【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
(予備試験:磁性微粒子を含まないMR流体)
分散溶媒としては化学的に不活性で耐熱性の高いダイキン工業株(株)製デムナムS−20(パーフルオロエーテルオイル、平均分子量2700、比重1.86)を用いた。
この分散溶媒に、下記の表1(磁性粒子特性表)に示す粒径の異なる3種類の強磁性鉄粉のみを加えていき、下記の表2(実施配合及び各種評価結果)に示した比率となるように混合分散し、磁性微粒子を含まないMR流体を得た。
【0023】
【表1】
【0024】
なお、表1中、HQ(鉄分99.1質量%)及びCM(鉄分99.2質量%)はカルボニル鉄粉[BASF社製]、Ironは、マイクロショット(鉄分97.2質量%)[新東工業社製]を示す。
【0025】
【表2】
【0026】
表2中、※1については、分散溶媒液に磁性粒子を加えていき、上部に分離した溶媒が現れなくなった時点を飽和したとみなした。
この結果より、粒径により飽和濃度差が顕著に現れ、理由として粒子の凝集による影響が考えられた。表面の状態が同一であると仮定すると、粒径が小さくなればなるほど粒子は凝集を起こしやすくなり、低い濃度にもかかわらず濃度が飽和してしまったと考えられる。
【0027】
次に、予備試験例の性能評価として、上記予備試験におけるMR流体の粘度を円錐平板型レオメーター(島津製作所社製)を用いて平常時(無磁化時)及び磁界(0.04T)印加時の流動曲線を描き、MR効果について測定した。その結果を各磁性粒子別に
図1〜3に示す。
【0028】
以上の
図1〜
図3に示す結果に基づき、試験に供した流体がビンガム流体としての性質を示すと仮定して流動曲線の外挿により降伏応力を求め、無磁化時及び0.04T時の降伏応力の差を求め、得られた結果を
図4に示した。
【0029】
各強磁性粒子における予備試験で判明した各強磁性粒子MR特性の優れた濃度において、つまり、予備試験3(0.8μmHQの飽和濃度)、予備試験6(9μmCMの飽和濃度)及び予備試験10(40μmIronの飽和濃度)について、0.0〜0.09Tまでの磁界を印加し、その際のせん断応力変化について測定を行い、さらにその結果より降伏応力を求め、
図5に示した。
【0030】
図1〜
図5に示した結果より、次のようなことが分かった。
1)粒子径が大きいほど、磁界を印加した際のせん断応力が大きい傾向がある。
2)磁界を印加した際の降伏応力は、粒子径が大きい程大きくなる傾向がある。
3)同一粒径に着目すると、濃度が高いほどせん断応力が高くなる傾向がある。
4)磁界の印加によるせん断応力変化は、希釈なものから濃度が高くなると共に増加するが、ある濃度でピークを迎え、再び減少する傾向が見られ、そのピークは粒子径が大きいほど大きい傾向がある。
【0031】
次に、実施例・比較例として、各磁性粉体の飽和濃度において磁性微粒子を含む磁性流体を加えたMR流体を調製した。下記の表3に、各例の配合比率及び後述する性能評価の結果を示す。
以下、詳細に説明する。
【0032】
(実施例1)
パーフルオロエーテルに20nmのマグネタイトを20質量%の割合で分散させ、粘度5000mPa・s、比重2.2及び磁化40mTの流体をnmオーダーの微粒子を含有する磁性流体として用い、この磁性流体とダイキン工業(株)製デムナムS−20(パーフルオロエーテルオイル、平均分子量2700、比重1.86)を体積比で1:1となるように混合し、磁性粒子Iron(40μm)マイクロショット(新東工業社製)を飽和濃度となる濃度(86質量%)で加えて混合し、本例のMR流体を得た。
【0033】
(実施例2)
添加する磁性粒子としてamorphousアモビーズ(60μm、鉄分31.1質量%、ニッケル分48.4質量%、モリブデン9.9質量%、シリコン6.3質量%、飽和磁化1.25T)新東工業社製を飽和濃度となる濃度(84.5質量%)で加えて混合した。これ以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、本例のMR流体を得た。
