(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の変質工程における混合ガスの圧力と、前記第1の変質工程における混合ガスの圧力との差を100mTorr以上、200mTorr以下にすることを特徴とする請求項1又は2に記載のエッチング方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ウェハWの溝底部の犠牲酸化膜103をエッチングする場合、特許文献1,2に記載されたエッチング方法を含む従来のドライエッチング方法では、変質工程における犠牲酸化膜103と混合ガスとの反応が処理時間と共に鈍くなり、処理時間に対する犠牲酸化膜103の変質量が飽和状態(Saturation)となってしまう。
【0006】
この現象は、混合ガス中のアンモニアガスと犠牲酸化膜103との反応により生成される反応生成物(アンモニウムフルオロシリケート)が原因となって引き起こされる。反応生成物105は、変質工程における犠牲酸化膜103の変質処理時間に比例して厚く形成されていく。混合ガスがそのように厚く形成された反応生成物中を通過する場合、混合ガスの通過速度が低下してしまい、混合ガスが溝底部の犠牲酸化膜103に到達しにくくなる。これにより、溝底部において犠牲酸化膜103が変質しにくくなり、その後の加熱工程で反応生成物105を昇華させても、未変質の犠牲酸化膜103が残存してしまう。
【0007】
また、
図2に示す通り、従来のエッチング方法では、溝底部の中央部に比べて溝底部の周縁部の方が犠牲酸化膜103が変質しにくい傾向にある。このため、例えば、溝底部の中央部の犠牲酸化膜103が完全に除去されたタイミングで変質処理を終了させると、溝底部の周縁部には犠牲酸化膜103が残存してしまう。
【0008】
エッチング工程において犠牲酸化膜103を十分に除去することができなかった場合、後工程において成膜されるゲート酸化膜の膜厚が、残存する犠牲酸化膜103の厚み分だけ減少することになってしまう。その結果、有効チャネル長が短くなってしまい、半導体としての性能が低下することになる。そのような事態を避けるため、犠牲酸化膜103のエッチング工程においては溝底部の犠牲酸化膜103を均一、かつ、十分に除去する必要がある。すなわち、エッチング工程の変質工程において溝底部の犠牲酸化膜103を均一、かつ、十分に変質させる必要がある。
【0009】
前述の通り、犠牲酸化膜103と混合ガスとの変質反応は変質処理時間の経過と共に鈍くはなるものの、変質処理時間を長くすることにより溝底部の周縁部の犠牲酸化膜103を全て変質させることは可能である。しかし、変質処理時間を長くすると、HDP−SiO
2膜101の上面部においても変質反応が進んでしまい、所望の膜厚を得ることができなくなってしまう。
【0010】
また、別の方法としては、反応生成物105の生成量が多くなった段階で、一度反応生成物105を昇華させ、再度混合ガスを供給して犠牲酸化膜103の変質を行う方法もある。しかしながら、反応生成物105を昇華させるためには、ウェハWの加熱が必要となることから、チャンバー内の加熱又は別の加熱用チャンバーに搬送するといった加熱工程を変質工程の中に入れることになり犠牲酸化膜103の除去に時間がかかってしまう。さらに、犠牲酸化膜103を十分に変質させるために、変質工程と加熱工程を何度も繰り返すことが必要になる場合もあることから、このようなエッチング方法では生産性が低下することになる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ウェハに形成されたシリコン酸化膜を均一、かつ、十分にエッチングできるエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明によれば、シリコン酸化膜の表面に混合ガスを供給し、前記シリコン酸化膜と前記混合ガスとを化学反応させ、前記シリコン酸化膜を変質させて反応生成物を生成させる変質工程と、前記反応生成物を加熱して除去する加熱工程とを有するシリコン酸化膜のエッチング方法であって、前記変質工程は、前記シリコン酸化膜の表面に、ハロゲン元素を含むガスと塩基性ガスとを含有した混合ガスを供給する第1の変質工程と、前記塩基性ガスの供給を停止し、前記シリコン酸化膜の表面にハロゲン元素を含むガスを含有した混合ガスを供給する第2の変質工程とを有
し、前記第2の変質工程における混合ガスの圧力を前記第1の変質工程における混合ガスの圧力よりも高くすることを特徴とするエッチング方法が提供される。
