(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記各峰における極大粒径と前記各峰のうち最も個数比が大きい峰の極大粒径との差は、前記各峰のうち最も個数比が大きい峰の極大粒径の値の1/5以上である、請求項1に記載のカラム用充填材。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示すものとする。また本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」等の他の類似の表現においても同様である。
【0015】
(多孔質ポリマー粒子)
本実施形態に係るカラム用充填材における多孔質ポリマー粒子は、例えば、シード重合法によって得ることができる。具体的には、シード粒子をモノマー、多孔化剤(多孔質剤)及び水性媒体を含む乳化液中で膨潤させた後、モノマーを重合させることにより得ることができる。
【0016】
(シード粒子)
シード粒子としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系粒子、スチレン系粒子等のビニル系樹脂粒子が挙げられる。
【0017】
アクリル系粒子は、(メタ)アクリル系単量体の重合により得ることができる。(メタ)アクリル系単量体としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、ジエチルアミノエチルアクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、ジエチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。これら単量体は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。ここで、(メタ)アクリル系とは、アクリル系、メタクリル系、及びそれらの混合物を意味する。
【0018】
アクリル系粒子は、(メタ)アクリル系単量体と、他の単量体との共重合により得られる粒子であってもよい。他の単量体としては、例えば、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のグリコールエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の多官能性単量体;スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられる。これら他の単量体は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0019】
スチレン系粒子は、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体の重合により得られる粒子である。これらスチレン系単量体は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0020】
スチレン系粒子は、スチレン系単量体と、他の単量体との共重合により得られる粒子であってもよい。他の単量体としては、例えば、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のグリコールエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の多官能性単量体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、ジエチルアミノエチルアクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、ジエチルアミノエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系単量体が挙げられる。これら他の単量体は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0021】
シード粒子は、上記の単量体を用いて、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、分散重合法等の公知の方法で合成することができる。
【0022】
シード粒子の重量平均分子量(Mw)は、大きくなるとモノマーの吸収能力が低下したり、吸収させるモノマーと相分離して力学強度が低下し易くなり、小さくなると粒径が均一になり難くなる。そのため、シード粒子のMwは、50000以下にすることが好ましく、30000以下にすることがより好ましい。また、シード粒子のMwは、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。なお、本明細書で規定するMwとは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値である。
【0023】
シード粒子の平均粒径は、得られる多孔質ポリマー粒子の設計粒径に応じて調整することができる。シード粒子の平均粒径が大きくなるとモノマーの吸収に時間がかかり、平均粒径が小さくなると粒径が不均一になり真球性も低下し易くなる。シード粒子の平均粒径は多孔質ポリマー粒子の1/10〜1とすることが好ましく、1/7〜1とすることがより好ましく、1/5〜1とすることがさらに好ましい。
【0024】
シード粒子の粒径(直径)の分散性を示す変動係数であるCV(Coefficient of Variation)値は、大きくなると得られる多孔質ポリマー粒子の均一性が低下し易くなることから、5%以下にすることが好ましく、4%以下にすることがより好ましく、3%以下にすることがさらに好ましい。
【0025】
