特許第6162145号(P6162145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6162145自己組織化可能な重合体及びリソグラフィにおける使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162145
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】自己組織化可能な重合体及びリソグラフィにおける使用方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20170703BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20170703BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   B82Y40/00
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-551554(P2014-551554)
(86)(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公表番号】特表2015-510258(P2015-510258A)
(43)【公表日】2015年4月2日
(86)【国際出願番号】EP2012075989
(87)【国際公開番号】WO2013104499
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2015年12月15日
(31)【優先権主張番号】61/586,419
(32)【優先日】2012年1月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】ブリツァード,アウレリー
(72)【発明者】
【氏名】コール,ロエロフ
(72)【発明者】
【氏名】ピータース,エミール
【審査官】 赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0260750(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/128120(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/054256(WO,A1)
【文献】 特開2005−096312(JP,A)
【文献】 特開平10−286515(JP,A)
【文献】 特表2010−525577(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0126001(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0230514(US,A1)
【文献】 特開2010−183064(JP,A)
【文献】 JEONG GON SON et al,"Surfactant-Assisted Orientation of Thin Diblock Copolymer Films",ADVANCED MATERIALS,2008年10月 2日,V20 N19,P3643-3648
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027;21/88−21/90
G03F 7/00−7/42
B82Y 5/00−99/00
C08J 7/04−7/06
B01D 1/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に自己組織化可能なブロック共重合体の秩序アレイを形成する方法であって、
自己組織化可能なブロック共重合体の層を有する基板を提供することであって、前記ブロック共重合体は親水性ブロック及び疎水性ブロックを含む分子を有し、前記層は外表面を有することと、
前記層の前記外表面上に第1界面活性剤を堆積させることであって、前記第1界面活性剤が、疎水性尾部及び親水性頭部基を有する分子を有し、前記親水性頭部基は、前記ブロック共重合体の前記親水性ブロックに前記第1界面活性剤を吸着させることと、
前記自己組織化可能なブロック共重合体の自己組織化を引き起こして、前記基板上の前記層から前記自己組織化可能なブロック共重合体の前記秩序アレイを形成するために前記層を処理することと、を含み、
前記第1界面活性剤の前記疎水性尾部基及び前記親水性頭部基は、開裂可能な連結基によって結合され、該方法は、前記自己組織化可能なブロック共重合体の自己組織化を引き起こすために前記層を処理した後に、前記開裂可能な連結基を開裂することと、開裂に続いて前記疎水性尾部基を除去することをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記第1界面活性剤は、前記ブロック共重合体の分子量の20%以下の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記親水性頭部基は、前記ブロック共重合体の前記親水性ブロックの1つ又は複数の単量体と同じ1つ又は複数の単量体の低重合体部分である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1界面活性剤の前記疎水性尾部基は前記ブロック共重合体の前記疎水性ブロックに対して不混和である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1界面活性剤の前記疎水性尾部基は過フッ素化部分を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1界面活性剤の前記疎水性尾部基はポリジメチルシロキサン部分を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1界面活性剤は、溶媒及び前記第1界面活性剤を含む液体組成物から吸着により前記外表面上に堆積させられる、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1界面活性剤は、前記液体組成物からラングミュアーブロジェット堆積法により前記外表面上に堆積させられる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1界面活性剤は、気相から蒸着により前記外表面上に堆積させられる、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1界面活性剤は、コンタクトプリンティングにより前記外表面上に堆積させられる、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1界面活性剤、前記ブロック共重合体、及び溶媒を含む液体組成物の膜を前記基板上に堆積させることと、
前記溶媒を蒸発により除去して、自己組織化可能なブロック共重合体の前記層を形成することと、によって、前記自己組織化可能なブロック共重合体の前記層を前記基板上に提供することを含み、
前記第1界面活性剤は、前記ブロック共重合体に対して不混和であり、前記溶媒が除去される時に、前記外表面に向けて移動し、かつ前記外表面上に堆積させられる、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1界面活性剤の分子の前記疎水性尾部同士は互いに架橋結合するように適合され、前記第1界面活性剤の前記外表面上への堆積に続き、前記疎水性尾部は互いに架橋結合される、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記層の前記外表面上に前記第1界面活性剤を堆積させることは、前記外表面上に第2界面活性剤を堆積させることを含み、前記第2界面活性剤は、前記第2界面活性剤を前記ブロック共重合体の疎水性ブロックに吸着させる第2頭部基と、前記ブロック共重合体の前記親水性ブロック及び前記疎水性ブロックのいずれに対しても不混和である第2尾部基と、を有する、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記第1界面活性剤の前記尾部基と前記第2界面活性剤の前記尾部基とは化学的に同一である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
レジストエッチングによって基板の表面をパターニングするリソグラフィ方法であって、請求項1〜14のいずれかに記載の方法によって前記基板の前記表面上に自己組織化可能なブロック共重合体の秩序アレイを提供することを含み、自己組織化可能なブロック共重合体層の前記秩序アレイはレジスト層として使用される、リソグラフィ方法。
【請求項16】