【0013】
前記ハロゲン元素を含むガスがフッ化水素ガスであり、前記塩基性ガスがアンモニアガスであることが好ましい。
【0014】
前記第2の変質工程における混合ガスの圧力と、前記第1の変質工程における混合ガスの圧力との差を100mTorr以上、200mTorr以下にしても良い。
【0015】
前記第1の変質工程における混合ガスの圧力を20mTorr以上、600mTorr以下にしても良い。前記第1の変質工程における混合ガス中のフッ化水素ガスの分圧を5mTorr以上、200mTorr以下にしても良い。前記第1の変質工程におけるフッ化水素ガスの流量を100sccm以上、500sccm以下にしても良い。前記変質工程における混合ガスの温度を20℃以上、120℃以下にしても良い。
【0016】
前記シリコン酸化膜は、シリコンウェハに形成された溝の底部に形成されたものであっても良い。前記シリコン酸化膜は、犠牲酸化膜であっても良い。
【0017】
また、本発明によれば、処理システムの制御コンピュータによって実行することが可能なプログラムが記録された記録媒体であって、前記プログラムは、前記制御コンピュータによって実行されることにより、前記処理システムに、上記のいずれかのエッチング方法を行わせるものであることを特徴とする、記録媒体も提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1の変質工程の後に第2の変質工程を行うことにより、ウェハに形成された犠牲酸化膜を均一、かつ、十分に変質させることができる。これにより、その後の加熱工程において反応生成物を昇華させることで犠牲酸化膜を残存させることなく均一、かつ、十分に除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。先ず、本実施の形態にかかるエッチング方法によって処理される基板であるウェハの状態について説明する。
図1に示す通り、ウェハWは、例えば略円盤形に形成された薄板状をなすシリコンウェハであり、Si(シリコン)層100の表面上には、例えばHDP−SiO
2膜(シリコン酸化膜)101が形成されている。このHDP−SiO
2膜101は、バイアス高密度プラズマCVD法(HDP−CVD法)を用いて形成されたCVD系のシリコン酸化膜(プラズマCVD酸化膜)であり、層間絶縁膜として用いられる。
【0021】
HDP−SiO
2膜101の間には、コンタクトホールHが形成されており、コンタクトホールHの側壁部は、絶縁体である例えばSiN膜104が形成されている。このSiN膜104の下端部は、ウェハWの上面に接触する位置まで形成されている。また、コンタクトホールHの底部には、シリコン酸化膜の一例である犠牲酸化膜103が形成されている。
【0022】
次に、上記ウェハWに対してコンタクトホールHの底部に形成された犠牲酸化膜103のエッチング処理を行う処理システムについて説明する。
図3に示す処理システム1は、ウェハWを処理システム1に対して搬入出させる搬入出部2、搬入出部2に隣接させて設けられた2つのロードロック室3、各ロードロック室3にそれぞれ隣接させて設けられ、加熱工程としてのPHT(Post
Heat Treatment)処理工程を行うPHT処理装置4、各PHT処理装置4にそれぞれ隣接させて設けられ、変質工程としてのCOR(Chemical
Oxide Removal)処理工程を行うCOR処理装置5、処理システム1の各部に制御命令を与える制御コンピュータ8を有している。各ロードロック室3に対してそれぞれ連結されたPHT処理装置4、COR処理装置5は、ロードロック室3側からこの順に一直線上に並べて設けられている。
【0023】
搬入出部2は、例えば略円盤形状をなすウェハWを搬送する第一のウェハ搬送機構11が内部に設けられた搬送室12を有している。ウェハ搬送機構11は、ウェハWを略水平に保持する2つの搬送アーム11a、11bを有している。搬送室12の側方には、ウェハWを複数枚並べて収容可能なキャリア13aを載置する載置台13が、例えば3つ備えられている。また、ウェハWを回転させて偏心量を光学的に求めて位置合わせを行うオリエンタ14が設置されている。
【0024】
かかる搬入出部2において、ウェハWは、搬送アーム11a、11bによって保持され、ウェハ搬送装置11の駆動により略水平面内で回転及び直進移動、また昇降させられることにより、所望の位置に搬送させられる。そして、載置台10上のキャリア13a、オリエンタ14、ロードロック室3に対してそれぞれ搬送アーム11a、11bが進退させられることにより、搬入出させられるようになっている。
