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特許6161799光活性層、これを含む有機太陽電池およびその製造方法
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  • 特許6161799-光活性層、これを含む有機太陽電池およびその製造方法 図000027
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161799
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】光活性層、これを含む有機太陽電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/46 20060101AFI20170703BHJP
   C07C 233/07 20060101ALI20170703BHJP
   C07C 22/08 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   H01L31/04 162
   C07C233/07
   C07C22/08
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-512845(P2016-512845)
(86)(22)【出願日】2014年5月12日
(65)【公表番号】特表2016-519440(P2016-519440A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】KR2014004220
(87)【国際公開番号】WO2014182139
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2015年11月10日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0053376
(32)【優先日】2013年5月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】505282042
【氏名又は名称】ポステック・アカデミー‐インダストリー・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ビュンジュン・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ガン−ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジェチョル・イ
(72)【発明者】
【氏名】タイホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ハンケン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジンセク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソンリム・ジャン
【審査官】 河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/113450(WO,A1)
【文献】 特開2010−258143(JP,A)
【文献】 特開2011−140480(JP,A)
【文献】 特表2008−510868(JP,A)
【文献】 特表2008−531777(JP,A)
【文献】 特開2006−162842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42−51/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第1電極に対向して備えられる第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置される光活性層とを含む有機太陽電池であって、
前記光活性層は、フラーレン誘導体から選択される電子受容体、電子供与体、および下記化学式1−1〜1−5のうちのいずれか1つで表される化合物:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(化学式1−1〜1−5において、
a、bおよびdは、それぞれ0〜7の整数であり、
cおよびeは、それぞれ0〜5の整数であり、
〜R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のアリール基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロ環基である。)
を含むものである有機太陽電池。
【請求項2】
前記化学式1−1〜1−5のうちのいずれか1つで表される化合物、電子受容体の表面エネルギーを減少させるものである請求項1に記載の有機太陽電池。
【請求項3】
前記化学式1−1〜1−5のうちのいずれか1つで表される化合物は、前記電子受容体の重量対比0.25重量%〜1重量%である請求項1に記載の有機太陽電池。
【請求項4】
前記電子受容体の表面エネルギーは、前記電子供与体の表面エネルギーに対して0.1%〜30%程度の差が生じるものである請求項1に記載の有機太陽電池。
【請求項5】
前記光活性層の厚さは、60nm〜300nmである請求項1に記載の有機太陽電池。
【請求項6】
前記光活性層の表面粗さは、前記化学式1−1〜1−5のうちのいずれか1つで表される化合物を含まない場合に比べて30%〜55%低減したものである請求項1に記載の有機太陽電池。
【請求項7】
前記電子供与体と前記電子受容体との重量比率は、1:0.5〜1:5である請求項1に記載の有機太陽電池。
【請求項8】
前記有機太陽電池は、前記第1電極と前記光活性層との間に正孔輸送層および正孔注入層のうちの1つ以上をさらに含むものである請求項1に記載の有機太陽電池。
【請求項9】
前記有機太陽電池は、前記第2電極と前記光活性層との間に電子輸送層または正孔輸送層をさらに含むものである請求項1に記載の有機太陽電池。
【請求項10】
フラーレン誘導体から選択される電子受容体および電子供与体を含む光活性層であって、
前記光活性層は、下記化学式1−1〜1−5のうちのいずれか1つで表される化合物
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
(化学式1−1〜1−5において、
a、bおよびdは、それぞれ0〜7の整数であり、