基板の表面にデバイストポグラフィを形成する方法であって、前記基板をエッチングして前記デバイストポグラフィを提供する際に、請求項1〜14のいずれかに記載の方法によって前記基板上に形成される自己組織化可能なブロック共重合体の秩序アレイをレジスト層として使用することを含む、デバイストポグラフィを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001] 本出願は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる2012年1月13日に出願された米国特許仮出願第61/586,419号の利益を主張する。
【0002】
[0002] 本発明は、基板上に並んで配置された交互ドメインの秩序アレイを形成するように配向された自己組織化ブロック共重合体層を形成する方法に関する。本発明の一実施形態は、さらに、自己組織化ブロック重合体の秩序アレイをレジスト層として使用し、レジストエッチングにより基板の表面をパターニングするデバイスリソグラフィ方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
[0003] デバイス製造用のリソグラフィでは、所与の基板領域上のフィーチャの密度を高めるために、リソグラフィパターン中のフィーチャのサイズを小さくするという継続的な要望がある。ナノスケールのクリティカルディメンジョン(CD)を有するより小さいフィーチャのパターンによって、デバイス構造又は回路構造の密度を高めることができ、電子デバイス及び他のデバイスの小型化及び製造コストにおいて改善の可能性がもたらされる。フォトリソグラフィでは、より小さいフィーチャを追求することで、液浸リソグラフィ及び極端紫外線(EUV)リソグラフィといった技術が発展してきた。
【0004】
[0004] いわゆるインプリントリソグラフィは、パターンを基板上に転写するために「スタンプ」(インプリントテンプレートと呼ばれることが多い)の使用を伴う。インプリントリソグラフィの利点は、フィーチャの解像度が、例えば、放射源の発光波長又は投影システムの開口度によって制限されないことである。その代わりに、解像度は、主に、インプリントテンプレート上のパターン密度により制限される。
【0005】
[0005] フォトリソグラフィ及びインプリントリソグラフィの両方では、例えばインプリントテンプレート又は他の基板の表面の高解像度パターニングを提供することが望ましく、これを達成するために化学レジストが使用され得る。
【0006】
[0006] ブロック共重合体(BCP)の自己組織化の利用は、従来のリソグラフィ方法で得られ得るよりも優れた値に解像度を向上させる可能性のある方法として、あるいは、インプリントテンプレートを作製するための電子ビームリソグラフィに代わるものとして、検討されてきた。
【0007】
[0007] 自己組織化可能なブロック共重合体は、ナノファブリケーションに有用な化合物である。これは、自己組織化可能なブロック共重合体が、所定の温度(秩序無秩序転移温度(TOD))を下回る冷却で秩序無秩序転移を経て、異なる化学的性質の共重合体ブロックの相分離を引き起こし、数十ナノメートルの寸法又は10ナノメートル未満の寸法を有する、化学的に異なる複数の秩序化ドメインを形成し得るためである。ドメインのサイズ及び形状は、共重合体の異なるブロックタイプの分子量及び組成を操作することにより制御することができる。ドメインとドメインとの間のインターフェースは、1〜5nm程度の幅を有し、共重合体のブロックの化学的組成を変更することにより、操作され得る。
【0008】
[0008] 自己組織化テンプレートとしてブロック共重合体の薄膜を使用することが実現可能であることは、Chaikin及びRegister他、Science276、1401(1997年)により実証されている。20nmの寸法の点及び穴の密集したアレイが、ポリ(スチレン‐ブロック‐イソプレン)の薄膜から、窒化シリコン基板上に転写された。
【0009】
[0009] ブロック共重合体は、それぞれが1つ以上の同種の単量体を含む異なる複数のブロックを含み、これらのブロックが重合体鎖に沿って並んで配置されている。各ブロックは、各タイプの多くの単量体を含み得る。したがって、例えばA−Bブロック共重合体は、複数のタイプA単量体をAブロック(又は各Aブロック)内に有し、複数のタイプB単量体をBブロック(又は各Bブロック)内に有し得る。好適なブロック共重合体の例は、例えば、ポリスチレン(PS)単量体のブロック(疎水性ブロック)と、ポリメチルメタクリレート(PMMA)単量体のブロック(親水性ブロック)とが共有結合した重合体である。異なる疎水性/親水性ブロックを有する他のブロック共重合体も有用であり得る。例えば、(A−B−C)又は(A−B−A)ブロック共重合体などのトリブロック共重合体が有用であり、交互又は周期的なブロック共重合体(例えば[−A−B−A−B−A−B]n又は[−A−B−C−A−B−C−]m(ここで、n及びmは整数である))であってもよい。ブロックは、互いに共有結合で直線状又は分岐状に接続されてもよく、あるいは、例えば星形に接続されてもよい。
【0010】
[0010] ブロック共重合体は、ブロックの体積分率、各ブロックタイプ内の重合度(すなわち各ブロック内の各タイプの単量体の数)、任意選択としての溶媒の使用、及び表面の相互作用に応じて自己組織化の際に多くの異なる相を形成し得る。薄膜に適用されると、幾何学的閉じ込めが追加の境界状態をもたらし、これが相の数を制限することがある。一般に、球状(例えば立方晶)、円筒状(例えば正方晶又は六方晶)、及びラメラ相(すなわち立方晶、六方晶、又はラメラ空間充填対称の自己組織化相)が実際に自己組織化ブロック共重合体の薄膜内に観察され、観察される相タイプは、異なる重合体ブロックの相対的な体積分率に依存することがある。
【0011】
[0011] 自己組織化可能な重合体として使用するのに好適なブロック共重合体としては、ポリ(スチレン‐b‐メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン‐b‐2−ビニルピリドン)、ポリ(スチレン‐b‐ブタジエン)、ポリ(スチレン‐b‐フェロセニルジメチルシラン)、ポリ(スチレン‐b‐エチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド‐b‐イソプレン)が含まれるが、これらに限定されない。記号「b」は、「ブロック」を表している。これらは、ジブロック共重合体の例であるが、自己組織化は、トリブロック、テトラブロック、又は他のマルチブロック共重合体も採用し得ることは明らかであろう。
【0012】
[0012] 自己組織化重合体の相は、基板に対して平行又は垂直な対称軸を有して配向されることがあり、ラメラ相及び円筒状の相は、基板上に並ぶ交互のドメインと共に1次元又は2次元のラインアンドスペースパターン及びホールアレイを形成し得るため、リソグラフィの用途として興味深い。換言すると、規則的なアレイにおけるブロック共重合体分子は、共重合体分子の隣接したブロックが層内で並んで配列され、基板表面の平面に沿って周期性を持って交互になる隣接したドメインを形成するように、配向され得る。このような秩序を持った1次元又は2次元のアレイは、のちにドメインタイプの1つがエッチングされる際に良好なコントラストをもたらすことができる。
【0013】
[0013] ブロック共重合体などの重合体の自己組織化を表面上に案内又は誘導するために使用される2つの方法には、グラフォエピタキシと、化学的エピタキシとも呼ばれる化学的プレパターニング法がある。グラフォエピタキシ法では、ブロック共重合体の自己組織化は、基板のトポロジ的プレパターニングによって案内される。自己組織化ブロック共重合体は、平行な線形パターンを形成することができ、トレンチ内の異なる重合体ブロックドメインの隣接するラインはパターニングされた基板によって画定される。例えば、ブロック共重合体が重合体鎖内にAブロックとBブロックとを有するジブロック共重合体である場合は(ここで、Aの性質は親水性、Bの性質は疎水性)、Aブロックは、トレンチの側壁の性質も親水性である場合は、この側壁に隣接して形成されたドメイン内に組織化される。基板上のプレパターンの間隔を細分化するブロック共重合体のパターンによって、パターニングされた基板の解像度よりも解像度が改善され得る。
【0014】
[0014] 化学的プレパターニング法(本明細書では、化学的エピタキシと呼ぶ)では、ブロック共重合体のドメインの自己組織化は、基板上の化学パターン(つまり、化学テンプレート)によって案内される。化学パターンと重合体鎖内の共重合体ブロックのタイプのうちの1つとの間の化学親和力により、ドメインタイプの1つが基板上の化学パターンの対応する領域上への正確に配置され得る(ピンニングとも呼ばれる)。例えば、ブロック共重合体がAブロックとBブロックとを有するジブロック共重合体であり(ここで、Aの性質は親水性、Bの性質は疎水性)、化学パターンが親水性又は中性表面上に疎水性領域を含んでいる場合、Bドメインは優先的に疎水性領域上に組織化され得る。グラフォエピタキシ法のアライメントと同様に、基板上のプレパターニングされたフィーチャの間隔を細分化するブロック共重合体パターンによって(いわゆる密度増倍)、パターニングされた基板の解像度よりも解像度が改善され得る。化学的プレパターニングは、線形のプレパターンに限定されない。例えば、プレパターンは、円筒状相形成ブロック共重合体に対して使用されるパターンとして好適な二次元配列のドットの形態をとってもよい。グラフォエピタキシ及び化学的プレパターニング法を使用して、例えば、ラメラ相又は円筒状相の自己組織化を案内してもよく、その場合、基板表面上に異なるドメインタイプが並んで配置される。
