特許第6163422号(P6163422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163422
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】皮革様シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/00 20060101AFI20170703BHJP
   D06M 13/02 20060101ALI20170703BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20170703BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20170703BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20170703BHJP
   D06M 11/72 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   D06N3/00
   D06M13/02
   D06M15/643
   D06M13/224
   D06M15/564
   D06M11/72
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-267793(P2013-267793)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-124444(P2015-124444A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】吉本 伸一
(72)【発明者】
【氏名】横山 公輔
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 英夫
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−251682(JP,A)
【文献】 特開2004−211258(JP,A)
【文献】 特開2009−067910(JP,A)
【文献】 特開2013−139645(JP,A)
【文献】 特開2004−044068(JP,A)
【文献】 特開2013−177714(JP,A)
【文献】 特開2004−143654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00− 7/06
B32B 1/00− 43/00
D06M 10/00− 16/00
19/00− 23/18
C09D 1/00− 10/00
101/00−201/10
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の顔料で着色された繊維絡合体を含む基材と、前記基材に積層された表皮層とを備え、
前記表皮層は、500nm未満の平均粒径を有する第二の顔料で着色された全光線透過率が5%以上の光透過性皮膜から形成されていることを特徴とする皮革様シート。
【請求項2】
前記第一の顔料は、500nm以上の平均粒径を有する請求項1に記載の皮革様シート。
【請求項3】
前記基材は、前記繊維絡合体の繊維間の空隙に前記第一の顔料を含有する基材である請求項1または2に記載の皮革様シート。
【請求項4】
前記基材は、前記繊維絡合体の表層に前記第一の顔料を含有する着色樹脂層を含む基材である請求項1〜3の何れか1項に記載の皮革様シート。
【請求項5】
前記繊維絡合体は、0.55g/cm3以上の見かけ密度を有する、繊度0.9dtex以下の極細繊維の絡合体である請求項1〜4の何れか1項に記載の皮革様シート。
【請求項6】
前記基材は、前記繊維絡合体の繊維間の空隙に、液状の不揮発性油と充填剤とを含有する改質剤を含浸付与させた基材であって、
前記繊維絡合体に対する前記不揮発性油の割合が0.5質量%以上である請求項1〜5の何れか1項に記載の皮革様シート。
【請求項7】
前記不揮発性油が流動パラフィン,シリコーンオイル,鉱物油,及びフタル酸エステル類から選ばれる少なくとも1種を含む請求項6に記載の皮革様シート。
【請求項8】
前記充填剤が、無機フィラー、有機フィラー及び高分子弾性体から選ばれる少なくとも一種を含む請求項6または7に記載の皮革様シート。
【請求項9】
0.55g/cm3以上の見かけ密度を有する、繊度0.9dtex以下の極細繊維の絡合体であり、前記繊維絡合体の繊維間の空隙に第一の顔料を含有する基材を準備する工程と、
前記基材の表面に、500nm未満の平均粒径を有する第二の顔料を含有する光透過性皮膜形成用塗料を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥させて全光線透過率が5%以上の表皮膜を形成する工程と、を備える皮革様シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニリン革のような、透明感及び深みのある色味の表面層を有する皮革様シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然皮革に似せた、繊維絡合体の表面に着色された表面層を形成した人工皮革等の皮革様シートが知られている。このような皮革様シートは天然皮革の代替品として、靴、衣料、手袋、鞄、ボール、インテリア、車輌用途などの分野に広く用いられている。
【0003】
通常、コラーゲン繊維を含む天然皮革の着色方法としては、染料を用いたアニリン仕上げと、顔料を用いた顔料仕上げが知られている。詳しくは、アニリン仕上げは、傷のない高品質の天然皮革にタンニンなめし等のなめし処理を施した後、鮮やかで透明感のある発色を呈するアニリン染料で染め、さらに、主にタンパク質系のバインダと染料とを含む塗料を用いて薄い塗膜を形成して革を仕上げる方法である。一方、顔料仕上げは、傷があるような高品位でない天然皮革の表面に、顔料と合成樹脂系のバインダとを含む塗料を用いて傷や色むらを隠す比較的厚い均質な塗膜を形成して革を仕上げる方法である。
【0004】
アニリン仕上げにより得られたアニリン革は、染料を含む透明感のある薄い皮膜を形成して仕上げられているために、染色された天然皮革の銀面が外観に表れて皮革本来の自然な風合いが残る高級感のある仕上げになり、また、柔らかな感触を維持することもできる。一方、顔料仕上げにより得られた革は、表面に隠蔽性のある厚い皮膜を形成するために、革本来の銀面が外観に表れず、高級感に劣る仕上げになる。
【0005】
ところで、従来、天然皮革が広く用いられている用途、例えば、自動車のカーシートの表皮材等の用途において、染料堅牢性や耐光性等のさらなる向上が求められている。例えば、座部を温めるためのシートヒーターを取り付けたカーシートが普及し始めている。このようなシートヒーターを取り付けたカーシートの表皮材として染料で染められた天然皮革を用いた場合、ヒーターの熱により染料が昇華移行したり、染料が変質して変色したりするおそれがあった。さらに、例えば、アニリン革をカーシートの表皮材に適用しようとした場合、アニリン革の塗膜は、耐久性が低く、色落ちや水ジミを起こしやすい等の欠点もあるために採用することが困難であった。
