特許第6160997号(P6160997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧 ▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許6160997-循環流動層ガス化炉 図000002
  • 特許6160997-循環流動層ガス化炉 図000003
  • 特許6160997-循環流動層ガス化炉 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160997
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】循環流動層ガス化炉
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/56 20060101AFI20170703BHJP
   C10J 3/54 20060101ALI20170703BHJP
   F23G 5/30 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   C10J3/56
   C10J3/54 M
   F23G5/30 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-185905(P2013-185905)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-52068(P2015-52068A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 高広
(72)【発明者】
【氏名】安田 肇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善三
(72)【発明者】
【氏名】須田 俊之
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−215888(JP,A)
【文献】 特開2011−26489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/54
C10J 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動媒体の供給により燃料を熱分解して熱分解ガスとチャーを生成する熱分解炉と、該熱分解炉からのチャー及び流動媒体を導入してチャーをガス化することによりガス化ガスとチャー残渣を生成するチャーガス化炉と、該チャーガス化炉からのチャー及び流動媒体を導入してチャーを燃焼することで加熱した流動媒体を前記熱分解炉に供給するチャー残渣燃焼循環装置と、前記熱分解炉からの熱分解ガスを導入すると共にタール吸収剤を供給して前記熱分解ガスのタールをタール吸収剤で吸収するタール吸収炉と、該タール吸収炉でタールを吸収することによりコークが担持されたタール吸収剤を導入しコークをガス化してガス化ガスとコーク残渣を生成するコークガス化炉と、該コークガス化炉からのコーク残渣を含むタール吸収剤を導入してコーク残渣を燃焼することで加熱・再生したタール吸収剤を前記タール吸収炉に供給する吸収剤再生循環装置とを有する循環流動層ガス化炉であって、
前記熱分解炉の上部にタール吸収炉を二段重ねに備え、前記熱分解炉の外周を包囲するチャーガス化炉の上部に前記タール吸収炉の外周を包囲するコークガス化炉を二段重ねに備えることで二重構造の反応装置を構成した
ことを特徴とする循環流動層ガス化炉。
【請求項2】
前記熱分解炉に燃料を供給する燃料供給管は、前記タール吸収炉を上部から貫通して前記熱分解炉に延びていることを特徴とする請求項1に記載の循環流動層ガス化炉。
【請求項3】
前記熱分解炉のチャー及び流動媒体を前記チャーガス化炉に導くための、前記熱分解炉の壁部に設けた取出口と、該取出口を取り囲んでチャーガス化炉内下部に延びる落下壁とからなるチャー導入路を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の循環流動層ガス化炉。
【請求項4】
