(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、マイクロエレクトロニクスデバイスの製造に用いられる基板の高精度エッチング用プラズマ処理方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
高精度エッチングは、ある周期にわたっての膜の単分子層の系統的除去を有して良い。前記膜の分子層の系統的除去は、目標の膜厚が実現されるまで又は前記膜が前記基板から除去されるまで行われて良い。当該高精度エッチングは、吸着状態と脱離状態との間での遷移が可能なプラズマに前記基板を曝露することによって可能となり得る。たとえば前記吸着状態のプラズマは、前記脱離状態のプラズマによって除去され得る前記基板の一部を前処理又は調製するのに用いられて良い。一の実施例では、前記吸着処理は、下地である前記基板に対する前記基板表面のエッチング選択性を増大させ得る。下地層と比較して前記基板表面でのエッチング選択性が高くなることで、(複数の)単分子層の除去に用いられるプラズマによる下地である前記基板の除去及び/又は損傷を抑制しながら、(複数の)表面単分子層の除去又はエッチングが可能となり得る。一の実施例では、前記単分子層と下地である前記基板との間でのエッチング選択性は、前記除去プロセスが自己制限的となり得るのに十分な高さであって良い。このようにして、前記プラズマ処理は、下地層を除去することなく(複数の)単分子層を積極的又は系統的に除去し得る。前記プラズマ処理は、相対的に拡張された期間中、前記プラズマに曝露されるにもかかわらず、下地である前記基板をエッチングしない。前記基板の高精度エッチングは、吸着状態のプラズマと脱離状態のプラズマとの間で遷移することによって実施されて良い。前記吸着状態のプラズマと脱離状態のプラズマとの間での遷移は、様々なプラズマ処理方法を用いて実施されて良い。
【0006】
一の実施例では、前記吸着状態のプラズマ(たとえば第1プラズマ)は、プラズマ処理チャンバ内において処理気体混合物へ第1エネルギー源(たとえばマイクロ)を印加することによって生成されて良い。前記気体混合物は、反応気体(たとえばCl
x含有気体、F
x含有気体、O
x含有気体等)と希釈気体を含んで良い。前記希釈気体は、前記吸着状態のプラズマの条件下で、前記基板に対して相対的に不活性となり得る。当該高精度エッチング方法のプロセス条件は、チャンバ圧力、電力、気体混合物の組成と濃度を含んで良いが、これらに限定されない。この場合、吸着中、前記チャンバ圧力は40mTorr
(5.33Pa)よりも大きく500mTorr
(66.67Pa)未満であって良く、前記第1エネルギー源は、約2.45GHzの周波数又は300MHz乃至10GHzの範囲内では500W乃至10000Wの電力を前記プラズマ処理チャンバ内に設けられたエネルギー源電極へ印加して良い。前記処理気体混合物は、前記吸着プロセス中に体積にして10%乃至100%となり得る反応気体を含んで良い。前記吸着状態のプラズマにおいて生成されるイオンとラジカルは、最大5000msでより具体的には100ms乃至500msの期間前記基板の表面を処理するのに用いられて良い。
【0007】
前記第1プラズマ処理中、前記基板表面の化学組成は、反応気体の種類に依存して、ハロゲン化又は酸化されて良い。実際には、前記基板表面上での吸着層又は酸化層は、下地である前記基板とは識別可能な異なる化学特性及び物理特性を有する。これらの差異は、同一のプラズマに曝露されるときに、前記吸着層が下地である前記基板よりも速い速度で除去されやすくなるような、あるプラズマ条件下でのエッチング速度の差異を含んで良いがこれに限定されない。従って吸着状態のプラズマから脱離状態のプラズマへの遷移によって、所望の量の前記基板が除去されるまで繰り返すことの可能な高い選択性を有するエッチングプロセスが可能となり得る。
【0008】
前記吸着状態のプラズマは、前記気体混合物、圧力、電力、又はこれらの結合を変化させることによって脱離状態のプラズマへ遷移されて良い。1回以上のガスパージが、前記吸着状態のプラズマと前記脱離状態のプラズマとの間で実施されて良いが、必須ではない。
【0009】
一の実施例では、脱離状態のプラズマへの遷移は、前記吸着状態のプラズマによって処理又は生成される前記基板の一部(たとえば(複数の)単分子層)を選択的に除去し得るイオンを生成するように、前記気体混合物と前記電力を変化させることによって起こりえる。一の具体的実施例では、前記気体混合物は、体積にして最大100%の前記希釈気体又は最小0%の前記反応気体を含んで良い。他の実施例では、前記気体混合物は、体積にして10%未満の前記反応気体へ遷移して良い。このとき残りは前記希釈気体である。前記マイクロ波電力、圧力、及び/又は基板温度は、所望のエッチング速度を実現するように最適化されて良い。一の実施例では、前記脱離状態のプラズマは、前記気体混合物へ、前記マイクロ波電力に加えて第2エネルギー源(たとえばバイアス電力)を印加することによって生成されて良い。とはいえ前記マイクロ波電力は必須ではない。前記バイアス電力は、前記基板近傍のバイアス電極と電気的にやり取りし得る高周波(RF)電源によって供給されて良い。一の具体的実施例では、前記バイアス電極は前記エネルギー源電極に対向して良く、かつ、前記基板は前記エネルギー源と前記バイアス電極との間に設けられて良い。前記脱離状態のプラズマとバイアス電力は100ms乃至3000msの間活性であって良い。一の具体的実施例では、前記脱離期間は約300ms乃至550msであって良い。一般的には、前記脱離期間は、サイクル期間の制約を解決するため、500ms未満であって良い。
【0010】
前記基板の吸着部分の除去後、前記脱離状態のプラズマは、前記基板の新たに曝露された部分又は表面を処理する吸着状態のプラズマへ戻るように遷移して良い。ある実施例では、前記吸着状態のプラズマと前記脱離状態のプラズマとの間での遷移は、前記吸着状態のプラズマ又は脱離状態のプラズマが、それぞれ異なる期間前記基板へ曝露され得るように、非対称的に起こって良い。遷移に要する期間はまた、2つの処理間に必要とされると考えられるパージ又は気体の交換に依存して変化しても良い。しかし前記パージは必須ではないと考えられる。
【0011】
一の実施例では、前記脱離状態のプラズマは、前記脱離処理気体混合物、吸着層の組成、及び/又は基板組成に依存して、前記バイアス電力が前記処理気体混合物へ印加され、かつ、300ms乃至500msの間で存在し得るときに活性となり得る。対照的に、前記吸着状態のプラズマは、前記バイアス電力が前記処理気体混合物へ印加され得ないときに活性となって良い。しかし前記第1エネルギー源は、前記吸着処理気体混合物と前記脱離処理気体混合物へ印加されて良い。一の具体的実施例では、前記脱離期間は約450msであって良い。従って前記吸着状態のプラズマと前記脱離状態のプラズマの周期は約550msであって良い。これは、前記遷移中での気体のパージ及び/又は気体の交換を含んでも良いし、又は、含まなくても良い。他の実施例では、同一の基板についての周期は、前記基板のアスペクト比又は他の変数の変化に依存して増減して良い。
【0012】
前記吸着/脱離法はまた、前記基板近傍(たとえば<10mm)の前記処理気体混合物内で生成され得る条件によって特徴付けられても良い。プラズマの生成は、電気的に中性な気体へ電磁エネルギーを印加することによって行われて良い。その結果、気体分子(たとえばイオン)から電子が解放され、前記気体分子(たとえばイオン)は、電子が失われた結果正に帯電する。前記イオンは、電子の合計数が正の電荷となる陽子の合計数とは等しくない分子又は原子として特徴付けられて良い。自由電子は、負の電荷を有するイオンとなるように中性分子又は原子に付着して良い。分子又は原子ラジカル(たとえば少なくとも1つの不対電子を有する分子又は原子)はまた、前記電磁エネルギーに曝露されるときに前記電気的に中性な気体から生成されても良い。一般的には、前記ラジカルは、中性であって良いし、正の電荷を有して良いし、又は負の電荷を有しても良く、かつ、前記希釈気体イオンに対して高い化学反応性を有して良い。しかし前記希釈気体は、原子気体であり、かつ、ラジカルを生成しなくても良く、あるいは、前記反応気体混合物によって生成される前記ラジカルに対して非常に少量のラジカルを生成しても良い。前記希釈気体は基本的にはイオンを供給する。前記ラジカルは、前記プラズマへ挿入される分子に由来し、かつ、どのように前記イオンが前記基板での表面反応を駆動するのかに影響を及ぼし得る。前記イオンとラジカルの結合と濃度は、どのようにプラズマが前記基板と相互作用するのかに影響を及ぼし得る。前記吸着状態のプラズマと前記脱離状態のプラズマは、前記基板上で所望の結果を実現するため、それぞれ異なるプラズマ特性(たとえばラジカル束、イオン束、イオンエネルギー等)を有して良い。
