(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る着用物品の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0012】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0013】
本実施の形態の着用物品は、パンツ型の使い捨ておむつ10である。なお、本発明における着用物品は、パンツ型の使い捨ておむつに限れられず、テープタイプの使い捨ておむつであってもよい。また、本発明の着用物品は、使い捨ておむつに限られず、排泄物を吸収する吸収体を有しない下着等の衣服であってもよい。
【0014】
(1)使い捨ておむつの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る使い捨ておむつ10の伸長状態の展開平面図である。
図2は、
図1のA−A断面図である。
図3及び
図4は、
図2のA−A断面を基準とした断面において、使い捨ておむつを着用者に装着した状態を示す図である。なお、以下、
図1等の平面図は、使い捨ておむつを構成する表面シート等の皺が形成されない状態まで腰回り弾性部材等の弾性部材を伸長させた図である。
【0015】
使い捨ておむつ1は、着用者の身体前側と身体後側とに延びる前後方向Lと、前後方向Lに直交する幅方向Wと、着用者に向かう内方向及び内方向と反対側に向かう外方向を有する厚み方向と、を有する。
【0016】
使い捨ておむつ1は、
図1に示すように、使い捨ておむつ1の前後方向Lにおいて、着用者の腹部を含む前胴回りに当てられる前胴回り部S1と、着用者の臀部を含む後胴回りに当てられる後胴回り部S2と、着用者の股下に当てられ、前胴回り部S1と後胴回り部S2との間に位置する股下部S3と、を有する。胴回り部は、前胴回り部S1と後胴回り部によって構成される。
【0017】
前胴回り部S1は、当該前胴回り部を前後方向に3等分した第1前領域RF1、第2前領域RF2及び第3前領域RF3に区画される。第1前領域RF1は、前胴回り部S1の前後方向内側端部を含む領域であり、第3前領域RF3は、前胴回り部S1の前後方向外側端部を含む領域であり、第2前領域RF2は、第1前領域RF1と第3前領域RF3の間に位置する。後胴回り部S2は、当該後胴回り部を前後方向に3等分した第1後領域RR1、第2後領域RR2及び第3後領域RR3に区画される。第1後領域RR1は、後胴回り部S2の前後方向内側端部を含む領域であり、第3後領域RR3は、前胴回り部S1の前後方向外側端部を含む領域であり、第2後領域RR2は、第1後領域RR1と第3後領域RR3の間に位置する。
【0018】
使い捨ておむつ1は、吸収性本体1Aと、外装体1Bと、から構成されており、これらは互いに、接着剤や熱融着などによって接合されている。
【0019】
吸収性本体1Aは、着用者の肌当接面側に位置する表面シート21と、着用者の非肌当接面側に位置する裏面シート22と、表面シート21と裏面シートの間に位置する吸収体30と、を少なくとも有する。吸収性本体1Aは、前胴回り部S1、後胴回り部S2、及び股下部S3に跨がって配置されている。
【0020】
表面シート21は、液透過性であり、吸収体30の表面側(肌当接面側)に設けられる。表面シートは、例えば、不織布によって構成される。
【0021】
裏面シート22は、液不透過性であり、吸収体30の裏面側(非肌当接面側)に設けられる。裏面シート22は、例えば、液を透過しないフィルムによって構成される。なお、裏面シートは、1枚のシートによって構成されていてもよいし、複数のシートが積層されて構成されていてもよい。
【0022】
吸収体30は、吸収性材料が積層された吸収性コアを有する。本実施の形態の吸収体30は、パルプとSAPが混合された吸収性コアと、当該吸収性コアを包むコアラップと、から構成されている。コアラップは、例えば、テッシュを用いることができる。なお、吸収体30は、吸収性コアを包むコアラップを有していなくてもよい。
【0023】
