(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
センシング基板の一面にフレキシブル配線基板の一端を接続すると共に、該センシング基板の他面に板バネを取り付け、前記フレキシブル配線基板と前記板バネとの間隙の前記センシング基板から離れた所定の位置に樹脂を配して、前記フレキシブル配線基板と前記板バネとを接続する、磁気センサの製造方法であって、
前記フレキシブル配線基板と前記板バネとを治具により仮固定して、前記フレキシブル配線基板と前記板バネとの間に所定の間隔の間隙を形成する工程と、
前記板バネを拡張具により弾性変形させて前記間隙を拡張すると共に、前記間隙の前記センシング基板から離れた所定の位置に樹脂注入具を上方に移動させつつ液状樹脂を注入して該液状樹脂を前記所定の間隔以上の高さにする工程と、
前記拡張具を前記間隙から離して前記弾性変形を回復させ、前記フレキシブル配線基板と前記板バネとの間に前記液状樹脂を架橋させる工程と、
前記液状樹脂を硬化させて、前記フレキシブル配線基板と前記板バネとを樹脂で接続する工程とを有することを特徴とする磁気センサの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された磁気センサでは、フレキシブル配線基板と板バネとの間隙の、センシング基板から離れた所定の位置に樹脂を配して、両部材を樹脂で接続している。また、上記間隙は狭い間隔であるので、上記間隙に樹脂を配する際、液状樹脂を上記間隙に注入し、硬化させることが有効になる。しかし、液状樹脂は注入の際に濡れ広がり易く、樹脂が設計上定めた所定の位置からはみ出してしまうことがある。
【0006】
図6は、樹脂が設計上定めた所定の位置からはみ出してしまった際に生じる問題点の一例を説明する図である。
図6の磁気センサ60では、センシング基板61の表面にフレキシブル配線基板62の一端を接続し、裏面に変形部63aと支持部63bを有する板バネ63を取り付けていて、両部材の間隙のセンシング部61から離れた所定の位置に樹脂64を配し、両部材を樹脂で接続している。そして、板バネ63の変形部63aを弾性変形させることにより、センシング基板61が移動できるようにしている。
【0007】
図6(a)は、樹脂64を設計上定めた所定の位置に配した磁気センサ60を示したものである。センシング基板61は、不図示の磁気媒体に押し当てられると、太矢印の方向に力を受け、変形部63aが弾性変形することにより、太矢印と略平行の細矢印の方向に移動する。これは、変形部63aの設計に起因するものであり、樹脂64を所定の位置に配したときに、センシング部61が磁気媒体の押し当て方向と略平行に移動するよう、変形部63aを設計している為である。
【0008】
一方、
図6(b)は、樹脂64が設計上定めた所定の位置からはみ出てしまった磁気センサ60を示したものである。このように樹脂64を配すると、センシング基板61を支持するフレキシブル配線基板62の支点位置が変わってしまい、センシング基板61は、太矢印の力に対して平行に移動しなくなり、例えば、細矢印のように回転移動してしまうことがある。このようにセンシング基板61が移動すると、磁気媒体上におけるセンシング基板61の摺動姿勢が不安定になることがあり、磁気センサ60の出力信号が不安定になる可能性がある。
【0009】
このような濡れ広がりは、液体樹脂とフレキシブル基板と板バネとの濡れ性に依存する。厄介なことに濡れ性は、対象の表面状態に影響されるため、制御が難しい。
また、このような液状樹脂の濡れ広がり等を抑制するために、上記間隙に注入する液状樹脂の量を少なくすることが考えられる。しかし、液状樹脂の量を少なくすると、樹脂の高さが低くなり、フレキシブル配線基板62と板バネ63が接続できなくなる可能性がある。
【0010】
