【実施例】
【0070】
次に、本発明に係る研磨パッド及びその製造方法を実施例により具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。また、実施例中の「部」および「%」は特にことわりのない限り、質量基準である。
【0071】
[製造例1]
湿熱接着性繊維として、芯成分がポリエチレンテレフタレート(PET)、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH、エチレン共重合率44モル%、ケン化度98.4モル%、融点165℃)である芯鞘型複合ステープル繊維(3.0dtex、51mm長、芯鞘質量比=50/50、捲縮数21個/25mm)を準備した。この芯鞘型複合ステープル繊維100質量%を用いて、カード法により目付約2500g/m
2のカードウェブを作製した。このカードウェブを、コンベア装置とその経路に水蒸気を噴射させる水蒸気噴射装置とを備えた湿熱処理装置に移送した。
【0072】
なお、コンベア装置は、50メッシュ,幅500mmのポリカーボネート製エンドレスネットからなる、上側メッシュコンベアと下側メッシュコンベアとを備え、それらがそれぞれ同速度で同方向に進行し、かつ、互いの間隔を任意に調整可能な一対のメッシュコンベアを備える。また、コンベア装置の上流側には、下側メッシュコンベアの裏側に、搬送されるカードウェブに向かってネットを介して高温水蒸気を吹き付ける水蒸気噴射装置が配置されており、一方、上側メッシュコンベアの裏側にはサクション装置が配置されている。逆に、コンベアの下流側では、下側メッシュコンベアの裏側に同様のサクション装置が配置されており、上側メッシュコンベア内の裏側に同様の水蒸気噴射装置が配置されている。各水蒸気噴射装置は、コンベアの幅方向に沿って1mmピッチで1列に並べられた複数の孔径0.3mmのノズルを有する。また、ノズルはメッシュコンベアのネットの裏側にほぼ接するように配置されている。このような構成によれば、カードウェブの表裏の両面に対して高温水蒸気が吹き付けられる。
【0073】
各水蒸気噴射装置から0.6MPaの高温水蒸気を略垂直に噴出させることにより、搬送されるカードウェブに水蒸気処理を施した。なお、コンベアの搬送速度は3m/分であり、厚み約6mmの不織繊維基材が得られるように上側メッシュコンベアと下側メッシュコンベアとの間隔を調整した。このようにして、湿熱性接着性繊維同士が湿熱接着して形成された厚み約6mmの不織繊維基材が得られた。
【0074】
そして、得られた不織繊維基材を、厚さ2.5mmのスペーサーを用いて120℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを行った後、厚さ2.4mmのスペーサーを用いて、150℃,15MPaの条件で5分間の熱プレスをさらに行うことにより、高密度化したシートを得た。そして、シートの厚さが2.0mmになるように両面からを均一に切削することによりシート1を得た。
【0075】
[製造例2]
不織繊維基材の熱プレス及び切削の条件を次のように変更した以外は製造例1と同様にしてシート2を製造した。具体的には、不織繊維基材を厚さ2.3mmのスペーサーを用いて130℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを行った後、厚さ2.2mmのスペーサーを用いて152℃、15MPaの条件で5分間熱プレスをさらに行うことにより、高密度化したシートを得た。次いで、シートの厚さが1.8mmになるように両面から均一に切削することによりシート2を得た。シート2の断面の走査型顕微鏡(SEM)の写真を
図1に示す。
【0076】
[製造例3]
不織繊維基材の熱プレス及び切削の条件を次のように変更した以外は製造例1と同様にしてシート3を製造した。具体的には、不織繊維基材を厚さ2.7mmのスペーサーを用いて90℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを行った後、厚さ2.6mmのスペーサーを用いて152℃、15MPaの条件で5分間熱プレスをさらに行うことにより、高密度化したシートを得た。そして、シートの厚さが2.2mmになるように両面から均一に切削することによりシート3を得た。シート3の断面の走査型顕微鏡(SEM)の写真を
図2に示す。
