(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリル系ランダム共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が300,000より大きく3,000,000以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<アクリル系ランダム共重合体及びアクリル系単独重合体から選ばれる重合体(A)>
本発明に用いられる重合体(A)について説明する。この重合体(A)はアクリル系ランダム共重合体及びアクリル系単独重合体から選ばれる少なくとも1つの重合体である。
【0013】
上記アクリル系ランダム共重合体は、アクリル酸アルキルエステル単位を2種以上有するランダム共重合体、及びアクリル酸アルキルエステル単位とアクリル酸アルキルエステル以外の他の単量体単位とを有するランダム共重合体である。アクリル系ランダム共重合体は、アクリル酸アルキルエステル2種以上をランダム共重合することにより、あるいはアクリル酸アルキルエステルと、アクリル酸アルキルエステル以外の単量体とをランダム共重合することにより合成できる。
【0014】
上記アクリル系単独重合体は、アクリル酸アルキルエステル単位1種からなる単独重合体であり、アクリル酸アルキルエステルを単独重合することにより合成できる。
上記アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ノニル等の炭素数1〜20のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらアクリル酸アルキルエステルの中でも、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ノニル等の炭素数4〜9のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが好ましい。これらアクリル酸アルキルエステルは1種単独で使用してもよいし、2種以上組合せて使用してもよい。
【0015】
上記アクリル酸アルキルエステル単位に含まれるアルキル基の平均炭素数は、通常1〜20程度であり、好ましくは4〜9である。
上記重合体(A)がアクリル系ランダム共重合体の場合は、さらにアクリル酸アルキルエステル以外の他の単量体単位を含んでいてもよい。
【0016】
上記他の単量体単位としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸ノニル等のメタクリル酸アルキルエステル;スチレン等のビニル芳香族単量体;アクリルアミド、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0017】
上記他の単量体単位として、粘着剤の一成分として含まれ得る多官能性化合物と反応性を有する官能基、例えばカルボキシル基、水酸基、エポキシ基等を有する単量体単位が含まれていることが好ましい一態様である。
【0018】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などが挙げられる。水酸基を有する単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。エポキシ基を有する単量体としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0019】
重合体(A)中の上記官能基を有する単量体単位の含有量は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。また、重合体(A)中に上記官能基を有する単量体単位を含む場合には、アクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは70〜90質量%である。
【0020】
上記重合体(A)のひとつであるアクリル系ランダム共重合体は、アクリル酸アルキルエステル単位を主体として含むことが好ましい。ここで、主体として含むとは上記重合体(A)中、アクリル酸アルキルエステル単位が最も多く含まれることを意味し、重合体(A)中のアクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、通常50〜100質量%、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%である。
【0021】
上記重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは300,000より大きく3,000,000以下、より好ましくは300,000より大きく1,000,000以下、さらに好ましくは300,000より大きく800,000以下、特に好ましくは350,000より大きく600,000以下である。Mwが3,000,000より大きい場合は、後述するアクリル系ブロック共重合体(B)との相容性が悪くなり、粘着剤の性能として、特に曲面接着性で向上効果が発現しない。Mwが300,000以下の場合には、アクリル系ブロック共重合体(B)との相容性は良好であるが、粘着剤の凝集力が不足し、粘着剤として各種産業分野で求められる性能が発現しない場合がある。
【0022】
本発明のアクリル系ランダム共重合体及びアクリル系単独重合体から選ばれる重合体(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。アクリル系ランダム共重合体及びアクリル系単独重合体から選ばれる重合体(A)は、粘着剤の主成分として使用される重合体であれば特に制限はなく、用途目的に応じて種々の重合体を使用できる。例えば上記重合体(A)は、通常のラジカル重合法で合成した重合体であってもよいし、リビングラジカル重合法で合成した重合体であってもよい。また、上記重合体(A)として、上記アクリル系ランダム共重合体及びアクリル系単独重合体から選ばれる重合体(A)を含む市販の粘着剤をそのまま使用してもよい。
【0023】
<アクリル系ブロック共重合体(B)>
本発明に用いられるアクリル系ブロック共重合体(B)について説明する。アクリル系ブロック共重合体(B)は、メタクリル酸アルキルエステル単位を主体とする重合体ブロックB1を少なくとも1つ有する。この重合体ブロックB1はメタアクリル酸アルキルエステルを主体として含む単量体を重合することにより合成できる。上記メタクリル酸アルキルエステル単位となるメタクリル酸アルキルエステルしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸2−ヘキシルデシルなどが挙げられる。
【0024】
これらメタクリル酸アルキルエステルの中でも、重合体ブロックB1による凝集力を担保する観点からは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル等の炭素数1〜3のアルキル基を有するメタクリル酸エステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0025】
これらメタクリル酸アルキルエステルは1種単独で使用してもよいし、2種以上組合せて使用してもよい。