本実施の形態の吸収体30は、着用者の体圧が掛かることによって圧縮変形可能に構成されており、支持手段として機能する。支持手段としての吸収体30は、支持手段が圧縮変形した際の復元力によって、着用者の身体を押圧して着用者の身体を支持する。
【0024】
図2に示すように、吸収体30は、吸収体の幅方向外側端部において肌当接面側に突出した凸部31と、凸部間の凹部32と、を有する。凸部31は、吸収性コアの厚みが相対的に厚い部分であり、凹部32は、吸収性コアの厚みが相対的に薄い部分である。凸部31及び凹部32は、吸収体30の前後方向全域に亘って形成されている。凸部31は、使い捨ておむつが着用された状態で、着用者の臀部の膨らみに当たるように設けられている。凸部31は、着用者の体圧がかかった状態で、圧縮変形するように構成されている。
【0025】
なお、本実施の形態の吸収体30は、吸収体の幅方向端部に設けられた凸部が着用者の臀部の膨らみに当接し、凸部間に凹部が形成されているが、この構成に限られない。吸収体は、凸部や凹部が形成されてなく、肌当接面側の面が平滑面であってもよい。このような吸収体としては、吸収体の凸部が形成された部分の吸収性材料の密度が高く、かつ吸収体の凹部が形成された部分の密度が低く、肌当接面側の面が平滑面である構成を例示できる。また、吸収体は、幅方向外側端部から幅方向中央に向かって円弧状に凹む形状であってもよい。
【0026】
また、吸収体の凸部31や凹部32は、着用時に最も体圧が係る臀部近傍に対応する領域に設けられていればよい。よって、吸収体30の凸部31や凹部32は、吸収体30の前後方向全域に形成されずに、吸収体30の後側端部のみに形成されていてもよい。
【0027】
外装体1Bは、前胴回り部S1に配置される前外装体1BFと、後胴回り部S2に配置される後外装体1BRと、を有する。前外装体1BFと後外装体1BRは、前後方向において互いに離間している。なお、前外装体1BFと後外装体1BRとが一体化されていてもよい。
【0028】
前外装体1BFの一方の幅方向外側に位置する前胴回り縁部4が、後外装体1BRの一方の幅方向外側に位置する後胴回り縁部6と接合され、かつ前外装体1BFの他方の幅方向外側に位置する前胴回り縁部4’が、後外装体1BRの幅方向外側に位置する後胴回り縁部6’と接合されることによって、使い捨ておむつ1がパンツ型に形成される。パンツ型の使い捨ておむつの前胴回り部S1及び後胴回り部S2には、互いの縁部が接合された接合部(図示せず)が形成される、股下部S3は、接合部よりも前後方向内側の域である。
【0029】
使い捨ておむつ1には、パンツ型に形成された状態で、着用者の腰回りを囲んで配置される腰回り開口部(図示せず)と、着用者の脚回りを囲んで配置される一対の脚回り開口部(図示せず)と、が形成される。
外装体1Bは、着用者の肌当接面側に位置する外装表面シート71と、非肌当接面側に位置する外装裏面シート72と、を有する。外装表面シート71と外装裏面シート72の間に、着用者の脚回りに配置されるレッグ弾性部材81と、着用者の腰回りに配置される腰回り弾性部材82と、フィット弾性部材83と、が設けられている。レッグ弾性部材81、腰回り弾性部材82、及びフィット弾性部材83は、幅方向に沿って配置されており、幅方向に伸縮可能である。
【0030】
前外装体1BFと後外装体1BRは、前外装体1BFと後外装体1BRが接合された状態で着用者の腰回りを囲み、該腰回りを支持する腰支持部として機能する。腰支持部は、着用者の腰回り全周を囲む機能と、着用者の腰回りを支えて保持する機能と、を有する。腰支持部は、着用者の腰回りを囲むように配置される外装表面シート71及び外装裏面シート72と、幅方向に伸縮することによって着用者の腰回りに外装表面シート等をフィットさせるフィット弾性部材83と、腰回り開口部の周囲に配置され、かつ、着用者の腰回りを支持する腰回り弾性部材82と、によって構成されている。
【0031】
腰回り弾性部材82は、第3前領域RF3と第3後領域RR3とに配置されている。フィット弾性部材83は、前胴回り部において第3前領域RF3と第2前領域RF2に配置され、後胴回り部において第3後領域RR3と第2後領域RR2に配置されている。
