(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような熱電変換素子と電極との接合を行う場合は以下のような課題が挙げられる
。
(1)はんだ接合
現在主流となっている鉛フリーはんだの場合は、はんだの融点がおおよそ220℃であ
り、高温系鉛フリーはんだにおいても融点はせいぜい400℃以下である。それに加えて
、高温系鉛フリーはんだでは、はんだ材が脆い、低熱伝導、ぬれ性が悪い、高コスト等様
々な課題がある。
(2)加圧、圧着
熱電素子と電極との接合形態が接触であるため、接触界面での接触熱抵抗により、熱電
変換モジュールの変換効率の低下が懸念される。また、接触熱抵抗を軽減させるために、
加圧力を高めた場合、熱電変換モジュールの使用環境下では、加圧力に加えて、熱応力も
負荷されるため、熱電変換モジュールの信頼性が低下することが懸念される。
(3)硬ろう材による接合
硬ろう材は融点が概ね600〜800℃とはんだ材よりも融点が高く、接合材として高
温環境下での適用が可能である。銀を主成分とした銀ろう、金を主成分としたものが金ろ
う等があるが、一般的に高温系モジュールの接合材として使用されるろう材は接合強度が
5〜25MPa程度であり、接合強度が低く、さらに大気中での高温環境下では、酸化に
より接合部の劣化が激しく、接合信頼性がさらに低下してしまう問題がある。
(4)中間層を挟んだ接合
特許文献3及び4に記載されているように、熱電素子と電極との間にアルミニウム又は
アルミニウムの合金を挟んで熱電素子と電極とを接続することが開示されている。しかし
、特許文献3に記載されている方法では、接合時に525℃以上575℃以下に加熱した
状態で300kg/cm
2以上700kg/cm
2以下の圧力をかけており、熱電素子に
ダメージを与えてしまい熱電素子と電極間の接合信頼性を低下させてしまう恐れがある。
また、特許文献4に記載されている方法でも、接合時に600〜700℃に加熱した状態
で数十MPa程度の圧力をかけており、熱電素子にダメージを与えてしまい熱電素子と電
極間の接合信頼性を低下させてしまう恐れがある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、高温用の熱電素子と電極を接合する構造において、熱電素子
と電極の接合強度が高く、高温環境下でも熱電素子および電極間の接合信頼性の低下を抑
制することができる熱電変換モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明の熱電変換モジュールは、 p型の熱電素子と
、n型の熱電素子と、金属電極と、を有し、p型の熱電素子と金属電極とが中間層を介し
て接合され、さらに金属電極とn型の熱電素子とが中間層を介して接合されており、p型
の熱電素子とn型の熱電素子は少なくともシリコン成分を含有し、中間層は、シリコン成
分とアルミニウム成分とを含有する層であって、中間層は、熱電素子側にはシリコン成分
とアルミニウム成分とを含有する第1の層と、この第1の層と金属電極との間にはシリコ
ン成分と10質量%以下のアルミニウム成分とを含む第2の層とを有し、
第1の層におけ
るアルミニウム成分の含有量は、第2の層におけるアルミニウム成分の含有量よりも多いように形成した。
【0013】
具体的には、前記p型の熱電素子とn型の熱電素子の少なくとも一方に、シリコン−ゲ
ルマニウム系の熱電素子を用いた場合には、前記中間層は、アルミニウムとシリコンとゲ
ルマニウムとの合金を含むようにした。 前記p型の熱電素子とn型の熱電素子の少なく
とも一方に、マグネシウムシリサイド系の熱電素子を用いた場合には、アルミニウムとシ
リコンとマグネシウムとの合金を含むようにした。前記p型の熱電素子とn型の熱電素子
の少なくとも一方に、マンガンシリサイド系の熱電素子を用いた場合には、前記中間層が
、アルミニウムとシリコンとマンガンとの合金を含むようにした。
【0014】
上記した課題を解決するために、本発明の第一の熱電変換モジュールの製造方法は、
電極板の一方の面の側に、p型の熱電素子とn型の熱電素子とをそれぞれ中間層形成部材
を挟んで設置する工程と、p型の熱電素子とn型の熱電素子とをそれぞれ電極板の一方の
面の側に押し付けながら加熱して溶融させる工程と、溶融された中間層形成部材を冷却し
、p型の熱電素子と電極板との間と、を接合し、n型の熱電素子と電極板と、を接合する
工程と、を有し、p型の熱電素子とn型の熱電素子は、成分としてシリコンを含有するも
のであり、中間層形成部材は、アルミニウム、またはシリコンと熱電素子の成分とを含有
させたアルミニウム合金からなるものであり、加熱は、中間層部材が溶融される温度で行
うようにした。
【0015】
また、本発明の第二の熱電変換モジュールの製造方法は、p型の熱電素子とn型の熱電
素子との両端それぞれに中間層形成部材を介して電極板で挟んで設置する工程と、電極板
