(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガラス板と、誘電体と、前記ガラス板と前記誘電体との間に配置された導電膜と、前記誘電体を挟んで前記導電膜に対向して配置された一対の電極を備えたアンテナとを有する車両用窓ガラスであって、
前記導電膜は、前記誘電体を挟んで前記一対の電極に対向する一対の対向部と、主スロットと、一対の副スロットとを有し、
前記主スロットは、前記導電膜の外縁で開放する開放端を一端に有し、かつ前記一対の対向部に挟まれて形成され、
前記一対の副スロットは、前記導電膜の外縁で開放する開放端をそれぞれ一端に有し、一方の副スロットが前記一対の対向部の一方を囲むように他端で前記主スロットと接続し、もう一方の副スロットが前記一対の対向部のもう一方を囲むように他端で前記主スロットと接続することを特徴とする、車両用窓ガラス。
前記一対の副スロットは、前記導電膜の外縁に平行になるように形成された平行スロット部を有し、前記平行スロット部の幅は、他の副スロットの部位の幅よりも大きく形成された、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
前記ガラス板が第1のガラス板であり、前記誘電体が第2のガラス板であり、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板とを中間膜を介して貼り合わせて合わせガラスを形成する、請求項1から11のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
前記導電膜の外縁は、前記誘電体の外周縁に向かって凸状に形成された凸状外縁部を有し、前記主スロット及び前記一対の副スロットは、前記凸状外縁部で開放する、請求項1から15のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。なお、形態を説明するための図面において、方向について特に記載のない場合には図面上での方向をいうものとし、各図面の基準の方向は、記号、数字の方向に対応する。また、平行、直角などの方向は、本発明の効果を損なわない程度のズレを許容するものである。また、本発明が適用可能な窓ガラスとして、例えば、車両の前部に取り付けられるフロントガラス、車両の後部に取り付けられるリヤガラス、車両の側部に取り付けられるサイドガラス、車両の天井部に取り付けられるルーフガラスなどが挙げられる。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態である車両用の窓ガラス100及びアンテナ101の分解図である。
図1において、例えば、矢印AAの指す方向が、車内側であり、矢印BBの指す方向が、車外側である。
【0016】
窓ガラス100は、車外側に配置される第1のガラス板であるガラス板11と車内側に配置される第2のガラス板であるガラス板12とを中間膜14A、14Bを介して貼り合わせて形成された合わせガラスである。
図1は、窓ガラス100の構成要素を、ガラス板11(又は、ガラス板12)の表面の法線方向に分離して示している。また、窓ガラス100は、導電膜13と、アンテナ101とを備えている。
【0017】
ガラス板11、12は、透明な板状の誘電体である。ガラス板11、12のいずれか一方又は両方が半透明でもよい。導電膜13は、透明又は半透明の導電性の膜である。
図1に示すように、アンテナ101は、誘電体としてのガラス板12と、スロットが形成された導電膜13と、ガラス板12を挟んで導電膜13に対向して配置された一対の電極16、17とを備えた2極タイプのアンテナである。なお、アンテナ101に構成される誘電体には、中間膜14A、14B及びガラス板11を含んでいてもよい。
【0018】
導電膜13は、一対の対向部27、28と、主スロット23と、一対の副スロット25、26とを備えている。一対の対向部27、28は、ガラス板12を挟んで一対の電極16、17に対向する、導電膜13の導体部位である。主スロット23は、導電膜13の外縁13aで開放する開放端23aを主スロット23の一端に有している。主スロット23は、一対の対向部27、28に挟まれるように、導電膜13を除去したまたは導電膜を形成させていない細長い部位である。一対の副スロット25、26のうちの一方の副スロット25は、導電膜13の外縁13aで開放する開放端25aを副スロット25の一端に有している。副スロット25は、一対の対向部27、28のうち一方の対向部27を囲むように副スロット25の他端で主スロット23と接続する部位であり、導電膜13を除去したまたは形成させていない部位である。もう一方の副スロット26は、導電膜13の外縁13aで開放する開放端26aを副スロット26の一端に有している。副スロット26は、一対の対向部27、28のうち副スロット25が囲む対向部とは別のもう一方の対向部28を囲むように副スロット26の他端で主スロット23と接続する部位であり、導電膜13を除去したまたは形成させていない部位である。
【0019】
主スロット23及び一対の副スロット25、26は、導電膜13にレーザーを照射して導電膜13を除去することで形成してよい。または、導電膜13を形成させる際にマスキングなどによりスロット部分に初めから導電膜を形成させないことで形成させてもよい。後述するスロット(他の主スロット、他の副スロット、追加スロット、補助副スロット及び独立スロットなど)も同様に形成できる。
【0020】
図1においては、一対の副スロット25、26は、一対の対向部27、28をそれぞれ囲むように主スロット23と交点24で交差する。なお、交差とは、必ずしも十字に交差することに限らず、T字に交差することを含んでよいし、スロット同士が他の交差態様で接続されることを含んでよい。
【0021】
一対の電極16、17は、誘電体としてのガラス板12を挟んで導電膜13に対向して配置された給電部である。一対の電極16、17と導体である導電膜13との間に誘電体が挟まれている。そのため、一方の電極16は、ガラス板12を介して、電極16が導電膜13に投影された領域である投影領域21と容量的に結合し、もう一方の電極17は、ガラス板12を介して、電極17が導電膜13に投影された領域である投影領域22と容量的に結合する。投影領域21は、一方の対向部27に含まれる導体部位であり、投影領域22は、もう一方の対向部28に含まれる導体部位である。
【0022】