【0077】
[製造例4]
不織繊維基材の熱プレス及び切削の条件を次のように変更した以外は製造例1と同様にしてシート4を製造した。具体的には、不織繊維基材を厚さ2.8mmのスペーサーを用いて153℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを一段階のみで行うことにより、高密度化したシートを得た。そして、シートの厚さが2.3mmになるように両面から均一に切削することにより、シート4を得た。
【0078】
[製造例5]
3.0dtexの芯鞘型複合ステープル繊維の代わりに、繊度のみを1.7dtexに変更した芯鞘型複合ステープル繊維を用いた以外は製造例1と同様にして厚さ2.0mmのシート5を製造した。シート5の断面の走査型顕微鏡(SEM)の写真を
図3に示す。
【0079】
[製造例6]
芯成分がPET、鞘成分がEVOH(エチレン共重合率44モル%、ケン化度98.4モル%、融点165℃)である芯鞘型複合ステープル繊維(3.0dtex、51mm長、芯鞘質量比=50/50、捲縮数21個/25mm)の代わりに、芯成分がPET、鞘成分がEVOH(エチレン共重合率48モル%、鹸化度98.9モル%、融点160℃)である芯鞘型複合ステープル繊維(5.0dtex、51mm長、芯鞘質量比=30/70、捲縮数22個/25mm)を形成した以外は製造例1と同様にして不織繊維基材を得た。そして、さらに、不織繊維基材の熱プレス及び切削の条件を次のように変更した以外は製造例1と同様にしてシート6を製造した。具体的には、不織繊維基材を厚さ2.7mmのスペーサーを用いて90℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを行った後、厚さ2.6mmのスペーサーを用いて146℃、15MPaの条件で5分間熱プレスをさらに行うことにより、高密度化したシートを得た。そして、シートの厚さが2.2mmになるように両面から均一に切削することによりシート6を得た。
【0080】
[製造例7]
芯成分がPET、鞘成分がEVOHである芯鞘型複合ステープル繊維の代わりに、芯成分がポリアミド6(PA6)、鞘成分がEVOH(エチレン共重合率44モル%、鹸化度98.4モル%、融点165℃)である芯鞘型複合ステープル繊維(5.0dtex、51mm長、芯鞘質量比=70/30、捲縮数20個/25mm)を形成した以外は製造例1と同様にして不織繊維基材を得た。そして、さらに、不織繊維基材の熱プレス及び切削の条件を製造例4と同様の条件に変更した以外は製造例1と同様にしてシート7を製造した。すなわち、不織繊維基材を厚さ2.8mmのスペーサーを用いて153℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを一段階のみで行うことにより、高密度化したシートを得た。そして、シートの厚さが2.3mmになるように両面から均一に切削することによりシート7を得た。
【0081】
[比較製造例1]
不織繊維基材の熱プレス及び切削の条件を次のように変更した以外は製造例1と同様にしてシート8を製造した。具体的には、不織繊維基材を厚さ2.1mmのスペーサーを用いて120℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを行った後、厚さ2.0mmのスペーサーを用いて158℃、15MPaの条件で5分間熱プレスをさらに行うことにより、高密度化したシートを得た。そして、シートの厚さが1.7mmになるように両面から均一に切削することによりシート8を得た。
【0082】
[比較製造例2]
不織繊維基材の熱プレス及び切削の条件を次のように変更した以外は製造例1と同様にしてシート9を製造した。具体的には、不織繊維基材を厚さ3.4mmのスペーサーを用いて120℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを行った後、厚さ3.3mmのスペーサーを用いて155℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスをさらに行うことにより、高密度化したシートを得た。そして、シートの厚さが2.5mmになるように両面から均一に切削することによりシート9を得た。
【0083】
[比較製造例3]