をp型の熱電素子とn型との熱電素子の側に押し付けながら加熱して中間層形成部材を溶
融させる工程と、溶融された中間層形成部材を冷却し、p型の熱電素子と電極板との間と
、を接合し、n型の熱電素子と電極板と、を接合する工程と、を有し、p型の熱電素子と
n型の熱電素子は、成分としてシリコンを含有するものであり、中間層形成部材は、アル
ミニウム、またはシリコンと熱電素子の成分を含有させたアルミニウム合金からなるもの
であり、加熱は、中間層部材が溶融される温度で行うようにした。
【0016】
上記の熱電変換モジュールの製造方法においては、前記中間層形成部材として、アルミ
ニウム箔、アルミニウム中に少なくとも前記シリコンを成分として含有したアルミニウム
合金箔、アルミニウム粉末、およびアルミニウム中に少なくとも前記シリコンを成分とし
て含有したアルミニウム合金粉末のうちの少なくとも1種を用い、前記シリコンを成分と
して含有する熱電素子と電極の間に挟持して配置した。
【0017】
また、前記中間層形成部材として、前記シリコンを成分として含有する熱電素子の電極
と接合する端部と、前記電極の前記シリコンを成分として含有する熱電素子と当接する部
分のうち、少なくとも一方に、アルミニウム、およびアルミニウム中に少なくとも前記シ
リコンを成分として含有したアルミニウム合金の少なくとも1種からなる金属層を形成し
、中間層形成部材とした。
【発明の効果】
【0018】
本発明の特徴は、金属接合による高強度接合であること、高温環境下におかれても接合
信頼性を確保できることである。
【0019】
これにより、高温環境下で使用される熱電変換モジュールにおいて、各部材の熱膨張率
の差により接合部には熱応力が負荷されるが耐熱疲労性に優れた接合部を形成することが
できる。さらに、高温環境下で熱電変換モジュールが使用される場合、接合部の強度低下
を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る熱電変換モジュール10
0の外観の一例を示す。熱電変換モジュール100は、外部を覆うケース101の内部に
、電極10とn型熱電素子21、p型熱電素子22とが交互に2次元並列されており、多
数の電極10によりn型熱電素子21とp型熱電素子22とが電気的に直列に接続されて
いる。多数の電極10は、それぞれケース101の内壁面1011に密着されており、ケ
ース101の外壁面のうち上側の面1012は発熱体に接触し、下側の面1013は、図
示していない冷却手段により冷却されている。ケース101の内部に2次元配列された電
極10のうち端部に配置された電極10'には端子102が形成されていて、端子102
にはケース101の外部に延びるリード線が接続されており、熱電変換モジュール100
で発生させた電力を外部に出力する。
【0022】
図1に示した電極10とn型熱電素子21、p型熱電素子22とで構成される電熱変換
モジュール単体について、本発明の第一の実施形態の熱電変換モジュールについて
図2を
用いて説明する。
図2は、熱電変換モジュール単体を構成する電極10とn型熱電素子2
1、p型熱電素子22の組合せの一例を示す概略断面図である。
図2において、1は熱電
変換モジュール単体、10は電極、21はn型熱電素子、22はp型熱電素子、30は中
間層である。
【0023】
n型熱電素子21は、n型半導体の特性を付与する1%以下のリン、アンチモン等の不
純物を含有したシリコン−ゲルマニウム粉末を、p型熱電素子22は、p型半導体の特性
を付与する1%以下のボロン、アルミニウム、ガリウム等の不純物を含有したシリコンと
ゲルマニウム粉末を、それぞれパルス放電法やホットプレス法等により焼結したシリコン
−ゲルマニウム熱電素子である。また、n型熱電素子21とp型熱電素子22と(以下、
これらを総称して熱電素子20と記す)は、マグネシウムシリサイド粉末をパルス放電法
やホットプレス法等により焼結したマグネシウムシリサイド熱電素子、マンガンシリサイ
ド粉末をパルス放電法やホットプレス法等により焼結したマンガンシリサイド熱電素子等
としてもよい。以下、熱電素子20をシリコン−ゲルマニウム熱電素子として説明する。
【0024】
電極10はモリブデン、又は銅、タングステン、チタン、ニッケル単体、又はそれらを
含む金属の合金、又は、それらの単体又は合金を重ねた複数層の構成からなるものであれ
ばよい。以下、電極10をモリブデン電極として説明する。
【0025】
中間層30は、熱電素子20がシリコンとゲルマニウムを主成分とすることから、アル
ミニウムとシリコンとゲルマニウムを含む層として形成される。
【0026】
図3A乃至
図3Cは
図2に示す本発明の第一の実施形態の熱電変換モジュール単体1の
製造方法を示す概略説明図である。
図3A乃至
図3Cにおいて、10は電極、20は熱電
素子、31は金属箔、30は接合の結果生成された中間層である。ここで、電極10はモ
