特許第6162488号(P6162488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラピスセミコンダクタ株式会社の特許一覧

特許6162488オーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法
<>
  • 特許6162488-オーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法 図000002
  • 特許6162488-オーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法 図000003
  • 特許6162488-オーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法 図000004
  • 特許6162488-オーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法 図000005
  • 特許6162488-オーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法 図000006
  • 特許6162488-オーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法 図000007
  • 特許6162488-オーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法 図000008
  • 特許6162488-オーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法 図000009
  • 特許6162488-オーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法 図000010
  • 特許6162488-オーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162488
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】オーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   H04S7/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-115008(P2013-115008)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-236269(P2014-236269A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】市川 知行
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 博次
【審査官】 岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−092546(JP,A)
【文献】 特開2004−241820(JP,A)
【文献】 特開2003−111187(JP,A)
【文献】 特開2003−250200(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/008865(WO,A1)
【文献】 特開2006−254115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 5/00−5/04
9/00−9/10
9/18
31/00
H04S 1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号を再生するオーディオ装置と、複数のスピーカモジュールと、を有するオーディオシステムであって、
前記オーディオ装置と前記複数のスピーカモジュールの各々とを単一の伝送路で接続する伝送系を有し、
前記スピーカモジュールの各々は、スピーカと、マイクロフォンと、前記マイクロフォンで収音して得られた収音信号を前記伝送路を介して前記オーディオ装置に送信すると共に、前記伝送路を介して受信したオーディオ信号又はテスト信号を前記スピーカに供給する第1送受信部と、前記伝送路上から電源電圧を導出して当該電源電圧を前記マイクロフォン及び前記第1送受信部に給電する電源電圧導出部と、を有し、
前記オーディオ装置は、前記複数のスピーカモジュールの前記スピーカの周波数帯域内の周波数を有する周波数信号を前記テスト信号として生成するテストトーン発生部と、前記テスト信号及び前記オーディオ信号を択一的に前記伝送路を介して前記スピーカモジュールの各々に送信すると共に、前記伝送路を介して前記収音信号を受信する第2送受信部と、受信した前記収音信号に基づいて前記スピーカモジュール各々の3次元座標位置を求めるスピーカ座標解析部と、前記電源電圧を生成しこれを前記伝送路に印加する電源電圧生成部と、を有することを特徴とするオーディオシステム。
【請求項2】
前記オーディオ装置は、前記第2送受信部を制御して、前記複数のスピーカモジュールの内の1のスピーカモジュールに前記テスト信号を供給しつつ前記1のスピーカモジュールを除く他のスピーカモジュールから送信された前記収音信号を受信しこれを前記スピーカ座標解析部に供給させるコントローラを更に有することを特徴とする請求項1記載のオーディオシステム。
【請求項3】
前記オーディオ装置は、前記3次元座標位置に基づき、前記複数のスピーカモジュール各々の前記スピーカから音響出力された音の位相を指定された聴取位置で一致させるべき前記オーディオ信号各々の遅延時間を算出し、当該遅延時間をもって前記オーディオ信号各々を前記第2送受信部に供給すべく制御する音場制御部を更に有することを特徴とする請求項1又は2記載のオーディオシステム。
【請求項4】
前記スピーカモジュールに含まれる前記スピーカは低音域の音響出力を担う低音スピーカ及び高音域の音響出力を担う高音スピーカの内の一方であり、
前記テストトーン発生部は、前記テスト信号として前記低音スピーカの周波数帯域内の周波数を有する低音テスト信号、及び前記高音スピーカの周波数帯域内の周波数を有する高音テスト信号を発生し、
