(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160387
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/613 20140101AFI20170703BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20170703BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20170703BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20170703BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20170703BHJP
H01M 10/6569 20140101ALI20170703BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
H01M10/613
H01M10/617
H01M10/625
H01M10/643
H01M10/653
H01M10/6569
H01M2/10 S
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-192019(P2013-192019)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-60650(P2015-60650A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(74)【代理人】
【識別番号】100186819
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 俊尚
(72)【発明者】
【氏名】土屋 孝之
(72)【発明者】
【氏名】上原 秀秋
(72)【発明者】
【氏名】増井 貴史
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 淳
【審査官】
緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−030403(JP,A)
【文献】
特開2012−009388(JP,A)
【文献】
特開2012−204129(JP,A)
【文献】
特開平10−334953(JP,A)
【文献】
特開2006−099997(JP,A)
【文献】
特開2002−157984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52−10/667
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端にそれぞれ端子部を有する細長い複数の蓄電セルが、各蓄電セルの長手方向と直交する第1の方向に並んで構成された第1及び第2のセル列が、前記長手方向及び前記第1の方向と直交する第2の方向に並ぶように配置されてなる蓄電セル群と、
前記蓄電セル群の前記複数の蓄電セルの前記両端をそれぞれ保持するが前記複数の蓄電セルのその他の部分は露出させた状態で前記複数の蓄電セルを保持する蓄電セル群を固定するホルダ構造体と、
内部に熱媒体が流れ且つ前記複数の蓄電セルとの間で熱交換を行う熱媒体流通流路とを有する蓄電モジュールであって、
前記熱媒体流通流路は、前記第1の方向に延び且つ前記蓄電セル群の外側に配置されて前記第1のセル列を構成する複数の蓄電セルとの間で熱交換を行う第1の流路構造部と、前記第1の方向に延び且つ前記蓄電セル群の外側に配置されて前記第2のセル列を構成する複数の蓄電セルとの間で熱交換を行う第2の流路構造部とからなり、
前記第1の流路構造部と前記第1のセル列中の前記複数の蓄電セル及び前記第2の流路構造部と前記第2のセル列中の前記複数の蓄電セルとの間には、それぞれ熱伝導構造部が配置されていることを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項2】
前記第1の流路構造部及び前記第2の流路構造部は、それぞれ1本以上の配管から構成され、