cおよびeは、それぞれ0〜5の整数であり、
〜R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のアリール基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロ環基である。)
をさらに含むものである光活性層。
【請求項11】
前記化学式1−1〜1−5のうちのいずれか1つで表される化合物は、電子受容体の表面エネルギーを減少させるものである請求項10に記載の光活性層。
【請求項12】
前記化学式1−1〜1−5のうちのいずれか1つで表される化合物は、前記電子受容体の重量対比0.25重量%〜1重量%である請求項10に記載の光活性層。
【請求項13】
前記光活性層の表面粗さは、化学式1−1〜1−5のうちのいずれか1つで表される化合物を含まない場合に比べて30%〜55%低減したものである請求項10に記載の光活性層。
【請求項14】
前記電子受容体の表面エネルギーは、前記電子供与体の表面エネルギーに対して0.1%〜30%程度の差が生じるものである請求項10に記載の光活性層。
【請求項15】
基板を用意するステップと、
前記基板の一領域に第1電極を形成するステップと、
前記第1電極の上部に光活性層を含む有機物層を形成するステップと、
前記有機物層の上部に第2電極を形成するステップとを含み、
前記光活性層は、フラーレン誘導体から選択される電子受容体、電子供与体、および下記化学式1−1〜1−5のうちのいずれか1つで表される化合物:
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
(化学式1−1〜1−5において、
a、bおよびdは、それぞれ0〜7の整数であり、
cおよびeは、それぞれ0〜5の整数であり、
〜R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のアリール基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロ環基である。)
を含むものである有機太陽電池の製造方法。
【請求項16】
前記化学式1−1〜1−5のうちのいずれか1つで表される化合物は、前記電子受容体の重量対比0.25重量%〜1重量%である請求項15に記載の有機太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、光活性層、これを含む有機太陽電池およびその製造方法に関する。
【0002】
本明細書は、2013年5月10日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2013−0053376号の出願日の利益を主張し、その内容はすべて本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
太陽電池は、公害がないとの利点から、地球環境保存の観点で再評価されており、次世代クリーンエネルギー源としての研究が活発に行われている。
【0004】
現在まで知られている太陽電池の種類には、単結晶または多結晶バルクシリコンを用いた太陽電池、非晶質、微晶質、または多結晶質シリコンを用いた薄膜型太陽電池を含めて、化合物半導体太陽電池、燃料感応型太陽電池、および有機高分子太陽電池など非常に多様である。
【0005】
従来商用化された単結晶バルク(bulk)シリコンを用いた太陽電池は、高い製造単価および設置費のため、積極的な活用がされていない。
【0006】
このような費用問題を解決するために、有機物を用いた薄膜型太陽電池に関する研究が行われており、高効率太陽電池を製造するための様々な試みが提案されている。
【0007】
有機薄膜太陽電池技術は、高分子あるいは低分子有機半導体を用いて太陽エネルギーを電気エネルギーに変換させる技術で、有機物の最大の利点である安価な費用と製造工程の容易性に基づいて、薄膜型素子、大面積素子、ロールツーロール(roll−to−roll)方法などによる柔軟性(flexible)素子など、超低価格、多用途の大量生産工程をすべて備えた次世代技術である。
【0008】
通常、有機太陽電池は、電子供与体(electron donor)および電子受容体(electron acceptor)物質の接合構造の光活性層を含む。
【0009】
このような光活性層に光が入射すると、電子供与体で電子と正孔対が励起され、電子が電子受容体に移動することにより、電子と正孔の分離が起こる。したがって、光によって生成されたキャリアは、電子−正孔に分離される現象を経て外部回路に移動することにより電力を生産する。
【0010】
前記のような理由から、最近は価格が安いながらも柔軟基板に適用可能なバルクヘテロジャンクション(bulk heterojunction)有機太陽電池に対する関心が高まっている。
【0011】
米国公開特許第2006−0011233号には、電子供与体としてポリ−3−ヘキシルチオフェン(poly(3−hexylthiophene);P3HT)と、電子受容体として[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル([6,6]−phenyl−C61−butyric acid methyl ester;PCBM)を用い、スピンコーティング法で光活性層が導入された有機太陽電池が開示されているが、これらのエネルギー変換効率があまり高くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本明細書は、光活性層、これを含む有機太陽電池およびその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書の一実施態様において、第1電極と、第1電極に対向して備えられる第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される光活性層とを含む有機太陽電池であって、前記光活性層は、電子受容体、電子供与体、および表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を含むものである有機太陽電池を提供する。
【0014】
本明細書の一実施態様において、電子受容体および電子供与体を含む光活性層であって、前記光活性層は、前記電子受容体の表面エネルギーを減少させる官能基をさらに含む化合物を含むものである光活性層を提供する。
【0015】