【0013】
前記プラズマ特性は、ラジカル束とイオン束の比(RIR)及び前記プラズマ内部で得られるイオンエネルギーを含むが、これらに限定されない。前記RIRは、前記イオンと前記ラジカルが前記プラズマ内で互いにどの程度活性であるのかを示す無次元パラメータであって良い。イオンエネルギーは、電子ボルト(eV)で測定された基板上に入射する平均イオンエネルギー又はイオンエネルギー分布関数として表されて良い。束及びイオンエネルギーは、以降の発明の詳細な説明で詳細に説明される。前記吸着状態のプラズマ(たとえば第1プラズマ)及び脱離状態のプラズマ(たとえば第2プラズマ)は互いに特徴付けられて良い。前記RIRとイオンエネルギー準位は、前記吸着層の生成と前記基板からの前記吸着層の除去を可能にするように、各異なる条件間で遷移して良い。前記吸着層は、前記吸着状態のプラズマが前記基板に曝露されるときに互いに反応する前記反応性ラジカルと基板原子及び/又は分子を含み得る組成物を有して良い。
【0014】
一の実施例では、前記吸着状態のプラズマは、イオンエネルギー(たとえば第1イオンエネルギー)が20eV未満の状態で少なくとも100:1のRIRを有して良い。しかし前記吸着プロセスは、所望の結果を実現するように標的である特定のイオンエネルギー領域に調節されて良い。一の具体的実施例では、10eV未満であり得るイオンエネルギーによって実施されて良い。他の具体的実施例では、前記イオンエネルギーは5eV乃至20eV又は5eV乃至10eVの範囲であって良い。前記吸着状態のプラズマは、以降で開示される様々なプロセス条件を用いることによって生成されて良い。しかしこれらのプロセス条件は、請求項の技術的範囲を限定するものと解されてはならず、限定ではない例示目的で与えられている。前記吸着状態のプラズマは、40mTorr乃至500mTorrの圧力を利用して生成されて良い。前記処理気体混合物は、反応気体(たとえば酸素含有気体、窒素含有気体、水素含有気体、炭素含有気体、ハロゲン含有気体)、希釈気体(たとえばアルゴン、ヘリウム等)、又は両者の混合物を有して良い。前記イオンエネルギーに加えて、前記プロセス条件はまた、RIRを100:1乃至1000:1の範囲にすることを可能にするように最適化されても良い。
【0015】
前記基板の選択的除去は、前記プラズマチャンバシステムが、前記吸着状態のプラズマとは異なるRIRとイオンエネルギーを有し得る脱離状態のプラズマへ遷移するときに起こりえる。たとえば前記脱離状態のプラズマは、前記吸着状態のプラズマに対して、低いRIR(たとえばイオンは存在するがラジカルは(ほとんど)存在しない)及び高いイオンエネルギーを有して良い。一の具体的実施例では、前記脱離状態のプラズマのイオンエネルギーは20eVよりも大きい(たとえば〜40eV)。しかし前記第2イオンエネルギーは、前記基板又は前記プラズマチャンバの損傷を防止するスパッタ閾値によって制限されて良い。たとえば一の具体的実施例では、前記脱離状態のプラズマのイオンエネルギーは70eV未満であって良い。前記脱離状態のプラズマは、本願で開示されている様々なプロセス条件を用いて生成されて良い。しかしこれらのプロセス条件は、請求項の技術的範囲を限定するものと解されてはならず、限定ではない例示目的で与えられている。
【0016】
一の実施例では、前記脱離状態のプラズマは、5mTorr乃至500mTorrの圧力を用いて生成されて良い。一の具体的実施例では、前記処理気体混合物は、(複数の種類の)希釈気体を含むが、反応気体を含まない。しかし他の実施例では、前記処理気体混合物は、前記吸着処理気体混合物に対する非常に少量の(複数の種類の)反応気体と(複数の種類の)希釈気体との結合を含んで良い。前記プロセス条件は、前記吸着状態のプラズマのRIRよりも低い脱離状態のプラズマのRIRを可能にするように最適化されて良い。前記脱離状態のプラズマは、前記処理気体混合物に依存して、前記基板の一部(たとえばハロゲン化された、酸化された等)の高い選択的除去を可能にし得るように前記基板表面を処理して良い。
【0017】
前記プラズマチャンバが、前記基板の一部を除去する周期にわたって、非対称的に前記吸着状態のプラズマと前記脱離状態のプラズマを繰り返して良い。前記吸着処理期間と脱離処理期間は、プラズマ前パージ又はプラズマ後パージを含んで良いし、又は、含まなくても良い。たとえば吸着と脱離との間での遷移は、前記周期にわたって連続するプラズマを用いることによって実現されて良い。その結果、気体混合物、電力、圧力、又はこれらの結合は、前記プロセスチャンバ内部でプラズマを消滅させることなく変更され得る。他の実施例では、前記吸着状態のプラズマと前記脱離状態のプラズマとの間での遷移は、前記処理期間が同一又は同程度となるように対称的に行われて良い。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願に組み込まれ、かつ、本願の一部を構成する添付図面は、本発明の実施例を表し、かつ、上述した本発明の一般的な説明と以降の詳細な説明と共に、本発明を説明する役割を果たす。さらに参照番号の最も左側の(複数の)数字は、参照番号が最初に現れる図面を特定する。
【0020】
以降の詳細な説明は、本開示と整合する典型的実施例を表す添付図面を参照する。発明の詳細な説明で出てくる「一の実施例」、「実施例」、「典型的実施例」等は、記載された典型的実施例が、特定の特徴部位、構造、又は特性を有して良いが、どの実施例もその特定の特徴部位、構造、又は特性を必ず有しているわけではない。しかも係る語句は必ずしも同一の実施例を指称しない。さらに特定の特徴部位、構造、又は特性がある実施例に関連づけて説明されるとき、係る特徴部位、構造、又は特性を他の典型的実施例に関連づけることは、明記されているか否かにかかわらず、当業者の知識の範囲内である。
【0021】
本願において用いられるように「基板」又は「マイクロエレクトロニクス基板」とは概して、本発明によって処理される対象物を指称する。マイクロエレクトロニクス基板は、素子−特に半導体又は他のエレクトロニクス素子−の材料部分又は構造を含んでよく、かつ、たとえば底部基板構造−たとえば半導体ウエハ又は底部基板構造上に存在する若しくはその構造を覆うように存在する層(たとえば薄膜)−であってよい。よって基板とは、任意の特定の底部構造、下地層若しくは上を覆う層、パターニングの有無に限定されず、むしろ係る層若しくは底部構造、並びに、係る層及び/若しくは底部構造の任意の組み合わせを含むと解される。以降の説明は、特定の種類の基板を参照するが、これは単なる例示であって限定ではない。
【0022】
本願で説明される典型的実施例は、例示目的で供されるのであって、限定ではない。他の実施例も可能である。本開示の技術的範囲内で典型的実施例に修正がなされても良い。従って発明の詳細な説明は、本開示を限定することを意味しない。むしろ本開示の技術的範囲は、以降の「特許請求の範囲」及びそれらの均等型にのみ従って定義される。
【0023】
以降の典型的実施例の詳細な説明は、本開示の一般的な性質を十分に明らかにする。よって他者は、当業者の知識を適用することによって、過度の実験を行うことなく、本開示の技術的範囲から逸脱することなく、様々な用途向けに、係る典型的実施例を容易に修正及び/又は適合させることができる。従ってそのような適合及び修正は、本願で与えられた教示及び案内に基づく典型的実施例の意味及び複数の均等型の範囲内であると意図される。本願での用語は説明目的であって限定目的ではないことに留意して欲しい。そのため本願明細書の用語は、本願での教示に照らして当業者によって解釈されなければならない。