熱交換器から供給される前記熱媒体が前記第1の流路構造部を流れた後、前記第2の流路構造部を通って前記熱交換器に戻ることを特徴とする請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記第1の流路構造部が上方に位置し、前記第2の流路構造部が下方に位置する姿勢で配置された請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記第1の流路構造部及び前記第2の流路構造部は、それぞれ複数本の配管から構成されている請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記熱伝導構造部は、前記セル列を構成する前記複数の蓄電セルの外面に倣うように形状が変形する材料からなるセル接触部材と、該セル接触部材よりも熱伝導率が大きい材料からなる高熱伝導部材とを含んでいる請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
前記高熱伝導部材は金属製の板からなる請求項5に記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
前記熱伝導構造部は、前記高熱伝導部材と前記熱媒体流通流路との間に、加圧されると圧縮変形する熱伝導部材を更に備えている請求項6に記載の蓄電モジュール。
【請求項8】
前記熱伝導構造部は、前記蓄電セル群の前記第1の方向の両端部を越えて延びる形状寸法を有している請求項1,5または7に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルダ構造体で固定された蓄電セル群を構成する蓄電セルとの間で熱交換を行う熱媒体流通流路を有する蓄電モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車、カート、トラックなどの車両や各種の機器に搭載される蓄電モジュールは、所望の電圧や容量を得るために、特開2011−249225号公報の
図4(従来技術・特許文献1)に示されるように複数本の蓄電セルを直列または並列に接続し、蓄電セルの両端をホルダ構造体(電池把持板5)を用いて保持して構成されている。
【0003】
特許文献1に記載の蓄電モジュールでは、蓄電セルが発生する熱を冷却するために、空気を熱媒体とする空冷を用いている。しかしながら、蓄電モジュールに要求される電圧や容量の増大のため、蓄電セルが発生する熱が増大する傾向にあり、空冷では冷却が不十分な場合がある。そこで、特開2011−249225号公報の
図1(特許文献1)に示される蓄電モジュールでは、液体からなる冷媒を用いて蓄電セルと熱交換をして効率的に蓄電セルの発する熱を冷却している。
【0004】
特許文献1の
図1に示された蓄電モジュールでは、ホルダ構造体で蓄電セルを保持するのではなく、内部に冷媒が通る流路が形成された3つの部材からなる蓄電池把持部(20)を備えている。これにより、蓄電セル群の外側だけでなく、上下に配置されたセル列の間も効率的に冷却するための冷媒の流路を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−249225号公報の
図1及び
図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の
図1の蓄電モジュールでは、蓄電セルの数に応じて特別に設計した内部に冷媒が通る特殊構造の蓄電池把持部(20)を用いる必要があるため、蓄電セルの本数を変える場合には、その都度、特殊構造の蓄電池把持部を設計して製造する必要がある。そのため大量生産には向いているものの、多品種少量生産には不向きであった。また蓄電池把持部と蓄電セルとは、密着して、蓄電セル群の大部分を覆っているため、空気が通る隙間がなく、冷媒を供給する装置が停止した場合には、蓄電モジュール内に熱がこもりやすい。また、特許文献1の
図4に示されたホルダ構造体(電池把持板5)によって蓄電セルを固定した方がより強固に蓄電セルを固定することが可能である。
【0007】
本発明の目的は、蓄電セルの両端をホルダ構造体を用いて保持しながら、十分な熱交換が可能であり、多品種少量生産を安価に実現できる蓄電モジュールを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、熱交換器と蓄電モジュールとを含む蓄電装置全体として、コンパクト化することが可能な蓄電モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、両端にそれぞれ端子部を有する細長い複数の蓄電セルが、各蓄電セルの長手方向と直交する第1の方向に並んで構成された第1及び第2のセル列が、長手方向及び第1の方向と直交する第2の方向に並ぶように配置されてなる蓄電セル群と、蓄電セル群の複数の蓄電セルの両端をそれぞれ保持するが複数の蓄電セルのその他の部分は露出させた状態で複数の蓄電セルを保持する蓄電セル群を固定するホルダ構造体と、内部に熱媒体が流れ且つ複数の蓄電セルとの間で熱交換を行う熱媒体流通流路とを有する蓄電モジュールを対象としている。本発明では、熱媒体流通流路が、第1の方向に延び且つ蓄電セル群の外側に配置されて第1のセル列を構成する複数の蓄電セルとの間で熱交換を行う第1の流路構造部と、第1の方向に延び且つ蓄電セル群の外側に配置されて第2のセル列を構成する複数の蓄電セルとの間で熱交換を行う第2の流路構造部とからなる。そして第1の流路構造部と第1のセル列中の複数の蓄電セル及び第2の流路構造部と第2のセル列中の複数の蓄電セルとの間には、それぞれ熱伝導構造部が配置されている。