リブデンを主成分とする金属、熱電素子20は、シリコン−ゲルマニウムを主成分とする
半導体である。
【0027】
金属箔31は、アルミニウムまたは、アルミニウム中にシリコン、ゲルマニウム等を含
有したアルミニウム合金箔、または、アルミニウム、アルミニウム中にシリコン、ゲルマ
ニウム等を含有した粉末からなる箔粉等であればよく、厚さは、数μmから数10μmで
ある。以下、金属箔31をアルミニウム箔として説明する。
【0028】
熱電変換モジュール単体1は複数を同時に形成されるが、その製造方法は、先ず、電極
10を吸引吸着できる電極整列治具(図示せず)にモリブデンを主成分とする複数の電極
10(以下、モリブデン電極10と記す)を搭載し、熱電素子20を吸引吸着できる素子
整列治具(図示せず)にシリコン−ゲルマニウム熱電素子である複数の熱電素子20を吸
着させ、
図3Aのように、シリコン−ゲルマニウム熱電素子である熱電素子20とモリブ
デン電極10との間に中間層形成部材として金属箔31であるアルミニウム箔を設置する
。その後、
図3Bに模式的に示すように、シリコン−ゲルマニウム熱電素子(熱電素子2
0)の上部より、0.12kPa以上で加圧しながら、中間層形成部材が溶融する温度で
加熱する。接合雰囲気は、非酸化性雰囲気であればよく、具体的に、真空雰囲気、窒素雰
囲気、窒素水素混合雰囲気等を用いることができる。その後、室温まで冷却することで図
3Cに示すように、シリコン−ゲルマニウム熱電素子とモリブデン電極の間に中間層30
が形成される。このため、中間層30は、アルミニウムとシリコンとゲルマニウムを含有
する層として形成される。
【0029】
この中間層30には、金属箔31の成分であるアルミニウム中に熱電素子20を構成す
るシリコン−ゲルマニウムが溶解することで生じるアルミニウム、シリコン、ゲルマニウ
ムを含む少なくとも1層又は複数の合金層が形成されてもよい。複数の合金層の場合、例
えば、中間層30は、アルミニウム、シリコン、ゲルマニウムを含む合金層301と10
質量%以下のアルミニウムを含むシリコンとゲルマニウムの合金層302を含む層構造と
なる。
【0030】
このようにして形成された複数の熱変換モジュール1を
図1の筐体101の内部に組み
込み、電極10'に固定されたリード線103を筐体101の外部に引き出し、筐体10
1を密閉させて熱電変換モジュール100が完成する。なお、熱電変換モジュールとして
筐体101に収容しない形態のものも存在するため、そのような形態の熱電変換モジュー
ルに適用する場合には、筐体に収容せずともよい。
【0031】
ここで、加圧力を0.12kPa以上としたのは、接合時に熱電素子20が傾くのを防
止することと、熱電素子20とモリブデン電極10との密着性を高めること、接合時の溶
融アルミニウム表面に形成されている酸化皮膜を破り、アルミニウムの新生面を熱電素子
表面、モリブデン電極表面に接触させ良好な接合を得るためである。加圧力の上限は特に
限定しないが、素子が破壊しない程度とする必要があるため素子の圧壊強さ未満とする。
具体的には1000MPa程度以下であればよいが、本発明では、特許文献3及び4に記
載されているように、接合時に300kg/cm
2以上700kg/cm
2以下の圧力を
かけたり、数十MPa程度の圧力をかけたりすることなくても、数MPa程度の圧力で十
分に効果を得ることができる。
【0032】
また、
図3Bに示した加熱して加圧する工程において、接合温度580℃以上の温度と
すると、金属箔31のアルミニウム中にシリコンとゲルマニウムを主成分とする熱電素子
20からシリコンが拡散する。そのため、アルミニウム−シリコン合金の共晶温度である
577℃で金属箔31のアルミニウムが溶融する。金属箔31のアルミニウムが溶融する
ことで、熱電素子20の主成分であるシリコン−ゲルマニウムと金属箔31のアルミニウ
ムが固相−液相状態となり、ゲルマニウムも拡散してゲルマニウムを含むシリコンとアル
ミニウムとの液相が形成される。ゲルマニウムを含むシリコンとアルミニウムの液相が生
じた後、上記液相から熱電素子20を構成するシリコン−ゲルマニウム中へアルミニウム
が拡散することで合金層301が形成され、上記液相の組成変化に伴い、シリコンとゲル
マニウムを主成分とする合金層302が形成される。
【0033】
すなわち、中間層30の形成は一種の液相拡散接合法を利用した接合形態であり、シリ
コン、ゲルマニム、アルミニウムを含む液相からシリコン、ゲルマニウムよりも融点の低
いアルミニウムが熱電素子20を構成するシリコン−ゲルマニウム中へ拡散することで、
液相中のアルミニウムの濃度が減少し、液相の融点が上昇して等温凝固するものである。
【0034】
従って、接合後には、
図3Cに示すように、シリコン−ゲルマニウムを主成分とする熱
電素子20とモリブデン電極10の間には、中間層30として、熱電素子20の主成分で
あるシリコン−ゲルマニウムと金属箔31のアルミニウムとが拡散することにより形成さ
