表6】
【0045】
試験20のキレート剤有り、亜鉛粉末有りでは中性塩水噴霧試験1000時間を達成することができた。