【0024】
図1は、プラズマチャンバ102内に生成され得るプラズマ(図示されていない)を用いて基板を処理するためのプラズマ処理システム100を図示している。プラズマは、気体供給システム104によってプラズマチャンバ102へ供される処理気体混合物へ電磁エネルギー(たとえば電源106)を印加することによって生成されて良い。気体供給システム104は、気体混合物の分配に用いられるマスフローコントローラ、チェックバルブ等を有して良い。プラズマチャンバ102と流体をやり取りする真空システム108もまた、プラズマ生成中に大気圧未満の圧力を維持して良い。真空システム108は、プラズマチャンバ102内での圧力を制御する1つ以上のポンプと制御システム(たとえばN
2バラストシステム、バタフライバルブシステム)を有して良い。
【0025】
プラズマの生成は、電気的に中性な気体へ電磁エネルギーを印加することによって行われて良い。その結果、気体分子(たとえばイオン)から電子が解放され、前記気体分子(たとえばイオン)は、電子が失われた結果正に帯電する。前記イオンは、電子の合計数が正の電荷となる陽子の合計数とは等しくない分子又は原子として特徴付けられて良い(PV−「発明の概要」参照)。分子又は原子ラジカル(たとえば少なくとも1つの不対電子を有する分子又は原子)はまた、前記電磁エネルギーに曝露されるときに前記電気的に中性な気体から生成されても良い。一般的には、前記ラジカルは、中性であって良いし、正の電荷を有して良いし、又は負の電荷を有しても良く、かつ、前記希釈気体イオンに対して高い化学反応性を有して良い。時間が経過することで、気体混合物内での電磁エネルギー及び増大する電子の衝突によって、基板110を処理するのに用いられ得る前記気体混合物内での電離分子及びラジカルの密度が増大し得る。
【0026】
プラズマチャンバシステム100は、基板へ向かうある量のイオン及び/又はラジカルの流れに影響を及ぼすようにあるプロセス条件を変更して良い。その結果電離分子は、プラズマチャンバ102内での電位差による影響を受けることが可能となる。たとえばプラズマチャンバ102内での電位差は、電離分子(又は原子又はラジカル)を基板110へ向かわせて良い。イオンとラジカルは、基板と相互作用するか、又は、堆積若しくはパッシベーションによって基板を処理して良い。前記堆積若しくはパッシベーションは、前記基板表面を変化させるか、又は、前記堆積若しくはパッシベーション後に前記基板の一部を除去して良い。
【0027】
図1では、プラズマチャンバ102の断面
図112が、基板110近傍の領域へ電磁エネルギー(たとえばマイクロ波エネルギー、RFエネルギー)と気体混合物(図示されていない)を送ることを可能にする電源集合体114の一の実施例を表している。気体混合物は、電源集合体114の中心を貫通する気体流路120に沿って基板ホルダ124近傍のプラズマ処理領域116へ導入されて良い。他の実施例では、気体混合物は、プラズマチャンバ102内の他の位置から導入されても良い。プラズマ処理領域116はまた、基板ホルダ124に設けられた基板を処理するのに用いられ得るプラズマを生成するため、第1エネルギー源122からエネルギーを受け取っても良い。電磁エネルギーは、ある方法で電源106から電源集合体114へ送られ得る電磁エネルギー(たとえば、300MHz未満でのマイクロ波エネルギー及び/又は300MHzより大きい場合での高周波(RF)エネルギー)を含んで良い。
図1の実施例では、電源集合体114は、気体流路の周りに設けられ得るマイクロ波導波路126及び誘電部材128を有して良い。他の実施例では、電源集合体114は、アンテナ板(図示されていない)を有して良い。前記アンテナ板は、基板110に対して実質的に平行であり得る面内において電源集合体114の周りを電流が流れることが可能となるように配置されて良い。電流は、低インピーダンス経路(たとえば金属層)に沿ってRF電源(図示されていない)とグランド端子(図示されていない)との間を流れるように誘起されて良い。また電流は、プラズマ処理領域116内にプラズマを生成するのに用いられ得る低インピーダンス経路の周りに磁場(図示されていない)を生成し、あるいは、116上方の領域内にプラズマを生成し、かつ、プラズマをプラズマ処理領域116へ送って良い。
【0028】
プラズマ処理領域116内の気体混合物はまた、基板ホルダ124にバイアス印加可能な第2エネルギー源(たとえばバイアス電源130)から電磁エネルギーを受け、かつ、基板110近傍のプラズマ特性に影響を及ぼして良い。以降の説明で詳述するように、一部の実施例では、バイアス電源130と第1電源122は、プラズマ処理領域116内でプラズマを生成するため協働して又は単独で動作して良い。一の実施例では、バイアス電源130は、10MHz以上で50Wよりも大きな電力を供することのできるRF電源であって良い。基板ホルダ124と電源集合体114のバイアス印加は、プラズマ処理領域116内でのプラズマの生成を可能にするプロセスシーケンスを機能させることが可能な制御装置132を用いることによって実施されて良い。
【0029】
制御装置132は、コンピュータ可読命令を実行するコンピュータプロセッサ134とメモリ136を用いて良い。前記コンピュータ可読命令は、プラズマ処理システム100の構成要素(たとえば電源106、気体供給104等)を制御するため、電気通信ネットワーク138を介して供されて良い。1つ以上のコンピュータプロセッサ134は、限定ではなく、中央処理演算装置(CPU)、デジタル信号処理装置(DSP)、単純命令セットコンピュータ(RISC)、複雑命令セットコンピュータ(CISC)、マイクロプロセッサ、マイクロ制御装置、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はこれらの任意の組み合わせを含んで良い。メモリ136は1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体(CRSM)を含んで良い。一部の実施例では、1つ以上のメモリは、非一時的媒体−たとえばランダムアクセスメモリ(RAM)フラッシュRAM,固体媒体等−を含んで良い。広義には、制御装置132は、プラズマの生成又は基板110に曝露され得る各異なる種類のプラズマ間での遷移を可能にする処理イベントの順序を制御して良い。
【0030】
プラズマ処理システム100は、複数の異なる種類のプラズマを実装するのに用いられて良い。前記複数の異なる種類のプラズマは、基板をエッチングしてパターンを生成し、あるいは、基板の一部を除去することでエレクトロニクスデバイスを製造するのに用いられて良い。エレクトロニクスデバイスのサイズと複雑さが増大することで、基板110上の構造を損傷させない高い選択性を有するエッチングプロセスの必要性が増大してきた。高選択性への一の方法は、前駆体堆積工程(たとえば堆積、酸化、パッシベーション等)と前駆体層の除去を交互に行い得る自己制限層エッチングプロセスを有して良い。一の具体的実施例では、初期の表面処理は、原子又は分子が基板110の表面へ入り込むように浸透又は拡散する吸着プロセスであって良い。吸着プロセスは、基板110の表面の1層以上の単分子層を変化させて良い。それにより(複数の)分子層は、後続のプロセス中、基板110からより容易に除去又はエッチングより取り除かれる。一の典型的後続プロセスは、下地の基板110を損傷させることなく(複数の)単分子層を除去するのに用いられ得る脱離プロセスを含んで良い。吸着と脱離との結合又は吸着と脱離との間での遷移によって、制御されながら又は高い選択性を有しながら基板110の(複数の)単分子層の除去が可能となり得る。プラズマ処理システム100は、プラズマチャンバ102内で吸着と脱離とを繰り返す1つ以上の方法を実施して良い。
【0031】
図2は、イオンエネルギー、ラジカルの(複数の)付着係数、エッチングイールド(Y)、及び/又は、イオン束をラジカル束で除したもの(Γ
i/Γ
r)として表されるラジカル束とイオン束との比(RIR)の文脈の範囲内での、吸着プロセス(たとえば第1プラズマ)と脱離プロセス(たとえば第2プラズマ)との間での遷移を表す
図200である。