【発明の概要】
【0015】
[0015] ナノファブリケーションでブロック共重合体自己組織化の使用を実施するプロセスにおいて、基板は、化学的プレパターンテンプレート又はグラフォエピタキシテンプレートの一部として中性配向制御層を有するように修正して、基板に対する自己組織化の好ましい配向を誘発することができる。自己組織化可能な重合体層で使用されるいくつかのブロック共重合体では、ブロックの1つと基板表面との間に、配向をもたらし得る優先的な相互作用が存在することがある。例えば、ポリスチレン(PS)‐b‐PMMAブロック共重合体の場合は、PMMAブロックは酸化物表面を優先的に湿潤させ(すなわち、酸化物表面と高い化学親和力を有し)、これを利用して表面の平面に対して平行に配向されるように自己組織化パターンを誘発させてもよい。例えば、基板の表面上に中性配向層を堆積させて、基板の表面が両方のブロックに対して中性な状態にする、つまり、中性配向層が各ブロックについて同様の化学親和力を有することで、両方のブロックが表面で中性配向層を同様に湿潤させることにより、垂直配向を誘導してもよい。「垂直配向」とは、各ブロックのドメインが、基板の表面にて、異なるブロックのドメイン間のインターフェース領域が基板の平面に実質的に垂直な状態で、並んで位置決めされていることを意味する。換言すると、規則的なアレイのブロック共重合体分子は、共重合体分子のブロック間の隣接するドメインが、層内で並んで整列させられ、層の平面に沿って周期性を持って交互になる隣接したドメインを形成し、両方のドメインタイプが基板と接触し、かつ基板を湿潤させている状態になるように、配向されている。「平行配向」という用語は、交互のドメインのスタックが、層の平面に直角な軸に沿って周期性を持つように形成され、典型的には、1つのドメインタイプが基板を湿潤させている状態を意味する。
【0016】
[0016] 化学的エピタキシ及びグラフォエピタキシで使用する中性表面は、秩序アレイの垂直配向が望まれる場合において特に有用である。中性表面は、エピタキシテンプレートの特定の配向領域間の表面上で使用され得る。例えば、Aブロック及びBブロック(ここで、Aの性質は親水性、Bの性質は疎水性)を有するジブロック共重合体を整列させるための化学的エピタキシテンプレートでは、化学的パターンは、複数の疎水性ピンニング領域を、該疎水性領域間に中性配向領域を有する状態で、備え得る。Aブロック及びBブロックのいくつかの交互ドメインが化学的プレパターンの特定の(ピンニング)配向領域間の中性領域上に整列させられた状態で、Bドメインは、優先的に疎水性ピンニング領域上に組織化され得る。
【0017】
[0017] 例えば、上記のようなジブロック共重合体を整列させるためのグラフォエピタキシテンプレートにおいて、パターンは、複数の疎水性レジストフィーチャと、この疎水性レジストフィーチャ間に中性配向領域とを備え得る。AブロックとBブロックのいくつかの交互ドメインがグラフォエピタキシテンプレートの特定の(ピンニング)配向領域間の中性領域上に整列された状態で、Bドメインは、優先的に疎水性レジストフィーチャに並んで組織化され得る。
【0018】
[0018] 中性配向層は、例えば、基板の表面の酸化物にヒドロキシル末端基、又はその他の反応性末端基が反応することにより基板に共有結合されるランダム共重合体ブラシを使用して作成することができる。中性配向層を形成するための他の構成では、架橋性ランダム共重合体又は適切なシラン(つまり、シリルとしても知られる、(トリ)クロロシラン又は(トリ)メトキシシランの末端基などの置換した反応性シランを有する分子)を使用して、基板表面と自己組織化可能な重合体の層との間で中間層として作用することにより、表面を中性にすることができる。このようなシランベースの中性配向層は、典型的に単分子層として存在することになる一方、架橋性の重合体は、典型的には単分子層としては存在せず、典型的に40nm以下の厚さを有し得る。中性配向層には、自己組織化可能な層のブロックタイプの1つが中性配向層の下の基板と直に接触することができるように、例えば1つ以上の間隙が設けられてもよい。これは、基板の表面が特定の配向フィーチャとして作用する状態で、基板に対して自己組織化可能な重合体層の特定のブロックタイプのドメインを固定、ピンニング、又は整列させるために役立ち得る。
【0019】
[0019] 自己組織化可能な重合体の薄膜は、基板上に堆積させられ、上述したグラフォエピタキシテンプレート又は化学的テンプレート上に堆積させられ得る。自己組織化可能な重合体を堆積するための好適な方法としてスピンコーティングがあり、このプロセスは、明確に規定され、均一な自己組織化可能重合体の薄膜を提供することができる。堆積された自己組織化可能な重合体膜の好適な層の厚さは、約10〜100nmである。ブロック共重合体膜の堆積後、この膜は、依然として無秩序であるか、一部分のみしか秩序化されていない場合があり、自己組織化を促進及び/又は完成させるためには、1つ以上の追加の工程が必要な場合もある。例えば、自己組織化可能な重合体は、溶媒中の溶液として堆積されることがあるが、その場合、自己組織化の前に、例えば蒸発によって溶媒が除去される。
【0020】
[0020] ブロック共重合体の自己組織化は、多くの小さいコンポーネント(ブロック共重合体)の組織化が、より大きく、より複雑な構造(本明細書においてドメインとよばれる、自己組織化パターン内のナノメートルサイズのフィーチャ)の形成をもたらすプロセスである。重合体の自己組織化を制御する物理的現象から、自然と欠陥が発生する。自己組織化は、検討中のシステムについてのフローリーハギンズ理論により説明される相分離の推進力で、A−Bブロック共重合体のA−Aブロック対、B−Bブロック対、及びA−Bブロック対間の相互作用の差(すなわち、相互の化学親和力の差)により推進される。化学的エピタキシ又はグラフォエピタキシは、欠陥の形成を大幅に減少させることができる。
【0021】
[0021] 自己組織化をするブロック共重合体の場合、ブロック共重合体は秩序無秩序温度TODを示す。TODは、示差走査熱量測定法(DSC)などの重合体の秩序/無秩序状態を評価する任意の好適な技術によって測定されることが可能である。この温度未満で層形成がなされると、分子は自己組織化へと推進される。TD温度以上では、層内の隣接するA−Aブロック対及びB−Bブロック対間の好ましい相互作用から生じるエンタルピー寄与よりも重い無秩序のA/Bドメインからのエントロピー寄与により無秩序層が形成される。自己組織化可能な重合体はさらに、ガラス転移温度Tを示すことがあり、その温度未満では重合体は効果的に不動化され、その温度以上では共重合体分子は、層内で隣接する共重合体分子に対してなお再配向し得る。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定法(DSC)によって適切に測定される。
【0022】
[0022] ブロック共重合体ではTODがT未満である場合は、TOD未満、及びT未満では分子が正確に整列することができないため、自己組織化層が形成される可能性は低いか、あるいは大きな欠陥を有することになる。自己組織化にとって好ましいブロック共重合体のTDはTよりも高い。しかし、分子が固体状の層に組織化されてしまうと、T以上であるがTD未満の温度でアニールされたとしても、重合体分子の移動性は、分子が全体自由エネルギの最も低い状態へと緩和することができるようにコイル状の重合体鎖の適切な混合状態を提供するには不十分な場合がある。これにより、自己組織化重合体のドメイン配置エラーを引き起こされ得る。このドメイン配置エラーでは、全体自由エネルギの最も低い状態に到達した場合には、異なる重合体ブロックの相分離ドメインで占められるはずの理想的な理論上の格子位置に、該相分離ドメインが正確に配置されない場合がある。
【0023】
[0023] 上述した秩序化の間に形成される欠陥は、例えばアニーリングなどによって部分的に除去され得る。(例えばディレクタ配向に欠陥がある場合など、回転対称が損なわれる線欠陥である)ディスクリネーションなどの欠陥は、符号が逆の他の欠陥又はディスクリネーションと対にすることによって消滅させてもよい。自己組織化可能な重合体の鎖移動性は、欠陥の移動と消滅とを判断する要因であり、したがって、鎖移動性は高いが秩序化自己組織化パターンは失われない温度でアニーリングを実行され得る。これは重合体の秩序/無秩序温度TDよりも数十℃(例えば、約50℃)高い又は低い温度を示唆している。
【0024】
[0024] 秩序化と欠陥の消滅とを単一のアニーリングプロセスに組み合わせて行ってもよく、あるいは、(異なるブロックタイプのドメインの)異なる化学的タイプのドメインの秩序パターンを有するブロック共重合体のような自己組織化重合体の層をリソグラフィ用のレジスト層として提供するために、複数のプロセスを使用してもよい。