【0006】
このような点から、アニリン革のような高級感のある外観を備え、且つ、着色剤の堅牢性に優れた皮革様素材が求められていた。
【0007】
例えば、下記特許文献1は、表面の光沢差を任意にコントロールすることにより従来にない優れた外観を有する人工皮革として、人工皮革繊維上に、顔料と樹脂との混合物からなる塗装層が形成された着色皮革シートにおいて、顔料として粒径0.5〜1.0μmの顆粒状顔料が配され、かつ顔料の少なくとも一部のものは、シート表面で局所的に面平滑変形され、これにより非面平滑変形部との間に光沢差を誘発させてなる光沢皮革シートを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−311778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、アニリン革のような、透明感及び深みのある色味の表面を有し、且つ、着色剤の堅牢性にも優れた皮革様シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の皮革様シートは、第一の顔料で着色された繊維絡合体を含む基材と、基材に積層された表皮層とを備え、表皮層は、500nm未満の平均粒径を有する第二の顔料で着色された全光線透過率が5%以上の光透過性皮膜から形成されている。このような構成によれば、繊維絡合体を含む基材の第一の顔料の発色と、全光線透過率が5%以上の光透過性皮膜の500nm未満の粒径を有する第二の顔料の発色とにより、透明感及び深みのあるアニリン革のような色味が表現される。また、染色されたアニリン革に比べると、顔料で着色されているために着色剤の堅牢性や耐光性等の耐久性にも優れる。
【0011】
繊維絡合体に含まれる第一の顔料は、500nm以上の平均粒径を有することが、繊維絡合体に対して固定しやすく、そのために、隠蔽力と着色力とのバランスに優れる点から好ましい。500nm未満の場合には、繊維絡合体自身の色に対する隠蔽性が低くなる傾向がある。
【0012】
基材は、繊維絡合体の繊維間の空隙に第一の顔料を含有すること、具体的には、バインダとなる高分子弾性体で繊維に固着されていることが着色剤の堅牢性に優れる点から好ましい。また、基材は、繊維絡合体の表層に第一の顔料を含有する着色樹脂層を含む基材であってもよい。
【0013】
また、繊維絡合体は、0.55g/cm3以上の見かけ密度を有する、繊度0.9dtex以下の極細繊維の絡合体であることが、緻密な繊維絡合体であるために充実感としなやかさとのバランスに優れる点から好ましい。
【0014】
また、基材は、繊維絡合体の繊維間の空隙に、流動パラフィン,シリコーンオイル,鉱物油,フタル酸エステル類のような液状の不揮発性油と、無機フィラー、有機フィラー、高分子弾性体のような充填剤とを含有する改質剤を含浸付与させた基材であって、繊維絡合体に対する不揮発性油の割合が0.5質量%以上である場合には、アニリン革のような柔らかな感触と充実感とを兼ね備える点から好ましい。具体的には、繊維絡合体の繊維間の空隙に上述のような改質剤を含浸付与させることにより、しなやかな風合いと充実感とのバランスを目的に応じて調整できる。その結果、例えば折り曲げたときには、ボキ折れとも称される座屈するような折れ皺が生じにくくなり、天然皮革のような丸みを帯びた高級感のある折れ皺が得られるようになる。
【0015】
また、本発明の皮革様シートの製造方法は、0.55g/cm3以上の見かけ密度を有する、繊度0.9dtex以下の極細繊維の絡合体であり、繊維絡合体の繊維間の空隙に第一の顔料を含有する基材を準備する工程と、基材の表面に、500nm未満の平均粒径を有する第二の顔料を含有する光透過性皮膜形成用塗料を塗布して塗膜を形成する工程と、塗膜を乾燥させて全光線透過率が5%以上の表皮膜を形成する工程と、を備える。このような方法によれば、光透過性皮膜形成用塗料を例えばスプレーコーティングのような塗工による方法で簡便に光透過性皮膜を形成させることができる。また、光透過性皮膜形成用塗料の色を調整することにより、仕上げ工程において色合わせが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アニリン革のような、透明感及び深みのある色味の表面層を有する堅牢性に優れた皮革様シートが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本発明に係る一実施形態の皮革様シート10の模式断面図である。
図2図2は皮革様シート10の表面に可視光が当てられたときの光の反射を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る一実施形態の皮革様シート10の模式断面図である。皮革様シート10は、繊維絡合体1aを含む繊維基材1と繊維基材1の表面に形成された表皮層2とを備える。繊維基材1は粒子径の限定されない第一の顔料3を含有する。また、表皮層2は500nm未満の平均粒径を有する第二の顔料4で着色された全光線透過率が5%以上の光透過性皮膜からなる。また、繊維基材1中の第一の顔料3は、好ましくは、バインダとなる高分子弾性体6で繊維絡合体1aに固着されている。また、繊維基材1は、その表層に、必要に応じて表面を平滑化して、表皮層2を形成するための土台になるベース樹脂層5を備えてもよい。この場合、ベース樹脂層が第一の顔料を含有する場合には繊維基材の一部を形成し、第二の顔料4を含有する場合には表皮層の一部を形成してもよい。
【0019】
図2は皮革様シート10の表面に可視光が当てられたときの様子を説明するための説明図である。皮革様シート10に可視光が当てられたとき、可視光の一部は表皮層2に含有される第二の顔料4に反射されて視認する者の目20に顔料4による発色光hμを視認させる。また、表皮層2に含有される第二の顔料4は500nm未満の平均粒径を有する微細な粒子であるために、可視光の一部が表皮層2を通過し、繊維基材1の層にまで入射する。そして、繊維基材1に含有される第一の顔料3に反射されて視認する者の目20に顔料3による発色光hμ'を視認させる。その結果、表面を視認する者に、第一の顔料3及び第二の顔料4による発色を視認させることにより、染料仕上げのアニリン革のような、透明感及び深みのある色味を感じさせる。
【0020】
以下、本実施形態の皮革様シートをその製造方法の一例に沿って詳しく説明する。
【0021】
繊維基材に含まれる繊維絡合体としては、不織布,織布,織物,編物等の繊維を三次元的に絡合したような構造体であれば特に限定なく用いられる。これらの中では、不織布、とくには極細繊維の不織布を用いた場合には、繊維密度が緻密であるために繊維の粗密ムラが低く均質性が高いために、充実感としなやかな風合いにとくに優れた皮革様シートが得られる点から好ましい。本実施形態においては、代表例として、不織布である極細繊維の繊維絡合体を用いる場合について、詳しく説明する。
【0022】