【0025】
各ロードロック室3は、搬送室12との間にそれぞれゲートバルブ16が備えられた状態で、搬送室12にそれぞれ連結されている。各ロードロック室3内には、ウェハWを搬送する第二のウェハ搬送機構17が設けられている。ウェハ搬送機構17は、ウェハWを略水平に保持する搬送アーム17aを有している。また、ロードロック室3は真空引き可能になっている。
【0026】
かかるロードロック室3において、ウェハWは、搬送アーム17aによって保持され、ウェハ搬送機構17の駆動により略水平面内で回転及び直進移動、また昇降させられることにより搬送させられる。そして、各ロードロック室3に対して縦列に連結されたPHT処理装置4に対して搬送アーム17aが進退させられることにより、PHT処理装置4に対してウェハWが搬入出させられる。さらに、各PHT処理装置4を介してCOR処理装置5に対して、搬送アーム17aが進退させられることにより、COR処理装置5に対してウェハWが搬入出させられるようになっている。
【0027】
PHT処理装置4は、ウェハWを収納する密閉構造の処理室(処理空間)21を備えている。また、図示はしないが、ウェハWを処理室21内に搬入出させるための搬入出口が設けられており、この搬入出口を開閉するゲートバルブ22が設けられている。処理室21は、ロードロック室3との間にそれぞれゲートバルブ22が備えられた状態で、ロードロック室3に連結されている。
【0028】
図4に示すように、PHT処理装置4の処理室21内には、ウェハWを略水平にして載置させる載置台23が設けられている。さらに、処理室21に例えば窒素ガス(N
2)などの不活性ガスを加熱して供給する供給路25を備えた供給機構26、処理室21を排気する排気路27を備えた排気機構28が備えられている。供給路25は窒素ガスの供給源30に接続されている。また、供給路25には、供給路25の開閉動作及び窒素ガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁31が介設されている。排気路27には、開閉弁32、強制排気を行うための排気ポンプ33が介設されている。
【0029】
なお、PHT処理装置4のゲートバルブ22、流量調整弁31、開閉弁32、排気ポンプ33等の各部の動作は、制御コンピュータ8の制御命令によってそれぞれ制御されるようになっている。即ち、供給機構26による窒素ガスの供給、排気機構28による排気などは、制御コンピュータ8によって制御される。
【0030】
図5に示すように、COR処理装置5は、密閉構造のチャンバー40を備えており、チャンバー40の内部は、ウェハWを収納する処理室(処理空間)41になっている。チャンバー40の内部には、ウェハWを略水平にした状態で載置させる載置台42が設けられている。また、COR処理装置5には、処理室41にガスを供給する供給機構43、処理室41内を排気する排気機構44が設けられている。
【0031】
チャンバー40の側壁部には、ウェハWを処理室41内に搬入出させるための搬入出口53が設けられており、この搬入出口53を開閉するゲートバルブ54が設けられている。処理室41は、PHT処理装置4の処理室21との間にゲートバルブ54が備えられた状態で、処理室21に連結されている。チャンバー40の天井部には、処理ガスを吐出させる複数の吐出口を有するシャワーヘッド52が備えられている。
【0032】
載置台42は、平面視において略円形をなしており、チャンバー40の底部に固定されている。載置台42の内部には、載置台42の温度を調節する温度調節器55が設けられている。温度調節器55は、例えば温調用の液体(例えば水など)が循環させられる管路を備えており、かかる管路内を流れる液体と熱交換が行われることにより、載置台42の上面の温度が調節され、さらに、載置台42と載置台42上のウェハWとの間で熱交換が行われることにより、ウェハWの温度が調節されるようになっている。なお、温度調節器55はかかるものに限定されず、例えば抵抗熱を利用して載置台42及びウェハWを加熱する電気ヒータ等であっても良い。
【0033】
供給機構43は、前述したシャワーヘッド52、処理室41にフッ化水素ガス(HF)を供給するフッ化水素ガス供給路61、処理室41にアンモニアガス(NH
3)を供給するアンモニアガス供給路62、処理室41に不活性ガスとしてアルゴンガス(Ar)を供給するアルゴンガス供給路63、処理室41に不活性ガスとして窒素ガス(N