前記タール吸収炉のコークが担持されたタール吸収剤を前記コークガス化炉に導くための、前記タール吸収炉の壁部に設けた取出口と、該取出口を取り囲んでコークガス化炉内下部に延びる落下壁とからなるコーク導入路を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の循環流動層ガス化炉。
【請求項5】
前記チャー残渣燃焼循環装置は、前記チャーガス化炉からのチャーと流動媒体を導入してチャー残渣を燃焼するチャー残渣燃焼炉と、該チャー残渣燃焼炉からの燃焼流体を導入し流動媒体と燃焼排ガスに分離して流動媒体を前記熱分解炉に供給する分離器とを有し、前記吸収剤再生循環装置は、前記コークガス化炉からのコーク残渣が担持されたタール吸収剤を導入してコーク残渣を燃焼するコーク残渣燃焼炉と、該コーク残渣燃焼炉からの燃焼流体をタール吸収剤と燃焼排ガスとに分離してタール吸収剤を前記タール吸収炉に供給する分離器とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の循環流動層ガス化炉。
【請求項6】
前記チャーガス化炉と前記チャー残渣燃焼炉との間にシール手段を有することを特徴とする請求項5に記載の循環流動層ガス化炉。
【請求項7】
前記コークガス化炉とコーク残渣燃焼炉との間にシール手段を有することを特徴とする請求項5に記載の循環流動層ガス化炉。
【請求項8】
前記チャー残渣燃焼炉から前記熱分解炉に導く流動媒体により、前記コーク残渣燃焼炉からタール吸収炉に導くタール吸収剤を加熱するための熱交換部を有することを特徴とする請求項5に記載の循環流動層ガス化炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環流動層により燃料をガス化する循環流動層ガス化炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭、バイオマス、ごみ、下水汚泥等の炭化水素資源の固体燃料をガス化し、生成したガスを、可燃ガス及び熱源として利用することにより、有機資源の有効活用を図る技術が開発されている。
【0003】
従来のガス化装置の1つとして、流動層ガス化炉と流動層燃焼炉を備えた循環流動層ガス化炉が知られている(特許文献1)。この循環流動層ガス化炉は、流動層ガス化炉に炭化水素資源の固体燃料を供給し、砂等の流動媒体の熱を利用して水蒸気でガス化を行う。流動層ガス化炉で生成した未燃分(チャー)と流動媒体は、流動層燃焼炉に導いてチャーを燃焼させ、加熱された流動媒体は再び前記ガス化炉に戻すようにしたもので、外部循環方式と称される。特許文献1の循環流動層ガス化炉は、流動層ガス化炉のガス化ガスと流動層燃焼炉の燃焼排ガスを別々に取り出すことができるため、不活性ガスを含まない高カロリーのガス化ガスを製造できる利点がある。
【0004】
一方、固体燃料をガス化する際の初期の段階では熱分解が主に行われ、熱分解によって生成したチャーがその後にガス化されることが知られており、更に、熱分解時にはタールが生成し、このタールがチャーのガス化反応の促進に悪影響を及ぼすことが知られている。
【0005】
このため、ガス化炉の内部を下部が連通した分割壁で2室に区画し、第一室に燃料を供給して熱分解を行い、第一室で生成したチャーを前記分割壁下部の流動媒体内を通して第二室に導き、第二室でチャーのガス化を行い、第二室のチャー残渣をチャー燃焼炉に供給するようにした循環流動層ガス化炉がある(特許文献2)。特許文献2の循環流動層ガス化炉では、第一室で燃料の熱分解が終了したタイミングでチャーが第二室に導入されるように制御することが行われている。特許文献2の循環流動層ガス化炉では、燃料の熱分解とチャーのガス化を分けることにより、タールがチャーのガス化反応の促進に悪影響を与える問題を低減できる。
【0006】
又、燃料の熱分解とチャーのガス化を切り離した別の装置で実施することにより、タールがチャーのガス化反応の促進に悪影響を及ぼす問題を解消し、且つ熱分解時に発生したタールを回収してガス化するようにした循環流動層ガス化炉がある(特許文献3)。
【0007】