図2は、例示目的を意図したものであり、単分子層エッチング用にすべてを含むモデルを供することを意図していない。むしろ
図2は、プラズマ生成に関する1つ以上の変数を制御することによって可能となり得る吸着と脱離との間での遷移を示すことを意図した一の実施例であり、かつ、単分子層エッチングを実現するための、プラズマの成分(ラジカル、イオン等)と、どのようにしてそれらが基板の処理を変化させるのかとの関係の一例である。イオンエネルギーは、プラズマ処理領域116内でのイオンのエネルギー又は密度の大きさを示し、かつ、基板110近傍又はプラズマ処理領域116内で既知の方法を用いて測定されて良い。sは、基板110にとどまる、あるいは、吸着し得るプラズマ内の原子又は分子の確率を示して良い。sは、イオンエネルギー、ラジカル束、表面温度、圧力、及び表面条件の関数であって良い。sはまた、基板110の単位面積あたりでの衝突頻度に対する基板110の単位面積あたりでの吸着の比によって定量化されても良い。一の実施例では、sは、最高の吸着率を1として1以下の数(たとえば0.001〜1)で表されて良い。たとえば、RIRが非常に大きく、かつ、基板110の表面がきれい(たとえば清浄、低表面粗さ)な場合、sは1付近であって良い。一の実施例では、sは、下地の基板110に対する表面のエッチング選択性を変化させ得る吸着プロセス中0.1〜0.5の範囲であって良い。従ってsは、脱離プロセス中、低くて良いが、低い必要はない。Yは、基板110と衝突するイオンあたりの除去される原子数を近似することによってプラズマエッチング速度の効率の指標となり得て、かつ、イオンエネルギーと基板110から除去されている層に依存して1未満から10のオーダーの範囲をとって良い。
【0032】
比S/Yは、イオンとラジカルが基板110に吸着するか又は基板110の一部を除去するのかの確率を示し得る。大きなS/Yの値は吸着がより起こりやすいことを示す一方、小さなS/Yの値は脱離がより起こりやすいことを示し得る。一部の実施例では、sが大きいとき(たとえば吸着のとき)には、Yは相対的に小さくなりやすくなって良い。このことは、プラズマ処理領域116内ではラジカル束がイオン束よりも大きくなり得ることを示唆する。従って、基板110の堆積又はパッシベーションは、エッチング選択性の観点で、基板110の表面を下地の基板110とは異なるものにするように少なくとも変化させるように起こりえる。対照的に、一の実施例では、sが相対的に小さいとき(たとえば脱離のとき)には、Yは相対的に大きくなりやすくなって良い。このことは、プラズマ処理領域116内ではイオン束がラジカル束よりも大きくなり得ることを示唆する。しかし他の実施例では、sは一部の脱離プロセス中相対的に高くて(たとえば>0.5)良い。しかし脱離効果は、Yが脱離プロセス中非常に高いために抑制され得る。まとめると、脱離速度は、この実施例で起こりえる吸着(たとえば低ラジカル束)よりもはるかに大きくなり得る。
【0033】
図2では、遷移線202は、どこでプラズマが吸着特性と脱離特性との間で遷移するのかを示している。この実施例では、遷移線は、基板110の表面近傍でのイオンエネルギー、ラジカルの(複数の)付着係数、エッチングイールド(Y)すなわちイオンあたりに除去される原子、及びRIRの関数として表されて良いが、これらに限定されるわけではない。たとえば遷移線202の左側では、プラズマは吸着特性を示しやすい。その結果堆積又はパッシベーションが基板110の表面で起こりえる。遷移線202の右側では、プラズマは基板110の一部を除去しやすい。従ってイオンエネルギーは、吸着と脱離との間での遷移と各処理領域内でのプラズマの性能を制御する重要因子となり得る。しかしイオンエネルギーは、吸着状態のプラズマと脱離状態のプラズマとの間での遷移を制御する単独の決定因子ではない。
【0034】
一の実施例では、プラズマは、互いに相互作用して基板110とも相互作用するラジカルとイオンとの組み合わせとして表されて良い。前記ラジカルとイオンとの組み合わせは、基板110の表面上で所望の結果を実現するように制御され得る。たとえば吸着プロセスは、下地である基板110に対する表面のエッチング選択性を増大させる、その表面上に追加又は生成されることを特徴として良い。吸着プロセス中、ラジカルによる表面被覆は、活性を有するイオンによる原子の除去よりも重要となり得る。従って、
図2の遷移線202によって示唆されているように、S/Yの値が高い間、低いイオンエネルギーが望ましいと考えられる。大きなラジカル束(Γ
r)は、短時間で表面をより被覆するのに望ましいので、RIR(Γ
r/Γ
i)は相対的に高くても良い。従って吸着領域の範囲内では、S/YはRIRより大きくて良い。しかし脱離プロセス中、表面層の除去は、表面被覆よりも優先されて良い。従って、高いイオンエネルギーを有することで、活性を有するイオンに基板110から表面原子を除去させやすくすることは望ましいと考えられる。イオンエネルギーが増大することで、イオン束(Γ
i)、RIR、及びYは増大し得る。このことは、基板110からの1層以上の単分子層の除去がより起こりやすいことを示唆する。
図2に図示されているように、吸着領域(たとえば遷移線202の左側)は、S/YがRIRよりも大きいときに存在しやすい。同様に、遷移線202の右側の脱離領域は、S/YがRIRよりも小さいときに存在しやすい。しかし脱離領域では、処理気体混合物に依存してラジカルが(ほとんど)存在しなくて良い。それにもかかわらず、脱離中でのイオン束は、吸着中でのイオン束よりも大きくて良い。様々な方法で2つの領域間で遷移することが可能である。
【0035】
図2は、イオンとS/Yに関する複数の考えられ得る実施例、及び、如何にして吸着と脱離との間での遷移が可能となるのか、及び、吸着と脱離との間でのプロセスマージンの大きい場所又は小さい場所を表している。たとえばイオンエネルギーがE
0である204の実施例では、イオンエネルギーは、(S/Y)
0である210から(S/Y)
3である214までの広範な変化にわたって吸着領域を維持する広い吸着領域を可能にするのに十分な程度低くて良い。イオンエネルギーE
1である206がイオンエネルギーE
2である208へ向かって増大することで、S/Yプロセスマージンは狭くなる。その結果脱離は、少なくとも部分的にはS/YとRIRに依存して起こりやすくなり得る。たとえば(S/Y)
0である210では、イオンエネルギーがE
1である206で、かつ、RIRが(S/Y)
0である210よりも小さくなり得るときに、吸着領域が支配的となり得る。しかしRIRが(S/Y)
0である210よりも大きくなるように増大する場合、脱離がより起こりやすくなり、かつ、イオンエネルギーE
1である206で脱離領域内に存在することが可能となる。しかし他の実施例では、プロセスが遷移線202に近づくとき、吸着と脱離との区別はより難しくなり、あるいは、吸着速度又は脱離速度は低くなり得る。
【0036】
イオンエネルギーE
2である208で作用する場合、S/Yが略(S/Y)
0である210であるときに、プラズマが一貫して吸着領域又は脱離領域内で厳密に作用すること、又は、吸着/脱離速度が遷移線202付近で遅くなり得ることをを保証することはより難しくなる恐れがある。この条件下で作用することは望ましくないが、可能である。なぜなら吸着/脱離プロセスマージンの差異は、他のとり得る条件でよりもはるかに小さいからである。同様のプロセスマージンの問題は、イオンエネルギーE
1である206でかつ(S/Y)
1である212の実施例でも存在し得る。理想的には、好適プロセスは、2つの前述した実施例で示した以外にも、遷移線202からさらに離れて良い。たとえば(S/Y)
1である212の実施例では、吸着プロセスマージンは、イオンエネルギーE
1である206をイオンエネルギーE
0である204へ低下させることによって又はRIRを減少させることによって増大し得る。対照的に、脱離プロセスマージンは、イオンエネルギーE
1である206をイオンエネルギーE
2である208へ上昇させることによって又はRIRを増大させることによって増大し得る。
【0037】
イオンエネルギーとS/Yが、プラズマが吸着領域で作用しているのか、あるいは、脱離領域で作用しているのかに関する強力な指標を供するが、これらは、単独で決定的ではなく、