極細繊維の繊維絡合体は、例えば、海島型複合繊維のような極細繊維発生型繊維を絡合処理して繊維絡合体を形成し、極細繊維化処理することにより得られる。なお、本実施形態においては、海島型複合繊維を用いる場合について詳しく説明するが、海島型複合繊維以外の極細繊維発生型繊維を用いても、また、極細繊維発生型繊維を用いずに、直接極細繊維を紡糸してもよい。なお、海島型複合繊維以外の極細繊維発生型繊維の具体例としては、紡糸直後に複数の極細繊維が軽く接着されて形成され、機械的操作により解きほぐされることにより複数の極細繊維が形成されるような剥離分割型繊維や、溶融紡糸工程において花弁状に複数の樹脂を交互に集合させてなる花弁型繊維等が挙げられ、極細繊維を形成しうる繊維であれば特に限定されずに用いられる。
【0023】
極細繊維絡合体の製造においては、はじめに、選択的に除去できる海島型複合繊維の海成分を構成する熱可塑性樹脂と、極細繊維を形成する樹脂成分である海島型複合繊維の島成分を構成する熱可塑性樹脂とを溶融紡糸し、延伸することにより海島型複合繊維を得る。
【0024】
海成分の熱可塑性樹脂としては、島成分の樹脂とは溶剤に対する溶解性または分解剤に対する分解性を異にする熱可塑性樹脂が選ばれる。海成分を構成する熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、スチレンエチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、などが挙げられる。
【0025】
島成分を形成し極細繊維を形成する樹脂成分である熱可塑性樹脂としては、海島型複合繊維及び極細繊維を形成可能な樹脂であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),イソフタル酸変性PET,スルホイソフタル酸変性PET,ポリブチレンテレフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリ乳酸,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート樹脂等の脂肪族ポリエステル;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド10,ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6−12等のポリアミド;ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリブテン,ポリメチルペンテン,塩素系ポリオレフィンなどのポリオレフィン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
極細繊維の繊維絡合体の製造方法としては、例えば、海島型複合繊維を溶融紡糸してウェブを製造し、ウェブを絡合処理した後、海島型複合繊維から海成分を選択的に除去して極細繊維を形成するような方法が挙げられる。ウェブを製造する方法としては、スパンボンド法などにより紡糸した長繊維の海島型複合繊維をカットせずにネット上に捕集して長繊維ウェブを形成する方法や、長繊維をステープルにカットして短繊維ウェブを形成する方法等が挙げられる。これらの中では、緻密さ及び充実感に優れている点から長繊維ウェブが特に好ましい。また、形成されたウェブには形態安定性を付与するために融着処理を施してもよい。
【0027】
通常、海島型複合繊維からなるウェブの海成分を除去して極細繊維を形成するまでの何れかの工程において、絡合処理、水蒸気による熱収縮処理等の繊維収縮処理を施すことにより繊維の緻密化処理を施すことが好ましい。絡合処理としては、例えば、得られたウェブを5〜100枚程度重ね、ニードルパンチや高圧水流処理等の公知の不織布製造方法を用いてウェブに絡合処理を行うような方法が用いられる。
【0028】
海島型複合繊維の海成分は、ウェブを形成させた後の適当な段階で抽出または分解して除去することができる。このような分解除去または抽出除去により海島型複合繊維が極細繊維化されて繊維束状の極細繊維が形成される。
【0029】
極細繊維の繊度は特に限定されないが、0.001〜0.9dtex、さらには0.01〜0.6dtex、とくには0.02〜0.5dtexであることが好ましい。繊度が高すぎる場合には、緻密感が不充分になり、粗密感のある繊維絡合体が得られる傾向がある。また、繊度が低すぎる繊維は製造しにくく、また、繊維同士が解けないで集束してしまい、得られる繊維絡合体の剛性が高くなる傾向がある。
【0030】
このようにして得られた極細繊維の繊維絡合体は、必要に応じてスライス処理またはバフィング処理することにより厚さ調整及び平坦化処理される。このようにして、極細繊維の繊維絡合体が得られる。
【0031】
繊維絡合体の厚さは、特に限定されないが、100〜3000μm、さらには300〜2000μm程度であることが好ましい。また、繊維絡合体の見かけ密度は、特に限定されないが、0.25〜0.70g/cm3、さらには0.45〜0.65g/cm3、とくには0.55〜0.60g/cm3、程度であることが充実感としなやかな風合いとのバランスに優れた皮革様シートが得られる点から好ましい。
【0032】
繊維絡合体を含む繊維基材は、粒径の限定されない第一の顔料をさらに含有する。第一の顔料は、繊維絡合体にバインダとなる高分子弾性体で固着されたり、繊維絡合体を形成する繊維自身に混練されたり、また、繊維絡合体の表層に着色層を設けたりして繊維基材中に含有される。これらの中では、繊維絡合体に第一の顔料を高分子弾性体で固着させる方法が、着色性及び色合わせが容易である点から好ましい。
【0033】
第一の顔料の種類は特に限定されない。その具体例としては、例えば、赤〜橙系としては、ジケトピロロピロール系顔料,キナクリドン系顔料,アントラキノン系顔料等の有機顔料や、酸化鉄等の無機顔料;黄色系としては、イソインドリン系顔料,キノフタロン系顔料,縮合アゾ系顔料,アゾ錯体系顔料等の有機顔料や、ビスマスイエロー,チタンイエロー等の無機顔料;緑〜青系としては、銅フタロシアニン系顔料や、コバルトブルー,紺青,ウルトラマリン等の無機顔料;黒色系としてはカーボンブラック等が挙げられる。このような顔料は、単独でも、目的とする色に調色するために2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
第一の顔料の平均粒径は特に限定されないが、500nm以上、さらには1000nm以上であり、200000nm以下、さらには150000nm以下であることが好ましい。第一の顔料の平均粒径が小さすぎる場合には、繊維絡合体に高分子弾性体で固着する場合に高分子弾性体で包埋されることにより、着色性が低下する傾向がある。また、第一の顔料の平均粒径が大きすぎる場合には、極細繊維の緻密な繊維絡合体を用いた場合には、繊維絡合体が形成する空隙に侵入しにくくなって固着されにくくなることにより、芯部位の着色性が低下する傾向がある。
【0035】
なお、顔料の平均粒径とは、一次粒子がビヒクルで固着されて形成された凝集体状の顔料の平均粒径を意味する。このような顔料の平均粒径は、顔料粒子の分散粒子径を表しており、分散液を用いる場合には、動的光散乱方式粒度分布計で原料となる分散液を測定して得られるメジアン径に実質的に同程度である。
【0036】
高分子弾性体で繊維絡合体に第一の顔料を固着させる方法の一例について説明する。例えば、第一の顔料は高分子弾性体の分散液や溶液と混合された分散液の状態で、繊維絡合体の繊維間の空隙に含浸され、分散媒を除去することにより、第一の顔料が高分子弾性体で繊維絡合体に固着される。
【0037】