上記重合体ブロックB1はメタクリル酸アルキルエステル単位を主体として含むことに特徴があるが、重合体ブロックB1がメタクリル酸アルキルエステル単位を主体として含むとは、上記重合体ブロックB1を形成する単量体単位のうちメタクリル酸アルキルエステル単位が最もその質量%が多いことを意味する。重合体ブロックB1中、メタクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、好ましくは80質量%〜100質量%、より好ましくは90質量%〜100質量%である。また上記重合体ブロックB1がメタクリル酸アルキルエステル単位のみからなることも、本発明の好ましい一態様である。
【0026】
上記重合体ブロックB1には、少量であれば、メタクリル酸アルキルエステル単位以外の他の単量体単位が含まれていてもよい。他の単量体単位は、例えば重合体ブロックB1を合成する際に、メタクリル酸アルキルエステルにこの他の単量体を加えた後これを重合することにより、得ることができる。
【0027】
メタクリル酸アルキルエステル以外の他の単量体としては、例えばメタクリル酸トリメチルシリル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルなどのメタクリル酸アルキルエステル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチルなどのアクリル酸アルキルエステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトンなどが挙げられる。これら他の単量体は1種単独で使用してもよいし、2種以上組合せて使用してもよい。重合体ブロックB1中、他の単量体単位の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0028】
上記重合体ブロックB1のうちその少なくとも1つの重量平均分子量(Mw)は、10,000以上であることに特徴がある。このような重合体ブロックB1がアクリル系ブロック共重合体(B)に含まれることにより、本発明の粘着剤組成物から作製される粘着剤の曲面接着性に優れる傾向にある。その詳細なメカニズムは明らかではないが、このような重合体ブロックB1を有するアクリル系ブロック共重合体を含む本発明の粘着剤組成物は、上記重合体(A)との相溶性、均一分散性が良好となるだけでなく、例えば粘着剤組成物中で物理的な擬似架橋構造を形成するなどして、粘着剤の凝集力を高めるとともに、曲面を有する被着体への濡れ性及び初期粘着力とが曲面接着をするためには好適な範囲となることに寄与しているのではないかと推定される。
【0029】
曲面接着性を向上させる観点からは、上記重合体ブロックB1のMwは、好ましくは10,000〜50,000の範囲、より好ましくは10,000〜30,000の範囲である。
【0030】
なお、アクリル系ブロック共重合体中に、上記重合体ブロックB1が2つ以上含まれる場合には、少なくともその1つの重合体ブロックB1が上記Mwを有していればよいが、上記重合体(A)との相容性がより優れるという観点から、全ての重合体ブロックB1が上記Mwの要件を満たすことが好ましい。
【0031】
上記重合体ブロックB1は1種単独の重合体ブロックであってもよいし、2種以上の重合体ブロックの組合せであってもよい。
アクリル系ブロック共重合体(B)は、上記重合体ブロックB1に加え、アクリル酸アルキルエステル単位を主体とする重合体ブロックB2を少なくとも1つ有する。この重合体ブロックB2はアクリル酸アルキルエステルを主体として含む単量体を重合することにより合成できる。
【0032】
アクリル酸アルキルエステル単位を主体とする重合体ブロックB2がアクリル系ブロック共重合体(B)に含まれていることにより、上記重合体(A)との相容性が優れるだけでなく、本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤の被着体への濡れ性、初期接着力が向上する傾向にあり、曲面接着力を改善することが可能となる。
【0033】
上記アクリル酸アルキルエステル単位となるアクリル酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどが挙げられる。
【0034】
これらアクリル酸アルキルエステルの中でも、より曲面接着性を向上させる観点からは、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸n−ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルの組合せが好ましい。
【0035】
これらアクリル酸アルキルエステルは1種単独で使用してもよいし、2種以上組合せて使用してもよい。
上記重合体ブロックB2はアクリル酸アルキルエステル単位を主体として含むことに特徴があるが、重合体ブロックB2がアクリル酸アルキルエステル単位を主体として含むとは、上記重合体ブロックB2を形成する単量体単位のうちアクリル酸アルキルエステル単位が最もその質量%が多いことを意味する。重合体ブロックB2中、アクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、好ましくは80質量%〜100質量%、より好ましくは90質量%〜100質量%である。また上記重合体ブロックB2がアクリル酸アルキルエステル単位のみからなることも、本発明の好ましい一態様である。
【0036】
上記重合体ブロックB2には、少量であれば、アクリル酸アルキルエステル単位以外の他の単量体単位が含まれていてもよい。他の単量体単位は、例えば重合体ブロックB2を合成する際に、アクリル酸アルキルエステルにこの他の単量体を加えた後これを重合することにより、得ることができる。
【0037】
アクリル酸アルキルエステル以外の他の単量体としては、例えばアクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどのアクリル酸アルキルエステル以外のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;ε−カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトンなどが挙げられる。これら他の単量体は1種単独で使用してもよいし、2種以上組合せて使用してもよい。重合体ブロックB2中、他の単量体単位の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0038】
上記重合体ブロックB2の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは15,000〜150,000、より好ましくは25,000〜120,000である。なお、アクリル系ブロック共重合体に、重合体ブロックB2が2以上含まれる場合には、これらすべての重合体ブロックB2が上記Mwを有することが好ましい。
【0039】
上記重合体ブロックB2は1種単独の重合体ブロックであってもよいし、2種以上の重合体ブロックの組合せであってもよい。
アクリル系ブロック共重合体(B)全体の重量平均分子量(Mw)は、50,000〜300,000であることが好ましく、120,000より大きく300,000以下であることがより好ましく、140,000〜200,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が300,000を超える場合、上記重合体(A)との相容性が悪くなる場合があり、重量平均分子量が120,000未満の場合、本発明の粘着剤組成物の曲面接着力において、所望の性能が得られない場合がある。