【0025】
[0025] デバイスアーキテクチャ又はトポロジといったパターンを自己組織化重合体層から該自己組織化重合体が堆積した基板へと転写するために、通常は、いわゆるブレイクスルーエッチングによって第1ドメインタイプが除去され、基板の表面上には、第2ドメインタイプのパターンが提供され、第2ドメインタイプのパターンのフィーチャ間には基板が露出した状態になる。
【0026】
[0026] ブレイクスルーエッチングに続き、パターンは、第2ドメインタイプによりレジストされたエッチング手段を使ったいわゆる転写エッチングによって転写され、基板の表面内において基板が露出していた場所に凹部が形成される。従来公知の他のパターン転写方法を、ブロック共重合体の自己組織化により形成されたパターンに適用してもよい。
【0027】
[0027] 薄膜内のブロック共重合体の配向の精密な制御は、デバイスリソグラフィの用途向けに該材料の潜在力を利用するために重要である。大抵の場合、例えば、1次元又は2次元の秩序アレイの形態のブロック共重合体レジスト層が形成されるように、ラメラ又は円筒の「垂直配向」が望ましい。このような層の自己組織化ドメインは、下地基板のパターニングに使用するのに好適なマスクを提供するべく配向される。
【0028】
[0028] ブロック共重合体の薄膜又は層において、インターフェースの相互作用は、基板インターフェース(つまり、基板とブロック共重合体層との間のインターフェース)及びブロック共重合体層の外側インターフェース(つまり、例えば大気などの周囲を囲むものとの間にインターフェースができる場所である、ブロック共重合体層の外表面)における濡れ特性に影響する。
【0029】
[0029] ブロック共重合体のブロックが基板に対して高い化学親和力を有する場合、そのブロックによって、基板インターフェースにおいて基板の優先的な濡れが引き起こされ、結果として、所望の垂直配向よりも有利なドメインの平行配向がもたらされ得る。
【0030】
[0030] 同様に、ブロック共重合体のブロックの1つが、化学親和力によってブロック共重合体層の外側インターフェースに配置されるように推進された場合、それにより、層が、所望の垂直配向ではなく平行配向で自己組織化するように推進され得る。
【0031】
[0031] 前述したように、基板インターフェースで垂直配向が有利に働くように、基板インターフェースは、中性のブラシポリマー、シラン、架橋層などにより、例えばブロック共重合体の親水性ブロック及び疎水性ブロックに対して高い化学親和力を有する基板インターフェースを提供することによって、修正されてもよい。
【0032】
[0032] しかしながら、特定の1つのドメインタイプが優先的に外側インターフェースに配置されるように推進されるリスクを回避する又は減少させるために、例えばブロック共重合体の親水性ブロック及び疎水性ブロックの両方に対して高い化学親和力を有する外側インターフェースを提供することが望ましい。これにより、結果として得られる自己組織化ブロック共重合体の少なくとも外側インターフェースの領域において、平行配向の誘発を潜在的に引き起こし得る。例えば、外側インターフェースが空気又は真空に接している場合、典型的には、ブロック共重合体の疎水性ブロックが空気又は真空に対してより強い化学親和力を有することになり、結果として、疎水性ブロックが外側インターフェースを占め、外側インターフェースで親水性ブロックの相対的な比率が減少する。
【0033】
[0033] また、ブロック共重合体自己組織化層を表面に適用するという前述の技術は、基板上のブロック共重合体構造に部分的なアライメントをもたらすことができるが、結果として得られる自己組織化層は、高レベルで不正確に整列された重合体分子を示すことがあり、これがドメイン配置の欠陥及び/又は低均一性につながり、ひいては、クリティカルディメンジョンに望ましくないばらつきをもたらすおそれがある。
【0034】
[0034] 自己組織化構造において、欠陥は存在するものと考えられる。大抵の場合、自己組織化への熱力学的推進力は、弱い分子間相互作用により提供され、かつ典型的にはエントロピー項と同オーダーである。この特徴は、おそらく、自己組織化フィーチャをリソグラフィ用に利用する際の主な制限の1つである。現在の最新技術である自己組織化層は、自己組織化層から取り出したマルチコンポーネントデバイスのうち機能していないフィーチャの数として表すと、10分の1個から10分の1個の欠陥率を示し得る(例えば、Yang他、ASC Nano、2009年、3、1844〜1858頁参照のこと)。これは、商業的な有効性において望ましいとされる欠陥レベルよりも数オーダー高いレベルである。これらの欠陥は、粒子境界(パターンの不連続性)又は転位として現れ得る。
【0035】
[0035] 外側インターフェースにおいて、望ましい垂直配向ではなく、望ましくないドメインの平行配向、又は、少なくとも該平行配向を促進する推進力があると、デバイスリソグラフィレジストとして使用する場合に、基板に対して垂直配向を有することを目的とした自己組織化アレイ内にも欠陥の形成が促進され得る。Son他(Son、J.G.Bulliard、X.Kang、H.Nealey、P.F.;Char,K.Advanced Materials、2008年、20、3643〜3648頁)は、ブロック共重合体層のスピンコーティングの前に、界面活性剤としてのオレイン酸をPS−b−PMMAと混合することについて、説明している。ブロック共重合体内に界面活性剤を混入することにより、Son他で開示されているように、ブロック共重合体のブロックの混和性が高まり、フローリハギンスパラメータの低下と、その結果生じる配置欠陥の増加及びクリティカルディメンジョンの均一性の低下を引き起こす可能性がある。
【0036】
[0036] 例えば、従来技術の1つ以上の問題、特に、例えばデバイスリソグラフィ用のレジスト層として使用するために、層の外側インターフェースにおいて、垂直配向を有する自己組織化ブロック共重合体が望まれている際に、ブロック共重合体自己組織化の望ましくない平行配向に起因する問題に対処する方法を提供することが望ましい。
【0037】
[0037] 例えば、特にデバイスリソグラフィのレジスト層として使用するのに好適なブロック共重合体の自己組織化層を形成するために有用な方法であって、垂直配向を有し、かつ欠陥レベルが低い(つまり、好ましいクリティカルディメンジョンの均一性、低いラインエッジラフネス、及び正確なドメイン配置を提供する)自己組織化秩序アレイを提供する方法を提供することが望ましい。
【0038】
[0038] 本明細書において、「化学親和力」とは、2つの異なる化学種が結合する傾向を意味している。例えば、親水性の性質を有する化学種は、水に対して高い化学親和力を有する一方、疎水性の化合物は、水に対して低い親和力を有するが、アルカンに対しては高い化学親和力を有する。有極性の性質の化学種は、他の極性化合物及び水に対して高い化学親和力を有する一方、無極性、非極性又は疎水性の化合物は、水及び有極性化学種に対して低い親和力を有するが、アルカンなどの他の非極性化学種に対しては、高い化学親和力を示すことがある。化学親和力は、2つの化学種間のインターフェースに関連付けられた自由エネルギに関連している。インターフェースの自由エネルギが高い場合、2つの化学種は互いに低い化学親和力を有する一方、インターフェースの自由エネルギが低い場合、2つの化学種は互いに対して高い化学親和力を有する。化学親和力は、また、「濡れ」を用いて表すことができる。ここで、液体と表面とが互いに対して高い化学親和力を有する場合、この液体は表面を湿潤させる一方、化学親和力が低い場合は、液体は表面を湿潤させない。ただし、例えば、2つの疎水性化学種は、共に疎水性であるからと言え、必ずしも互いに対して高い化学親和力を有さなくてもよい。例えば、アルキル鎖及び過フッ素化アルキル鎖はともに疎水性であるが、互いに対して不混和でもあり得る。
【0039】
[0039] 本明細書において、「化学種」とは、分子、低重合体もしくは重合体などの化合物のいずれかを意味し、又は、両親媒性分子(つまり、化学親和力の異なる少なくとも2つの相互結合した部分を有する分子)の場合は、「化学種」という用語は、該分子の異なる部分を指すこともある。例えば、ジブロック共重合体の場合、ブロック共重合体分子を構成する2つの異なる重合体ブロックは、異なる化学親和力を有する2つの異なる化学種であるとみなされる。
【0040】
[0040] 本明細書を通して、「含む」(“comprising”又は“comprises”)という用語は、特定された構成要素を含むことを意味しているが、他の存在を排除するものではない。「実質的に〜から成る」(“consisting essentially of”又は“consists essentially of”)という用語は、特定された構成要素を含み、これらの構成要素を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不純物や不可避の材料として存在する材料、ならびに本発明の技術的効果を達成する以外の目的で追加される構成要素以外は、他の構成要素を排除するものである。典型的に、実質的に一組の構成要素から成る組成物は、特定されない構成要素を5重量%未満、典型的には3重量%未満、より典型的には1重量%未満含むことになる。