高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタン、アクリル系弾性体、シリコーン系弾性体、ジエン系弾性体、ニトリル系弾性体、フッ素系弾性体、ポリスチレン系弾性体、ポリオレフィン系弾性体、ポリアミド系弾性体、ハロゲン系弾性体等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中ではポリウレタンが耐摩耗性や機械的特性に優れる点から好ましい。
【0038】
また、ポリウレタンとしては、エマルジョンに調製されるようなポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタン等の水系ポリウレタンが分散液を調製するのが容易であり、また、架橋構造を形成させることにより、繊維に密着させすぎずに空隙に存在させることにより、より柔らかな風合いを発現する点から特に好ましい。
【0039】
また、第一の顔料と高分子弾性体の分散液とを混合する場合は、第一の顔料を含有する顔料分散液を用いることが好ましい。例えば、水系ポリウレタンを用いる場合には、顔料を水系媒体に分散させた水系顔料が好ましく用いられる。このような水系顔料は、市販の顔料分散液として容易に入手できる。
【0040】
第一の顔料を含有する顔料分散液と高分子弾性体の分散液とを混合することにより、第一の顔料と高分子弾性体とを含有する着色分散液が調製される。そして、着色分散液を繊維絡合体に含浸した後、分散媒を除去することにより、顔料が繊維絡合体に高分子弾性体で固着される。
【0041】
繊維絡合体に着色分散液を含浸させる方法は特に限定されないが、例えば、繊維絡合体に着色分散液をディップ・ニップすることにより含浸させるような方法が好ましく用いられる。そして、繊維絡合体に着色分散液を含浸させた後、着色分散液を吸収させた繊維絡合体を乾燥させて着色分散液中の分散媒等の揮発成分を乾燥除去することにより、着色分散液中の顔料と高分子弾性体とが繊維絡合体の繊維間の空隙で凝固する。乾燥条件は特に限定されないが、例えば70〜150℃で1〜10分間程度乾燥させるような条件が挙げられる。このようにして繊維絡合体の繊維間の空隙に第一の顔料と高分子弾性体とを付与することができる。
【0042】
繊維絡合体に対する高分子弾性体の割合は5〜40質量%、さらには10〜30質量%であることが好ましい。繊維絡合体に対する高分子弾性体の割合が高すぎる場合にはゴム感が強くなって反発性が高くなることにより、しなやかな風合いが低下する傾向がある。また、繊維絡合体に対する第一の顔料の割合は特に限定されないが、繊維絡合体を形成する繊維に付着する顔料の割合としては、例えば、0.01〜20%owf(on weight of fiber)、さらには、0.05〜10%owfであることが好ましい。
【0043】
また、繊維絡合体には、得られる皮革様シートの空隙に充填される、液状の不揮発性油と充填剤とを含有する改質剤をさらに含浸付与してもよい。このような改質剤を繊維絡合体に付与することにより、繊維絡合体の空隙が埋められるために、繊維絡合体を含む繊維基材の表面に対する塗装により表皮層を形成する場合に、過剰に塗液が浸透することを抑制できるとともに、柔軟性としなやかさも付与される。
【0044】
改質剤の付与に用いられる改質剤分散液としては、例えば、水または水とアルコール等の極性溶媒の混合液等の分散媒に、液状の不揮発性油及び充填剤を均質に混合分散させたものが用いられる。
【0045】
液状の不揮発性油とは、沸点が150℃以上で、且つ、極性溶媒に実質的に溶解しない液体であり、具体的には、例えば、流動パラフィン,鉱物油,シリコーンオイル,フタル酸エステル類等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、流動パラフィンが化学的な安定性に優れ、酸化を受けにくい点からとくに好ましい。
【0046】
また、本実施形態における充填剤とは、極性溶媒に実質的に溶解せずに分散可能な常温で固体の成分であり、無機フィラー、有機フィラーや高分子弾性体等が挙げられる。また、無機フィラーや有機フィラーは顔料としての機能を有するものであってもよい。
【0047】
無機フィラー、及び有機フィラーとしては、例えば、平均粒子径100〜30000nm、さらには平均粒子径500〜20000nm程度の金属、金属酸化物、無機化合物、有機化合物等からなる各種フィラーが特に限定なく用いられる。その具体例としては、アルミナ(Al23),二酸化チタン(TiO2),酸化亜鉛(ZnO),二酸化セリウム(CeO2)等の金属酸化物のフィラー;シリカ(SiO2),タルク,マイカ,籠状ポリシルセスキオキサン(POSS)等の無機化合物のフィラー;ポリリン酸アンモニウム,ジアルキルホスフィン酸アルミニウム,ポリ化リン酸メラミン等の難燃性フィラー;カーボンナノチューブ(CNT),カーボンファイバー(CF),カーボンブラック(CB),グラファイト(GF),アセチレンブラック(AB)とのカーボン系フィラー等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、各種難燃性フィラーが難燃性を同時に付与できる点からとくに好ましい。
【0048】
改質剤分散液中の各成分の濃度は、目的とする改質剤組成や、分散液の粘度や安定性等を考慮しながら適宜調整することが好ましい。具体的には、分散液中の水等の分散媒の割合としては、例えば、1〜95質量%、さらには5〜90質量%程度が挙げられる。また、改質剤分散液中の不揮発性油の割合としては、例えば、1〜50質量%、さらには3〜30質量%程度の範囲で配合することが好ましい。また、改質剤分散液中の充填剤の割合は、例えば、5〜99質量%、さらには7〜80質量%程度の範囲で配合することが好ましい。
【0049】
繊維絡合体に改質剤分散液を含浸させた後、乾燥させて分散媒等の揮発成分を乾燥除去することにより、改質剤の有効成分が繊維絡合体の繊維間の空隙で凝固する。乾燥条件は特に限定されないが、例えば70〜150℃で1〜10分間程度乾燥させるような条件が挙げられる。このようにして繊維絡合体の繊維間の空隙に第一の顔料及び改質剤を付与することができる。形成された改質剤は、例えば、粘土状、またはペースト状で空隙に存在する。従って、繊維絡合体の繊維間の空隙が埋められことにより、繊維基材の表面に塗工により表皮層を形成する場合に、塗液が過剰に浸透することが抑制される。
【0050】
改質剤の量及び組成は特に限定されないが、繊維絡合体に対する不揮発性油の割合が、0.5質量%以上、さらには、1〜10質量%、とくには3〜8質量%であるようにすることが好ましい。繊維絡合体に対する不揮発性油の割合が0.5質量%未満の場合にはしなやかな風合いが充分に得られにくくなる傾向がある。また、繊維絡合体に対する不揮発性油の割合が高すぎる場合には、繊維絡合体が不揮発性油を保持できなくなり脱落する傾向がある。
【0051】
また、改質剤中の不揮発性油の割合は、特に限定されないが、1〜90質量%、さらには3〜90質量%、とくには10〜70質量%であることがしなやかな風合いと充実感とのバランスに優れる点から好ましい。改質剤中に含有される不揮発性油の割合が低すぎる場合にはしなやかな風合いが低下する傾向があり、高すぎる場合には相対的に充填剤の割合が低くなることにより、充実感が低下する傾向がある。