特許文献3の循環流動層ガス化炉は、燃料の熱分解を行う熱分解部と、該熱分解部からの熱分解からタールを吸収分離するタール吸収部を上下に備えた二段構造の熱分解炉と、チャーガス化部とコークガス化部を上下に備えた二段構造のガス化炉とを独立して備えている。従って、特許文献3では、タールがチャーのガス化反応の促進に悪影響を及ぼす問題を解消でき、且つ熱分解時に発生したタールを回収してガス化するため、ガス化ガスの取出量を増加できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−041959号公報
【特許文献2】特開2008−156552号公報
【特許文献3】特開2011−026491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前記特許文献3に記載の循環流動層ガス化炉は、熱分解部とタール吸収部を上下に備えた二段構造の熱分解炉と、チャーガス化部とコークガス化部を上下に備えた二段構造のガス化炉とが独立して備えられた構成を有しているため、実際に循環流動層ガス化炉を建造する際に、循環流動層ガス化炉全体が大型になり、占有スペースが増加するという問題がある。
【0010】
更に、前記熱分解部での熱分解反応と、チャーガス化部及びコークガス化部でのガス化反応は共に吸熱反応であるため多量の熱を供給する必要があるが、前記特許文献3のように、熱分解炉とガス化炉を切り離して独立に備えた場合には、熱の放散が大きくなる問題がある。このため、熱の放散分を考慮して所定の熱量が得られるように、チャー残渣燃焼炉でのチャー残渣の燃焼量、及び、吸収剤再生炉でのコーク残渣の燃焼量を多く設定する必要があり、結果的にガス化に供されるチャー及びコークの量が減少することからガス化ガスの取出量が減少することになる。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなしたもので、装置を小型にして設置スペースを削減することができ、且つ、熱の放散を低減することによりガス化ガスの取出量を増加できるようにした循環流動層ガス化炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、流動媒体の供給により燃料を熱分解して熱分解ガスとチャーを生成する熱分解炉と、該熱分解炉からのチャー及び流動媒体を導入してチャーをガス化することによりガス化ガスとチャー残渣を生成するチャーガス化炉と、該チャーガス化炉からのチャー及び流動媒体を導入してチャーを燃焼することで加熱した流動媒体を前記熱分解炉に供給するチャー残渣燃焼循環装置と、前記熱分解炉からの熱分解ガスを導入すると共にタール吸収剤を供給して前記熱分解ガスのタールをタール吸収剤で吸収するタール吸収炉と、該タール吸収炉でタールを吸収することによりコークが担持されたタール吸収剤を導入しコークをガス化してガス化ガスとコーク残渣を生成するコークガス化炉と、該コークガス化炉からのコーク残渣を含むタール吸収剤を導入してコーク残渣を燃焼することで加熱・再生したタール吸収剤を前記タール吸収炉に供給する吸収剤再生循環装置とを有する循環流動層ガス化炉であって、
前記熱分解炉の上部にタール吸収炉を二段重ねに備え、前記熱分解炉の外周を包囲するチャーガス化炉の上部に前記タール吸収炉の外周を包囲するコークガス化炉を二段重ねに備えることで二重構造の反応装置を構成した
ことを特徴とする循環流動層ガス化炉、に係るものである。
【0013】
上記循環流動層ガス化炉において、前記熱分解炉に燃料を供給する燃料供給管は、前記タール吸収炉を上部から貫通して前記熱分解炉に延びていることは好ましい。
【0014】
又、上記循環流動層ガス化炉において、前記熱分解炉のチャー及び流動媒体を前記チャーガス化炉に導くための、前記熱分解炉の壁部に設けた取出口と、該取出口を取り囲んでチャーガス化炉内下部に延びる落下壁とからなるチャー導入路を有することは好ましい。
【0015】
又、上記循環流動層ガス化炉において、前記タール吸収炉のコークが担持されたタール吸収剤を前記コークガス化炉に導くための、前記タール吸収炉の壁部に設けた取出口と、該取出口を取り囲んでコークガス化炉内下部に延びる落下壁とからなるコーク導入路を有することは好ましい。
【0016】