前記オーディオ装置は、前記低音スピーカを含む前記スピーカモジュールに対しては前記テスト信号として前記低音テスト信号を送信し、前記高音スピーカを含む前記スピーカモジュールに対しては前記テスト信号として前記高音テスト信号を送信することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のオーディオシステム。
【請求項5】
前記スピーカモジュールは内部で異常状態が発生した場合には前記異常状態を示すステータス情報及び割込要求信号を同時に前記伝送路を介して前記オーディオ装置に送信させるべく前記第1送受信部を制御する割込通信制御部を更に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のオーディオシステム。
【請求項6】
オーディオ信号を再生するオーディオ装置と、複数のスピーカモジュールと、を有するオーディオシステムであって、
前記オーディオ装置と前記複数のスピーカモジュールの各々とを単一の伝送路で接続する伝送系を有し、 前記スピーカモジュールの各々は、スピーカと、前記スピーカで収音して得られた収音信号を前記伝送路を介して前記オーディオ装置に送信すると共に、前記伝送路を介して受信したオーディオ信号又はテスト信号を前記スピーカに供給する第1送受信部と、前記伝送路上から電源電圧を導出して当該電源電圧を前記第1送受信部に給電する電源電圧導出部と、を有し、
前記オーディオ装置は、前記複数のスピーカモジュールの前記スピーカの周波数帯域内の周波数を有する周波数信号を前記テスト信号として生成するテストトーン発生部と、前記テスト信号及び前記オーディオ信号を択一的に前記伝送路を介して前記スピーカモジュールの各々に送信すると共に、前記伝送路を介して前記収音信号を受信する第2送受信部と、受信した前記収音信号に基づいて前記スピーカモジュール各々の3次元座標位置を求めるスピーカ座標解析部と、前記電源電圧を生成しこれを前記伝送路に印加する電源電圧生成部と、を有することを特徴とするオーディオシステム。
【請求項7】
オーディオ信号を再生するオーディオ装置と、夫々がスピーカ及びマイクロフォンを含む複数のスピーカモジュールと、前記スピーカモジュールの各々に対応して設けられており前記スピーカモジュールとを接続する単一の伝送路と、を有するオーディオシステムにおける前記スピーカモジュールの座標位置測定方法であって、
前記オーディオ装置内で生成した電源電圧を前記伝送路を介して前記スピーカモジュール各々に給電し、
前記オーディオ装置から前記伝送路を介して前記複数のスピーカモジュールの内の1のスピーカモジュールにテスト信号を送信することにより前記1のスピーカモジュールからテストトーンを音響出力させつつ、前記1のスピーカモジュールを除く他のスピーカモジュールの前記マイクロフォンで前記テストトーンを収音して得られた収音信号を前記伝送路を介して前記オーディオ装置に送信し、
前記オーディオ装置が受信した前記収音信号に基づき前記スピーカモジュールの3次元座標位置を算出することを特徴とするスピーカモジュールの座標位置測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスピーカを有するオーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のスピーカを備えたオーディオシステムにおいて、高品質の音場を提供するために、種々の提案がなされている。例えば、スピーカの取り付け面にマイクロフォン(以下、マイクと称する。)を設置しておき、1つのスピーカからテスト音声を発し、マイクにより収音させて遅延情報を得、それをもとに各スピーカ位置の三次元座標を算出するようにしたオーディオシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかるオーディオシステムでは、前述の三次元座標をもとに、聴取位置における音声の遅延時間を最適状態に制御することで、高品質の音場再生を実現している。
【0003】
しかしながら、このようなオーディオシステムでは、上記したマイクとしてコンデンサマイクを用いた場合、また、スピーカにアンプを内蔵させた場合には、電源が必要となる。これにより、マイク用ケーブル、スピーカ用ケーブルの他に、電源ケーブルも必要となり、配線が繁雑となり、また、装置の規模が大きくなる等の様々な問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−250200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小規模な構成で最適な音場を提供することが可能なオーディオシステム及びスピーカモジュールの座標位置測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るオーディオシステムは、オーディオ信号を再生するオーディオ装置と、複数のスピーカモジュールと、を有するオーディオシステムであって、前記オーディオ装置と前記複数のスピーカモジュールの各々とを単一の伝送路で接続する伝送系を有し、前記スピーカモジュールの各々は、スピーカと、マイクロフォンと、前記マイクロフォンで収音して得られた収音信号を前記伝送路を介して前記オーディオ装置に送信すると共に、前記伝送路を介して受信したオーディオ信号又はテスト信号を前記スピーカに供給する第1送受信部と、前記伝送路上から電源電圧を導出して当該電源電圧を前記マイクロフォン及び前記第1送受信部に給電する電源電圧導出部と、を有し、前記オーディオ装置は、前記複数のスピーカモジュールの前記スピーカの周波数帯域内の周波数を有する周波数信号を前記テスト信号として生成するテストトーン発生部と、前記テスト信号及び前記オーディオ信号を択一的に前記伝送路を介して前記スピーカモジュールの各々に送信すると共に、前記伝送路を介して前記収音信号を受信する第2送受信部と、受信した前記収音信号に基づいて前記スピーカモジュール各々の3次元座標位置を求めるスピーカ座標解析部と、前記電源電圧を生成しこれを前記伝送路に印加する電源電圧生成部と、を有する。
【0007】