【0052】
また、改質剤中の充填剤の割合としては、10〜99質量%、さらには10〜97質量%、とくには30〜90質量%であることが好ましい。改質剤中に含有される充填剤の割合が低すぎる場合には充実感が低下する傾向があり、高すぎる場合には相対的に不揮発性油の割合が低くなることによりしなやかな風合いが低下する傾向がある。
【0053】
また、繊維絡合体に対する改質剤中の高分子弾性体の割合は0〜10質量%、さらには1〜5質量%、とくには1〜2質量%であることが好ましい。繊維絡合体に対する高分子弾性体の割合が高すぎる場合にはゴム感が強くなって反発性が高くなることにより、しなやかな風合いが低下する傾向がある。なお、高分子弾性体は必須成分ではないが、配合することにより弾性を調整することができる。
【0054】
また、繊維絡合体に対する改質剤の割合は特に限定されないが、1〜40質量%、好ましくは3〜30質量%、とくには10〜30質量%であることが好ましい。繊維絡合体に対する改質剤の割合を高くしすぎた場合には空隙に充分に含浸させることが難しくなる傾向がある。
【0055】
このようにして繊維絡合体を含む第一の顔料で着色された繊維基材が得られる。このような繊維基材は、必要に応じてスライス処理またはバフィング処理することにより厚さ調整及び平坦化処理されたり、揉み柔軟化処理、空打ち柔軟化処理、逆シールのブラッシング処理、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理等の仕上げ処理が施されてもよい。
【0056】
このようにして得られる繊維基材の厚さは、特に限定されないが、100〜3000μm、さらには300〜2000μm程度であることが好ましい。また、繊維基材の見かけ密度は、特に限定されないが、0.55〜0.85g/cm3程度であることが充実感としなやかな風合いとのバランスに優れる点から好ましい。
【0057】
このようにして得られる繊維基材の表面に、500nm未満の平均粒径を有する第二の顔料で着色された全光線透過率が5%以上の光透過性皮膜から形成される表皮層を形成することにより、染料にて着色されたアニリン革のような、透明感及び深みのある色味の表面層を有する皮革様シートに仕上げられる。
【0058】
皮革様シートは、繊維基材に500nm未満の平均粒径を有する第二の顔料で着色された全光線透過率が5%以上の光透過性皮膜から形成される表皮層を形成することにより得られる。
【0059】
表皮層は、500nm未満の平均粒径を有する第二の顔料で着色された全光線透過率が5%以上の光透過性皮膜であり、光透過性樹脂成分と透明性を失わせない500nm未満の平均粒径を有する透明性顔料を含有する。透明性顔料は表皮層をその透明性を維持させながら着色することができる。
【0060】
第二の顔料の種類は特に限定されず、具体的には、例えば、第一の顔料で例示したものと同様のものが用いられる。
【0061】
また、第二の顔料の平均粒径は500nm未満であり、400nm以下、さらには300nm以下であることが好ましい。第二の顔料の平均粒径が500nm以上の場合には、表皮層の光透過性が低下する。また、第二の顔料の平均粒径の下限は特に限定されないが、100nm程度であることが着色性と生産性の点から好ましい。なお、平均粒径500nm未満の顔料の分散液は、例えば、日弘ビックス(株)から市販されている。このような顔料は、単独でも、目的とする色に調色するために2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
表皮層の光透過性皮膜を形成するための光透過性樹脂成分としては、光透過性を有する樹脂成分であれば特に限定なく用いられる。その樹脂の種類の具体例としては、例えば、ポリウレタン、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ジエン系樹脂、ニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ハロゲン系樹脂が挙げられる。また、これらはエラストマーであってもよい。これらは光透過性を維持する限り、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中ではポリウレタンが光透過性と、耐摩耗性や機械的特性とのバランスに優れる点から好ましい。また、これらの樹脂成分は、必要に応じて、紫外線吸収剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0063】
繊維基材の表面に表皮層を形成する方法は特に限定されない。具体的には、例えば、はじめに、光透過性樹脂成分と光透過性を失わせない500nm未満の平均粒径を有する透明性顔料を含む表皮層を形成するための塗料を調製する。そして、繊維基材の表面に、調製された塗料を塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥または湿式凝固させて全光線透過率が5%以上の表皮膜を形成するような方法が挙げられる。なお、繊維基材上に表皮層を形成するための塗料を塗布する方法は特に限定されず、スプレーコート、ロールコート、ナイフコート等のような手段が特に限定なく用いられる。また、このような方法によれば、仕上げ工程である表皮層の形成工程において、スプレー塗布等による簡単な塗装工程で色味を調整することができるために、生産効率にも優れている。
【0064】
表皮層の形成方法としては、予め離型紙上に表皮層を形成し、形成された表皮層の皮膜を、半硬化させた接着層を介して繊維基材表面に積層し、熱プレスして繊維基材に接着するような所謂、乾式造面法も用いることができる。しかしながら乾式造面法によれば繊維基材の表層に表皮層がほとんど沈み込まない。従って、このような方法により形成される表皮層は、接着剥離強力が低くなったり、工程が煩雑になったりするという欠点がある。一方、上述したような繊維基材の表面に、調製した塗料を塗布して表皮層を形成するような方法によれば、繊維基材の内部に塗料が適度に浸透するために接着剥離強力が高くなったり、繊維基材の表面に塗工するだけで表皮層を形成できるために工程が簡便であるという長所を有する。
【0065】
なお、繊維基材の表面に塗工して一度に充分な厚みを持った表皮層を形成しようとした場合、塗料が繊維基材に浸透しすぎるために充分な厚みを持った表皮層が形成しにくい場合がある。また、充分な厚みを有する表皮層を形成しようとすると、繊維基材に塗料が浸透しすぎて表層が固くなり、しなやかな風合いを損なうこともある。このような場合には、繊維基材と表皮層との間に、繊維基材の表面を緻密化して表皮層を積層しやすくするための土台になるベース樹脂層を形成したり、繊維基材の表面をプレスすることによりその表層の繊維を融着させて平滑で緻密な、所謂、繊維銀面層を形成したりしてもよい。このようなベース樹脂層や繊維銀面層は、生産工程上、光透過性皮膜を形成するための樹脂成分を含む塗液を繊維基材の表面に直接、ロールコーターやスプレーコーターを用いて塗布した後、乾燥または湿式凝固させることにより形成することでき、繊維基材中に塗液が浸み込みすぎることを抑制し、成膜性を向上させる点から好ましい。また、上述したような改質剤を繊維絡合体に含浸させることによっても、繊維絡合体の表面の空隙が改質剤で埋められて塗液が浸透しすぎることを抑制できる。
