特許第6160610号(P6160610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6160610液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160610
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20170703BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   G02F1/1337 525
   C08G73/10
【請求項の数】7
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2014-506255(P2014-506255)
(86)(22)【出願日】2013年3月19日
(86)【国際出願番号】JP2013057900
(87)【国際公開番号】WO2013141262
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-64186(P2012-64186)
(32)【優先日】2012年3月21日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-64187(P2012-64187)
(32)【優先日】2012年3月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 亮一
(72)【発明者】
【氏名】原田 佳和
【審査官】 磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−520702(JP,A)
【文献】 特開2011−100099(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/079637(WO,A1)
【文献】 特開昭52−005725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−ヒドロキシエステル構造を有するポリイミド前駆体及びβ−ヒドロキシエステル構造を有するポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1つの重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【請求項2】
前記β−ヒドロキシエステル構造を有するポリイミド前駆体及び前記β−ヒドロキシエステル構造を有するポリイミドが、β−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物から得られる請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記ジアミン化合物が、下記式(HE−1)で表される構造を有する請求項2に記載の液晶配向剤。
【化1】
(式(HE−1)中、Xは、原子数5若しくは6の単環式環、原子数5若しくは6の2つの隣接する単環式環、原子数8〜10の二環式の環系、及び原子数13若しくは14の三環式の環系からなる群より選択される、非置換若しくは置換の、炭素環式又は複素環式の芳香族基を表す。)
【請求項4】
前記ジアミン化合物が、下記式(HE−2)で表される構造を有する請求項2又は3に記載の液晶配向剤。
【化2】
(式(HE−2)中、Xは、原子数5若しくは6の単環式環、原子数5若しくは6の2つの隣接する単環式環、原子数8〜10の二環式の環系、及び原子数13若しくは14の三環式の環系からなる群より選択される、非置換若しくは置換の、炭素環式又は複素環式の芳香族基を表す。Xは、単結合又は、エーテル、エステル、アミド、及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の結合基を表す。Xは、炭素数3〜20の直鎖状アルキル基又は炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基を表す。ただし、このアルキル基の水素原子は、フッ素原子に置き換わっていてもよい。)
【請求項5】
前記ジアミン化合物が、下記式(DA)で表される化合物である請求項2〜4のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化3】
(式(DA)中、Xは、原子数5若しくは6の単環式環、原子数5若しくは6の2つの隣接する単環式環、原子数8〜10の二環式の環系、及び原子数13若しくは14の三環式の環系からなる群より選択される、非置換若しくは置換の、炭素環式又は複素環式の芳香族基を表す。Xは、単結合又は、エーテル、エステル、アミド、及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の結合基を表す。Xは、炭素数3〜20の直鎖状アルキル基又は炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基を表す。ただし、このアルキル基の水素原子は、フッ素原子に置き換わっていてもよい。Xは単結合、メチレン基又は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。ただし、このアルキレン基は、水酸基によって置換されていてもよい。Xは、単結合、酸素原子、*−OCO−又は*−OCH−(ただし、「*」を付した結合手がXと結合する。)を表す。ただし、Xが単結合であるときXは単結合である。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、該液晶配向剤から形成される液晶配向膜及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料からなる有機材料の膜は、形成の容易さや絶縁性能等が着目され、電子デバイスにおいて、層間絶縁膜や保護膜等として広く用いられている。材料としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びポリイミド樹脂等があり多様であるが、高い耐久性が求められる用途では、高い耐熱性を有するポリイミド樹脂が広く用いられている。例えば、表示デバイスとして良く知られた液晶表示素子では、ポリイミドからなる膜が液晶配向膜として使用されている。
【0003】
液晶配向膜は、表示デバイスとして広く使用されている液晶表示素子の構成部材であり、液晶層を挟持する基板表面に形成される。
液晶配向膜は、液晶層を構成する液晶分子を一定の方向に配向させるという役割を担っており、加えて、配向する液晶分子のプレチルト角を制御するという役割がある。
【0004】
現在、工業的に利用されている液晶配向膜には、上述したように、耐久性に優れ、液晶のプレチルト角の制御に好適なポリイミド系の有機膜が広く用いられている。このポリイミド系の液晶配向膜は、通常、液晶配向剤等と称される樹脂組成物を用いて形成される。 樹脂組成物は、それぞれ所望とする構造のジアミン化合物とテトラカルボン酸誘導体とを用いて合成された重合体を含んだものとして調製される。含有される重合体としては、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸(ポリアミド酸と言われることもある。)、又はポリアミック酸をイミド化して形成されたポリイミド等がある。
液晶配向膜は、このような樹脂組成物を用いて塗膜を形成し、加熱等を行って、その塗膜を硬化させ、ポリイミドからなる硬化膜として形成される。
【0005】
ポリイミドは、高耐熱性であって耐久性に優れるという特徴を備えるものの、ポリイミド自体及びその前駆体であるポリアミック酸等が、通常、溶媒に溶け難いという課題を有する。したがって、ポリイミド及びポリアミック酸等の重合体を含む樹脂組成物は、例えば、基板等への塗布を行う場合等において、塗布性の改善が求められている。
また、ポリイミドからなる硬化膜が液晶分子の所望とする配向状態を実現して液晶配向膜として機能するためには、この硬化膜に配向処理を施す必要がある。
【0006】
配向処理としては、布を用いてポリイミドからなる硬化膜の表面を一定方向に擦るラビング処理が知られている。しかし、ラビング処理は、硬化膜を擦ることにより塵を発生させるほか、形成される液晶配向膜の表面に傷を残して液晶分子の配向ムラを発生させる懸念がある等、多様な課題を有している。そこで、液晶表示素子の液晶配向膜の形成において、ラビング処理を必要としない光配向処理の技術が着目されている。
【0007】
液晶表示素子では、液晶分子が、基板と液晶配向膜との間に設けられた電極への電圧印加により応答し、その液晶分子の配向変化を利用して所望とする画像の表示を行う。
液晶表示素子は、液晶分子の初期の配向状態や、電圧印加による配向変化の形態が異なる多様な表示方式がある。
【0008】
近年、液晶表示素子の表示方式の中でも、負の誘電異方性を有する液晶分子を、基板に垂直に配向させる垂直配向(VA:Vertical Alignment)方式の液晶表示素子が、大画面の液晶テレビや高精細なモバイル用途(デジタルカメラや携帯電話の表示部)等に広く利用されている。このVA方式の液晶表示素子では、電圧印加により液晶分子が基板に平行な、所望とする一定の方向に向かって倒れるように配向変化することが求められる。そのため、VA方式の液晶表示素子は、電圧印加前の初期の液晶分子の配向状態として、液晶分子が基板の法線方向から基板面内の一方向に向かってわずかに傾くようにする必要がある。
VA方式の液晶表示素子においては、液晶配向膜を用い、液晶分子の電圧印加前の初期配向状態として、液晶分子がプレチルト角を伴って基板の法線方向から基板面内の一方向に向かってわずかに傾く配向状態を実現することができる。
【0009】
VA方式の液晶表示素子には、液晶の倒れる方向を制御するための突起を、TFT基板やカラーフィルタ基板に形成するMVA方式(Multi Vertical Alignment)や、基板のITO(Indium Tin Oxide)電極にスリットを形成し、電界によって液晶の倒れる方向を制御するPVA(Paterned Vertical Alignment)方式が知られている。また、基板と液晶層との間に液晶配向膜を設け、これをラビング処理し、液晶分子を基板法線方向から基板面内の一方向に向けてわずかに傾けて配向させる方法のほか、特許文献1、特許文献2等に開示される光配向法等が知られている。
【0010】
特許文献1及び特許文献2では、耐久性の高いポリイミドを用い、ポリイミドの分子構造において好適な設計を行い、VA方式の液晶表示素子に用いる液晶配向膜に求められる液晶分子の垂直配向性と光配向性を実現している。
特許文献1では、分子内に光二量化性を有するケイ皮酸エステル構造と、直鎖状の疎水性側鎖構造とを有するジアミン化合物を用いている。そして、そのジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とからポリイミド前駆体であるポリアミック酸を合成し、そのポリアミック酸からポリイミドを形成して、光配向性の垂直配向型の液晶配向膜を得ている。
【0011】
ポリイミドは、高耐熱性の高分子材料であって、高信頼性であり、液晶配向膜の用途に好適な材料である。しかしながら、ポリイミド及びその前駆体であるポリアミック酸等は、通常、溶媒への溶解性が低いという課題を有している。さらに、VA方式の液晶表示素子用の液晶配向剤に使用されるポリイミドは、その側鎖に脂環構造、アルキル基、フッ素原子等を有していることが多いため、疎水性が高く、基板への塗布時に、ハジキや膜厚ムラなどが発生しやすいといった課題を有していた(特許文献3を参照)。
したがって、上記特許文献1に記載されたジアミン化合物から形成されたポリアミック酸及びポリイミドについても、同様に、溶剤への溶解性の改善や、基板への塗布性の改善が求められる。
【0012】
また、上記特許文献1に記載されたジアミン化合物は、分子内のケイ皮酸エステル構造に基づく光反応性を有している。そのため、例えば、液晶配向膜の形成工程において、途中、遮光が必要とされる等、ジアミン化合物の取扱いに注意が必要となる。すなわち、特許文献1等に記載された光反応性基を有するジアミン化合物からポリイミド前駆体及びポリイミドを得るに際しては、望まない光反応が進行しないように対策をする必要がある。同様に、得られたポリイミド前駆体又はポリイミドを用いて液晶配向膜を形成するに際しては、望まない光反応を抑える必要がある。したがって、特許文献1等に記載されたケイ皮酸エステル構造等、分子内に光反応性に富んだ構造を有するジアミン化合物並びにそれを用いて得られたポリイミド前駆体及びポリイミドは、その使用時において、光等に対する注意が必要とされ、液晶配向膜の形成工程を複雑なものとしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】日本特表2009−520702号公報
【特許文献2】日本特開2011−100099号公報
【特許文献3】国際公開第2010/079637号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
電子デバイスの分野においては、高い耐久性のポリイミドを主要な構成部材として多用するが、元々の特徴に加え、具体的用途に適合するように分子構造の改善がなされ、特性の改善がなされている。例えば、上述したように、電子デバイスである液晶表示素子では、液晶配向膜として好適な特性を備えるようにポリイミドの分子構造の設計と制御がなされ、液晶配向膜に使用されている。
【0015】
ポリイミドにおける所望の分子構造の制御は、ポリイミドの形成に用いられるジアミン化合物等において、その分子構造を制御することにより実現される。例えば、ポリイミドの膜が液晶配向膜に求められる性能を発揮するためには、ジアミン化合物等における分子構造の制御がなされ、そのジアミン化合物を用いてポリイミド前駆体及びポリイミド等の重合体を合成する。このことにより、所望の分子構造のポリイミドからなる硬化膜を形成し、所望の特性を有する液晶配向膜の形成を実現する。
【0016】
すなわち、ポリイミド前駆体やポリイミド等の重合体の形成に用いられるジアミン化合物等の分子構造は、ポリイミドにおける所望の特性の実現に重要な役割を果たし、非常に重要なものとなる。