図3で説明する他の変数(たとえばRIR)の影響を受け得る。
【0038】
図3は、基板110を処理する第1プラズマ(たとえば吸着)及び基板110を処理する第2プラズマ(たとえば脱離)の代表的実施例300を表す図である。プラズマ処理システム100は、双頭矢印308によって表されているように、第1プラズマ302と第2プラズマ304との間での1つ以上の遷移方法を実装して良い。第1プラズマ302は、基板110上に吸着層306を生成するのに用いられて良い。第2プラズマ304は、吸着層306を除去し、かつ、下地である基板110を曝露するのに用いられて良い。
図2で表されたパラメータに加えて、RIR又はイオン束は、どの種類のプラズマが基板110に曝露されるのかを決定する上で重要な役割を果たし得る。イオンとラジカルの生成は、束に関する簡単な説明と共に以降で簡単に説明する。
【0039】
図1の説明にあるように、プラズマ処理システム100は、プラズマチャンバ102内で気体混合物に電磁エネルギーを印加して、第1プラズマ302及び/又は第2プラズマ304を生成して良い。気体混合物は、反応気体、希釈気体、又はこれらの混合気体を含んで良い。仮に存在すれば、反応気体は、イオンとラジカルを生成しようとしやすく、かつ、(複数の種類の)希釈気体はラジカルよりもイオンを生成しようとしやすい。しかし気体混合物がいずれの種類の気体を含むとき、各異なる種類の気体からのイオンとラジカルの混合物が存在して良い。プラズマ処理システム100は、様々なプロセス条件を最適化することで、基板110の処理に用いられるイオン及び/又はラジカルを制御して良い。
【0040】
吸着の実施例では、気体混合物は、反応気体又は(複数の種類の)反応気体と(複数の種類の)希釈気体の混合物を含んで良い。反応気体は、酸素含有気体、窒素含有気体、水素含有気体、炭素含有気体、ハロゲン含有気体、又はこれらの混合気体を含んで良いが、これらに限定されない。(複数の種類の)希釈気体(たとえばアルゴン、ヘリウム等)は、プラズマチャンバ102内で気体又は材料に対して化学的に不活性な種を含んで良い。気体混合物は、吸着の実施例では、体積にして(複数の種類の)反応気体の100%〜10%まで変化して良い。一の具体的実施例では、気体混合物は、体積にして80%〜100%の反応気体(たとえばCl
2)を含んで良い。残りは1種類以上の希釈気体である。
【0041】
一の吸着の実施例では、第1プラズマ302は、気体混合物を電磁エネルギーへ曝露することによって生成され得る吸着状態のラジカル310と吸着状態のイオン312を含んで良い。組み合わせられた気体混合物の実施例では、第1プラズマ302は希釈イオン314をも含んで良い。理想的には、基板110へ向かうラジカル束が、イオン束を支配し、かつ、基板110上での吸着層の生成を可能にする。一の実施例では、吸着層306は、気体混合物と基板110(たとえばSi)からの原子及び/又は分子の組成物を有して良い。吸着層306の生成に続いて、プラズマ処理システム100は、第2プラズマ304へ遷移することで、吸着層306をエッチングし、かつ、下地である基板110を曝露して良い。脱離の実施例では、第2プラズマ304は、脱離状態のイオン316を有して良く、かつ、脱離状態のラジカル314を有しても良いし、あるいは有しなくても良い。たとえば気体混合物が(複数の種類の)希釈気体しか含まないとき、脱離状態のラジカル314は存在しなくて良い。しかし反応気体が脱離プロセス中にプラズマチャンバ102内に存在するとき、ラジカルは存在して良い。しかしイオン束はラジカル束よりはるかに大きくて良い。従って脱離プロセスは、基板110での脱離効果を支配し得る。
【0042】
いずれのプラズマもイオン及び/又はラジカルを含むが、これらは、吸着に用いられるのか又は脱離に用いられるのかに依存して異なる目的に用いられて良い。たとえば吸着中でのイオンエネルギーは20eV未満である一方、脱離中でのイオンエネルギーは20eVより大きくて良い。さらに、脱離プラズマが(存在するとしても)わずかしかラジカル又はラジカル束(Γ
r)を有しないため、吸着RIRは脱離RIRより大きく良い(PV−ここでは、計算機においてイオン束に対するラジカル束の比、ラジカルが用いられると考える)。たとえば非常に小さなラジカル束を有するか、あるいは、ほぼラジカル束が存在しないことで、脱離RIRは非常に小さくなる(PV−yes)。RIR値は、基板110の中心付近でかつ基板110の表面近傍の束表面領域(たとえば吸着表面領域318又は脱離表面領域320)を用いることによって、基板110近傍のプラズマ処理領域116内で測定されて良い。
【0043】
広義には、束は、束表面を通り抜けるように移動する際のイオン又はラジカルの流量とみなされて良く、かつ、単位面積あたりの物理的特性の単位を有して良い。イオン束(Γ
i)及びラジカル束(Γ
r)は、原子/cm
2の単位を有し、かつ、吸着表面積318若しくは脱離表面積320を交差するイオン又はラジカルの量又は濃度を表し、かつ、基板110と衝突して良い。イオンとラジカルは、プラズマと基板との間での電位差、エネルギー、電荷、プロセス圧力、プロセス温度、又はこれらの任意の組み合わせに依存して、基板110に付着して良い。
【0044】
一の吸着の実施例では、処理気体混合物は反応気体(たとえばハロゲン、酸素)と希釈気体(たとえばアルゴン、ヘリウム、又はこれらの混合物)を含んで良い。吸着状態のラジカル310は、堆積又はパッシベーションによって吸着層306を生成するのに用いられて良い。理想的には、Γ
rは、吸着速度を基板110での脱離速度よりも速くすることを可能にするように、Γ
iよりも大きくて良い。ラジカル束(Γ
r)及び/又はイオン束(Γ
i)は、Γ
r又はΓ
iを測定する任意の既知の方法を用いることによって、基板110の中心(付近)及び基板110の表面近傍(たとえば<10mm)で測定されて良い。既知の方法の例には、吸収プローブ、ラングミュアプローブ、ヘアピンプローブ、逆電位型エネルギー分析器、発光分光、光量測定法、質量分析、又はこれらの任意の組み合わせが含まれて良いが、これらに限定されるわけではない。
【0045】
第1プラズマ302が、吸着状態のイオン312のイオンエネルギーを抑制して、吸着したラジカル310の吸着に対する基板110のエッチングを抑制するように生成されて良い。まとめると、吸着層306は、基板110の表面で吸着速度が脱離速度よりも大きいときに生成され得る。吸着層306は、吸着したラジカル310のエネルギーが、気体混合物の成分とシリコン基板110の公称結合エンタルピーよりも小さいときに生成され得る。一の具体的実施例では、基板110は、吸着層306を生成するための開始材料を供し得るバルクのシリコン基板110を含んで良い。第1プラズマ302は、既知の堆積、パッシベーション、又は酸化法によってシリコン表面と反応し得る吸着したラジカル310を生成するハロゲン含有気体(たとえばCl
x、F
x)又は酸素含有気体(たとえばO
x)を含んで良い。
【0046】
他の具体的実施例では、基板110は、基板110へ突出する又は基板110から突出する側壁又はトレンチを含み得るパターニングされた構造(図示されていない)を有して良い。吸着プロセスは、トレンチ内で吸着層を選択的に生成するように調節されて良い。その際、トレンチ底部での吸着速度は側壁での吸着速度よりも速くて良い。吸着層306はまた、第1プラズマ302を用いることによって、基板110から突出する又は基板110へ突出する構造上にコンフォーマルに生成されても良い。吸着法は、
図4と
図5の説明でより詳細に論じられる。
【0047】
吸着プロセスに続いて、プラズマ処理システム100は、
図2で説明したように脱離プロセスへ遷移して良い。脱離プロセスは、基板110から吸着層306を選択的に除去して良い。脱離状態のイオン316は、基板110から脱離した分子/原子322を除去することによって生成された脱離領域324を生成するように、吸着層を除去又はエッチングするのに用いられて良い。換言すると、吸着層306は、下地である基板110の表面を曝露するように除去されて良い。理想的には、Γ
