特許第6162568号(P6162568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162568
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】研削装置及びウエーハの搬出方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20170703BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20170703BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   H01L21/304 622P
   H01L21/304 631
   H01L21/304 622L
   H01L21/68 A
   H01L21/68 N
   H01L21/304 643Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-216049(P2013-216049)
(22)【出願日】2013年10月17日
(65)【公開番号】特開2015-79853(P2015-79853A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】門田 宏太郎
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−145776(JP,A)
【文献】 特開2013−122995(JP,A)
【文献】 特開2008−270425(JP,A)
【文献】 特開2009−253244(JP,A)
【文献】 特開2013−131709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/677
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの一方の面を吸引保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルの該保持面の中心を軸に回転させるチャックテーブル回転手段と、吸引源と流体を供給する供給源とを切換えそれぞれを該チャックテーブルに連通させる切換バルブと、該チャックテーブルに吸引保持されるウエーハを研削する研削手段と、該チャックテーブルからウエーハを搬出する搬送手段と、制御部と、を備えた研削装置であって、
該搬送手段は、ウエーハの他方の面を吸引保持する吸引面を有する搬送パッドと、該吸引面による吸引を行いながら該吸引面の中心を軸に該搬送パッドを回転可能に支持する回転軸と、該搬送パッドを該チャックテーブルに接近および離反させる移動手段と、を備え、
該制御部は、該チャックテーブルの該保持面で吸引保持するウエーハの他方の面に該搬送パッドの該吸引面を当接させてから、該吸引面で吸引させることでウエーハを介して該保持面と該吸引面とを連結させ、該チャックテーブル回転手段による該チャックテーブルの回転に伴い該搬送パッドを回転させ、所定の回転数にて該チャックテーブルと該搬送パッドとが回転した時に該切換バルブを切換え、該保持面と該供給源とを連通させて該保持面からウエーハを保持する該搬送パッドを浮上させる制御を行い、回転する該搬送パッド及び該チャックテーブルの遠心力で該供給源から供給される流体と共に研削屑を吹き飛ばすことを特徴とする研削装置。
【請求項2】
該搬送手段は、該回転軸に接続し該搬送パッドを回転させる搬送パッド回転駆動部と、該搬送パッド回転駆動部を用いて該チャックテーブルの回転数と同じ回転数で回転させる回転制御部と、を備える請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の研削装置を用いたウエーハの搬出方法であって、
該移動手段を用いて該チャックテーブルに吸引保持されるウエーハの他方の面に該搬送パッドの該吸引面を当接させると共に吸引保持させ、ウエーハを介して該保持面と該吸引面とを連結させる連結工程と、
該連結工程の後、該チャックテーブル回転手段で該チャックテーブルを回転させ、該チャックテーブルの回転数と同じ回転数で該搬送パッドを回転させる回転工程と、
該回転工程で該チャックテーブルと該搬送パッドとを回転させた状態で、該切換バルブを切換えて該保持面と該吸引源との連通を遮断し、該保持面と該供給源とを連通させて該保持面から流体を放出させ、該保持面からウエーハを保持する搬送パッドを浮上させると共に、回転する該チャックテーブル及び該搬送パッドの遠心力で該供給源から供給される流体を吹き飛ばす吹き飛ばし工程と、