【0040】
上記アクリル系ブロック共重合体(B)全体の数平均分子量(Mn)は、45,000より大きく300,000以下であることが好ましく、100,000より大きく300,000以下であることがより好ましく、120,000より大きく300,000以下であることがさらに好ましい。アクリル系ブロック共重合体(B)の数平均分子量が上記範囲にあることにより、上記重合体(A)との相容性が良好であり、本発明の粘着剤組成物の曲面接着力において、所望の性能を得ることができる。
【0041】
アクリル系ブロック共重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は1.5未満であることが好ましい。アクリル系ブロック共重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上であると、低分子量成分の影響が無視できなくなり、凝集力の低下や糊残りなどの不具合が生じ易くなる。アクリル系ブロック共重合体(B)のMw/Mnは、粘着剤組成物の高温での凝集力が高くなり、曲面接着力により優れるものとなる点から、1.0〜1.4であることが好ましく、1.0〜1.3であることがより好ましく、1.0〜1.2であることがさらに好ましい。
【0042】
アクリル系ブロック共重合体(B)では、含有される重合体ブロックB2の総質量を基準とした重合体ブロックB1の総質量の割合が小さすぎると、本発明の粘着剤組成物の凝集力が小さくなり、保持力(せん断クリープ強度)が低くなる傾向となる。逆に、重合体ブロックB2の総質量を基準とした重合体ブロックB1の総重量の割合が大きすぎると、粘着剤組成物は粘着力が不足する上、上記重合体(A)との相容性が悪くなる傾向がある。これらの点から、アクリル系ブロック共重合体(B)の分子中に含まれる重合体ブロックB1の総質量と重合体ブロックB2の総質量との割合は、B1/B2の質量比として、5/95〜55/45の範囲であることが好ましく、10/85〜35/65の範囲であることがより好ましい。
【0043】
本発明に用いる上記アクリル系ブロック共重合体(B)の製造方法は、上記条件を満足する重合体が得られる限り特に限定されず、例えば公知の手法に準じた方法を採用できる。一般に、分子量分布の狭いブロック共重合体を得る方法としては、構成単位である単量体をリビング重合する方法が採用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば有機希土類金属錯体を重合開始剤としてリビング重合する方法(特許文献3参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩などの鉱酸塩の存在下でリビングアニオン重合する方法(特許文献4参照)、有機アルミニウム化合物の存在下で、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としリビングアニオン重合する方法(特許文献5参照)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)(非特許文献1参照)などが挙げられる。
【0044】
上記製造方法のうち、有機アルミニウム化合物の存在下で有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてリビングアニオン重合する方法は、得られるブロック共重合体の透明性が高いものとなり、残存単量体が少なく臭気が抑えられ、また、粘着剤組成物として用いる際、貼り合わせ後の気泡の発生を抑制できるため好ましい。さらに、メタクリル酸エステル重合体ブロックの分子構造が高シンジオタクチックとなり、粘着剤組成物の耐熱性を高める効果がある点、比較的温和な温度条件下でリビング重合が可能で工業的に生産する場合に環境負荷(主に重合温度を制御するための冷凍機にかかる電力)が小さい点でも好ましい。
【0045】
上記有機アルミニウム化合物としては、例えば下記一般式(IV)
AlR
1R
2R
3 (IV)
(式中、R
1、R
2及びR
3はそれぞれ独立して置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基又はN,N−二置換アミノ基を表すか、或いはR
1が上記したいずれかの基であり、R
2及びR
3が一緒になって置換基を有していてもよいアリーレンジオキシ基を形成している。)
で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0046】
上記一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物としては、重合のリビング性の高さや取り扱いの容易さなどの点から、イソブチルビス(2,6−ジtert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジtert−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチル〔2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノキシ)〕アルミニウムなどが好ましく挙げられる。
【0047】
上記有機アルカリ金属化合物としては、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、テトラメチレンジリチウム等のアルキルリチウム及びアルキルジリチウム;フェニルリチウム、p−トリルリチウム、リチウムナフタレン等のアリールリチウム及びアリールジリチウム;ベンジルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムの反応により生成するジリチウム等のアラルキルリチウム及びアラルキルジリチウム;リチウムジメチルアミド等のリチウムアミド;メトキシリチウム、エトキシリチウム等のリチウムアルコキシドなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、重合開始効率が高いことから、アルキルリチウムが好ましく、中でもtert−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムがより好ましく、sec−ブチルリチウムがさらに好ましい。
【0048】
上記リビングアニオン重合は、必要に応じて、反応系内にジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、12−クラウン−4などのエーテル化合物;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ピリジン、2,2’−ジピリジルなどの含窒素化合物をさらに添加することができる。これらの化合物を添加すると、重合速度とリビング重合性が高まり、より分子量分布の小さい、高分子量のブロック共重合体を得ることができる。
【0049】
また、上記リビングアニオン重合は、通常、重合反応に不活性な溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物などが挙げられる。
【0050】