このような構成によれば、主スロット23に沿って励起した電流が一対の副スロット25、26に沿って導電膜13上に流れるため、一対の対向部27、28の投影領域21、22に容量的に結合されている一対の電極16、17に給電することで、本構成は、アンテナとして機能できる。
【0023】
一対の対向部27、28は、主スロット23、一対の副スロット25、26及び導電膜13の外縁13aに囲まれているので、主スロット23及び外縁13aに沿って流れる電流が拡散するのを抑制できる。そのため、一対の副スロット25、26が無い場合に比べて、導電膜13の大きさ等の外部環境がアンテナ101の共振周波数に与える影響を抑えることができ、アンテナ101を容易にチューニングできる。
【0024】
例えば、アンテナが搭載される実際の外部環境とは異なる仮の開発環境下で、アンテナの特性を評価しても、実際の外部環境下で評価する場合と略同等の結果が得られる。すなわち、仮の開発環境でチューニングしたアンテナを実際の車両に搭載してもアンテナの特性が変わりにくい。そのため、アンテナの特性を開発段階で予察しやすく、アンテナの開発が進めやすい。
【0025】
次に、本発明の実施形態について更に詳細に説明する。
図1に示される窓ガラス100では、ガラス板11とガラス板12は同じ大きさである。ガラス板11の外周縁(11a〜11d)とガラス板12の外周縁(12a〜12d)とは、ガラス板12と導電膜13とガラス板11とが積層する方向(以下、「積層方向」という)から見たときに形状が一致している。
【0026】
導電膜13は、例えば、外部から到来する熱線を反射することができる導電性の熱線反射膜である。または、導電膜13は、例えば、電流が流れることによって窓ガラス100の曇りを抑える導体膜でもよい。導電膜13は、例えばフィルム状のポリエチレンテレフタラート等の樹脂フィルム15の表面に形成された導電性の膜である。または、導電膜13は、導電材料、例えば銀等をスパッタ法等によって第1のガラス板11の表面または第2のガラス板12の表面に成膜(膜形成)されていてもよい。
【0027】
図2は、スロットが形成された導電膜13の平面図である。導電膜13には、導電膜13の外縁13aを開放端23aとする主スロット23が形成されている。また、導電膜13には、主スロット23の開放端23aと同じ辺である外縁13aに開放端25aを有する副スロット25と、主スロット23の開放端23aと同じ辺である外縁13aに開放端26aを有する副スロット26とが形成されている。主スロット23及び一対の副スロット25、26の各開放端が導電膜13の同一辺に存在することによって、各開放端が導電膜13の異なる辺に存在する場合に比べて、実際の外部環境とは異なる仮の開発環境下でも、アンテナ101の共振周波数は設計値に対してさらに変化しにくくなる。
【0028】
図3は、
図2の主スロット23を車両用窓ガラスに実装した平面図である。導電膜13は、車両用窓ガラスの形状に対応して車両用窓ガラスの外縁から内方に後退させた位置に導電膜13の外縁が位置するように形成されている。導電膜13は車両用窓ガラスと相似形を有していてよい。また、車両用窓ガラスの外縁と導電膜13の外縁の間の領域には後述する隠蔽膜を形成させてよい。車両用窓ガラスは通常台形を有しており、導電膜13も同様に台形を有している。ただし、これに限定されず、三角形、四角形などの多角形であってよい。また、導電膜13の角部は円弧で形成されていてよい。
図3においては、主スロット23の開放端23a及び副スロット25、26の開放端25a、26aは、導電膜13の上辺の外縁13aに設けられている。
図3では、主スロット23が車両用窓ガラスの左右方向中央の上辺の外縁13aに形成されているが、上辺のどこに形成されていてもよく、また左辺、右辺または下辺に形成されてもよい。
【0029】
なお、主スロット23及び一対の副スロット25、26の各開放端が形成される導電膜13の外縁は、必ずしも同一辺でなくてもよく、互いに異なる辺であってもよい。
図4は、他の例の主スロット23が形成された導電膜13が実装された窓ガラスの平面図である。例えば
図4に示されるように、主スロット23の開放端23a及び副スロット26の開放端26aが、導電膜13の外縁13aに設けられ、副スロット25の開放端25aが、導電膜13の外縁13dに設けられてよい。開放端23a、25a、26aがいずれも外縁13aに設けられた形態の方が、開放端25aのみが外縁13dに設けられた
図4の形態に比べて、実際の外部環境とは異なる仮の開発環境下でも、アンテナの共振周波数は設計値に対して変化しにくくなる。開放端23a、25a、26aが、外縁13aの中心部に位置する形態でも、その中心部よりも外縁13d又は外縁13b寄りに位置する形態でも、実際の外部環境とは異なる仮の開発環境下において、アンテナの共振周波数は設計値に対して変化しにくくなる。
【0030】
また、主スロット23及び一対の副スロット25、26の各開放端は、導電膜13が車両搭載時に車両のルーフ側となる外縁13aに設けられることが、アンテナ利得向上の点で好ましいが、車両のルーフ側とは異なる外縁(車両のピラー側の外縁13b、13d、車両のシャシー側の外縁13cなど)に設けられてもよい。なお、各開放端が車両のルーフ側とは異なる外縁にいずれも設けられた場合であっても、実際の外部環境とは異なる仮の開発環境下において、アンテナの共振周波数は設計値に対して変化しにくくなる。
【0031】
図1において、主スロット23は、導電膜13の外縁13aから導電膜13の面内方向に向かって形成されている。外縁13aは、導電膜13の外縁の一辺である。主スロット23は、開放端23aから導電膜13内の先端部まで導電膜13を直線的に除去して形成されたものである。副スロット25は、開放端25aから導電膜13内の先端部まで導電膜13をL字状に除去して形成されたものである。副スロット26は、開放端26aから導電膜13内の先端部まで導電膜13をL字状に除去して形成されたものである。主スロット23の先端部と副スロット25の先端部と副スロット26の先端部とが、T字状に交点24で交差している。
【0032】
副スロット25は、外縁13aに対して直角になるように形成されたスロット部25bと、外縁13aに対して平行になるように形成された平行スロット部25cとを有している。スロット部25bにおいて、一方の端部は、開放端25aで開放し、もう一方の端部は、平行スロット部25cの一方の端部と接続される。平行スロット部25cのもう一方の端部は、主スロット23の先端部と副スロット26の先端部に接続される。