【0032】
レッグ弾性部材81は、前胴回り部S1に配置される前レッグ弾性部材81Fと、後胴回り部S2に配置される後レッグ弾性部材81Rと、を有する。レッグ弾性部材81は、着用者の脚を腹側に押し上げつつ着用者の脚を支持する脚支持部として機能する。本実施の形態の脚支持部としてのレッグ弾性部材は、胴回り部における第1前領域RF1及び第1後領域RR1に設けられている。
【0033】
前レッグ弾性部材81Fが配置された第1前領域RF1の伸縮率は、後レッグ弾性部材81Rが配置された第1後領域RR1の伸縮率よりも高い。具体的には、第1後領域RR1の幅方向の伸縮率は、1.6倍〜3.6倍であり、第1前領域RF1の幅方向の伸縮率は、1.8倍〜3.8倍である。よって、使い捨ておむつの脚回り開口部9は、後側よりも前側の方が収縮し、前側に向いて開口する。また、使い捨ておむつが着用された状態で、前胴回り部側の脚回り開口部は、後胴回り部側の脚回り開口部よりも収縮する。よって、着用者の脚は、レッグ弾性部材によって前側に引き寄せられる。
【0034】
第1後領域RR1の伸縮率は、第2後領域RR2の伸縮率よりも高い。具体的には、第1後領域RR1の幅方向の伸縮率は、1.6倍〜3.6倍であり、第2後領域RR2の幅方向の伸縮率は、1.6倍〜3.3倍である。
【0035】
第1前領域RF1の伸縮率は、第2前領域RF2の伸縮率よりも高い。具体的には、第1前領域RF1の幅方向の伸縮率は、1.8倍〜3.8倍であり、第2前領域RF2の幅方向の伸縮率は、1.5倍〜3.2倍である。
【0036】
また、前レッグ弾性部材81Fが配置された第1前領域RF1の収縮応力は、後レッグ弾性部材81Rが配置された第1後領域RR1の収縮応力よりも低い。具体的には、第1前領域RF1の収縮応力は、0.2N/10mm〜0.5N/10mmであり、第1後領域RR1の収縮応力は、0.3N/10mm〜1.0N/10mmである。第1前領域RF1の収縮応力が第1後領域RR1の収縮応力よりも低いため、第1前領域RF1は、第1後領域RR1よりも伸び易い。よって、着用者が脚を前側により引き寄せ易くなる。
【0037】
第1後領域RR1の収縮応力は、第2後領域RR2の収縮応力よりも高い。具体的には、第1後領域RR1の収縮応力は、0.3N/10mm〜1.0N/10mmであり、第2後領域RR2の収縮応力は、0.25N/10mm〜0.9N/10mmである。
【0038】
第1前領域RF1の収縮応力は、第2前領域RF2の収縮応力よりも高い。具体的には、第1前領域RF1の収縮応力は、0.2N/10mm〜0.5N/10mmであり、第2前領域RF2の収縮応力は、0.1〜0.5N/10mmである。
【0039】
なお、本実施の形態の脚支持部は、後レッグ弾性部材81Rの伸縮率よりも高い前レッグ弾性部材81Fによって構成されているが、本発明の脚支持部は、当該構成に限定されない。脚支持部は、着用者の後胴回り部側の脚回りを腹側に向かって引き寄せるように構成されていればよく、例えば、前レッグ弾性部材のみを配置し、後レッグ弾性部材を配置しない構成であってもよいし、前レッグ弾性部材の本数や面積を後レッグ弾性部材の本数や面積よりも多くする構成であってもよい。
【0040】
また、レッグ弾性部材81は、外装体1Bの幅方向全域に配置されているが、吸収体と重なる部分のレッグ弾性部材は、非伸長状態で配置されていることが好ましい。非伸長状態のレッグ弾性部材とは、伸縮性を発揮しない状態で配置されたレッグ弾性部材である。幅方向に伸長しない状態で外装シートにレッグ弾性部材を固定したり、レッグ弾性部材を切断したりすることにより、レッグ弾性部材が非伸長状態となる。
【0041】