そこで本発明では、フレキシブル配線基板と板バネとの間隙に注入する液状樹脂の濡れ広がりを抑制できる磁気センサの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の磁気センサの製造方法は、センシング基板の一面にフレキシブル配線基板の一端を接続すると共に、該センシング基板の他面に板バネを取り付け、前記フレキシブル配線基板と前記板バネとの間隙の前記センシング基板から離れた所定の位置に樹脂を配して、前記フレキシブル配線基板と前記板バネとを接続する、磁気センサの製造方法であって、前記フレキシブル配線基板と前記板バネとを治具により仮固定して、前記フレキシブル配線基板と前記板バネとの間に所定の間隔の間隙を形成する工程と、前記板バネを拡張具により弾性変形させて前記間隙を拡張すると共に、前記間隙の前記センシング基板から離れた所定の位置に樹脂注入具を上方に移動させつつ液状樹脂を注入して該液状樹脂を前記所定の間隔以上の高さにする工程と、前記拡張具を前記間隙から離して前記弾性変形を回復させ、前記フレキシブル配線基板と前記板バネとの間に前記液状樹脂を架橋させる工程と、前記液状樹脂を硬化させて、前記フレキシブル配線基板と前記板バネとを樹脂で接続する工程とを有する。
【0012】
また、本発明の磁気センサの製造方法では、前記樹脂注入具を、前記拡張具と兼用することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の磁気センサの製造方法では、フレキシブル配線基板と板バネとの間隙に注入する液状樹脂の濡れ広がりを、表面張力の作用を利用して抑制し、樹脂を設計上定めた所定の位置に精度良く配することができる。また、板バネを仮固定位置から弾性変形させることにより、フレキシブル配線基板と板バネとの間隙を、予め仮固定した間隔にして樹脂硬化させることができるので、上記間隙を設計上定めた所定の間隔にしてフレキシブル配線基板と板バネとを確実に樹脂で接続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の磁気センサの製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明により製造する磁気センサの一例を示す模式図であり、
図1(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は分解斜視図である。
磁気センサ1は、センシング基板2と、フレキシブル配線基板3と、板バネ4と、樹脂5、6を備えている。
センシング基板2は、支持基板2bにセンサ基板2aを搭載したものであり、表面に、フレキシブル配線基板3の一端を接続し、底面に板バネ4が取付けている。
板バネ4は、支持基板2bを取り付ける載置面を有する台座部4cと、台座部4cの両側に一端が接続するミアンダ形状を有する一対の変形部4aと、一対の変形部4aのミアンダ形状の他端が接続するとともに、他の機器との接続部となる支持部4bを有している。
フレキシブル配線基板3と板バネ4との間隙のセンシング基板2から離れた所定の位置には、樹脂5を配し、フレキシブル配線基板3と板バネ4の支持部4bとを樹脂接続している。また、センシング基板2とフレキシブル配線基板3の接続部上には、接続部を保護する樹脂6を配している。
【0017】
次に、本実施形態の製造方法について説明する。
まず本実施形態では、センシング基板2を構成する支持基板2bの表面に、フレキシブル配線基板3の一端を接続し、支持基板2bの裏面に、板バネ4を取り付ける。支持基板2bとフレキシブル配線基板3との接続は、両部材の電気的接続と兼ねることができ、接続端子間の半田接合により接続することができる。また、板バネ4をセンシング基板2に取り付ける際、センシング基板2の裏面は台座部4cに樹脂或いは半田等を用いて接続することができる。
また、フレキシブル配線基板3と板バネ4を接続したセンシング基板2(以降、中間部品1’と称す)は、一定の厚みの支持基板2bを有する為、フレキシブル配線基板3と板バネ4がセンシング基板2から離れる方向に延び、両部材間に間隙が形成される。
【0018】
次に、中間部品1’を、専用の治具にセットし、フレキシブル配線基板3と板バネ4とをそれぞれ仮固定する。
図2は、中間部品1’を仮固定する治具7の側面模式図であり、