シード粒子の平均粒径及び粒径のCV値は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、対象となるシード粒子を100個観察して粒径を測定することにより算出することができ、また、マイクロトラック粒度分析計(日機装株式会社製)のような粒子径・粒度分布測定装置を用いて測定される粒径から算出することも可能である。なお、CV値は、下記の式で表されるものである。
CV(%)=(σ/D)×100
σ:標準偏差、D:平均粒径
このCV値が小さいほどより単分散であることを示す。一般的にCV値が10%以下になると単分散性が高いとされており、上記の5%以下はきわめて高い単分散性であることを示す。
【0026】
(モノマー)
乳化液に用いられるモノマーとして、例えば、以下の多官能性モノマー、単官能性モノマー等が挙げられる。
【0027】
多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン等のジビニル化合物;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール系ジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート;エトキシ化ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;ジアリルフタレート及びその異性体;トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体などが挙げられる。これらモノマーの中でも、新中村化学工業株式会社製のNKエステル(A−TMPT−6P0、A−TMPT−3E0、A−TMM−3LMN、A−GLYシリーズ、A−9300、AD−TMP、AD−TMP−4CL、ATM−4E、A−DPH)等が、商業的に入手可能である。これらの多官能性モノマーは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記のなかでも耐酸性及び耐アルカリ性の観点よりジビニルベンゼンを使用することが好ましい。
【0028】
単官能性モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン及びその誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸テトラフルオロプロピル等の含フッ素化モノマー;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記の中でも耐酸性及び耐アルカリ性を有するスチレンを使用することが好ましい。
【0029】
乳化液に用いられるモノマーとしては、スチレン及びジビニルベンゼンを含むことが好ましい。
【0030】
(多孔質剤)
多孔質剤(多孔化剤)としては、例えば、シード重合時に相分離剤として作用し、粒子の多孔質化を促進する有機溶媒である脂肪族又は芳香族の炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類が挙げられる。具体的には、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン、オクタン、酢酸ブチル、フタル酸ジブチル、メチルエチルケトン、ジブチルエーテル、1−ヘキサノール、2−オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
多孔質剤は、モノマー100質量%に対して0〜200質量%使用できる。多孔質剤の量によって、得られるポリマー粒子の空孔率をコントロールできる。さらに多孔質剤の種類によって、孔の大きさ及び形状をコントロールすることができる。
【0032】
(水性媒体)
水性媒体としては、水、又は水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。水性媒体には、界面活性剤が含まれている。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性イオン系の界面活性剤のうち、いずれも用いることができる。
【0033】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩などが挙げられる。
【0034】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0035】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングリコールアルキルアミン又はアミド類等の炭化水素系ノニオン界面活性剤、シリコーンのポリエチレンオキサイド付加物類、ポリプロピレンオキサイド付加物類等のポリエーテル変性シリコーン系ノニオン界面活性剤、パーフルオロアルキルグリコール類等のフッ素系ノニオン界面活性剤などが挙げられる。
【0036】
両性イオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の炭化水素界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤及び亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0037】
界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記界面活性剤の中でも、モノマーの重合時の分散安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
【0038】
シード重合法は、公知の方法を参考にして行うことができる。以下にシード重合法の一般的な方法を説明するが、この方法に限定されるものではない。