iは、基板110での脱離速度を吸着速度よりも速くすることを可能にするようにΓ
rよりも大きくて良い。ラジカル束(Γ
r)及び/又はイオン束(Γ
i)は、Γ
r又はΓ
iを測定する任意の既知の方法を用いることによって、基板110の中心(付近)及び基板110の表面近傍(たとえば<10mm)で測定されて良い。
【0048】
脱離の実施例では、基板110での脱離速度が吸着速度よりも速くなるように、第2プラズマ304は、Γ
rよりも大きなΓ
iを有して良いし、あるいは、ラジカルを有しなくても良い。大きなΓ
iを得ることには、プロセス条件−気体混合物、電磁エネルギー、圧力、又はこれらの組み合わせ−の変化が含まれて良いが、これに限定されるわけではない。しかしすべてのプロセス条件が、吸着と脱離との間で遷移を起こすために変化する必要はない。脱離法は、
図4と
図5の説明でより詳細に論じられる。
【0049】
図4と
図5は、吸着状態のプラズマ(たとえば第1プラズマ302)と脱離状態のプラズマ(たとえば第2プラズマ304)とを交互に繰り返すプラズマ処理システム100を用いた反復プロセスを用いることによって基板110の表面層を除去する方法を表している。プラズマ処理システム100は、ラジカル束(Γ
r)及び/又はイオン束(Γ
i)を制御して、吸着と脱離との間で遷移して良い。
【0050】
一の方法では、吸着プロセスは、相対的に高い圧力と高い電源電力(電源集合体114への電力)との組み合わせによって可能となり得る。前記組み合わせは、気体混合物からラジカルを生成し、かつ、大きなΓ
rを生じさせて良い。大きなΓ
rが生じる結果、基板110の表面被覆(たとえば吸着層306)が大きくなる。これらのプロセス条件はまた、第1プラズマ302の電位を減少させて、イオンエネルギー又はΓ
iを抑制することで、吸着層306の生成中での脱離を防止しても良い。高い圧力/電力の組み合わせは、イオンエネルギーを低いまま保つことを可能にするが、吸着プロセスに、脱離効果を支配させるのに十分なラジカルを生成し得る。興味深いことに、すべての高電力法は、イオンエネルギーの制御に関して等しくなくて良い。RF電力ではなく電源集合体114でマイクロ波電力を用いることは有利となり得る。マイクロ波源からの電子の生成の効率は、RF電源を用いるときよりもはるかに良いことがわかった。たとえば、マイクロ波源又は表面波源からの電子の生成の効率は、高周波数で非常に良いので、マイクロ波の実施例では、プラズマ中での粒子の均衡(生成源と損失)によって決定される平均電子エネルギーは、はるかに低い周波数(たとえば<300MHz)で駆動するRF電源よりもはるかに小さい。マイクロ波の実施例は、同一又は同程度の電力が印加されるRF電源(たとえばICP、CCP法)と比較すると、基板110へのより大きな電流を可能にし得る。前記より大きな電流は、基板でのピーク間電圧(V
pp)を小さくすることを可能にする。大きなイオン電流が大きいのと同時に非常に低い電子温度(Te)と非常に低いV
ppにアクセスすることが可能であることは、固有の空間高精度エッチングプロセスを実現するマイクロ波源の固有の特性である。このようにして、マイクロ波源は、RF電源によって印加される電力が同一であっても低いイオンエネルギーを可能にし得る。従って、各異なる種類の電源(たとえばマイクロ又はRF)間での同程度の電力プロファイルは、駆動周波数、イオンエネルギー、又はこれらの組み合わせの差異毎に識別可能であって良い。
【0051】
吸着プロセスは、ハロゲン原子/分子又は酸素分子/原子によって表面を飽和させることによって基板110上に薄い(単分子層の)吸着層306を生成して良い。吸着層306は、吸着層306が基板110よりも高いエッチング速度を有し得るように、下地である基板110と比較して相対的に高いエッチング選択性を有して良い。従って脱離プロセスは、下地である基板110への損傷を抑制しながら吸着層を除去するのに用いられて良い。脱離プロセスは、脱離したイオン316が吸着層306のエッチングを行うことを可能にするように、第1プラズマ302のイオンエネルギー、圧力、気体混合物、又はこれらの組み合わせを遷移させることを含んで良い。
【0052】
一の方法では、脱離プロセスは、気体混合物へ電磁エネルギーを印加することで第2プラズマ304を生成する各異なる電源の組み合わせによって可能となり得る。さらなる電磁エネルギーは、第1プラズマ302のイオンエネルギーよりも第2プラズマ304において大きなイオンエネルギーを生成して良い。イオンエネルギーの変化は、複数の電源の組み合わせに限られない。脱離プロセスはまた、気体混合物を変化させて基板110上でのエッチング速度又はエッチングプロファイルを調節することによって最適化されても良い。一般的には、脱離プロセスは、吸着プロセスよりもはるかに大きなΓ
iを有して良く、かつ、脱離気体混合物が反応気体を含まないときには非常に低いΓ
r又はほぼゼロのΓ
rを有して良い。脱離プロセスは、吸着層306と基板110との間でのエッチング選択性に起因して自己制限的であって良い。吸着層306の除去に続いて、第2プラズマ304(たとえば脱離)は、第1プラズマ302へ戻るように遷移(たとえば吸着)し、かつ、再度吸着と脱離のプロセスを開始する。このような吸着と脱離との間での遷移は、基板110の所望の部分が除去されるまで繰り返されて良い。
図4へ移ると、方法400は、上述の吸着/脱離プロセスの一実施例を表す。
【0053】
ブロック402では、プラズマ処理チャンバ102は、マイクロエレクトロニクス基板を受け取って良い。前記マイクロエレクトロニクス基板は、マイクロエレクトロニクスデバイスを生成するのに用いられ得るパターニングされた特徴部位又は素子を有し得る任意の種類の半導体基板を含んで良い。半導体基板は、任意の単元素基板(たとえばSi)、シリコン・オン・インシュレータ基板、III−V基板、又はエピタキシャル成長したシリコン基板を含んで良いが、これらに限定されるわけではない。基板110は、基板ホルダ124上に設けられ、かつ、電源集合体114と基板ホルダ124内に設けられ得るバイアス電極との間に備えられて良い。
【0054】
ブロック404では、気体供給システム104が、プラズマチャンバ102へ気体混合物を供して良い。気体混合物は、基板110上に吸着層306を生成するのに用いられ得る、反応気体、(複数の修理の)希釈気体、又はこれらの混合気体のうちの少なくとも1つを含んで良い。反応気体は、基板110又は基板110上の膜と反応する少なくとも1つの元素を含んで良い。一の実施例では、反応気体は、ハロゲン含有気体(たとえばCl
x、F
x)又は酸素含有気体(たとえばO
x)を含んで良いが、これらに限定されるわけではない。他の実施例では、気体混合物はまた、反応気体と共に(複数の種類の)希釈気体をも含んで良い。希釈気体は、アルゴン、ヘリウム、又はこれらの混合物を含んで良いが、これらに限定されるわけではない。一の具体的実施例では、気体供給システム104は、体積にして80%〜100%の反応気体(たとえばCl
2)を含む気体混合物を供して良い。残りは(複数の種類の)希釈気体である。一の具体的実施例では、吸着プロセスの気体混合物は80%〜100%の(複数の種類の)反応気体を含んで良い。残りは(複数の種類の)希釈気体である。
【0055】
ブロック406では、真空システム108は、プラズマ処理チャンバ102内で40mTorr以上のプロセス圧力を実現することで、初期吸着プロセスを促進するのに用いられて良い。制御装置132は、プロセスチャンバ102内で相対的に安定した圧力を得るように気体の流れとポンピング速度を最適化して良い。圧力は、基板110の組成と吸着層306の所望の吸着速度に依存して最大500mTorrの範囲をとって良い。またチャンバ圧力は、吸着プロセスと脱離プロセスとの間での遷移に基づいて変化して良い。遷移については以降で詳述する。しかし一の具体的実施例では、プロセスチャンバ102の圧力は、初期吸着プロセス中約80mTorrであって良い。しかし圧力は、吸着プロセス中、所望の束の条件とイオンエネルギーに依存して変化して良い。一の実施例では、プロセス圧力はまた、吸着層306による基板110の表面被覆を調節するために変化しても良い。たとえば初期圧力は、吸着プロセス中、少なくとも40mTorrであって良く、かつ、より高い圧力へ遷移して良い。吸着プロセスはまた、圧力と気体混合物へ印加されたエネルギーとの組み合わせを利用して、基板110へ向かうラジカル束を増大させる工程を含んで良い。