れたアルミニウムとシリコンとゲルマニウムを含有する層として形成される。この中間層
30は、接合強度が高く、かつ、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウムを含有するため
耐酸化性、耐食性に優れており、大気中での高温環境下においても、接合部の劣化が生じ
難いものである。
【0035】
また、接合温度、接合時間、加圧を調整することで金属箔31の成分であるアルミニウ
ムの融点660℃に達する前にゲルマニウムを含むシリコンとアルミニウムとの液相が生
じ、液相中のアルミニウムが熱電素子20を構成するシリコン−ゲルマニウム中へ拡散す
ることで接合部は等温凝固するため、アルミニウムの融点660℃以下で接合でき、冷却
時に素子および接合部に生じる熱応力を低減させることができる。合金層302は10質
量%以下のアルミニウムを含むシリコンとゲルマニウムより構成されており、アルミニウ
ムの融点である660℃よりも高い融点を有するため、耐熱性にも優れる。加えて、合金
層302はシリコンとゲルマニウムを主成分としており、シリコン−ゲルマニウムで構成
される熱電素子20とモリブデン電極10と同等の熱膨張率を有するため、熱電変換モジ
ュール100の稼動時に温度差に起因して生じる素子および接合部の熱応力を抑制する作
用を有する。
【0036】
さらに、中間層30は熱電素子20を構成するシリコンとゲルマニウムを含むため、熱
電素子20とモリブデン電極の間でオーミック接触が可能となり、接触抵抗を低減できる
ため、良好な電気的接続を得ることができる。
【0037】
これらの作用により、アルミニウムとシリコンとゲルマニウムを含有する合金が形成さ
れる中間層30は、機械的および電気的に高い接合信頼性を長期に亘り発揮する。
【0038】
なお、接合温度の上限は熱電素子の性能が劣化しない温度であり、具体的には850℃
以下とする。
【0039】
なお、上記の説明では金属箔としてアルミニウム箔を用いたが、アルミニウム箔に替え
てアルミニウム中にシリコン、ゲルマニウム等を含有したアルミニウム合金箔を用いても
よい。この場合、アルミニウム中に熱電素子の成分が含有されているため、固相拡散を経
ずとも共晶液相が発生しやすくなる。また、アルミニウム箔とアルミニウム合金箔を積層
して用いてもよい。
【0040】
さらに、金属箔に替えてアルミニウム粉末やアルミニウム中にシリコン、ゲルマニウム
等を含有したアルミニウム合金粉末を用いてもよい。この場合、単一の粉末として用いて
もよく、各々の粉末から形成される層を積層してもよく、これらの混合粉末を用いてもよ
い。なお粉末を用いる場合、箔状の粉末もしくは扁平状の粉末を用いると、熱電素子と電
極の間に配置しやすいため好ましい。このような粉末を用いる場合、粉末のみを圧粉成形
した成形体を熱電素子と電極の間に配置してもよく、あるいは電極の端面に粉末を成型し
ておいてもよく、さらに樹脂等を用いてペースト化した粉末を熱電素子の端面あるいは電
極の熱電素子と当接する部分に塗布することで配置してもよい。
【0041】
図2に示す熱電変換モジュールを製造する方法としては、例えば、電極10を吸引吸着
できる電極整列治具(図示せず)、熱電素子20を吸引吸着できる素子整列治具(図示せ
ず)を用いて、電極10および熱電素子20を所定の形状に整列する。次に、下部電極上
に金属箔33を設置し、位置決め治具等を用いて熱電素子を金属箔31上に設置する。次
に、整列された熱電素子上に位置決め治具(図示せず)等を用いて金属箔31を設置する
。その後、吸引吸着整列治具(図示せず)および位置決め治具(図示せず)等を用いて上
部電極を設置する。そして、上部電極に錘(図示せず)等を載置し、錘等の荷重により加
圧しながら加熱して、接合する。
【0042】
上記のようにして熱電変換モジュールを製造することにより、上記のアルミニウムとシ
リコンとゲルマニウムとを含む合金層とシリコン、ゲルマニウムを主成分として少量のア
ルミニウムを含む合金層とを含む中間層30を得ることができる。
図4Aは、12.5μ
m厚のアルミニウム箔を金属箔31として設置した場合の接合部断面のSEM像、
図4B
の(a)〜(e)はEDX(Energy Dispersive X-ray spectroscopy)分析装置による元
素マッピング像である。
図4Aは接合部断面SEM像、
図4Bの(a)は全元素について
の面分布を示す図、(b)はゲルマニウム(Ge)の面分布を示す図、(c)はアルミニ
ウム(Al)の面分布を示す図、(d)はシリコン(Si)の面分布を示す図、(e)は
モリブデン(Mo)の面分布を示す図である。この結果から、
図4Aに示したSEM像内
で、シリコン−ゲルマニウムで構成される熱電素子20側から、シリコン、ゲルマニウム
、アルミニウムを含有する合金層301、シリコン、ゲルマニウムと10質量%以下の少