しかし、ポリイミドの形成に用いられるジアミン化合物の段階で、所望の特性を実現するための特徴的な分子構造を分子内に導入した場合、ポリイミドを製造する工程において問題が生ずる場合がある。
例えば、ポリイミドからなる液晶配向膜の形成は、上述したように、ジアミン化合物から形成されたポリアミック酸等の重合体を含む樹脂組成物(液晶配向剤と同義であり、以下、液晶配向剤ともいう。)が調製され、その樹脂組成物が液晶配向膜の形成に用いられる。このとき、特徴的な分子構造を有するジアミン化合物が、その重合体や樹脂組成物の特性に影響し、ポリイミドからなる液晶配向膜の形成に対して影響を与えることがある。
【0017】
例えば、特許文献1に開示されているジアミン化合物は、液晶配向膜の光配向性を実現するために、ケイ皮酸エステル構造に基づく光反応性を有している。そのため、液晶配向膜の形成工程において、途中、遮光が必要とされる等、ジアミン化合物の取り扱いに注意が必要となる。すなわち、特許文献1等に開示されている光反応性基を有するジアミン化合物から、ポリイミド前駆体及びポリイミド等の重合体を得ようとする場合には、望まない光反応が進行しないように遮光等の対策をする必要がある。また、得られた重合体を用いて樹脂組成物を調製する場合においても、望まない光反応を抑える必要がある。さらに、樹脂組成物を用いて硬化膜を形成する場合においても、望まない光反応を抑える必要がある。
【0018】
特許文献1等で開示されているケイ皮酸エステル構造等の、分子内に光反応性に富んだ構造を有するジアミン化合物、並びにそれを用いて得られたポリイミド前駆体及びポリイミドは、その取り扱いに注意が必要とされ、硬化膜の形成工程を複雑なものとしていた。
さらに、特許文献1及び2に開示されているジアミン化合物を用いて形成されるポリイミド前駆体やポリイミドは、溶媒に対する溶解性が十分ではなく、ジアミン化合物の分子構造の改善が十分でなかった。その結果、それらを用いて樹脂組成物を調製した場合、その塗布性に課題を残していた。
【0019】
また、光配向性を有する液晶配向膜の形成においては、遮光等の対応が不要で、取り扱いが容易であり、ポリイミド前駆体及びポリイミド等の重合体の合成に用いることができるジアミン化合物が強く求められる。さらに、形成されたポリイミド前駆体及びポリイミドにおいては、遮光等の対応が不要であり、取り扱いが容易で、溶媒への溶解性に優れ、ポリイミド膜形成のための、塗布性に優れた樹脂組成物を調製できることが求められる。
また、調製された樹脂組成物を用いて形成される液晶配向膜は、光配向処理によって、液晶分子が一定方向にわずかに傾く状態の垂直配向性と、光配向性を実現することが可能であることが求められる。
【0020】
すなわち、本発明の目的は、取扱いが容易で、塗布性に優れ、垂直配向型の光配向性の液晶配向膜の形成することができる液晶配向剤、該液晶配向剤を調製するために用いられるポリイミド前駆体及びポリイミドの作製に供するジアミン化合物、垂直配向型の光配向性を有する液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、以下の要旨を有するものである。
(1)β−ヒドロキシエステル構造を有するポリイミド前駆体及びβ−ヒドロキシエステル構造を有するポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1つの重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。
(2)前記β−ヒドロキシエステル構造を有するポリイミド前駆体及び前記β−ヒドロキシエステル構造を有するポリイミドが、β−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物から得られる上記(1)に記載の液晶配向剤。
(3)前記ジアミン化合物が、下記式(HE−1)で表される構造を有する上記(2)に記載の液晶配向剤。
【化1】

(式(HE−1)中、Xは、原子数5若しくは6の単環式環、原子数5若しくは6の2つの隣接する単環式環、原子数8〜10の二環式の環系、及び原子数13若しくは14の三環式の環系からなる群より選択される、非置換若しくは置換の、炭素環式又は複素環式の芳香族基を表す。)
【0022】
(4)前記ジアミン化合物が、下記式(HE−2)で表される構造を有する上記(2)又は(3)に記載の液晶配向剤。
【化2】

(式(HE−2)中、Xは、原子数5若しくは6の単環式環、原子数5若しくは6の2つの隣接する単環式環、原子数8〜10の二環式の環系、及び原子数13若しくは14の三環式の環系からなる群より選択される、非置換若しくは置換の、炭素環式又は複素環式の芳香族基を表す。Xは、単結合又は、エーテル、エステル、アミド、及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の結合基を表す。Xは、炭素数3〜20の直鎖状アルキル基又は炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基を表す。ただし、このアルキル基の水素原子は、フッ素原子に置き換わっていてもよい。)
【0023】
(5)前記ジアミン化合物が、下記式(DA)で表される化合物である上記(2)〜(4)のいずれかに記載の液晶配向剤。
【化3】

(式(DA)中、Xは、原子数5若しくは6の単環式環、原子数5若しくは6の2つの隣接する単環式環、原子数8〜10の二環式の環系、及び原子数13若しくは14の三環式の環系からなる群より選択される、非置換若しくは置換の、炭素環式又は複素環式の芳香族基を表す。Xは、単結合又は、エーテル、エステル、アミド、及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の結合基を表す。Xは、炭素数3〜20の直鎖状アルキル基又は炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基を表す。ただし、このアルキル基の水素原子は、フッ素原子に置き換わっていてもよい。Xは単結合、メチレン基又は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。ただし、このアルキレン基は、水酸基によって置換されていてもよい。Xは、単結合、酸素原子、*−OCO−又は*−OCH−(ただし、「*」を付した結合手がXと結合する。)を表す。ただし、Xが単結合であるときXは単結合である。)
【0024】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
(7)上記(6)に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
(8)下記式(HE−1)で表される構造を有することを特徴とするジアミン化合物。
【化4】

(式(HE−1)中、Xは、原子数5若しくは6の単環式環、原子数5若しくは6の2つの隣接する単環式環、原子数8〜10の二環式の環系、及び原子数13若しくは14の三環式の環系からなる群より選択される、非置換若しくは置換の、炭素環式又は複素環式の芳香族基を表す。)
【0025】
(9)下記式(HE−3)で表される構造を有する上記(8)に記載のジアミン化合物。
【化5】
(式(HE−3)中、Xは、原子数5若しくは6の単環式環、原子数5若しくは6の2つの隣接する単環式環、原子数8〜10の二環式の環系、及び原子数13若しくは14の三環式の環系からなる群より選択される、非置換若しくは置換の、炭素環式又は複素環式の芳香族基を表す。Xは、単結合又は、エーテル、エステル、アミド、及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の結合基を表す。Xは、単結合又は炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基を表す。Xは、単結合又は炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基を表す。Xは、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基を表す。)
【0026】
(10)下記式(DIA)で表される上記(8)又は(9)に記載のジアミン化合物。
【化6】

(式(DIA)中、Xは、原子数5若しくは6の単環式環、原子数5若しくは6の2つの隣接する単環式環、原子数8〜10の二環式の環系、及び原子数13若しくは14の三環式の環系からなる群より選択される、非置換若しくは置換の、炭素環式又は複素環式の芳香族基を表す。Xは、単結合又は、エーテル、エステル、アミド、及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の結合基を表す。Xは、単結合又は炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基を表す。Xは、単結合又は炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基を表す。Xは、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基を表す。Xは、単結合、メチレン基又は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。ただし、このアルキレン基は水酸基によって置換されていてもよい。X10は、単結合、酸素原子、*−OCO−、*−OCH−、*−COO−、*−NHCO−、又は*−CONH−(ただし、「*」を付した結合手がXと結合する。)を表す。ただし、Xが単結合であるときX10は単結合である。)
【0027】
(11)上記(8)〜(10)のいずれかに記載のジアミン化合物を用いて得られる、分子内にβ−ヒドロキシエステル構造を有する重合体。
(12)上記(11)に記載の重合体を含有する液晶配向剤。
(13)上記(12)に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
(14)下記式(DIA)で表されるジアミン化合物の製造方法であって、
下記式(C−1)で表される化合物とメルドラム酸との反応により、下記式(C−2)で表される化合物を得る工程と、
式(C−2)で表される化合物と下記式(C−3)との反応により、下記式(C−4)で表される化合物を得る工程と、
式(C−4)で表される化合物のニトロ基を還元し、β−ケトエステル構造のケトン構造部分を還元する工程と
を含むことを特徴とするジアミン化合物の製造方法。
【0028】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0029】
【化11】
(式(DIA)、(C−1)、(C−2)、(C−3)及び(C−4)中、Xは、原子数5若しくは6の単環式環、原子数5若しくは6の2つの隣接する単環式環、原子数8〜10の二環式の環系、及び原子数13若しくは14の三環式の環系からなる群より選択される、非置換若しくは置換の、炭素環式又は複素環式の芳香族基を表す。Xは、単結合又は、エーテル、エステル、アミド、及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の結合基を表す。Xは、単結合又は炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基を表す。Xは、単結合又は炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基を表す。Xは、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基を表す。Xは、単結合、メチレン基又は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。ただし、このアルキレン基は水酸基によって置換されていてもよい。X10は、単結合、酸素原子、*−OCO−、*−OCH−、*−COO−、*−NHCO−、又は*−CONH−(ただし、「*」を付した結合手がX9と結合する。)を表す。ただし、Xが単結合であるときX10は単結合である。)
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、取り扱いが容易であって、溶解性に優れたポリイミド前駆体及びポリイミド等の重合体を形成できるジアミン化合物を提供することができる。
さらに、本発明によれば、取り扱いが容易であって、塗布性に優れ、垂直配向型の光配向性の液晶配向膜の形成することができる液晶配向剤、該液晶配向剤から形成され、垂直配向型の光配向性の液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子を提供することが可能となり、高精細な画像を表示する表示素子として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】焼成前後の紫外吸収スペクトルの測定結果を示す図である。
図2】比較例の硬化膜の紫外吸収スペクトルの測定結果を示す図である。
図3】直線偏光照射後の紫外吸収スペクトルの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、以下の知見を得て本発明を完成するに至った。
表示デバイスである液晶表示素子においては、上述したように、液晶分子を配向させるための液晶配向膜に、高耐熱性で高強度のポリイミド膜が多く用いられている。
【0033】
さらに、液晶表示素子を構成する基板上に液晶配向膜となるポリイミド膜を形成する場合、次のような液晶配向剤を使用する方法が好適に用いられている。
その方法としては、ポリアミック酸等のポリイミド前駆体を含有する液晶配向剤を調製する。次いで、得られた液晶配向剤を使用してその塗膜を形成し、基板上でイミド化させてポリイミド膜を得る方法が知られている。また、別の方法としては、予め、イミド化させてあるポリイミドを溶媒に溶解して、溶媒可溶型の液晶配向剤を調製し、該液晶配向剤を使用して塗膜を形成して、ポリイミド膜を得る方法がある。
【0034】
VA方式の液晶表示素子についても、液晶配向膜となるポリイミド膜を形成する方法は同様である。