もう一つの実施態様において、基板を用意するステップと、前記基板の一領域に第1電極を形成するステップと、前記第1電極の上部に光活性層を含む有機物層を形成するステップと、前記有機物層の上部に第2電極を形成するステップとを含み、前記光活性層は、電子受容体、電子供与体、および前記電子受容体の表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を含むものである有機太陽電池の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本明細書の一実施態様に係る有機太陽電池は、光活性層の内部に電子受容体の表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を導入して、光活性層内部の電子受容体および電子供与体を均一に分布させる。この場合、光活性層のモフォロジーを調節することができて、短絡電流密度、フィルファクターが増加できる。したがって、高効率の有機太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電子受容体の表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物の含有量に応じたP3HT/PCBMフィルム表面の硫黄/酸素原子の相対比率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本明細書を詳細に説明する。
【0019】
本明細書の一実施態様において、第1電極と、第1電極に対向して備えられる第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される光活性層とを含む有機太陽電池であって、前記光活性層は、電子受容体、電子供与体、および表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を含むものである有機太陽電池を提供する。
【0020】
本明細書において、電子供与体は、一般的に負電荷または非共有電子対を有するもので、正電荷または電子対の欠けた部分に電子を供与するものを意味する。追加的に、電子供与体は、負電荷や非共有電子対を持たなくても、電子受容体と混じり合った状態で光を受けた時に、分子自体の豊かな電子保持性質によって電気陰性度が大きい電子受容体に電子(excited electron)を伝達できるものを含む。
【0021】
本明細書において、電子受容体は、電子供与体から電子を受け入れるものを意味する。
【0022】
本明細書において、前記表面エネルギーとは、固体の表面張力を意味し、特定の溶媒を落として接触角を測定して計算される。接触角を測定して表面エネルギーを求める方法は、当業界で一般的に使用される方法である。
【0023】
本明細書の一実施態様において、前記表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物は、電子受容体または電子供与体と結合しないため、電子供与体または電子受容体の機能に影響を及ぼさない。
【0024】
また、本明細書の一実施態様において、前記表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物は、電子受容体または電子供与体の機能に影響を及ぼさない。さらに、前記表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物は、電子を受容または供与する役割をせず、表面エネルギーを減少させる。
【0025】
本明細書の一実施態様において、前記表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物は、電子供与体に比べて、電子受容体と親和力があるため、電子受容体の表面エネルギーを選択的に減少させることができる。
【0026】
本明細書の一実施態様において、前記表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物は、電子受容体の表面エネルギーを減少させる。
【0027】
前記電子受容体の表面エネルギーを選択的に減少させる場合、相対的に表面エネルギーが低く、光活性層の表面に電子供与体が密集する現象を防止する。また、電子受容体と電子供与体との表面エネルギーの差を減らすことで、光活性層の内部に電子受容体および電子供与体が均一に分布可能になり、適切な光活性層のモフォロジーを提供することができる。この場合、高効率の有機太陽電池を提供することができる。
【0028】
本明細書の一実施態様において、表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を入れた場合、前記電子受容体の表面エネルギーは、前記電子供与体の表面エネルギーに対して0.1%〜30%程度の差が生じる。
【0029】
本明細書の一実施態様において、前記表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物は、常温で固体化合物であり、光活性層を製造した後も光活性層の内部に残留する。
【0030】
すなわち、本明細書の一実施態様に係る前記表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物は、電子受容体および電子供与体を溶かす溶媒として作用しない。
【0031】
前記表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物は、光活性層の内部に残留して、電子受容体および電子供与体を均一に分布させ、光活性層のモフォロジーを調節する役割を果たす。
【0032】
本明細書の一実施態様において、前記表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物は、前記電子受容体の重量対比0.25重量%〜1重量%である。
【0033】
前記範囲では、電子受容体の表面エネルギーを電子供与体の表面エネルギーと類似して調節することができる。したがって、電子受容体と電子供与体との表面エネルギーの差を減らすことで、光活性層内部の電子受容体と電子供与体を均一に分布させ、光活性層の表面粗さを低減する効果を与えることができる。
【0034】
図1は、電子受容体の表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物の含有量に応じたP3HT/PCBMフィルム表面の硫黄/酸素原子の相対比率を示す図である。
【0035】
具体的には、P3HT内の硫黄原子とPCBM内の酸素原子との比率を二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectroscopy:SIMS)で測定した。