【0010】
このように蓄電セル群の外部に熱伝導構造部と第1及び第2の流路構造部とを配置することで、特許文献2のような専用の蓄電池把持部を用いることなく、蓄電セルの両端を保持するホルダ構造体を用いて蓄電セル群を固定した蓄電モジュールで、熱媒体が流れる第1及び第2の流路構造部を用いて十分な熱交換が可能となる。また、使用する蓄電セルの本数を変える場合でも、特殊な構造の冷却用部品を専用部品として作る必要がなく、流路構造部の長さを変えるだけで、安価に対応することができる。さらにホルダ構造体を用いて蓄電セル群を固定しているため、蓄電セル間に隙間が存在するため、第1及び第2のセル列の間に空気の流路を確保することができる。そのため蓄電セルの冷却に空冷も利用可能である。
【0011】
第1の流路構造部及び第2の流路構造部は、それぞれ何本の配管から構成されていてもよい。例えば、1本でもよく、熱伝達構造体との接触面積が広くなるように、2本以上の複数本であってもよい。また、例えば、1本の場合でも、熱伝達構造体との接触面積が広くなるように、各蓄電セルの長手方向すなわち配管の幅方向に真っ直ぐに延びる接触面を持つ角形または扁平状の配管を用いても良い。
【0012】
熱交換器から供給される熱媒体の流れは、第1の流路構造部と第2の流路構造部に並列的に熱媒体が供給されるようにしてもよいが、第1の流路構造部を流れた後、第2の流路構造部を通って熱交換器に戻るように第1の流路構造部と第2の流路構造部に直列的に熱媒体が流れるようにしてもよい。直列的に熱媒体を流すようにすると、熱交換器及び熱交換器と熱媒体流通流路とを接続するマニホールドとを蓄電モジュールに対して1箇所に集中して配置することが可能になる。そのため、熱交換器と蓄電モジュールとを含む蓄電装置全体を、コンパクト化することが可能となる。
【0013】
なお、実験の結果、第1及び第2のセル列が上下方向に並ぶようにモジュールを配置した場合、上方に位置する第1のセル列の上面側の温度の方が下方に位置する第2のセル列の下面側の温度よりも高くなる傾向があることがわかった。そのため、上方及び下方の蓄電セルの温度分布を均等にするために、熱交換器から供給される熱媒体が第1の流路構造部を流れた後、第2の流路構造部を通って熱交換器に戻るように構成した場合には、蓄電モジュールは、第1の流路構造部が上方に位置し、第2の流路構造部が下方に位置する姿勢で配置することが望ましい。
【0014】
熱媒体流通流路と蓄電セルとの間の熱交換を効率的に行うようにするために、熱伝導構造部は、セル列を構成する複数の蓄電セルの外面に倣うように形状が変形する材料からなるセル接触部材と、該セル接触部材よりも熱伝導率が大きい材料からなる高熱伝導部材とを含むようにしてもよい。セル接触部材は、例えば、柔軟性のある樹脂製の部材等である。高熱伝導部材は、例えば、銅板、銅合金板、鋼板のような熱伝導性がよく、且つ、剛性を有する金属製の板から形成できる。さらに、熱伝導構造部は、高伝熱部材と熱媒体流通流路との間に、加圧されると圧縮変形する熱伝導部材を備えていてもよい。この熱伝導部材も、例えば、柔軟性のある樹脂製の部材等である。
【0015】
なお熱伝導構造部は、蓄電セル群の第1の方向の両端部を越えて延びる形状寸法を有していてもよい。熱伝導構造部が、このような形状寸法を有していれば、熱伝導構造部の投影面積を蓄電モジュールの投影面積よりも大きくして、熱媒体流通流路との接触面積を大きくすることができる。その結果、熱交換の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態の蓄電モジュールと熱交換器の組み合わせを示す概略構成図である。
【
図2】(A)は本実施の形態の蓄電モジュールの正面図、(B)は平面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図である。
【
図3】本実施の形態の蓄電モジュールの構成を示す模式図である。
【