VA方式の液晶表示素子は、液晶分子が基板の法線方向から基板面内の一方向に向かって、わずかに傾くようにする垂直配向型の液晶配向膜が必要となる。そうした液晶配向膜を得るには、ポリイミド前駆体やポリイミドを含有した液晶配向剤を使用して、液晶分子を基板の法線方向に配向させるポリイミド膜を得る。次いで、このポリイミド膜に配向処理を施し、液晶分子が基板の法線方向から基板面内の一方向に向かって、わずかに傾くようにすることにより、所望の垂直配向型の液晶配向膜を形成している。
【0035】
配向処理については、布を用いてポリイミド膜の表面を、一定方向に擦るラビング処理が知られている。しかし、ラビング処理は、ポリイミド膜を擦ることにより塵を発生させるほか、液晶配向膜表面に傷を残して、液晶分子の配向ムラを発生させる懸念があり、多様な課題を有している。
そのため、VA方式の液晶表示素子の製造においては、ラビング処理を必要としない、液晶配向膜の光配向技術が用いられるようになってきている。すなわち、垂直配向型の光配向性の液晶配向膜の開発が進められている。
【0036】
垂直配向型の光配向性の液晶配向膜は、液晶分子の垂直配向を実現するための構造と、光配向性を実現するための構造とを内部に有している。例えば、液晶配向剤がポリイミド膜からなる場合は、ポリイミド膜を形成するためのジアミン化合物やテトラカルボン酸誘導体に、そうした垂直配向性や光配向性を実現するための、特定構造を含有するものを使用することが好ましい。この場合、形成されたポリイミドは、垂直配向性と光配向性を有する液晶配向膜を実現することができる。
【0037】
上記特許文献1及び2では、光二量化性を有するケイ皮酸エステル構造と、直鎖状の疎水性側鎖構造とを分子内に有するジアミン化合物を用いて、ポリイミド膜を形成する。次いで、ポリイミド膜に光配向処理を施して、垂直配向型の光配向性の液晶配向膜を実現している。
【0038】
しかしながら、特許文献1及び2に開示される技術では、ポリイミドを形成するためのジアミン化合物が、ケイ皮酸エステル構造を分子内に有しており、光反応性に富む構造となっている。そのため、その取り扱いには、遮光等の注意が必須となる。すなわち、ポリイミド前駆体の形成工程やポリイミドの形成工程においては、望まれない光反応を抑制するための注意や対策が必要となる。
【0039】
また、上述したように、特許文献1及び2に開示されているようなポリイミド前駆体やポリイミドの構造においては、溶媒に対する溶解性や基板への塗布性を改善するための分子構造上の改善が十分ではない。したがって、それらを用いて液晶配向剤を調製した場合、得られた液晶配向剤の塗布性には課題が残る。
【0040】
本発明のジアミン化合物は、特徴ある分子構造を有する新規化合物であり、ポリイミド前駆体およりポリイミド等の重合体の合成に好適に用いることができる。
本発明のジアミン化合物は、それ自体では光反応性を有しないが、それを用いて形成された重合体から得られる硬化膜は、光反応性を備えることができる。すなわち、光配向処理に適した構造を有するポリイミドからなる液晶配向膜の提供に好適に用いることができる。特に、VA方式の液晶表示素子の形成に好適な、垂直配向型の光配向性の液晶配向膜の提供に用いることができる。
【0041】
本発明のジアミン化合物は、分子内にβ−ヒドロキシエステル構造を有する。また、該ジアミン化合物を用いて形成された液晶配向膜は、液晶分子の垂直配向を実現するのに好適な構造を有することになる。
分子内のβ−ヒドロキシエステル構造は、加熱によって脱水反応し、光反応性の二重結合を形成する。
本発明のβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物は、テトラカルボン酸誘導体と反応して、ポリイミド前駆体及びポリイミド等の重合体を提供することができる。得られた重合体を含有する液晶配向剤を用いて形成された塗膜は、形成された後の加熱によって、分子構造内に光反応性の二重結合を生成することができる。
【0042】
例えば、β−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物から、ポリイミド前駆体を合成し、得られたポリイミド前駆体を含有する液晶配向剤を調製することができる。その場合、液晶配向剤の塗膜を加熱してポリイミド前駆体成分のイミド化反応を行うと同時に、β−ヒドロキシエステル構造の部分で脱水反応を起こして、分子内に光反応性の二重結合を導入することができる。
【0043】
また、液晶配向剤の塗膜を局所的に加熱することで、光反応性を有する硬化膜部分と、光反応性を有しないポリイミド前駆体を有する部分が混在した硬化膜を調製することもできる。
すなわち、同一膜上で光反応性基を有する部分と、光反応性を有しない部分を作り分けることが可能となる。これにより従来行われていた、樹脂表面をマスク等で覆って光照射を行い、ネガ型のパターン形成を行う工程を、マスク無しに加熱工程のみで作り分けることが可能となる。
【0044】
さらに、β−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物から、ポリイミドを合成し、得られたポリイミドを含有する液晶配向剤を調製することができる。その場合、液晶配向剤の塗膜を加熱してポリイミド膜を形成すると同時に、β−ヒドロキシエステル構造部で脱水反応を起こし、分子内に光反応性の二重結合を導入することができる。
【0045】
上記のような分子内への二重結合の導入により、本発明にかかるポリイミド前駆体及びポリイミド等の重合体は、ポリイミドからなる硬化膜を形成するとともに、その分子内に、例えば、ケイ皮酸エステル構造等の光反応性部位を導入することができる。その結果、重合体から形成された硬化膜は光反応性を発現することができる。すなわち、これらの硬化膜を用いて形成されている液晶配向膜においては、光配向性を実現することができる。
併せて、本発明にかかるジアミン化合物は、液晶配向膜を形成した場合、液晶分子を基板の法線方向に配向するのに好適な分子構造も有している。本発明のβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物から合成されて得られた、ポリイミド前駆体及びポリイミドのうちの少なくとも一方の重合体から形成された硬化膜は、垂直配向型の光反応性の液晶配向膜として用いることができる。
【0046】
本発明のβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物は、分子内に光反応性の構造を有しておらず、光に対して安定である。したがって、その取扱いについては、注意や対策等が必要とされない。
【0047】
本発明のβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物は、β−ヒドロキシエステル構造を有するポリイミド前駆体及びポリイミド等の重合体を合成することができる。得られた重合体は、分子内に光反応性の構造を有しておらず、二重結合を導入する前においては、光反応性を有していない。したがって、本発明の重合体は、光に対して安定であり、その取扱いについては、従来のような、注意や対策等が必要とされない。光反応性の二重結合は、重合体を用いた硬化膜が形成された後、構造内に導入することができる。
【0048】
また、本発明のポリイミド前駆体及びポリイミド等の重合体は、分子内にβ−ヒドロキシエステル構造を有し、該構造に由来のヒドロキシ基を分子内に有することにより、溶剤に対する高い溶解性を備える。したがって、本発明の液晶配向剤は、含有するポリイミド前駆体及びポリイミド等の重合体が高い溶解性を有し、優れた塗布性を有している。 そのため、塗布性を向上させるために含有されるブチルセロソルブ等の貧溶媒の量を多くすることが可能である。また、重合体自体も側鎖部位にヒドロキシ基を有しているため、親水性が高く、基板への塗布性も優れている。
【0049】
本発明のジアミン化合物は、分子内にβ−ヒドロキシエステル構造と直鎖状の疎水性側鎖構造を有する。
本発明のジアミン化合物は、テトラカルボン酸誘導体と反応して、ポリイミド前駆体、ポリイミド等の重合体を提供することができる。
本発明の重合体は、溶剤等に溶解されて液晶配向剤を構成し、塗膜を形成した後、硬化膜を形成することができる。
本発明の硬化膜は、ジアミン化合物の有するβ−ヒドロキシエステル構造に由来して、分子内に光反応性の二重結合を有し、併せて、直鎖状の疎水性側鎖構造を有する。したがって、本発明の硬化膜は、液晶配向膜を形成することが可能であって、液晶配向膜における光配向処理に好適であり、垂直配向型の光配向性の液晶配向膜を提供することができる。
【0050】
本発明者らは、垂直配向型の光配向性の液晶配向膜に用いる、新規構造を有する、ポリイミド及びポリイミド前駆体を開発した。
本発明のポリイミド及びポリイミド前駆体は、それぞれ、分子内にβ−ヒドロキシエステル構造を有し、併せて、液晶分子の垂直配向を実現するための構造を有する。
本発明の新規構造を有する、垂直配向型の光配向性の液晶配向膜に用いる、ポリイミド及びポリイミド前駆体の形成には、多様な方法が可能である。特に、新規構造のジアミン化合物を用いる方法が好適であることを見出した。
本発明のジアミン化合物は、分子内にβ−ヒドロキシエステル構造を有し、併せて、液晶分子の垂直配向を実現するための構造を有する。
【0051】
本発明のポリイミド前駆体及びそれをイミド化して得られるポリイミドは、分子内にβ−ヒドロキシエステル構造を有する。
分子内にβ−ヒドロキシエステル構造を有するポリイミド前駆体を得る方法としては、分子内にβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物を用いる方法により実現できる。また、分子内にβ−ヒドロキシエステル構造を有するテトラカルボン酸誘導体を用いる方法により実現できる。
さらに、ジアミン化合物とテトラカルボン酸誘導体とを重合反応させてポリイミド前駆体を得るに際し、分子内にβ−ヒドロキシエステル構造を有する化合物を添加剤として併用し、形成されるポリイミド前駆体にβ−ヒドロキシエステル構造を導入する方法がある。
【0052】
上記のようなβ−ヒドロキシエステル構造の導入のための方法の中で、確実性の観点からは、特に、分子内にβ−ヒドロキシエステル構造を有する本発明のジアミン化合物を用いる方法が好ましい。
以下、分子内にβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物を用いる本発明について詳しく説明する。
なお、本発明においては、ポリイミド前駆体としては、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル等が含まれる。
【0053】
<β−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物>
本発明のジアミン化合物は、β−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物である。β−ヒドロキシエステル構造は、下記式(HE)で表すことができる。
【化12】
本発明のジアミン化合物は、下記式(HE−1)の構造を有することが好ましい。下記式(HE−1)の構造を有することにより、該ジアミン化合物を用いて形成されたポリイミド前駆体及びポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドにおいては、加熱した場合に、分子内に優れた光反応性を有する二重結合を形成することができる。二重結合が形成されたポリイミド前駆体及びポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドは、液晶配向膜の形成に用いられた場合、優れた光配向性能を発現することができる。
【0054】
【化13】
上記式(HE−1)中、Xは、原子数5若しくは6の単環式環、原子数5若しくは6の2つの隣接する単環式環、原子数8〜10の二環式の環系、及び原子数13若しくは14の三環式の環系からなる群より選択される、非置換若しくは置換の、炭素環式又は複素環式の芳香族基を表す。
【0055】
上記式(HE−1)の構造において、特に好ましい構造は、下記式(HE−1−1)で表される構造である。下記式(HE−1−1)で表される構造を有するジアミン化合物を用いて形成されたポリイミド前駆体及びポリイミドにおいては、加熱がなされた場合に、分子内に光反応性を有する二重結合を形成することができる。二重結合の形成されたポリイミド前駆体及びポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドは、液晶配向膜の形成に用いられた場合、特に優れた光配向性能を発現することができる。
【化14】
【0056】
本発明のジアミン化合物としては、β−ヒドロキシエステル構造を有し、併せて、液晶分子の垂直配向を実現するための構造を有する、下記式(HE−2)の構造を有することが好ましい。
【化15】
上記式(HE−2)中、Xは、上記式(HE−1)と同義である。
【0057】
上記式(HE−2)中、Xは、単結合又は、エーテル、エステル、アミド、及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の結合基を表す。
としては、単結合、エーテル基、エステル基又はアミド基が好ましく、単結合、エーテル基又はエステル基がより好ましい。
は、炭素数3〜20の直鎖状アルキル基又は炭素数4〜40の脂環式骨格を有する1価の有機基を表す。ただし、このアルキル基の水素原子は、フッ素原子に置き換わっていてもよい。
としては、例えば、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、スピロ[5.5]ウンデシル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、シクロへキシル−n−ヘプチル基、ビシクロヘキシル−n−ペンチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、シクロヘキシルフェニル基、n−ペンチル−シクロヘキシルフェニル基、n−ヘプチル−シクロヘキシルフェニル基、シクロヘキシロキシフェニル基、又はn−ペンチル−シクロヘキシロキシフェニル基が好ましく、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、シクロヘキシル基、シクロへキシル−n−ヘプチル基、ビシクロヘキシル−n−ペンチル基、シクロヘキシロキシフェニル基、又はn−ペンチル−シクロヘキシロキシフェニル基がより好ましい。