【0034】
(実施例3)
パーフルオロエーテルに20nmのマグネタイトを20質量%の割合で分散させた粘度5000mPa・s、比重2.2及び磁化40mTの流体をnmオーダーの微粒子磁性流体として用い、この磁性流体とダイキン工業(株)製デムナムS−20(パーフルオロエーテルオイル、平均分子量2700、比重1.86)を体積比で4:1となるように混合し、さらに、実施例1で用いた磁性粒子Iron(40μm)マイクロショット(新東工業社製)を75質量%濃度となるように加えて混合し、本例のMR流体を得た。
【0035】
(実施例4)
実施例3で用いた微粒子磁性流体に、実施例1で用いた磁性粒子Iron(40μm)マイクロショット(新東工業社製)を82.5質量%濃度となるように加えて混合し、本例のMR流体を得た。
【0036】
(比較例1)
実施例1と同様に、nmオーダーの微粒子磁性流体としてパーフルオロエーテルに20nmのマグネタイトを20質量%の割合で分散させた粘度5000mPa・s、比重2.2及び磁化40mTの流体を用い、これとダイキン工業(株)製デムナムS−20(パーフルオロエーテルオイル、平均分子量2700、比重1.86)を体積比で1:1となるように混合し、そこに予備試験の表1に示した磁性粒子CM(9μm)BASF社製カルボニル鉄粉を飽和濃度となる濃度(70質量%)で加えて混合し、本例のMR流体を得た。
【0037】
(比較例2)
予備試験6に示した製造方法を実施し、本例のMR流体を得た。
【0038】
(比較例3)
予備試験10に示した製造方法を実施し、本例のMR流体を得た。
【0039】
(比較例4)
分散溶媒としてダイキン工業(株)製デムナムS−20(パーフルオロエーテルオイル、平均分子量2700、比重1.86)を用い、この分散溶媒に実施例2で用いた磁性粒子を加えていき、86質量%となるように混合分散し、本例のMR流体を得た。
【0040】
【表3】
【0041】
<性能評価>
[安定性]
安定性を評価する上で、磁性粒子の沈降により生じた上澄み液の重量を測定することで分散安定性を評価した。まず各MR流体を作製する際に、その分散媒と磁性粒子の重量を測る。次にMR流体を重力場中に一週間放置し、分離した液体を別の容器に移し替えて重量を測り、MR流体全体に対する分離した液体の重量分率を求めた。得られた結果を表3に併記した。
評価基準において、◎は5質量%未満、○は10質量%未満、△は15質量%未満、×は15質量%以上とした。
【0042】
[粘性変化]
MR流体の粘度を円錐平板型レオメーター(島津製作所社製)を用いて平常時(無磁化時)及び磁界(0.04T)印加時の流動曲線を描き、MR効果を判断した。得られた結果を表3に併記した。
評価基準においては、磁界(0.04T)印加時と無磁化時のせん断応力の差を出し、◎はせん断応力差が1000Paよりも高く、ずり速度に応じて高くなる、○は600Paより高くずり速度に応じて高くなる、△は300Pa以上600Pa以下、×は300Pa未満とした。
また、MR効果について磁性微粒子を加えた比較例1及び実施例1、2について測定し、得られた結果を
図6に示した。
【0043】
図6に示すように、粒子径が大きいほど、磁化が強いほど、大きなせん断応力が得られる結果が得られた。
そこで、大きな強磁性粒子にナノオーダーの磁性微粒子(磁性流体)を加えることによる効果を確認すべく、実施例1、2と比較例3、4及び比較例1と比較例2の磁界を印加した際のせん断応力変化比較を行い、
図7に示した。
【0044】
図7に示すように、粒径の大きい強磁性粒子と磁性微粒子を含むMR流体は大きなせん断応力を生み出し、磁気粘性流体として十分な性能を示すことが分かった。
【0045】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、ターゲットとする粘性特性により、強磁性粒子の粒径の異なるものを混合することが可能である。