また、本発明に係るオーディオシステムは、オーディオ信号を再生するオーディオ装置と、複数のスピーカモジュールと、を有するオーディオシステムであって、 前記オーディオ装置と前記複数のスピーカモジュールの各々とを単一の伝送路で接続する伝送系を有し、前記スピーカモジュールの各々は、スピーカと、前記スピーカで収音して得られた収音信号を前記伝送路を介して前記オーディオ装置に送信すると共に、前記伝送路を介して受信したオーディオ信号又はテスト信号を前記スピーカに供給する第1送受信部と、前記伝送路上から電源電圧を導出して当該電源電圧を前記第1送受信部に給電する電源電圧導出部と、を有し、前記オーディオ装置は、前記複数のスピーカモジュールの前記スピーカの周波数帯域内の周波数を有する周波数信号を前記テスト信号として生成するテストトーン発生部と、前記テスト信号及び前記オーディオ信号を択一的に前記伝送路を介して前記スピーカモジュールの各々に送信すると共に、前記伝送路を介して前記収音信号を受信する第2送受信部と、受信した前記収音信号に基づいて前記スピーカモジュール各々の3次元座標位置を求めるスピーカ座標解析部と、前記電源電圧を生成しこれを前記伝送路に印加する電源電圧生成部と、を有する。
【0008】
本発明に係るスピーカモジュールの座標位置測定方法は、オーディオ信号を再生するオーディオ装置と、夫々がスピーカ及びマイクロフォンを含む複数のスピーカモジュールと、前記スピーカモジュールの各々に対応して設けられており前記スピーカモジュールとを接続する単一の伝送路と、を有するオーディオシステムにおける前記スピーカモジュールの座標位置測定方法であって、前記オーディオ装置内で生成した電源電圧を前記伝送路を介して前記スピーカモジュール各々に給電し、前記オーディオ装置から前記伝送路を介して前記複数のスピーカモジュールの内の1のスピーカモジュールにテスト信号を送信することにより前記1のスピーカモジュールからテストトーンを音響出力させつつ、前記1のスピーカモジュールを除く他のスピーカモジュールの前記マイクロフォンで前記テストトーンを収音して得られた収音信号を前記伝送路を介して前記オーディオ装置に送信し、前記オーディオ装置が受信した前記収音信号に基づき前記スピーカモジュールの3次元座標位置を算出することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るオーディオシステムを車の車内へ実装した場合の概略配置を示す実装図である。
図2】本発明に係るオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
図3】スピーカモジュール1LF、2LF、1RF、2RFの前面を示す図である。
図4】送受信回路部10の内部構成を示すブロック図である。
図5】送受信回路部30a〜30dの内部構成を示すブロック図である。
図6】スピーカモジュール1LFをテストトーン発信源とした時の、音声到達時間を計測する際の通信フローである。
図7】スピーカモジュール2LFをテストトーン発信源とした時の、音声到達時間を計測する際の通信フローである。
図8】スピーカモジュール1LFからオーディオ装置3へエラー通知を行う際の通信フロー図である。
図9】本発明に係るオーディオシステムを車の車内へ実装した場合の他の概略配置を示す実装図である。
図10】送受信回路部10Aの内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るオーディオシステムの構成について図面を参照して説明する。図1はかかるオーディオシステムを車載オーディオシステムとして車の室内へ実装した場合の概略配置を示す実装図である。図1に示すように、この車載オーディオシステムは、ダッシュボード上に設置されているスピーカモジュール1LF及び1RFと、車両のドアDL及びDR各々の下部に設置されているスピーカモジュール2LF及び2RFと、ダッシュボードに設置されているオーディオ装置3と、を含む。
【0011】
図2は、上記した車載オーディオシステムを示すブロック図である。スピーカモジュール1LF及び1RFは共に同一の内部構成、即ち、送受信回路部10、マイクロフォン(以下、マイクと称する)11、及びスピーカ12を含む。マイク11は、車両室内の音を収音して得られた収音信号を送受信回路部10に供給する。スピーカ12は、可聴帯域内の高音周波数帯域の音響出力を担う高音スピーカ、いわゆるツイータであり、送受信回路部10から供給されたオーディオ信号に基づく各種再生音(後述する)を車両の室内へ向けて音響出力する。尚、マイク11は、図3に示すようにスピーカ12の縁部において車の車内に向けて設置されている。
【0012】
スピーカモジュール2LF及び2RFは、共に同一の内部構成、即ち、送受信回路部10、マイク11、スピーカ13を含む。マイク11は、車両室内の音を収音して得られた収音信号を送受信回路部10に供給する。スピーカ13は、可聴帯域内の低音周波数帯域の音響出力を担う低音スピーカ、いわゆるウーハ(ミッドウーハ)であり、送受信回路部10から供給されたオーディオ信号に基づく各種再生音を車両の室内へ向けて音響出力する。尚、マイク11は、図3に示すようにスピーカ12の縁部において車の室内に向けて設置されている。
【0013】
スピーカモジュール1LFに設けられている送受信回路部10は、マイク11から供給された収音信号を変調(後述する)し、これを伝送ケーブル4aを介してオーディオ装置3に送信する。また、スピーカモジュール1LFに設けられている送受信回路部10は、伝送ケーブル4aを介して受信した変調信号(後述する)からオーディオ信号を復調し、これをスピーカ12に供給する。スピーカモジュール1RFに設けられている送受信回路部10は、マイク11から供給された収音信号を変調し、これを伝送ケーブル4bを介してオーディオ装置3に送信する。また、スピーカモジュール1RFに設けられている送受信回路部10は、伝送ケーブル4bを介して受信した変調信号からオーディオ信号を復調し、これをスピーカ12に供給する。スピーカモジュール2LFに設けられている送受信回路部10は、マイク11から供給された収音信号を変調し、これを伝送ケーブル4cを介してオーディオ装置3に送信する。また、スピーカモジュール2LFに設けられている送受信回路部10は、伝送ケーブル4cを介して受信した変調信号からオーディオ信号を復調し、これをスピーカ13に供給する。スピーカモジュール2RFに設けられている送受信回路部10は、マイク11から供給された収音信号を変調し、これを伝送ケーブル4dを介してオーディオ装置3へ送信する。また、スピーカモジュール2RFに設けられている送受信回路部10は、伝送ケーブル4dを介して受信した変調信号からオーディオ信号を復調し、これをスピーカ13に供給する。