【0041】
[0041] 「含む」と言う用語は、適切な場合はいつでも、「実質的に〜から成る」の意味を含むものととらえられることもあり、あるいは、「〜から成る」(“consists of”又は“consisting of”)の意味を含むこともある。
【0042】
[0042] 本明細書において「層」に言及する場合、この層は、実質的に均一な厚さの層ととらえられるものをさしている。「実質的に均一な厚さ」とは、平均厚さに対して20%未満のばらつきを有する厚さを意味する。
【0043】
[0043] 本明細書で使用される「不混和性」とは、別の化合物に対して不混和であるといわれる化合物が、最高融点を有する化合物の融点を50℃以上超えない温度において、該別の化合物に対して平衡状態で1重量%未満の溶解度を有する(又はその反対)ことを意味する。
【0044】
[0044] 一態様によると、基板上に自己組織化可能なブロック共重合体の秩序アレイを形成する方法であって、
自己組織化可能なブロック共重合体の層を有する基板を提供することであって、ブロック共重合体は、親水性ブロック及び疎水性ブロックを含む分子を有し、層は外表面を有する、提供することと、
層の外表面上に第1界面活性剤を堆積させることであって、第1界面活性剤が、疎水性尾部及び親水性頭部基を有する分子を有し、親水性頭部基は、第1界面活性剤をブロック共重合体の親水性ブロックに吸着させるように適合された、堆積させることと、
自己組織化可能なブロック共重合体の自己組織化を引き起こして、基板上の層から自己組織化可能なブロック共重合体の秩序アレイを形成するために、層を処理することと、を含む、方法が提供される。
【0045】
[0045] 一態様によると、レジストエッチングによって基板の表面をパターニングするリソグラフィ方法であって、本明細書に記載の方法によって基板の表面上に自己組織化可能なブロック共重合体の秩序アレイを提供することを含み、自己組織化可能なブロック共重合体層の前記秩序アレイはレジスト層として使用される、リソグラフィ方法が提供される。
【0046】
[0046] 一態様によると、基板の表面にデバイストポグラフィを形成する方法であって、基板をエッチングしてデバイストポグラフィを提供する際に、本明細書に記載の方法によって基板上に形成される自己組織化可能なブロック共重合体の秩序アレイをレジスト層として使用することを含む、デバイストポグラフィを形成する方法が提供される。
【0047】
[0047] 以下の特徴は、適切な場合には、本明細書に記載する方法の多様な態様の全てに適用することができる。好適な場合には、以下の特徴の組み合わせは、例えば請求の範囲に記載した方法の一部として採用することができる。本方法は、デバイスリソグラフィでの使用に特に適し得る。例えば、それらの方法は、デバイス基板に直接パターニングするため、あるいはインプリントリソグラフィ用のインプリントテンプレートをパターニングするために、自己組織化重合体のレジスト層を処理又は形成するのに使用することができる。
【0048】
[0048] 本明細書において、PMMAは、ポリメチルメタクリレートを表し、PSはポリスチレンを表し、PEOはポリエチレンオキシドを表す。
【0049】
[0049] 一実施形態において、自己組織化可能なブロック共重合体の秩序層を形成する方法が提供される。これは、第1及び第2ドメインタイプに関連付けられる異なるブロックタイプを有する秩序重合体層へと自己組織化可能な少なくとも2つの異なるブロックタイプを有する前述のブロック共重合体であってよい。ブロック共重合体は、ジブロック共重合体又はトリブロック共重合体又はマルチブロック共重合体であり得る。交互の又は周期的なブロック共重合体は、自己組織化可能な重合体として使用することができる。以下の態様及び例のいくつかにおいては、2つのドメインタイプのみについて言及することがあるが、本発明の一実施形態は、3つ以上の異なるドメインタイプを有する自己組織化可能なブロック共重合体に適用することもできる。
【0050】
[0050] ブロック共重合体は、第1単量体の第1親水性ブロックと、第2単量体の第2疎水性ブロックとを少なくとも含む分子を有する。第1又は第2ブロックの1つは、他方のブロックよりも親水性であり、それにより、第1及び第2ブロックは、それぞれ、親水性ブロック及び疎水性ブロックと呼ぶことができる。したがって、すでに説明したブロック共重合体は、TOD未満の温度で無秩序状態から秩序化状態へと転移するように適合される。明確化のために、秩序化状態は、例えば、溶媒の存在下にブロック共重合体を置くことにより達成され得るが、この秩序化は、例えば蒸発により溶媒を除去することによって達成される。一部のブロック共重合体にとって、TODの値は、その重合体の分解温度Tdecよりも高い場合があり、そのため、溶媒の損失による秩序化が好ましい場合がある。同様に、該ブロック共重合体をTOD以上の温度にする必要なく、再秩序化することを可能にするべくブロック共重合体の移動度を高めるために、例えば溶媒蒸気を使用してブロック共重合体に追加された溶媒の存在下でアニーリングを実行してもよい。無溶媒のブロック共重合体の場合、秩序化は、TOD温度を通る冷却と、TD以上及び未満に温度をサイクルさせることによって達成されるアニーリングとによって達成されてもよい。
【0051】
[0051] 本明細書において、TOD及びTは、ブロック共重合体自体について言及されている。しかしながら、当然のことながら、本発明の一実施形態は、ブロック共重合体鎖の移動度に影響し得る溶媒の存在下でブロック共重合体に対して実施される場合もある。
【0052】
[0052] 通常、自己組織化可能なブロック共重合体の層は、スピンコーティングなどの好適な堆積方法を使用して、堆積により基板上に提供され得る。ブロック共重合体は、TD以上の温度に保持され、かつ/又は溶媒内に溶解され、溶媒の除去及び/又はT未満の温度への冷却の前に、ブロック共重合体が確実に無秩序状態であるようにされ得る。界面活性剤は、ブロック共重合体が無秩序状態にある状態で外表面上に堆積させられ得る。界面活性剤は、ブロック共重合体がT未満の温度にある状態で、該表面上に堆積させられてもよい。
【0053】
[0053] 第1界面活性剤の分子量は、典型的にはブロック共重合体の分子量の20%以下、例えば10%以下である。第1界面活性剤の分子量は、ブロック共重合体の分子量の5%以下であってもよい。本明細書において使用される分子量とは、例えばサイズ排除クロマトグラフィによって測定される数平均分子量Mnを意味している。
【0054】
[0054] ブロック共重合体の層は、基板上に提供され、典型的には、スピンコーティングなどの好適な方法によって基板上に堆積させられ得るが、ここで、ブロック共重合体は溶融状態であるか、又は好適な溶媒に溶解されており、この溶媒は、例えば蒸発や他の好適な方法で後に除去され、ブロック共重合体から実質的に成る層が残される。ブロック共重合体の層は、外表面と、基板とのインターフェースとを有し、外表面及び基板インターフェースは、層の対向面を形成する。ブロック共重合体の一部の部分的な秩序化(つまり、自己組織化)は、ブロック共重合体層の基板上への堆積中に起こり得るが、一般的に、基板上への堆積の直後のブロック共重合体は、実質的に無秩序状態である。
【0055】
[0055] 基板は、デバイスリソグラフィで使用される半導体などの材料であってよく、ブロック共重合体は、この材料上に直接堆積させられてもよく、又は、この材料表面上に既に堆積した材料表面上の反射防止コーティング(ARC)層などの中間層上、又は、グラフォエピタキシテンプレートもしくは化学的エピタキシテンプレート上に堆積させられてもよい。既に説明したように、ブロック共重合体が提供される基板表面は、ブロック共重合体の親水性ブロック及び疎水性ブロックの両方に対して化学親和力を有するように少なくとも部分的に改質されていてもよく、これにより、いわゆる(本明細書で規定される)垂直配向が促進される。
【0056】
[0056] 本方法は、層の外表面上に第1界面活性剤を堆積させることを含む。第1界面活性剤は、疎水性尾部及び親水性頭部基を含み、又は疎水性尾部及び親水性頭部基から実質的に成り、又は成り、親水性頭部基は、第1界面活性剤をブロック共重合体の親水性ブロックに吸着させるように適合される。
【0057】
[0057] 本方法は、さらに、自己組織化を引き起こして、基板上の層から自己組織化可能なブロック共重合体の秩序アレイを形成するために、自己組織化可能なブロック共重合体の層を、例えばアニーリングによって処理することを含む。
【0058】
[0058] 本明細書で使用される「界面活性剤」という用語は、親水性頭部基及び疎水性尾部基を有する分子を意味し、非イオン性、アニオン性、カチオン性、両性、又は両性イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0059】