不織繊維基材の熱プレス及び切削の条件を次のように変更した以外は製造例1と同様にしてシート10を製造した。具体的には、不織繊維基材を厚さ4.1mmのスペーサーを用いて120℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを行った後、厚さ4.0mmのスペーサーを用いて155℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスをさらに行うことにより、高密度化したシートを得た。そして、シートの厚さが2.5mmになるように両面から均一に切削することによりシート10を得た。シート10の断面の走査型顕微鏡(SEM)の写真を
図4に示す。
【0084】
[比較製造例4]
湿熱接着性繊維である、芯成分がPET、鞘成分がEVOHである芯鞘型複合ステープル繊維の代わりに、非湿熱接着性繊維の熱融着性繊維である、芯成分がPET、鞘成分が変性PET(イソフタル酸変性量32モル%、融点140℃)である芯鞘型複合ステープル繊維(3.0dtex、51mm長、芯鞘質量比=50/50、捲縮数21個/25mm)を形成した以外は製造例1と同様にして不織繊維基材を得た。そして、さらに、不織繊維基材の熱プレス及び切削の条件を次のように変更した以外は製造例1と同様にしてシート11を製造した。具体的には、不織繊維基材を厚さ2.3mmのスペーサーを用いて130℃、15MPaの条件で5分間の熱プレスを行った後、厚さ2.2mmのスペーサーを用いて140℃、15MPaの条件で5分間熱プレスをさらに行うことにより、高密度化したシートを得た。次いで、シートの厚さが1.8mmになるように両面から均一に切削することによりシート11を得た。
【0085】
[比較製造例5]
非湿熱接着性の熱融着性繊維として、芯成分がPET、鞘成分が変性PET(イソフタル酸変性量32モル%、融点140℃)である芯鞘型複合ステープル繊維(3.0dtex、51mm長、芯鞘質量比=50/50、捲縮数21個/25mm)を準備した。この芯鞘型複合ステープル繊維100質量%を用いて、カード法により目付約2500g/m
2のカードウェブを作製した。このカードウェブをニードルパンチ処理することにより、目付け約2000g/m
2、厚み約7mmの不織繊維基材を得た。このようにして得られた不織繊維基材を、厚さ2.2mmのスペーサーを用いて、136℃,15MPaの条件で5分間の熱プレスを行い、高密度化したシートを得た。そして、シートの厚さが1.8mmになるように両面から均一に切削することによりシート12を得た。
【0086】
[比較製造例6]
EVOH(エチレン共重合率44モル%、ケン化度98.4モル%、融点165℃)の樹脂ペレットを単軸押出成形機に仕込み、T−ダイより押出し、厚さ2.5mmのシートを成形した。そしてシートの厚さが1.8mmになるように両面から均一に切削してシート13を得た。なお、シート13は空孔を全く有しない無発泡のシートであった。
【0087】
[シート1〜13の評価]
シート1〜13の各種特性を以下のようにして評価した。
〈空隙率〉
シートの一部を切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)のサンプルを作成した。なお、観察用サンプルはシートを厚さ方向に3等分し、3等分して得られた表側部、内側部、裏側部のそれぞれの部分のサンプルを作成した。そして、SEMを用いて、各サンプルを200倍に拡大した撮影像を得た。この撮影像にトレース紙を重ね、透過光を用いて撮影領域と空隙部をトレースした。このトレース図を、イメージアナライザーを用いて、CCDカメラからコンピューターに取り込んだ。そして、画像処理ソフト「ImageJ」を用いて画像を二値化し、観察領域の総面積に対する空隙部の面積の割合をそれぞれ算出した。このとき、観察面の総計がそれぞれ10mm
2以上となるように写真を追加して測定を行った。そして、3つの部位の平均値を空隙率とした。
<空孔の大きさ>
「空隙率」の測定と同様にして、3つの部位のシートの断面を200倍に拡大したSEM撮影像を得た後、空隙部をトレースした。このトレース図を、コンピューターに取り込み、それぞれの部位において、画像を二値化した後に任意の各30個の空孔について長軸方向の長さを測定し、その平均値を求めた。そして、3つの部位の平均値を空孔の大きさとした。
〈厚さ、目付け、見掛け密度〉