該吹き飛ばし工程の後、該移動手段を用いて該チャックテーブルから該搬送パッドを離反させる離反工程と、を有するウエーハの搬出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置及びウエーハの搬出方法に関し、特に、ウエーハやウエーハを吸引保持するチャックテーブルが汚れることを防止することができる研削装置及びウエーハの搬出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハ等のウエーハを所定の厚みに薄化する研削装置においては、チャックテーブルの保持面にウエーハの一方の面となる表面を吸引保持した後、研削水を供給しながらウエーハの他方の面となる裏面を研削手段によって研削する。研削手段による研削中、チャックテーブルはウエーハを吸引しているので、研削屑を含む研削水の一部はウエーハの外周縁からチャックテーブル内に吸引される。このため、ウエーハの外周縁側に研削屑が付着して汚れるばかりでなく、チャックテーブルの内部に研削屑が侵入して汚れることがあった。そして、研削後にウエーハを搬送すると、ウエーハに付着した研削屑が落下し、チャックテーブルの保持面に付着することがあった。
【0003】
従来、このように研削屑が浸入、付着したチャックテーブルを洗浄するため、下記に述べる洗浄方法が提案されている。この洗浄方法を行う前の研削加工においては、ウエーハの表面がチャックテーブルの保持面に接触された状態で吸引保持されている。そして、研削加工後、チャックテーブルに保持されたウエーハの裏面を、搬送パッドによって吸引保持する。次いで、チャックテーブルの吸引を停止した後、搬送パッドを移動してウエーハを搬出するときに、チャックテーブルの保持面から液体を吹き上げる。この吹き上げによって、チャックテーブルの保持面からウエーハを離反させるとともに、チャックテーブルの内部に侵入した研削屑を外部に吹き上げてチャックテーブルを洗浄している。
【0004】
また、ウエーハを洗浄する方法として、スポンジローラを用いてウエーハを洗浄する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法では、スポンジローラに洗浄水を供給しながら、回転するスポンジローラにウエーハを直接接触させてウエーハを洗浄している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−31674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したチャックテーブルの洗浄方法においては、保持面からの液体の吹き上げによって、チャックテーブルに浸入、付着していた研削屑をウエーハの表面に吹き付けることとなる。このため、ウエーハの表面に研削屑が付着して汚れるという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に記載のウエーハの洗浄方法を行う場合においては、スポンジローラや、洗浄水を供給するノズル等を備えた洗浄機構を別途設置することが要求され、構造の複雑化、設備コストの上昇を招来するという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、ウエーハを研削してから搬出するときに、チャックテーブルの保持面及び保持面で保持されるウエーハの一方の面が汚れることを防止でき、構造の簡略化を図ることができる研削装置及びウエーハの搬出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の研削装置は、ウエーハの一方の面を吸引保持する保持面を有するチャックテーブルと、チャックテーブルの保持面の中心を軸に回転させるチャックテーブル回転手段と、吸引源と流体を供給する供給源とを切換えそれぞれをチャックテーブルに連通させる切換バルブと、チャックテーブルに吸引保持されるウエーハを研削する研削手段と、チャックテーブルからウエーハを搬出する搬送手段と、制御部と、を備えた研削装置であって、搬送手段は、ウエーハの他方の面を吸引保持する吸引面を有する搬送パッドと、吸引面による吸引を行いながら吸引面の中心を軸に搬送パッドを回転可能に支持する回転軸と、搬送パッドをチャックテーブルに接近および離反させる移動手段と、を備え、制御部は、チャックテーブルの保持面で吸引保持するウエーハの他方の面に搬送パッドの吸引面を当接させてから、吸引面で吸引させることでウエーハを介して保持面と吸引面とを連結させ、チャックテーブル回転手段によるチャックテーブルの回転に伴い搬送パッドを回転させ、所定の回転数にてチャックテーブルと搬送パッドとが回転した時に切換バルブを切換え、保持面と供給源とを連通させて保持面からウエーハを保持する搬送パッドを浮上させる制御を行い、回転する搬送パッド及びチャックテーブルの遠心力で供給源から供給される流体と共に研削屑を吹き飛ばすことを特徴とする。