【0036】
図1に示されるように、表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を含まない光活性層のフィルム表面は、硫黄/酸素原子の比率が約2倍に近い。これは、表面に電子供与体(P3HT)が存在することを確認することができる。表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を含む場合、硫黄/酸素の比率が減少することを確認することができる。
【0037】
また、表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−N−フェニル−ブチルアミド(2,2,3,3,4,4,4−heptafluoro−N−phenyl−butylamide))を0.25重量%〜1重量%の範囲内で、光活性層表面の硫黄と酸素との含有量が類似することを確認することができる。これは、電子受容体と電子供与体が均一に分布することを裏付けることができる。
【0038】
本明細書の一実施態様において、前記表面エネルギーを減少させる官能基は、少なくとも1つのフルオロ基(F)を含む。
【0039】
本明細書の一実施態様において、前記表面エネルギーを減少させる官能基は、炭素数1〜20の置換もしくは非置換のアルキル基を含み、前記アルキル基は、少なくとも1つのフルオロ基が置換される。
【0040】
本明細書の一実施態様において、表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物は、下記化学式1で表される化合物を提供する。
【0041】
【化1】
【0042】
化学式1において、
Arは、置換もしくは非置換のアリール基;または置換もしくは非置換のヘテロ環基であり、
Lは、直接結合;置換もしくは非置換の2価のアミド基;置換もしくは非置換のアルキレン基;置換もしくは非置換のアリーレン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換の2価のヘテロ環基であり、
Rは、少なくとも1つのフルオロ基で置換された炭素数1〜20のアルキル基である。
【0043】
本明細書の一実施態様において、前記Arは、置換もしくは非置換のナフチル基である。
【0044】
本明細書の一実施態様において、前記Arは、置換もしくは非置換のフルオレニル基である。
【0045】
本明細書の一実施態様において、前記Arは、置換もしくは非置換のフェニル基である。
【0046】
本明細書の一実施態様において、前記Lは、置換もしくは非置換の2価のアミド基である。
【0047】
本明細書の一実施態様において、前記Lは、置換もしくは非置換のアルキレン基である。
【0048】
本明細書の一実施態様において、前記Lは、フルオロ基で置換されたアルキレン基である。
【0049】
本明細書の一実施態様において、前記Lは、直接結合である。
【0050】
本明細書の一実施態様において、前記Rは、少なくとも1つのフルオロ基で置換されたアルキル基である。
【0051】
本明細書の一実施態様において、前記Rは、ヘプタフルオロプロピル基である。
【0052】
本明細書の一実施態様において、前記Rは、ノナフルオロブチル基である。
【0053】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式1−1〜1−5のうちのいずれか1つで表される化合物を提供するが、これに限定されない。
【0054】
【化2】
【0055】
【化3】
【0056】
【化4】
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】
化学式1−1〜1−5において、
a、bおよびdは、それぞれ0〜7の整数であり、
cおよびeは、それぞれ0〜5の整数であり、
〜R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のアリール基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含む置換もしくは非置換のヘテロ環基である。
【0060】
前記置換基の例示は以下に説明するが、これに限定されるものではない。
【0061】
本明細書において、「置換もしくは非置換」は、ハロゲン基、ニトリル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリルチオ基、スルホキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、シリル基、ホウ素基、アリールアミン基、アラルキルアミン基、アルキルアミン基、アリール基、フルオレニル基、カルバゾール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、ヘテロ環基、およびアセチレン基からなる群より選択された1個以上の置換基で置換されているか、いずれの置換基も有しないことを意味する。
【0062】
本明細書において、ヘテロ環基は、異種原子としてO、NまたはSを含むヘテロ環基であって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2−60であることが好ましい。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、トリアジン基、アクリジル基、ピリダジン基、キノリニル基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラン基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0063】
本明細書において、アルキル基は、直鎖、分枝鎖または環鎖であってもよい。
【0064】
アルキル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1〜25であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などになっていてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0065】
本明細書において、アルケニル基としては、直鎖または分枝鎖であってもよく、炭素数2〜40のアルケニル基が好ましく、具体的には、スチルベニル基(stylbenyl)、スチレニル基(styrenyl)などのアリール基の置換されたアルケニル基が好ましいが、これらに限定されない。