前外装体1BFの第2前領域RF2は、着用者の腹部に当接し、腹部当接部として機能する。第2前領域RF2は、幅方向に伸縮性を有する。第2前領域RF2は、少なくとも幅方向に伸縮可能であればよく、前後方向L及び幅方向Wに伸縮可能であってもよい。第2前領域RF2は、例えば、例えば、メッシュ状のシートによって構成されていてもよいし、伸縮性を有する不織布によって構成されていてもよいし、弾性部材が伸長固定された非伸縮性のシートによって構成されていてもよい。本実施の形態の第2前領域RF2は、外装表面シート71と、外装裏面シート72と、外装表面シート71と外装裏面シート72の間に配置されたフィット弾性部材83と、によって構成されている。
【0042】
上述のように第2前領域RF2の伸縮率は、第1前領域RF1の伸縮率よりも低い。また、第2前領域RF2の収縮応力は、第1前領域RF1の収縮応力よりも低い。
【0043】
後外装体1BRの第2後領域RR2は、着用者の臀部に当接し、臀部当接部として機能する。第2後領域RR2は、幅方向に伸縮性を有する。第2後領域RR2は、少なくとも幅方向に伸縮可能であればよく、前後方向及び幅方向に伸縮可能であってもよい。第2後領域RR2は、例えば、メッシュ状のシートによって構成されていてもよいし、伸縮性を有する不織布によって構成されていてもよいし、弾性部材が伸長固定された非伸縮性のシートによって構成されていてもよい。本実施の形態の第2後領域RR2は、外装表面シート71と、外装裏面シート72と、外装表面シート71と外装裏面シート72の間に配置されたフィット弾性部材83と、によって構成されている。
【0044】
上述のように第2後領域RR2の伸縮率は、第1後領域RR1の伸縮率よりも低い。また、第2後領域RR2の収縮応力は、第1後領域RR1の収縮応力よりも低い。
【0045】
なお、弾性部材が配置された領域の収縮応力は、(株)島津製作所製:オートグラフ型引張試験機、例えば形式AG−1KNIを用いて、サイクル試験にて測定できる。
【0046】
具体的には、以下の方法に沿って測定できる。予め、対象とする使い捨ておむつの脇部の左右の接合部の内々間距離を、サンプル表面にしわが発生しない状態にまで伸ばした状態にて測定する。当該測定値を最大伸長時サンプル幅Aとする。左右接合部の内々間距離とは、前胴回り縁部4側の接合部と前胴回り縁部4’側の接合部との幅方向の距離である。
【0047】
次いで、対象とするおむつ胴回り部の一方の側(前側又は後側)から測定対象域を切り出し、試料を用意する。切り出した試料を、チャック間距離100mmとして、左右係止め領域を試験機のチャックに固定する。次いで、サンプルが伸長する方向に、100mm/分の速度で伸度85%(距離Aの85%)まで伸長させその後、100mm/分の速度で、伸度70%の長さまで戻す(距離Aの70%)。この時の、応力(N)を測定結果値とし、サンプル幅を基に、10mm幅あたりの応力値(N/10mm)へと換算して、収縮応力の値とする。
【0048】
また、伸縮率は、収縮方向(本実施形態では、幅方向W)における伸縮の程度を意味し、以下のように規定される。
【0049】
伸縮率=(最大伸張状態における測定領域の収縮方向における長さ)/(自然状態における測定領域の収縮方向における長さ)
なお、本明細書において、かかる伸縮率は、例えば、次のように測定されるものとする。
【0050】
第1に、使い捨ておむつがパッケージ等に封入されている場合には、パッケージから使い捨ておむつを取り出し、その状態にて20℃±2℃、相対湿度60%±5%RHの雰囲気下において60分間放置し、収縮方向に沿って測定領域(例えば、第1前領域RF1)の長さを測定する。この長さを、「自然状態の測定領域(例えば、第1前領域RF1)の長さ」とする。
【0051】
第2に、かかる状態(すなわち、自然状態)における所望領域の収縮方向における長さ、及び、自然状態から弾性部材による皺が目視にて確認できない状態まで延伸した時の測定領域の収縮方向における長さを測定する。この長さを、「伸長状態における測定領域(例えば、第1前領域RF1)の長さ」とする。
【0052】
これら測定結果を用い、上述の式にて算出することで伸縮率が測定される。
【0053】
(2)使い捨ておむつの装着態様
次いで、このように構成された使い捨ておむつの装着態様について説明する。
図3及び
図4は、
図2に示すA−A断面を基準とした断面における装着状態を示している。
図3及び