【0010】
上記研削装置によれば、保持面から流体を放出してチャックテーブルに保持されたウエーハを搬出するときに、チャックテーブル及び搬送パッドの回転による遠心力で、保持面及びウエーハに付着した流体を外側に向かって吹き飛ばすことができる。言い換えると、保持面から放出した流体がウエーハに向かって吹き付けられても、吹き付けられた流体をウエーハの外側に吹き飛ばすことができる。また、チャックテーブルでは、ウエーハに付着した流体が落下したり、保持面から放出した流体が再付着したりしても、保持面上の流体を外側に吹き飛ばすことができる。これにより、ウエーハの一方の面と、チャックテーブルの保持面との両方が研削屑によって汚れた状態になることを防止することができる。しかも、ウエーハの汚れを防止できることによって、ウエーハの一方の面を洗浄する洗浄機構を不要とすることができ、構造の簡素化や設備コストの低減を図ることができる。
【0011】
例えば、上記の研削装置において、搬送手段は、回転軸に接続し搬送パッドを回転させる搬送パッド回転駆動部と、搬送パッド回転駆動部を用いてチャックテーブルの回転数と同じ回転数で回転させる回転制御部と、を備えるとよい。
【0012】
上記の研削装置を用いたウエーハの搬出方法にあっては、移動手段を用いてチャックテーブルに吸引保持されるウエーハの他方の面に搬送パッドの吸引面を当接させると共に吸引保持させ、ウエーハを介して保持面と吸引面とを連結させる連結工程と、連結工程の後、チャックテーブル回転手段でチャックテーブルを回転させ、チャックテーブルの回転数と同じ回転数で搬送パッドを回転させる回転工程と、回転工程でチャックテーブルと搬送パッドとを回転させた状態で、切換バルブを切換えて保持面と吸引源との連通を遮断し、保持面と供給源とを連通させて保持面から流体を放出させ、保持面からウエーハを保持する搬送パッドを浮上させると共に、回転するチャックテーブル及び搬送パッドの遠心力で供給源から供給される流体を吹き飛ばす吹き飛ばし工程と、吹き飛ばし工程の後、移動手段を用いてチャックテーブルから搬送パッドを離反させる離反工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ウエーハを研削してから搬出するときに、チャックテーブルの保持面及び保持面で保持されるウエーハの一方の面が汚れることを防止でき、構造の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係る研削装置の構成を説明するための模式図である。
図2】連結工程の前段階の一例を示す模式図である。
図3】連結工程の一例を示す模式図である。
図4】回転工程の一例を示す模式図である。
図5】吹き飛ばし工程の一例を示す模式図である。
図6】離反工程の一例を示す模式図である。
図7】変形例に係る研削装置の搬送手段及びチャックテーブルを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る研削装置の構成を説明するための模式図である。図1に示すように、本実施の形態に係る研削装置1は、基台2の上部にチャックテーブル3と、研削手段4と、搬送手段5とを備えて構成されている。基台2の図1中右側にはスピンナー6が設けられている。
【0016】
研削装置1は、チャックテーブル3上でウエーハWの一方の面となる表面(図1中下面)を吸引保持し、研削手段4によってウエーハWの他方の面となる裏面(図1中上面)を研削するように構成されている。例えば、ウエーハWは、シリコン、ガリウムヒソ等の半導体ウエーハで円板状に形成されている。なお、ウエーハWは、上記した半導体ウエーハに限らず、例えば、セラミック、ガラス、サファイア(Al)系の無機材料基板、半導体製品のパッケージ、各種電気部品やミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料をウエーハとしてもよい。
【0017】
チャックテーブル3は、円板形状を有し、ウエーハWを保持する保持面31を有する多孔質部材からなる保持部32を備えている。保持部32は、例えば、ポーラスセラミック材で構成され、概して円板形状に構成される。チャックテーブル3は、不図示のモータやギヤ構造等により構成されるチャックテーブル回転手段33によって、保持面31の中心を通るZ軸回りに回転可能に設けられている。
【0018】