【0066】
本明細書において、アルコキシ基は、直鎖、分枝鎖または環鎖であってもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1〜25であることが好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基などになっていてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0067】
本明細書において、アリール基は、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよく、炭素数1〜25のアルキル基、または炭素数1〜25のアルコキシ基が置換される場合を含む。また、本明細書におけるアリール基は、芳香族環を意味することができる。
【0068】
前記アリール基が単環式アリール基の場合、炭素数は特に限定されないが、炭素数6〜25であることが好ましい。具体的には、単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、スチルベニル基などになっていてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0069】
前記アリール基が多環式アリール基の場合、炭素数は特に限定されないが、炭素数10〜24であることが好ましい。具体的には、多環式アリール基としては、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などになっていてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0070】
本明細書において、アミド基は、アミド基の窒素が水素、炭素数1〜25の直鎖、分枝鎖または環鎖アルキル基、または炭素数6〜25のアリール基で1または2置換されていてもよい。具体的には、下記構造式の化合物になっていてもよいが、これに限定されるものではない。
【0071】
【化7】
【0072】
本明細書において、2価のアミド基、アリーレン基、2価のヘテロ環基は、それぞれアミド基、アリール基、ヘテロ環基に結合位置が2つあるものを意味する。これらは、それぞれ2価基であることを除いて、上述したアミド基、アリール基、ヘテロ環基の説明が適用可能である。
【0073】
本明細書の一実施態様において、前記電子受容体は、フラーレン誘導体または非フラーレン誘導体である。
【0074】
本明細書の一実施態様において、前記フラーレン誘導体は、C60フラーレン誘導体、C70フラーレン誘導体、C76フラーレン誘導体、C78フラーレン誘導体、C84フラーレン誘導体、およびC90フラーレン誘導体からなる群より選択される。
【0075】
もう一つの実施態様において、前記非フラーレン誘導体は、LUMOエネルギー準位が−2.0〜−6.0eVである。もう一つの実施態様において、前記非フラーレン誘導体は、LUMOエネルギー準位が−2.5〜−5.0eVである。もう一つの実施態様において、前記非フラーレン誘導体は、LUMOエネルギー準位は−3.5〜−4.5eVである。
【0076】
本明細書の一実施態様において、前記電子受容体は、[6,6]−フェニルC−酪酸メチルエステル(PCBM)である。
【0077】
本明細書の一実施態様において、前記電子供与体は、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)である。
【0078】
本明細書の一実施態様において、前記光活性層の電子受容体および電子供与体は、バルクヘテロジャンクション(BHJ)を形成することができる。
【0079】
本明細書の一実施態様において、前記光活性層の厚さは、60nm〜300nmである。
【0080】
本明細書において、前記光活性層の厚さとは、光活性層の一表面とそれに対向する表面との間の幅を意味する。
【0081】
本明細書の一実施態様において、前記光活性層の表面粗さは、表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を含まない場合に比べて30%〜55%低減したものである有機太陽電池を提供する。
【0082】
光活性層の表面粗さは、光活性層の熱処理温度に影響を受ける。本明細書において、表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM(Atomic Force Microscopy))を用いて測定される。
【0083】
本明細書において、粗さとは、表面に残された光活性層製造工程の固有の属性が表面上に存在する不規則な成分を意味する。
【0084】
光活性層の表面粗さが増加すると、高い接触抵抗を誘発することがある。本明細書の一実施態様に係る有機太陽電池は、表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を添加して、電子供与体および電子受容体のドメインサイズを減少させて表面粗さが低減できる。
【0085】
本明細書の一実施態様において、前記電子受容体の表面エネルギーは、前記表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を含まない場合に比べて15%〜55%減少できる。
【0086】
本明細書の電子受容体の表面エネルギーは、30mN/m〜48mN/mである。
【0087】
本明細書の一実施態様において、前記電子供与体および電子受容体の重量比率は、1:0.5〜1:5である。
【0088】
本明細書の一実施態様において、前記有機太陽電池は、前記第1電極と前記光活性層との間に正孔輸送層および正孔注入層のうちの1つ以上をさらに含む。
【0089】
本明細書の一実施態様において、前記有機太陽電池は、前記第2電極と前記光活性層との間に電子輸送層をさらに含む。
【0090】
本明細書の一実施態様において、前記有機太陽電池は、前記第2電極と前記光活性層との間に電子輸送層または正孔輸送層をさらに含む。
【0091】
本明細書の一実施態様において、電子受容体および電子供与体を含む光活性層であって、前記光活性層は、表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物をさらに含むものである光活性層を提供する。
【0092】
前記電子受容体、電子供与体、および表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物に関する説明は上述した通りである。
【0093】