[0059] 親水性頭部基は、ブロック共重合体の親水性ブロックの1つ又は複数の単量体と同じ1つ又は複数の単量体の好適な低重合体部分であり得る。例えば、ブロック共重合体の親水性ブロックがエチレンオキシド単量体の単独重合体である場合、第1界面活性剤の頭部基は、エチレンオキシド単量体の低重合体であり得る。
【0060】
[0060] 親水性尾部は、ブロック共重合体の疎水性ブロックとは混和性であり得るが、第1界面活性剤の疎水性尾部基は、ブロック共重合体の疎水性ブロックに対して不混和であるように適合されることが望ましい。
【0061】
[0061] 例えば、第1界面活性剤の疎水性尾部基は、過フッ素化部分を含み得る、あるいは過フッ素化部分から実質的に成り得る、又は成り得る。別の好適な構成においては、第1界面活性剤の疎水性尾部基は、ポリジメチルシロキサン部分を含み得る、あるいはポリジメチルシロキサン部分から実質的に成り得る、又は成り得る。
【0062】
[0062] 第1界面活性剤の疎水性尾部基及び親水性頭部基は、開裂可能な連結基によって結合され得る。本方法は、さらに、自己組織化を引き起こすために自己組織化可能なブロック共重合体の層を処理した後に開裂可能な連結基を開裂することと、この開裂に続いて親水性尾部基を除去することとを含む。好適な開裂可能な結合基には、循環式及び/又は非環式のアセタール、ケタール、(例えば酸開裂に好適な)オルトエステル、(例えばアルカリ開裂に好適な)エステル結合、アゾ結合、及び/又は(UV開裂可能な)ニトロフェニル基が含まれる。
【0063】
[0063] 第1界面活性剤は、溶媒及び第1界面活性剤を含む液体組成物からの吸着によって、好適に外表面上に堆積することができる。例えば、第1界面活性剤の希薄溶液である液体組成物内に基板を浸すことによって、溶液からの直接的な堆積が使用され得る。第1界面活性剤の水溶液は、ブロック共重合体が水に不溶性(つまり、25℃の水への溶解度が0.1重量%以下)である場合に使用することができる。別の好適な構成では、第1界面活性剤は、液体組成物からのラングミュアーブロジェット堆積法によって外表面上に堆積させられてもよい。後者の場合、液体組成物は、基板を浸すことで、外表面において第1界面活性剤の単分子層の堆積が引き起こされるように、周囲環境(例えば、空気)とのインターフェースで第1界面活性剤の単分子層を有する組成物として構成されてもよい。第1界面活性剤がブロック共重合体用の溶媒(例えば、アルコール又はフッ素化溶媒)ではない液体に可溶である構成において、第1界面活性剤は、溶媒のかなり希薄した溶液から堆積させられて、ブロック共重合体層の外表面上に第1界面活性剤の薄い層を生じさせてもよい。
【0064】
[0064] 第1界面活性剤は、蒸着によって外表面上に堆積させられてもよい。この方法は、第1界面活性剤が分解温度で十分に揮発性があるために成分の分解が問題にならない場合に好適である。
【0065】
[0065] 別の好適な構成では、第1界面活性剤は、コンタクトプリンティングによって外表面上に堆積させられてもよい。本明細書において、コンタクトプリンティングという用語は、分子移動プリンティング(molecular transfer printing)及びエッチ転写プリンティングも含み得る。
【0066】
[0066] 自己組織化可能なブロック共重合体の層を基板上に提供する別の好適な方法は、
第1界面活性剤、ブロック共重合体、及び溶媒を含む液体組成物の膜を基板上に堆積させることと、
溶媒を蒸発により除去して、自己組織化可能なブロック共重合体の層を形成することと、によって成されてもよく、
第1界面活性剤は、ブロック共重合体に対して不混和であり、溶媒が除去される時に、外表面に向けて移動し、かつ外表面上に堆積させられる。
【0067】
[0067] この第1界面活性剤の堆積方法では、第1界面活性剤は、秩序アレイ内に実質的なレベルで存在しない(例えば、1重量%以下)ように、ブロック共重合体に対して十分に不混和であることが望ましい。
【0068】
[0068] 第1界面活性剤分子の疎水性尾部同士は、互いに架橋結合できるように適合されてもよく、第1界面活性剤の外表面上への堆積に続き、親水性尾部が互いに架橋結合される。このような架橋結合は、例えば、第1界面活性剤の尾部にエポキシ基又はアクリレート基を使用して達成されることができ、架橋結合は、例えば、第1界面活性剤に対する化学線の照射(例えば、UV照射)によって達成され得る。
【0069】
[0069] 第1界面活性剤の外表面上への堆積は、外表面上に第2界面活性剤を堆積することを含み得る。第2界面活性剤は、この第2界面活性剤をブロック共重合体の疎水性ブロックに吸着させるように適合された第2頭部基と、ブロック共重合体の親水性ブロック及び疎水性ブロックのいずれにも不混和に適合された第2尾部基とを有する。
【0070】
[0070] 特に、第1界面活性剤の尾部基と第2界面活性剤の尾部基とは、化学的に同一であってもよい。
【0071】
[0071] 第2界面活性剤は、第1界面活性剤と同時に層の外表面上に堆積させられてもよく、又は、第1界面活性剤の外表面上への堆積に含まれる第2プロセスにおいて堆積させられてもよい。本明細書に記載される第1界面活性剤を堆積させるための方法の1つ以上を、第2界面活性剤の同時堆積又は単独の堆積に採用してもよい。同時堆積は、より簡素なプロセスであるため、好ましい。
【0072】
[0072] 本発明の一態様は、レジストエッチングによって基板の表面をパターニングするリソグラフィ方法であって、本明細書に記載の方法によって基板の表面上に自己組織化可能なブロック共重合体の秩序アレイを提供することを含み、秩序アレイの形態を有する自己組織化可能なブロック共重合体層はレジスト層として使用される、リソグラフィ方法を提供する。
【0073】
[0073] 例えば、ブロック共重合体の秩序アレイの異なるドメイン(親水性ブロック及び疎水性ブロックのそれぞれの垂直配向ドメイン)は、それぞれ、異なるエッチング耐性を示し得る。あるいは、特定のブロックのドメインの1つが、例えば光崩壊により、選択的に除去され、他方のブロックの残りのドメインがエッチング用のレジストとして機能してもよい。
【0074】
[0074] 本発明の一態様は、基板の表面にデバイストポグラフィを形成する方法であって、基板をエッチングしてデバイストポグラフィを提供する際に、本明細書に記載の方法によって基板上に形成された自己組織化可能なブロック共重合体の秩序アレイをレジスト層として使用することを含む、デバイストポグラフィを形成する方法を提供する。
【0075】
[0075] これらの方法は、前述したように、グラフォエピタキシテンプレート又は化学的エピタキシテンプレートが提供された基板に使用する際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
[0076] 本発明のいくつかの実施形態を、添付の図面を参照して以下に説明する
【0077】
図1A】[0077] グラフォエピタキシにより基板上へ誘導されたA−Bブロック共重合体の自己組織化と、1つのドメインの選択的エッチングによるレリーフパターンの形成とを概略的に示す。
図1B】[0077] グラフォエピタキシにより基板上へ誘導されたA−Bブロック共重合体の自己組織化と、1つのドメインの選択的エッチングによるレリーフパターンの形成とを概略的に示す。
図1C】[0077] グラフォエピタキシにより基板上へ誘導されたA−Bブロック共重合体の自己組織化と、1つのドメインの選択的エッチングによるレリーフパターンの形成とを概略的に示す。
図2A】[0078] 化学的プレパターニングにより基板上へ誘導されたA−Bブロック共重合体の自己組織化と、1つのドメインの選択的エッチングによるレリーフパターンの形成とを概略的に示す。
図2B】[0078] 化学的プレパターニングにより基板上へ誘導されたA−Bブロック共重合体の自己組織化と、1つのドメインの選択的エッチングによるレリーフパターンの形成とを概略的に示す。
図2C】[0078] 化学的プレパターニングにより基板上へ誘導されたA−Bブロック共重合体の自己組織化と、1つのドメインの選択的エッチングによるレリーフパターンの形成とを概略的に示す。
図3A】[0079] ポリスチレンとPMMAブロックとの相対体積分率が互いに対して変動する際に、ポリ(スチレン‐b‐メチルメタクリレート)重合体によって形成される異なる相を概略的に示す。
図3A】[0079] ポリスチレンとPMMAブロックとの相対体積分率が互いに対して変動する際に、ポリ(スチレン‐b‐メチルメタクリレート)重合体によって形成される異なる相を概略的に示す。
図3B】[0079] ポリスチレンとPMMAブロックとの相対体積分率が互いに対して変動する際に、ポリ(スチレン‐b‐メチルメタクリレート)重合体によって形成される異なる相を概略的に示す。
図3C】[0079] ポリスチレンとPMMAブロックとの相対体積分率が互いに対して変動する際に、ポリ(スチレン‐b‐メチルメタクリレート)重合体によって形成される異なる相を概略的に示す。