チャックテーブル3の保持部32は、吸引源35と、供給源36とに連通路を介して連通しており、この連通路には、切換バルブ37が設けられている。吸引源35は、保持部32に連通したときに、保持面31において空気を吸引する。供給源36は、保持部32に連通したときに、流体としての洗浄液を含むエアーを保持部32に供給し、吹き飛ばす。
【0019】
切換バルブ37は、三方弁で構成される。切換バルブ37は、チャックテーブル3の接続先を、吸引源35と供給源36とに切換可能に構成されている。切換バルブ37は、後述する制御部7からの指示に応じて作動し、チャックテーブル3の接続先を切り換える。切換バルブ37は、チャックテーブル3と吸引源35とを連通させた場合に供給源36との連通を遮断する。一方、チャックテーブル3と供給源36とを連通させた場合に吸引源35との連通を遮断する。
【0020】
チャックテーブル3は、チャックテーブル移動機構34を介してXY平面に沿う方向に移動可能に構成されている。チャックテーブル移動機構34は、基台2上に配置されたX軸方向に平行なガイドレール341と、ガイドレール341にスライド可能に配置されたモータ駆動のX軸テーブル342とを有している。また、チャックテーブル移動機構34は、X軸テーブル342上に配置されたY軸方向に平行なガイドレール343と、ガイドレール343にスライド可能に配置されたモータ駆動のY軸テーブル344とを有している。Y軸テーブル343の下面には、チャックテーブル回転手段33が取り付けられている。Y軸テーブル343の上面とチャックテーブル3の下面との間には、それらのZ軸回りの相対回転を可能に連結する連結機構345が設けられている。
【0021】
研削手段4は、概して円板形状を有する研削ホイール41の下面に研削砥石42を設けて構成される。研削ホイール41は、スピンドル43に接続され、このスピンドル43によって、研削ホイール41の円板中心を軸に回転可能に構成される。研削砥石42は、例えば、ダイヤモンドの砥粒をメタルボンドやレジンボンド等の結合剤で固めたダイヤモンド砥石で構成される。
【0022】
研削手段4は、基台2の上面における保持テーブル3の図1中左側に立設された柱部21に支持されている。研削手段4は、柱部21に設けられた研削送り手段44によって駆動されて上下方向(Z軸方向)に移動可能に構成され、研削手段4とチャックテーブル3とを相対的に接近および離反させることが可能となる。研削送り手段44は、Z軸方向に延びるガイドレール441にスライド可能に設けられた支持部442を有しており、この支持部442を介して研削手段4が支持されている。支持部442には、柱部21側に突出したナット部(不図示)が設けられ、このナット部には、柱部21の前面に設けられたボールネジ443が螺合されている。そして、ボールネジ443の一端部に連結されたサーボモータ444が回転駆動されることで、研削手段4が上下方向(Z軸方向)に移動される。
【0023】
搬送手段5は、搬送パッド51と、回転軸52と、移動手段53とを備えて構成されている。搬送パッド51は、円板形状を有し、ウエーハWを吸着保持する吸引面511が下面に設けられている。保持面511は、たとえば、ポーラスセラミック材により形成されており、ポーラスセラミック材は吸引源54に連通している。搬送パッド51は、その上面において緩衝手段55を介して支持されている。緩衝手段55は、搬送パッド51がウエーハWに接触したり、吸引保持したウエーハWを搬送先で載置したりするときに、ばね等の構造を介してウエーハWに付与される衝撃を吸収するように構成されている。
【0024】
回転軸52は、緩衝手段55の上面から上方に突出して設けられ、ロータリージョイント56に接続されている。ロータリージョイント56は、回転軸52に軸回り(Z軸回り)の回転駆動力が加わったときに、回転軸52を支持しつつ回転軸52の回転を許容するように設けられている。従って、回転軸52は、緩衝手段55及びロータリージョイント56を介して、搬送パッド51を回転可能に支持している。ロータリージョイント56は、開閉バルブ57を介して吸引源54に接続されている。ロータリージョイント56と搬送パッド51との間には、図示しない通路が設けられ、吸引面511における吸引を行いながら搬送パッド51を回転可能に設けられている。
【0025】