【0039】
まず、モノマー、多孔化剤(多孔質剤)及び水性媒体を含む乳化液に、シード粒子を添加する。シード粒子は、乳化液に直接添加してもよく、シード粒子を水性分散体(水性媒体)に分散させた形態で添加してもよい。
【0040】
シード重合に用いられる乳化液は、公知の方法により作製できる。例えば、モノマーを水性媒体に添加して、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により水性媒体に分散させることで、乳化液を得ることができる。乳化液は、必要に応じて重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤は、モノマーに予め混合させた後、水性媒体中に分散させてもよいし、重合開始剤とモノマーとを別々に水性媒体に分散させたものを混合してもよい。得られた乳化液中のモノマー液滴の粒径は、シード粒子の粒径よりも小さいほうが、モノマーがシード粒子に効率よく吸収される。
【0041】
必要に応じて添加される重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。重合開始剤は、モノマー100質量部に対して、0.1〜7.0質量部の範囲で使用するとよい。
【0042】
シード粒子を乳化液へ添加した後、シード粒子にモノマーを吸収させて膨潤させる。この吸収は、通常、シード粒子を添加した後の乳化液を、室温(25℃)で1〜24時間攪拌することで行うことができる。また、乳化液を30〜50℃程度に加温することによりモノマーの吸収を促進することができる。
【0043】
シード粒子は、モノマーを吸収することにより膨潤する。シード粒子に対するモノマーの混合比率が小さくなると、モノマーのシード重合により作製される多孔質ポリマー粒子の粒径の増加が小さくなり、多孔質ポリマー粒子の生産性が低下する傾向にある。一方、モノマーの混合比率が大きくなるとシード粒子に吸収されないで、水性媒体中でモノマーが独自に懸濁重合してしまい、目的とする粒径以外の粒子が生成することがある。なお、モノマーの吸収の終了は、光学顕微鏡を用いてシード粒子を観察して粒径の拡大を確認することにより判定できる。
【0044】
次に、シード粒子に吸収させたモノマーを重合させる。重合温度は、モノマー及び重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、25〜110℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。重合反応は、シード粒子が十分に膨潤し、モノマー及び任意に重合開始剤が完全に吸収された後に、昇温して行うのが好ましい。
【0045】
上記重合工程において、シード粒子の分散安定性を向上させるために、乳化液に高分子分散安定剤を添加してもよい。高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用することができる。これらのうち、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の添加量は、モノマー100質量部に対して1〜10質量部が好ましい。
【0046】
水中でモノマーが単独に乳化重合することによって粒子が発生することを抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を乳化液に用いてもよい。
【0047】
上述の方法により、シード粒子にモノマーを重合させることによって、多孔質ポリマー粒子を得ることができる。
【0048】
多孔質ポリマー粒子の粒度分布が多峰性であるカラム用充填材の製造方法として、例えば、シード重合によって得られる多孔質ポリマー粒子を混合する方法を用いることができる。具体的には、シード重合を複数の条件で行うことで、粒径の異なる多孔質ポリマー粒子を得、得られた多孔質ポリマー粒子を混合することによって、粒度分布に2つ以上の極大粒径を有する多孔質ポリマー粒子を得ることができる。上記の方法の他に、2つ以上の異なる粒径を有するシード粒子を使用し、同時にシード重合することによって、異なる粒径を有する多孔質ポリマー粒子を予め混合された状態で得ることもできる。また、シード重合時にシード粒子を添加するタイミングを複数回に分割し、シード粒子の粒径の増加率を変えることによって、異なる粒径を有する多孔質ポリマー粒子を予め混合された状態で得ることもできる。
【0049】
本実施形態における多孔質ポリマー粒子は、粒度分布において各峰に含まれる多孔質ポリマー粒子が、多孔質ポリマー粒子の全量に対してそれぞれ10質量%以上である。シード重合を行った後で粒径の異なる多孔質ポリマー粒子を混合することにより粒度分布が多峰性である多孔質ポリマー粒子を得る場合には、混合する各粒径を有する多孔質ポリマー粒子の質量を、多孔質ポリマー粒子の全量に対してそれぞれ10質量%以上とすることによって、このようなカラム用充填材を得ることができる。
【0050】
また、本実施形態における多孔質ポリマー粒子は、上記各峰における半値幅及び極大粒径が、下記式(1)で表される要件を満たす。
A<0.1177×B …(1)
[式中、Aは半値幅を示し、Bは極大粒径を示す。]
【0051】
カラム用充填材が、粒度分布が多峰性である多孔質ポリマー粒子を含有することにより、カラム中での粒子の充填が改善され、カラムの理論段数を向上させることができる。粒度分布における粒径の極大値数、すなわち峰の数は特に制限はないが、精密に理論段数を制御する観点から、5つ以下であることが好ましく、2つであることがより好ましい。
【0052】
また、効果的にカラムの理論段数を向上させる目的から、各峰における極大粒径と各峰のうち最も個数比が大きい峰の極大粒径との差は、各峰のうち最も個数比が大きい峰の極大粒径の値の1/5以上であることが望ましく、5以下であることが好ましい。