【0056】
ブロック408では、プロセスチャンバ102内に設けられた電源集合体114を介して気体混合物へマイクロ波電力を印加して良い。マイクロ波電力は、500W〜10000Wの範囲であり、かつ、300MHz〜10GHzの駆動周波数を有して良い。一の具体的実施例では、駆動周波数は、500W〜10000Wの任意の電力設定で約2.45GHzであって良い。理想的には、印加されたマイクロ波電力と駆動周波数によって第1プラズマ302の生成が可能とならなければならない。その際、プラズマ処理領域116内のイオンエネルギーは20eV未満で良く、かつ、基板110近傍又は少なくともプラズマ処理領域116内ではラジカル束はイオン束よりも大きい。
【0057】
他の実施例では、印加されたマイクロ波電力は、1GHz〜10GHzの駆動周波数で500W〜3000Wの範囲をとって良い。本願で説明する気体混合物及び圧力と組み合わせられた印加電力の実施例は、第1プラズマ302内でのイオンエネルギーを20eVにすることを可能にし得る。他の実施例では、電力及び駆動周波数は、目標に固有なイオンエネルギー−たとえば<5eV、<10eV、又は5eV〜15eV−に最適化されて良い。一の具体的実施例では、マイクロ波電力は、約2.45GHzの駆動周波数で約2000Wであって良い。
【0058】
第1プラズマ302のプロセス時間は、プロセス条件、基板110の組成、及び吸着層306の組成に依存して変化して良い。吸着時間は100ms〜3000msの間で変化して良い。理想的には、1000msの短い吸着時間が、プロセスサイクル時間の観点にとっては望ましいと考えられる。しかしほとんどの実施例では、40mTorrの閾値は、500ms未満のプロセス時間を含んで良い。
【0059】
吸着層306の生成は、基板110の組成物(たとえばSi)及び反応気体(たとえばCl
x、F
x、O
x)の観点から見て、吸着層306と基板110との間でのエッチング選択性が、後続の脱離プロセス中に基板110への損傷又は変化を最小しながら吸着層306を除去するように影響し得るような、如何なる分子又は原子組成物を含んで良い。脱離プロセスへの遷移は様々な方法で行われて良い。しかし複数の脱離の実施例からなる一の組は、気体混合物へのさらなる電磁エネルギーの印加を有して良い。
【0060】
ブロック410では、バイアス電源130は、プラズマ処理領域116又は基板110近傍で気体混合物へバイアス電力を印加して良い。バイアス電力は、
図3に図示されているように、吸着層306を除去し得る脱離プロセスへプラズマチャンバ102を遷移させて良い。しかし他の実施例では、気体混合物、圧力、電源の電力(たとえば第1電源122)、又はこれらの任意の組み合わせは、気体混合物へバイアス電力を印加する前、間、又は後に変化して良い(ブロック412の説明でのさらなる詳細を参照のこと)。たとえば高い圧力(たとえば>150mTorr)及び高い電源の電力(たとえば>2000W)の実施例では、バイアス電力は、約27MHzの駆動周波数で最大200Wまで増大して良い。しかしほとんどの実施例では、バイアス電力は、60MHzを超えない駆動周波数−より詳細には13.56MHzの駆動周波数−で150Wを超えなくて良い。一の具体的実施例では、圧力は約40mTorrで、かつ、バイアス電力は50W〜70Wの間であって良い。一の高い圧力の実施例では、圧力は約15mTorrであって良く、かつ、バイアス電力は約150Wであって良い。
【0061】
電力と圧力の組み合わせもまた、吸着プロセス(たとえば第1プラズマ302)から脱離プラズマ(たとえば第2プラズマ304)へイオンエネルギーを増大させるように最適化されて良い。たとえば、脱離プロセスのイオンエネルギーは20eVよりも大きくて良く、かつ、脱離プロセスでは、吸着プロセス中よりも基板110へ向かうイオン束は大きくて良い。より具体的な脱離の実施例では、イオンエネルギーは、40eV〜70eVの範囲であって良いが、望ましくない元素からの基板110への損傷又は汚染を防止するスパッタ閾値未満に維持されようとしなければならない。
【0062】
バイアス電力印加のタイミングは、交互に非対称的に適用されて良い。交互に非対称的に適用される際、バイアス電力がオフにされるときに吸着プロセスが実施され、かつ、バイアス電力がオンにされるときに脱離プロセスが実施されて良い。広義には、オン段階でのバイアスは、300ms〜5000msの範囲であって良く、ここでバイアスのオフ時間は100ms〜3000msの範囲である。そのため周期は400ms〜8000msの範囲であって良い。たとえば、一の実施例では、周期は1000ms未満であって良い。ここでバイアスオフ期間が500ms以下でバイアスオン期間が500ms未満であって良い。一の具体的実施例では、周期は約500msであって良い。ここでバイアスオフ期間が約100msでバイアスオン期間が約400msであって良い。他の具体的実施例では、バイアスオフ期間は約450msで、かつ、バイアスオン期間は100msであって良い。
【0063】
一部の実施例では、プラズマチャンバ102をパージし、かつ、他の気体混合物を再導入し、あるいは、プラズマチャンバ102から気体混合物を完全にパージせずに気体混合物を変化させるのに用いられ得る、バイアスオフ期間とバイアスオン期間との間での遷移が存在して良い。一の具体的実施例では、吸着と脱離との間での気体混合物のパージは、気体混合物がプロセスチャンバ102へ流入しない4秒未満の連続した真空状態であって良い。他のパージの実施例では、処理気体混合物は、希釈気体を流すことによってパージされ、かつ、プラズマプロセス圧力未満であり得るチャンバ102の圧力を実現して良い。
【0064】
ブロック412では、第1プラズマ302と第2プラズマ304との間での遷移は、バイアス電力がオフとオンとオフを繰り返すときの周期にわたって気体混合物の濃度を変化させることによって可能となり得る。気体混合物は、
図1〜
図3の説明で述べたように、第1プラズマ302のプロセス中、反応気体と希釈気体を含んで良い。第2プラズマへの遷移は、体積にして、反応気体の濃度を第1プラズマ302の反応気体の濃度とは異なる濃度へ変化させる工程を含んで良い。反応気体の濃度は、吸着プロセスと脱離プロセスとの間で体積にして0%〜100%の間で変化して良い。より具体的には、反応気体の濃度は、体積にして10%〜100%の範囲であって良い。ここで気体混合物の残りは希釈気体(たとえばAr、He等、又はこれらの混合物)を含む。
【0065】
一の具体的実施例では、気体混合物間での遷移は、気体混合物はプラズマチャンバ102から完全にはパージされないが、気体混合物の濃度は吸着プロセス条件から脱離プロセス条件へ遷移するように、流入する気体流を変化させることによって気体混合物をその場で変化させる工程を含んで良い。たとえば吸着プロセス条件は、体積にして10%よりも大きい反応気体混合物濃度を有する気体混合物を含んで良い。制御装置132は、脱離プロセスのため、気体供給システム104からの気体流を変化させて、反応気体混合物の濃度を体積にして10%未満に減少させて良い。一部の実施例では、制御装置132はまた、吸着プロセス(たとえば第1プラズマ302)と脱離プロセス(たとえば第2プラズマ304)との間でチャンバ圧力及び/又は第1電源の電力122をも変化させて良い。たとえば、吸着プロセスは少なくとも40mTorrのチャンバ圧力を有し、制御装置132は気体流又はポンピングコンダクタンスを調節することで、吸着プロセス圧力とは少なくとも10%異なる脱離プロセス圧力へチャンバ圧力を変更して良い。
【0066】
他の実施例では、気体混合物は、吸着プロセス及び脱離プロセス中、(体積にして)同一又は同程度の気体混合物濃度を有して良い。たとえば、気体混合物の濃度が2つのプロセス工程の間で体積にして20%の範囲内になり得るように、(複数の種類の)反応気体と(複数の種類の)希釈気体は、吸着プロセスと脱離プロセスとの間で同一の濃度を有して良い。吸着プロセス及び脱離プロセス用の気体混合物が同一又は同様であるとき、電源の電力(たとえば電源集合体114への電力)は増大し、かつ、圧力は、基板110の表面での吸着と脱離との間で遷移するように減少して良い。