【0033】
副スロット26は、外縁13aに対して直角になるように形成されたスロット部26bと、外縁13aに対して平行になるように形成された平行スロット部26cとを有している。スロット部26bにおいて、一方の端部は、開放端26aで開放し、もう一方の端部は、平行スロット部26cの一方の端部と接続される。平行スロット部26cのもう一方の端部は、主スロット23の先端部と副スロット25の先端部に接続される。
【0034】
一対の電極16、17が、ガラス板12を挟んで導電膜13の配置位置に対して反対側に配置されている。電極16は、積層方向から電極16を投影したときの電極16の投影領域21が導電膜13の外縁13aよりも内側に位置するように、ガラス板12の車内側の面に露出して配置されている。ガラス板12の車内側の面とは、ガラス板12の導電膜13に対向している面に対して反対側の面である。電極17も同様である。
【0035】
電極16と電極17は、主スロット23の長手方向に対して直交する方向であって、且つガラス板12の面に平行な方向に並んで配置されている。なお、電極16と電極17の位置関係はこれに限定されない。例えば、一対の電極16、17は、積層方向から見たときに、主スロット23が電極16と電極17に挟まれた中間部からオフセットするように配置されてもよい。一対の電極16、17の一部又は全部が、積層方向から見たときに、主スロット23に重なってもよい。また、一対の電極16、17が外縁13aの近傍でなく、主スロット23に沿って導電膜13の面内方向に位置してもよい。
【0036】
主スロット23及び一対の副スロット25、26、並びに電極16、17の形態(形状、寸法など)は、アンテナ101が受信すべき周波数帯の電波を受信するために必要なアンテナ利得の要求値を満たすように設定されていればよい。例えば、アンテナ101が受信すべき周波数帯が地上デジタルテレビ放送帯470〜710MHzの場合、地上デジタルテレビ放送帯470〜710MHzの電波の受信に適するように、主スロット23及び一対の副スロット25、26並びに一対の電極16、17は形成される。
【0037】
主スロット23及び一対の副スロット25、26、並びに一対の電極16、17の窓ガラス上の配置位置は、アンテナ101が受信すべき周波数帯の電波の受信に適した位置であれば、特に限定されない。例えば、本態様のアンテナは、車両用窓ガラスの取り付け部位である車体フランジの近傍に配置される。ルーフ側の車体フランジの端部の近傍に配置されると、インピーダンスマッチングが取りやすい点及び放電効率向上の点で、好適である。また、ピラー側の車体フランジの端部に近づくように、車幅方向の中央部から右方又は左方に移動した位置に配置されてもよい。また、シャシー側の車体フランジの端部の近傍に配置されてもよい。
【0038】
主スロット23の長手方向は、例えば、車体フランジの端部の辺に直交する方向に一致する。しかしながら、主スロット23の長手方向は、車体フランジの端部(又は、導電膜13の外縁)の辺に対して必ずしも直交していなくてもよく、その辺に対する主スロット23の長手方向の角度が、5°以上90°未満であってもよい。
【0039】
車両に対する窓ガラスの取り付け角度は、インピーダンスマッチングが取りやすい点及び放射効率の観点で、水平面(地平面)に対し、15〜90°、特には、30〜90°が好ましい。
【0040】
例えば、電極17を信号線側の電極とし、電極16をアース線側の電極とした場合、電極17は、車体側に搭載された信号処理装置(例えば、アンプなど)に結線された信号線に導通可能に接続され、電極16は、車体側のグランド部位に結線された接地線に導通可能に接続される。車体側のグランド部位として、例えば、ボディーアース、電極17に接続される信号線が結線される信号処理装置のグランドなどが挙げられる。なお、電極17をアース線側の電極とし、電極16を信号線側の電極としてもよい。
【0041】
図1の場合は、対向部27と対向部28の面積は等しいが、異なってもよい。対向部27の面積が対向部28の面積よりも大きい場合、電極17を信号線側の電極とし、電極16をアース線側の電極とすることが好ましい。不平衡系で給電されるので、グランド側の対向部の面積を信号線側の対向部の面積よりも大きくすることが好ましい。
【0042】
主スロット23及び一対の副スロット25、26に沿って励起した電流による電波の受信信号は、一対の電極16、17に通電可能に接続された導電性部材を介して、車両に搭載された信号処理装置に伝達される。この導電性部材として、AV線や同軸ケーブルなどの給電線が用いられるとよい。
【0043】
このアンテナに一対の電極16、17を介して給電するための給電線として、同軸ケーブルを用いる場合には、例えば、同軸ケーブルの内部導体を電極17に電気的に接続し、同軸ケーブルの外部導体を電極16に接続すればよい。また、信号処理装置に接続されている導線等の導電性部材と一対の電極16、17とを電気的に接続するためのコネクタを、一対の電極16、17に実装する構成を採用してもよい。このようなコネクタによって、同軸ケーブルの内部導体を電極17に取り付けることが容易になるとともに、同軸ケーブルの外部導体を電極16に取り付けることが容易になる。さらに、一対の電極16、17に突起状の導電性部材を設置し、窓ガラス100が取り付けられる車体のフランジに設けられた給電部にその突起状の導電性部材が接触、嵌合するような構成としてもよい。
【0044】
一対の電極16、17の形状、及び各電極の間隔は、上記の導電性部材又はコネクタの実装面の形状や、それらの実装面の間隔を考慮して決めるとよい。例えば、正方形、略正方形、長方形、略長方形などの方形状や多角形状が実装上好ましい。なお、円、略円、楕円、略楕円などの円状でもよい。
【0045】
また、一対の電極16、17は、銀ペースト等の、導電性金属を含有するペーストを、例えばガラス板12の車内側表面にプリントし、焼付けて形成される。しかし、この形成方法に限定されず、銅等の導電性物質からなる、線状体又は箔状体を、ガラス板12の車内側表面に形成してもよく、ガラス板12に接着剤等により貼付してもよい。
【0046】
また、一対の電極16、17を車外側から見えなくするために、電極16、17とガラス板11との間に、ガラス板の面に形成される隠蔽膜を設けてもよい。隠蔽膜は黒色セラミックス膜等の焼成体であるセラミックスが挙げられる。この場合、窓ガラスの車外側から見ると、隠蔽膜により隠蔽膜上に設けられている一対の電極16、17の部分が車外から見えなくなり、デザインの優れた窓ガラスとなる。