【0014】
尚、伝送ケーブル4a〜4dの各々は、1本の信号ラインと1本の接地ラインとからなる例えば、同軸ケーブル、ツイストペア線、又は平行線等の単一の伝送路である。
【0015】
図4は、送受信回路部10の内部構成を示すブロック図である。送受信回路部10には、電源電圧導出部20、AD変換器21、変調回路22、送信アンプ23、コンデンサ24、受信アンプ25、復調回路26、DA変換器27、アンプ28、及び割込通信制御回路29を含む。AD変換器21は、マイク11から供給された収音信号をディジタルの収音データ信号RXに変換し、これを変調回路22へ供給する。
【0016】
変調回路22は、収音データ信号RXに対して、誤り符号化処理及びQPSK(Quadrature phase shift keying)変調、QAM(Quadrature amplitude modulation)等のディジタル変調を施して得た収音データ変調信号RMを送信アンプ23に供給する。更に、変調回路22は、割込通信制御回路29から供給された割込要求信号INT及びエラーステータス情報STS(後述する)に対して上記した如きディジタル変調を施したものを送信アンプ23に供給する。この際、変調回路22は、割込通信制御回路29から供給された割込要求信号INTに応じて、承認信号INTAK1を割込通信制御回路29に供給する。
【0017】
送信アンプ23は、収音データ変調信号RMを増幅した信号を収音変調信号RTXとし、これをラインL1、コンデンサ24及び伝送ケーブル(4a、4b、4c又は4d)を介してオーディオ装置3に送信する。
【0018】
コンデンサ24の一端は伝送ケーブル(4a、4b、4c又は4d)に接続されており、その他端はラインL1を介して送信アンプ23の出力端子及び受信アンプ25の入力端子に接続されている。コンデンサ24は、伝送ケーブル(4a、4b、4c又は4d)上の直流成分がラインL1に流れ込むのを遮断する。
【0019】
受信アンプ25は、伝送ケーブル(4a、4b、4c又は4d)及びコンデンサ24を介してオーディオ装置3から送信されてきたオーディオ変調信号(後述する)を受け、これを増幅して得られたオーディオ変調信号ORを復調回路26に供給する。
【0020】
復調回路26は、オーディオ変調信号ORに対して、オーディオ装置3の変調回路62(後述する)での変調処理に対応した復調、及び誤り訂正処理を施すことによりオーディオデータ信号ODを復元し、かかるオーディオデータ信号ODをDA変換器27に供給する。また、復調回路26は、受信アンプ25を介してテストトーン送出指令信号SSに対応した変調信号を受信した場合には、これを復調して得られたテストトーン送出指令信号SSを割込通信制御回路29に供給する。
【0021】
割込通信制御回路29は、テストトーン送出指令信号SSが供給されてから所定の待受期間内に収音データ信号RXが供給されなかった場合には、エラーが生じていると判断して割込要求信号INTを変調回路22に供給する。また、割込通信制御回路29は、変調回路22から承認信号INTAK1が供給された場合には、割込要因となったエラーの状態、つまりテストトーンを収音することが出来なかった旨を示すエラーステータス情報STSを変調回路22に供給する。
【0022】
DA変換器27は、オーディオデータ信号ODをアナログのオーディオ信号SPIに変換し、これをアンプ28へ供給する。アンプ28は、オーディオ信号SPIを増幅した増幅オーディオ信号をスピーカ12または13へ供給する。
【0023】
電源電圧導出部20は、伝送ケーブル(4a、4b、4c又は4d)上に重畳されている直流の電源電圧VDDを導出する。そして、電源電圧導出部20は、かかる電源電圧VDDを、送受信回路部10内のAD変換器21、変調回路22、送信アンプ23、受信アンプ25、復調回路26、DA変換器27、アンプ28及び割込通信制御回路29、並びにコンデンサマイクとしてのマイク11各々を動作させる電源として、夫々に供給する。
【0024】
オーディオ装置3は、送受信回路30a〜30d、オーディオ再生部31、音場制御部32、SP(スピーカ)座標解析部33、記憶部34及びコントローラ35を含む。
【0025】
オーディオ再生部31は、例えば、半導体メモリ、磁気または光ディスク等の記憶媒体、或いはインターネット上からオーディオ信号を再生する音楽プレーヤ(図示せぬ)、放送波を受信してオーディオ信号を再生するラジオ受信機(図示せぬ)、及びテストトーン発生器310を含む。尚、テストトーン発生器310は、ツイータとしてのスピーカ12の周波数帯域内の周波数を有する高音テスト信号、及びウーハとしてのスピーカ13の周波数帯域内の周波数を有する低音テスト信号を発生する。
【0026】
オーディオ再生部31は、音楽プレーヤ又はラジオ受信機で再生された再生オーディオ信号を高域成分及び低域成分に分割する。この際、オーディオ再生部31は、高域成分に対応した左チャンネルの再生オーディオ信号ALHをオーディオ信号TTaとして、送受信回路30aに供給すると共に、高域成分に対応した右チャネルの再生オーディオ信号ARHをオーディオ信号TTbとして送受信回路部30bに供給する。更に、オーディオ再生部31は、上記した低域成分に対応した左チャネルの再生オーディオ信号ALLをオーディオ信号TTcとして、送受信回路部30cに供給すると共に、低域成分に対応した右チャネルの再生オーディオ信号ARLをオーディオ信号TTdとして送受信回路部30dに供給する。
【0027】
この際、オーディオ再生部31は、上記した再生オーディオ信号ALH、ARH、ALL及びARLを、音場制御部32にて設定された遅延時間DLa〜DLdにて夫々個別に遅延させたものをオーディオ信号TTa〜TTdとして、送受信回路部30a〜30dの各々に供給する。即ち、オーディオ再生部31は、再生オーディオ信号ALHを遅延時間DLaだけ遅延させたものをオーディオ信号TTaとして送受信回路30aに供給する。また、オーディオ再生部31は再生オーディオ信号ARHを遅延時間DLbだけ遅延させたものをオーディオ信号TTbとして送受信回路30bに供給する。また、オーディオ再生部31は、再生オーディオ信号ALLを遅延時間DLcだけ遅延させたものをオーディオ信号TTcとして送受信回路30cに供給する。また、オーディオ再生部31は、再生オーディオ信号ARLを遅延時間DLdだけ遅延させたものをオーディオ信号TTdとして、送受信回路30dに供給する。