図4】第2の実施の形態の蓄電モジュールと熱交換機の組み合わせを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の蓄電モジュールの実施の形態の一例を説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態の蓄電モジュール1と熱交換器3の組み合わせを示す概略構成図である。蓄電モジュール1は、マニホールド5A及び5Bを介して熱交換器3と組み合わされている。熱交換器3は、熱媒体に水等を用いた一般的な熱交換器である。熱交換器3は、熱交換器接続配管7Aでマニホールド5Aと接続され、第1及び第2の流路構造部9及び11からなる熱媒体流通流路を介してマニホールド5Bと接続されている。マニホールド5Bは、熱交換器接続配管7Bで熱交換器3に接続されている。蓄電モジュール1の一部を構成する熱媒体流通流路(9,11)が、マニホールド接続配管13でマニホールド5A及び5Bと接続されている。したがって、本実施の形態では、熱媒体が
図1に示した矢印に示す方向に流れるように流路を形成している。
【0019】
[蓄電モジュールの構成]
図2(A)乃至(D)は、本実施の形態の蓄電モジュール1の正面図、平面図、左側面図及び右側面図であり、
図3は、蓄電モジュール1の蓄電セルの配置構成を示す模式図である。蓄電モジュール1は、主に、蓄電セル群15と、蓄電セル群15を固定するホルダ構造体17と、一対の熱伝導構造体19,19と、上部熱媒体流通流路すなわち第1の流路構造部9及び下部熱媒体流通流路すなわち第2の流路構造部11とから構成されている。
図2(A)及び(B)においては、第1の流路構造部9及び第2の流路構造部11は一部省略して図示してあり、また、
図2(C)及び(D)においては、断面を示してある。
【0020】
蓄電セル群15を構成するリチウムイオンキャパシタである複数の円筒型蓄電セル21は、両端にそれぞれ出力端子電極を有した細長い形状を有している。
【0021】
ホルダ構造体17は、蓄電セル21の長手方向の一端側に位置する2つのホルダ17A及び17Aと、蓄電セル21の長手方向の他端側に位置する2つのホルダ17B及び17Bとから構成される。蓄電セル21の長手方向に位置する一対のホルダ17Aとホルダ17Bとの間に、4本の蓄電セル21が保持されている。本実施の形態では、2組の一対のホルダ17Aとホルダ17Bとの間に、合計で8本の蓄電セルが保持されている。一対のホルダ17A及びホルダ17Bは、各蓄電セル21の両端を保持するが、蓄電セルのその他の部分は露出させている。本実施の形態では、一対のホルダ17A及びホルダ17Bに保持された4本の蓄電セル21は、図示しないバスバによりホルダ17A及びホルダ17Bの内部で、電気的に連結されている。なおホルダ17A及びホルダ17Bの構造の詳細については、出願人が先に出願した国際出願番号PCT/JP2012/065382(国際公開番号WO2012/173233A1)の第1乃至第4の実施の形態(
図1乃至
図6)に記載されているので省略する。また他の一対のホルダ17A及びホルダ17Bで保持された4本の蓄電セルも同様にして電気的に連結されている。そして8本の蓄電セルは直列に接続されている。本実施の形態では、
図3に示すように、8本の蓄電セル21が、各蓄電セルの長手方向と直交する第1の方向に並んで構成された第1及び第2のセル列23及び25を構成し、第1及び第2のセル列23及び25が蓄電セルの長手方向及び第1の方向と直交する第2の方向に並ぶように配置されて蓄電セル群15が構成されている。
【0022】
各蓄電セル21は、バスバ(図示せず)によって、
図3に示したセルC1乃至C8の番号順に直列接続されており、1番目の蓄電セルC1の端子部がマイナス極となる入出力端子20Aに接続され、8番目の蓄電セル8Cの端子部がプラス極になる入出力端子20Bに接続されている。セルC4から延びるバスバ18AとセルC5から延びるバスバ18Bは、ボルト22により連結されている。なお、以下では、
図2(A),(C),(D)及び
図3の紙面に向かって上下を上下方向と定義し、
図2(A),(B)及び
図3の紙面に向かって左右を左右方向と定義する。
【0023】
本実施の形態では、第1の方向に延び且つ第1のセル列23を構成する4本の蓄電セル21との間で熱交換を行う第1の流路構造部9と、第1の方向に延び且つ第2のセル列25を構成する4本の蓄電セル21との間で熱交換を行う第2の流路構造部11とから熱媒体流通流路が構成されている。本実施の形態では第1の流路構造部9及び第2の流路構造部11は、それぞれ2本の管路により構成されている。第1の流路構造部9及び第2の流路構造部11は、それぞれ何本の配管から構成されていていてもよく、また、1本の場合でも、熱伝達構造体19との接触面積が広くなるように、各蓄電セル21の長手方向すなわち配管の幅方向に真っ直ぐに延びる接触面を持つ角形または扁平状の配管を用いても良いのはもちろんである。
【0024】