【0047】
第1のガラス板11と第2のガラス板12との間には、中間膜14A、14Bが配置される。第1のガラス板11と第2のガラス板12は、中間膜14A、14Bによって接合される。中間膜14A、14Bは、例えば、熱可塑性のポリビニルブチラールである。中間膜14A、14Bの比誘電率εrは、合わせガラスの一般的な中間膜の比誘電率である2.8以上3.0以下が適用できる。
【0048】
図5〜9は、本発明の実施形態に係る窓ガラスが有する積層形態のバリエーションを示したものである。
図5〜9では、導電膜13は、ガラス板11と誘電体(ガラス板12又は誘電体基板32)との間に配置されている。一対の電極16、17の一部又は全部は、積層方向から見て、導電膜13に重なるように配置されている。
【0049】
図5〜7の場合、ガラス板11とガラス板12との間に、導電膜13と中間膜14(又は、中間膜14A、14B)が配置されている。
図5は、ガラス板11のガラス板12に対向している対向面に接した中間膜14Aとガラス板12のガラス板11と対向した対向面に接する中間膜14Bとの間に、導電膜13が挟まれた形態である。導電膜13は、ポリエチレンテレフタラートなどの所定の樹脂フィルムに導電膜13が蒸着処理されることによって導電膜13がコーティングされた形態であってもよい。
図6は、ガラス板12のガラス板11に対向している対向面に、導電膜13が蒸着処理されることによって、ガラス板12に導電膜13がコーティングされた形態である。
図7は、ガラス板11のガラス板12に対向している対向面に、導電膜13が蒸着処理されることによって、ガラス板11に導電膜13がコーティングされた形態である。
【0050】
また、
図8、9に示されるように、本発明の実施形態に係る車両用窓ガラスは、合わせガラスでなくてもよい。この場合、誘電体はガラス板11と同じ大きさでなくてもよく、一対の電極16、17を形成できる程度の大きさの誘電体基板などでよい。
図8、9の場合、ガラス板11と誘電体基板32の間に、導電膜13が配置されている。
図8は、ガラス板11の誘電体基板32に対向している対向面に、導電膜13が蒸着処理されることによって、ガラス板11に導電膜13がコーティングされた形態である。導電膜13と誘電体基板32とは、接着層38によって接着される。
図9は、ガラス板11の誘電体基板32に対向している対向面に、導電膜13が接着層38Aによって接着された形態である。導電膜13と誘電体基板32とは、接着層38Bによって接着される。誘電体基板32は樹脂製基板であり、一対の電極16、17が設けられている。誘電体基板32は、一対の電極16、17がプリントされた樹脂製のプリント基板(例えば、FR4に銅箔を取り付けたガラスエポキシ基板)であってもよい。
【0051】
図10〜17は、本発明の実施形態に係るアンテナのスロット形態のバリエーションを示したものである。
【0052】
主スロット23の長手方向に対して直交する方向における主スロット23のスロット幅を、一対の副スロット25、26の一部のスロット幅よりも太く形成することによって、本形態のアンテナのアンテナ利得が向上する。例えば
図10において、主スロット23のスロット幅L35を、スロット部25b又はスロット部26bのスロット幅L40よりも太くすることによって、本形態のアンテナのアンテナ利得が向上する。また、外縁13aと平行となるように形成された平行スロット部25c、26cのスロット幅を、一対の副スロット25、26の他の部位のスロット幅よりも太く形成することによっても、本形態のアンテナのアンテナ利得が向上する。例えば
図10において、平行スロット部25c、26cのスロット幅L43を、スロット部25b又はスロット部26bのスロット幅L40よりも太くすることによって、本形態のアンテナのアンテナ利得が向上する。また、主スロット23のスロット幅L35および平行スロット部25c、26cのスロット幅L43をアンテナ利得が充分に得られる所定幅に形成させれば、他の部位のスロット幅を細くすることができる。スロット幅を細くできると生産性が向上するため好ましい。
【0053】
図11の場合、導電膜13は、一対の副スロット25、26に囲まれた一対の対向部27、28に形成された追加スロット29を有している。追加スロット29は、その端部で副スロット25のスロット部25bと副スロット26のスロット部26bとにT字状に接続するとともに、その中央部で主スロット23の中央部と十字状に交差している。追加スロット29により一対の対向部27、28は4つの領域に分割する。追加スロット29は、外縁13aに平行になるように導電膜13を線状に除去した部位である。追加スロット29の数は、一又は複数あってよい。
【0054】
図12の場合、導電膜13は、一対の副スロット25、26に囲まれた一対の対向部27、28に形成された追加スロット30を有している。追加スロット30は、一端で副スロット25の平行スロット部25cと副スロット26の平行スロット部26cとにT字状に接続するとともに、他方の端部で外縁13aに開放している。一対の副スロット25、26は、導電膜の外縁13aに平行になるように形成された平行スロット部25c、26cを有している。
図12の場合、追加スロット30は、外縁13aに対して直角で平行スロット部25c、26cに接続するように導電膜13を線状に除去した部位である。
図12において追加スロット30は4つ形成されており、一対の対向部27、28は6つの領域に分割されている。追加スロット30の数は、一又は複数あってよい。
【0055】
図13の場合、導電膜13は、一対の対向部43、44と、主スロット23と、一対の副スロット41、42とを有している。一対の対向部43、44は、誘電体を挟んで一対の電極16、17に対向する、導電膜13の三角形状導体部位である。主スロット23は、導電膜13の外縁13aで開放する開放端23aを主スロット23の一端に有し、一対の対向部43、44に挟まれるように導電膜13を線状に除去した部位である。副スロット41は、導電膜13の外縁13aで開放する開放端41aを副スロット41の一端に有し、対向部43を囲むように導電膜13を線状に除去した部位である。副スロット42は、導電膜13の外縁13aで開放する開放端42aを副スロット42の一端に有し、対向部44を囲むように導電膜13を線状に除去した部位である。一対の副スロット41、42は、導電膜13の外縁13aに対して斜めに延伸し、一対の対向部43、44をそれぞれ三角形になるように囲んで主スロット23との交点40に接続する。投影領域21は、対向部43に含まれる導体部位であり、投影領域22は、対向部44に含まれる導体部位である。