【0028】
なお、オーディオ再生部31は、コントローラ35からテストトーン送出指令が供給された場合は、上記した再生オーディオ信号(ALH,ARH)に代えて、テストトーン発生器310が発生した高音テスト信号をオーディオ信号TTa、またはTTbとして、送受信回路30a又は30bに供給する。更にかかるテストトーン送出指令に応じて、オーディオ再生部31は、上記した再生オーディオ信号(ALL、ARL)に代えて、テストトーン発生器310が発生した低音テスト信号をオーディオ信号TTc、又はTTdとして、送受信回路部30c又は30dに供給する。
【0029】
送受信回路部30aは、上記したオーディオ信号TTaを変調(後述する)し、これを伝送ケーブル4aを介して、スピーカモジュール1LFに送信する。また、送受信回路部30aは、伝送ケーブル4aを介して受信した収音変調信号から収音信号を復調し、これを収音信号TEaとしてSP座標解析部33に供給する。
【0030】
送受信回路部30bは、上記したオーディオ信号TTbを変調(後述する)し、これを伝送ケーブル4bを介して、スピーカモジュール1RFに送信する。また、送受信回路部30bは、伝送ケーブル4bを介して受信した収音変調信号から収音信号を復調し、これを収音信号TEbとしてSP座標解析部33に供給する。
【0031】
送受信回路部30cは、上記したオーディオ信号TTcを変調(後述する)し、これを伝送ケーブル4cを介して、スピーカモジュール2LFに送信する。また、送受信回路部30cは、伝送ケーブル4cを介して受信した収音変調信号から収音信号を復調し、これを収音信号TEcとしてSP座標解析部33に供給する。
【0032】
送受信回路部30dは、上記したオーディオ信号TTdを変調(後述する)し、これを伝送ケーブル4dを介して、スピーカモジュール2RFに送信する。また、送受信回路部30dは、伝送ケーブル4dを介して受信した収音変調信号から収音信号を復調し、これを収音信号TEdとしてSP座標解析部33に供給する。
【0033】
尚、送受信回路部30a〜30dは、同一の内部構成、即ち、図5に示すように、AD変換器61、変調回路62、送信アンプ63、コンデンサ64、受信アンプ65、復調回路66、割込通信制御回路67、及び電源電圧生成回路70を含む。
【0034】
AD変換器61は、オーディオ再生部31から供給されたオーディオ信号(TTa〜TTd)をディジタルのオーディオデータ信号ADに変換し、これを変調回路62に供給する。
【0035】
変調回路62は、オーディオデータ信号ADに対して、誤り符号化処理、及びQPSK変調、QAM等のディジタル変調を施してきたオーディオデータ変調信号AMOを送信アンプ63へ供給する。また、変調回路62は、割込通信制御回路67から供給されたテストトーン送出指令信号SSに対して上記した如きディジタル変調を施したものを送信アンプ63に供給する。
【0036】
送信アンプ63は、オーディオデータ変調信号AMOを増幅した信号をオーディオ変調信号POとし、これをラインL2、コンデンサ64及び伝送ケーブル(4a、4b、4c、又は4d)を介して、スピーカモジュール(1LF、2LF、1RF、2RF)に送信する。受信アンプ65は、伝送ケーブル(4a、4b、4c、又は4d)及びコンデンサ64を介して、スピーカモジュール(1LF、2LF、1RF、2RF)から送信されてきた収音変調信号を受け、これを増幅して得られた収音変調信号PRを復調回路66に供給する。
【0037】
復調回路66は、収音変調信号PRに対して、スピーカモジュールの変調回路22での変調処理に対応した復調、及び誤り訂正処理を施すことにより収音データ信号RXを復元する。この際、復調回路66は、かかる収音データ信号RXを収音信号(TEa〜TEd)としてSP座標解析部33に供給する。また、復調回路66は、受信アンプ65を介して割込要求信号INT及びエラーステータス情報STSに対応した変調信号を受信した場合には、これらを復調して割込要求信号INT及びエラーステータス情報STSを得る。この際、復調回路66は、エラーステータス情報STSを内蔵レジスタ(図示せぬ)に格納しつつ割込要求信号INTを割込通信制御回路67に供給する。復調回路66は、割込通信制御回路67から供給された読出要求信号RDに応じて、その内部レジスタに記憶されているエラーステータス情報STSを読み出し、これを割込通信制御回路67に供給する。
【0038】
割込通信制御回路67は、復調回路66から供給された割込要求信号INTに応じて、エラーステータス情報の読み出しを要求する読出要求信号RDを復調回路66に供給する。尚、割込通信制御回路67は、エラーステータス情報STSを取得した際には、これをコントローラ35に供給する。また、割込通信制御回路67は、コントローラ35からテストトーン送出指令が発令された場合にはテストトーン送出指令信号SSを変調回路62に供給する。更に、割込通信制御回路67は、復調回路66に対して、その内部レジスタに記憶されているエラーステータス情報STSをクリアさせるべきステータスクリア信号CLRを供給する。ステータスクリア信号CLRに応じて、復調回路66は、内蔵レジスタに記憶されているエラーステータス情報STSをクリアする。
【0039】
電源電圧生成部70は、送受信回路30a〜30d内の各モジュール、つまり、AD変換器61、変調回路62、送信アンプ63、受信アンプ65、復調回路66及び割込通信制御回路67各々を動作させる電源として直流の電源電圧VDDを生成し、夫々に供給する。更に、電源電圧生成部70は、かかる電源電圧VDDを伝送ケーブル(4a、4b、4c、又は4d)に印加することにより、電源電圧VDDをスピーカモジュール(1LF、1RF、2LF、2RF)に供給する。
【0040】
即ち、伝送ケーブル(4a、4b、4c、又は4d)に直流の電源電圧VDDが重畳された状態で、この伝送ケーブルを介して、上記した如き各種変調信号が、オーディオ装置3及び各スピーカモジュール(1LF、1RF、2LF、2RF)間において双方向伝送されるのである。
【0041】