【0067】
他の実施例では、第1プラズマ302と第2プラズマ304との区別又は第1プラズマ302と第2プラズマ304との間での変化は、第1プラズマ302が第2プラズマ304への遷移中に消滅しなくて良い点で連続的なプラズマであって良い。制御装置132は、吸着プロセスと脱離プロセスとの間での遷移中又は脱離から吸着への遷移中、プロセスチャンバ102内でプラズマ状態を維持するように、気体混合物、圧力、電力、又はこれらの組み合わせを変化させて良い。しかし他の実施例では、第1プラズマ302は消滅して良く(たとえば気体混合物へ電力が印加されない)、かつ、吸着状態の気体混合物が、脱離状態の気体混合物の導入前又は脱離状態の気体混合物への電力の印加前にパージされて良い。一の具体的実施例では、パージ期間は4秒未満であって良い。その結果、パージ期間は、第1プラズマ302の消滅からプラズマチャンバ102内での脱離状態の気体混合物の導入までで測定されて良い。しかしある実施例では、パージ期間は、第1プラズマ302の消滅と第2プラズマ304の点火との間で測定されて良い。
【0068】
他の実施例では、パージ期間は、電磁エネルギーを気体混合物へ供する電源106内での過渡的状態を含んでも良いし、あるいは含まなくても良い。過渡的状態は、電源106がオン又はオフに切り換えられ得るとき、又は、印加電力がオフにされることなく異なる設定点間で遷移し得るときの電力スパイクを含んで良い。電源106の如何なる過渡的問題(たとえばオーバーシュート、アンダーシュート、又は安定化の回数)も、当業者によって実施可能な回路、フィルタ、又はソフトウエアによって処理されて良い。当業者は、吸着プロセス及び/又は脱離プロセス中、過渡的状態の回数を電源106のオンとオフの回数よりもはるかに少なくするような過渡的状態を制御する機能を設計して良い。
【0069】
図5は、基板110上に吸着層306を生成する吸着状態のプラズマ(たとえば第1プラズマ302)と基板110から吸着層306を除去する脱離状態のプラズマ(たとえば第2プラズマ304)を生成する他の方法500のフロー図である。上述したように、プラズマは、各異なる種類のハードウエアを用いた様々な方法を用いて生成されて良い。前記各異なる種類のハードウエアは、同一のプロセス条件を用いても良いし、あるいは、同一のプロセス条件を用いなくても良い。広義には、請求項の範囲は、本開示に記載されていないハードウエアを用いる実施例をも網羅して良い。たとえば方法500に記載されたプラズマ特性は、複数のハードウエア及び/又はプロセス条件の実施例を網羅して良い。従って請求項の範囲は、本願で述べたハードウエア及び/又はプロセス条件の実施例に限定され得ない。
【0070】
ブロック502では、プラズマ処理チャンバ102は、マイクロエレクトロニクス基板を受け取って良い。前記マイクロエレクトロニクス基板は、マイクロエレクトロニクスデバイスを生成するのに用いられ得るパターニングされた特徴部位又は素子を有し得る任意の種類の半導体基板を含んで良い。半導体基板は、任意の単元素基板(たとえばSi)、シリコン・オン・インシュレータ基板、III−V基板、又はエピタキシャル成長したシリコン基板を含んで良いが、これらに限定されるわけではない。基板110は、基板ホルダ124上に設けられ、かつ、電源集合体114と基板ホルダ124内に設けられ得るバイアス電極との間に備えられて良い。
【0071】
ブロック504では、プラズマシステム100は、
図1〜
図3の説明で述べたようにプロセスチャンバ102内において処理気体の第1混合物を用いて第1プラズマ302を生成して良い。プラズマ処理領域116内に1つ以上のラジカルとイオンを有する第1プラズマ302は基板110近傍に存在する。
図3の説明で述べたように、ラジカルとイオンは、プラズマ処理領域116内に対応する束(たとえば(Γ
i、Γ
r)を有して良い。第1プラズマ302は、基板近傍のラジカル束とイオン束との比(RIR)を有して良い。第1のRIRは100:1〜1000:1の範囲の値を有する。任意の既知の方法を用いてプラズマ処理領域内で測定可能なイオンエネルギーは20eV未満であって良い。一の実施例では、気体混合物は、40mTorr〜50mTorrの圧力で維持され得る反応気体と希釈気体を含んで良い。反応気体は、酸素含有気体(たとえばO
x)又はハロゲン含有気体(たとえばCl
x、F
x)を含んで良い。マイクロ波電力は、気体混合物へ印加されて良く、かつ、300MHz〜10GHzの駆動周波数で1000W〜10000Wの範囲であって良い。第1プラズマ302の処理期間は、プラズマチャンバ102内で第2プラズマ304へ遷移する前の120ms〜240msの範囲であって良い。
【0072】
ブロック506では、プラズマシステム100は、
図1〜
図3の説明で述べたように、プロセスチャンバ102内で処理気体の第2混合物を用いることによって第2プラズマ304へ遷移して良い。第2気体混合物への遷移は、第1プラズマ302のプロセス期間の終了直後又はプラズマチャンバ102内での第2気体混合物の導入前に第1気体混合物の全部又は少なくとも一部を除去し得る1回以上のパージサイクルの終了直後に起こって良い。第2気体混合物は、(複数の種類の)反応気体、(複数の種類の)希釈気体、又はこれらの混合物の組成及び/又は濃度が第2気体混合物とは異なる。第2プラズマ304は、20eVよりも大きく、かつ、一の実施例では40eV〜70eVの範囲であり得るイオンエネルギーを実現するように生成されて良い。また第2プラズマ304のΓ
iもまた、第1プラズマのΓ
iより大きくて良い。
【0073】
一の実施例では、これらのイオンエネルギーと束の条件は、各異なる電力領域の組み合わせを第2気体混合物へ印加することによって可能となり得る。たとえば、マイクロ波エネルギーは電源集合体114によって印加され、かつ、バイアス電力130(たとえばRF電力)は基板ホルダ124内の電極によって印加されて良い。マイクロ波エネルギーは、300MHz〜10GHzの任意の周波数で1000W〜10000Wの範囲であって良い。対照的に、バイアス電力130は、300MHzの駆動周波数で50W〜150Wの範囲であって良い。第2プラズマ304のプロセス圧力は5mTorr〜150mTorrの範囲であって良い。マイクロ波電力とバイアス電力130が気体混合物へ印加されるとき、第2プラズマ304の処理時間は最大550msの範囲であって良い。処理時間の終了時、第2プラズマ304は、第1プラズマ302へ戻るように遷移するか、又は、基板110上の他の吸着層306を生成し得る他のプラズマへ遷移して良い。
【0074】
ブロック508では、プラズマチャンバ102は、ある周期にわたって吸着状態のプラズマ(たとえば第1プラズマ302)と脱離状態のプラズマ(たとえば第2プラズマ304)とを非対称的に交互に繰り返して良い。各吸着プロセス又は脱離プロセスの反復は、エッチングの反復のために同一のプラズマ条件を組み入れて良い。しかし各反復は、本願で開示された任意の実施例で説明されたプロセス条件の境界の範囲内で変化して良い。吸着プロセスと脱離プロセスは、500ms〜5000msの範囲であり得る周期の範囲内で実施されて良い。周期は、吸着/脱離プロセス間のパージ期間を含んで良いし、あるいは含まなくても良い。
【0075】
「要約」ではなく「発明の詳細な説明」が請求項の解釈に用いられることに留意して欲しい。「要約」は、本開示の1つ以上の実施例を説明するが、すべての実施例を説明するわけではないので、本開示及び特許請求の範囲を限定すると解されてはならない。
【0076】
本開示が1つ以上の実施例によって表され、かつ、実施例が十分詳細に説明されているが、これらは、請求項の範囲を係る詳細な事項に限定すると解されてはならない。さらなる利点や修正型は当業者には容易に思いつく。従って広い態様での発明は、図示及び説明されてきた具体的詳細、代表的装置、及び方法並びに典型的実施例に限定されない。従って一般的な発明の基本概念の範囲から逸脱することなくそのような詳細な事項から逸脱することは可能である。