2)を供給する窒素ガス供給路64を備えている。フッ化水素ガス供給路61、アンモニアガス供給路62、アルゴンガス供給路63、窒素ガス供給路64は、シャワーヘッド52に接続されており、処理室41には、シャワーヘッド52を介してフッ化水素ガス、アンモニアガス、アルゴンガス、窒素ガスが拡散されるように吐出されるようになっている。
【0034】
フッ化水素ガス供給路61は、フッ化水素ガスの供給源71に接続されている。また、フッ化水素ガス供給路61には、フッ化水素ガス供給路61の開閉動作及びフッ化水素ガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁72が介設されている。アンモニアガス供給路62はアンモニアガスの供給源73に接続されている。また、アンモニアガス供給路62には、アンモニアガス供給路62の開閉動作及びアンモニアガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁74が介設されている。アルゴンガス供給路63はアルゴンガスの供給源75に接続されている。また、アルゴンガス供給路63には、アルゴンガス供給路63の開閉動作及びアルゴンガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁76が介設されている。窒素ガス供給路64は窒素ガスの供給源77に接続されている。また、窒素ガス供給路64には、窒素ガス供給路64の開閉動作及び窒素ガスの供給流量の調節が可能な流量調整弁78が介設されている。
【0035】
排気機構44は、開閉弁82、強制排気を行うための排気ポンプ83が介設された排気路85を備えている。排気路85の端部開口は、チャンバー40の底部に開口されている。
【0036】
なお、COR処理装置5のゲートバルブ54、温度調節器55、流量調整弁72、74、76、78、開閉弁72、排気ポンプ83等の各部の動作は、制御コンピュータ8の制御命令によってそれぞれ制御されるようになっている。即ち、供給機構43によるフッ化水素ガス、アンモニアガス、アルゴンガス、窒素ガスの供給、排気機構44による排気、温度調節器55による温度調節などは、制御コンピュータ8によって制御される。
【0037】
処理システム1の各機能要素は、処理システム1全体の動作を自動制御する制御コンピュータ8に、信号ラインを介して接続されている。ここで、機能要素とは、例えば前述したウェハ搬送機構11、ウェハ搬送機構17、PHT処理装置4のゲートバルブ22、流量調整弁31、排気ポンプ33、COR処理装置5のゲートバルブ54、温度調節器55、流量調整弁72、74、76、78、開閉弁72、排気ポンプ83等の、所定のプロセス条件を実現するために動作する総ての要素を意味している。制御コンピュータ8は、典型的には、実行するソフトウェアに依存して任意の機能を実現することができる汎用コンピュータである。
【0038】
図3に示すように、制御コンピュータ8は、CPU(中央演算装置)を備えた演算部8aと、演算部8aに接続された入出力部8bと、入出力部8bに挿着され制御ソフトウェアを格納した記録媒体8cと、を有する。この記録媒体8cには、制御コンピュータ8によって実行されることにより処理システム1に後述する所定の基板処理方法を行わせる制御ソフトウェア(プログラム)が記録されている。制御コンピュータ8は、該制御ソフトウェアを実行することにより、処理システム1の各機能要素を、所定のプロセスレシピにより定義された様々なプロセス条件(例えば、処理室41の圧力等)が実現されるように制御する。即ち、後に詳細に説明するように、COR処理装置5におけるCOR処理工程と、PHT処理装置4におけるPHT処理工程とをこの順番に行うエッチング方法を実現する制御命令を与える。
【0039】
記録媒体8cは、制御コンピュータ8に固定的に設けられるもの、あるいは、制御コンピュータ8に設けられた図示しない読み取り装置に着脱自在に装着されて該読み取り装置により読み取り可能なものであっても良い。最も典型的な実施形態においては、記録媒体8cは、処理システム1のメーカーのサービスマンによって制御ソフトウェアがインストールされたハードディスクドライブである。他の実施形態においては、記録媒体8cは、制御ソフトウェアが書き込まれたCD−ROM又はDVD−ROMのような、リムーバブルディスクである。このようなリムーバブルディスクは、制御コンピュータ8に設けられた図示しない光学的読取装置により読み取られる。また、記録媒体8cは、RAM(random
access memory)又はROM(read only
