(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電解液は、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジエチルカーボネート(DEC)のうちから選択された少なくとも1つを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は多様に相違した形態で実現されることができ、ここで説明する実施形態に限定されることはない。
【0022】
図面において、多様な層および領域を明確に表現するために、厚さを拡大して示した。明細書全体に渡って類似する部分については、同じ図面符号を付与した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるとするとき、これは他の部分の「直上」にある場合だけではなく、その中間にさらに他の部分が存在する場合も含む。これとは反対に、ある部分が他の部分の「直上」にあるとするときには、中間に他の部分が存在しないことを意味する。
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池について、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池を示す概略図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る負極を示す概略図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る負極活物質を示す概略図である。
【0025】
図1を参照にすれば、一実施形態に係るリチウム二次電池300は、負極312、正極314、負極312と正極314の間に位置するセパレータ313、および負極312、正極314、およびセパレータ313を含浸する電解液(図示せず)を含む電池セル、前記電池セルを含んでいる電池容器320、および前記電池容器320を密封する密封部材340を含む。
【0026】
図2を参照すれば、負極312は、集電体210、集電体210上に形成されている負極活物質層220、および負極活物質層220上に形成されているSEI膜(solid electrolyte interface layer)230を含む。
【0027】
集電体210は、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発砲体(foam)、導電性金属が塗布された高分子基材などで生成されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0028】
負極活物質層220は、負極活物質、バインダ、および選択的に導電材を含む。
【0029】
負極活物質は、リチウムと合金/脱合金できる物質であって、粒子(particle)形態であってもよい。
【0030】
図3を参照すれば、負極活物質粒子221は非晶質シリコン酸化物222を含み、非晶質シリコン酸化物222は炭素層223によって少なくとも一部がコーティングされている。
【0031】
非晶質シリコン酸化物222は、化学式SiO
x(0.95<x<1.7)で表示されてもよい。
【0032】
非晶質シリコン酸化物222は、ケイ素(Si)と酸素(O)が無秩序な原子配列を有する非晶質状態で存在するが、このとき、酸素は緩衝の役割を行い、活物質の構造的な安定性が維持されるようにする。これにより、負極活物質が充放電時に体積膨張することを減らすことができる。
【0033】
前記化学式において、xはケイ素原子(Si)に対する酸素原子(O)の比率であって、xは0.95<x<1.7を満たしてもよい。前記x値はX線蛍光分光器(X−ray fluorescence:XRF)を用いて測定してもよい。
【0034】
非晶質シリコン酸化物222に酸素が前記範囲で含まれることにより、リチウム二次電池の充放電過程において酸素原子が緩衝の役割を行い、非晶質シリコン酸化物が急激に膨張してクラックが発生することを防ぐことができると同時に、非晶質シリコン酸化物内にケイ素の含有量を十分に確保し、電池の充放電量および効率を確保することができる。
【0035】
前記範囲内で、xは1.00<x<1.25であることがより好ましい。
【0036】
炭素層223は約1nm〜100nmの厚さを有するが、このうち、約10nm〜50nmの厚さを有することが好ましい。
【0037】
炭素層223は上述したように薄い厚さを有し、滑らかな表面で形成されてもよい。このように薄くて滑らかな炭素層223は、例えば、トルエンなどの芳香族環化合物を炭素ソース気体として用いて形成してもよい。
【0038】
炭素層223は、比較的低い黒鉛化度を有してもよい。
【0039】
前記黒鉛化度はラマン分光法を用いて評価してもよく、本発明の一実施形態における炭素層のラマン特性は、約1580(±50)cm
−1を中心値として有するピークをGピーク、約1350(±50)cm
−1を中心値として有するピークをDピークとするとき、炭素層223は、Gピークの半値幅(full width half maximum:FWHM)が約50〜110cm
−1、Dピークの半値幅が約70〜220cm