本明細書の一実施態様において、前記表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物は、電子受容体の表面エネルギーを減少させる。
【0094】
本明細書の一実施態様において、前記電子受容体の表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物は、前記電子受容体の重量対比0.25重量%〜1重量%である。
【0095】
もう一つの実施態様において、前記光活性層の表面粗さは、表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を含まない場合に比べて30%〜55%低減する。
【0096】
もう一つの実施態様において、前記電子受容体の表面エネルギーは、表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を含まない場合に比べて15%〜55%減少する。
【0097】
もう一つの実施態様において、前記電子受容体の表面エネルギーは、前記電子供与体の表面エネルギーに対して0.1%〜30%程度の差が生じる。
【0098】
本明細書の一実施態様において、第1電極は、アノード電極であってもよく、カソード電極であってもよい。また、第2電極は、カソード電極であってもよく、アノード電極であってもよい。
【0099】
本明細書の一実施態様において、有機太陽電池は、アノード電極、光活性層、およびカソード電極の順に配列されてもよく、カソード電極、光活性層、およびアノード電極の順に配列されてもよいが、これに限定されない。
【0100】
もう一つの実施態様において、前記有機太陽電池は、アノード電極、正孔輸送層、光活性層、電子輸送層、およびカソード電極の順に配列されてもよく、カソード電極、電子輸送層、光活性層、正孔輸送層、およびアノード電極の順に配列されてもよいが、これに限定されない。
【0101】
もう一つの実施態様において、前記有機太陽電池は、アノード電極、バッファ層、光活性層、カソード電極の順に配列されてもよい。
【0102】
本明細書の一実施態様において、基板を用意するステップと、前記基板の一領域に第1電極を形成するステップと、前記第1電極の上部に光活性層を含む有機物層を形成するステップと、前記有機物層の上部に第2電極を形成するステップとを含み、前記光活性層は、電子受容体、電子供与体、および前記電子受容体の表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を含むものである有機太陽電池の製造方法を提供する。
【0103】
本明細書の一実施態様において、前記電子受容体の表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物は、前記電子受容体の重量対比0.25重量%〜1重量%である。
【0104】
前記電子受容体、電子供与体、および表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物に関する説明は上述した通りである。
【0105】
本明細書の有機太陽電池は、光活性層に表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を含むことを除いては、当技術分野で知られている材料と方法で製造できる。
【0106】
前記基板は、透明性、表面平滑性、取扱容易性および防水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板になっていてもよいが、これに限定されず、有機太陽電池に通常使用される基板であれば制限はない。具体的には、ガラス、またはPET(polyethylene terephthalate)、PEN(polyethylene naphthalate)、PP(polypropylene)、PI(polyimide)、TAC(triacetyl cellulose)などがあるか、これらに限定されるものではない。
【0107】
前記アノード電極は、透明で導電性に優れた物質になっていてもよいが、これに限定されない。バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSNO:Sbのような金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0108】
前記アノード電極の形成方法は特に限定されないが、例えば、スパッタリング、E−ビーム、熱蒸着、スピンコーティング、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、ドクターブレード、またはグラビアプリンティング法を用いて基板の一面に塗布されたり、フィルム形態にコーティングされることにより形成されてもよい。
【0109】
前記アノード電極を基板上に形成する場合、これは、洗浄、水分除去および親水性改質過程を経ることができる。
【0110】
例えば、パターニングされたITO基板を、洗浄剤、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次に洗浄した後、水分除去のために、加熱板にて100〜150℃で1〜30分間、好ましくは120℃で10分間乾燥し、基板が完全に洗浄されると、基板表面を親水性に改質する。
【0111】
前記のような表面改質により、接合表面電位を光活性層の表面電位に適した水準に維持することができる。また、改質時、アノード電極上に高分子薄膜の形成が容易になり、薄膜の品質が向上することもできる。
【0112】
アノード電極の前処理技術としては、a)平行平板型放電を利用した表面酸化法、b)真空状態でUV紫外線を用いて生成されたオゾンにより表面を酸化する方法、およびc)プラズマによって生成された酸素ラジカルを用いて酸化する方法などがある。
【0113】
アノード電極または基板の状態に応じて、前記方法のうちの1つを選択することができる。ただし、どの方法を利用しても、共通にアノード電極または基板表面の酸素離脱を防止し、水分および有機物の残留を最大限に抑制することが好ましい。この時、前処理の実質的な効果を極大化することができる。
【0114】
具体例として、UVを用いて生成されたオゾンにより表面を酸化する方法を使用することができる。この時、超音波洗浄後、パターニングされたITO基板を加熱板(hot plate)にてベーキング(baking)してよく乾燥させた後、チャンバに投入し、UVランプを作用させて酸素ガスがUV光と反応して発生するオゾンによりパターニングされたITO基板を洗浄することができる。