memory)のいずれの形式のものであっても良い。さらに、記録媒体8cは、カセット式のROMのようなものであっても良い。要するに、コンピュータの技術分野において知られている任意のものを記録媒体8cとして用いることが可能である。なお、複数の処理システム1が配置される工場においては、各処理システム1の制御コンピュータ8を統括的に制御する管理コンピュータに、制御ソフトウェアが格納されていても良い。この場合、各処理システム1は、通信回線を介して管理コンピュータにより操作され、所定のプロセスを実行する。
【0040】
次に、以上のように構成された処理システム1におけるウェハWの処理方法について説明する。先ず、
図1に示したようにHDP−SiO
2膜101にコンタクトホールHが形成されたウェハWが、キャリア13a内に収納され、処理システム1に搬送される。
【0041】
処理システム1においては、
図3に示すように、複数枚のウェハWが収納されたキャリア13aが載置台13上に載置され、ウェハ搬送機構11によってキャリア13aから一枚のウェハWが取り出され、ロードロック室3に搬入される。ロードロック室3にウェハWが搬入されると、ロードロック室3が密閉され、減圧される。その後、ゲートバルブ22、54が開かれ、ロードロック室3と、大気圧に対してそれぞれ減圧されたPHT処理装置4の処理室21、COR処理装置5の処理室41が、互いに連通させられる。ウェハWは、ウェハ搬送機構17によってロードロック室3から搬出され、処理室21の搬入出口(図示せず)、処理室21、搬入出口53内をこの順に通過するように直進移動させられ、処理室41に搬入される。
【0042】
処理室41において、ウェハWは、デバイス形成面を上面とした状態で、ウェハ搬送機構17の搬送アーム17aから載置台42に受け渡される。ウェハWが搬入されると搬送アーム17aが処理室41から退出させられ、搬入出口53が閉じられ、処理室41が密閉される。そして、COR処理工程が開始される。
【0043】
処理室41が密閉された後、処理室41には、アンモニアガス供給路62、アルゴンガス供給路63、窒素ガス供給路64からそれぞれアンモニアガス、アルゴンガス、窒素ガスが供給される。また、処理室41内の圧力は、大気圧よりも低圧状態にされる。さらに、載置台42上のウェハWの温度は、温度調節器55によって所定の目標値(例えば約35℃程度)に調節される。
【0044】
その後、フッ化水素ガス供給路61から処理室41にフッ化水素ガスが供給される。ここで処理室41には、予めアンモニアガスが供給されているので、フッ化水素ガスを供給することにより、処理室41の雰囲気はフッ化水素ガスとアンモニアガスとを含む混合ガスからなる処理雰囲気にされる。こうして処理室41内のウェハWの表面に混合ガスが供給されることで、ウェハWに対して第1のCOR処理(第1の変質工程)が行われる。
【0045】
処理室41内の低圧状態の処理雰囲気によって、ウェハWのコンタクトホールHの底部に存在する犠牲酸化膜103は、混合ガス中のフッ化水素ガスの分子及びアンモニアガスの分子と化学反応して、反応生成物105に変質させられる(
図2参照)。反応生成物105としては、アンモニウムフルオロシリケートや水分等が生成される。なお、この化学反応は等方的に進行するので、コンタクトホールHの底部からSi層100の上面まで進行する。
【0046】
第1のCOR処理中は、各処理ガスの供給流量、不活性ガスの供給流量、排気流量等を調節することにより、混合ガス(処理雰囲気)の圧力が大気圧より減圧された20mTorr以上、600mTorr以下(約2.7〜約80.0Pa)に維持されるようにすることが好ましい。また、混合ガス中のフッ化水素ガスの分圧は、5mTorr以上、200mTorr以下(約0.7〜約26.7Pa)となるように調節することが好ましい。また、混合ガス(処理雰囲気)の温度は、20℃以上、120℃以下となるように調節することが好ましい。さらに好ましくは35℃以上、45℃以下である。また、混合ガスの流量は、フッ化水素ガスの流量の3倍程度にすることが好ましい。そのフッ化水素ガスの流量は、100sccm以上、500sccm以下にすることが好ましい。また、第1のCOR処理の処理時間は、犠牲酸化膜103の厚さにより適宜変更されるものであるが、後述する第2のCOR処理を行うことを鑑みると、生産性の観点から処理時間を長くすることは好ましくない。このため、第1のCOR処理の処理時間は、60秒以下にすることが好ましい。
【0047】