【0056】
図14の場合、導電膜13は、一対の対向部49、50と、一対の主スロット45A、45Bと、一対の副スロット47、48とを有している。一対の対向部49、50は、誘電体を挟んで一対の電極16、17に対向する、導電膜13の四角形状導体部位である。主スロット45Aは、導電膜13の外縁13aで開放する開放端45Aaを主スロット45Aの一端に有しかつ外縁13aに対して斜めに延伸し、対向部49と対向部50との間に位置するように導電膜13を線状に除去した部位である。主スロット45Bは、導電膜13の外縁13aで開放する開放端45Baを主スロット45Bの一端に有しかつ外縁13aに対して斜めに延伸し、対向部49と対向部50との間に位置するように導電膜13を線状に除去した部位である。主スロットは、このように一対の対向部に挟まれるように形成されれば複数のスロットで構成されてよい。副スロット47は、導電膜13の外縁13aで開放する開放端47aを副スロット47の一端に有し、対向部49を囲んで主スロット45Aと交点46Aで接続するように導電膜13を線状に除去した部位である。副スロット48は、導電膜13の外縁13aで開放する開放端48aを副スロット48の一端に有し、対向部50を囲んで主スロット45Bと交点46Bで接続するように導電膜13を線状に除去した部位である。投影領域21は、対向部49に含まれる導体部位であり、投影領域22は、対向部50に含まれる導体部位である。
【0057】
図15の場合、導電膜13は、一対の対向部55、56と、一対の主スロット51A、51Bと、一対の副スロット53、54と、補助副スロット52とを有している。また、これらのスロットは
図1の例と比較してスロット幅がレーザー照射等により狭く形成されている。一対の対向部55、56は、誘電体を挟んで一対の電極16、17に対向する、導電膜13の四角形状導体部位である。主スロット51Aは、導電膜13の外縁13aで開放する開放端51Aaを主スロット51Aの一端に有し、一対の対向部55、56に挟まれるように導電膜13を線状に除去した部位である。主スロット51Bは、導電膜13の外縁13aで開放する開放端51Baを主スロット51Bの一端に有し、一対の対向部55、56に挟まれるように導電膜13を線状に除去した部位である。一対の主スロット51A、51Bは、外縁13aに対して直角になるように並走する複数のスロットで構成された多重スロットを形成しており、
図15の場合、2本のスロット部が平行に配置されている。
【0058】
副スロット53は、導電膜13の外縁13aで開放する開放端53aを副スロット53の一端に有し、対向部55を囲んで主スロット51Aと接続するように導電膜13を線状に除去した部位である。副スロット54は、導電膜13の外縁13aで開放する開放端54aを副スロット54の一端に有し、対向部56を囲んで主スロット51Bと接続するように導電膜13を線状に除去した部位である。一対の副スロット53、54は、少なくとも一対の副スロット53、54の一部と並走する補助副スロット52を有している。
【0059】
補助副スロット52は、一対の副スロット53、54に接続されかつ一対の副スロット53、54の少なくとも一部と平行になるように並走する複数のスロットで構成された多重スロットを形成しており、
図15の場合、2本のスロット部が平行に配置されている。
【0060】
また
図15の場合、一対の副スロット53、54は、外縁13aに平行になるように形成された平行スロット部53c、54cを有し、補助副スロット52は、平行スロット部53c、54cと平行になるように配置されている。
【0061】
図15の例では、スロット幅が狭いことによりスロットが目立たないため意匠性に優れている。また、一対の対向部に挟まれた主スロット及び一対の副スロットの外縁13aと平行な平行スロット部を複数のスロットが並走する多重スロットで形成することによって、これらの部位のスロット幅が広い場合と同等のアンテナ利得を得ることができる。さらに、スロット幅が広い場合には導電膜を除去する面積が多くなり生産性を低下させることがあるが、スロット幅を狭くすることで導電膜の除去面積を削減できるので生産性が向上する。
【0062】
図16の場合、導電膜13は、一対の副スロット25、26に囲まれた領域に形成された追加スロット57、58を有している。追加スロット57は、外縁13aで開放する開放端57aを追加スロット57の一端に有し、副スロット25に囲まれる対向部27に形成されている。追加スロット57は、副スロット25に接続しないように、開放端57aから導電膜13内の先端部57bまで導電膜13を線状に除去した部位である。追加スロット58は、外縁13aで開放する開放端58aを追加スロット58の一端に有し、副スロット26に囲まれる対向部28に形成されている。追加スロット58は、副スロット26に接続しないように、開放端58aから導電膜13内の先端部58bまで導電膜13を線状に除去した部位である。追加スロット57、58により、アンテナの広帯域化が可能である。
【0063】
図17の場合、導電膜13は、一対の対向部27、28以外の一対の副スロット25、26の近傍に形成された独立スロット59を有している。独立スロット59は、主スロット23及び一対の副スロット25、26のいずれにも接続されず、導電膜13のいずれの外縁においても開放されないように導電膜13を線状に除去した部位である。
図17の場合、独立スロット59は、外縁13aに平行に配置されているが、副スロット25の外側の周辺部に副スロット25に近接するように配置されてもよいし、副スロット26の外側の周辺部に副スロット26に近接するように配置されてもよい。独立スロット59により、アンテナの広帯域化し、アンテナ利得を向上させることが可能である。
【0064】
図20は、
図2、3と同形態の主スロット23及び一対の副スロット25、26が、導電膜13の凸状領域13eに形成された例を示す。
【0065】
図20において、導電膜13は、ガラス板12の外周縁12a(ガラス板11の外周縁11aでもよい)に向かって突出する凸状領域13eを有し、主スロット23及び一対の副スロット25、26は、凸状領域13eに配置されている。外周縁11a、12aは、ガラス板11、12が車両に搭載された状態で、車両のルーフ側となる外縁部である。
【0066】