移動手段53は、先端側でロータリージョイント56を支持して図1中横方向に延在しているアーム531と、基台2上から立設してアーム531の基部に連結された昇降手段532とを備えている。昇降手段532は、上部領域を形成するロッド532aが出没するように上下方向長さを伸縮し、ロッド532aに連結されたアーム531及び搬送パッド51等をZ軸方向に駆動する。この駆動によって、搬送パッド51がチャックテーブル3に相対的に接近および離反することが可能となる。また、昇降手段532は、図示しない回転手段に接続され、この回転手段によって、昇降手段532の中心を軸に搬送パッド51を回動して搬送パッド51をチャックテーブル3の上方とスピンナー6の上方とに移動可能に設けられている。
【0026】
スピンナー6は、上方を開放する容器体61の内部に配置されたスピンナーテーブル62と、スピンナーテーブル62を回転させる回転手段63とを備えている。スピンナーテーブル62は、チャックテーブル3と同様に、上面を保持面としてウエーハWを吸引保持可能に設けられている。スピンナーテーブル62の周囲には、吸引保持されたウエーハWの裏面(上面)に洗浄水を吹き付ける洗浄液ノズル64が設けられている。スピンナー6では、洗浄液ノズル64から洗浄水を噴射させながらスピンナーテーブル62が高速回転されることで、スピンナーテーブル62に吸引保持されたウエーハWが洗い流される。
【0027】
ここで、基台2の内部には、研削装置1の各部を統括制御する制御部7が設けられている。制御部7は、各種処理を実行するプロセッサや、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶媒体を含んで構成される。制御部7は、たとえば、予め入力して記憶された制御情報に応じ、切換バルブ37及び開閉バルブ57の作動タイミングや、チャックテーブル回転手段33の駆動タイミング、回転数等、研削装置1の各部の駆動を制御する。
【0028】
研削工程においては、まず、搬送手段5によってウエーハWがチャックテーブル3の保持面31上に載置される。なお、研削工程においては、切換バルブ37を介して保持部32に吸引源35が連通した状態となっている。そして、吸引源35からの吸引力によりウエーハWが保持面31に吸引保持される。ウエーハWの上方には研削手段4の研削ホイール41が位置付けられる。そして、研削ホイール41が軸回りに回転しながらチャックテーブル3に近づけられる。このとき、ウエーハWが保持されたチャックテーブル3もチャックテーブル回転手段33によって回転駆動されている。そして、ウエーハWに研削水を供給しながら、研削砥石42とウエーハWの裏面とが回転接触することで、ウエーハWが厚み方向に研削される。
【0029】
ウエーハWが研削されることにより、ウエーハWの表面には研削水に混じって研削屑が発生する。研削手段4による研削中、チャックテーブル3はウエーハWを吸引しているため、研削水の一部はウエーハWの外周縁からチャックテーブル3の保持部32内に吸引される。よって、研削屑は研削水と共にウエーハWの裏面から外周縁に向かって流れる。そして、研削屑がウエーハWとチャックテーブル3との隙間を通じて保持部32内に侵入する事態が生じ得る。このとき、比較的大きな研削屑は、ウエーハWの外周縁に堆積し付着する。
【0030】
このように研削手段4で研削が行われた後、ウエーハWがチャックテーブル3から搬出される。ここで、図2から図6を参照して、研削後のウエーハWの搬出方法について説明する。図2及び図3は連結工程、図4は回転工程、図5は吹き飛ばし工程、図6は離反工程のそれぞれ一例を示す図である。なお、これらの工程における研削装置1の各部の駆動制御は制御部7によって行われる。
【0031】
図2に示すように、先ず、連結工程が実施される。連結工程では、研削工程と同様に、切換バルブ37を介してチャックテーブル3の保持部32に吸引源35が連通し、吸引源35からの吸引力によりウエーハWが保持面31に吸引保持されている。この状態で、チャックテーブル3をX軸方向に移動し、搬送手段5における搬送パッド51の直下位置にチャックテーブル3が位置付けられる。そして、図3に示すように、昇降手段532を駆動してアーム531及び搬送パッド51を下降し、ウエーハWの表面に搬送パッド51の吸引面511が当接する位置に位置付けられる。その後、開閉バルブ57を作動して搬送パッド51と吸引源54とを連通し、吸引源54からの吸引力によりウエーハWが吸引面511に吸引保持される。この吸引保持によって、ウエーハWを介してチャックテーブル3の保持面31と、搬送パッド51の吸引面511とが連結された状態となる。
【0032】
図4に示すように、連結工程の後には回転工程が実施される。回転工程では、保持面31及び吸引面511におけるウエーハWの吸引保持を維持しながら、チャックテーブル回転手段33が駆動し、チャックテーブル3が回転される。連結工程によってウエーハWを介して保持面31及び吸引面511が連結され、搬送パッド51のZ軸回りの回転が許容された状態となっているので、チャックテーブル3の回転に伴い、チャックテーブル3の回転数と同じ回転数で搬送パッド51も回転される。