図3は、中間部品1’をセットした状態の上面模式図である。治具7は、上治具7aと下治具7bを備え、両治具間に中間部品1’を配することができる。そして、中間部品1’を配した両治具を、不図示の押し付け具により押し付けることで、フレキシブル配線基板3と板バネ4とを仮固定することができ、両部材間を設計上定めた所定の間隔にすることができる。
【0019】
また、
図3に示すように、治具7は、板バネ4の支持部4bを上治具7aと下治具7bの間に挟んで仮固定すると共に、変形部4aの端部(図のA部)も両治具間に挟んで仮固定する。しかし、変形部4aのA部と台座部4cを接続するバネは、A部を支点に弾性変形することができ、台座部4cに接続するセンシング基板2を、僅か上方に移動させることができる。これにより、フレキシブル配線基板3と板バネ4との間隙を、所定の間隔から拡張することができ、また弾性により元の間隔に戻すことができる。
【0020】
次に、
図4(a)〜(c)を用いて、フレキシブル配線基板3と板バネ4(支持部4b)との間に液状樹脂を注入し、両部材を接続する手順について説明する。なお、
図4(a)〜(c)は、中間部品1’を仮固定した治具7の断面模式図を示したものであり、各項目の左の図が、
図3のB−B断面の模式図を示し、各項目右の図が、
図3のC−C断面の模式図を示している。
【0021】
まず、
図4(a)において、治具7の仮固定により、フレキシブル配線基板3と板バネ4との間隙を所定の間隔にした中間部品1’に対し、樹脂注入具8と拡張具9を配し、樹脂注入具8の先端から上記間隙に対して液状樹脂Rの注入を開始する。
樹脂注入具8は、先端からフレキシブル配線基板3と板バネ4との間隙に液状樹脂Rを少量づつ注入可能なものであり、例えば、中空の金属製ニードル等を用いることができる。また、拡張具9には、上記間隙に挿入可能な棒状或いは板状の部材を用いることができる。樹脂注入具8と拡張具9は、不図示の駆動機構に接続して上方に移動可能であり、拡張具9を上記間隙に挿入して、上記間隙を拡張することができる。
また、液状樹脂Rには、熱硬化性樹脂や、紫外線硬化性の樹脂を用いることができ、エポキシ系やアクリル系の樹脂等を用いることができる。
【0022】
次に、
図4(b)において、フレキシブル配線基板3と板バネ4との間隙に挿入した拡張具9を上方に移動させると共に、樹脂注入具8を上方に移動させつつ、液状樹脂Rの注入を継続する。
拡張具9を上方に移動させると、板バネ4の変形部4aのバネの一部が、A部を支点にして弾性変形するので、センシング部2が、板バネ4の台座部4cと共に、図のように傾斜し、フレキシブル配線基板3と板バネ4との間隙を、所定の間隔よりも拡張することができる。その状態にして、上記間隙のセンシング基板2から離れた所定の位置に樹脂注入具8を上方に移動させつつ液状樹脂Rを注入して液状樹脂Rを上記所定の間隔以上の高さにする。このように液状樹脂Rを注入すると、表面張力の作用により、液状樹脂Rの表面を上方に引き上げつつ液状樹脂Rを注入することができ、液状樹脂Rが板バネ4上に濡れ広がることを抑制することができる。
【0023】
最後に、
図4(c)において、樹脂注入具8からの液状樹脂Rの吐出を止めると共に、樹脂注入具8と拡張具9を、フレキシブル配線基板3と板バネ4との間隙から離すと、変形部4cのバネの弾性により、拡張した両部材間隙が、仮固定した所定の間隔に回復する。その際、液状樹脂Rは、両部材の所定の間隔以上の高さに注入されているので、回復したフレキシブル配線基板3と確実に接触して、フレキシブル配線基板3と板バネ4との間に液状樹脂Rの柱を形成し、上記間隙を所定の間隔にすることができる。
また、液状樹脂Rは、表面張力の作用により、フレキシブル配線基板3と板バネ4のそれぞれの表面に濡れ広がることが抑制され、所定の位置に配されるようになる。
【0024】
上記液状樹脂Rの柱を形成した後、
図1に示した樹脂6として液状樹脂R’(不図示)を塗布する。
液状樹脂R、及び液状樹脂R’は、液状樹脂の種類に応じた通常の方法で硬化させればよく、熱硬化性樹脂であれば、加熱により硬化させ、紫外線硬化樹脂であれば、紫外線照射により硬化させればよい。液状樹脂R、及び液状樹脂R’を同じ種類の樹脂にすれば、同時に硬化させることができるのでより好ましい。