【0066】
ベース樹脂層を形成する方法は特に限定されない。具体的には、例えば、繊維基材上にベース樹脂層を形成するための樹脂成分を含む塗液を塗布した後、乾燥させることによりベース樹脂層の皮膜を形成する方法が挙げられる。なお、ベース樹脂層は、顔料を含有した着色樹脂層であることが、意匠性の点からより好ましい。また、例えば、メタリック顔料を配合した場合には、さらに、独特の外観が得られる。
【0067】
表皮層の厚さは5〜300μm、さらには10〜100μmであることが好ましい。また、表皮層が上述したようなベース樹脂層に積層されている場合、表皮層とベース樹脂層との合計厚さは10〜1000μm、さらには30〜300μmであることが好ましい。
【0068】
また、表皮層中の第二の顔料の含有割合は充分な光透過性を維持する限り特に限定されないが、例えば、0.1〜10質量%、さらには0.5〜5質量%であることが好ましい。表皮層中の顔料の含有割合が高すぎる場合には光透過性が低下する傾向があり、低すぎる場合には、着色性が低下する傾向がある。
【0069】
このようにして形成される表皮層は、全光線透過率が5%以上の光透過性を有する。そのために、皮革様シートに光が当たったときに、光の一部が表皮層を透過して第一の顔料で着色された繊維基材の色が視認される。その結果、表面を視認する者に、第一の顔料による着色と第二の顔料による着色による発色を視認させることにより、染料仕上げのアニリン革のような、透明感及び深みのある色味を感じさせることができる。表皮層は、全光線透過率は5%以上であり、20%以上、さらには30%以上であることが意匠性に優れる点から好ましい。なお、表皮層の全光線透過率は、例えば、全光線透過率が98%以上のガラス板をコントロールとし、そのガラス板に表皮層と同じ厚み及び同じ組成の皮膜を形成し、JIS−K7136に規定される全光線透過率(%)測定法に準拠した方法により測定することができる。
【0070】
また、このようにして得られた皮革様シートは、さらに必要に応じて、表面を保護するためのクリア層を設けたり、揉み柔軟化処理、空打ち柔軟化処理、逆シールのブラッシング処理、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理等の仕上げ処理が施されたりしてもよい。さらに、その表面には、エンボス加工等によりシボ模様を付与してもよい。このようにして本実施形態の皮革様シートが得られる。
【実施例】
【0071】
実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
【0072】
[実施例1]
〈絡合不織布の製造〉
海成分として水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(PVA)、島成分として変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ−トを用い、口金温度260℃に設定された、海成分中に均一な断面積の島成分が25個分布した断面を形成するノズル孔が並列状に配置された複数紡糸用口金に溶融樹脂を供給し、ノズル孔から吐出させた。このとき、海成分と島成分との質量比が海成分/島成分=25/75となるように圧力調整しながら供給した。
【0073】
そして、吐出された溶融繊維を平均紡糸速度が3700m/分となるように吸引装置で吸引することにより延伸し、繊度が2.1dtexの海島型複合繊維の長繊維を紡糸した。紡糸された海島型複合繊維の長繊維は、可動型のネット上に連続的に堆積され、42℃の金属ロールで軽く押さえ、表面の毛羽立ちを抑えた。そして、海島型複合繊維の長繊維をネットから剥離し、表面温度55℃の格子柄の金属ロールとバックロールとの間を通過させることにより、線圧200N/mmで熱プレスして目付31g/m2の長繊維ウェブを得た。
【0074】
次に、総目付が250g/m2になるようにウェブをクロスラッパー装置を用いて8層に重ね、重ね合わせウェブを作製し、更に針折れ防止油剤をスプレーした。次いで、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用い、針深度8.3mmにて両面から交互に3300パンチ/cm2でニードルパンチした。このニードルパンチ処理による面積収縮率は68%であり、ニードルパンチ後の絡合ウェブの目付は550g/m2であった。
【0075】
絡合ウェブを巻き取りライン速度10m/分で70℃の熱水中に14秒間浸漬して面積収縮を生じさせた。ついで95℃の熱水中で繰り返しディップ・ニップ処理を実施してPVAを溶解除去することにより、繊度0.1dtexの極細長繊維を25本含む繊度2.5dtexの繊維束が3次元的に交絡した絡合不織布を作製した。乾燥後に測定した面積収縮率は52%であり、目付は576g/m2、見掛け密度は0.565g/cm3である不織布を得た。そして不織布をスライスし、バフィングすることにより厚みを1.05mmに調整することにより、極細繊維の繊維絡合体を得た。
【0076】
一方、平均粒径約600nmの顔料を含む水性顔料分散液とアクリル系エマルジョンとを混合することにより、固形分として顔料2質量%及びアクリルエラストマー 2質量%を含有する顔料含浸用分散液を調整した。なお、アクリル系エマルジョンとしては、R/W バインダ11KS(DIC(株)製)を用いた。また、顔料としては、R/W イエローFF3R (DIC(株)製)0.4質量%及びR/W ブラウンFFR(DIC(株)製)4質量% R/W ブラックRC(DIC(株)製)1質量%を配合して濃茶色に調色した。
【0077】
一方、水系ポリウレタン2%owf、難燃性フィラー38%owfと、固形分30%の流動パラフィン15%owfとを水に分散させて改質剤含浸用分散液を調製した。なお、水系ポリウレタンとしては、ソフトセグメントがポリへキシレンカーボネートジオールとポリメチルペンタンジオールの70:30の混合物からなり、ハードセグメントが主として水添メチレンジイソシアネートからなる架橋タイプのポリウレタン(固形分30質量%、融点180〜190℃、損失弾性率のピーク温度−15℃、130℃での熱水膨潤率が35%)を用いた。また、難燃性フィラーとしては、平均粒子径5000nmのジアルキルホスフィン酸アルミニウムの分散液(固形分40%)を配合した。
【0078】
そして、繊維絡合体に、調製された顔料含浸用分散液をピックアップ率60%になるようにディップ・ニップすることにより含浸させ、乾燥することにより、繊維絡合体に顔料を固着させた。そして、さらに、顔料を固着させた繊維絡合体に、調製された改質剤含浸用分散液をピックアップ率80%になるようにディップ・ニップすることにより含浸させ、乾燥させることにより改質剤を均質に含浸付与した。
【0079】
そして、顔料及び改質剤を付与された繊維絡合体を収縮加工装置(小松原鉄工(株)製、サンフォライジング機)を用いて、その収縮部のドラム温度120℃、ヒートセット部のドラム温度120℃、搬送速度10m/分で処理してタテ方向(長さ方向)に5.5%収縮させて繊維基材を得た。得られた繊維基材は、目付709g/m2、見掛け密度0.645g/cm3であった。
【0080】