又、上記循環流動層ガス化炉において、前記チャー残渣燃焼循環装置は、前記チャーガス化炉からのチャーと流動媒体を導入してチャー残渣を燃焼するチャー残渣燃焼炉と、該チャー残渣燃焼炉からの燃焼流体を導入し流動媒体と燃焼排ガスに分離して流動媒体を前記熱分解炉に供給する分離器とを有し、前記吸収剤再生循環装置は、前記コークガス化炉からのコーク残渣が担持されたタール吸収剤を導入してコーク残渣を燃焼するコーク残渣燃焼炉と、該コーク残渣燃焼炉からの燃焼流体をタール吸収剤と燃焼排ガスとに分離してタール吸収剤を前記タール吸収炉に供給する分離器とを有することが好ましい。
【0017】
又、上記循環流動層ガス化炉において、前記チャーガス化炉と前記チャー残渣燃焼炉との間にシール手段を有することは好ましい。
【0018】
又、上記循環流動層ガス化炉において、前記コークガス化炉とコーク残渣燃焼炉との間にシール手段を有することは好ましい。
【0019】
又、上記循環流動層ガス化炉において、前記チャー残渣燃焼炉から前記熱分解炉に導く流動媒体により、前記コーク残渣燃焼炉からタール吸収炉に導くタール吸収剤を加熱するための熱交換部を有することは好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の循環流動層ガス化炉によれば、二重構造とした反応装置は構成が小型になり設置スペースを削減することができると共に、熱の放散が低減されてガス化ガスの取出量を増加できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の循環流動層ガス化炉の一実施例の概略を示す正面図である。
図2】(a)は図1の循環流動層ガス化炉の平面形状の一例を示す平面図、(b)は(a)とは異なる平面形状の例を示す平面図である。
図3】本発明の循環流動層ガス化炉の他の実施例の概略を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図示例と共に説明する。
【0023】
図1図2は本発明の循環流動層ガス化炉の一実施例の概略を示すもので、図1中、100は反応装置であり、反応装置100は、熱分解炉1の上部にタール吸収炉2が二段重ねに備えてあり、前記熱分解炉1の外周を包囲するチャーガス化炉3の上部に前記タール吸収炉2の外周を包囲するコークガス化炉4が二段重ねに備えている。これにより、反応装置100は、内側の熱分解炉1及びタール吸収炉2と、外側のチャーガス化炉3及びコークガス化炉4とが二重構造を有している。
【0024】
前記熱分解炉1には、チャー残渣燃焼循環装置5で加熱された流動媒体6が供給され、更に、散気装置7を介して下部からガス化剤8(水蒸気)が供給されることで流動層9を形成している。該流動層9には、前記タール吸収炉2の上部から該タール吸収炉2内中心部を貫通する燃料供給管10を介して燃料11が供給されている。従って、前記燃料供給管10を加えると、前記反応装置100は三重構造となっている。前記熱分解炉1に供給するガス化剤8としては、上記水蒸気以外に酸素、或いはその他のガスを用いることができる。又、燃料11としては、石炭、バイオマス、ごみ、下水汚泥等の炭化水素系の種々の固体燃料を用いることができる。そして、前記熱分解炉1では、前記燃料11が熱分解して熱分解ガス12を生成すると共に、熱分解されないチャー13が生成される。前記チャー残渣燃焼循環装置5で加熱した流動媒体6は、分離器35、供給管14を介して前記流動層9の内部に供給しており、熱分解炉1の熱分解ガス12が供給管14側に逆流するのを防止している。ここで、前記供給管14は、熱分解炉1を斜めに貫通することにより下端が流動層9の内部に挿入された場合について示したが、供給管14はL字バルブ等のシール装置を介して流動層9に接続するようにしてもよく、又、供給管14はタール吸収炉2の天井及び熱分解炉1の天井を貫通して鉛直に流動層9の内部に延びてマテリアルシールするようにしてもよい。
【0025】