JIS L1913に準じて、厚さ(mm)および目付け(g/cm
2)を測定し、これらの値から見掛け密度(g/cm
3)を算出した。
〈デュロメータ硬さ〉
JIS K6253に準じたデュロメータ硬さ試験(タイプD)により、硬さを測定した。
〈繊維接着率〉
「空隙率」の測定と同様にして、3つの部位のシートの断面を200倍に拡大した、SEM撮影像を得た。そして、それぞれの部位において、撮影像に観察される繊維断面の輪郭の総数、及び、周囲に他の繊維の断面が少なくとも一つ以上接着されている繊維断面の輪郭数を計数し、輪郭総数に対する、他の繊維断面に接着している繊維断面の輪郭数の占める割合を次の式に基づいて算出した。
繊維接着率(%)=(他の繊維断面に接着している繊維断面の輪郭数)/(繊維断面の輪郭の総数)×100
なお、計数は、各撮影像において観察される繊維断面の輪郭は全て計数し、輪郭数が100未満の場合には、100以上になるように同じ部位の別の撮影像をさらに追加して行った。
なお、繊維同士が接着することなく単に接触しているだけの場合は、シートを切断したときに繊維の内部応力が解放されて分離する。従って、撮影像において接触している繊維は全て接着しているものとみなした。
〈通気度〉
JISL1096に準じ、フラジール形法にて測定した。
〈捲縮数〉
JISL1015(8.12.1)に準じて評価した。
【0088】
結果をまとめて表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
[実施例1〜5、及び比較例1〜4:銅膜研磨性能評価]
製造例で得られたシート1,3〜5,7,8,10〜12の研磨性能を次のようにして評価した。
各シートを直径38cmの円形状に切り出した。そして、切り出された円形状のシートの表面に、幅0.5mm、深さ0.8mmの溝を2.5mm間隔で同心円状に形成し、直径が38cmの円形状の研磨層を作製した。そして、得られた研磨層の裏面に、厚み1.0mm,アスカーC硬度50の発泡ポリウレタンシートをクッション層として貼りあわせることにより、研磨パッドを得た。そして、得られた各研磨パッドの銅膜研磨性能を次のようにして評価した。
【0091】
研磨装置の研磨定盤に研磨パッドを貼り付けた。そして、ドレッサー回転数140rpm、研磨パッド回転数100rpm、ドレッサー荷重5Nの条件で、150mL/分の速度で純水を流しながらダイヤモンドドレッサーを用いて、研磨パッド表面を60分間コンディショニングした。なお、(株)エム・エー・ティー製「BC−15」を研磨装置として用い、ダイヤモンド番手#100、台金直径190mmの(株)アライドマテリアル製のダイヤモンドドレッサーを用いた。
【0092】
そして、研磨パッド回転数100rpm、ウェハ回転数99rpm、研磨圧力24kPaの条件で、酸化ケイ素砥粒を含有する研磨スラリー(フジミ社製「PL7105」)100質量部に対して、純水200質量部および30%過酸化水素水10質量部を混合した液を、100mL/分の速度で供給しながら、初期膜厚1500nmの銅膜を表面に有する直径100mmのシリコンウェハをコンディショニングを行わずに60秒間研磨した。
【0093】
そして、30秒間のコンディショニングを行った後、新たなウェハに交換して再度研磨及びコンディショニングを繰り返し、同様にして合計20枚のウェハを研磨した。
【0094】
そして、20枚目に研磨された、銅膜を表面に有するシリコンウェハについて、研磨速度、研磨不均一性、スクラッチの有無、研磨面の表面粗さ及びパッド溝深さの変化を測定した。パッド溝深さの変化はパッドの耐摩耗性、すなわち使用可能時間の評価である。なお、研磨速度、研磨不均一性、スクラッチ、研磨面の表面粗さ及びパッド溝深さは次のようにして測定した。
【0095】
〈研磨速度および研磨不均一性の測定〉
研磨前および研磨後の銅膜の膜厚をウエハ面内で各49点測定し、各点での研磨速度を求めた。なお、49点は、ウエハ中心1点、中心から15mmの同心円上で45°間隔で8点、中心から30mmの同心円上で22.5°間隔で16点、中心から45mmの同心円上で15°間隔で24点からなる。そして、49点の研磨速度の平均値を研磨速度とした。また、研磨不均一性は下式(1)により求めた不均一性により評価した。不均一性の値が小さいほど、被研磨面内で均一に研磨されており、研磨均一性が優れていることを示す。