図4は、着用者の臀部に当たる部分の断面である。
図3は、着用者の体圧が掛かる前の状態であり、
図4は、着用者の体圧が掛かった状態である。
【0054】
図3に示す着用者の体圧が掛かる前の状態では、吸収性コアは、圧縮変形せず、着用者の臀部形状に沿って配置されている。吸収性コアの幅方向両端部に位置する凸部は、着用者の臀部の膨らんだ部分に当接している。
【0055】
次いで、着用者が仰向けの状態で寝具に寝かされると、着用者の体圧が使い捨ておむつに掛かり、
図4に示す状態となる。
図4に示す体圧が掛かった状態では、吸収体30の凸部31は、着用者の臀部によって押圧され、圧縮変形する。吸収体30が圧縮変形することにより、当該吸収体は、その復元力によって着用者の身体を押圧する。吸収体30の凸部31は、臀部の最も膨らんだ部分と臀部の側方とに当接し、当該臀部を支持する。
【0056】
また、使い捨ておむつが着用された状態で、着用者の腰回りは、使い捨ておむつの前外装体1BFと後外装体1BRによって囲まれる。また、腰回り弾性部材82の収縮によって前外装体1BFと後外装体1BRは、着用者の腰回りに密着しており、着用者の腰回りが支持される。また、前レッグ弾性部材81Fが配置された第1前領域伸縮率は、後レッグ弾性部材81Rが配置された第1後領域の伸縮率よりも高いため、着用者の脚回りには、背側の脚回りを腹側に押圧する力が作用する。よって、着用者は、自然に脚を腹側に寄せるような姿勢を取りやすくなる。自然に脚を腹側に寄せるような姿勢で、レッグ弾性部材は、着用者の脚回りを腹側に寄せるように押圧し続ける。よって、着用者が一旦脚を腹側に寄せるような姿勢を維持すると、当該姿勢を維持し易くなる。
【0057】
(3)作用・効果
母親が抱っこした状態では、母親によって着用者の腰回りが支持されているが、着用者をベッド等に移動しようとすると、母親の支持がなくなる。しかし、本実施の形態の使い捨ておむつは、支持手段としての吸収体に着用者の体圧が掛かることによって、吸収体が着用者の身体の支持を発現するように構成されている。そのため、着用者がベッド等に寝かされたことに起因して、支持手段が着用者の身体を支持する。母親等の支持がなくなった場合であっても、母親に包まれた状態を擬似的に実現可能となる。本出願人が種々検証を行った結果、乳幼児が母親に包まれた状態を擬似的に体感することにより、乳幼児の安らかな眠りを持続し易いことがわかった。よって、乳幼児が母親に包まれた状態を擬似的に体感することにより、乳幼児の安らかな眠りを持続し易くなる。
【0058】
吸収体30に体圧が掛かることによって吸収体が圧縮変形し、当該吸収体の復元力によって吸収体が着用者の身体を支持する。支持手段である吸収体自体の変形によって着用者の身体の支持を発現するため、体圧が掛かったことを検知する検知手段等を有する構成と比較して、簡易な構成によって着用者の身体の支持を実現できる。
【0059】
また、本出願人が鋭意研究を重ねた結果、乳幼児は、身体前側が縮むような前屈みの姿勢(脚を付け根から曲げ、脚を腹側に寄せる姿勢)において落ち着いて安眠し易いことがわかった。例えば、母親が抱っこした状態では、母親によって着用者の脚を支持され、着用者の脚が腹側に寄せられているが、着用者をベッド等に移動しようとすると、母親の支持がなくなる。
【0060】
本実施の形態の使い捨ておむつは、脚支持部によって着用者の脚を腹側に押し上げることにより、前屈みの姿勢を維持し易くなり、乳幼児が落ち着いた安眠状態を維持し易くなる。
【0061】
このように構成された使い捨ておむつによれば、母親に抱っこされた状態であっても、母親から離れた状態であっても、抱っこ感を実現でき、母親から離れたことによる乳幼児の不安感を抑制し易い。
【0062】
着用者の臀部に当接する臀部当接部としての第2後領域RR2の収縮応力は、後レッグ弾性部材が配置された第1後領域RR1の収縮応力よりも低い。身体前側が縮むような前屈みの姿勢を取ると、着用者の皮膚は伸び縮みされ、特に臀部近傍の皮膚は、身体前側が縮むような前屈みの姿勢をとると、身体を伸ばした状態に対して30%程度伸びる。このとき、臀部当接部の収縮応力が低いため、皮膚の伸び縮みに好適に追従できる。よって、着用者は、身体前側が縮むような前屈みの姿勢を容易に取ることが可能となり、また一旦前屈みの姿勢取った際に、当該姿勢を維持し易くなる