図3D】[0079] ポリスチレンとPMMAブロックとの相対体積分率が互いに対して変動する際に、ポリ(スチレン‐b‐メチルメタクリレート)重合体によって形成される異なる相を概略的に示す。
図3E】[0079] ポリスチレンとPMMAブロックとの相対体積分率が互いに対して変動する際に、ポリ(スチレン‐b‐メチルメタクリレート)重合体によって形成される異なる相を概略的に示す。
図4A】[0080] 本発明の実施形態に好適な第1界面活性剤の実施形態の分子構造を示す。
図4B】[0080] 本発明の実施形態に好適な第1界面活性剤の実施形態の分子構造を示す。
図4C】[0080] 本発明の実施形態に好適な第1界面活性剤の実施形態の分子構造を示す。
図4D】[0080] 本発明の実施形態に好適な第1界面活性剤の実施形態の分子構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
[0081] 図1Aは、側壁3及び底面4によって境界付けられたトレンチ2が形成された基板1を示している。図1Bにおいて、例えば親水性のAブロックと、例えば疎水性Bブロックとを有する自己組織化可能なA−Bブロック共重合体がトレンチ内に堆積させられて、Aドメイン及びBドメインの交互ストライプを有する層5を形成している。ここで、Aドメイン及びBドメインは、ブロック共重合体の堆積中に、個々にミクロ分離した周期的な複数のドメインへと分離されたラメラ相として堆積させられている。これは、グラフォエピタキシと呼ばれる。タイプAドメインは、例えば同様に親水性である側壁3に隣接して核を成している。図1Cにおいて、タイプAドメインは、選択的な化学エッチングにより除去され、残されたタイプBドメインがトレンチ内でレリーフパターンを形成する。ここで、タイプBドメインは、例えばさらなる化学エッチングなどによって、後に底面4をパターニングする際のテンプレートとして機能し得る。例えば、共重合体のブロック間の連結剤を選択的に光崩壊又は光開裂し、その後、ブロックのうちの1つを可溶化することによって、選択的な除去を実現することができる。自己組織化重合体構造5のピッチ又は波長及びトレンチ4の幅は、所定数のドメインの交互ストライプが、各側壁にタイプAドメインが接触した状態のトレンチ内に収まり得るように構成される。
【0079】
[0082] 図2Aは、表面13上に化学的に形成され、重合体のタイプAブロックに対して高い親和力を有する領域を提供するピンニングストライプ11の形態の化学的パターンを有する基板10を示している。図2Bにおいて、例えば親水性のAブロックと、例えば疎水性のBブロックとを有する自己組織化可能なA−Bブロック共重合体が基板10の表面13上に堆積され、Aドメイン及びBドメインの交互ストライプを有するラメラ相層12を形成している。ここで、Aドメイン及びBドメインは、ブロック共重合体の堆積中に、個々にミクロ分離した周期的な複数のドメインへと分離された相を有する。これは、化学的プレパターニングと呼ばれる。タイプAドメインは、例えば同様に親水性であるピンニングストライプ11上に核を成している。図1Cにおいて、タイプAドメインは、選択的な化学エッチングにより除去され、残されたタイプBドメインが表面13上でレリーフパターンを形成する。ここで、タイプBドメインは、例えばさらなる化学エッチングなどによって、後に表面13をパターニングする際のテンプレートとして機能し得る。自己組織化重合体構造12のピッチ又は波長及びピンニングストライプ11の間隔は、所定数のドメインの交互ストライプが、上部にタイプAドメイン有するピンニングストライプ11の間に収まり得るように、構成される。
【0080】
[0083] 図3において、図3A及び図3Bは、表面上の薄膜内に自己組織化ポリ(スチレン‐b‐メチルメタクリレート)ブロック共重合体により形成される異なる相の推移を示している。図3Aにおいて、立方相は、PSの連続的なドメイン31内にPMMAの球30である不連続ドメインがPS:PMMA=80:20の比率で存在する様子が示されている。
【0081】
[0084] PS:PMMAの比率が70:30に減少すると、PMMAの円筒32である不連続ドメインと、PSの連続的なドメイン31とを有する円筒状相が形成される。50:50の比率では、図3Cに示すように、1つ以上のPMMAのラメラ34と、1つ以上のPSのラメラ35とを有するラメラ相が形成される。PS:PMMAの比率が30:70では、図3Dに示すように、PSの円筒37である不連続ドメインとPSの連続的なドメイン36とを有する逆の円筒状相が形成される。図3Eに示す20:80の比率では、PMMAの連続的なドメイン38内にPSの球39である不連続ドメインを有する逆の立方相が形成される。立方相とその逆の相の場合、レジスト層としての使用は、通常、2次元アレイのみが基板上に形成されるように、自己組織化ブロック共重合体の薄膜を使用することにより実現される。
【0082】
[0085] 図4A図4Dは、本発明の一実施形態に好適な界面活性剤の実施形態の分子構造を示す。
【0083】
[0086] 図4Aは、過フッ素化尾部と、カルボン酸極性頭部基と、を有する界面活性剤を示す。
【0084】
[0087] 図4Bは、DuPont社からZonyl(商標)の商品名で販売されているタイプの界面活性剤を示す。この界面活性剤では、尾部は過フッ素化アルキル鎖(xは、例えば6〜20の整数である)であり、頭部基は、同様にyが整数(例えば1〜100)のポリエチレングリコール(PEG)頭部基である。
【0085】
[0088] 図4Cは、過フッ素化尾部と、トリヒドロキシシラン頭部基と、を有する界面活性剤を示す。
【0086】
[0089] 図4Dは、過フッ素化アクリレート単量体の低重合体から形成された過フッ素化尾部と、ポリメチルメタクリレートの低重合体である頭部基と、を有する界面活性剤を示す。
【0087】
[0090] 既に説明したように、本発明の方法の一実施形態は、下地の基板に対して、ブロック共重合体の自己組織化秩序アレイの垂直配向を促進するのに有用である。これにより、極端に薄いブロック共重合体層を使用する必要なく、基板表面に対して直角(垂直)な方向に実質的に均一なブロック共重合体ベースのレジストマスクを形成することが可能になる。本発明の実施形態の特定の特徴から、他の技術的な利点が生じることもある。
【0088】
[0091] 本発明の方法の一実施形態は、円筒又はラメラが垂直配向を有するアレイを形成する際の自由エネルギの損失を減少させ、さらに、局所的な非配向による局所的な欠陥の消滅も助長することができる。本発明の一実施形態は、グラフォエピタキシ基板及び化学的エピタキシ基板の両方に適用され、球状、円筒状及び/又は層状(ラメラ)相に対して有用である。この方法は、ジブロック共重合体に対する使用に限定されず、例えばトリブロック共重合体にも容易に適用することができる。
【0089】
[0092] 上述したように、第1界面活性剤は、ブロック共重合体の分子量よりも実質的に軽い分子量を有する。この第1界面活性剤とブロック共重合体との分子量の差は、第1界面活性剤が、確実に、ブロック共重合体に並んで自己組織化することがないようにすることができ、かつ、第1界面活性剤のブロック共重合体との混和性も抑制し、第1界面活性剤が、外表面インターフェースの本来の位置にとどまることを助長する。ブロック共重合体、溶媒及び界面活性剤を含む液体組成物の層を表面上に堆積し、その後、第1界面活性剤がブロック共重合体層の外表面に向けて移動し、かつそこで堆積させられるように溶媒を除去することによって、第1界面活性剤の表面への堆積が達成される際、ブロック共重合体の秩序アレイ内に実質レベル(例えば、1重量%以上)の第1界面活性剤が存在しないように、第1界面活性剤はブロック共重合体に対して十分に不混和性であることが望ましい。
【0090】
[0093] 第1界面活性剤の分子の疎水性尾部同士は、相互に架橋結合するように適合されてもよく、その場合、外表面への第1界面活性剤の堆積に続いて、親水性の尾部が相互に架橋結合される。架橋結合は、ブロック共重合体の秩序アレイへの自己組織化を誘発するために使用されるアニールプロセスの間、外表面からの第1界面活性剤の損失を防止する、又は減少させるために、吸着された第1界面活性剤の揮発性を低下させるのに有用である場合がある。架橋結合は、また、拡散により、界面活性剤がブロック共重合体層の大部分に取り込まれることを防止するのにも効果的であり得る。これは、揮発性の第1界面活性剤が使用され、蒸着で外表面上に堆積され、その後架橋結合される場合に、特に有用であり得る。
【0091】
[0094] 親水性頭部基は、ブロック共重合体の親水性ブロックの1つ又は複数の単量体と同じ1つ又は複数の単量体の低重合体部分であるのが好適であり得る。例えば、ブロック共重合体の親水性ブロックがエチレンオキシド単量体の単独重合体である場合、第1界面活性剤の頭部基は、エチレンオキシド単量体の低重合体であり得る。これにより、第1界面活性剤の頭部基が、層の外表面において、確実に、ブロック共重合体の親水性ブロックと混和し、この親水性ブロックに容易に吸着される。