−1であってもよい。
【0040】
炭素層223が前記範囲の半値幅を有することにより、炭素物質の導電性を確保しながらも、非晶質シリコン酸化物の結晶化を防ぐことができる。
【0041】
炭素層223は、負極活物質粒子221の総含有量に対して約0.5〜20重量%で含まれてもよい。
【0042】
負極活物質粒子221は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定法による粒度分布において累積90%径(D90)が約50μm以下であってもよく、前記範囲内で約0.5〜40μmであることが好ましい。前記範囲を有することにより、負極活物質粒子の比表面積を適切に維持し、負極活物質スラリーの製造時にバインダの含有量を大きく増加させないと同時に、集電体コーティング時に集電体表面にスクラッチなどの損傷を与えないようにする。
【0043】
前記負極活物質221は、上述した炭素層223によって少なくとも一部コーティングされている非晶質シリコン酸化物222を第1負極活物質粒子として含み、前記第1負極活物質粒子と共に炭素系の第2負極活物質粒子をさらに含んでもよい。このとき、前記第1負極活物質粒子と第2負極活物質粒子の混合比は1:99〜99:1重量%であってもよい。
【0044】
負極活物質は、負極活物質層220の総含有量に対して約60〜99重量%で含まれてもよく、約80〜98重量%で含まれてもよい。前記範囲で含まれることにより、容量を確保することができる。
【0045】
前記バインダは、負極活物質を互いに適切に付着させ、さらに負極活物質を電流集電体に適切に付着させる役割を行うが、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化したポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレート化したスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを用いてもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
前記バインダは、負極活物質層の総含有量に対して約1〜20重量%で含まれてもよいが、そのうち、約2〜10重量%で含まれてもよい。前記範囲で含まれることにより、容量の低下を引き起こさないと同時に、十分な接着力を得ることができる。
【0047】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において化学変化を招来しない電子導電性材料であれば、如何なるものでも使用が可能である。その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質、ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー、またはこれらの混合物を含む導電性材料を用いてもよい。
【0048】
前記導電材は、負極活物質層の総含有量に対して0〜20重量%で含まれてもよいが、そのうち、約1〜10重量%で含まれてもよい。前記範囲で含まれることにより、容量を確保すると同時に、導電性を改善することができる。
【0049】
前記負極は、上述した負極活物質、バインダ、および導電材を溶媒中で混合して活物質スラリー形態で製造した後、これを集電体上に塗布して製造してもよい。このとき、溶媒としてはN−メチルピロリドンなどを用いてもよいが、これに限定されるものではない。
【0050】
負極活物質層220は、酸素含有量を所定の範囲で調節した非晶質シリコン酸化物、および薄くて均一にコーティングされている炭素層を含むことにより、リチウム二次電池の充放電時に活物質の体積膨張を防ぎ、活物質層のクラック発生を減らし、リチウム二次電池の効率および寿命特性を改善することができる。
【0051】
負極活物質層220は、例えば、クラック発生率が約20%以下であってもよい。ここで、クラック発生率は、電子走査顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)を用いて2500倍の倍率で観察したとき、SEI表面(30μm×30μm)のSiO粒子数と対比してクラック発生した粒子数の比率である。また、クラック発生とは、充放電時に負極活物質である非晶質シリコン酸化物が急激に膨張してクラックが発生する現象をいう。
【0052】
SEI膜230は、初期充電時に負極活物質層220の表面で電解液と反応して形成された被膜である。すなわち、SEI膜230は、上述した非晶質シリコン酸化物および炭素層を含む負極活物質と電解液の反応から形成されてもよい。
【0053】
一旦負極活物質層220の表面にSEI膜230が形成されれば、以後の充放電中に電解液と負極活物質層220の接触を防ぐことによって電解液の分解が起こらず、電解液中のリチウムイオンの量を可逆的に維持することができ、安定したサイクルライフを維持することができる。
【0054】
本発明の実施形態によるSEI膜230は、複数の充放電にも均一かつ滑らかな表面を維持することができる。すなわち、複数の充放電後にも、さらには1Cの高率で充放電を数十回繰り返してもSEI膜230は、約20%以下の比較的少ないクラックだけ発生し、所定の範囲以内の大きさを有する突出形状(protrusion part)が均一に分散されているスキンタイプ(skin−type)の表面を有することができる。