本発明に用いるアクリル系ブロック共重合体(B)は、例えばメタクリル酸アルキルエステルを主体として含む単量体を重合して得た所望のリビングポリマー(重合体ブロックB1)末端に、アクリル酸アルキルエステルを主体として含む単量体を重合して、重合体ブロックB2を形成させ、さらに、別の所望の重合体ブロック(例えば重合体ブロックB1など)を形成する工程を所望の回数繰り返した後、重合反応を停止させることにより製造できる。重合体ブロックB1を形成させる前に、所望の重合体ブロックを形成する工程を含んでいてもよい。このような複数段階の重合工程を経て、得られた重合体の活性末端をアルコールなどと反応させ、重合反応を停止させることにより、アクリル系ブロック共重合体(B)を製造できる。
【0051】
重合温度としては、メタクリル酸アルキルエステルを主体として含む単量体を重合する際(例えば重合体ブロックB1を形成する際)は0〜100℃、アクリル酸アルキルエステルを主体として含む単量体を重合する際(例えば重合体ブロックB2を形成する際)は−50〜50℃が好ましい。上記範囲より重合温度が低い場合には、反応の進行が遅くなり、反応を完結させるのに長時間必要となる。一方、上記範囲より重合温度が高い場合には、リビングポリマー末端の失活が増え、分子量分布が広くなったり、所望のブロック共重合体が得られなくなったりする。
【0052】
本発明の粘着剤組成物は、上記アクリル系ランダム共重合体及びアクリル系単独重合体から選ばれる少なくとも1つの重合体(A)とアクリル系ブロック共重合体(B)とを必須成分として含有する。このような2種の重合体を含む本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤は、これら重合体の相溶性が良好で均一分散性に優れ、凝集力、被着体への濡れ性及び初期粘着力を、曲面を有する被着体に対し好適な範囲とできるので、曲面接着性が向上する。本発明の粘着剤組成物は、曲面接着性向上の観点から、上記重合体(A)100質量部に対しアクリル系ブロック共重合体(B)を1〜100質量部含有することが好ましく、5〜70質量部有することがより好ましく、10〜40質量部有することがさらに好ましい。
【0053】
本発明の粘着剤組成物は、上記アクリル系ランダム共重合体及びアクリル系単独重合体から選ばれる少なくとも1つの重合体(A)及びアクリル系ブロック共重合体(B)のみからなってもよいが、所望の物性を付与するために、さらにその他の成分を含んでいてもよい。
【0054】
粘着剤組成物に含まれ得るその他の成分としては、例えば粘着付与樹脂、可塑剤、他の重合体、架橋剤などを挙げることができる。
例えば上記粘着剤組成物に粘着付与樹脂を配合することにより、粘着剤の3つの要素であるタック、粘着力及び保持力を所望の範囲に調整できる。粘着付与樹脂としては、例えばロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジンなどのロジン系樹脂;テルペンフェノール樹脂、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどを主体とするテルペン樹脂;(水添)石油樹脂、クマロン−インデン系樹脂、水素化芳香族コポリマー、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。これら粘着付与樹脂は1種単独で使用してもよいし、2種以上組合せて使用してもよい。粘着剤組成物中の粘着付与樹脂の含有量は、粘着付与樹脂の種類、被着体の種類などに応じて適宜選択することができるが、粘着性、再剥離性などの観点から、上記重合体(A)及びアクリル系ブロック共重合体(B)の合計100質量部に対して、5〜100質量部が好ましく、10〜60質量部がより好ましく、20〜40質量部がさらに好ましい。
【0055】
上記可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジn−オクチルフタレート、ビス2−エチルヘキシルフタレート、ジn−デシルフタレート、ジイソデシルフタレートなどのフタル酸エステル;ビス2−エチルヘキシルアジペート、ジn−オクチルアジペートなどのアジピン酸エステル;ビス2−エチルヘキシルセバケート、ジn−ブチルセバケートなどのセバシン酸エステル;ビス2−エチルヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸エステルなどの脂肪酸エステル;塩素化パラフィンなどのパラフィン;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などのエポキシ系高分子可塑剤;トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェートなどのリン酸エステル;トリフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類;ポリ(メタ)アクリル酸n−ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル系オリゴマー;ポリブテン;ポリイソブチレン;ポリイソプレン;プロセスオイル;ナフテン系オイル;ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールなどのポリオール化合物などが挙げられる。これら可塑剤は1種単独で使用してもよいし、又は2種以上組み合わせて使用してもよい。粘着剤組成物中の可塑剤の含有量は、可塑剤の種類、被着体の種類などに応じて適宜選択することができるが、粘着性、凝集力、相容性などの観点から、上記アクリル系ランダム共重合体及びアクリル系単独重合体から選ばれる重合体(A)及びアクリル系ブロック共重合体(B)の合計100質量部に対して、5〜100質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましく、5〜30質量部がさらに好ましい。
【0056】
上記他の重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で含むことができる。他の重合体としては、例えばEPR、EPDM、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0057】
上記架橋剤は、本発明の効果を損なわない範囲で含むことができる。架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤としては、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物の付加物、イソシアヌレート付加物などが挙げられる。本発明の粘着剤組成物で用い得るイソシアネート化合物の具体例としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物などのポリオールにジイソシアネート化合物が付加したポリイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体などのイソシアネート付加物などを挙げることができる。
【0058】
また、エポキシ系架橋剤としては、例えばソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等の多官能エポキシ系化合物が挙げられる。
【0059】
なお、架橋剤は、本発明の粘着剤組成物から粘着剤を調製した後、被着体に塗布等する前に添加してもよい。上記架橋剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