また、液状樹脂Rにいずれの種類の液状樹脂を用いる場合でも、中間部品1’を治具7にセットしたまま液状樹脂Rを硬化し、フレキシブル配線基板3と板バネ4との間隙を、所定の間隔にしたまま液状樹脂Rを硬化するようにする。
【0025】
液状樹脂R、及び液状樹脂R’を硬化した後、不図示の押さえつけ具による治具7aと下治具7bの押さえつけを解除する。これにより、中間部品1’のフレキシブル配線基板3と板バネ4とが樹脂で接続された磁気センサ1が得られる。
【0026】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、
図5を参照しながら説明する。なお、図における第1実施形態と同じ構成については、
図5と同じ符号を付している。また、本実施形態は、中間部品1’を、専用の治具7にセットし、フレキシブル配線基板3と板バネ4とをそれぞれ仮固定する点は、第1実施形態と同じであり、以下の実施形態の説明では、フレキシブル配線基板3と板バネ4(支持部4b)との間に樹脂を注入し、両部材を接続する手順についてのみ説明する。
【0027】
まず、
図5(a)において、治具7の仮固定により、フレキシブル配線基板3と板バネ4との間隙を所定の間隔にした中間部品1’に対し、樹脂注入具8を配し、樹脂注入具8の先端から上記間隙に対して液状樹脂Rの注入を開始する。
その際、樹脂注入具8は、上記間隙に挿入するようにして液状樹脂Rを注入し、樹脂注入具8自身により、上記間隙を拡張できるようにする。
【0028】
次に、
図5(b)において、フレキシブル配線基板3と板バネ4との間隙に挿入した樹脂注入具8を上方に移動させつつ、液状樹脂Rの注入を継続する。
樹脂注入具8を上方に移動させると、板バネ4の変形部4aのバネの一部が、A部を支点にして弾性変形するので、センシング部2が、板バネ4の台座部4cと共に、図のように傾斜し、フレキシブル配線基板3と板バネ4との間隙を、所定の間隔よりも拡張することができる。その状態にして、樹脂注入具8を上方に移動させつつ上記間隙に液状樹脂Rを注入していくことにより液状樹脂Rを上記所定の間隔以上の高さにまで引き上げる。このように液状樹脂Rを注入すると、表面張力の作用により、液状樹脂Rの表面を上方に引き上げつつ液状樹脂Rを注入することができ、液状樹脂Rを注入する際の濡れ広がりを抑制することができる。
【0029】
最後に、
図5(c)において、樹脂注入具8からの液状樹脂Rの吐出を止めると共に、樹脂注入具8を、フレキシブル配線基板3と板バネ4との間隙から離すと、変形部4cのバネの弾性により、拡張した両部材間隙が、仮固定した所定の間隔に回復する。その際、液状樹脂Rは、両部材の所定の間隔以上の高さに注入されているので、回復したフレキシブル配線基板3と確実に接触して、フレキシブル配線基板3と板バネ4との間に液状樹脂Rの柱を形成し、上記間隙を所定の間隔にすることができる。
【0030】
上記液状樹脂Rの柱を形成した後、
図1に示した樹脂6として液状樹脂R’を塗布し、液状樹脂Rと共に硬化させる。
液状樹脂R、及び液状樹脂R’を硬化した後、不図示の押さえつけ具による治具7aと下治具7bの押さえつけを解除する。これにより、中間部品1’のフレキシブル配線基板3と板バネ4とが樹脂接続した、磁気センサ1が得られる。
【0031】
上記実施形態は、フレキシブル配線基板と板バネとの間隙を拡張するのに、第1実施形態における拡張具を用いずに樹脂注入具を用いるものであり、樹脂注入具と拡張具の動作を気にせずに液状樹脂の注入を行うことができる点において、第1実施形態より好ましいものである。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでは無い。
例えば、本実施形態では、中間部品を仮固定する治具に、板バネの変形部の一部を挟み込んで仮固定する治具を用いていたが、板バネの支持部のみ仮固定して、板バネの変形部を自由に変形させることができるような、治具を用いて中間部品を仮固定してもよい。
【0033】
また、本発明の第1実施形態では、フレキシブル配線基板と板バネとの間隙に液状樹脂を注入した後、拡張具を間隙から離すようにしているが、拡張具を上記間隙内に留めるようにして、上記間隙を所定の間隙に戻すようにしても良い。