着用者の腹部に当接する腹部当接部を構成する第2前領域RF2の収縮応力は、前レッグ弾性部材が配置された第1前領域RF1の収縮応力の伸縮率よりも低い。着用者である乳幼児は、一般的に、飲食や排泄の状況に応じて着用者の腹の膨らみが変化する。腹部に当接する第2前領域RF2の収縮応力が低いため、着用者の腹部を締め付けすぎずに、ゆったりと覆うことができる。
【0063】
また、レッグ弾性部材は、着用者の後胴回り部側の脚回りを腹側に向かって引き寄せるように収縮するため、着用者の脚を前側に引き寄せ易くなる。乳幼児が母親に抱えられた状態では、乳幼児は、身体前側が縮むような前屈みの姿勢となる。よって、乳幼児は、身体前側が縮むような前屈みの姿勢を取ることにより、母親に抱えられた状態を乳幼児が疑似的に感じ、乳幼児が安心感を得やすい。乳幼児は、身体前側が縮むような前屈みの姿勢を容易に取ることが可能となり、落ち着いて安眠し易くなる。
【0064】
前レッグ弾性部材が配置された第1前領域の伸縮率は、後レッグ弾性部材が配置された第1後領域伸縮率よりも高いため、前胴回り部の脚回り開口部が後胴回り部の脚回り開口部よりも収縮する。よって、着用者の脚を前側に引き寄せ易い。
【0065】
(4)変形例に係る着用物品
次いで、変形例に係る着用物品について、説明する。なお、以下の変形例の説明においては、上述した実施形態に係る使い捨ておむつ10と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0066】
図5は、変形例1に係る使い捨ておむつ10Aの伸長状態の展開平面図である。
図6は、
図5に示すB−B断面図である。変形例1に係る使い捨ておむつ10Aと実施の形態とは、レッグ弾性部材による伸縮態様、レッグサイドギャザーの有無、及び吸収体のスリットが異なる。
【0067】
変形例1に係る使い捨ておむつは、吸収体の凸部に重なる部分の伸縮率と、吸収体の凹部に重なる部分の伸縮率とが異なる。
図5及び
図6において、伸縮率が相対的に高い高伸縮領域R1と、伸縮率が相対的に低い低伸縮領域R2と、を示す。高伸縮領域R1は、伸縮率が相対的に高いレッグ弾性部材81が配置された領域である。低伸縮領域R2は、高伸縮領域R1よりもレッグ弾性部材81の伸縮率が低い領域、又はレッグ弾性部材が配置されていない領域である。高伸縮領域R1と低伸縮領域R2は、幅方向に隣接している。
【0068】
例えば、吸収体が体液を吸収すると、当該体液の重みによって吸収体が着用者から離れる方向に移動し、着用者の脚回りの適した位置に使い捨ておむつを配置できないおそれがある。しかし、変形例1の使い捨ておむつは、着用者の脚回り近傍に位置する高伸縮領域R1の伸縮率が低伸縮領域R2の伸縮率よりも高いため、高伸縮領域R1が低伸縮領域R2よりも身体に密着する。よって、吸収体が体液を吸収した場合であっても、吸収体を着用者の意図した部位に当てることができる。よって、着用者の身体を安定して保持でき、乳幼児の安らかな眠りを持続し易くなる。
【0069】
また、変形例1の使い捨ておむつは、起立性のレッグサイドギャザーを有している。レッグサイドギャザーは、吸収体の幅方向外側端部において着用者側に立ち上がり、体液の横漏れを防ぐ防漏部として機能する。レッグサイドギャザーは、サイドシート41と、第1防漏弾性部材42と、第2防漏弾性部材43と、を有する。レッグサイドギャザーは、吸収体の幅方向両端部をそれぞれ覆うように配置される。サイドシート41の幅方向の一端(サイドシートの幅方向内側端部)は、前後方向に沿った折り目を基点に折り畳まれている。当該サイドシート41間に、第1防漏弾性部材が前後方向に伸長した状態で配置されている。サイドシート41の幅方向の一端は、前胴回り部S1及び後胴回り部S2において表面シートに接合されており、股下部S3において表面シートに接合されていない。サイドシート41の幅方向の一端は、股下部において第1防漏弾性部材42によって収縮し、表面シートから着用者側に起立する。サイドシート41の幅方向の他端は、裏面シート22の非肌当接面に接合されている。当該サイドシート41間に、第1防漏弾性部材42が前後方向に伸長した状態で配置されている。