粘着剤組成物に含まれる架橋剤の量は、架橋剤の種類によっても異なるが、例えばイソシアネート系架橋剤の場合には、上記重合体(A)及びアクリル系ブロック共重合体(B)の合計100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、粘着剤と被着体との密着性を向上させることができる。0.01質量部に満たないと、粘着剤と被着体との密着性が不十分なものとなり、所望の曲面接着性が得られない場合がある。20質量部を超えると、粘着剤層中に未反応モノマーとして残留するため、凝集力が低下する場合がある。
【0061】
また、エポキシ系架橋剤の場合には、上記重合体(A)及びアクリル系ブロック共重合体(B)の合計100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましい。上記範囲であれば、エネルギー線照射前における粘着力や凝集力を所望の強度に制御することができる。0.01質量部に満たないと、粘着剤と被着体との密着性が不十分なものとなり、所望の曲面接着性が得られない場合がある。20質量部を超えると、エネルギー線照射前における粘着力が低下するため、ダイシング等の際にチップ飛びが生じる場合がある。
【0062】
また、本発明の粘着剤組成物は、必要に応じ各種添加剤をさらに含有していてもよい。添加剤としては、例えば耐候性、耐熱性、耐酸化性をさらに向上させるためなどに添加される酸化防止剤又は紫外線吸収剤;炭酸カルシウム、酸化チタン、マイカ、タルク等の無機粉末充填剤;ガラス繊維、有機補強用繊維等の繊維状充填剤;滑剤などが挙げられる。
【0063】
<粘着剤>
本発明の粘着剤組成物は、溶液型粘着剤として用いてもよいし、ホットメルト型の固形粘着剤として用いてもよい。溶液型粘着剤とする場合は、本発明の粘着剤組成物又は粘着剤組成物の各成分を、例えばトルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、又はメチルエチルケトンなどの有機溶剤に溶解させることによって調製することができる。
【0064】
ホットメルト型の固形粘着剤として用いる場合は、ニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、又はバンバリーミキサーなどの混練装置を使用して、通常100℃〜250℃の温度範囲で、粘着剤組成物の各成分を混合することによって調製することができる。
【0065】
中でも、曲面に対する粘着力及び追従性に優れ、被着体からの浮きや剥がれが発生しにくいといった高い信頼性を有する粘着剤とする観点から、本発明の粘着剤組成物は、溶液型粘着剤として用いられることが好ましい。
【0066】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系重合体(A)単独で使用するよりも、分子量が小さいブロック共重合体(B)を必須成分として含むため、有機溶剤に溶解したときに、固形分濃度が高い場合でも、低い溶液粘度を示す。そのため、有機溶剤の使用量を低減しながら従来よりも固形分濃度の高い溶液型の粘着剤(例えば固形分濃度が35質量%以上の溶液型粘着剤)とすることができ、乾燥負荷の低減、塗工速度の向上、養生工程の省略などの工程性に優れる。また、当該固形分の溶液型粘着剤は、固形分濃度が高いにもかかわらず塗工時の取扱い性に優れる。粘着剤組成物から溶液型粘着剤を調製した際の溶液の粘度は、好ましくは500〜5000mPa・sの範囲、より好ましくは1000〜4000mPa・sの範囲、さらに好ましくは1000〜3000の範囲にある。
【0067】
溶液型粘着剤の塗工性、取扱い性、工程性などの観点から、溶液型粘着剤とする場合には、本発明の粘着剤組成物の含有量が、溶液型粘着剤の質量に対して、20〜50質量%にすることが好ましく、30〜40質量%にすることがより好ましい。
【0068】
<粘着加工品>
本発明の粘着剤組成物層を有する粘着加工品は、通常、紙、布、又は各種プラスチックからなる基材と粘着剤組成物層とを含む。上記粘着加工品としては、例えば包装用又は事務用粘着テープ、養生用又は塗装用マスキングテープ、ステンレス板、樹脂板などの傷つき防止のための表面保護用テープ、電気絶縁用粘着テープ、電気・電子機器用粘着テープ、マーキングフィルムなどの識別用又は装飾用粘着テープ、絆創膏、経皮吸収剤を含有する医療用粘着製品、ラベル、シール用粘着シート、建築用又は建材用テープなどが挙げられる。
【0069】
例えば建築、建材分野で耐久性、耐食性に優れるプラスチック材料として、塩化ビニル樹脂が比較的よく使用される。また、各種表示板、上下水道用のパイプ、雨樋、電線ケーブル、床材にも、製品寿命が長い塩化ビニル樹脂が好適に用いられている。これら製品は、曲面状に成形されたものが多く、曲面状成形品に対して各種表示のため、ラベル、シール用粘着シートを貼付する。この粘着シートに用いられる粘着剤は、塩化ビニル樹脂と相性が良いアクリル系粘着剤が一般的に用いられる。曲面状成形品に粘着ラベル、シールを使用する際に、粘着剤に求められる特性として、曲面接着性が挙げられる。曲面接着性が高い粘着剤は、粘着シートを貼付後、剥がれ、浮き等の不具合が発生しにくいため、好んで使用される。本発明の粘着剤組成物は、塩化ビニル樹脂からなる曲面状成形品に対する粘着力及び追従性に優れ、被着体からの浮きや剥がれが発生しにくいといった高い信頼性を有する粘着剤となる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例などにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されるものではない。
以下の合成例においては、常法により乾燥精製した薬品を用いた。
以下の合成例で合成した各重合体の分子量、分子量分布、組成、各重合体ブロックのガラス転移温度、重合転化率の測定は、以下の方法によって行った。
【0071】
(1)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)
以下の条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算の値として求めた。
・装置:東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(HLC−8020)
・カラム:東ソー社製「TSKgel GMHXL、G4000HXL」及び「G5000HXL」を直列に連結
・溶離液:テトラヒドロフラン
・溶離流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
・検量線:標準ポリスチレンを用いて作成
【0072】
(2)各共重合体における各共重合成分含有量
1H−NMR分光法により求めた。
・装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置(JNM−LA400)
・溶媒:重クロロホルム
・
1H−NMRスペクトルにおいて、3.6ppm及び4.0ppm付近のシグナルは、それぞれ、メタクリル酸メチル単位のエステル基(−O−C
H3)及びアクリル酸n−ブチル単位のエステル基(−O−C
H2−CH
2−CH
2−CH
3)に帰属され、その積分値の比によって共重合成分の含有量を求めた。
【0073】
(5)重合転化率
ガスクロマトグラフィー(GC)により求めた。
・機器:島津製作所製ガスクロマトグラフ GC−14A
・カラム:GL Sciences Inc.製「INERT CAP 1」(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m)