量のアルミニウムを含む合金層302の2層からなる中間層30が形成されていることが
わかる。
【0043】
一方、設置するアルミニウム箔31の厚さが100μm程度以上の場合は、溶融するア
ルミニウムの体積が大きいため、接合部には中間層30’として、
図5に模式的に示した
ように、シリコン−ゲルマニウムで構成される熱電素子20側には、シリコン、ゲルマニ
ウム、アルミニウムを含有する合金層303、モリブデン電極10の側には10質量%以
下のシリコンおよびゲルマニウムを含むアルミニウムリッチな合金層304が形成される
。
【0044】
図6A及び
図6Bは、
図3A乃至
図3Cで説明した金属箔31に替えて金属層32を設
けた場合の製造方法を示す概略説明図である。
図6A及び
図6Bにおいて、10は電極、
20は熱電素子、32は金属層である。電極10は
図3A乃至
図3Cで説明したのと同様
にモリブデンを主成分とする金属、熱電素子20は、シリコン−ゲルマニウムを主成分と
する半導体である。金属層32は、蒸着法、スパッタ法、溶射法、エアロゾルデポジショ
ン法等の膜生成技術により、熱電素子20または電極10上に形成されたアルミニウム層
である。
【0045】
図6Aに示すように熱電素子20側または、
図6Bに示すように電極10側に蒸着法、
スパッタ法、溶射法、エアロゾルデポジション法等の膜生成技術により、熱電素子20ま
たは電極10上にアルミニウム層を形成することができる。
図2に示した熱電変換モジュ
ール単体1を製造する方法としては、
図3A乃至
図3Cを用いて説明した熱電変換モジュ
ール単体1を製造する方法と同様に、電極10を吸引吸着できる電極整列治具(図示せず
)、熱電素子20を吸引吸着できる素子整列治具(図示せず)を用いて接合を実施するが
、箔を設置する工程が省略されるため、製造プロセスをより簡易にすることができる。
【0046】
以上のように本実施例によれば、様々な効果があり、接合信頼性の高い接合構造を有す
る熱電変換モジュールを実現できる。
【0047】
なお、上記の中間層30は、熱電素子20の両端に形成してもよい。また、熱電変換モ
ジュールとして使用される際に高温側に配置される電極10と熱電素子20の間のみに形
成してもよい。この場合、低温側に配置される電極側は、はんだ接合や加圧、圧着等の従
来から行われている技術により接合することができる。
【0048】
上記は熱電素子20をシリコン−ゲルマニウム熱電素子の例で説明したが、マグネシウ
ムシリサイド熱電素子、マンガンシリサイド熱電素子等他の熱電素子を使用することもで
きる。すなわち、これらの熱電素子はいずれも成分としてシリコンを含有するものであり
、上記のアルミニウムとシリコンの液相による接合が可能なものである。
【0049】
ここで、熱電素子20としてマグネシウムシリサイド熱電素子を用いた場合には、得ら
れる中間層30は、シリコン、マグネシウム、アルミニウムを含む合金層と、シリコン、
マグネシウムを主成分とする合金層を含む層構造とすることができる。
【0050】
このような中間層30を得るため、上記製造方法のアルミニウム箔31やアルミニウム
層32に替えて、アルミニウム中にシリコン、マグネシウム等を含有したアルミニウム合
金箔やアルミニウム中にシリコン、マグネシウム等を含有したアルミニウム合金層を用い
てもよい。さらに、上記製造方法のアルミニウム粉末に替えてアルミニウム中にシリコン
、マグネシウム等を含有したアルミニウム合金粉末を用いてもよい。
【0051】
ただし、熱電素子としてマグネシウムシリサイド熱電素子を用いた場合には、アルミニ
ウムとマグネシウムの間で437℃で共晶液相が発生することから、接合温度は440℃
以上とする。また、マグネシウムは高温でベーパし易いため、マグネシウムのベーパを避
けるため接合温度上限を800℃とする。その他の製造条件については、上記のシリコン
−ゲルマニウム熱電素子の場合と同様である。
【0052】
また、熱電素子20としてマンガンシリサイド熱電素子を用いた場合には、得られる中
間層30は、シリコン、マンガン、アルミニウムを含む合金層と、シリコン、マンガンを
主成分とする合金層を含む層構造とすることができる。
【0053】
このような中間層30を得るため、上記製造方法のアルミニウム箔31やアルミニウム
層32に替えて、アルミニウム中にシリコン、マンガン等を含有したアルミニウム合金箔
やアルミニウム中にシリコン、マンガン等を含有したアルミニウム合金層を用いてもよい
。さらに、上記製造方法のアルミニウム粉末に替えてアルミニウム中にシリコン、マンガ
ン等を含有したアルミニウム合金粉末を用いてもよい。
【0054】
熱電素子としてマグネシウムシリサイド熱電素子を用いた場合の各製造条件は、上記の
シリコン−ゲルマニウム熱電素子の場合と同様である。
【0055】
上記の第一の実施形態の熱電変換モジュールにおいては、中間層30の形成のために熱
電素子20からの成分元素(シリコン、ゲルマニウム)の拡散およびアルミニウムの熱電