前記タール吸収炉2には、前記熱分解炉1で生成した熱分解ガス12及びガス化剤8が散気装置15を介して下部から導入され、更に、吸収剤再生循環装置16で加熱・再生したタール吸収剤17が供給されて流動層18を形成している。タール吸収剤17にアルミナ(多孔質アルミナ)、石灰石、ゼオライト等を用いることにより、タール吸収剤17は前記タール吸収炉2内において流動しながら前記熱分解ガス12中のタールを吸収する。これにより、前記タール吸収炉2からはタールが除去された熱分解ガス19が取り出される。20は熱分解ガス取出口である。前記吸収剤再生循環装置16で加熱・再生したタール吸収剤17は、分離器50、供給管21を介して前記流動層18の内部に供給しており、タール吸収炉2の熱分解ガス19が供給管21側に逆流するのを防止している。ここで、前記供給管21は、タール吸収炉2を斜めに貫通することにより下端が流動層18の内部に挿入された場合について示しているが、供給管21はL字バルブ等のシール装置を介して流動層9に接続するようにしてもよく、又、供給管21はタール吸収炉2の天井を貫通して鉛直に流動層18の内部に延びてマテリアルシールするようにしてもよい。
【0026】
前記チャーガス化炉3には、前記熱分解炉1で生成したチャー13と共に流動媒体6がチャー導入路22を介して供給され、且つ散気装置23を介して下部からガス化剤8(水蒸気)が供給されることにより流動層24を形成し、チャー13のガス化を行ってガス化ガス25を生成すると共にチャー残渣26を生成する。前記チャー導入路22は、前記熱分解炉1の炉壁の例えば周方向に複数設けた取出口27と、該取出口27を取り囲んでチャーガス化炉3内下方に延びる落下壁28とにより構成している。
【0027】
前記チャーガス化炉3でガス化されないチャー残渣26は、流動媒体6と共に、シール手段29を介して前記チャー残渣燃焼循環装置5のチャー残渣燃焼炉30に供給される。シール手段29には水蒸気或いは空気等の流動ガスが供給されて、チャー残渣26及び流動媒体6をチャー残渣燃焼炉30に送るようにしている。チャー残渣燃焼炉30には散気装置31の下部から空気32が供給されることによりチャー残渣26を燃焼させて流動媒体6を加熱する。前記チャー残渣燃焼炉30の燃焼流体33は吹上管34内を上方に導かれ、該吹上管34に接続されたサイクロン等の分離器35より加熱された流動媒体6と燃焼排ガス36とに分離され、分離された流動媒体6は前記供給管14を介して前記熱分解炉1の流動層9の内部に供給される。
【0028】
前記コークガス化炉4には、前記タール吸収炉2でタールを吸収することによりコークが担持されたタール吸収剤37がコーク導入路38を介して供給され、且つ散気装置39を介して下部のチャーガス化炉3からの前記ガス化ガス25及びガス化剤8(水蒸気)が供給されることにより流動層40を形成し、コークが担持されたタール吸収剤37をガス化してガス化ガス25'を生成する。41はガス化ガス取出口である。前記コーク導入路38は、前記タール吸収炉2の周壁の例えば周方向に複数設けた取出口42と、該取出口42を取り囲んでコークガス化炉4内下方に延びる落下壁43とにより構成している。
【0029】
前記コークガス化炉4でガス化されないコーク残渣が担持されたタール吸収剤44は、シール手段45を介して前記吸収剤再生循環装置16のコーク残渣燃焼炉46に供給される。シール手段45には水蒸気或いは空気等の流動ガスが供給されてコーク残渣が担持されたタール吸収剤44をコーク残渣燃焼炉46に送るようにしている。コーク残渣燃焼炉46には散気装置47の下部から空気32を供給することによりコーク残渣を燃焼させることでタール吸収剤17の加熱・再生を行う。前記コーク残渣燃焼炉46で燃焼した燃焼流体48は吹上管49内を上方に導かれ、該吹上管49に接続されたサイクロン等の分離器50により再生したタール吸収剤17と燃焼排ガス36とに分離され、分離したタール吸収剤17は前記供給管21を介して前記タール吸収炉2の流動層18の内部に供給される。
【0030】
前記シール手段29はチャー残渣燃焼炉30の燃焼排ガスがチャーガス化炉3に逆流するのを防止することができ、又、シール手段45はコーク残渣燃焼炉46の燃焼排ガスがコークガス化炉4に逆流するのを防止できればよく、従って、前記シール手段29,45には、L字バルブ、ループシール等の種々の構造のものを用いることができる。
【0031】
図1の実施例では、前記タール吸収炉2からの熱分解ガス19と、コークガス化炉4からのガス化ガス25,25'を一本の集合管51に集合して取り出すようにしている。又、前記タール吸収炉2からの熱分解ガス19と、コークガス化炉4からのガス化ガス25,25'を別個に分けて取り出すようにしてもよい。
【0032】