不均一性(%)=(σ/R)×100 (1)
(ただし、σ:49点の研磨速度の標準偏差、R:49点の研磨速度の平均値を表す。)
なお、銅膜の膜厚は、ナプソン社製膜厚測定装置「RESISTAGE RT−80」を用いて測定した。
〈スクラッチ測定〉
研磨後の被研磨面をキーエンス社製レーザー顕微鏡「VK−X200」を使用して倍率1000倍でランダムに20ヶ所観察して、傷の有無を確認した。
〈研磨パッドの研磨面の表面粗さ〉
ミツトヨ社製表面粗さ測定器「サーフテストSJ−210」を用い、JIS2001に準拠して研磨直後の表面粗さを測定した。
〈パッド溝深さの減少量〉
使用可能時間の指標として、パッド中心から100mmの位置における溝深さをノギスで測定し、減少量を求めた。
【0096】
結果をまとめて表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
表2の結果から、製造例1,3,4,5,7で得られたシートを用いた実施例1〜5で得られた研磨パッドはいずれもスクラッチが発生せず、また、研磨速度も高く、さらに、研磨不均一性も低かった。一方、空隙率が低い比較製造例1で得られたシート8を用いた比較例1で得られた研磨パッドは、研磨速度が低く、スクラッチも発生し、研磨不均一性も高かった。また、空隙率が高い比較製造例3で得られたシート10を用いた比較例2で得られた研磨パッドは、連通孔が存在するためにスラリーが充分に被研磨面に供給されないことにより、研磨速度が低かった。また、湿熱接着性繊維を用いずに作成された比較製造例4で得られたシート11または比較製造例5で得られたシート12を用いた比較例3または比較例4で得られた研磨パッドは、研磨不均一性が著しく高く、また、スクラッチも発生した。
【0099】
[実施例6〜10、及び比較例5〜8:酸化ケイ素膜研磨性能評価]
製造例で得られたシート1〜3,5,6,8〜10,12の酸化ケイ素膜の研磨性能を次のようにして評価した。
【0100】
各シートを直径38cmの円形状に切り出した。そして、切り出された円形状のシートの表面に、幅1.0mm、深さ1.0mmの溝を6.0mm間隔で同心円状に形成することにより研磨層を作成した。そして、得られた研磨層の裏面に、厚み1.0mm,アスカーC硬度50の発泡ポリウレタンシートをクッション層として貼りあわせて研磨パッドを作成した。そして、得られた各研磨パッドの酸化ケイ素膜研磨性能を次のようにして評価した。
【0101】
研磨装置の研磨定盤に研磨パッドを貼り付けた。そして、ドレッサー回転数140rpm、研磨パッド回転数100rpm、ドレッサー荷重5Nの条件で、150mL/分の速度で純水を流しながらダイヤモンドドレッサーを用いて、研磨パッド表面を60分間コンディショニングした。なお、(株)エム・エー・ティー製「BC−15」を研磨装置として用い、ダイヤモンド番手#200、台金直径190mmの(株)アライドマテリアル製のダイヤモンドドレッサーを用いた。
【0102】
そして、研磨パッド回転数100rpm、ウェハ回転数99rpm、研磨圧力24kPaの条件で、酸化セリウム砥粒を含有する研磨スラリー(日立化成社製「HS−8005」)100質量部に純水900質量部を混合した液を、100mL/分の速度で供給しながら、初期膜厚1000nmの酸化ケイ素膜(プラズマ化学蒸着により形成されたPETEOS酸化ケイ素膜)を表面に有する直径100mmのシリコンウェハをコンディショニングを行わずに60秒間研磨した。
【0103】
そして、30秒間のコンディショニングを行った後、新たなウェハに交換して再度研磨及びコンディショニングを繰り返し、同様にして合計20枚のウェハを研磨した。
【0104】
そして、20枚目に研磨された酸化ケイ素膜を表面に有するシリコンウェハについて、研磨速度、研磨不均一性、スクラッチの有無、研磨面の表面粗さ及びパッド溝深さの変化を測定した。なお、酸化ケイ素膜の膜厚をナノメトリクス社製膜厚測定装置「Nanospec Model5100」を用いて測定した以外は、銅膜研磨性能評価における測定方法と同様に行った。
【0105】
結果をまとめて表3に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
[実施例11〜14、及び比較例9〜12:パターンウェハ研磨性能評価]