【0092】
[0095] 親水性の尾部は、ブロック共重合体の疎水性ブロックに対して混和性であり得るが、一実施形態において、第1界面活性剤の疎水性尾部基は、ブロック共重合体の疎水性ブロックに対して不混和になるように適合される。これは、界面活性剤の存在が、ブロック共重合体のブロックの混和に好都合であるため、層内でのフローリハギンスパラメータの局所的な減少を回避するためである。また、第1界面活性剤の疎水性尾部基がブロック共重合体の疎水性ブロックに対して不混和であることは、層の外表面で第1界面活性剤がブロック共重合体の親水性ドメイン上に吸着されるリスクを減少される助けになり得る。これは、第1界面活性剤の吸着により親水性頭部基が外表面で外側に向くように配向された場合に、垂直配向よりも平行配向に好都合な構成を導くためである。
【0093】
[0096] 例えば、第1界面活性剤の疎水性尾部基が過フッ素化部分もしくはポリジメチルシロキサン(PDMS)部分であるか、過フッ素化部分もしくはポリジメチルシロキサン(PDMS)部分を有する場合、そして、ブロック共重合体の疎水性ブロックはポリスチレンなどの炭化水素である場合、該過フッ素化部分もしくはPDMS部分により、第1界面活性剤の親水性の尾部が、確実に疎水性ブロックに対して不混和になる。例えば、過フッ素化界面活性剤は、尾部が空気に対して高い親和力を有する一方、極性頭部基が、ブロック共重合体の親水性ブロックがインターフェースで配向するといった自由エネルギの利点を提供するため、本発明の方法で使用する第1界面活性剤として、特に有用である。たとえ、自由エネルギの利点が(外表面で親水性ブロックの)平行配向に有利なものであったとしても、外表面に存在する親水性ブロックと疎水性ブロックとの均衡を取ることを目的として、過フッ素化尾部の代わりに部分的に過フッ素化された尾部を使用することができる。別の可能性としては、外表面に堆積及び吸着された第1界面活性剤の量(例えば、約50%の被覆面積)を、該表面に親水性ブロックと疎水性ブロックとの両方が存在できるように調整することが挙げられる。
【0094】
[0097] 第1界面活性剤の疎水性尾部基及び親水性頭部基は、開裂可能な連結基によって結合されてもよく、この方法は、さらに、自己組織化可能なブロック共重合体の自己組織化を引き起こすべく層を処理した後に開裂可能な連結基を開裂し、開裂の後に親水性尾部基を除去することを含む。
【0095】
[0098] 一実施形態において、一般的には、外表面に吸着された第1界面活性剤は、層の形態であり得るが、この層は、非常に薄い(例えば、数ナノメートルの厚さ)ため、結果として得られる秩序アレイをデバイスリソグラフィ用のレジスト層として使用するために、第1界面活性剤を除去する必要がない。しかし、特に第1界面活性剤の尾部が過フッ素化部分に基づく場合など、一部の用途においては、疎水性の高い部分が存在すると、ブロック共重合体の秩序アレイに適用されるべき追加の層の堆積及び吸着の妨げとなる場合がある。これは、例えば、マルチレジスト層処理の際に重要になり得る。したがって、疎水性の第1界面活性剤の尾部は、秩序アレイの形成後に除去できることが望ましい。これは、疎水性頭部基と親水性尾部とを結合する第1界面活性剤内の開裂可能な連結基によって達成することができる。環状又は非環状のアセタール、ケタール及び/又はオルトエステルは、酸による開裂に好適な開裂可能な連結基の公知の例である一方、アルカリにより開裂可能な連結基にはエステル結合が含まれる。その代わりに、又はそれに加えて、アゾ結合又はニトロフェニル基が存在する場合、UV照射などの化学線照射による直接的な開裂が可能である。
【0096】
[0099] 第1界面活性剤の外表面上への堆積は、さらに、第2界面活性剤を外表面上に堆積させることを含み、第2界面活性剤は、ブロック共重合体の疎水性ブロックに第2界面活性剤を吸着させるように適合された第2頭部基と、ブロック共重合体の親水性ブロック及び疎水性ブロックの両方に不混和であるように適合された第2尾部基とを有する。特に、第1界面活性剤の尾部基と第2界面活性剤の尾部基は、化学的に同一であってもよい。これは、ブロック共重合体の親水性ブロック及び疎水性ブロックの両方が、確実に外表面に配置され、秩序アレイの垂直配向を助長するため、有益であり得る。
【0097】
[00100] 第1界面活性剤と第2界面活性剤とのモル比は、ブロック共重合体の二つのブロックの間のモル比に等しい、又はほぼ等しいことが望ましい。これは、両ブロックが、確実に、外表面において最適な界面活性剤により完全に被覆され、秩序アレイの垂直配向をさらに安定化することができるため、有益であり得る。
【0098】
[00101] したがって、一実施形態では、基板上に並ぶように配置された交互ドメインの秩序アレイを形成するように配向された自己組織化ブロック重合体層を形成する方法が記載される。この方法は、基板上に自己組織化可能なブロック共重合体の層を、典型的には無秩序状態で、提供し、層の自己組織化を誘発させてドメインの秩序アレイを形成する前に、この層の外表面上に第1界面活性剤を堆積することを含む。第1界面活性剤は、疎水性尾部及び親水性頭部基を有し、かつ、ブロック共重合体重合体を、基板上に並んだ交互ドメインを有する秩序アレイへと組織化することを促進するために、ブロック共重合体層の外表面の界面エネルギを減少させる役割を果たす。換言すると、規則的なアレイ内のブロック共重合体分子は、共重合体分子の隣接したブロックが、層内で並んで整列され、層の平面に沿って周期性を持って交互になる隣接したドメインを形成し、層の平面に直角な軸に沿って周期性を持って交互になるドメインを形成するスタッキングを回避するように、配向される。一実施形態において、第1界面活性剤は、ブロック共重合体の分子量よりも実質的に軽い分子量を有し、望ましくは、このブロック共重合体に対して不混和である。第1界面活性剤は、尾部基と頭部基との間に開裂可能な結合を備え、後に、基板のデバイスリソグラフィ用の高度に秩序化されたレジスト層として秩序ブロック共重合体層を使用することを容易にする。自己組織化ブロック重合体をレジスト層として使用して、レジストエッチングにより基板の表面をパターニングするためのデバイスリソグラフィ方法もまた開示される。
【0099】
[00102] 記載及び説明された実施形態は、例示とみなされ、特徴を制限するものではない。好ましい実施形態のみを示し、及び/又は、説明したが、当然ながら、請求の範囲において規定した本発明の範囲内の変化や変形の全ては、保護されることが望まれる。例えば、ブロック共重合体の第1ブロック及び第2ブロックがポリメチルメタクリレートPMMA及びポリスチレンPSではなく、相互に対して化学的に不混和な他のブロックを自己組織化可能なブロック共重合体に使用して、例えばPMMAをポリエチレンオキシドPEOに代えて、自己組織化プロセスを実行してもよい。
【0100】
[00103] 本発明の一実施形態はリソグラフィ方法に関する。当該リソグラフィ方法は、電子デバイスや集積回路などのデバイスを製造するためのプロセス、又は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターン及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド、有機発光ダイオード等の製造といった他の用途において使用することができる。本発明の一実施形態は、また、集積回路、(例えば、ハードドライブ用)磁気記憶デバイスのビットパターンの媒体及び/又はディスクリートトラック媒体の作製に使用される表面上に規則的なナノ構造を作り出すためにも使用される。
【0101】
[00104] 特に、本発明の実施形態は、高解像度リソグラフィであって、基板上にパターニングされたフィーチャが約1μm以下、典型的には100nm以下、あるいは10nm以下のフィーチャ幅又はクリティカルディメンジョンを有するようなリソグラフィで使用される。
【0102】
[00105] リソグラフィは、基板上にいくつかのパターンを付与することを含み、これらのパターンは、共に集積回路などのデバイスを形成するように、積み重ねられている。各パターンを、すでに設けられているパターンに対して位置合わせすることは、考慮すべき重要事項である。パターンが互いに対して十分な精度で位置合わせされていないと、層間で一部の電気接続が成されない場合がある。これは、ひいては、デバイスを機能不全に陥らせることがある。リソグラフィ装置は、したがって、各パターンをすでに設けられているパターンに対して位置合わせするためのアライメント装置及び/又は基板上に設けられたアライメントマークを備える。
【0103】
[00106] 本明細書において「基板」という用語は、基板の表面にあり得る又は基板の表面を形成し得る他の平坦化層又は他の反射防止コーティング層など、基板の一部を形成する、又は基板上に設けられたあらゆる表面層を含むことを意図している。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D