・分析条件:injection300℃、detecter300℃、60℃(0分保持)→5℃/分で昇温→100℃(0分保持)→15℃/分で昇温→300℃(2分保持)
【0074】
《合成例1》[アクリル系ランダム共重合体(A−1)の合成]
窒素置換した四口フラスコに、アクリル酸n−ブチル96質量部と、アクリル酸4質量部とを、酢酸エチル及びトルエンの50:50溶媒30質量部中で共重合し、重量平均分子量(Mw)550,000のアクリル系ランダム共重合体(A−1)溶液を得た。これに酢酸エチルを加えて、アクリル系ランダム共重合体(A−1)を45重量%含む溶液を得た。
【0075】
《合成例2》[アクリル系トリブロック共重合体(B−1)の合成]
(1)容量2Lの三口フラスコの内部を窒素で置換後、室温にてトルエン977g、1,2−ジメトキシエタン50.1gを加え、続いてイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム5.00mmolを含有するトルエン溶液60gを加え、さらにsec−ブチルリチウム2.50mmolを加えた。次に、この混合液にメタクリル酸メチル30.1gを加えた。反応混合液は当初、黄色に呈色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。このときの反応混合液をサンプリングし、各測定を行った。メタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。次いで、反応混合液を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル185.8gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、−30℃にて5分間攪拌した。このときの反応混合液をサンプリングし、各測定を行った。アクリル酸n−ブチルの重合転化率は99.9%以上であった。この反応混合液に、さらにメタクリル酸メチル12.9gを加え、一晩室温にて攪拌後、メタノール4.6gを添加して重合反応を停止した。このときのメタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈澱物を析出させた。濾過により白色沈殿物を回収し、乾燥することで、PMMA−PnBA−PMMAからなるブロック共重合体[以下、これを「アクリル系トリブロック共重合体(B−1)」と称する]257.2gを得た。
【0076】
(2)アクリル系トリブロック共重合体(B−1)について
1H−NMR測定とGPC測定を行った結果、トリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は151,000、数平均分子量(Mn)は127,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.19であった。また、これら分析結果と重合の途中段階でサンプリングしたサンプルの
1H−NMR測定、GPC測定、MMAの仕込み量及びMMAの転化率から、重量平均分子量(Mw)が21,500である重合体ブロックが、重合体ブロックB1として含まれていることが分かった。さらに、各重合体ブロックの含有量は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(重合体ブロックB1)が28.5質量%で、アクリル酸n−ブチル重合体ブロック(重合体ブロックB2)が71.5質量%であった。結果を表1に示す。
【0077】
《合成例3》[アクリル系トリブロック共重合体(B−2)の合成]
(1)容量2Lの三口フラスコ内部を窒素で置換後、室温にてトルエン1048g、1,2−ジメトキシエタン52.4gを加え、続いてイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム10.9mmolを含有するトルエン溶液50.0gを加え、さらにsec−ブチルリチウム2.31mmolを加えた。次に、これにメタクリル酸メチル18.0gを加えた。反応混合液は当初、黄色に呈色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。このときの反応混合液をサンプリングし、各測定を行った。メタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。次いで、反応混合液を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル221.2gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、−30℃にて5分間攪拌した。このときの反応混合液をサンプリングし、各測定を行った。アクリル酸n−ブチルの重合転化率は99.9%以上であった。この反応混合液に、さらにメタクリル酸メチル24.5gを加え、一晩室温にて攪拌後、メタノール13.0gを添加して重合反応を停止した。このときのメタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈澱物を析出させた。濾過により白色沈殿物を回収し、乾燥することで、PMMA−PnBA−PMMAからなるブロック共重合体[以下、これを「アクリル系トリブロック共重合体(B−2)」と称する]262gを得た。
【0078】
(2)アクリル系トリブロック共重合体(B−2)について
1H−NMR測定とGPC測定を行った結果、トリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は155,000、数平均分子量(Mn)は135,600であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.14であった。また、これら分析結果と重合の途中段階でサンプリングしたサンプルの
1H−NMR測定、GPC測定、MMAの仕込み量及びMMAの転化率から、重量平均分子量(Mw)が12,500である重合体ブロックが、重合体ブロックB1として含まれていることが分かった。さらに、各重合体ブロックの含有量は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(重合体ブロックB1)が16.1質量%で、アクリル酸n−ブチル重合体ブロックB2(重合体ブロックB2)が83.9質量%であった。結果を表1に示す。
【0079】
《合成例4》[アクリル系トリブロック共重合体(B−3)の合成]
(1)容量2Lの三口フラスコの内部を窒素で置換後、室温にてトルエン1040g、1,2−ジメトキシエタン100gを加え、続いてイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム30mmolを含有するトルエン溶液45gを加え、さらにsec−ブチルリチウム7.3mmolを加えた。次に、これにメタクリル酸メチル64gを加えた。反応混合液は当初、黄色に呈色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。このときの反応混合液をサンプリングし、各測定を行った。メタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。次いで、反応混合液を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル184gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、−30℃にて5分間攪拌した。このときの反応混合液をサンプリングし、各測定を行った。アクリル酸n−ブチルの重合転化率は99.9%以上であった。この反応混合液に、さらにメタクリル酸メチル161gを加え、一晩室温にて攪拌後、メタノール4gを添加して重合反応を停止した。このときのメタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈澱物を析出させた。濾過により白色沈殿物を回収し、乾燥することで、PMMA−PnBA−PMMAからなるブロック共重合体[以下、これを「アクリル系トリブロック共重合体(B−3)」と称する]417gを得た。