図2(a)、(b)は、前記反応装置100の平面形状の例を示したものであり、図2(a)に示すように反応装置100は矩形を有していてもよく、或いは、図2(b)に示すように円形を有していてもよい。又、反応装置100の平面形状は上記以外に楕円形状を有していてもよく或いは矩形以外の多角形を有していてもよい。
【0033】
前記熱分解炉1による燃料11の熱分解は短時間(数秒)で完了することが知られており、これに対して、チャーガス化炉3でのチャー13のガス化、及び、コークガス化炉4でのコークのガス化には長い反応時間を保持するのが好ましいことが知られているため、中心側に設けられる前記熱分解炉1及びタール吸収炉2の容積は、外側に設けられる前記チャーガス化炉3及びコークガス化炉4の容積に対して小型のものとすることができる。
【0034】
次に、上記実施例の作動を説明する。
【0035】
図1図2に示す熱分解炉1には、チャー残渣燃焼循環装置5からの高温の流動媒体6が供給管14により供給されると共に、下部からガス化剤8が供給されることにより流動層9を形成しているので、燃料供給管10により前記流動層9に、石炭、バイオマス、ごみ、下水汚泥等の炭化水素系の燃料11を供給すると、燃料11は熱分解されて熱分解ガス12とチャー13を生成する。
【0036】
このとき、前記タール吸収炉2を貫通するように反応装置100の中心部に設けた燃料供給管10を介して熱分解炉1に燃料11を供給しているため、バイオマスのような比重の軽い燃料11でも熱分解炉1内に確実に供給することができる。更に、燃料11は燃料供給管10の内部を移動する間に加熱されて供給されるため、熱分解炉1での熱分解に要する時間が更に短縮されるようになり、よって熱分解炉1の構成を更に小型にすることができる。
【0037】
前記熱分解炉1で生成したチャー13は、流動媒体6と共に、チャー導入路22を介してチャーガス化炉3に導入される。このとき、前記熱分解炉1での燃料11の熱分解は短時間で完了し、熱分解により生成したチャーは13は連続してチャーガス化炉3に供給される。
【0038】
前記熱分解炉1に比して容積が大きいチャーガス化炉3では、下部から供給されるガス化剤8による流動層24により所要の滞留時間を保持した状態でチャー13のガス化が行われて、ガス化ガス25とガス化されないチャー残渣26を生成する。前記チャー残渣26は、流動媒体6と共にシール手段29を介して前記チャー残渣燃焼循環装置5のチャー残渣燃焼炉30に供給され、空気32により燃焼して流動媒体6を加熱する。前記チャー残渣燃焼炉30で燃焼した燃焼流体33は吹上管34内を上昇して分離器35に導かれて加熱された流動媒体6と燃焼排ガス36とに分離され、分離された流動媒体6は前記供給管14を介して再び前記熱分解炉1の流動層9の内部に供給される。
【0039】
前記熱分解炉1からのタールを含んだ熱分解ガス12が導入されるタール吸収炉2には、吸収剤再生循環装置16からの加熱・再生されたタール吸収剤17が供給されて流動層18を形成しており、タール吸収剤17によりタールの吸収が行われる。これにより、タール吸収炉2からはタールを含まない熱分解ガス19が取り出される。
【0040】
前記タール吸収炉2でタールを吸収することでコークを担持したタール吸収剤37は、コーク導入路38を介してコークガス化炉4に供給され、コークをガス化してガス化ガス25'を生成すると共にコーク残渣を担持したタール吸収剤44を生成する。前記コーク残渣を担持したタール吸収剤44は、シール手段45を介して前記吸収剤再生循環装置16のコーク残渣燃焼炉46に供給されて空気32により燃焼し、前記タール吸収剤17の加熱・再生を行う。前記コーク残渣燃焼炉46で燃焼した燃焼流体48は吹上管49内を上昇して分離器50に導かれて加熱・再生したタール吸収剤17と燃焼排ガス36とに分離され、分離されたタール吸収剤17は前記供給管21を介して再び前記タール吸収炉2の流動層18の内部に供給される。
【0041】