としての炭素数3〜20の直鎖状アルキル基は、本発明における疎水性側鎖構造としての機能を有する。
【0058】
本発明のジアミン化合物の好ましい例としては、下記式(DA)で表される化合物等を挙げることができる。
【化16】

上記式(DA)中、Xは、上記式(HE−1)における定義と同義であり、好ましい例についても同様である。
【0059】
は、上記式(HE−2)における定義と同義であり、好ましい例についても同様である。
は、上記式(HE−2)における定義と同義であり、好ましい例についても同様である。
【0060】
は単結合、メチレン基又は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。ただし、このアルキレン基は水酸基によって置換されていてもよい。
としては、単結合、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、が好ましく、単結合、又はエチレン基がより好ましい。
は、単結合、酸素原子、*−OCO−又は*−OCH−(ただし、「*」を付した結合手がXと結合する。)を表す。ただし、Xが単結合であるとき、Xは単結合である。
としては、単結合、酸素原子、又は*−OCH−が好ましく、*−OCH−又は酸素原子がより好ましい。
【0061】
上記式(DA)で表されるジアミン化合物の好ましい例としては、下記式(DA−1)〜(DA−8)で表されるジアミン化合物を挙げることができる。
【化17】
【0062】
上記式(DA−1)〜(DA−8)中、Rは、水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数3〜20のアルキル基である。
としては、炭素数3〜16の直鎖状アルキル基、例えば、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、又はn−ヘキサデシル基、が好ましく、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、又はn−ドデシル基がより好ましい。
は炭素数1〜20のアルキル基、又は水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基である。
としては炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、又はn−ドデシル基が好ましく、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、又はn−ヘプチル基がより好ましい。
【0063】
また、本発明のジアミン化合物は、β−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物であり、併せて、液晶分子の垂直配向を実現するための構造を有する、下記式(HE−3)の構造を有することが好ましい。
【化18】
【0064】
式(HE−3)中、Xは、原子数5若しくは6の単環式環、原子数5若しくは6の2つの隣接する単環式環、原子数8〜10の二環式の環系、及び原子数13若しくは14の三環式の環系からなる群より選択される、非置換若しくは置換の、炭素環式又は複素環式の芳香族基を表す。
としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、アントラセン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ベンゾフラン環、インドール環、キノリン環、ベンズイミダゾール環、キノキサリン環、カルバゾール環、フルオレン環、又はキサンテン環が好ましく、ベンゼン環又は、ナフタレン環がより好ましい。
【0065】
は、単結合又は、エーテル、エステル、アミド、及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の結合基を表す。
としては、単結合、エーテル基、エステル基、又はアミド基が好ましく、単結合、エーテル基、又はエステル基がより好ましい。
は、単結合又は炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基を表す。
としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、スピロ[5.5]ウンデシル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、フェニル基、ナフチル基、又はアントラセニル基が好ましく、シクロへキシル基又はフェニル基がより好ましい。
【0066】
は、単結合又は炭素数4〜40の脂環式骨格を有する2価の有機基を表す。
としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、スピロ[5.5]ウンデシル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が好ましく、シクロへキシル基、又はフェニル基がより好ましい。
は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基を表す。
としては、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、又はn−ドデシル基、が好ましく、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、又はn−ヘプチル基がより好ましい。
としての炭素数1〜20の直鎖状アルキル基において、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基は、本発明における疎水性側鎖構造としての機能を有する。
【0067】
上記の構造を有する本発明のジアミン化合物としては、好ましくは、下記式(DIA)で表されるジアミン化合物を挙げることができる。
【化19】

式(DIA)中、Xは、上記式(HE−3)における定義と同義であり、好ましい例についても同様である。
【0068】
は、上記式(HE−3)における定義と同義であり、好ましい例についても同様である。
は、上記式(HE−3)における定義と同義であり、好ましい例についても同様である。
は、上記式(HE−3)における定義と同義であり、好ましい例についても同様である。
は、上記式(HE−3)における定義と同義であり、好ましい例についても同様である。
【0069】
は、単結合、メチレン基又は炭素数2〜6のアルキレン基を表す。ただし、このアルキレン基は水酸基によって置換されていてもよい。
としては、単結合、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、又はn−ブチレン基が好ましく、単結合又はエチレン基がより好ましい。
10は、単結合、酸素原子、*−OCO−、*−OCH−、*−COO−、*−NHCO−、又は*−CONH−(ただし、「*」を付した結合手がXと結合する。)を表す。ただし、Xが単結合であるときX10は単結合である。
10としては、単結合、酸素原子、*−OCO−、*−OCH−、又は*−COO−が好ましく、−OCH−又は酸素原子がより好ましい。
【0070】
式(DIA)で表されるジアミン化合物の例としては、下記式(DIA−1)〜(DIA−7)で表されるジアミン化合物を挙げることができる。
【化20】
【0071】
尚、本発明においては、β−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物以外にも、好ましいジアミン化合物として、例えば、下記式(HK−1)で表されるような、β−ヒドロキシケトン構造を有するジアミン化合物を例示することができる。このβ−ヒドロキシケトン構造を有するジアミン化合物は、本発明のポリイミド前駆体およりポリイミド等の重合体の合成に用いることができる。
このジアミン化合物自体は光反応性を有しないが、該ジアミン化合物を用いて合成された重合体から形成される硬化膜は、加熱等によって光反応性の二重結合構造を分子内に導入することができ、光反応性を有する。したがって、光配向処理に好適な構造の、ポリイミドからなる液晶配向膜の提供に好適に用いることができる。特に、VA方式の液晶表示素子の形成に好適な、垂直配向型の光配向性の液晶配向膜の提供に用いることができる。
【0072】
【化21】
式(HK−1)で表されるジアミン化合物の例としては、下記式(DIA−8)〜(DIA−11)で表されるジアミン化合物を挙げることができる。
【0073】
【化22】
【0074】
本発明のジアミン化合物におけるβ−ヒドロキシエステル構造の形成方法は、特に限定されない。例えば、Reformatsky反応により、対応するα−ハロエステル類から亜鉛エノラートを調製し、アルデヒドと反応させることで形成することができる。
また、α−ハロエステル類とアルデヒドを金属アルコキシド存在下で反応させ、エポキシド体を合成するDarzens縮合を行った後、加水分解によりβ-ヒドロキシエステルに誘導する方法等が挙げられる。
【0075】
また、別の方法としては、β−ヒドロキシエステルの前駆体となるβ−ケトエステルから、水素化ホウ素ナトリウムや、水素化シアノホウ素ナトリウム等を用いて、エステル存在下でケトン部分のみを選択的に還元しても、β-ヒドロキシエステルを合成することができる。また、ケトン部分をRu等の金属触媒下で還元することにより、目的のβ-ヒドロキシエステルを得る方法が知られている。
【0076】
β-ヒドロキシエステル類の前駆体となるβ-ケトエステル類の合成法としては、一方のエステルに酸性のα水素が無い場合において、交差Claisen縮合により目的とするβ−ケトエステル、又はβ−ヒドロキシエステルを合成する方法、ケトンエノラートにシアノギ酸アルキル(Mander反応剤)を反応させる方法、カルボニルジイミダゾールとカルボン酸から酸イミダゾリドを生成し、マロン酸モノアルキルマグネシウムと反応させる方法等が挙げられる。
【0077】
本発明においては、好ましいβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物の合成方法は、以下のとおりである。
まず、目的とする骨格を有するカルボン酸クロリドから、メルドラム酸を塩基触媒存在下で反応させ、メルドラム酸誘導体を合成する。次いで、そのメルドラム酸誘導体を、後にアミノ基に還元されるニトロ基を備えた、該当する構造のアルコールと反応させることで、目的とするβ−ケトエステル体を合成する。その後、分子内のニトロ基を水素添加によって還元し、水素化ホウ素ナトリウムでケトンを還元することにより、β-ヒドロキシエステル構造を形成し、新規構造を有するジアミン化合物を合成することができる。
【0078】
特に、上記のようなジアミン化合物を合成する場合においては、分子内に、後にアミノ基に還元されるニトロ基のような電子吸引基を有する芳香環と、さらにベンジル構造を有する場合がある。その場合、ベンジル位の酸性度が高くなり、強塩基存在下ではしばしば副反応が生じ、望んだ合成反応がうまく進行しないことがある。β−ヒドロキシエステルや、β−ケトエステルを合成する際に一般的に行われるClaisen縮合等は、強塩基触媒存在下で反応が行われることが多いため、α水素のプロトン引き抜きの際に、先に述べたようにベンジル位のプロトンが引き抜かれ、望まない副反応が生じたり、反応が進行しないことがある。
【0079】
本発明のβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物の合成方法においては、強塩基の使用を回避した製造法を選択するのが望まれる。例えば、原料としてジニトロベンジルアルコールを使用した場合でも、その副反応を抑えることで、目的とする化合物の合成を高効率で達成することができる。
上記式(DIA)で表されるジアミン化合物の製造方法の主要な工程は、以下の通りである。
【0080】
下記式(C−1)で表される化合物とメルドラム酸との反応により、下記式(C−2)で表される化合物を得る工程と、
式(C−2)で表される化合物と下記式(C−3)との反応により、下記式(C−4)で表される化合物を得る工程と、
式(C−4)で表される化合物のニトロ基を還元し、さらにβ−ケトエステル構造のケトン構造部分を還元する工程と
を含むものである。
【0081】
【化23】
【0082】
【化24】
【0083】
【化25】
【0084】
【化26】
【0085】
式(DIA)、式(C−1)、式(C−2)、式(C−3)、及び式(C−4)中のX、X、X、X、X、X、及びX10は、上記式(HE−3)及び式(DIA)における定義と同義であり、好ましい例についても同様である。
ただし、Xが単結合であるときX10は単結合である。
【0086】
<その他のジアミン化合物>
テトラカルボン酸誘導体と反応させ、本発明の液晶配向剤の含有可能な成分であるポリイミド前駆体及びポリイミドを合成するためのジアミンとしては、上記式(DA)又は式(DIA)で表されるジアミン化合物を単独で用いてもよい。また、上記式(DA)又は式(DIA)で表される化合物と、下記式(AM)で表されるその他のジアミン化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0087】
【化27】
上記式(AM)中、Yは、2価の有機基であり、2種類以上が混在していてもよい。また、上記式(AM)中、RよびRは水素原子又は1価の有機基を表す。
より具体的には、上記式(AM)において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基である。
【0088】
置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘキシル基等が挙げられる。
置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルケニル基としては、上記のアルキル基に存在する1つ以上のCH−CH構造を、CH=CH構造に置き換えたものが挙げられる。より具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0089】
置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキニル基としては、前記のアルキル基に存在する1つ以上のCH−CH構造をC≡C構造に置き換えたものが挙げられる。より具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基等が挙げられる。