【0055】
これに対して例を挙げて説明すれば、0.5Cでカットオフ電圧4.35VまでCC/CV充電及び0.5Cでカットオフ電圧2.75VまでCC放電する充放電工程を1〜50回実施する場合にも、本発明のSEI膜は20%以下のクラックが発生し、所定の大きさを有する突出形状を含むことができる。
【0056】
例えば、SEI膜230は、表面に約5nm〜300nmの大きさを有する突出形状を全体SEI膜面積に対して70面積%以上含んでもよい。前記範囲内で約70〜99.9面積%が含まれてもよく、このうち、約80〜90面積%が含まれてもよい。これは、一般的に、SEI膜の表面に多量のクラックを有し、突出形状の大きさの分布が多様な粒子が凸凹に配列されるタートルタイプ(turtle−type)の表面を有するものと対比される。
【0057】
SEI膜230は、Li
2CO
3、Si−F結合構造、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。前記Li
2CO
3はリチウムイオンと炭素層の炭素から形成されてもよく、Si−F結合構造は非晶質シリコン酸化物のケイ素と、例えば、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate:FEC)のようなフッ素含有電解液から形成されてもよい。ここで、SEI膜230の成分はFT−IRによって分析されてもよく、各成分に対する波長領域でSEI膜成分が確認される。例えば、Li
2CO
3およびSi−F結合構造はそれぞれ、約1430cm
−1および約870cm
−1でピークが観察される。
【0058】
正極314は、集電体および前記集電体上に形成された正極活物質層を含む。
【0059】
集電体はアルミニウム箔を用いてもよいが、これに限定されるものではない。
【0060】
正極活物質層は、正極活物質、バインダ、および選択的に導電材を含む。
【0061】
正極活物質は、リチウムが可逆的に挿入および脱離することができる化合物であれば特に制限されることはなく、具体的に、リチウム(Li)とコバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、およびこれらの組み合わせから選択される金属の複合酸化物であてもよい。
【0062】
これらの化合物としては、例えば、Li
aA
1−bD
bE
2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5である)、Li
aG
1−bD
bO
2−cJ
c(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である)、LiG
2−bD
bO
4−cJ
c(0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である)、Li
aNi
1−b−cCo
bD
cE
α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である)、Li
aNi
1−b−cCo
bD
cO
2−αJ
α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、Li
aNi
1−b−cCo
bD
cO
2−αJ
2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、Li
aNi
1−b−cMn
bD
cE
α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である)、Li
aNi
1−b−cMn
bD
cO
2−αJ
α(、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、Li
aNi
1−b−cMn
bD
cO
2−αJ
2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である)、Li
aNi
bG
cL
dO
2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である)、Li
aNi
bCo
cMn
dL
eO
2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である)、Li
aNiL
bO
2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である)、Li
aCoL
bO
2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である)、Li
aMnL
bO
2(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である)、Li
aMn
2L
bO
4(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である)、QO
2、QS
2、LiQS