【0070】
第1防漏弾性部材42及び第2防漏弾性部材43は、吸収体の凸部31と重なる部分に配置されている。よって、第1防漏弾性部材42及び第2防漏弾性部材43によって吸収体の凸部31を着用者に押し当て、吸収体の凸部31を着用者の意図した部位に当てることができる。よって、体圧が掛かった状態では、着用者の臀部によって吸収体30の凸部31が圧縮変形され、当該吸収体は、その復元力によって着用者の身体を押圧することができる。
【0071】
更に、吸収体の凸部31と凹部32の境界には、前後方向に伸びるスリット35が形成されている。当該スリット35を設けることにより、凸部31と凹部32の境界を基点に吸収体が変形し易くなる。よって、吸収体30の凸部31を着用者の臀部の側方側に変形させて、吸収体によって着用者の臀部を支持し易くなる。なお、スリットは、吸収体を構成する吸収性材料が配置されていない部分である。なお、スリットに代えて、吸収性材料の目付が周囲の目付よりも低い低目付部を設けてもよいし、吸収体を厚み方向に圧搾したエンボス部を設けてもよい。
【0072】
また、レッグサイドギャザーは、股下部では着用者側に起立しているが、
図6に示すように、後胴回り部では着用者側に起立していない。よって、着用者の臀部の側部には、サイドシート41が密着する。例えば、体液を吸収した後に吸収体30が着用者に密着すると、一旦吸収体に吸収された体液が着用者側に戻って、着用者の肌に体液が付着するおそれがある。しかし、サイドシートとして疎水性のシートを用いることにより、後胴回り部の吸収体に体圧がかかった場合にも、体液の戻りを防止し、着用者の肌に体液が付着することを防止できる。
図7は、変形例2に係る使い捨ておむつ10Bの伸長状態の展開平面図である。
図8は、
図7に示すC−C断面図である。
図9は、C−C断面における装着状態を示した図である。変形例2に係る使い捨ておむつ10Bの支持手段は、着用者が寝かされた状態で体圧を受ける体圧受け部33と、体圧受け部33が体圧を受けたことによって移動して着用者の身体の支持を発現する支持発現部34と、を有する。
【0073】
体圧受け部33は、後胴回り部に配置され、着用者の体圧によって押圧されるように構成されている。体圧受け部33は、吸収体内部に設けられ、周囲の吸収体よりも剛性が高い部材によって構成されている。体圧受け部33は、後胴回り部と股下部に跨って配置されている。体圧受け部33の幅方向内側部分が着用者の臀部の膨らみに当接するように設けられている。
【0074】
支持発現部34は、体圧受け部33が押圧されることによって着用者の身体側に移動し、着用者の腰の両側部に当接するように構成されている。支持発現部34は、吸収体の一部であって、幅方向において体圧受け部が配置された領域及び体圧受け部よりも幅方向外側の領域の吸収体である。
【0075】
このように構成された使い捨ておむつが装着され、かつ着用者が仰向けの状態で寝具に寝かされると、着用者の体圧が使い捨ておむつに掛かり、
図9に示す状態となる。
図9に示す体圧が掛かった状態では、体圧受け部の幅方向内側部分に着用者の体圧がかかり、体圧受け部及び支持発現部の幅方向外側部分が、体圧受け部の幅方向内側部分を基点として着用者側に移動する。よって、吸収体の幅方向外側端部が着用者の身体側に移動し、着用者の腰の両側部に当接する。
【0076】
着用者がベッド等に寝かされたことに起因して、支持発現部としての吸収体が着用者の腰の両側部を支持する。そのため、母親等の支持がなくなった場合であっても、母親に包まれた状態を擬似的に実現でき、着用者の身体が不安定になることを抑制でき、乳幼児の安らかな眠りを持続し易い。
【0077】
次いで、
図10は、変形例3に係る使い捨ておむつ10Cである。変形例3に係る使い捨ておむつは、パンツ型の使い捨ておむつではなく、オープンタイプの使い捨ておむつである。