【0115】
しかし、本明細書におけるパターニングされたITO基板の表面改質方法は特に限定する必要はなく、基板を酸化させる方法であればいずれの方法でも構わない。
【0116】
前記カソード電極は、仕事関数が小さい金属になっていてもよいが、これに限定されない。具体的には、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属、またはこれらの合金;LiF/Al、LiO/Al、LiF/Fe、Al:Li、Al:BaF、Al:BaF:Baのような多層構造の物質になっていてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0117】
前記カソード電極は、5x10−7torr以下の真空度を示す熱蒸着器の内部で蒸着されて形成されてもよいが、この方法にのみ限定されるものではない。
【0118】
前記正孔輸送層および/または電子輸送層物質は、光活性層で分離された電子と正孔を電極に効率的に伝達させる役割を担い、物質を特に制限しない。
【0119】
前記正孔輸送層物質は、PEDOT:PSS(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)doped with poly(styrenesulfonic acid))、モリブデン酸化物(MoO);バナジウム酸化物(V);ニッケル酸化物(NiO);およびタングステン酸化物(WO)などになっていてもよいが、これらにのみ限定されるものではない。
【0120】
前記電子輸送層物質は、電子抽出金属酸化物(electron−extracting metal oxides)になっていてもよいし、具体的には、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体;Alqを含む錯体;Liqを含む金属錯体;LiF;Ca;チタン酸化物(TiO);亜鉛酸化物(ZnO);およびセシウムカーボネート(CsCO)などになっていてもよいが、これらにのみ限定されるものではない。
【0121】
光活性層は、電子供与体および/または電子受容体のような光活性物質を有機溶媒に溶解させた後、溶液をスピンコーティング、ディップコーティング、スクリーンプリンティング、スプレーコーティング、ドクターブレード、ブラシペインティングなどの方法で形成することができるが、これらの方法にのみ限定されるものではない。
【0122】
本明細書の一実施態様に係る有機太陽電池の製造は、以下の実施例で具体的に説明する。しかし、下記の実施例は本明細書を例示するためのものであり、本明細書の範囲がこれらにより限定されるものではない。
【実施例】
【0123】
「電子受容体の表面エネルギーの測定」
表面エネルギーの添加量に応じた電子受容体(PCBM)の表面エネルギーの変化は下記表1の通りである。
【0124】
前記表面エネルギーは、イオン水とグリセロールの2つの溶媒に対する接触角を測定して求めた。
【0125】
【表1】
【0126】
電子供与体(P3HT)の表面エネルギーは32.3mN/mで、表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−N−フェニル−ブチルアミド(2,2,3,3,4,4,4−heptafluoro−N−phenyl−butylamide))を0.25重量%〜1重量%添加する場合、電子供与体と類似の表面エネルギーを有することを確認することができる。電子供与体と電子受容体との表面エネルギーが類似するため、光活性層の内部で電子供与体と電子受容体の均一な分布を有することができる。
【0127】
「光活性層の表面粗さの測定」
表面エネルギーの添加量に応じた光活性層の表面粗さの変化は下記表2の通りである。前記粗さは原子間力顕微鏡(AFM(Atomic Force Microscopy))を用いて測定した。
【0128】
【表2】
【0129】
電子供与体(P3HT)および電子受容体(PCBM)を含む光活性層は、熱処理後、2つの物質のドメインサイズが大きく形成され、電子受容体と電子供与体との接触面積が減少する。
【0130】
電子供与体、電子受容体、および表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−N−フェニル−ブチルアミド(2,2,3,3,4,4,4−heptafluoro−N−phenyl−butylamide))を0.25重量%〜1重量%添加する場合、各物質のドメインサイズが減少して表面粗さが低減されることを確認することができる。この場合、電子供与体と電子受容体との間の表面接触面積が増加できる。
【0131】
「光活性層表面の硫黄/酸素原子の比率の測定」
電子供与体(P3HT)内の硫黄原子と電子受容体(PCBM)内の酸素原子との比率を二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectroscopy:SIMS)で測定した。
【0132】
図1は、電子受容体の表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物の含有量に応じたP3HT/PCBMフィルム表面の硫黄/酸素原子の相対比率を示す図である。
【0133】
図1に示されるように、表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を含まない光活性層のフィルム表面は、硫黄/酸素原子の比率が約2倍に近い。これは、表面に電子供与体(P3HT)が存在することを確認することができる。表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を含む場合、硫黄/酸素の比率が減少することを確認することができる。表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−N−フェニル−ブチルアミド(2,2,3,3,4,4,4−heptafluoro−N−phenyl−butylamide))を0.25重量%〜1重量%の範囲内で、光活性層表面の硫黄と酸素との含有量が類似することを確認することができる。これは、電子受容体と電子供与体が均一に分布することを裏付けることができる。
【0134】
実施例1
[パターニングされたITO基板の洗浄]