SP座標解析部33は、まず、コントローラ35がテストトーン送出指令を発令してから上記した収音信号TEa〜TEdが供給されるまでに掛る伝搬時間を夫々測定する。そして、SP座標解析部33は、これら収音信号TEa〜TEd各々に対応した伝搬時間に基づき、スピーカモジュール1LF、1RF、2LF及び2RF各々の車両室内での3次元座標を算出し、この3次元座標を示す3次元座標データを記憶部34に記憶させる。
【0042】
音場制御部32は、先ず、記憶部34に記憶されている3次元座標データを取り込むと共に、ユーザーが指定した聴取位置、例えば、「運転席」、「助手席」又は「後部座席」を示す聴取位置情報を取り込む。次に音場制御部32は、上記した3次元座標データにて示されるスピーカモジュール1LF、1RF、2LF及び2RF各々の3次元座標、及び上記した聴取位置に基づき、上記した再生オーディオ信号ALH、ARH、ALL及びARL各々に施すべき遅延の時間を示す遅延時間DLa〜DLdを算出する。即ち、音場制御部32は、スピーカモジュール1LF、1RF、2LF及び2RF各々から音響出力された音の位相を、ユーザーが指定した聴取位置で一致させるべく、再生オーディオALH、ARH、ALL、ARL各々に対して、施す遅延時間DLa〜DLdを求めるのである。そして、音場制御部32は、かかる遅延時間DLa〜DLdにて、再生オーディオ信号ALH、ARH、ALL、及びARLを夫々遅延させたものをオーディオ信号TTa〜TTdとして送出させるべく、オーディオ再生部31の設定を行う。
【0043】
次に本発明の実施例の動作について説明する。まず、各スピーカ同士の音声の到達時間の計測を行う。
【0044】
図6は、スピーカモジュール1LFをテストトーンの発信源とし、他の3つのスピーカモジュール1RF、2LF、2RFでテストトーンを収音することにより、スピーカモジュール1LFと、1RF、2LF及び2RF各々との間の音声到達時間を計測すべく為される通信動作を示す通信フロー図である。
【0045】
まず、オーディオ装置3のコントローラ35は、テストトーン送出指令をオーディオ再生部31及びSP座標解析部33に供給する(ステップS1)。ここでオーディオ装置3は、かかるテストトーン送出指令に応じてオーディオ再生部31のテストトーン発生器310が発生した高音テスト信号を、オーディオ信号TTaとして伝送ケーブル4aを介してスピーカモジュール1LFに送信する(ステップS2)。
【0046】
スピーカモジュール1LFは、伝送ケーブル4aを介してオーディオ信号TTaとしての高音テスト信号を受信すると、この高音テスト信号に基づく高音トーンテストをスピーカ12にて音響出力させる(ステップS3)。なお、高音テストトーンは、発声するスピーカ12の再生周波数帯域内とする。スピーカモジュール1RF、2LF、2RFは、スピーカモジュール1LFから発せられた高音テストトーンを、夫々のマイク11で収音し(ステップS4)、各マイク11で得られた収音信号を伝送ケーブル4b、4c、4dを介してオーディオ装置3に送信する(ステップS5)。この際、オーディオ装置3のSP座標解析部33は、受信した収音信号、つまりスピーカモジュール1RF、2LF、2RF各々のマイク11で収音して得られた収音信号(TEb〜TEd)を取り込んで内蔵レジスタ(図示せぬ)に記憶させる(ステップS6)。
【0047】
図7は、スピーカモジュール2LFをテストトーンの発信源として、他の3つのスピーカモジュール1RF、1LF、2RFでテストトーンを収音することにより、スピーカモジュール2LFと、1RF、1LF及び2RF各々との間の音声到達時間を計測すべく為される通信動作を示す通信フロー図である。
【0048】
まず、オーディオ装置3のコントローラ35は、テストトーン送出指令をオーディオ再生部31及びSP座標解析部33に供給する(ステップS11)。ここでオーディオ装置3は、かかるテストトーン送出指令に応じてオーディオ再生部31のテストトーン発生器310が発生した低音テスト信号を、オーディオ信号TTcとして伝送ケーブル4cを介してスピーカモジュール2LFに送信する(ステップS12)。
【0049】
スピーカモジュール2LFは、伝送ケーブル4cを介してオーディオ信号TTcとしての低音テスト信号を受信すると、この低音テスト信号に基づく低音トーンテストをスピーカ12にて音響出力させる(ステップS13)。なお、低音テストトーンは、発声するスピーカ12の再生周波数帯域内とする。スピーカモジュール1LF、1RF、2RFは、スピーカモジュール2LFから発せられた低音テストトーンを、夫々のマイク11で収音し(ステップS14)、各マイク11で得られた収音信号を伝送ケーブル4a、4b、4dを介してオーディオ装置3に送信する(ステップS15)。この際、オーディオ装置3のSP座標解析部33は、受信した収音信号、つまりスピーカモジュール1LF、1RF、2RF各々のマイク11で収音して得られた収音信号(TEa、TEb、TEd)を取り込んで内蔵レジスタ(図示せぬ)に記憶させる(ステップS16)。
【0050】
図7に示す動作終了後、テストトーンの発信源をスピーカモジュール1RF、2RFへ変更し、引き続き図7に示す動作と同様な動作を実行する。
【0051】
上記の如きテストトーンの発信源を切り替えての収音動作が終了すると、SP座標解析部33は、テストトーン送出指令が発令されてから、各収音動作の開始時点までの時間を各スピーカモジュール間での音声到達時間として求める。そして、SP座標解析部33は、各スピーカモジュール間での音声到達時間に基づき、スピーカモジュール1LF、1RF、2LF及び2RF各々の車両室内での3次元座標を算出し、この3次元座標を示す3次元座標データを記憶部34に記憶させる。
【0052】
次に、上記3次元座標を用いた最適な音場再生について説明する。聴取者は、オーディオ装置3の操作部を操作して、音場制御部32へ音場を最適にしたいという車両室内の場所を指定する。すると、音場制御部32は、記憶部34に記憶されている各スピーカモジュールの3次元座標をもとに、上記指定場所において、各スピーカモジュールが発した音声が最適、つまり音声の位相が一致する音場となるような音声の発声タイミングを計算する。そこで、音場制御部32は、オーディオ再生部31に対して、上記発声タイミングで各スピーカモジュールに再生オーディオ信号を供給させるべき音場制御を施す。ここで言う再生オーディオ音声とはCD、DVD、半導体メモリ等の記憶媒体から再生されたオーディオ信号、或いはラジオ放送波を受信して得られたオーディオ信号である。