また、ウェハWの温度、即ち、犠牲酸化膜103において化学反応が行われる部分の温度(犠牲酸化膜103と混合ガスとが接触する部分の温度)は、例えば約35℃以上の一定の温度に維持しても良い。これにより、化学反応を促進させ、反応生成物105の生成速度を高め、反応生成物105の層を迅速に形成することができる。なお、反応生成物105中のアンモニウムフルオロシリケートの昇華点は約100℃であり、ウェハWの温度を100℃以上にすると、反応生成物105の生成が良好に行われなくなるおそれがある。そのため、ウェハWの温度は約100℃以下にすることが好ましい。
【0048】
このようにして第1のCOR処理を所定の時間行うことにより、犠牲酸化膜103が変質し、反応生成物105が生成される。しかし、処理時間が経過するにつれて反応生成物105の厚さが次第に厚くなり、混合ガスが反応生成物105を透過する速度が次第に低下する。これに伴い、犠牲酸化膜103に接触する混合ガスの量が少なくなり、犠牲酸化膜103の変質量が低下する。特に、コンタクトホールHの底部の周縁部では、中央部に比べて未変質の犠牲酸化膜103が多い状態にある。
【0049】
そこで、本実施形態では、第1のCOR処理を行った後、ウェハWに対して更に第2のCOR処理(第2の変質工程)を行う。すなわち、第1のCOR処理を所定時間行った後、処理室41に供給していたアンモニアガスを停止し、処理室41に供給する混合ガスをフッ化水素ガス、アルゴンガス、窒素ガスとして犠牲酸化膜103の変質処理を行う。これにより、混合ガスが第1のCOR処理において生成された反応生成物105(アンモニウムフルオロシリケート)を透過しやすくなり、未変質の犠牲酸化膜103に接触しやすくなる。このとき反応生成物105を透過する混合ガス中のフッ化水素ガスは、反応生成物105中のアンモニア成分と反応し、犠牲酸化膜103を変質させる反応ガスとなる。この反応ガスが犠牲酸化膜103に接触することにより、
図6に示すように第1のCOR処理で変質させることができなかった犠牲酸化膜103を均一、かつ、十分に変質させることができる。
【0050】
上記の第2のCOR処理においてアンモニアガスを停止する理由は、アンモニアガスを供給すると、反応生成物(アンモニウムフルオロシリケート)の表面に新たな反応生成物105が堆積するように形成されてしまい、混合ガスの透過速度がさらに遅くなるためである。一方、アンモニアガスを停止すれば、反応生成物105の表面において新たな反応生成物105が生成されることはなく、フッ化水素ガスを含む混合ガスが反応生成物中を透過しやすくなる。
【0051】
なお、第2のCOR処理中は、各処理ガスの供給流量、不活性ガスの供給流量、排気流量等を調節することにより、混合ガス(処理雰囲気)の圧力を第1のCOR処理における圧力よりも高くすることが好ましい。具体的には、第2のCOR処理における混合ガス(処理雰囲気)の圧力と第1のCOR処理における混合ガス(処理雰囲気)の圧力との差を100mTorr以上、200mTorr以下(約13.3〜約26.7Pa)にすることが好ましい。このように第2のCOR処理の処理雰囲気の圧力を第1のCOR処理の処理雰囲気の圧力よりも高くすることにより、混合ガスが反応生成物105を透過する速度を上げることができ、犠牲酸化膜103を均一、かつ、十分に変質させることができる。その他の処理条件については、第1のCOR処理と同様であることが好ましい。
【0052】
ところで、COR処理では、HDP−SiO
2膜101においても、混合ガスとの化学反応が可能であるため、HDP−SiO
2膜101が変質させられてしまうおそれがある。このHDP−SiO
2膜101の変質を抑制するためには、混合ガス中のアンモニアガスの分圧を、フッ化水素ガスの分圧よりも小さくすると良い。即ち、アンモニアガスの供給流量を、フッ化水素ガスの供給流量よりも小さくすると良い。そうすれば、化学反応が犠牲酸化膜103において活発に進行している間に、HDP−SiO
2膜101では、化学反応が進行することを防止できる。即ち、HDP−SiO
2膜101等の変質を抑制しながら、犠牲酸化膜103のみを選択的に効率よく変質させることができる。従って、HDP−SiO
2膜101のダメージを防止できる。このように、混合ガス中のアンモニアガスの分圧を調節することで、犠牲酸化膜103とHDP−SiO
2膜101、即ち同じシリコン酸化膜であるが密度、組成、成膜方法等が互いに異なるもの同士の間で、化学反応の反応速度、反応生成物105の生成量等を互いに異なる値にすることができ、ひいては、後述するPHT処理後のエッチング量を互いに異なるものにすることができる。なお、アンモニアガスの分圧をフッ化水素ガスの分圧よりも小さくしたときの化学反応は、犠牲酸化膜103と混合ガスとの化学反応によって反応生成物105の生成速度が決まる反応律速ではなく、フッ化水素ガスの供給流量によって反応生成物105の生成速度が決まる供給律速反応になると考えられる。