【0080】
(2)アクリル系トリブロック共重合体(B−3)について
1H−NMR測定とGPC測定を行った結果、トリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は62,000、数平均分子量(Mn)は57,400であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。また、これら分析結果と重合の途中段階でサンプリングしたサンプルの
1H−NMR測定、GPC測定、MMAの仕込み量及びMMAの転化率から、重量平均分子量(Mw)が15,500である重合体ブロックが、重合体ブロックB1として含まれていることが分かった。さらに、各重合体ブロックの含有量は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(重合体ブロックB1)が50質量%で、アクリル酸n−ブチル重合体ブロックB2(重合体ブロックB2)が50質量%であった。結果を表1に示す。
【0081】
《合成例5》[アクリル系ジブロック共重合体(B−4)の合成]
(1)容量0.5Lの三口フラスコの内部を窒素置換後、室温にてトルエン245g、1,2−ジメトキシエタン12.2gを加え、続いてイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム13.0mmolを含有するトルエン溶液29.0gを加え、さらに、sec−ブチルリチウム1.27mmolを加えた。次に、これにメタクリル酸メチル30.3gを加えた。反応混合液は当初、黄色に着色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。このときの反応混合液をサンプリングし、各測定を行った。メタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。引き続き、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル31.2gを2時間かけて滴下し、滴下終了後−30℃にて5分間攪拌した後、メタノール1.67gを添加して重合反応を停止した。このとき、アクリル酸n−ブチルの重合転化率は99.9%以上であった。得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈殿物を析出させた。白色沈殿物を回収し、乾燥して、PMMA−PnBAからなるジブロック共重合体[以下、これを「アクリル系ジブロック共重合体(B−4)」と称する]61.2gを得た。
【0082】
(2)アクリル系ジブロック共重合体(B−4)について
1H−NMR測定とGPC測定を行った結果、重量平均分子量(Mw)は58,500、数平均分子量(Mn)は39,800であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.47であった。また、これら分析結果と重合の途中段階でサンプリングしたサンプルの
1H−NMR測定、GPC測定、MMAの仕込み量及びMMAの転化率から、重量平均分子量(Mw)が29,300である重合体ブロックが、重合体ブロックB1として含まれていることが分かった。さらに、各重合体ブロックの含有割合は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(重合体ブロックB1)が50.1質量%で、アクリル酸n−ブチル重合体ブロック(重合体ブロックB2)が49.9質量%であった。結果を表1に示す。
【0083】
《合成例6》[アクリル系トリブロック共重合体(B−5)の合成]
(1)容量2Lの三口フラスコの内部を窒素で置換後、室温にてトルエン868g、1,2−ジメトキシエタン43.4gを加え、続いてイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム40.2mmolを含有するトルエン溶液60.0gを加え、さらにsec−ブチルリチウム5.00mmolを加えた。次に、これにメタクリル酸メチル35.9gを加えた。反応混合液は当初、黄色に呈色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。このときの反応混合液をサンプリングし、各測定を行った。メタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。次いで、反応混合液を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル240gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、−30℃にて5分間攪拌した。このときの反応混合液をサンプリングし、各測定を行った。アクリル酸n−ブチルの重合転化率は99.9%以上であった。この反応混合液に、さらにメタクリル酸メチル35.9gを加え、一晩室温にて攪拌後、メタノール3.50gを添加して重合反応を停止した。このときのメタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈澱物を析出させた。濾過により白色沈殿物を回収し、乾燥することで、PMMA−PnBA−PMMAからなるブロック共重合体[以下、これを「アクリル系トリブロック共重合体(B−5)」と称する]255gを得た。
【0084】
(2)アクリル系トリブロック共重合体(B−5)について
1H−NMR測定とGPC測定を行った結果、トリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は78,400、数平均分子量(Mn)は72,600であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。また、これら分析結果と重合の途中段階でサンプリングしたサンプルの
1H−NMR測定、GPC測定、MMAの仕込み量及びMMAの転化率から、重量平均分子量(Mw)が9,200である重合体ブロックが、重合体ブロックB1として含まれていることが分かった。さらに、各重合体ブロックの含有量は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(重合体ブロックB1)が23.5質量%で、アクリル酸n−ブチル重合体ブロック(重合体ブロックB2)が76.5質量%であった。結果を表1に示す。
【0085】
《合成例7》[アクリル系トリブロック共重合体(B−6)の合成]