素子20中への拡散を利用した接合を実施している。熱電変換モジュール稼働時の熱によ
り、アルミニウムが更に熱電素子20中へ拡散するが、使用する熱電素子20の体積に対
して、アルミニウム箔31の体積が十分小さければ、出力低下や変換効率の低下は僅かな
ものとなる。具体的には熱電素子20中に含まれるリン、アンチモン、ボロン、ガリウム
、亜鉛等の不純物の含有率よりもアルミニウムの含有率が十分小さければ、アルミニウム
が熱電素子20中へ拡散することによる出力低下や変換効率の低下は僅かなものとなる。
【0056】
また、本発明の第二の実施形態の熱電変換モジュールは、熱電素子の出力低下や変換効
率の低下を防止するため、熱電素子からの成分元素の拡散を防止するバリア層を熱電素子
と中間層の間に設置したものである。
【0057】
図7は本発明の第二の実施形態の熱電変換モジュールの概略断面図である。
図7におい
て、800は熱電変換モジュール、810は電極、821はn型熱電素子、822はp型
熱電素子、830は中間層、833はバリア層である。
【0058】
第二の実施形態の熱電変換モジュールで用いたn型熱電素子821とp型熱電素子82
2(以下、これらを総称して熱電素子820と記す)は、シリコンとゲルマニウム粉末を
パルス放電法やホットプレス法等により焼結したシリコン−ゲルマニウム熱電素子、マグ
ネシウムとシリコン粉末をパルス放電法やホットプレス法等により焼結したマグネシウム
シリサイド熱電素子、マンガンとシリコン粉末をパルス放電法やホットプレス法等により
焼結したマンガンシリサイド熱電素子等であればよい。第二の実施形態では、第一の実施
形態と同様に熱電素子820をシリコン−ゲルマニウム熱電素子として説明する。
【0059】
第二の実施形態の熱電変換モジュールで用いた電極810は少なくともモリブデン、又
は銅、タングステン、チタン、ニッケルの金属単体、又はそれらのうちの何れかを含む金
属の合金、または、それらの単体金属又は合金を重ねた複数層の構成からなるものであれ
ばよい。第二の実施形態では、第一の実施形態と同様に電極810をモリブデン電極とし
て説明する。
【0060】
第二の実施形態の熱電変換モジュールで形成された中間層830は、アルミニウムまた
は、アルミニウムと液相を発生する成分を含むアルミニウム合金層であればよい。アルミ
ニウムと液相を発生する成分としては、シリコン、マグネシウム、ゲルマニウム等が挙げ
られる。第二の実施形態では、中間層830をシリコンとアルミニウムを含む合金層とし
て説明する。
【0061】
第二の実施形態で形成されたバリア層833はタングステン、チタン、クロム、ニッケ
ル、パラジウム、モリブデン等であればよい。
【0062】
図8A乃至
図8Cは、
図7に示す第二の実施形態の熱電変換モジュール800の製造方
法を示す概略説明図である。
図8A乃至
図8Cにおいて810はモリブデン電極、820
はシリコン−ゲルマニウム熱電素子、830はシリコン、アルミニウムを含む中間層、8
31は金属箔、833はバリア層である。
【0063】
金属箔831は、アルミニウムまたは、アルミニウム中にシリコン等の共晶液相発生元
素を含有したアルミニウム合金箔、または、アルミニウム粉末、アルミニウム中にシリコ
ン等の共晶液相発生元素を含有した粉末からなる箔粉等であればよい。以下、金属箔83
1をアルミニウム中に11.6質量%のシリコンを含有したアルミニウム合金箔として説
明する。
【0064】
バリア層833は、熱電素子820から熱電素子を構成する成分が中間層830等に拡
散することを防止するため、熱電素子820と中間層830の間に設置される。バリア層
833は、タングステン、チタン、ニッケル、パラジウム、モリブデンまたはこれらの金
属のうちの何れかを含む合金より成る金属層であればよい。
【0065】
図8Aのように、バリア層833を蒸着法、スパッタ法、溶射法、エアロゾルデポジシ
ョン等により、シリコン−ゲルマニウム熱電素子上にメタライズする。バリア層833が
形成されたシリコン−ゲルマニウム熱電素子とモリブデン電極の間に中間層形成部材であ
る金属箔831を設置する。その後、
図8Bに示すようにシリコン−ゲルマニウム熱電素
子上部より、第一の実施形態で説明した条件と同じ条件で加圧しながら、金属箔831と
して設置されたアルミニウム−シリコン合金が溶融する温度に加熱する。接合雰囲気は、
真空雰囲気、窒素雰囲気、窒素水素混合雰囲気等の非酸化性雰囲気であればよい。
【0066】
上記の第一の実施形態と異なり、第二の実施形態では、熱電素子820から熱電素子8
20の成分元素(シリコンおよびゲルマニウム)の中間形成部材である金属箔831への
拡散および金属箔831の成分元素(アルミニウム)の熱電素子820への拡散を、バリ
ア層833が防止するが、中間層形成部材である金属箔831が予めシリコンを含有した
アルミニウム合金として構成されているため、第一の実施形態の場合と同様に、アルミニ