図3は、本発明の循環流動層ガス化炉の他の実施例の概略を示す正面図である。この実施例では、前記チャー残渣燃焼炉30の吹上管34を、前記コーク残渣燃焼炉46の内部に配置することで、吹上管34内を流動する燃焼流体33によって前記コーク残渣燃焼炉46の燃焼温度を高めるようにした熱交換部52を形成した場合を示している。前記チャー残渣燃焼炉30の発熱量は、前記コーク残渣燃焼炉46での発熱量に比して大きいため、前記チャー残渣燃焼炉30の熱を用いて前記コーク残渣燃焼炉46でのタール吸収剤17の加熱・再生を補助する加熱を行うことができる。又、前記熱交換部52は、前記チャー残渣燃焼炉30の吹上管34と、前記コーク残渣燃焼炉46の吹上管49を二重管構造とすることにより更に熱交換率を高めるようにしてもよい。
【0042】
図1に示したように、熱分解炉1の上部にタール吸収炉2を二段重ねに備え、前記熱分解炉1の外周を包囲するチャーガス化炉3の上部に前記タール吸収炉2の外周を包囲するコークガス化炉4を二段重ねに備えた二重構造の反応装置100を構成したので、反応装置100は構成が小型になり、従って設置スペースを大幅に削減することができる。
【0043】
更に、二重構造の反応装置100としたことにより、熱の放散を著しく低減することができ、よって、従来に比してチャー残渣燃焼炉30でのチャー残渣26の燃焼量、及びコーク残渣燃焼炉46でのコーク残渣の燃焼量を放熱分だけ減少することができる。従って、ガス化に必要な熱を得るために消費される燃料11の量が減少し、結果的にガス化に供される燃料量が増加することになって熱分解ガス19及びガス化ガス25,25'の取出量を増加できる効果を発揮する。
【0044】
前記熱分解炉1で生成したチャー13を流動媒体6と共にチャーガス化炉3に導くための取出口27と落下壁28からなるチャー導入路22を反応装置100の内部に備え、又、前記タール吸収炉2で生成したコークが担持されたタール吸収剤37をコークガス化炉4に導くための取出口42と落下壁43からなるコーク導入路38を反応装置100の内部に備えているので、前記チャー導入路22及びコーク導入路38を介して熱が外部へ放散する問題を防止することができる。
【0045】
又、前記チャー残渣燃焼循環装置5は、チャー残渣燃焼炉30から上方に向かう吹上管34と、該吹上管34の上端部に配置した分離器35とを備えて、該分離器35で分離した流動媒体6を熱分解炉1に供給しているので、加熱した流動媒体6を安定して熱分解炉1に供給することができる。
【0046】
又、前記吸収剤再生循環装置16は、コーク残渣燃焼炉46から上方に向かう吹上管49と、該吹上管49の上端部に配置した分離器50とを備えて、該分離器50で分離した再生されたタール吸収剤17をタール吸収炉2に供給しているので、再生されたタール吸収剤17を安定してタール吸収炉2に供給することができる。
【0047】
前記チャーガス化炉3と前記チャー残渣燃焼炉30との間に備えたシール手段29は、チャー残渣燃焼炉30の燃焼排ガスがチャーガス化炉3に逆流するのを防止し、又、前記コークガス化炉4とコーク残渣燃焼炉46との間に備えたシール手段45は、コーク残渣燃焼炉46の燃焼排ガスがコークガス化炉4に逆流するのを防止するので、循環流動層ガス化炉を安定して運転することができる。
【0048】
図3に示すように、前記チャー残渣燃焼炉30から前記熱分解炉1に導く流動媒体6によって、前記コーク残渣燃焼炉46からタール吸収炉2に導くタール吸収剤17を加熱する熱交換部52を備えたことにより、タール吸収剤17の加熱・再生を効果的に行うことができる。
【0049】
尚、本発明の循環流動層ガス化炉は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1 熱分解炉
2 タール吸収炉
3 チャーガス化炉
4 コークガス化炉
5 チャー残渣燃焼循環装置
6 流動媒体
10 燃料供給管
11 燃料
12 熱分解ガス
13 チャー
16 吸収剤再生循環装置
17 タール吸収剤
22 チャー導入路
25 ガス化ガス
25' ガス化ガス
26 チャー残渣
27 取出口
28 落下壁
29 シール手段
30 チャー残渣燃焼炉
33 燃焼流体
34 吹上管
35 分離器
36 燃焼排ガス
37 コークを担持したタール吸収剤
38 コーク導入路
42 取出口
43 落下壁
44 コーク残渣を担持したタール吸収剤
45 シール手段
46 コーク残渣燃焼炉
48 燃焼流体
49 吹上管
50 分離器
52 熱交換部
100 反応装置
図1
図2
図3