(1)容量2Lの三口フラスコの内部を窒素で置換後、室温にてトルエン1040g、1,2−ジメトキシエタン100gを加え、続いてイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム32mmolを含有するトルエン溶液48gを加え、さらにsec−ブチルリチウム8.1mmolを加えた。次に、これにメタクリル酸メチル72gを加えた。反応混合液は当初、黄色に呈色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。このときの反応混合液をサンプリングし、各測定を行った。メタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。次いで、反応混合液を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル307gを2時間かけて滴下し、滴下終了後、−30℃にて5分間攪拌した。このときの反応混合液をサンプリングし、各測定を行った。アクリル酸n−ブチルの重合転化率は99.9%以上であった。この反応混合液に、さらにメタクリル酸メチル72gを加え、一晩室温にて攪拌後、メタノール4gを添加して重合反応を停止した。このときのメタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、白色沈澱物を析出させた。濾過により白色沈殿物を回収し、乾燥することで、PMMA−PnBA−PMMAからなるブロック共重合体[以下、これを「アクリル系トリブロック共重合体(B−6)」と称する]442gを得た。
【0086】
(2)アクリル系トリブロック共重合体(B−6)について
1H−NMR測定とGPC測定を行った結果、トリブロック共重合体であり、重量平均分子量(Mw)は62,000、数平均分子量(Mn)は52,100であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.19であった。また、これら分析結果と重合の途中段階でサンプリングしたサンプルの
1H−NMR測定、GPC測定、MMAの仕込み量及びMMAの転化率から、重量平均分子量(Mw)が9,900である重合体ブロックが、重合体ブロックB1として含まれていることが分かった。さらに、各重合体ブロックの含有量は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(重合体ブロックB1)が32質量%で、アクリル酸n−ブチル重合体ブロックB2(重合体ブロックB2)が68質量%であった。結果を表1に示す。
【0087】
《合成例8》[アクリル系ジブロック共重合体(B−7)の合成]
(1)容量2Lの三口フラスコの内部を窒素置換後、室温にてトルエン870g、1,2−ジメトキシエタン44.0gを加え、続いてイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20.7mmolを含有するトルエン溶液30.9gを加え、さらに、sec−ブチルリチウム5.17mmolを加えた。次に、これにメタクリル酸メチル21.7gを加えた。反応混合液は当初、黄色に着色していたが、室温にて60分間攪拌後には無色となった。このときの反応混合液をサンプリングし、各測定を行った。メタクリル酸メチルの重合転化率は99.9%以上であった。引き続き、重合液の内部温度を−30℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル288.4gを2時間かけて滴下し、滴下終了後−30℃にて5分間攪拌した後、メタノール3.5gを添加して重合反応を停止した。このとき、アクリル酸n−ブチルの重合転化率は99.9%以上であった。得られた反応液を15kgのメタノール中に注ぎ、油状沈澱物を析出させた。油状沈殿物を回収し、乾燥して、PMMA−PnBAからなるジブロック共重合体[以下、これを「アクリル系ジブロック共重合体(B−7)」と称する]310.0gを得た。
【0088】
(2)アクリル系ジブロック共重合体(B−7)について
1H−NMR測定とGPC測定を行った結果、重量平均分子量(Mw)は67,000、数平均分子量(Mn)は55,400であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.21であった。また、これら分析結果と重合の途中段階でサンプリングしたサンプルの
1H−NMR測定、GPC測定、MMAの仕込み量及びMMAの転化率から、重量平均分子量(Mw)が4,600である重合体ブロックが、重合体ブロックB1として含まれていることが分かった。さらに、各重合体ブロックの含有割合は、メタクリル酸メチル重合体ブロック(重合体ブロックB1)が6.9質量%で、アクリル酸n−ブチル重合体ブロック(重合体ブロックB2)が93.1質量%であった。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
《実施例1》
(1)アクリル系ランダム共重合体(A−1)100質量部、アクリル系トリブロック共重合体(B−1)16質量部及び粘着付与樹脂43質量部を混合した粘着剤組成物を、酢酸エチル/トルエン(質量比で35/22)混合溶剤で全体の固形分含量が25質量%になるように希釈し溶液を調製した。得られた溶液の外観は透明であり、濁ったり、二層に分離したりすることはなかった。
【0091】
(2)上記(1)で得られた粘着剤溶液に、架橋剤(商品名:L−45,イソシアネート系架橋剤,固形分45%,綜研化学社製)を加え、粘着剤を調製した。これをポリエチレンテレフタレート(PET)剥離フィルム(帝人デュポンフィルム製ピューレックスA43、厚さ50μm)上にバーコーターを使用して塗工した後、90℃で3分間乾燥して、粘着剤層/ポリエチレンテレフタレート剥離フィルムよりなる粘着フィルムを製造した。粘着フィルムにおける粘着剤層の厚さは、以下の表2に示すとおりであった。また、得られた粘着フィルムの粘着剤層は透明であった。乾燥後、ポリエチレンテレフタレート(PET)剥離フィルム(帝人デュポンフィルム製ピューレックスA50、厚さ50μm)を貼合させてフィルム状粘着シートを作製し、23℃50%RHの環境下で7日間エージング処理した。
【0092】
(3)上記(2)で得られたフィルム状粘着シートについて、以下の方法により、塩化ビニル樹脂板への曲面接着性を評価した。
【0093】
[曲面接着性評価]
上記で得られたフィルム状粘着シートを幅20mm×長さ180mmのサイズにカットし、第一の剥離フィルムを剥がして露出した第1粘着面に同じサイズにカットした厚さ0.4mmのアルミニウム板を貼り付けて裏打ちして試験片を作製した。この試験片を、23℃、50%RHの環境下、ラミネータを用いて、幅30mm×長さ200mmのサイズにカットした厚さ2mmの塩化ビニル樹脂板に圧着した後、同環境下で24時間保持した。試験片の貼り付けられた塩化ビニル樹脂板を弦長190mmの円弧状に反らせた。これを、70℃の雰囲気下で96時間保持し、上記試験片の端部が塩化ビニル樹脂板表面から浮きあがった距離を測定した。結果を表2に示す。
【0094】
《実施例2〜5、比較例1〜6》
アクリル系ランダム共重合体(A−1)とブロック共重合体(B−1)〜(B−4)の配合を表2に示す通りにした以外は、実施例1と同様にフィルム状粘着剤を作製し評価した。結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
表2の結果より、本願発明の規定を満たす粘着剤組成物を用いた実施例1〜4の粘着剤は、優れた曲面接着性を示し、本願発明の規定を満たさない粘着剤組成物を用いた比較例1〜3の粘着剤は、曲面接着性に劣るものであった。