2、V
2O
5、LiV
2O
5、LiRO
2、LiNiVO
4、Li
(3−f)Z
2(PO
4)
3(0≦f≦2)、Li
(3−f)Fe
2(PO
4)
3(0≦f≦2)、およびLiFePO
4が挙げられてもよい。
【0063】
ここで、AはNi、Co、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、DはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、EはO、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、GはCo、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、JはF、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、LはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、QはTi、Mo、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、RはCr、V、Fe、Sc、Y、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、ZはV、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。
【0064】
バインダおよび導電材は、上述したとおりである。
【0065】
セパレータ113は、負極112と正極114を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、リチウム電池で通常に用いられるものであればすべて使用が可能である。すなわち、電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながらも、電解液の含湿能力が優れているものが用いられてもよい。例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはこれらの調合物のうちから選択されたものであって、不織布または織布形態であっても問題がない。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのようなポリオレフィン系高分子セパレータが主に用いられ、耐熱性または機械的な強度確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれているコーティングされたセパレータが用いられてもよく、選択的に単層または多層構造で用いられてもよい。
【0066】
前記電解液は、非水性有機溶媒およびリチウム塩を含む。
【0067】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的な反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を行う。非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非陽子性溶媒を用いてもよい。前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などが用いられてもよい。さらに、前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート(MC)、エチルアセテート(EC)、n−プロピルアセテート(PC)、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ−ブチロラクトン、デカノラクトン(decanolide)、バレロラクトン、DL−メバルロノラクトン(DL−mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などが用いられてもよい。前記エーテルとしては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが用いられてもよく、前記ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどが用いられてもよい。また、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが用いられてもよく、前記非陽子性溶媒としては、X−CN(前記Xは炭素数2〜20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含んでもよい)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3−ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などが用いられてもよい。
【0068】
前記非水性有機溶媒は、単独または1つ以上が混合して用いられてもよく、1つ以上が混合して用いられる場合の混合比率は、目的とする電池性能に応じて適切に調節してもよい。
【0069】