ウムとシリコンの共晶液相発生温度(577℃)で溶融する。その後、室温まで冷却する
ことで
図8Cに示すように、バリア層833が形成されたシリコン−ゲルマニウム熱電素
子とモリブデン電極の間にアルミニウムとシリコンを含有する中間層830が形成される
。この中間層830は、上記の第一実施形態と同様に、接合強度が高く、かつ、アルミニ
ウム、シリコンを含有するため耐酸化性に優れており、大気中での高温環境下においても
、接合部の劣化が生じ難いものである。また、中間層30にシリコンを含有しているため
、中間層30の熱膨張率をシリコン−ゲルマニウムにより構成される熱電素子20とモリ
ブデン電極10の熱膨張率に近づけることができ、熱電変換モジュール100の稼動時に
温度差に起因して生じる素子および接合部の熱応力を減少させる作用を有する。これらの
作用により、アルミニウムとシリコンを含有する合金が形成される中間層30は、高い接
合信頼性を長期に亘り発揮する。
【0067】
図7に示した熱電変換モジュール800を製造する方法としては、第一の実施形態の熱
電変換モジュールを製造する方法と同様に、例えば、電極810を吸引吸着できる電極整
列治具(図示せず)、熱電素子820を吸引吸着できる素子整列治具(図示せず)、位置
決め治具(図示せず)を用いて整列して接合する。
【0068】
金属箔831としてアルミニウム中にシリコン等の共晶液相発生元素を含有したアルミ
ニウム合金箔を使用することで、従来のろう材よりも接合強度が向上する。また、熱電素
子820であるシリコン−ゲルマニウム熱電素子上にバリア層833を設けることにより
、素子中に金属箔831の成分が拡散することを防止し、熱電変換モジュールの変換効率
を高めることができる。
【0069】
第二の実施形態の熱電変換モジュールにおいて、中間層形成部材である金属箔831と
してアルミニウム箔等を使用することができる。この場合、加熱温度はアルミニウムの融
点以上として行えばよく、冷却した後の中間層830は、アルミニウムから構成される。
このアルミニウムからなる中間層830は、溶融して形成したことから接合強度が高く、
かつ、耐酸化性に優れており、大気中での高温環境下においても、接合部の劣化が生じ難
いものである。また、中間層30にシリコンを含有しているため、中間層30の熱膨張率
をシリコン−ゲルマニウムにより構成される熱電素子20とモリブデン電極10の熱膨張
率に近づけることができ、熱電変換モジュール100の稼動時に温度差に起因して生じる
素子および接合部の熱応力を減少させる作用を有する。これらの作用により、アルミニウ
ムからなる中間層30は、高い接合信頼性を長期に亘り発揮する。
【0070】
上記の第一の実施形態においては、熱電素子からの熱電素子の成分元素の中間層形成部
材への拡散を利用して中間層形成部材の溶融するため、熱電素子としてアルミニウムと共
晶液相を発生するシリコンを含有するものが必須であったが、第二の実施形態では、バリ
ア層により熱電素子からの熱電素子の成分元素の中間層形成部材への拡散が防止されるこ
とから、熱電素子としてシリコンを含有するものに限定されず、従来から使用されている
種々の熱電素子を利用することができる。
【実施例1】
【0071】
熱電素子20としてシリコン−ゲルマニウム熱電素子、マグネシウムシリサイド熱電素
子、マンガンシリサイド熱電素子を用意し、縦3.7mm、横3.7mm、高さ4.0m
mの四角柱とした。また、電極としてシリコン−ゲルマニウム熱電素子にはモリブデン電
極、マグネシウムシリサイド熱電素子、マンガンシリサイド熱電素子にはニッケル電極を
用意し、前記熱電素子20のサイズに合わせて縦4.5mm、横10mm、厚さ1mmと
した。そして、金属箔として表1に示す厚さのアルミニウム箔を用意し、
図3Aのように
、シリコン−ゲルマニウム熱電素子とモリブデン電極又はマグネシウムシリサイド熱電素
子とニッケル電極又はマンガンシリサイドとニッケル電極の間にアルミニウム箔を設置し
た。その後、
図3Bのように、熱電素子20の上部より、表1に示す加圧圧力で加圧しな
がら、表1に示す温度および保持時間で表1に示す雰囲気中で加熱し、その後、室温まで
冷却することで
図3Cの中間層30を形成した熱電変換モジュールを作製した。
【0072】
表1にこれらの熱電変換モジュールの接合実験の結果を併せて示す。表1の接合状態の
評価について、×は接合界面がほぼ未接状態であるもの、△は接合界面の一部が未接状態
であるもの、○は良好な接合状態であるものとした。
【0073】
表1の試料番号01〜03はシリコン−ゲルマニウム熱電素子とモリブデン電極を使用
した場合の接合状態に及ぼす接合雰囲気の影響について示している。アルミニウム箔によ
るシリコン−ゲルマニウム熱電素子とモリブデン電極の接合は、真空雰囲気、窒素雰囲気
、窒素水素混合雰囲気(「窒素+水素」と記載)いずれの場合についても良好な接合状態