一対の熱伝導構造体19,19は、蓄電セル21の熱を第1の流路構造部9及び第2の流路構造部11に伝達する役割を果たしている。一方の熱伝導構造体19は、第1の流路構造部9と第1のセル列23中の蓄電セル21のホルダ構造体17によって保持されずに露出している部分との間に配置されている。また他方の熱伝導構造体19は、第2の流路構造部11と第2のセル列25中の蓄電セル21のホルダ構造体17によって保持されずに露出している部分との間に配置されている。一対の熱伝導構造体19は、それぞれ蓄電セル21の外面に倣うように形状が変形する材料からなるシート状のセル接触部材27(
図2(C),(D)及び
図3参照)と、セル接触部材27よりも熱伝導率が大きい材料である金属材料(例えば、銅や銅合金)からなる板状の高熱伝導部材29と、高熱伝導部材29と熱媒体流通流路(9,11)との間に、加圧されると圧縮変形する熱伝導部材31とを備えた3層構造になっている。熱伝導部材31は、熱媒体流通流路(9,11)と接触する部分に熱媒体流通流路(9,11)に沿って設置されている。シート状のセル接触部材27及び熱伝導部材31としては、例えば、高熱伝導性と柔軟性を有する樹脂材料(具体的にはシリコンゴム)により形成されたものを用いることができる。
【0025】
本実施の形態では、熱伝導構造体19に含まれる高熱伝導部材29が、蓄電セル群15の第1の方向の両端部を越えて延びる形状寸法を有している。高熱伝導部材29の蓄電セル群15の第1の方向の両端部を越えて延びた部分には、上下に配置される一対の高熱伝導部材29を相互に固定する4本の固定ロッド部材33のネジ付き端部が貫通する貫通孔を備えた固定ロッド部材貫通部35がそれぞれ4カ所設けられている。固定ロッド部材貫通部35はそれぞれ上下に対向する位置に設けられている。固定ロッド部材33の両端部は、それぞれ対応する固定ロッド部材貫通部35に設けられた貫通孔に挿入され、それらの端部のネジ部にはナット部材が螺合されている。その結果、一対の熱伝導構造体19,19は、蓄電セル群15に対して押し付けられた状態になっている。このようにして、熱伝導構造体19に含まれるセル接触部材27が、蓄電セル21に対してより密着し、熱交換の効率を高めることができる。
【0026】
以下、本実施の形態の蓄電モジュールの熱交換の効果を示す試験結果を示す。
【0027】
実験に使用した蓄電モジュールは、
図2(A)乃至(D)及び
図3に詳細に示した蓄電モジュール1であり、
図1に示した通り、熱交換器3と接続されている。実験では、蓄電セル群15の入出力端子に充電器(図示せず)及び負荷(図示せず)を接続し、開始電圧25.6Vから、放電3.5秒→充電2.5秒→放電3.5秒→充電2.5秒→待機(6秒または12秒)を1サイクルとした充放電を行い、
図3に星印で示した位置の蓄電セル21の表面温度を測定した。放電は、3560Wで行っており、充電は、5360Wで行っている。温度変化が定常状態になるまでサイクルを繰り返し、そのときの最高温度(℃)を測定結果として示した。熱伝導部材31には、熱伝導率2.0W/m・k、厚さ1mmのものを用いている。熱伝導構造体19(特に、セル接触部材27)の変更、充放電待機時間の変更を行い、温度の比較を行った。
【0028】
なお、実験は、室温は25℃、用いた熱媒体(水)の温度は55℃、熱媒体の流量は19〜20L/min、という環境条件で行った。
【0029】
〔実施例1〕
実施例1は、セル接触部材27に、熱伝導率1.5W/m・k、厚さ3mmのものを用いて、充放電待機時間6秒で行った。
【0030】
〔実施例2〕
実施例2は、セル接触部材27に、熱伝導率2.0W/m・k、厚さ1mmのものを用いて、充放電待機時間6秒で行った。
【0031】
〔実施例3〕
実施例3は、実施例1と同一のセル接触部材27を用いて、充放電待機時間12秒で行った。
【0032】
〔比較例〕
比較例は、蓄電セル群15と熱媒体流通流路(9,11)の間に、熱伝導構造体19のうちセル接触部材27及び高熱伝導部材29を配置しない構成で、充放電待機時間6秒で行った。
【0033】
実施例1乃至3と比較例の実験結果を表1に示す。
【表1】
【0034】
上記の結果より、次のことが判明した。
【0035】
実施例1乃至3と比較例とを比較すると、実施例1乃至3の方が30〜40℃程度、最高温度が低い。したがって、蓄電セル群15と熱媒体流通流路(9,11)の間に、一対の熱伝導構造体19を配置すること、特に、セル接触部材27が蓄電セル21と接触することで熱媒体流通流路9,11に効率よく熱が伝達され、蓄電セルと熱媒体流通流路(9,11)内を通る熱媒体との間で熱交換が効率良く行われることが示されている。また、セル列の外側だけでなく、熱がこもりやすいセル列の内側でも効果が得られることが示されている。
【0036】