このうち、好ましくは、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジエチルカーボネート(DEC)のうちから選択された少なくとも1つを含む有機溶媒を用いてもよい。より好ましい非水性有機溶媒としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を非水性有機溶媒の全体100体積%に対して10体積%以上含むものである。このとき、フルオロエチレンカーボネート(FEC)の含量は、10体積%以上、20体積%以下であってもよく、フルオロエチレンカーボネート(FEC)の含量は、約10体積%であってもよい。
【0070】
前記リチウム塩は、前記非水性有機溶媒に溶解し、電池内でリチウムイオンの供給源として作用し、基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を行う物質である。
【0071】
前記リチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiClO
4、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiAlO
2、LiAlCl
4、LiN(C
pF
2p+1SO
2)(C
qF
2q+1SO
2)(ここで、pおよびqは自然数である)、LiCl、LiI、リチウムビスオキサレートボレート(lithium bisoxalate borate)、およびこれらの混合物からなる群より選択されるものを用いてもよい。
【0072】
前記リチウム塩の濃度は0.1〜2.0Mの範囲内で用いてもよく、0.7〜1.6Mの範囲がより好ましい。リチウム塩の濃度が0.1M未満であれば、電解液の導電が低くなって電解液性能が低下し、2.0Mを超える場合には、電解液の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が減少するという問題点がある。
【0073】
以下、実施例を参照しながら、上述した本発明の実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は説明の目的のためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。
【0074】
負極活物質の製造
<製造例1>
SUS(ステンレス鋼)基材に対向してSiターゲット及びSiO
2ターゲットをそれぞれ配置した後、減圧雰囲気下で上記ターゲットにそれぞれ6.6kW、10.0kWのDCパルス電力を印加するアルゴンDCパルススパッタリング方法を実施した。これにより、上記SUS基材の表面にSiO
x(x:1.05)の非晶質シリコン酸化物が製造され、この非晶質シリコン酸化物をSUS基材から脱離させた。続いて、得られた非晶質シリコン酸化物を非活性N
2雰囲気で粉砕/分級して、平均粒径5μmのSiO
x(x:1.05)の粒子を製造した。
【0075】
続いて、上記SiO
x(x:1.05)粒子にトルエンを900℃で供給しながら化学的気相蒸着工程を実施して、非晶質シリコン酸化物の表面に20nm厚さの炭素層がコーティングされている負極活物質を製造した。このとき、炭素層の含量は非晶質シリコン酸化物と炭素層の総含量に対して1重量%であった。
【0076】
<製造例2>
Siターゲット及びSiO
2ターゲットに印加するDCパルス電力をそれぞれ3.3kW、10.0kWに調節して、SiO
x(x:1.13)の非晶質シリコン酸化物を製造したことを除いては、上記製造例1と同じ方法によって負極活物質を製造した。
【0077】
<製造例3>
Siターゲット及びSiO
2ターゲットに印加するDCパルス電力をそれぞれ2.0kW、10.0kWに調節して、SiO
x(x:1.42)の非晶質シリコン酸化物を製造したことを除いては、上記製造例1と同じ方法によって負極活物質を製造した。
【0078】
<製造例4>
Siターゲット及びSiO
2ターゲットに印加するDCパルス電力をそれぞれ1.4kW、10.0kWに調節して、SiO
x(x:1.58)の非晶質シリコン酸化物を製造したことを除いては、上記製造例1と同じ方法によって負極活物質を製造した。
【0079】
<比較製造例1>
SUS基材に対向してSiターゲット及びSiO
2ターゲットをそれぞれ配置した後、減圧雰囲気下で上記ターゲットにそれぞれ6.6kW、10.0kWのDCパルス電力を印加するアルゴンDCパルススパッタリング方法を実施した。これにより、上記SUS基材の表面にSiO
x(x:1.05)の非晶質シリコン酸化物が製造され、この非晶質シリコン酸化物をSUS基材から脱離させた。続いて、得られた生成物を非活性N
2雰囲気で粉砕/分級して、平均粒径5μmのSiO
x(x:1.05)の粒子を製造した。
【0080】
続いて、上記SiO
x(x:1.05)粒子を1200℃の温度のアルゴン(Ar)雰囲気で不均等化処理して10〜20nm大きさの多数のSi結晶粒子が成長したシリコン酸化物を製造した。
【0081】
続いて、上記SiO
x(x:1.05)にトルエンを900℃で供給しながら化学気相成長工程を実施して、不均等化処理された上記シリコン酸化物の表面に厚さ20nmの薄い薄膜状(thin film type)カーボン層を形成した。得られた生成物を1100℃ N