【0053】
反応生成物105の層が十分に形成され、第2のCOR処理が終了すると、処理室41が強制排気されて減圧される。これにより、フッ化水素ガスやアンモニアガスが処理室41から強制的に排出される。処理室41の強制排気が終了すると、搬入出口53が開口させられ、ウェハWはウェハ搬送機構17によって処理室41から搬出され、PHT処理装置4の処理室21に搬入される。以上のようにして、COR処理工程が終了する。
【0054】
PHT処理装置4において、ウェハWはデバイス形成面を上面とした状態で処理室21内に載置される。ウェハWが搬入されると搬送アーム17aが処理室21から退出させられ、処理室21が密閉され、PHT処理工程が開始される。PHT処理では、処理室21内が排気されながら、高温の加熱ガスが処理室21内に供給され、処理室21内が昇温される。これにより、上記COR処理によって生じた反応生成物105が加熱されて気化し、コンタクトホールHの下方からコンタクトホール内を通って、ウェハWの外部に排出される。このように、COR処理の後、PHT処理を行うことにより、反応生成物105が除去され、犠牲酸化膜103を等方的にドライエッチングすることができる。
【0055】
PHT処理が終了すると、加熱ガスの供給が停止され、PHT処理装置4の搬入出口が開かれる。その後、ウェハWはウェハ搬送機構17によって処理室21から搬出され、ロードロック室3に戻される。こうして、PHT処理装置4におけるPHT処理工程が終了する。
【0056】
ウェハWがロードロック室3に戻され、ロードロック室3が密閉された後、ロードロック室3と搬送室12とが連通させられる。そして、ウェハ搬送機構11によって、ウェハWがロードロック室3から搬出され、載置台13上のキャリア13aに戻される。以上のようにして、処理システム1における一連のエッチング工程が終了する。
【0057】
本実施形態によれば、従来のCOR処理(第1の変質工程)の後に、アンモニアガスを停止したCOR処理(第2の変質工程)を行うことにより、コンタクトホールHの底部に形成された犠牲酸化膜103を均一、かつ、十分に変質させることができる。その結果、生成された反応生成物105をPHT処理(加熱工程)において昇華させることで犠牲酸化膜103を残存させることなく除去することができる。すなわち、変質工程と加熱工程を何度も繰り返すことなく、犠牲酸化膜を均一、かつ、十分に除去することができる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0059】
フッ化水素ガスやアンモニアガスの他に処理室41に供給されるガスの種類は、以上の実施形態に示した組み合わせには限定されない。例えば、処理室41に供給される不活性ガスはアルゴンガスのみであっても良い。また、かかる不活性ガスは、その他の不活性ガス、例えば、ヘリウムガス(He)、キセノンガス(Xe)のいずれかであっても良く、または、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス、キセノンガスのうち2種類以上のガスを混合したものであっても良い。
【0060】
処理システム1の構造は、以上の実施形態に示したものには限定されない。例えば、COR処理装置、PHT処理装置の他に、成膜装置を備えた処理システムであっても良い。例えば
図7に示す処理システム90のように、ウェハ搬送機構91を備えた共通搬送室92を、搬送室12に対してロードロック室93を介して連結させ、この共通搬送室92の周囲に、COR処理装置95、PHT処理装置96、例えばCVD装置等の成膜装置97を配設した構成にしても良い。この処理システム90においては、ウェハ搬送機構91によって、ロードロック室92、COR処理装置95、PHT処理装置96、成膜装置97に対してウェハWをそれぞれ搬入出させるようになっている。共通搬送室92内は真空引き可能になっている。即ち、共通搬送室92内を真空状態にすることで、PHT処理装置96から搬出されたウェハWを大気中の酸素に接触させずに、成膜装置97に搬入できる。
【0061】
以上の実施形態では、シリコン酸化膜を有する基板として、半導体ウェハであるシリコンウェハWを例示したが、基板はかかるものに限定されず、他の種類のもの、例えばLCD基板用ガラス、CD基板、プリント基板、セラミック基板などであっても良い。