図20において、導電膜13の外縁13aは、ガラス板12の外周縁12a(ガラス板11の外周縁11aでもよい)に向かって凸状に形成された凸状外縁部13a1を有している。主スロット23及び一対の副スロット25、26は、凸状外縁部13a1で開放する開放端を有している。凸状外縁部13a1は、凸状領域13eの外縁部である。
【0067】
図3、20に示されるいずれの本発明の実施形態においても、一対の副スロット25、26が無い場合に比べて、導電膜13の大きさ等の外部環境がアンテナの共振周波数に与える影響を抑えることができ、アンテナを容易にチューニングできる。特に、
図20の形態のアンテナは、
図3の形態よりも高いアンテナ利得を有する。
【0068】
図23は、
図20、21と同形態の主スロット23及び一対の副スロット25、26が、導電膜13の複数の凸状領域102、103それぞれに形成された例を示す。凸状領域102、103の形態は、
図20、21の凸状領域13eと同一である。
図23において、一対の凸状領域102、103は、導電膜13の中心線104に関して対称に配置されている。
図23の形態に係るアンテナは、中心線104に対して右側の凸状領域102に配置されたアンテナと、中心線104に対して左側の凸状領域103に配置されたアンテナとを含んで構成されたダイバーシティアンテナとして利用できる。
【0069】
図23に示される本発明の実施形態においても、一対の副スロット25、26が無い場合に比べて、導電膜13の大きさ等の外部環境がアンテナの共振周波数に与える影響を抑えることができ、アンテナを容易にチューニングできる。特に、凸状領域102に配置されたアンテナと凸状領域103に配置されたアンテナは、ほぼ同じアンテナ利得を有し、中心線104に対する凸状領域102、103の左右の位置が変化しても、両アンテナのアンテナ利得は大きく変化しない。また、凸状領域102に配置されたアンテナと凸状領域103に配置されたアンテナは、ほぼ左右対称の指向性を有する。
【0070】
図27は、
図21に示された主スロット23及び一対の副スロット25、26の変形例を示す。
図27は、
図21の各スロットを縁取るように、例えばレーザー加工された形態を想定した図である。なお、マスキングによって作成されてもよい。
【0071】
図27において、導電膜13は、一対の対向部55、56と、一対の主スロット51A、51Bと、一対の副スロット53、54と、補助副スロット60とを有している。これらのスロットは、
図21の例と比較してスロット幅が狭く形成されている。一対の対向部55、56と、一対の主スロット51A、51Bと、一対の副スロット53、54とは、
図15と同様の形態を有する。
【0072】
一対の副スロット53、54は、少なくとも一対の副スロット53、54の一部と並走する補助副スロット60を有している。補助副スロット60は、一対の副スロット53、54に接続されずかつ一対の副スロット53、54の少なくとも一部と平行になるように並走する複数のスロットで構成された多重スロットを形成しており、
図27の場合、2本のスロット部が平行に配置されている。補助副スロット60の一端は、凸状外縁部13a1で開放する開放端61であり、補助副スロット60の他端は、凸状外縁部13a1で開放する開放端62である。
【0073】
図27に示される本発明の実施形態においても、導電膜13の大きさ等の外部環境がアンテナの共振周波数に与える影響を抑えることができ、アンテナを容易にチューニングできる。特に、
図27の形態に係るアンテナと
図21の形態に係るアンテナは、ほぼ同じアンテナ利得を有する。したがって、例えば、
図21のような形態でアンテナのチューニングを行ってから、最終的に
図27のような形態のアンテナをデザインすることで、試作・検討が進めやすく、意匠性も向上する。
【0074】
図28は、
図20、21に示された主スロット23及び一対の副スロット25、26の変形例を示す。
図28は、各スロットのスロット幅が互いに異なる場合を想定した図である。
図28は、主スロット23のスロット幅L82を、スロット部25b、26bのスロット幅L86よりも広くし、スロット部25b、26bのスロット幅L86を、平行スロット部25c、26cのスロット幅L91よりも広くした形態の一例を示す。各スロットのスロット幅をそれぞれチューニングすることで、各スロットのスロット幅が全て同じ場合に比べて、アンテナ利得を向上させることができる。
【0075】
以上、車両用窓ガラス及びアンテナを実施形態例により説明したが、本発明は上記の実施形態例に限定されるものではない。他の実施形態例の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0076】
例えば、誘電体を挟んで電極に対向する対向部の形状は、三角形状又は四角形状以外の多角形形状でもよいし、円、略円、楕円、略楕円などの円状でもよい。
【実施例1】
【0077】
正方形の導電膜113および自動車用窓ガラスの形状に対応したサイズの導電膜それぞれに
図18に示す上掲の特許文献1のアンテナを形成させ、これらの導電膜を実際の自動車用窓ガラスに設置した例(比較例)と、正方形の導電膜13および自動車用窓ガラスの形状に対応したサイズの導電膜13それぞれに
図2、3に示すように本発明の実施形態に係るアンテナを形成させ、これらの導電膜を実際の自動車用窓ガラスに設置した例(実施例)について、反射係数S11を比較測定した結果を示す。
【0078】
反射係数S11は、アンテナが形成された導電膜を設置した自動車用窓ガラスを、電波暗室内の自動車の窓枠に水平面に対してアンテナ部分が約25°傾いた状態で組みつけて実測された。電極17に同軸ケーブルの内部導体が接続されるように、また電極16に同軸ケーブルの外部導体が接続されるようにコネクタが取り付けられていて、電極16、17は同軸ケーブルを介してネットワークアナライザに接続された。反射係数S11は、地上デジタルテレビ放送帯470〜710MHzの周波数範囲において約1.5MHz毎に測定された。
【0079】
反射係数S11の測定時の積層構成は、実験の便宜上、
図1に示した形態において、比較例と実施例いずれの場合においても、導電膜13、113が形成された樹脂フィルム15を第1のガラス板11の矢印BB向きの外側表面に形成させた構成である。
【0080】
図18は、実際の自動車用窓ガラスの形状に対応していない正方形の導電膜113にスロット123が形成された特許文献1のアンテナの平面図を示している。スロット123は平面視で一対の電極116、117に挟まれている。実際の自動車用窓ガラスに