2雰囲気で熱処理してより高い黒鉛化度を有するカーボンコーティング層が形成されたシリコン酸化物の負極活物質を製造した。
【0082】
<比較製造例2>
SUS基材に対向してSiターゲット及びSiO
2ターゲットをそれぞれ配置した後、減圧雰囲気下で上記ターゲットにそれぞれ6.6kW、10.0kWのDCパルス電力を印加するアルゴンDCパルススパッタリング方法を実施した。これにより、上記SUS基材の表面にSiO
x(x:1.05)の非晶質シリコン酸化物が製造され、この非晶質シリコン酸化物をSUS基材から脱離させた。続いて、得られた非晶質シリコン酸化物を非活性N
2雰囲気で粉砕/分級して、平均粒径5μmのSiO
x(x:1.05)の粒子を製造した。
【0083】
続いて、上記SiO
x(x:1.05)粒子を1200℃の温度のアルゴン(Ar)雰囲気で不均等化処理して10〜20nm大きさの多数のSi結晶粒子が成長したシリコン酸化物を製造した。
【0084】
続いて、上記SiO
x(x:1.05)粒子にメタンガス(CH
4)を1050℃で供給しながら化学的気相蒸着工程を実施して、不均等化処理された上記シリコン酸化物の表面に厚さ100nmの薄片状(flake type)カーボン層を形成した。得られた生成物を1100℃ N
2雰囲気で熱処理してより高い黒鉛化度を有するカーボンコーティング層が形成されたシリコン酸化物の負極活物質を製造した。
【0085】
評価−1
X線分光器(XRD)を用い、製造例1および比較製造例1に係る負極活物質の結晶質の有無を確認した。
【0086】
図4Aおよび
図4Bはそれぞれ、製造例1および比較製造例1に係る負極活物質をX線分光器を用いて測定したグラフである。
【0087】
図4Aおよび
図4Bを参照すれば、製造例1に係る負極活物質はSi結晶粒子のピークが観察されないことに反し、比較製造例1に係る負極活物質はSi結晶粒子のピークが観察されることを知ることができる。
【0088】
評価−2
製造例1及び比較製造例1によって製造された負極活物質において、形成されたカーボン層に対するラマンスペクトルを測定してその結果をそれぞれ
図5A及び
図5Bに示した。
【0089】
図5Aに示すように、製造例1によって形成されたカーボン層は、約1580(±50)cm
−1を中心値として有するピークをGピーク、約1350(±50)cm
−1を中心値として有するピークをDピークとするとき、Gピークの半値幅(full width half maximum、FWHM)が約70cm
−1、Dピークの半値幅は約140cm
−1であることがわかる。これに反し、比較製造例1で形成されたカーボン層は、Gピークの半値幅が約55cm
−1、Dピークの半値幅は約60cm
−1であることがわかる。
【0090】
リチウム二次電池の製造
<実施例1>
製造例1に係る負極活物質90重量%およびポリイミド(バインダ)10重量%をN−メチルピロリドン溶媒で混合して負極活物質スラリーを製造した。前記負極活物質スラリーを銅箔電流集電体に塗布して負極を製造した。
【0091】
LMO(LiMn
2O
4)/NCM(LiNi
0.3Co
0.3Mn
0.3O
2)正極活物質96重量%、PVdF(ポリビニリデンフルオライド)2重量%、およびカーボンブラック導電材2重量%をN−メチルピロリドン溶媒で混合して正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーをアルミニウム箔集電体に塗布して正極を製造した。
【0092】
前記負極、正極、およびポリエチレン材質のフィルムを用いたセパレートを含む電池セルを製造し、ここに1.3MのLiPF
6のエチレンカーボネート(EC)/フルオロエチレンカーボネート(FEC)/エチルメチルカーボネート(EMC)/ジエチルカーボネート(DEC)1/2/2/5、v/v)電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。
【0093】
<実施例2>
製造例1に係る負極活物質の代わりに製造例2に係る負極活物質を用いたことを除いては、実施例1と同じ方法によってリチウム二次電池を製造した。
【0094】
<実施例3>
製造例1に係る負極活物質の代わりに製造例3に係る負極活物質を用いたことを除いては、実施例1と同じ方法によってリチウム二次電池を製造した。
【0095】
<実施例4>
製造例1に係る負極活物質の代わりに製造例4に係る負極活物質を用いたことを除いては、実施例1と同じ方法によってリチウム二次電池を製造した。
【0096】
<比較例1>
製造例1に係る負極活物質の代わりに比較製造例1に係る負極活物質を用いたことを除いては、実施例1と同じ方法によってリチウム二次電池を製造した。
【0097】
<比較例2>
製造例1に係る負極活物質の代わりに比較製造例2に係る負極活物質を用いたことを除いては、実施例1と同じ方法によってリチウム二次電池を製造した。
【0098】
評価−3
実施例1〜4と比較例1および2に係るリチウム二次電池の化成が完了した後、1回〜50回の充放電後のSEI膜の表面状態を観察した。
【0099】
リチウム二次電池の充放電条件は次のとおりである。
−化成充放電条件(1回充/放電)