パターニングされたITOガラス(面抵抗〜125Ω/sq、SHINAN SNP、韓国)基板の表面を洗浄するために、洗浄剤(Alconox、Aldrich、米国)のアセトンおよびイソプロピルアルコール(IPA)を用いて順次にそれぞれ20分ずつ超音波洗浄を行った後、窒素で水気を完全に吹き飛ばした後、加熱板にて120℃で10分間乾燥して水分を完全に除去した。パターニングされたITO基板の洗浄が完了すると、UVO洗浄機(UVO cleaner、Ahtech LTS、韓国)で10分間表面を親水性に改質した。
【0135】
[正孔伝達層の製造]
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4−スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS_Clevious P AI4083)にイソプロピルアルコール(IPA)を1:2で混合した後、約30nmの厚さにスピンコーティング後、180℃のホットプレート(hot plate)にて12分間熱処理した。
【0136】
[光活性層の製造]
電子供与体はポリ(3−ヘキシルチオフェン)(Poly−3−hexylthiophene:P3HT)、電子受容体は[6,6]−フェニルC60−酪酸メチルエステル(PCBM)を用いた。P3HTとPCBM(60)を1:1の重量比で混合した光活性層材料に、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−N−フェニル−ブチルアミド(2,2,3,3,4,4,4−heptafluoro−N−phenyl−butylamide)をPCBM対比0.25重量%添加して、1,2−ジクロロベンゼンとクロロベンゼンが9:1で混合された溶媒に溶解させて、PEDOT:PSS層の上部にスピンコーティングして、厚さ230nmの光活性層を形成した。
【0137】
[電極の製造]
前記手順で製造後、熱蒸着器の内部でCaを3nm蒸着した後、アルミニウム電極を100nm蒸着して、面積が0.04cmの有機太陽電池セルを製造した。
【0138】
実施例2
光活性層の製造において、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−N−フェニル−ブチルアミド(2,2,3,3,4,4,4−heptafluoro−N−phenyl−butylamide)をPCBM対比0.5重量%混合したことを除いては、実施例1と同様に実施した。
【0139】
実施例3
光活性層の製造において、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−N−フェニル−ブチルアミド(2,2,3,3,4,4,4−heptafluoro−N−phenyl−butylamide)をPCBM対比1重量%混合したことを除いては、実施例1と同様に実施した。
【0140】
実施例4
光活性層の製造において、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−N−フェニル−ブチルアミド(2,2,3,3,4,4,4−heptafluoro−N−phenyl−butylamide)をPCBM対比3.0重量%混合したことを除いては、実施例1と同様に実施した。
【0141】
実施例5
光活性層の製造において、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−N−フェニル−ブチルアミド(2,2,3,3,4,4,4−heptafluoro−N−phenyl−butylamide)をPCBM対比5.0重量%混合したことを除いては、実施例1と同様に実施した。
【0142】
実施例6
光活性層の製造において、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−N−フェニル−ブチルアミド(2,2,3,3,4,4,4−heptafluoro−N−phenyl−butylamide)をPCBM対比10.0重量%混合したことを除いては、実施例1と同様に実施した。
【0143】
比較例1
光活性層の製造において、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−N−フェニル−ブチルアミド(2,2,3,3,4,4,4−heptafluoro−N−phenyl−butylamide)を添加しなかったことを除いては、実施例1と同様に実施した。
【0144】
「有機太陽電池の特性評価」
実施例1〜6および比較例1で製造した有機太陽電池の電気光学的特性を測定するために、Oriel solar simulator(class AAA)を用いて標準条件(Air mass1.5Clobal、100mW/cm)で電流−電圧密度を測定した。
【0145】
前記有機太陽電池の光短絡電流密度(Jsc)、光開放電圧(Voc)、フィルファクター(Fill Factor、FF)、およびエネルギー変換効率を下記表3に示した。
【0146】
この時、フィルファクターは、最大電力点において、電圧値(Vmax)*電流密度(Jmax)/(Voc*jsc)、エネルギー変換効率はFF*(Jsc*Voc)/Pin、Pin=100[mW.cm]で計算した。
【0147】
【表3】
【0148】
表1において、含有量は2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−N−フェニル−ブチルアミドの電子受容体(PCBM)対比の含有量を意味し、Jscは短絡電流密度を、FFは充電率(Fill factor)を、PCEは光電変換効率を意味する。開放電圧と短絡電流は、それぞれ電圧−電流密度曲線の四象限においてX軸とY軸の切片であり、これら2つの値が高いほど、太陽電池の効率は好ましく高まる。また、充電率(Fill factor)は、曲線の内部に描くことのできる矩形の広さを短絡電流と開放電圧の積で割った値である。これら3つの値を照射された光の強度で割るとエネルギー変換効率を求めることができ、高い値であるほど好ましい。
【0149】
表1に示されるように、比較例1の光電変換効率は3.2%であるのに対し、表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物が添加された実施例1〜6の場合、光電変換効率が増加した。特に、表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物の含有量が0.25重量%〜1重量%の場合、光電変換効率は約25%以上増加することを確認することができる。また、短絡電流密度も表面エネルギーを減少させる官能基を含む化合物を添加する場合に増加することを確認することができる。
図1