製造例で得られたシート1〜3,5,8,10,13及び市販品の発泡ポリウレタン研磨パッドのパターンウェハの研磨性能を次のようにして評価した。
【0108】
製造例で得られた各シートを直径38cmの円形状に切り出した。そして、切り出された円形状のシートの表面に、幅1.0mm、深さ1.0mmの溝を6.0mm間隔で同心円状に形成し、直径が38cmの円形状の研磨層を作製した。そして、得られた研磨層の裏面に、厚み1.0mm,C硬度50の発泡ポリウレタンシートをクッション層として貼りあわせることにより、研磨パッドを得た。また、市販品の発泡ポリウレタン研磨パッドとしては、クッション層を下層に有する市販の発泡ポリウレタン研磨パッド(ニッタハース社製「IC1400」)に同様の溝を形成したものを用いた。そして、得られた各研磨パッドのパターンウェハ研磨性能を以下のようにして評価した。
【0109】
研磨装置の研磨定盤に研磨パッドを貼り付けた。そして、ドレッサー回転数140rpm、研磨パッド回転数100rpm、ドレッサー荷重5Nの条件で、150mL/分の速度で純水を流しながらダイヤモンドドレッサーを用いて、研磨パッド表面を60分間コンディショニングした。なお、(株)エム・エー・ティー製「BC−15」を研磨装置として用い、ダイヤモンド番手#200、台金直径190mmの(株)アライドマテリアル製のダイヤモンドドレッサーを用いた。
【0110】
そして、研磨パッド回転数100rpm、ウェハ回転数99rpm、研磨圧力24kPaの条件で、酸化ケイ素砥粒を含有する研磨スラリー(日立化成社製「HS−8005」)100質量部に純水1900質量部を添加して混合した液を、100mL/分の速度で供給しながら、初期膜厚1000nmでパターンのない酸化ケイ素膜(プラズマ化学蒸着により形成されたPETEOS酸化ケイ素膜)を表面に有する直径50mmのシリコンウェハをコンディショニングを行わずに60秒間研磨した。
【0111】
そして、30秒間のコンディショニングを行った後、新たなウェハに交換して再度研磨及びコンディショニングを繰り返し、同様にして合計10枚のウェハを研磨した。
【0112】
次に、線状の凸部と凹部が交互に繰り返し並んだ凹凸パターンを有する、SKW社製STI研磨評価用パターンウェハ「SKW3−2」を上記と同様の条件で1枚研磨した。なお、このパターンウェハは様々なパターンの領域を有するものであり、膜厚および段差の測定対象として、凸部幅100μmおよび凹部幅100μmのパターンを選択した。このパターンは凸部と凹部の初期段差が550nmであり、凸部がシリコンウェハ上に膜厚15nmの酸化ケイ素膜、その上に膜厚140nmの窒化ケイ素膜、さらにその上に膜厚700nmの酸化ケイ素膜(高密度プラズマ化学蒸着により形成されたHDP酸化ケイ素膜)を積層した構造であり、パターン凹部はシリコンウェハをエッチングして溝を形成した後に膜厚700nmのHDP酸化ケイ素膜を形成した構造である。このパターンウェハの研磨において、研磨によりパターン凸部の窒化ケイ素膜上に積層された酸化ケイ素膜が消失するまでの時間、及びその時点における凸部と凹部との段差を求めた。パターンウェハの研磨時間が短く、段差が小さいほど研磨速度と平坦性に優れているといえる。なお、パターンウェハの段差は、表面粗さ測定機((株)ミツトヨ製「SJ−400」)を用い、標準スタイラス、測定レンジ80μm、JIS2001、GAUSSフィルタ、カットオフ値λc2.5mm、およびカットオフ値λs8.0μmの設定で測定を行い、断面曲線から求めた。
【0113】
結果をまとめて表4に示す。
【0114】
【表4】
【0115】
表4の結果から、製造例1,2,3,5で得られたシートを用いた実施例11〜14で得られた研磨パッドはいずれも研磨速度が高いため研磨に要する時間が短く、また、研磨後の段差も小さく段差解消性にも優れていた。一方、空隙率が低い比較製造例1で得られたシート8を用いた比較例9で得られた研磨パッドは、研磨速度が低くなった。また、空隙率が高い比較製造例3で得られたシート10を用いた比較例10で得られた研磨パッドは、連通孔が存在するためにスラリーが充分に被研磨面に供給されないことにより研磨速度が低くなった上、研磨面の表面粗さが大きいために研磨後の段差も大きく段差解消性に劣っていた。また、空隙を全く有さない比較製造例6で得られたシート13を用いた比較例11で得られた研磨パッドは、スラリー保持性が低いために研磨速度が低くなった。