【0062】
また、処理システム1において処理される基板の構造は、以上の実施形態において説明したものには限定されない。さらに、処理システム1において実施されるエッチングは、実施の形態に示したような、コンタクトホールHの底部に行うためのものには限定されず、本発明は、様々な部分のエッチング方法に適用できる。
【0063】
処理システム1においてエッチングを施す対象物となるシリコン酸化膜も、犠牲酸化膜には限定されず、例えばHDP−SiO
2膜等、他の種類のシリコン酸化膜であっても良い。この場合も、シリコン酸化膜の種類に応じて、COR処理工程におけるシリコン酸化膜の温度、及び、混合ガス中のフッ化水素ガスの分圧を調節することで、エッチング量などを制御することができる。
【0064】
また、基板に形成されたCVD系酸化膜については、そのCVD系酸化膜の成膜に用いられたCVD法の種類は、特に限定されない。例えば熱CVD法、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法等であっても良い。
【0065】
上記実施形態では、コンタクトホールHの底部の犠牲酸化膜103を変質させることについて説明をしたが、例えば、
図8に示すような酸化膜103のエッチバック工程においても本発明に係るCOR処理を適用することができる。
図8(a)は、例えばリセストランジスタを製造する過程のシリコンウェハWの状態を示す図である。
図8(a)に示す通り、ウェハWには溝部Hが形成され、ウェハWの凸部表面には、エッチバック時にウェハWを保護するための膜106(例えばSiN膜)が形成されている。
【0066】
このようなウェハWについて、溝部Hの途中まで酸化膜103をエッチバックする場合、従来のCOR処理では
図8(b)に示すように、酸化膜103の表面上の溝部Hの周縁部において、酸化膜103が溝部Hの中央部に比べ変質しにくくなっている。この場合、従来の処理方法においては、溝部Hの周縁部の酸化膜103のみを変質させることはできず、中央部と周縁部において酸化膜103の表面形状が乱れた状態で後工程に進まざるを得なかった。しかしながら、本発明に係る第2のCOR処理を行えば、
図8(c)に示すように酸化膜表面において中央部と周縁部を均一に変質させることができ、表面形状を平坦にすることができる。
【実施例】
【0067】
コンタクトホールの底部に13nm程度の犠牲酸化膜が形成されたウェハ(
図1に示す構造に相当するウェハ)に対して本発明に係るエッチング処理(第1のCOR処理、第2のCOR処理、PHT処理)を行った。なお、本実施例では、第1のCOR処理を60秒行い、その後、第2のCOR処理を60秒行った。また、第1のCOR処理は、処理雰囲気の圧力を50mTorr、温度を35℃として処理を行い、第2のCOR処理は、処理雰囲気の圧力を150mTorr、温度を35℃として処理を行った。
【0068】
上記処理条件でエッチング処理を行った際のCOR処理時間と酸化膜のエッチング量との関係を
図9に示す。なお、
図9には、本発明に係る第1のCOR処理(従来のCOR処理)のみを行った場合のCOR処理時間と酸化膜のエッチング量との関係も示している。また、酸化膜の変質は完全に均一な状態では進まないため、ここでいう「エッチング量」とは、平均エッチング量を指す。平均エッチング量とは、ウェハ溝部の複数箇所で測定されたエッチング前後の膜厚差の平均値である。
【0069】
図9の結果によれば、第1のCOR処理(従来のCOR処理)のみを行うエッチング方法では、処理時間を長くしてもエッチング量が増えない状態、すなわち、COR処理における酸化膜の変質反応が飽和する状態となっていることが確認できる。一方、第1のCOR処理を60秒行った後、第2のCOR処理を行った場合には、飽和状態にあった酸化膜のエッチング量が再度上昇していることが確認できる。
【0070】
本実施例では、第1のCOR処理を60秒行った場合の酸化膜のエッチング量は5.23nmであった。一方、第1のCOR処理後に第2のCOR処理を60秒行った場合の酸化膜のエッチング量は、12.13nmであった。すなわち、本実施例の結果から、第1のCOR処理を行った後に第2のCOR処理を行うことにより、第1のCOR処理のみを行った場合よりも多くの酸化膜を除去できることが示された。なお、第2のCOR処理の処理時間を長くすると、次第にエッチング量が少なくなっていくが、これは除去すべき酸化膜の大部分が既にエッチングされているためであると推認される。