上記のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、全体として炭素数が1〜10であれば置換基を有していてもよく、さらには置換基によって環構造を形成してもよい。尚、置換基によって環構造を形成するとは、置換基同士又は置換基と母骨格の一部とが結合して環構造となることを意味する。
【0090】
置換基の例としては、ハロゲン基、水酸基、チオール基、ニトロ基、アリール基、オルガノオキシ基、オルガノチオ基、オルガノシリル基、アシル基、エステル基、チオエステル基、リン酸エステル基、アミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を挙げることができる。
【0091】
置換基であるハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
置換基であるアリール基としては、フェニル基が挙げられる。このアリール基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0092】
置換基であるオルガノオキシ基としては、O−Rで表される構造を示すことができる。Rは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。オルガノオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。
【0093】
置換基であるオルガノチオ基としては、−S−Rで表される構造を示すことができる。Rとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等を例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。オルガノチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等が挙げられる。
【0094】
置換基であるオルガノシリル基としては、−Si−(R)で表される構造を示すことができる。Rは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等を例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。オルガノシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0095】
置換基であるアシル基としては、−C(O)−Rで表される構造を示すことができる。Rとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アリール基等を例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。アシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0096】
置換基であるエステル基としては、−C(O)O−R、又はOC(O)−Rで表される構造を示すことができる。Rとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等を例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるチオエステル基としては、−C(S)O−R、又はOC(S)−Rで表される構造を示すことができる。Rとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0097】
置換基であるリン酸エステル基としては、−OP(O)−(OR)で表される構造を示すことができる。Rは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等を例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるアミド基としては、−C(O)NH、又は、−C(O)NHR、−NHC(O)R、−C(O)N(R)、−NRC(O)Rで表される構造を示すことができる。Rは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには、前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0098】
置換基であるアリール基としては、前述したアリール基と同じものを挙げることができる。アリール基には、前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるアルキル基としては、前述したアルキル基と同じものを挙げることができる。アルキル基には、前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるアルケニル基としては、前述したアルケニル基と同じものを挙げることができる。アルケニル基には、前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
置換基であるアルキニル基としては、前述したアルキニル基と同じものを挙げることができる。アルキニル基には、前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0099】
一般に、嵩高い構造を導入すると、アミノ基の反応性や液晶配向性を低下させる可能性があるため、R及びRとしては、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0100】
上記式(AM)において、Yの具体的な構造の例を示すならば、以下に示すY−1〜Y−106が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化28】
【0101】
【化29】
【0102】
【化30】
【0103】
【化31】
【0104】
【化32】
【0105】
【化33】
【0106】
【化34】
【0107】
【化35】
【0108】
【化36】
【0109】
【化37】
【0110】
【化38】
【0111】
【化39】
【0112】
【化40】
【0113】
【化41】
【0114】
<テトラカルボン酸誘導体>
上述したジアミン化合物との反応に用いられ、本発明の液晶配向剤に含有可能なポリイミド前駆体又はポリイミドを合成するテトラカルボン酸誘導体は、特に限定されない。
テトラカルボン酸誘導体としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物(下記式(CB1)で表わされる。)、テトラカルボン酸一無水物(下記式(CB2)で表わされる。)、テトラカルボン酸(下記式(CB3)で表わされる。)、ジカルボン酸ジアルキルエステル(下記式(CB4)で表わされる。)、ジカルボン酸クロライドジアルキルエステル(下記式(CB5)で表わされる。)等を挙げることができる。テトラカルボン酸誘導体としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
【化42】
【0116】
上記式(CB4)及び(CB5)中、Rは炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜2のアルキル基を表す。
上記式(CB1)〜(CB5)中、Zの具体例としては、以下の式(Z−1)〜式(Z−46)を挙げることができる。
【0117】
【化43】
【0118】
【化44】
【0119】
【化45】
【0120】
【化46】
【0121】
<ポリイミド前駆体>
本発明の液晶配向剤に含有するポリイミド前駆体は、β−ヒドロキシエステル構造を有する上記式(DA)、上記式(DIA)等のジアミン化合物を必須の成分として含むジアミン成分を用いて合成されたものである。
ポリイミド前駆体としては、例えば、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルであり、下記式(PA)で表される構造単位を有する。
【0122】
【化47】
【0123】
上記式(PA)において、Zは、上述したテトラカルボン酸誘導体の例である、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸一無水物、テトラカルボン酸、ジカルボン酸ジアルキルエステル、及びジカルボン酸クロライドジアルキルエステルの中のZ基に由来する基である。
また、Rは、水素原子、又は上述したテトラカルボン酸誘導体若しくは後述するエステル化剤に由来する1価の有機基であり、好ましくは、炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜2のアルキル基を表す。
式(PA)中、Yは、上述したβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物の対応する基及び上記式(AM)で表されるその他のジアミン化合物のY基に由来する基である。A及びAは水素原子、又は、上記式(AM)で表されるその他のジアミン化合物のR基及びR基に由来する1価の有機基を表す。
【0124】
本発明のポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、例えば、上記式(DA)、上記式(DIA)等のジアミン化合物のβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物を必須の成分として含むジアミン成分(以下、単にジアミン成分と言う。)と、テトラカルボン酸誘導体であるテトラカルボン酸二無水物との反応により得られる。
本発明の液晶配向剤に含有されるポリアミック酸を得る、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応方法としては、公知の方法を利用することができる。その反応方法は、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを、有機溶媒中で反応させる方法である。ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応は、有機溶媒中で比較的容易に進行し、かつ副生成物が発生しない点で有利である。
【0125】
有機溶媒としては、生成したポリアミック酸が溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド等。
【0126】
上記有機溶媒は、単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリアミック酸を溶解させない溶媒であっても、生成したポリアミック酸が析出しない範囲で、上記有機溶媒に混合して使用してもよい。
また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリアミック酸を加水分解させる原因となるので、有機溶媒はなるべく脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0127】
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物とを有機溶媒中で反応させる際には、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸二無水物をそのまま、又は有機溶媒に分散あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸二無水物を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを交互に添加する方法等が挙げられ、これらのいずれの方法を用いても良い。また、ジアミン成分又はテトラカルボン酸二無水物が複数種の化合物からなる場合は、あらかじめ混合した状態で反応させても良く、個別に順次反応させても良く、さらに個別に反応させた低分子量体を混合反応させ高分子量体としても良い。
【0128】
反応(重合反応)温度は−20〜150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは−5〜100℃である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となる。したがって、反応濃度としては、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物の反応溶液中での合計濃度が、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0129】
反応(重合反応)においては、テトラカルボン酸二無水物の合計モル数と、ジアミン成分の合計モル数の比は0.8〜1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応と同様に、このモル比が1.0に近いほど、生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。
【0130】
<ポリアミック酸エステル>
本発明の液晶配向剤に含有可能なポリイミド前駆体としては、上述したように、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステル等である。ポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルは、例えば、上記式(DA)、上記式(DIA)等のジアミン化合物のβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物を必須の成分として含むジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体を用いて、以下に示す(1)〜(3)の方法で合成することができる。
【0131】
(1)ポリアミック酸から合成する方法
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物から得られるポリアミック酸をエステル化することによって合成することができる。