【0033】
図5に示すように、回転工程の後には吹き飛ばし工程が実施される。吹き飛ばし工程では、回転工程によるチャックテーブル3と搬送パッド51との回転が所定の回転数になったときに、切換バルブ37を作動してチャックテーブル3の接続先を切り換える。つまり、切換バルブ37によって、保持面31と吸引源35との連通が遮断され、保持面31と供給源36とが連通される。これにより、保持面31からエアーと共に洗浄液が放出され、ウエーハWと、これを保持する搬送パッド51とが保持面31から浮上される。このとき、保持部32内に侵入または保持面31に付着した研削屑は、混合されたエアー及び洗浄液と一緒に保持面31から上方に吹き上げられる。吹き上げられた研削屑を含む洗浄液の一部は、ウエーハWの表面に付着したり、保持面31に再付着したりするものの、回転するチャックテーブル3及び搬送パッド51の遠心力によって、それらの外側に向かって吹き飛ばされる。なお、保持面31からウエーハWが浮上することで、ウエーハWによる保持面31と吸引面511との連結状態が解除されるが、ウエーハWを保持する搬送パッド51は慣性によって回転が継続される。従って、チャックテーブル3の保持面31だけでなく、ウエーハWの表面に付着している洗浄液と共に研削屑も遠心力で吹き飛ばされて除去される。
【0034】
図6に示すように、吹き飛ばし工程の後には離反工程が実施される。離反工程では、昇降手段532を駆動してウエーハWを吸引保持した搬送パッド51を上昇し、チャックテーブル3から搬送パッド51を離反させて保持面31からウエーハWを離れた位置に位置付ける。この状態においても、搬送パッド51の回転の継続中は、ウエーハWにおける洗浄液と共に研削屑が吹き飛ばされ、チャックテーブル3では、チャックテーブル回転手段33の駆動中は保持面31の洗浄液及び研削屑が吹き飛ばされる。離反工程の後、移動手段53によって搬送パッド51がスピンナー6に向かって移動し、ウエーハWがスピンナーテーブル62に搬出される。
【0035】
以上のように、本実施の形態に係る研削装置によれば、研削工程終了後にウエーハWを搬出する際、チャックテーブル3及び搬送パッド51を回転するので、搬出開始時に保持面31やウエーハWの表面に付着した洗浄液と共に研削屑を吹き飛ばして取り除くことができる。これにより、保持部32に侵入した研削屑を保持面31から吹き上げても、搬出されるウエーハWや、次に研削するウエーハWの待機状態となる保持面31が研削屑で汚れることを回避することができる。
【0036】
また、本実施の形態に係る研削装置1によれば、チャックテーブル3を搬出するときにウエーハWの表面の汚れを除去できるので、ウエーハWの表面を洗浄する洗浄機構を不要とすることができ、構造の簡略化や装置のコスト削減を図ることができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0038】
例えば、図7に示すように、搬送手段5において搬送パッド51を回転させる構成としてもよい。図7は、変形例に係る搬送手段及びチャックテーブルを説明するための模式図である。図7において、搬送手段5は、回転軸52に接続されて搬送パッド51を回転させる搬送パッド回転駆動部58と、搬送パッド回転駆動部58の回転数を制御する回転制御部59と有している。回転制御部59は、チャックテーブル3の回転数と同じ回転数で搬送パッド51が回転するよう搬送パッド回転駆動部58を制御する。この構成によれば、チャックテーブル3側だけでなく搬送パッド51側からも回転駆動力を付与できる他、チャックテーブル3から搬送パッド51が離反した状態において、搬送パッド51の回転を制御することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明したように、構造の簡略化を図りつつ、チャックテーブルの保持面及び保持面で保持されるウエーハの一方の面が汚れることを防止できるという効果を有し、特に、ウエーハ及びこれを吸引保持するチャックテーブルを洗浄する機能を有する研削装置に有用である。
【符号の説明】
【0040】
W 板状ワーク
1 研削装置
3 チャックテーブル
31 保持面
33 チャックテーブル回転手段
35 吸引源
36 供給源
37 切換バルブ
4 研削手段
5 搬送手段
51 搬送パッド
52 回転軸
53 移動手段
58 搬送パッド回転駆動部
59 回転制御部
7 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7