【0053】
カラム用充填材に含有される多孔質ポリマー粒子全体の平均粒径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは7.0μm以下、特に好ましくは5.0μm以下である。また、多孔質ポリマー粒子の平均粒径は、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.75μm以上であり、さらに好ましくは2.0μm以上、特に好ましくは2.5μm以上である。平均粒径が小さくなると、カラム充填後のカラム圧が増加する可能性がある。
【0054】
カラム充填後のカラム圧を低減する目的で、粒度分布の各峰における粒径のCV値は、それぞれ5%以下であることが好ましい。同様の観点から、各峰における粒径のCV値は、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下である。
【0055】
図1は、本実施形態に係るカラム用充填材に含有される多孔質ポリマー粒子の粒度分布を示す概念図である。グラフの横軸は粒径を、縦軸は頻度(%)を示す。峰とは
図1においてそれぞれE
nで示される山状の各領域を指す。峰E
nが粒度分布中に複数存在することを、粒度分布が多峰性であるといい、特に峰E
nが粒度分布中に2つ存在することを、粒度分布が二峰性であるという。各峰はそれぞれ1つの極大粒径を有する。半値幅とは、各峰において頻度が極大頻度Dnの1/2であるときの峰の幅であり、
図1中のA
nで表される。各峰における極大粒径とは、各峰において頻度が最大である粒径であり、
図1中のB
nで表される。各峰のうち最も個数比が大きい峰の極大粒径とは、例えば、
図1中、E
1が各峰のうち最も個数比の大きい峰であるとき、B
1で表される。また、このとき、各峰の極大粒径と各峰のうち個数比が最も大きい峰の極大粒径との差とは、E
1以外の各峰E
nの極大粒径B
nと、B
1との差であり、
図1中、C
nで示される。例えばC
1はB
2とB
1との差である。
【0056】
多孔質ポリマー粒子の粒度分布の、各峰におけるモード径(極大粒径)、半値幅、粒径のCV値、各峰に含まれる粒子の個数、及び平均粒径は、以下の測定法により求めることができる。まず、粒子を超音波分散装置により水に分散させ、1質量%の粒子を含む分散液を調製する。次に、湿式フロー式粒子径・形状分析装置(マルバーン社製のFPIA−3000)を用いて、上記分散液中の粒子約10万個について、ガラスセル中を流れる懸濁液中の粒子画像をCCDで高速撮像し、個々の粒子画像をリアルタイムに解析する。これにより、各峰におけるモード径(極大粒径)、半値幅、粒径のCV値、各峰に含まれる粒子の数、及び平均粒径を算出することができる。さらに、各峰に含まれる多孔質ポリマー粒子の体積比から各峰に含まれる多孔質ポリマー粒子の質量比を求めることができる。
【0057】
本実施形態における多孔質ポリマー粒子は、表面積が約50m
2/g以上の粒子であることが好ましく、実用性から約80m
2/g以上であることが好ましく、300m
2/g以上であることがさらに好ましい。表面積が小さいと、分析及び分離に悪影響を及ぼすため、好ましくない。
【0058】
多孔質ポリマー粒子の平均細孔直径に関しては、30〜1000Åの平均細孔直径を有することが好ましい。この範囲より小さい場合、細孔に入れない物質が増えてくるため好ましくなく、この範囲より大きい場合、表面積が小さくなる。これらは上記の多孔質剤により調整可能である。多孔質ポリマー粒子の表面積及び平均細孔直径は、例えば、自動比表面積計/細孔分布測定装置(日本ベル社製)によって測定することができる。
【0059】
以上のようにして製造された多孔質ポリマー粒子は、適宜官能基を付与した後、分離、分取、分析又は精製用充填剤として使用することができる。特に液体クロマトグラフィー用充填剤に好適に用いることができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0061】
(シード粒子1の合成)
500mLの三口フラスコに、スチレン(ST)40g、オクタンチオール(OCT)4g、ペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)1.98g及び水400gを一括して仕込み、70℃のウォーターバスで加熱しながら、攪拌機を用いて約8時間攪拌をして、シード粒子1を形成させた。
【0062】
(シード粒子2の合成)
500mLの三口フラスコに、スチレン(ST)40g、オクタンチオール(OCT)4g、過酸化ベンゾイル(BPO)2g及び水340gを一括して仕込み、超音波ホモジナイザーで乳化後、シード粒子1を固形分換算で0.4g投入し、8時間攪拌し、シード粒子1を膨潤させた。続いて、80℃に昇温し、約8時間攪拌をして、平均粒径3μmのシード粒子を形成させた。
【0063】
さらに、500mLの三口フラスコに、スチレン(ST)40g、オクタンチオール(OCT)4g、過酸化ベンゾイル(BPO)2g及び水340gを一括して仕込み、超音波ホモジナイザーで乳化後、上記で得られた平均粒径3μmのシード粒子を固形分換算で0.4g投入し、20時間攪拌し、シード粒子を膨潤させた。続いて、乳化液を80℃に昇温し、約8時間攪拌をして、シード粒子2を形成させた。
【0064】
合成したシード粒子1及びシード粒子2をそれぞれSEMにより観察し、粒径(平均粒径)及び粒径CV値を算出した。また、これらの粒子の重量平均分子量(Mw)を測定した。その結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
(多孔質ポリマー粒子1の合成)