・充電:CC/CV、0.2C、4.35V、cut−off(0.05C)
・放電:CC、0.2C、2.75V
−寿命1
stcycle〜50
thcycle充放電条件
・充電:CC/CV、0.5C、4.35V、cut−off(0.05C)
・放電:CC、0.5C、2.75V
【0100】
SEI膜の表面状態は、このような条件で化成充放電が完了した後、負極を解体してジメチルカーボネート(dimethyl carbonate:DMC)で洗浄した後、電子走査顕微鏡(SEM)を用いてそれぞれ2500倍と50000倍の倍率で観察した。
【0101】
実施例1〜4に係るリチウム二次電池の充電後、SEI膜の表面に分布されている突出形状の大きさを評価した。(50000倍充電状態)
【0102】
その結果は表1のとおりである。下記表1で、突出形状の大きさ分布(%)は、SEM測定で得られたSEMイメージ(50、000倍率)において全体面積(2μm×2μm)に対してそれぞれの突出形状の大きさ範囲が含まれた領域の面積比を%で示したものである。この面積比は、3回測定した平均値である。
【表1】
【0103】
表1に示すように、実施例1〜4に係るリチウム二次電池のSEI膜の表面に分布されている突出形状は、比較例1および2に係るリチウム二次電池のSEI膜の表面に分布されている突出形状よりも小さいサイズで分布されていることを知ることができ、実施例1〜4に係るリチウム二次電池のSEI膜の表面に分布されている突出形状は、約5〜300nmの範囲内で約80面積%以上が分布することを確認することができる。
【0104】
図6Aおよび
図6Bはそれぞれ、実施例1に係るリチウム二次電池を化成後、1回充電および放電した後、負極活物質層の表面を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
図7Aおよび
図7Bはそれぞれ、実施例1に係るリチウム二次電池を50回充電および放電した後、SEI膜の表面を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【0105】
図8Aおよび
図8Bはそれぞれ、比較例1に係るリチウム二次電池を化成後、1回充電および放電した後、負極活物質層の表面を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
図9Aおよび
図9Bはそれぞれ、比較例1に係るリチウム二次電池を50回充電および放電した後、SEI膜の表面を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【0106】
図6Aから
図9Bを参照すれば、実施例1に係るリチウム二次電池のSEI膜は、初期充電だけではなく50回の充放電後にも、表面がクラックなく均一かつ滑らかな表面状態を有することに反し、比較例1に係るリチウム二次電池のSEI膜は、充電後の表面に多量のクラックが発見され、大きくて粗い突起形状で形成されたことを確認することができる。
【0107】
評価−4
実施例1〜4と比較例1および2に係るリチウム二次電池を1回充放電した後、SEI膜の表面のクラック発生程度を評価した。
【0108】
リチウム二次電池の充放電条件は、上述したものと同じである。
【0109】
SEI膜のクラック発生率は、電子走査顕微鏡(SEM)2500倍の倍率で負極表面(30μm×30μm)のSiO粒子数に対比するクラック発生粒子数の比率で計算した。
【0110】
その結果は表2のとおりである。
【表2】
【0111】
表2を参照すれば、実施例1〜4に係るリチウム二次電池は、充放電後のSEI膜表面のクラック発生率が20%以下と比較的低いことに反し、比較例1および2に係るリチウム二次電池は、クラック発生率が高いことを知ることができる。
【0112】
評価−5
実施例1〜4と比較例1および2に係るリチウム二次電池の容量維持特性を評価した。容量維持特性の評価のための50回充放電条件は、上述したとおりである。
【0113】
これについて、
図10および表3を参照しながら説明する。
【表3】
【0114】
表3を参照すれば、実施例1〜4に係るリチウム二次電池は、比較例1および2に係るリチウム二次電池と比較し、サイクル回数による容量維持率が高いことを知ることができる。
【0115】
図10は、実施例1と比較例1に係るリチウム二次電池のサイクル回数による容量変化量を示すグラフである。
【0116】
図10を参照すれば、実施例1に係るリチウム二次電池(A)は、比較例1に係るリチウム二次電池(B)と比較し、サイクル回数による容量維持率が高いことを確認することができる。特に、比較例1に係るリチウム二次電池(B)は、実施例1に係るリチウム二次電池(A)とは異なり、初期から容量が急落することを観察することができる。
【0117】
これにより、実施例1〜4に係るリチウム二次電池は、比較例1および2に係るリチウム二次電池と比較し、容量維持特性が高いことを知ることができる。
【0118】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明、および添付の図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。