【0078】
変形例3に係る使い捨ておむつ10Cは、後胴回り部に外装体1Bよりも幅方向外側に延出するファスニングテープ90が設けられている。使い捨ておむつ10Cは、吸収性本体1Aに重なる部分の伸縮率と、吸収性本体よりも幅方向外側の領域の伸縮率とが異なる。具体的には、使い捨ておむつ10Cのレッグ弾性部材81は、吸収性本体1Aよりも幅方向外側の領域のみに設けられている。よって、吸収性本体1Aに重なる部分の伸縮率よりも、吸収性本体よりも幅方向外側の領域の伸縮率が高い。
【0079】
このように構成された使い捨ておむつを着用者に装着する際は、使い捨ておむつの股下部を着用者の股間部に当てた状態で、後胴回り部のファスニングテープを前胴回り部に引き寄せ、当該ファスニングテープを前胴回り部に止着する。
【0080】
また、後胴回り部における吸収性本体よりも幅方向外側の領域の伸縮率が高いため、使い捨ておむつが着用された状態で、後レッグ弾性部材81Rによって、後胴回り部における吸収性本体よりも幅方向外側の領域が、身体に密着する。そのため、使い捨ておむつによって、着用者の腰回り、特に、臀部の側部を支持することができ、母親等の支持がなくなった場合であっても、母親に包まれた状態を擬似的に実現でき、着用者の身体が不安定になることを抑制でき、乳幼児の安らかな眠りを持続し易い。
【0081】
次いで、
図11は、変形例4に係る使い捨ておむつ10Dである。変形例4に係る使い捨ておむつは、テープタイプの使い捨ておむつであり、装着状態において前胴回り部の一部と後胴回り部の一部とが重なるように構成されている。
【0082】
前胴回り部と後胴回り部には、それぞれレッグ弾性部材81及び腰回り弾性部材82が配置されている。前胴回り部と後胴回り部は、幅方向全域に亘って幅方向に伸縮する。
【0083】
変形例4に係る使い捨ておむつが着用者に装着されると、前胴回り部と後胴回り部が重なる領域が、前胴回り部のみによって覆われる領域及び後胴回り部のみによって覆われる領域よりも身体に密着する。よって、前胴回り部と後胴回り部が重なる領域に当たる部分、具体的には、臀部の側部を積極的に支持することができる。よって、母親等の支持がなくなった場合であっても、母親に包まれた状態を擬似的に実現でき、着用者の身体が不安定になることを抑制でき、乳幼児の安らかな眠りを持続し易い。
【0084】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0085】
また、本実施の形態の前胴回り部には、伸縮性を有する腹部当接部が設けられているが、本発明の前胴回り部は、当該構成に限定されない。例えば、前胴回り部に、腹部当接部に代えて、前後方向に折り畳まれた襞が形成されていてもよい。飲食や排泄の状況に応じて着用者の腹の膨らみが変化する際に、襞が展開することで着用者の腹の膨らみ等に追従でき、前胴回り部の突っ張りや前胴回り部のたるみを抑制できる。
【0086】
また、支持手段は、着用者の臀部に配置される円弧形状の弾性部材であってもよい。より具体的には、支持手段は、着用者の体圧が掛かることによって体圧が掛かる前よりも円弧の曲率が大きくなるように変形し、該変形状態において着用者の脚を腹側に押し上げつつ着用者の身体を支持する。当該構成の支持手段によっても、体圧が掛かることにより、着用者の身体の支持を発現することができる。
【0087】
支持手段は、着用者が寝かされた状態であることを検出する検出部と、着用者が寝かされた状態であることを検出部が検出したことによって前用者の身体の支持を発現する支持発現部と、を有していてもよい。当該構成の支持手段によっても、体圧が掛かることにより、着用者の身体の支持を発現することができる。
【0088】
また、支持手段としての体圧受け部は、後胴回り部に配置され、着用者の体圧によって押圧されることによって周囲に移動する流動体を有し、支持発現部は、体圧受け部からの流動体の流入によって着用者の身体の支持を発現するように構成されていてもよい。流動体とは、粉粒体等の流体によって構成できる。