を達成することができる。
【0074】
表1の試料番号04〜07はシリコン−ゲルマニウム熱電素子とモリブデン電極を使用
した場合の接合状態に及ぼす保持温度の影響について示している。アルミニウム箔による
シリコン−ゲルマニウム熱電素子とモリブデン電極の接合は、試料番号07の保持温度が
550℃の場合では、シリコンとアルミニウムの共晶液相が生じないため、接合不良とな
る。そのため、保持温度は共晶液相発生温度以上が望ましい。接合温度が630℃以上で
ある試料番号04〜06では、未接領域も少なく、良好な接合状態を達成することができ
る。
【0075】
【表1】
【0076】
表1の試料番号05、08、09はシリコン−ゲルマニウム熱電素子とモリブデン電極
を使用した場合の接合状態に及ぼす加圧の影響について示している。
前記試料より、加圧が6.1〜18.4kPaの範囲で良好な接合を達成することができ
る。
【0077】
表1の試料番号08、10、11はシリコン−ゲルマニウム熱電素子とモリブデン電極
を使用した場合の接合状態に及ぼすアルミニウム箔厚の影響について示している。前記試
料より、アルミニウム箔厚が12.5〜110μmいずれの場合においても良好な接合状
態を達成することができる。また、アルミニウム箔厚が12.5μmの試料番号11では
、中間層30として、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウムを含有する合金層301、
シリコン、ゲルマニウムと10質量%以下のアルミニウムを含む合金層302からなる中
間層30が形成される。アルミニウム箔厚が110μmの試料では、シリコン、ゲルマニ
ウム、アルミニウムを含有する合金層303、10質量%以下のシリコンおよびゲルマニ
ウムを含むアルミニウムリッチな層を含む合金層304からなる中間層30’が形成され
る。
【0078】
表1の試料番号13〜16はマグネシウムシリサイド熱電素子とニッケル電極を使用し
た場合の接合状態に及ぼすアルミニウム箔厚の影響について示している。前記試料よりア
ルミニウム箔厚が12.5〜110μmいずれの場合においても良好な接合状態を達成す
ることができる。
【0079】
表1の試料番号17〜20はマンガンシリサイド熱電素子とニッケル電極を使用した場
合の接合状態に及ぼすアルミニウム箔厚の影響について示している。前記試料よりアルミ
ニウム箔厚が12.5〜110μmいずれの場合においても良好な接合状態を達成するこ
とができる。
【0080】
図9は、第一の実施例の接合強度試験の結果として、シリコン−ゲルマニウム高温放置
時間とシェア強度との関係を表すグラフを示す。
図9の●は従来のろう材で接続した場合
のデータである。
【0081】
図9より、アルミニウム箔によるシリコン−ゲルマニウム熱電素子とモリブデン電極の
初期接合強度は、従来のろう材による接合と比較して、二倍以上の強度を有しており、接
合信頼性が高い。さらに、従来のろう材では550℃5時間の大気雰囲気中での高温放置
後で接合強度を保つことができないのに対し、アルミニウム箔によるシリコン−ゲルマニ
ウム熱電素子とモリブデン電極の接合では、550℃5時間の大気雰囲気中での高温放置
後も従来のろう材の初期接合強度よりも高い強度を維持しており、耐熱性にも優れている
。
【0082】
アルミニウム箔によるシリコン−ゲルマニウム熱電素子とモリブデン電極の接合では、
金属結合となることで、接合強度が向上する。また、アルミニウム箔厚が12.5μmで
ある試料番号11では、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウムを含有する合金層301
、シリコン、ゲルマニウムと10質量%以下のアルミニウムを含む合金層302からなる
中間層30が高温放置後についても、組織が安定しているため、初期接合強度と同等の強
度を有することができる。
【0083】
また、アルミニウム箔31の厚を50μm又は110μmにした場合では、大気雰囲気
中での550℃5時間高温放置後にアルミニウムリッチな層において、拡散が進行し組織
変化を生じるため、初期強度と比較して20%程度減少するが、大気雰囲気中での550
℃5時間後の接合強度は従来のろう材の初期接合強度よりも高いため、いずれのアルミニ
ウム箔厚でも、信頼性の高い接合部を形成することができる。
【実施例2】
【0084】
図7に示した構成の熱電変換モジュール単体800を、実施例1と同様な形状の熱電素
子820とモリブデン電極810とを用い、実施例1と同様な条件で作成したものを用い
て、表1に示した実施例1と同様な条件で加圧、加熱して熱電素子820とモリブデン電
極810とを接合した。
【0085】
その結果、表1に示した実施例1の場合と同様な結果が得られた。
【0086】
以上のように本実施例によれば、様々な効果があり、接合信頼性の高い接合構造を有す
る熱電変換モジュールを実現できる。