具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶剤の存在下で、−20〜150℃、好ましくは0〜50℃において、30分間〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0132】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジ−t−ブチルアセタール、1−メチル−3−p−トリルトリアゼン、1−エチル−3−p−トリルトリアゼン、1−プロピル−3−p−トリルトリアゼン、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。
エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2〜10モル当量が好ましく、2〜6モル当量がより好ましい。
【0133】
反応に用いる有機溶媒は、ポリマーの溶解性の観点からは、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
反応時のポリアミック酸の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0134】
(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミン成分との反応により合成する方法
テトラカルボン酸ジエステルジクロリドと、上述のジアミン成分との反応により合成することができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミン成分とを、塩基と有機溶剤の存在下で、−20〜150℃、好ましくは0〜50℃において、30分間〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。
塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2〜10モル倍であることが好ましく、2〜4モル倍がより好ましい。
【0135】
有機溶媒としては、モノマー及びポリマーの溶解性の観点からは、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
反応時のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒は、できるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0136】
(3)テトラカルボン酸ジエステルとジアミン成分との反応により合成する方法
テトラカルボン酸ジエステルと上述のジアミン成分とを重縮合することにより合成することができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルと上述のジアミン成分とを、縮合剤、塩基、及び有機溶剤の存在下で、0℃〜150℃、好ましくは0〜100℃において、30分間〜24時間、好ましくは3〜15時間反応させることによって合成することができる。
【0137】
縮合剤としては、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。
縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して、2〜10モル倍であることが好ましく、2〜3モル倍がより好ましい。
【0138】
塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン等の3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、ジアミン成分に対して2〜10モル倍が好ましく、2〜4モル倍がより好ましい。
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることにより、反応が効率的に進行する。
ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量は、ジアミン成分に対して0.1〜3.0モル倍が好ましく、0.1〜1.0モル倍がより好ましい。
【0139】
上述した3つのポリアミック酸エステルの合成方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(1)又は(2)の合成方法が特に好ましい。
上述した方法で得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。溶解、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄した後、常温又は加熱乾燥して、精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。
貧溶媒としては、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0140】
<ポリイミド>
本発明の液晶配向剤は、上述したポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有する。
ポリイミドとしては、上述したポリイミド前駆体としてのポリアミック酸を脱水閉環させて得られるポリイミドとすることができる。すなわち、上記式(DA)、上記式(DIA)等のジアミン化合物のβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物を必須の成分として含むジアミン成分を用いて合成されたポリイミド前駆体としてのポリアミック酸を脱水閉環させて得られる。得られたポリイミドは本発明の液晶配向膜を得るための重合体として有用であり、溶媒等に溶解されて液晶配向剤を構成し、その塗膜を硬化させることにより、ポリイミドからなる硬化膜を提供することができる。
尚、本発明の液晶配向剤が含有するポリイミドにおいては、アミド酸基の脱水閉環率(イミド化率)は、必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。
【0141】
<ポリイミドの製造方法>
ポリアミック酸をイミド化させる方法としては、ポリアミック酸の溶液を、そのまま加熱する熱イミド化、ポリアミド酸の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
イミド化に用いるポリアミック酸は、合成の時に使用されたβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物に由来するβ−ヒドロキシエステル構造を有している。そのため、ポリアミック酸をポリイミド化させる方法としては、該ポリアミック酸内部のβ−ヒドロキシエステル構造を維持できるように、比較的低温での反応が可能な、触媒イミド化が望ましい。
【0142】
ポリアミック酸の触媒イミド化は、ポリアミック酸の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、−20〜250℃、好ましくは0〜180℃で攪拌することにより行うことができる。
塩基性触媒の量は、アミド酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量は、アミド酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。
塩基性触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。
【0143】
酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができる。中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
以上、本発明の液晶配向剤に含有可能な成分について説明したが、次にそれら成分を用いて調製される本発明の液晶配向剤について説明をする。
【0144】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、液晶配向膜を形成するための塗布液であり、樹脂被膜を形成するための樹脂成分が有機溶媒に溶解した溶液である。ここで、樹脂成分は、上述したポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含む。
樹脂成分の含有量は、1〜20質量%が好ましく、より好ましくは3〜15質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。
本発明においては、樹脂成分としては、全てが上述した重合体であってもよく、それ以外の他の重合体が混合されていてもよい。その際、樹脂成分中における上述した重合体以外の他の重合体の含有量は、0.5〜15質量%、好ましくは1〜10質量%である。
【0145】
本発明の液晶配向剤に用いる有機溶媒は、上述した重合体等を含む樹脂成分を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等。
これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0146】
本発明の液晶配向剤は、上記以外の成分を含有してもよい。その例としては、液晶配向剤を塗布した際の膜厚均一性や表面平滑性を向上させる溶媒や化合物、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などである。
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒)の具体例としては、次のものが挙げられる。
【0147】
例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1−ヘキサノール、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等の低表面張力を有する溶媒等が挙げられる。
【0148】
これらの貧溶媒は1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。上記のような溶媒を用いる場合は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜60質量%である。
【0149】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤等が挙げられる。
より具体的には、例えば、エフトップ(登録商標)EF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製))、メガファック(登録商標)F171、F173、R−30(大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子社製)等が挙げられる。
これらの界面活性剤の使用割合は、液晶配向剤に含有される樹脂成分の100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0150】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、次に示す官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物等が挙げられる。
例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタン等。
【0151】
基板との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その使用量は、液晶配向処理剤に含有される樹脂成分の100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部である。使用量が0.1質量部未満であると、密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると、形成される液晶配向膜の液晶配向性が低下する場合がある。
【0152】
本発明の液晶配向剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的で、誘電体や導電物質、さらには、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物を添加してもよい。
次に、本発明の液晶配向膜及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子について説明する。
【0153】
<液晶配向膜及び液晶表示素子>
本発明の液晶配向剤は、上記式(DA)、上記式(DIA)等のジアミン化合物のβ−ヒドロキシエステル構造を有するジアミン化合物を必須の成分として含むジアミン成分を用いて合成された、ポリイミド前駆体及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有する。液晶配向剤は、好ましくは基板に塗布する前に濾過し、その後塗布され、プリベークによる乾燥の後、加熱焼成をすることにより、ポリイミド膜を形成することができる。
加熱焼成する際、本発明の液晶配向剤が含有するポリイミド前駆体及び/又はポリイミドは、分子内にβ−ヒドロキシエステル構造を有していることで、分子内に光反応性の二重結合を形成することができる。
【0154】
すなわち、本発明の液晶配向剤においては、液晶配向剤の塗膜を加熱焼成してポリイミド前駆体成分のイミド化反応を行うときに、同時にβ−ヒドロキシエステル構造部で脱水反応が行われ、形成されるポリイミド膜内に光反応性の二重結合を導入することができる。
また、ポリイミドを含む本発明の液晶配向剤においては、液晶配向剤を塗布、乾燥して得られた塗膜を加熱焼成してポリイミド膜を形成するときに、同時にβ−ヒドロキシエステル構造部で脱水反応が行われ、ポリイミド膜内に光反応性の二重結合を導入することができる。
【0155】
以上のように、本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤を塗布、乾燥して得られた塗膜の加熱焼成により、ポリイミド膜を形成するとともに二重結合を導入することができ、ポリイミド膜内に、例えば、ケイ皮酸エステル構造等の光反応性部位を導入することができる。その結果、ポリイミド前駆体及び/又はポリイミドを含有する本発明の液晶配向剤から形成されるポリイミド膜を用いた液晶配向膜においては、光配向性を実現することができる。