【0053】
上記した如き音場制御によれば、音場が最適となる箇所を、車両室内の任意の位置に指定することが可能となる。
【0054】
以上の如く、本発明に係るオーディオシステムでは、オーディオ装置(3)の電源電圧生成部(70)が直流の電源電圧(VDD)を伝送路(4a〜4d)に印加し、スピーカモジュール(1LF、1RF、2LF、2RF)の電源電圧導出部(20)にて伝送路から電源電圧を導出することにより、スピーカモジュールへの給電を行う。更に、夫々がマイクロフォン(11)、スピーカ(12、13)及び第1送受信部(10)を含むスピーカモジュール各々の3次元座標位置を以下の如く測定する。先ず、オーディオ装置のテストトーン発生部(310)にて、スピーカモジュールに含まれるスピーカの周波数帯域内の周波数を有するテスト信号を生成する。この際、オーディオ装置の第2送受信部(30a〜30d)は、かかるテスト信号を伝送路を介して複数のスピーカモジュールの内の1のスピーカモジュールに送信する。これにより、このスピーカモジュールに含まれるスピーカからテストトーンが音響出力される。この間、他のスピーカモジュールに含まれるマイクロフォンでこのテストトーンを収音して得られた収音信号が、第1送受信部により、伝送路を介してオーディオ装置側に送信される。そして、受信した収音信号に基づき、オーディオ装置のSP座標解析部(33)にてスピーカモジュールの3次元座標位置が算出される。
【0055】
このように、当該オーディオシステムでは、スピーカモジュール内に、スピーカユニットの他に、テストトーンを収音する為のマイクと、このマイクで収音して得られた収音信号を単一の伝送路を介してオーディオ装置側に送信する一方、この伝送路を介してオーディオ装置側から送られてきたオーディオ信号をスピーカに供給する第1送受信部と、を備える構成を採用している。また、オーディオ装置は、スピーカの周波数帯域内の周波数を有するテスト信号を生成するテストトーン発生部と、テスト信号及びオーディオ信号を択一的に伝送路を介してスピーカモジュールに送信すると共に、この伝送路を介して収音信号を受信する第2送受信部と、受信した収音信号に基づいてスピーカモジュール各々の3次元座標位置を求めるスピーカ座標解析部と、を備える構成を採用している。更に、当該オーディオシステムでは、オーディオ装置側で生成した直流の電源電圧を上記伝送路を介して前記スピーカモジュールに給電するようにしている。
【0056】
よって、本発明に係るオーディオシステムによれば、オーディオ装置から送出されるテスト信号又はオーディオ信号、及びスピーカモジュールに含まれるマイクロフォンで収音して得られた収音信号各々の伝送、並びにスピーカモジュールに対する給電が、単一の伝送路で兼用して為される。これにより、上記した収音信号、テスト信号及びオーディオ信号の伝送、並びにスピーカモジュールに対する給電を、夫々専用のケーブルを介して行う場合に比して、装置規模を小さくすることが可能となる。
【0057】
また、本発明に係るオーディオシステムでは、各スピーカモジュール間の音声到達時間を計測するにあたり、テストトーンの発信源を高音スピーカであるスピーカ12とする場合には、このスピーカ12の再生周波数帯域内の周波数を有する高音テスト信号をスピーカ12に供給することにより高音テストトーンを出力させる。一方、低音スピーカであるスピーカ13をテストトーンの発信源とする場合には、このスピーカ13の再生周波数帯域内の周波数を有する低音テスト信号をスピーカ13に供給することにより低音テストトーンを出力させるようにしている。つまり、各スピーカの再生周波数帯域に追従させて、テストトーンの発信源となるスピーカに供給するテスト信号の周波数を設定するようにしている。よって、スピーカ各々の再生周波数帯域に合致した周波数を有するテストトーンにより音声の到達時間が測定されるので、その測定精度を向上させることが可能となる。これにより、高音再生を担うスピーカ12及び低音再生を担うスピーカ13が、ダッシュボード上及びドア下部の如き聴取者までの距離が夫々異なる位置に設置される場合であっても、周波数帯域が異なるスピーカ各々から発せられる音の位相を精度良く聴取位置で揃えた音場を提供することが可能となる。
【0058】
ここで、図2に示されるオーディオシステムでは、上記した如き音声到達時間の計測を実施するにあたり、オーディオ装置3からテストトーン送出指令が発令されてから所定の待受期間が過ぎてもマイク11でテストトーンを収音することができなかった場合には、その旨を示すエラー通知を割込処理によって行うようにしている。
すなわち、先ず、オーディオ装置3のコントローラ35は、テストトーン送出指令をオーディオ再生部31及びSP座標解析部33と共に、送受信回路部30a〜30d各々に供給する。かかるテストトーン送出指令に応じて、送受信回路部30a〜30d各々の割込通信制御回路67は、テストトーン送出指令信号SSをスピーカモジュール側に送信すべく変調回路62を制御する。これにより、変調回路62は、上記した如きディジタル変調を施したテストトーン送出指令変調信号SSMを、送信アンプ63、コンデンサ64及び伝送ケーブル(4a〜4d)を介して、スピーカモジュール(1LF、1RF、2LF、2RF)に送信する。かかるテストトーン送出指令変調信号SSMを受信すると、スピーカモジュール各々の復調回路26は、テストトーン送出指令変調信号SSMからテストトーン送出指令信号SSを復元し、これを割込通信制御回路29に供給する。割込通信制御回路29は、テストトーン送出指令信号SSが供給されてから所定の待受期間内に、AD変換器21から収音データ信号RXが供給された場合には、図6又は図7に示す如きステップS5又はS15以降の動作を実行する。一方、所定の待受期間内に収音データ信号RXが供給されなかった場合には、割込処理によりオーディオ装置3に対してエラー通知を行う。
【0059】
図8は、かかる割込処理によってスピーカモジュール1LFからオーディオ装置3へ上記した如きエラー通知を行う際の通信フローを示す図である。