図18のアンテナを設置させた例は、後述する
図3の自動車用窓ガラスと同一のガラス板で行っており、
図18のスロット123が
図3の主スロット23に一致するように配置した。また、自動車用窓ガラスの形状に対応したサイズの導電膜に
図18のアンテナを形成させた例についても同様に、
図18のスロット123が
図3の主スロット23に一致するように配置した。
【0081】
図2は、実際の自動車用窓ガラスの形状に対応していない正方形の導電膜13に主スロット23及び副スロット25、26が形成された本発明の実施形態に係るアンテナの平面図を示している。
図3は、実際の自動車用窓ガラスに積層された導電膜13に主スロット23及び副スロット25、26が形成された本発明の実施形態に係るアンテナの平面図を示している。実際の自動車用窓ガラスに
図2のアンテナを設置させた例は、
図3の自動車用窓ガラスと同一のガラス板で行っており、
図2の主スロット23が
図3の主スロット23に一致するように配置した。
【0082】
図18において、反射係数S11の測定時の各部の寸法は、単位をmmとすると、
L11:300
L12:300
L13:20
L14:10
L15:20
L16:27
L17:20
L18:52
とした。
【0083】
図2、18において、反射係数S11の測定時の各部の寸法は、単位をmmとすると、
L31:300
L32:300
L33:22.5
L34:112.5
L35:10
L36:20
L37:20
L38:51.25
L39:61.25
L40:10
L41:235
L42:255
L51:1166
L52:1104
L55:1285
L56:1402
L57:802
L58:693
L59:650
L60:757
とした。導電膜13のシート抵抗は、1.0[Ω]であった。
【0084】
図19は、S11の実測結果を示す。「例1」は、自動車用窓ガラスの形状に対応したサイズの導電膜に
図18のアンテナを適用した場合を示し、「例2」は、正方形の導電膜の
図18の場合を示し、「例3」は、自動車用窓ガラスの形状に対応したサイズの導電膜の
図3の場合を示し、「例4」は、正方形の導電膜の
図2の場合を示す。
【0085】
図19に示されるように、「例1」と「例2」を比較すると、反射係数S11及び共振周波数が大きくずれているのに対し、「例3」と「例4」を比較すると、反射係数S11及び共振周波数がほとんどずれていない。このように、実際の自動車用窓ガラスの形状に対応した導電膜にアンテナを形成させた場合と正方形の導電膜にアンテナを形成させた場合でのS11の測定結果の差が小さい本発明の実施形態によれば、仮の開発環境でチューニングしたアンテナを実際の車両に搭載してもアンテナの特性が変わりにくいため、アンテナの特性を開発段階で予察しやすく、アンテナの開発が進めやすい。また、開発の大部分を小さなガラス板で実験できるので、作業性が向上する。
【0086】
また、本発明の実施形態によれば、シミュレーションによるチューニングにおいても、導電膜及びガラス板の寸法を実際よりも小さな値に設定できるので、計算資源(CPU速度やメモリ量)を削減できる。その結果、計算時間も短くなり、作業性が向上する。
【実施例2】
【0087】
図3の形態に係るアンテナと、
図20の形態に係るアンテナとについて、アンテナ利得の測定結果の一例を実施例2として以下に示す。
【0088】
図3と
図20のいずれの形態の測定においても、実験の便宜上、導電膜13を銅箔で模擬して自動車用窓ガラスで模擬した。また、アンテナ利得の測定時の積層構成は、実験の便宜上、銅箔をガラス板11の矢印BB(
図1参照)の指す方向の車外側表面に形成した構成(つまり、
図7において、導電膜13を模擬した銅箔がガラス板11に対して図示の位置とは反対側に位置する構成)とした。また、アンテナの作製精度を保つため、凸状領域13eをフレキシブル基板に形成した。すなわち、フレキシブル基板上に対向部27,28を銅箔で模擬し、主スロット23及び一対の副スロット25,26を形成して、フレキシブル基板と銅箔で形成した導電膜13とを接続することで
図20の形態に係るアンテナを作成した。また、電極16、17は、フレキシブル基板の対向部27,28の銅箔が形成された面とは反対側の面に銅箔で形成した。
【0089】
アンテナ利得は、アンテナが形成された銅箔を設置した自動車用窓ガラスを、電波暗室内の自動車のフロントガラスの窓枠に、水平面に対してアンテナ部分が約25°傾いた状態で組みつけて実測された。電極17に同軸ケーブルの内部導体が接続され、且つ、電極16に同軸ケーブルの外部導体が接続されるように、同軸ケーブルの一端に接続されたコネクタが電極16、17に取り付けられた。同軸ケーブルの外部導体は、コネクタから180mmの箇所で自動車のボディにねじ止めされた。アンテナ利得は、地上デジタルテレビ放送帯の周波数範囲において473〜713MHzの周波数に対して約6MHz毎に測定された。
【0090】
図3と
図20において、アンテナ利得の測定時には同一形態の自動車用窓ガラスが使用され、アンテナ利得の測定時の各部の寸法は、単位をmmとすると、
L51:1166
L52:1104
L55:1285
L56:1402
L57:802
L58:693
L59:650
L60:757
L70:40
とした。L70は、開放端23aと外周縁12aとの最短距離である。L70を40mmとすると、自動車用窓ガラスが車両に搭載された状態で、開放端23aと車体フランジの端部との最短距離は20mm程度となる。
【0091】
また、
図3と
図20において、主スロット23、一対の副スロット25、26及び電極16、17は、同一の形態である。
図21は、
図20の一部拡大図であり、凸状領域13eの平面図を示す。アンテナ利得の測定時の各部の寸法は、単位をmmとすると、
L34:75.75
L35:10
L36:24
L37:24
L38:50
L39:60
L40:10
L41:161.5
L42:181.5
L43:10
L71:60
L72:10
L73:201.5
とした。L71は、凸状外縁部13a1が外縁13aの他の部分から突き出る長さである。
【0092】
なお、自動車用窓ガラスは、板厚が2mmの2枚のガラス板を膜厚が0.381mmの中間膜を介して貼り合わせた合わせガラスである。
【0093】
図22は、アンテナ利得の測定結果を示す。「例5」は、