【0156】
本発明の液晶配向剤を基板に塗布する場合、使用する基板としては、透明性の高い基板を使用することができる。
基板としては、例えば、ガラス基板の他、アクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板を用いることができる。
液晶表示素子の製造において本発明の液晶配向剤を用いる場合は、液晶駆動のためのITO(Indium Tin Oxide)電極等が形成された基板を用い、液晶配向膜を形成することが好ましい。また、反射型の液晶表示素子を製造する場合は、片側の基板のみにならばシリコンウエハ等の不透明な基板も使用することでき、この場合の電極は、アルミニウム等の光を反射する材料を使用することもできる。
【0157】
液晶配向剤を基板上に塗布する塗布方法としては、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法等が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法等があり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
本発明の液晶配向剤は、上記の塗布法を用いた場合であっても塗布性は良好である。
【0158】
液晶配向剤を塗布した後のプリベークによる乾燥工程は、必ずしも必要とされないが、塗布後から加熱焼成までの時間が基板ごとに一定していない場合や、塗布後ただちに加熱焼成されない場合には、乾燥工程を含めることが好ましい。このプリベークによる乾燥は、基板の搬送等により塗膜形状が変形しない程度に溶媒が蒸発していればよい。また、液晶配向剤に含有されるポリイミド前駆体及び/又はポリイミドの有するβ−ヒドロキシエステル構造において、脱水反応が生じない温度の範囲で行われることが好ましい。
プリベークによる乾燥手段については特に限定されない。具体例を挙げるならば、50〜120℃、好ましくは80〜120℃のホットプレート上で、0.5〜30分間、好ましくは1〜5分間乾燥させる方法が好ましい。
【0159】
液晶配向剤を塗布した基板の焼成は、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、120〜350℃の温度で行うことができる。焼成温度は、ポリイミド膜の形成に好適な温度であって、液晶配向剤に含有されるポリイミド前駆体及び/又はポリイミドの有するβ−ヒドロキシエステル構造において、脱水反応が進行する温度が選択される。焼成温度は、好ましくは140〜300℃であり、さらに好ましくは180〜250℃である。ただし、液晶表示素子の製造工程で必要とされる、シール剤硬化などの熱処理温度より、10℃以上高い温度で焼成することが好ましい。
【0160】
焼成後に得られるポリイミド膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは10〜200nm、より好ましくは50〜100nmである。
【0161】
上記のようにして基板上に形成されたポリイミド膜に対し光配向処理がなされ、本発明の液晶配向膜が形成される。
光配向処理の方法は特に限定されないが、偏光した紫外線を用いることが、均一な液晶配向を得る上で好ましい。この場合、偏光した紫外線を照射する方法は特に限定されない。例えば、ポリイミド膜の形成された基板に対し、一定の方向から偏光板を介して偏光された紫外線を照射することが可能である。また、偏光した紫外線の入射角を変えて2回以上照射してもよい。また、実質的に偏光が得られるならば、無偏光の紫外線を基板の法線から一定角度傾けて照射してもよい。
【0162】
使用する紫外線の波長としては、一般には100〜400nm、好ましくは250〜370nmの範囲の紫外線を使用することができるが、特に好ましくは使用するポリイミドの種類により、フィルター等を介して最適な波長を選択することが好ましい。
また、紫外線の照射量は、一般に数mJ/cm〜数J/cm、好ましくは5mJ/cm〜500mJ/cmの範囲である。特に、工業的な生産性や、照射量の増大により、その後に製造される液晶表示素子の電圧保持率の低下を引き起こす可能性を考えると、良好な配向性が得られる必要量を、使用するポリイミドの種類により選択することが好ましい。
【0163】
本発明の液晶配向剤は、上記した方法により、基板上に垂直配向型の光配向性の液晶配向膜を形成することができる。形成された液晶配向膜は、光配向処理が可能であり、従来の配向処理法であるラビング処理において、液晶配向膜が削れることで発生する粉塵の問題や、液晶配向膜に付いた傷が液晶表示素子の表示品位を低下させるという問題を低減することができる。
本発明の液晶配向剤は、上記した方法により、基板上に液晶配向膜を形成した後は、該液晶配向膜付き基板を用い、公知の方法で液晶表示素子を製造することができる。
【0164】
液晶表示素子の製造の一例を以下に説明する。
本発明の液晶配向剤を用いて形成された、垂直配向型の液晶配向膜を配置した1対の基板を用意する。次いで、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜10μmのスペーサを挟んで、それぞれの基板に照射された偏光紫外線の光軸の投影方向が、例えば、逆平行となるように設置し、周囲をシール剤で固定する。次いで、基板間に液晶を注入して封止する。液晶封入の方法については特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後に液晶を注入する真空法、液晶を滴下した後に封止を行う滴下法等が例示できる。
【0165】
製造された液晶表示素子は、本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を有し、該液晶表示素子はVA方式液晶表示素子を構成することができる。
本発明の液晶表示素子は、液晶配向膜の傷等に起因する表示品位の低下が無く、優れた表示品位を備え、さらに、高い信頼性を有している。
【実施例】
【0166】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。尚、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
実施例及び比較例で使用する主な化合物の構造と略号は以下のとおりである。
尚、ジアミン化合物(DA−1−1)は、上述した式(DA−1)で表されるジアミン化合物の一例である。また、ジアミン化合物(DAM−1)は、ケイ皮酸エステル構造を分子内に有する従来のジアミン化合物である。
<構造式と略号>
【0167】
【化48】
【0168】
<テトラカルボン酸誘導体>
CBDA:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
<ジアミン化合物>
DA−1−1:3,5−ジアミノベンジル 3−(4−(デシロキシ)フェニル)−3−ヒドロキシプロパネート
DAM−1:(E)−3,5−ジアミノベンジル 3−(4−(デシロキシ)フェニル)アクリレート
DMAP:N,N’−ジメチル−4−アミノピリジン
<溶媒>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BC:ブチルセロソルブ
DMF:N,N’−ジメチルホルムアミド
【0169】
実施例1〜6においては、例示する反応式(1)〜(6)に従い、化合物[2]〜[7]の合成を行った。得られた化合物[7]は、ジアミン化合物(DA−1−1)の合成に用いた。
【0170】
<実施例1>
【化49】

4−ヒドロキシ安息香酸エチル[1](19.9g、0.120mol)と、1−ブロモデカン(22.1g、0.100mol)と、炭酸カリウム(27.6g、0.200mol)とジメチルホルムアミド120gを四つ口フラスコ中に添加し、窒素雰囲気下で攪拌し、80℃に昇温した。4時間攪拌した後、H−NMR(nuclear magnetic resonance:核磁気共鳴)法により、反応液中の1−ブロモデカンの消失を確認した。その後、溶媒を留去し、トルエンと2規定のNaOH水溶液にて水洗操作を実施し、水層を除去した。得られた有機層を、純水で2回水洗し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥後、硫酸マグネシウムをろ取し、得られた有機層を減圧下、溶媒を留去して、化合物[2]を得た(収量27.7g、0.090mol、収率90.3%)。
化合物[2]の構造は、H−NMR分析により以下のスペクトルデータを得て確認した。
H−NMR(溶媒;CDCl):δ7.98(d,2H,J=10.8Hz),6.89(d,2H,J=10.8Hz),4.34(q,2H,J=7.2Hz),3.99(t,2H,J=6.8Hz),1.82−1.75(m,2H),1.47−1.26(m,17H),0.89(t,3H,J=6.8Hz).
【0171】
<実施例2>
【化50】

化合物[2](10.8g、0.0354mol)と、水酸化カリウム(10.0g)と、エタノール118gと水20.0gを、四つ口フラスコ中に添加し、室温で3日間攪拌した。その後、さらに80℃に加温して1時間攪拌した。その溶液を冷却し、HPLC(High performance liquid chromatography:高速液体クロマトグラフィ)にて原料の消失を確認した。その後、12規定塩酸水溶液18mlを氷浴下で加えて、さらに攪拌した。次いで、水300gを加えて結晶を析出させた。結晶をろ取した後、結晶を乾燥させて化合物[3]を得た(収量9.05g、0.0325mol、収率91.8%)。
化合物[3]の構造は、H−NMR分析により以下のスペクトルデータを得て確認した。
H−NMR(溶媒;CDCl):δ8.05(d,2H,J=10.8Hz),6.93(d,2H,J=10.8Hz),4.03(t,2H,J=6.8Hz),1.84−1.77(m,2H),1.48−1.28(m,14H),0.89(t,3H,J=6.8Hz).
【0172】
<実施例3>
【化51】

化合物[3](52.2g、0.188mol)と、テトラヒドロフラン200mlとDMF(5.19g)を、四つ口フラスコ中に添加し、その溶液にオキザリルクロリド(39.5g、0.311mol)をゆっくり滴下した。4時間室温で攪拌した後、溶媒を留去し、化合物[4]の酸クロリド体の粗物を得た。また、予めメルドラム酸(21.6g、0.150mol)と、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(36.7g、0.300mol)と、ジクロロメタン250mlとを添加してある四つ口フラスコ中へ、化合物[4]の粗物を溶解しているジクロロメタン120mlを、シリンジを用いてゆっくり滴下し、氷浴下1時間攪拌した。その後、室温で15時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム300mlと2規定塩酸水溶液300mlを加えて溶液中の塩基を塩として水に溶解させて除去し、さらに純水で3回有機層を洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムをろ取した後、得られた有機層を減圧下、溶媒を留去し、化合物[5]の粗物を得た(収量72.7g、収率95.8%)。
化合物[5]の構造は、H−NMR分析により以下のスペクトルデータを得て確認した。
H−NMR(溶媒;CDCl):δ8.09−8.03(m,2H),6.98−6.91(m,2H),4.03(q,2H,J=6.8Hz),3.64(s,1H,),1.86−1.77(m,8H),1.48−1.24(m,14H),0.89(t,3H,J=6.8Hz).
【0173】
<実施例4>
【化52】
化合物[5](72.7g)と、3,5−ジニトロベンジルアルコール(29.7g、0.150mol)と脱水アセトニトリル450gを、四つ口フラスコ中に添加し、70℃で加熱攪拌した。攪拌を2時間行った後、HPLCで原料の消失と、ガス(二酸化炭素を含むガス)の発生が終了したことを確認し、その後溶媒を濃縮した。濃縮物にメタノール450mlを加えて結晶を析出させ、結晶をろ取した。得られた結晶をシリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製(溶出溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=4:1(容量比))し、目的の化合物[6]を得た(収量30.8g、0.0615mol,収率41.0%)。
化合物[6]の構造は、H−NMR分析により以下のスペクトルデータを得て確認した。
H−NMR(様ない;CDCl):δ8.99(s,1H),8.54(s,2H),7.89(d,2H,J=10.8Hz),6.92(d,2H,J=10.8Hz),5.39(s,2H),4.09(s,2H),4.02(t,2H,J=6.4Hz),1.85−1.78(m,2H),1.50−1.28(m,14H),0.88(t,3H,J=6.8Hz).
【0174】
<実施例5>
【化53】

化合物[6](29.9g、0.0597mol)と、白金カーボン粉末(3%)7.54gとテトラヒドロフラン260gを、四つ口フラスコ中に添加し、水素ガス雰囲気下、室温で21時間攪拌した。原料である化合物[6]の消失をHPLCで確認した後、H−NMRにより、主生成物が目的物であることを確認した。その後、反応液をろ過し、白金カーボン粉末を取り除いた。得られたろ液を濃縮し、メタノール300mlで1回のスラリー洗浄を行った。次いで、結晶をろ取し、乾燥させて化合物[7]を得た(収量14.1g、0.0320mol,収率53.6%)。
化合物[7]の構造は、H−NMR分析により以下のスペクトルデータを得て確認した。
H−NMR(溶媒;CDCl):δ7.90(d,2H,J=8.8Hz),6.92(d,2H,J=8.8Hz),6.04−5.96(m,2H),5.96(s,1H),5.00(s,2H),4.03−3.99(m,4H),3.57−3.49(broad,4H),1.82−1.77(m,2H),1.47−1.28(m,14H),0.88(t,3H,J=6.8Hz).