繊維基材の表層を緻密化させるために、水滴3mLを滴下したときの吸収時間が3分以上になるように、得られた繊維基材の表面に、フィラー材とアクリル樹脂の混合物からなる水系スラリー(RC-13-572 Sthal製)5g/sqfをリバースコーター(Gemata製STARPLUS)で塗布した。そして、表層が緻密化された繊維基材の表面にさらにベースコート液をリバースコーターを用いて塗布量140g/m2でロールコートすることにより膜厚28μmのベースコート層を形成した。なお、ベースコート液としては、ポリウレタン溶液(DIC(株)製 LCCバインダUB1770 固形分30質量%)400質量部と平均粒径約800nmの顔料の分散液(固形分25%)100質量部と、増粘剤とを混合して調製された、フォードカップNo.4 55Sで粘度195cpになるように調整された液を用いた。
【0081】
そして、ベースコート層の表面に表皮層を形成するためのカラーコート液を塗布量70g/m2でスプレーコートすることにより膜厚14μmの表皮層を形成した。なお、カラーコート液としては、第2の顔料として、水系透明顔料を含む平均粒径約98nmの顔料分散液(日弘ビックス(株)製のNSP-WG series、固形分約20%)50質量部と、ポリウレタン樹脂(DIC(株)製 LCCバインダUB1770 固形分30%)400質量部とを混合し、岩田カップ(IWATA NK-2 12s)で30cpになるように増粘剤で調整したものを用いた。
【0082】
このようにして形成された表皮層中の顔料の含有割合は2.2質量%であった。また、全光線透過率が98%以上のガラス板をコントロールとし、そのガラス板に表皮層と同じ厚み及び同じ組成の皮膜を形成し、JIS−K7136に規定される全光線透過率(%)測定法に準拠した方法により測定された表皮層の全光線透過率は45%であった。
【0083】
そして、さらに40〜50℃で2〜4時間空打ち処理を行った。そして、125℃,50kg/cm2のエンボスロールを用いてライン速度7.0m/分で表層にエンボス処理を施した。そしてその表面に、岩田カップ(IWATA NK-2 12s)で30cpに調整したトップコート塗料(スタール製のクリア塗料)を塗布し、膜厚13.5μmのトップコートを形成することにより目付777g/m2、見かけ密度0.762g/cm3の人工皮革を得た。
【0084】
〈人工皮革の評価〉
得られた人工皮革を以下の評価方法に従って評価した。
【0085】
(表面の色感)
A:染料仕上げアニリン革のような、透明感及び深みのある色味であった。
B:顔料仕上革のような、透明感がなく少し深みあるの色味であった。
C:透明感がなく高級感が低い色味であった。
【0086】
(耐光性)
得られた人工皮革を縦70mm、横70mmに切断して試験片を得た。そして、得られた試験片をキセノンロングライフアークランプ 7.5Kwを装備するキセノンウェザオメーターを用いて100時間暴露させた。そして、規定の光源(D65)の下で、斜め45度の判定台の上に試験前後の試料および添付白布を並べ、それらを変退色用のグレースケールと比較して等級を決定した。なお、等級は半階級を含む1〜5級までの9段階評価で判定し、1級が最も光劣化が大きく、5級が最も光劣化が小さいことを示す。
【0087】
(剛軟度)
皮革ソフトネス計測装置ST300(英国、MSAエンジニアリングシステム社製)を用いて剛軟度を測定した。具体的には、直径25mmの所定のリングを装置の下部ホルダーにセットした後、下部ホルダーに人工皮革をセットし、上部レバーを押し下げてロックしたときの数値を読み取った。
【0088】
(充実感)
得られた人工皮革を20×20cmに切りだしてサンプルを調整した。そして、中央部を境にして内側に折り曲げる等して外観を以下の基準で判定した。
A:折りまげたときに緻密で細かな折れシボ及び丸みを帯びたような充実感のある折れしわが発生した。また、ドレープ性にも優れていた。
B:折れシボは座屈の大きな粗いシボや深いシワが発生して緻密な折れシボ感が得られず充実感に乏しい風合いであった。また、ドレープ性にも劣っていた。
C:充実感が著しく低かった。
【0089】
(表皮層のコート性)
A:表皮層の沈み込みがほとんどなく、平滑で滑らかな表面が形成された。
B:表皮層の沈み込みが少しあり、表面の繊維のざらつきが少し感じられた。
C: 表皮層がほとんど沈み込み、表面が繊維で露出して毛羽立っていた。
【0090】
以上の評価結果を下記表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
[実施例2]
実施例1のカラーコート液の調製において、平均粒径約98nmの顔料分散液を50質量部配合する代わりに、同じ顔料分散液を25質量部配合した以外は同様にしてカラーコート液を調製した。実施例1で調製したカラーコート液に代えて、上記カラーコート液を用いた以外は、実施例1と同様の工程を経て、人工皮革を得、評価した。形成された表皮層中の顔料の含有割合は1.2質量%であった。また、表皮層の全光線透過率を測定したところ、65%であった。結果を表1に示す。
【0093】
[実施例3]
実施例1で調製したカラーコート液の調製において、平均粒径約98nmの顔料分散液を50質量部配合する代わりに、同じ顔料分散液を100質量部配合した以外は同様にしてカラーコート液を調製した。実施例1で調製したカラーコート液に代えて、上記のカラーコート液を用いた以外は、実施例1と同様の工程を経て、人工皮革を得、評価した。形成された表皮層中の顔料の含有割合は4質量%であった。また、表皮層の全光線透過率を測定したところ、30%であった。結果を表1に示す。
【0094】
[実施例4]
実施例1で調製したベースコート液の調製において、平均粒径約800nmの顔料の分散液(固形分25%)100質量部配合する代わりに、平均粒径約98nmの(日弘ビックス(株)製のNSP-WG series、固形分約20%)100質量部配合した以外は同様にしてベースコート溶液を調製した。
また、実施例1で調製したカラーコート液の調製において、平均粒径約98nmの顔料分散液を50質量部配合する代わりに、同じ顔料分散液を100質量部配合した以外は同様にしてカラーコート液を調製した。実施例1で調製したベースコート液及びカラーコート液に代えて、上記ベースコート液及びカラーコート液を用いた以外は、実施例1と同様の工程を経て、人工皮革を得、評価した。形成された表皮層中の顔料の含有割合は4質量%であった。また、ベースコート層に含有される顔料の含有割合は5質量%であった。さらに、表皮層の全光線透過率を測定したところ、30%であった。結果を表1に示す。
【0095】
[実施例5]
実施例1において、繊維絡合体に改質剤含浸用分散液を含浸付与する代わりに、繊維絡合体に対して固形分で12.5質量%になるように実施例1で用いたのと同様の水系ポリウレタンの分散液を含浸させ、120℃で乾燥させた以外は同様にして人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
【0096】
[実施例6]
実施例1において、改質剤を含浸付与する工程を省略した以外は実施例1と同様にして、人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
【0097】
[実施例7]