先ず、スピーカモジュール1LFの割込通信制御回路29は、テストトーン送出指令信号SSが供給されてから所定の待受期間内に収音データ信号RXが供給されなかった場合には、エラーが生じていると判断して割込要求信号INTを変調回路22に供給する(ステップS101)。割込要求信号INTに応じて変調回路22は、割込要求が為されたことを示すフラグを内部レジスタに格納すると共に承認信号INTAK1を割込通信制御回路29に供給する(ステップS102)。かかる承認信号INTAK1に応じて割込通信制御回路29は、割込要因となったエラーの状態、つまりテストトーンを収音することが出来なかった旨を示すエラーステータス情報STSを変調回路22に供給する(ステップS103)。かかるエラーステータス情報STSに応じて変調回路22は、割込要求信号INT及びエラーステータス情報STSに対して上記の如きディジタル変調を施して得た変調信号を伝送ケーブル4aを介してオーディオ装置3に送信する(ステップS104)。かかる変調信号を受信すると、オーディオ装置3内の送受信回路部30aの復調回路66が、この受信した変調信号に対して復調処理を施すことにより割込要求信号INT及びエラーステータス情報STSを復元する(ステップS105)。次に、復調回路66は、割込要求が為されたことを示すフラグ及びエラーステータス情報STSを内部レジスタに格納すると共に割込要求信号INTを割込通信制御回路67に供給する(ステップS106)。割込要求信号INTの供給に応じて、割込通信制御回路67は、エラーステータス情報の読み出しを要求する読出要求信号RDを復調回路66に供給すると共に、取得したエラーステータス情報STSをコントローラ35に供給する処理を含む割込ルーチンを開始する(ステップS107)。かかる読出要求信号RDの供給に応じて復調回路66は、内部レジスタに記憶されているエラーステータス情報STSを読み出し、これを割込通信制御回路67に供給する(ステップS108)。この際、割込通信制御回路67は、このエラーステータス情報STSをコントローラ35に中継供給する。かかるエラーステータス情報STSに応じて、コントローラ35は、ユーザに対してシステム全体の接続の確認を促すメッセージを表示装置(図示せぬ)に表示させる。表示装置によるメッセージの表示が完了すると、割込通信制御回路67は、上記した割込ルーチンを抜け、復調回路66に対して、その内部レジスタに記憶されているエラーステータス情報STSをクリアさせるべきステータスクリア信号CLRを供給する。ステータスクリア信号CLRに応じて、復調回路66は、内蔵レジスタに記憶されているエラーステータス情報STSをクリアする(ステップ109)。
【0060】
上記の如く、本発明に係るオーディオシステムでは、割込処理によってスピーカモジュール側からオーディオ装置3へエラー通知を行うにあたり、割込要求信号と、エラー状態を示すエラーステータス情報とを同時にスピーカモジュール側からオーディオ装置3に送信するようにしている。この際、オーディオ装置3側では、受信したエラーステータス情報を一旦、内蔵レジスタに記憶しておくと共に割込要求信号に応じた割込ルーチンの実行に移り、ここで、内蔵レジスタに記憶しておいたエラーステータス情報を取得する。よって、オーディオ装置3は、スピーカモジュール側からの割込要求を受けた後、スピーカモジュールに対してエラーステータス情報を要求する為の通信を行う必要が無くなる。これにより、オーディオ装置3側では、図8に示す如きステップS107による割込ルーチンを開始してから、復調回路66側からエラーステータス情報STSの供給を受けるまでの応答時間T1を、例えばI2C(Inter-Integrated Circuit)通信インタフェース等で規定されている規定応答時間T2内に収めることが可能となる。
【0061】
尚、図8に示す実施例では、スピーカモジュール同士の音声到達時間の計測を行う際に生じたエラーを割込処理によって通知する場合について説明したが、割込処理によって通知するエラー内容はこれに限定されない。要するに、上記した音声到達時間内の計測時、或いは通常のオーディオ再生時においてスピーカモジュール内で動作異常を検出した場合には、その異常の状態を示すエラーステータス情報STSを図8に示す如く割込処理を利用した通信形態で、スピーカモジュール側からオーディオ装置側に送信すればよいのである。
【0062】
また、上記実施例では、車両室内のフロント部に設けた右チャネル用のスピーカモジュール1RF及び2RFと、左チャネル用のスピーカモジュール1LF及び2LFとからなる2チャンネ分のスピーカモジュールに適用した例を示したが、スピーカモジュールの数は、2チャネル分に限定されない。例えば、図9に示すように、車両室内のフロント部に設けた2チャネル分のスピーカモジュール(1LR、2LF、1RF、2RF)の他に、
車両室内の後部座席の後方に2チャネル分のスピーカモジュール(1LR、2RR)を設けた4チャネルのオーディオシステムにも同様に適用可能である。
【0063】
このようなオーディオシステムでも、上記した実施例と同様に、1つのスピーカモジュールをテストトーンの発信源とし、それ以外のスピーカモジュールに搭載されたマイクにてそのテストトーンを収音し、オーディオ装置3のSP座標解析部33にて、各スピーカモジュールの3次元座標を算出するのである。
【0064】
また、上記実施例では、各スピーカモジュールにテストトーンを収音する為のマイク11を設けるようにしているが、スピーカモジュールに搭載されているスピーカ(12、13)をテストトーンを収音する為のマイクとして用いるようにしても良い。
【0065】
図10は、かかる点に鑑みて為されたスピーカモジュールの内部構成の他の一例を示す図である。図10に示すように、このスピーカモジュールは、送受信回路部10Aとスピーカ12又は13とからなす。この際、送受信回路部10Aにおいては、スピーカ12がAD変換器21の入力端子に接続されている点を除く他の構成は、図4に示されるものと同一である。すなわち、図10に示されるスピーカモジュールでは、送受信回路部10Aは、スピーカ(12、13)で収音して得られた収音信号を変調した信号を伝送ケーブル(4a〜4d)を介してオーディオ装置3に送信するのである。
【符号の説明】
【0066】
11 マイク
12、13 スピーカ
1RF、1LF スピーカモジュール
2RF、2LF スピーカモジュール
3 オーディオ装置
10、30a〜30d 送受信回路部
20 電源電圧導出部
31 オーディオ再生部
32 音場制御部
33 SP座標解析部
35 コントローラ
310 テストトーン発生器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10