【0175】
<実施例6>
【化54】

化合物[7](11.6g、0.0263mol)と、テトラヒドロフラン50.0gとエタノール50.0gを、四つ口フラスコ中に添加し、0℃に冷却した。その後、NaBH(1.00g、0.0264mol)を加えて15分攪拌した後、さらに追加のNaBH(0.384g、0.0102mol)を少しずつ加えて40分攪拌を行った。原料である化合物[7]の減少が停止したのを、HPLCにより確認した後、テトラヒドロフラン18mlと飽和塩化アンモニウム水溶液をゆっくり加え、反応を停止(クエンチ)させた。反応液からの発熱が見られなくなったのを、反応液中にさしこんだ温度計により確認し、さらにテトラヒドロフラン400mlと飽和塩化アンモニウム水溶液を300ml加えて、有機層と水層の2層に分離させた。2層を分離後、有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥し、その後硫酸マグネシウムをろ取した。得られた有機層を減圧下、溶媒を留去した。得られた結晶のメタノール100gによるスラリー洗浄を1回実施し、結晶をろ取して、さらに乾燥させ、ジアミン化合物(DA−1−1)を得た(収量5.93g、0.0134mol,収率51.0%)。
ジアミン化合物(DA−1−1)の構造は、H−NMR分析により以下のスペクトルデータを得て確認した。
H−NMR(CDCl):δ7.27(d,2H,J=10.8Hz),6.87(d,2H,J=10.8Hz),6.04(s,2H),5.97(s,1H),5.11−5.08(m,1H),4.96(S,2H),3.94(t,2H,J=6.8Hz),3.56(broad,4H),3.15(broad,1H),2.85−2.70(m,2H),1.80−1.73(m,2H),1.46−1.27(m,14H),0.88(t,3H,J=6.8Hz)。
【0176】
<実施例7>
CBDA(0.471g、2.40mmol)、及びジアミン化合物(DA−1−1)(1.107g、2.5mmol)をNMP(8.94g)中で混合し、室温で10時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液にNMP(7.89g)、及びBC(7.89g)を加え、6質量%に希釈した。次いで、室温で5時間攪拌することにより液晶配向剤(A1)を得た。液晶配向剤(A1)に含有されるポリアミック酸の数平均分子量は6700であり、重量平均分子量は24400であった。
【0177】
<実施例8>
PMDA(0.518g、2.40mmol)、及びDA−1−1(1.107g、2.5mmol)をNMP(10.83g)中で混合し、室温で10時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液にNMP(8.12g)、及びBC(8.12g)を加え、6質量%に希釈した。次いで、室温で5時間攪拌することにより液晶配向剤(A2)を得た。液晶配向剤(A2)に含有されるポリアミック酸の数平均分子量は8500であり、重量平均分子量は24500であった。
【0178】
<比較例1>
CBDA(0.577g、2.9mmol)、及びDAM−1(1.274g、3.0mmol)をNMP(10.48g)中で混合し、室温で10時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液にNMP(9.25g)、及びBC(9.25g)を加え、6質量%に希釈した。次いで、室温で5時間攪拌することにより、比較例である液晶配向剤(A3)を得た。液晶配向剤(A3)に含有されるポリアミック酸の数平均分子量は9700であり、重量平均分子量は19200であった。
【0179】
実施例7、実施例8及び比較例1で得られたポリアミック酸の分子量の測定は、以下のように行った。
[分子量の測定]
センシュー科学社製の常温ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装置(SSC−7200)、Shodex社製カラム(KD−803、KD−805)を用い以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量約9000000、150000、100000、及び30000)、及びポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量 約12000、4000、及び1000)。
【0180】
<実施例9>
実施例7で得られた液晶配向剤(A1)を用いて形成された硬化膜に関して、以下に示すように、紫外(UV)吸収スペクトルの測定、塗布性の評価を行った。
また、実施例7で得られた液晶配向剤(A1)を用いて形成された硬化膜(ポリイミド膜)を有し、直線偏光の照射量が、それぞれ0mJ、20mJ、50mJ、100mJの各液晶セルを以下の方法で作製し、プレチルト角の評価を行った。
【0181】
[紫外(UV)吸収スペクトルの測定]
実施例7で得られた液晶配向剤(A1)を石英基板にスピンコートし、80℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、200℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmのポリイミド膜を形成した。このとき、この基板を用い、島津製作所社製のUV吸収スペクトル測定器(UV−3600)を用いて、200℃の熱風循環式オーブンでの30分間焼成の前(「焼成前」とも言う。)と後「焼成後」とも言う。)に、UV吸収スペクトルを測定した。
図1には、焼成前後のUV吸収スペクトルの測定結果を示した。
【0182】
次に、200℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成した後の基板を用い、この基板に対して、照射強度11.0mW/cm−2の313nmの直線偏光を300mJ及び1J(1000mJ)照射した。入射光線の方向は、それぞれ基板法線方向に対して40°傾斜していた。この直線偏光は高圧水銀ランプの紫外光に313nmのバンドパスフィルターを通した後、313nmの偏光板を通すことで調整した。そして、300mJ及び1J(1000mJ)の直線偏光が照射された基板を用い、上述した方法で、UV吸収スペクトルを測定した。UV吸収スペクトルの測定結果を図3に示した。
【0183】
図3において、上記のようにして得られたUV吸収スペクトルは「300mJ」と標記し、図1に示した焼成後のUV吸収スペクトルとともに図3に示した。
尚、図1に示した焼成後のUV吸収スペクトルの測定に用いられた基板は、上述のように、直線偏光の照射はなされていない。したがって、直線偏光の照射量が0mJである場合に該当し、図3では、「0mJ」と標記した。
【0184】
[塗布性の評価]
実施例7で得られた液晶配向剤(A1)を、ITO膜からなるITO電極付きガラス基板のITO電極面にスピンコートし、80℃のホットプレートで90秒間乾燥し、塗布面を観察した。塗布面にムラやハジキが発生している場合を「不良」、ハジキやムラが無く均一な場合を「良好」として、液晶配向剤(A1)の塗布性を評価した。
【0185】
[液晶セルの作製]
実施例7で得られた液晶配向剤(A1)を用い、液所表示素子である液晶セルを以下のようにして作製した。
実施例7で得られた液晶配向剤(A1)を、ITO膜からなるITO電極付きガラス基板のITO電極面にスピンコートし、80℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、200℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmのポリイミド膜を形成した。
この基板に対して、照射強度11.0mW/cm−2の313nmの直線偏光を20mJ照射した。上述したUV吸収スペクトルの測定において直線偏光を照射したのと同様に、入射光線の方向は基板法線方向に対して40°傾斜していた。この直線偏光は高圧水銀ランプの紫外光に313nmのバンドパスフィルターを通した後、313nmの偏光板を通すことで調製した。
【0186】
上記の基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜上に6μmのビーズスペーサを散布した後、その上からシール剤を印刷した。次いで、2枚の基板の液晶配向面を対向させ、各基板への直線偏光の光軸の投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で105分かけてシール剤(協立化学製 XN−1500T)を熱硬化させた。この空セルに負の誘電異方性を有するネガ形液晶(メルク社製、MLC−6608)を減圧注入法によって注入し、直線偏光の照射量が20mJである液晶セルを作製した。
次いで、直線偏光の照射量を50mJとした以外は上記と同様の方法に従い、直線偏光の照射量が50mJである液晶セルを作製した。
また、直線偏光の照射量を100mJとした以外は上記と同様の方法に従い、直線偏光の照射量が100mJである液晶セルを作製した。
また、直線偏光を照射しないこと以外は上記と同様の方法に従い、直線偏光の照射量が0mJである液晶セルを作製した。
【0187】
[プレチルト角の評価]
直線偏光の照射量の異なる各液晶セルを用い、液晶配向におけるプレチルト角の測定を行った。プレチルト角の測定は、Axo Metrix社製の「Axo Scan」を用いてミューラーマトリックス法により行った。
プレチルト角の測定結果において、直線偏光の照射量が20mJである液晶セルでは、プレチルト角が89.1度であり、液晶分子が基板の法線方向から基板面内の一方向に向かってわずかに傾いて配向していた。
一方、直線偏光の照射量が0mJである液晶セルでは、プレチルト角が90.0度であり、液晶分子は液晶分子が基板の法線方向に配向し、傾いて配向することはなかった。
以上の評価結果は、実施例10、及び比較例2の結果とあわせて表1にまとめて示した。
【0188】
<実施例10>
実施例2で得られた液晶配向剤(A2)を用いて得られた硬化膜について、実施例9と同様に、紫外(UV)吸収スペクトルの測定、塗布性の評価を行った。
また、液晶配向剤(A1)を液晶配向剤(A2)に変更した以外は実施例9と同様の方法に従い、液晶セルを作製し、プレチルト角の測定を行なった。
【0189】
<比較例2>
比較例1で得られた液晶配向剤(A3)を用いて得られた硬化膜について、実施例9と同様に、紫外(UV)吸収スペクトルの測定、塗布性の評価を行った。
また、液晶配向剤(A1)を液晶配向剤(A3)に変更した以外は、実施例9と同様の方法に従い、液晶セルを作製し、プレチルト角の測定を行なった。
図2には、比較例1の液晶配向剤(A3)を用いて形成されたポリイミドからなる硬化膜の紫外吸収スペクトルを示す。
【0190】
図1に示した結果から、実施例7の液晶配向剤(A1)を用いて形成された硬化膜は、焼成によりポリイミド膜を形成するとともに、紫外領域に新たな吸収を発生することが確認された。この紫外領域の吸収は、図2に示した比較例1の液晶配向剤(A3)を用いて形成された硬化膜のUVスペクトルとの比較から、硬化膜中に形成された二重結合構造に由来するものと解釈される。
また、図3に示すように、実施例7の液晶配向剤(A1)を用いて形成された硬化膜においては、直線偏光である紫外線を照射することにより、紫外領域の吸収の吸光度が低下することが確認できた。これは、紫外線の照射を受けて、硬化膜中に形成された二重結合構造の一部が失われたためと解釈される。
【0191】
【表1】
【0192】
図1に示した結果から、本発明の液晶配向剤は、焼成によりポリイミド膜を形成するとともに紫外領域に新たな吸収を発生させることが確認された。この紫外領域の吸収は、ポリイミド膜中に形成された二重結合構造に由来するものと解釈される。
また、図3に示すように、本発明の液晶配向剤から形成されたポリイミド膜は、直線偏光である紫外線の照射によって、新たに発生した紫外領域の吸収の吸光度が低下することを確認することができた。直線偏光の紫外線の照射を受けて、ポリイミド膜中に形成された二重結合構造の一部が失われたためと解釈される。
【0193】
表1に示す結果において、本発明の液晶配向剤から形成されたポリイミド膜は、直線偏光を照射すること無く、そのまま使用することにより、液晶分子が基板の法線方向に配向する液晶配向膜を構成することがわかった。
また、本発明の液晶配向剤から形成されたポリイミド膜は、直線偏光の照射によって、液晶分子が基板の法線方向から基板面内の一方向に向かって少し傾くような、垂直配向型の光反応性の液晶配向膜を構成することがわかった。
【0194】
本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、VA方式の液晶表示素子の液晶配向膜として好適に利用することが可能であり、従来から課題とされてきた塗布性の面でも優れていることが確認された。また、均一性に優れた垂直配向型の光反応性の液晶配向膜として用いることが可能であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明の液晶配向剤は、塗布性にも優れ、遮光等の対応を必要とせず、垂直配向型の光配向性の液晶配向膜を提供することが可能であり、高い生産性で、優れた表示品位を備えたVA方式の液晶表示素子を製造することができる。すなわち、本発明の液晶表素子は、大型の液晶TVや、高精細な画像を表示するスマートフォン等の携帯用情報端末用の液晶表示素子として好適に利用することができる。
なお、2012年3月21日に出願された日本特許出願2012−064186号、及び2012年3月21日に出願された日本特許出願2012−064187号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
図1
図2
図3