実施例1において、カラーコート液に配合した第2の顔料の分散液として、平均粒径約98nmの顔料を含む顔料分散液を用いる代わりに、平均粒径約480nmの顔料を含む顔料分散液を用いた以外は実施例1と同様の工程を経て、人工皮革を得、評価した。形成された表皮層中の顔料の含有割合は2.2質量%であった。また、表皮層の全光線透過率を測定したところ、5%であった。結果を表1に示す。
【0098】
[比較例1]
実施例1と同様にして、厚みを1.05mmに調整した、極細繊維の繊維絡合体を得た。そして、繊維絡合体に、実施例1で用いた顔料含浸用分散液の代わりに、アクリル系エマルジョンを固形分として2質量%含み、顔料を含まない分散液を、ピックアップ率60%になるようにディップ・ニップすることにより含浸させ、乾燥することにより、繊維絡合体にアクリル系弾性体のみを固着させた繊維基材を得た。そして、さらに、アクリル系弾性体のみを固着させた繊維絡合体に、実施例1で調製されたものと同様の改質剤含浸用分散液をピックアップ率80%になるようにディップ・ニップすることにより含浸させ、乾燥させることにより改質剤を均質に含浸付与した。そして、改質剤を含浸付与させた繊維絡合体を80℃の熱水中に20分間湯通しして熱水になじませると共に生地をリラックスさせた後、高圧液流染色機を用いて均染染料を用いて濃茶色に染色し、乾燥した。
【0099】
そして、染色された繊維絡合体を、実施例1と同様にして収縮加工装置を用いて、その収縮部のドラム温度120℃、ヒートセット部のドラム温度120℃、搬送速度10m/分で処理してタテ方向(長さ方向)に5.5%収縮させて繊維基材を得た。得られた繊維基材は、目付709g/m2、見掛け密度0.645g/cm3であった。
【0100】
繊維基材の表層を緻密化させるために、水滴3mLを滴下したときの吸収時間が3分以上になるように、得られた繊維基材の表面に、フィラー材とアクリル樹脂の混合物からなる水系スラリー(RC-13-572 Sthal製)5g/sqfをリバースコーター(Gemata製STARPLUS)で塗布した。そして、表層が緻密化された繊維基材の表面に実施例1で調製されベースコート液に代えて、顔料で着色する代わりに染料で着色したベースコート液をリバースコーターで塗布量140g/m2でロールコートすることにより膜厚28μmのベースコート層を形成した。
【0101】
そして、形成されたベースコート層の表面に表皮層を形成するためのカラーコート溶液を塗布量70g/m2でスプレーコートすることにより膜厚14μmの表皮層を形成した。なお、カラーコート溶液としては、実施例1のカラーコート液において第2の顔料で着色する代わりに染料で着色した以外は同様の組成で調製した溶液を用いた。
【0102】
そして、さらに40〜50℃で2〜4時間空打ち処理を行った。そして、125℃,50kg/cm2のエンボスロールを用いてライン速度7.0m/分で表層にエンボス処理を施した。そしてその表面に、岩田カップ(IWATA NK-2 12s)で30cpに調整したトップコート塗料(スタール製のクリア塗料)を塗布し、膜厚13.5μmのトップコートを形成することにより目付777g/m2、見かけ密度0.762g/cm3の人工皮革を得た。そして実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0103】
[比較例2]
実施例1と同様にして、厚みを1.05mmに調整した、極細繊維の繊維絡合体を得た。そして、繊維絡合体に、実施例1で用いた顔料含浸用分散液の代わりに、アクリル系エマルジョンを固形分として2質量%含み、顔料を含まない分散液を、ピックアップ率60%になるようにディップ・ニップすることにより含浸させ、乾燥することにより、繊維絡合体にアクリル系弾性体のみを固着させた繊維基材を得た。そして、さらに、アクリル系弾性体のみを固着させた繊維絡合体に、実施例1で調製されたものと同様の改質剤含浸用分散液をピックアップ率80%になるようにディップ・ニップすることにより含浸させ、乾燥させることにより改質剤を均質に含浸付与した。そして、改質剤を含浸付与させた繊維絡合体を80℃の熱水中に20分間湯通しして熱水になじませると共に生地をリラックスさせた後、高圧液流染色機を用いて均染染料を用いて濃茶色に染色し、乾燥した。
【0104】
そして、実施例1と同様にして、染色された繊維絡合体を収縮加工装置を用いて、その収縮部のドラム温度120℃、ヒートセット部のドラム温度120℃、搬送速度10m/分で処理してタテ方向(長さ方向)に5.5%収縮させて繊維基材を得た。得られた繊維基材は、目付709g/m2、見掛け密度0.645g/cm3であった。
【0105】
実施例1において、顔料及び改質剤を付与された繊維絡合体の代わりに、得られた染色された繊維絡合体を用いた以外は、以降、実施例1と同様の工程を経て、目付777g/m2、見かけ密度0.762g/cm3の人工皮革を得た。
【0106】
[比較例3]
実施例1において、カラーコート液を塗布量70g/m2でスプレーコートすることにより膜厚14μmの表皮層を形成した代わりに、実施例1のカラーコート液において第2の顔料を配合しなかった以外は同様の組成で調製したクリアコート溶液を塗布量70g/m2でスプレーコートすることにより膜厚14μmの表皮層を形成した以外は実施例1と同様の工程を経て、人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
【0107】
[比較例4]
実施例1において、カラーコート液に配合した第2の顔料の分散液として、第1の顔料として用いた、平均粒径約800nmの顔料を含む分散液を用いた以外は実施例1と同様の工程を経て、人工皮革を得、評価した。形成された表皮層中の顔料の含有割合は2.8質量%であった。また、ベースコート層に含有される顔料の含有割合は5質量%であった。さらに、表皮層の全光線透過率を測定したところ、2%であった。結果を表1に示す。
【0108】
表1の結果から、顔料で着色された繊維絡合体を含む基材と、500nm未満の平均粒径を有する顔料で着色された光透過性皮膜から形成されている実施例1〜7で得られた皮革様シートは、いずれも、染料仕上げアニリン革のような、透明感及び深みのある色味を呈するとともに、耐光性にも優れていた。また、顔料のみで着色されているために堅牢度にも優れている。一方、染料のみで着色された比較例1の皮革様シートは、染料仕上げアニリン革のような、透明感及び深みのある色味を呈するが、染色されているために耐光性が劣り、また堅牢度にも劣る。また、繊維基材を染料で着色した比較例2の皮革様シートも、染色されているために耐光性が劣り、また堅牢度にも劣る。また、繊維基材を顔料で着色し、表皮層を着色しなかった比較例3の皮革様シートは、顔料仕上革のような、少し深みはあるが透明感がない色味を呈した。さらに、粒径の大きい顔料を配合して全光線透過率が2%の隠蔽性の高い表皮層を形成した比較例4の皮革様シートは、透明感がなく高級感が低い色味を呈した。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の皮革様シートは、靴、衣料、手袋、鞄、ボール、インテリア、車輌用途などの皮革調素材として用いられる。
【符号の説明】
【0110】
1 繊維基材
1a 繊維絡合体
2 表皮層
3 第一の顔料
4 第二の顔料
5 ベース樹脂層
6 高分子弾性体
10 皮革様シート
図1
図2