図3の形態に係るアンテナのアンテナ利得を示し、473〜713MHzにおいて6MHz毎に測定されたアンテナ利得の電力平均値は、−9.5dBdであった。「例6」は、
図20の形態に係るアンテナのアンテナ利得を示し、473〜713MHzにおいて6MHz毎に測定されたアンテナ利得の電力平均値は、−8.2dBdであった。したがって、
図20の形態のアンテナは、
図3の形態よりも高いアンテナ利得を有する。
【実施例3】
【0094】
図23の形態に係るアンテナについて、凸状領域102に配置されたアンテナと凸状領域103に配置されたアンテナについて、アンテナ利得及び指向性の測定結果の一例を実施例3(
図24、25、26)として以下に示す。
【0095】
図23の形態の測定において、実験の便宜上、導電膜13および凸状領域102、103は実施例2と同様に作成した。また、
図23の形態について、
図24、25の測定時の積層構成は、
図6の構成(つまり、
図6において、導電膜13を銅箔に置換した構成)であり、
図26の測定時の積層構成は、上述の実施例2と同様である。
【0096】
図23において、
図24、25の測定時の寸法は、単位をmmとすると、
L74:300
L75:300
とした。L74、75は、主スロット23と中心線104との最短距離である。その他の測定条件は、上述の実施例2と同様である。
【0097】
図24は、アンテナ利得の測定結果を示す。「102」は、凸状領域102に配置されたアンテナのアンテナ利得を示し、473〜713MHzにおいて6MHz毎に測定されたアンテナ利得の電力平均値は、−8.6dBdであった。「103」は、凸状領域103に配置されたアンテナのアンテナ利得を示し、473〜713MHzにおいて6MHz毎に測定されたアンテナ利得の電力平均値は、−8.2dBdであった。したがって、凸状領域102に配置されたアンテナと凸状領域103に配置されたアンテナは、ほぼ同じアンテナ利得を有している。
【0098】
図25は、指向性の測定結果を示す。
図25において、上方向は車両前方側を示し、下方向は車両後方側を示す。「102」は、凸状領域102に配置されたアンテナの593MHzにおける指向性を示し、「103」は、凸状領域103に配置されたアンテナの593MHzにおける指向性を示す。したがって、凸状領域102に配置されたアンテナと凸状領域103に配置されたアンテナは、ほぼ同一で左右で線対称な指向性を有している。
【0099】
図26は、L74、L75を変化させたときのアンテナ利得の測定結果を示す。縦軸のアンテナ利得は、凸状領域102に配置されたアンテナのアンテナ利得と凸状領域103に配置されたアンテナのアンテナ利得との平均値を示す。横軸のL74、L75は、互いに等しく変化させ、100mmから460mmまで変化させた。
図26に示されるように、L74、L75の長さが変化しても、アンテナ利得の変動幅は抑えられているので、凸状領域102、103の配置可能な位置の設計自由度が高い。
【実施例4】
【0100】
図27の形態に係る各スロットが凸状領域102、103(
図23参照)のそれぞれに配置されたアンテナと、
図21の形態に係る各スロットが凸状領域102、103のそれぞれに配置されたアンテナとについて、アンテナ利得の測定結果の一例を実施例4として以下に示す。
【0101】
図27と
図21のいずれの形態の測定においても、
図23、27において、アンテナ利得の測定時の寸法は、単位をmmとすると、
L74:300
L75:300
L76:9.7
とした。また、
図27において、一対の主スロット51A、51B、一対の副スロット53、54、補助副スロット60のスロット幅は、全て0.15mmとした。その他の測定条件は、上述の実施例2と同様である。
【0102】
凸状領域102に配置された
図21の形態に係るアンテナのアンテナ利得と凸状領域103に配置された
図21の形態に係るアンテナのアンテナ利得との電力平均値は、−9.5dBdであった。凸状領域102に配置された
図27の形態に係るアンテナのアンテナ利得と凸状領域103に配置された
図27の形態に係るアンテナのアンテナ利得との電力平均値は、−9.4dBdであった。したがって、
図27の形態に係るアンテナと
図21の形態に係るアンテナは、ほぼ同じアンテナ利得を有する。よって、
図27の形態に係るアンテナはスロットの開口面積を減少させた意匠性のよいアンテナとなる。
【実施例5】
【0103】
図21の形態に係るアンテナと、
図28の形態に係るアンテナとについて、アンテナ利得の測定結果の一例を実施例5として以下に示す。
【0104】
図21と
図28のいずれの形態の測定においても、アンテナ利得の測定時の積層構成及び銅箔による模擬は、上述の実施例2と同様であるが、ガラス板のサイズやガラス板の設置条件が異なる。
【0105】
板厚が2mmの2枚のガラス板11、12を膜厚が0.381mmの中間膜を介して貼り合わせた合わせガラスとして、
図28に示される正方形のガラス板63(L77×L94:300mm×300mm)を用いた。
【0106】
ガラス板63は、車体を模擬した金属枠(500mm×500mm)の内側に設けられた開口(300mm×300mm)を覆うように、車両のフロントガラスと同程度(25°)の傾きで金属枠に設置された。
【0107】
図21において、アンテナ利得の測定時の各部の寸法は、上述の実施例2と同様である。
図28において、アンテナ利得の測定時の各部の寸法は、単位をmmとすると、
L78:201.5
L79:181.5
L80:151.5
L81:63.25
L83:10
L84:24
L85:24
L86:15
L87:10
L88:10
L89:49.25
L90:60
L91:5
L92:55
L93:60
L94:300
L95:10
L96:60
とした。L96は、凸状外縁部13a1が外縁13aの他の部分から突き出る長さである。
【0108】
図29は、アンテナ利得の測定結果を示す。「例8」は、
図21の形態に係るアンテナのアンテナ利得を示し、473〜713MHzにおいて6MHz毎に測定されたアンテナ利得の電力平均値は、−7.5dBdであった。「例9」は、
図28の形態に係るアンテナのアンテナ利得を示し、473〜713MHzにおいて6MHz毎に測定されたアンテナ利得の電力平均値は、−6.3dBdであった。したがって、各スロットのスロット幅をそれぞれチューニングした
図28の形態に係るアンテナは、各スロットのスロット幅が全て同じ
図21の形態に係るアンテナよりも高いアンテナ利得を有する。