重合開始剤として過酸化ベンゾイル1g、モノマーとしてスチレン10g及びジビニルベンゼン2.5g、並びに多孔質剤としてトルエン3.75g及びジエチルベンゼン3.75gを、溶媒(イオン交換水92.2質量%、エタノール7.5質量%、及び界面活性剤としてエマールTD(ラウリル硫酸トリエタノールアミン、花王株式会社製)0.3質量%を混合したもの)340gに分散し、ホモジナイザーと超音波照射で10分間処理し、乳化を行い、乳化液を得た。得られた乳化液にシード粒子1を固形分換算で0.47g添加した後、20時間膨潤を行った。その後、80℃に昇温し、8時間重合を行った。重合終了後、得られた粒子を水及びメタノールで洗浄した。
【0067】
最後に、得られた粒子に濃硫酸を用いてスルホン化を行った。具体的には、得られた粒子10gに対し、ジクロロエタン57g及び97質量%硫酸92gを加え、110℃で4時間反応を行い、スルホン酸基を導入した多孔質ポリマー粒子1を合成した。
【0068】
(多孔質ポリマー粒子2の合成)
シード粒子1の量を0.10gに変更した以外は多孔質ポリマー粒子1の合成と同様にして多孔質ポリマー粒子2を合成した。
【0069】
(多孔質ポリマー粒子3の合成)
シード粒子1の量を0.07gに変更した以外は多孔質ポリマー粒子1の合成と同様にして多孔質ポリマー粒子3を合成した。
【0070】
(多孔質ポリマー粒子4の合成)
シード粒子1の量を0.05gに変更した以外は多孔質ポリマー粒子1の合成と同様にして多孔質ポリマー粒子4を合成した。
【0071】
(多孔質ポリマー粒子5の合成)
シード粒子1の量を0.03gに変更した以外は多孔質ポリマー粒子1の合成と同様にして多孔質ポリマー粒子5を合成した。
【0072】
(多孔質ポリマー粒子6の合成)
重合開始剤として過酸化ベンゾイル1g、モノマーとしてスチレン10g及びジビニルベンゼン2.5g、並びに多孔質剤としてトルエン3.75g及びジエチルベンゼン3.75gを、溶媒(イオン交換水92.2質量%、エタノール7.5質量%、及び界面活性剤としてエマールTD0.3質量%)340gに分散し、リン酸三カルシウム10質量%水溶液100gを添加し、ホモミキサーで30分間攪拌した。その後、80℃に昇温し、8時間懸濁重合を行った。得られた粒子を水及びメタノールで洗浄後、メッシュ分級を行い、粒子を作製した。得られた粒子に対し多孔質ポリマー粒子1と同様にスルホン化を行い、多孔質ポリマー粒子6を作製した。
【0073】
上記の方法で得られた多孔質ポリマー粒子1〜6のモード粒径(極大粒径)と粒径CV値を測定した。具体的には、湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA−3000(マルバーン社製)を用いて、ガラスセル中を流れる懸濁液中の粒子画像をCCDで高速撮像し、個々の粒子画像をリアルタイムに解析することで、10万個の粒子の粒度分布及び粒子形状を評価し、モード粒径(極大粒径)及び粒径CV値を測定した。その結果を表2に示す。なお、粒度分布は、個数基準の頻度分布として評価した。
【0074】
【表2】
【0075】
上記の方法で得られた多孔質ポリマー粒子1〜5を、表3及び4に示す混合量(質量%)で混合し、粒度分布において2つ以上の極大粒径を有する、すなわち多峰性である多孔質ポリマー粒子を得た(実施例1〜9)。また、上記の方法で得られた多孔質ポリマー粒子1〜6のうち、表4に示す粒子を単独で用いて、比較例1〜5の多孔質ポリマー粒子とした。実施例及び比較例の多孔質ポリマー粒子について、再度、上記同様の方法で粒径測定を行い、多孔質ポリマー粒子全量の平均粒径を測定した。また、各峰における半値幅及び粒径CV値を算出した。その結果を表3に示す。半値幅の単位はμmである。各例において、混合した1〜6の多孔質ポリマー粒子のうち、個数の一番多い粒子を●で示した。また、各峰における半値幅及び極大粒径が下記式(1)で表される要件を満たし、かつ各峰の粒径CV値が5%以下である場合、(○)で示し、それ以外の場合、(×)で示した。
A<0.1177×B …(1)
[式中、Aは半値幅を示し、Bは極大粒径を示す。]
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
(ピーク対称度、理論段数)
実施例及び比較例で得られた多孔質ポリマー粒子の混合物を、直径7.8mm、長さ150mmのステンレスカラムに、充填溶媒0.1質量%リン酸、スラリー濃度50%、充填圧15MPa、充填時間30分の条件で充填した。充填したカラムを用い、溶離液0.1質量%リン酸水溶液、カラム温度25℃、流速0.5ml/min、サンプル3.5質量%ギ酸、サンプル量2μL、検出器UV210nmの測定条件で、クロマト特性を測定した。クロマト測定により、解析ソフトを用いて理論段数を求め粒子特性の指標とした。また、ギ酸のピーク対称度を測定し、1以上1.2未満を良好、1.2以上をテーリング、1未満をリーディングと判定した。
【0079】
実験結果を表3及び4に示す。2つ以上の極大粒径を有する多孔質ポリマー粒子を充填したカラムにおいて、理論段数は、用いた多孔質ポリマー粒子全体の平均粒径が小さい程向上した。また、シード重合で合成した単一粒径粒子を単独で用いる場合より、粒度分布が多峰性である多孔質ポリマー粒子を用いた場合の方が高い理論段数を示すことが分かった。また、シード重合で合成した多孔質ポリマー粒子をカラム用充填材として用いると、従来の懸濁重合にて合成した粒子を用いた場合よりも理論段数が向上することが分かった。実施例で合成した粒子は分級が不要であるため、従来の懸濁重合で合成した場合より、コストを大幅に低減できると考えられる。
【0080】
以上のように、本実施形態の多孔質ポリマー粒子をカラム用充填材として使用することにより、従来品よりもカラムの理論段数をさらに向上させることができた。