実施例1と実施例2とを比較すると、実施例2の方がセル列の外側の最高温度が低くなる傾向が見られた。したがって、実施例2の方が、より効率的に熱交換が行われていることが示されている。
【0037】
実施例1と実施例3とを比較すると、1サイクル中の待機時間が長い方が最高温度が低くなる傾向が見られた。待機時間が長い方が温度上昇を防ぐことが可能であることが示されている。
【0038】
[第2の実施の形態]
図4は、第2の実施の形態の蓄電モジュールと熱交換器の組み合わせを示す概略構成図である。配管の一部構成が異なる以外は
図1と同じ構成であるため、第1の実施の形態と共通する部分については、
図1に付した符号に100を加えた数の符号を付して、その説明を省略する。
図1に示す第1の実施の形態のように、熱交換器3から供給される熱媒体の流れは、第1の流路構造部9と第2の流路構造部11に並列的に熱媒体が供給されるようにしている。しかし、
図4に示す第2の実施の形態のように、第1の流路構造部109を流れた後、第2の流路構造部111を通って熱交換器103に戻るように第1の流路構造部109と第2の流路構造部111に直列的に熱媒体が流れるようにしてもよい。
【0039】
この例では、第1の流路構造部109から流れ出た熱媒体が直接第2の流路構造部111に流れ込むように、第1の流路構造部109及び111の間に、ジョイント配管137が接続されている。したがって、マニホールド105から流れ出る熱媒体が矢印に示す方向に流れてマニホールド105へ戻る流路を形成するように構成されている。本実施の形態では、第1の流路構造部109を流れて熱交換後の熱媒体が第2の流路構造部111に流れることになることから、第1の実施の形態と比較すると、第2の流路構造部111と蓄電セル121の熱交換の効率は低下する可能性がある。しかしながら、直列的に熱媒体を流すようにすると、熱交換器103及び熱交換器103と熱媒体流通流路(109,111)とを接続するマニホールド105とを蓄電モジュール101に対して1箇所に集中して配置することが可能になる。そのため、熱交換器105と蓄電モジュール101とを含む蓄電装置全体を、コンパクト化することが可能となる。
【0040】
実験の結果、第1及び第2のセル列23及び24が上下方向に並ぶようにモジュールを配置した場合、上方に位置する第1のセル列23の上面側の温度の方が下方に位置する第2のセル列24の下面側の温度よりも高くなる傾向があることがわかった。そのため、上方及び下方の蓄電セル21の温度分布を均等にするために、熱交換器3から供給される熱媒体が第1の流路構造部109を流れた後、第2の流路構造部111を通って熱交換器に103戻るように構成した場合には、本実施の形態のように、蓄電モジュールは、第1の流路構造部109が上方に位置し、第2の流路構造部111が下方に位置する姿勢で配置することが望ましい。
【0041】
上記実施の形態は、一例として記載したものであり、その要旨を逸脱しない限り、本実施例に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、蓄電セル群15は、ホルダ構造体で保持された4本の蓄電セル21の集合体を2つ並設しているが、1つだけでもよく、また、3つ以上の集合体を並設してもよいのはもちろんである。その場合には、熱媒体流通流路の構成を変えれば対応することが可能になる。したがって、必要な電力に応じて蓄電セルの本数を変える場合でも、特殊な構造の冷却用部品を専用部品として作る必要がなく、流路構造部の長さを変えるだけで、安価に対応することができる。
【0042】
また、上記実施の形態では、蓄電セルとして、リチウムイオンキャパシタを用いたが、蓄電セルとしては電気二重層コンデンサ、リチウムイオン電池、その他の二次電池を用いてもよいのはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、専用の蓄電セル保持部を用いることなく、蓄電セルの両端を保持するホルダ構造体を用いて蓄電セル群を固定した蓄電モジュールで、熱媒体が流れる第1及び第2の流路構造部を用いて十分な熱交換が可能となる。また、構成によって、熱交換器と蓄電モジュールとを含む蓄電装置全体として、コンパクト化することが可能な蓄電モジュールを提供することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 蓄電モジュール
3 熱交換器
5A,5B マニホールド
7A,7B 熱交換器接続配管
9 第1の流路構造部
11 第2の流路構造部
13 マニホールド接続配管
15 蓄電セル群
17 ホルダ構造体
19 熱伝導構造体
21 蓄電セル
23 第1のセル列
25 第2のセル列
27 セル接触部材
29 高熱伝導部材
31 熱伝導部材
33 固定ロッド部材
35 固定ロッド部材貫通部