【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1)平成26年9月14日に、IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems,Workshop:From Active Impedance to Intrinsically Compliant and Variable Impedance Actuators:Pros,Cons and Trade−offsに発表 2)平成26年9月14日に、IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems,Workshop:From Active Impedance to Intrinsically Compliant and Variable Impedance Actuators: Pros, Cons and Trade−offs の ウ ェ ブ サ イ ト http://mech.vub.ac.be/IROSWSActuators/schedule.htmに公表 3)平成26年10月21日に、「第1回フューチャーセッション 〜ロボット技術とセンサ技術〜」にて公表 4)平成26年12月8日に、International Workshop on Cognitive Neuroscience Roboticsにて公表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置の構成について、図に従って説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素および処理工程は、同一または相当するものであり、必要でない場合は、その説明は繰り返さない。
【0042】
なお、以下では、アクチュエータを駆動する流体として空気を例にとって説明する。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1000の断面構造を説明するための図である。
【0043】
また、
図2は、空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1000のシリンダの手前上部の1/4を取り除いて、内部構造を示した斜視図である。
【0044】
以下、
図1および
図2を参照して、空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1000は、シリンダ100と、シリンダ100内に摺動可能に格納された可動子200とを含む。
【0045】
シリンダ100は、電磁アクチュエータの可動案内部および空圧アクチュエータのシリンダとして機能する。可動子200は、電磁アクチュエータの可動子および空圧アクチュエータのピストンとして機能する。すなわち、空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1000では、電磁相互作用を出力軸へ伝達する要素である可動子と可動子の可動空間とが、空気圧力を出力軸へ伝達する要素であるピストンとピストンの可動空間とに、それぞれ、一体化されている。
【0046】
シリンダ100の外周には、シリンダ100の軸方向に所定幅にわたって配置された電磁コイル部材110が設けられる。電磁コイル部材110は、内部に、複数個のコイル112a〜112lを有する。複数個のコイル112a〜112lは、それぞれ、独立に供給される電流で、独立な極性の方向に励磁される。より特定的には、複数個のコイル112a〜112lは、それぞれ、互いに位相の異なる交流電流が流れるように構成されている。たとえば、複数個のコイル112a〜112lを、3組に分け、各組ついては、互いに(2π/3)だけ位相のずれた交流電流(対称三相交流)を流すなどして、可動子200に推進力を与える。なお、電磁コイル部材110に与えられる交流としては、可動子を駆動できるものであれば、このような「対称三相交流」に限定されるものではない。
【0047】
また、複数個のコイル112a〜112lの間には、図示されるように、軟磁性材料が挟み込まれ、これにより、軟磁性体材料に磁力線が集中し磁力を高めることができる。なお、ここで、軟磁性材料を挟み込むことは必ずしも必須ではなく、軟磁性体材料を挟まない場合は推力が低下するものの、電流を流さない場合に、推力の脈動が発生しないという利点がある。
【0048】
また、コイルの周囲は、軟磁性体のケースで覆われる。このような構成により、コイル・軟磁性体を通過した磁束はケースを通って再び可動子に帰っていく。ケースにより、周囲への磁束の漏れを抑制し、推力を向上できる。
【0049】
シリンダ100の一方の端部には、中央に開口部102が設けられ、可動子200に接続された出力軸204は、開口部102に挿入される。出力軸204が、可動子200が駆動されることによる駆動力を外部に伝える。また、開口部102と出力軸204とは、摺動可能な状態で、かつ、流体(空気)の気密を保持できるようなシール構造を有している。
【0050】
可動子200は、出力軸204の接続される面とは反対側に、複数個のコイル112a〜112lと対向して配置される複数個の磁力部材202a〜202dを有し、複数個のコイル112a〜112lの励磁により電磁コイル部材110に対して相対移動する。
【0051】
ここで、「磁力部材」とは、コイルからの磁力に応じて、駆動力を生じるような部材であればよく、典型的には、永久磁石であるが、磁性材料であればよい。以下では、特に断らない限り、「磁力部材」が永久磁石であるものとして説明する。
【0052】
磁力部材202a〜202dは、それぞれの極性が軸方向に交互に逆極性となるように配置される。したがって、可動子200と複数個のコイル112a〜112lとで、リニアモータが構成される。
【0053】
図3は、可動子200における磁力部材202の配置を説明するための図である。
【0054】
なお、磁力部材202a〜202dを総称するときは、磁力部材202と呼ぶ。
【0055】
図1および
図2に加えて、
図3(a)および
図3(b)に示すように、極性が対抗する磁力部材202a〜202dの間には、中間部材203a〜203cが挿入されて配置される。中間部材203a〜203cは、磁力部材202a〜202dの永久磁石より透磁率が高い軟磁性材料である。透磁率が永久磁石よりも高いため、対抗する永久磁石同士の磁束は、中間部材内において、永久磁石のみで構成された場合よりも高い磁束密度を有する磁場として、中間部材から可動子の中心軸に対して略垂直に抜け、または、その方向に入ることになる。これにより、電磁コイル部材110の位置での磁場の強度を強くすることができる。
【0056】
また、このように構成することで、中間部材203a〜203cおよび磁力部材(永久磁石)202a〜202dを全て、同一半径の円盤状またはリング状の部品で構成することで製作が容易になる。さらに、中間部材203a〜203cおよび磁力部材(永久磁石)202a〜202dの厚さを調整することで、高い磁束密度を容易に実現することが可能となる。
【0057】
このようなリニアモータとしての駆動の構成については、たとえば、特許第5422175号に詳しい開示がある。
【0058】
なお、リニアモータとしての駆動の構成については、たとえば、特開2012−244688号公報に記載されているような「リニアバーニアモータ」の構成とすることも可能である。
【0059】
チャンバ106aは、シリンダ200の一方端と可動子200の出力軸204が接続する一方端面側との間の空間である。チャンバ106bは、シリンダ200の他方端と可動子200の他方端面との間の空間である。チャンバ106aには、制御弁を有する配管108aを介して、所定の圧力の空気が供給され、または、空気の排気が行われる。チャンバ106bには、制御弁を有する配管108bを介して、所定の圧力の空気が供給され、または、空気の排気が行われる。
【0060】
以上のようなリニアモータとしての駆動と、チャンバ106aおよびチャンバ106bへの空気の吸排気は、図示しない制御部により制御される。制御部は、目標方向へ可動子を駆動する際には、複数個のコイル112a〜112lの励磁により可動子200が相対移動するのと同一の方向へ可動子200を駆動する駆動力を与えるように空気の吸排気を制御する。
【0061】
なお、
図1〜3では、出力軸204が、シリンダ100の片側のみに設けられる構成を例示しているが、出力軸204は、可動子200の両端に設けられ、シリンダ100の両端部から外部に突き出る構成としてもよい。
【0062】
また、流体として、圧縮空気のような気体だけではなく、水、油や磁性流体アクチュエータの適用が可能である。水や油を用いればコイル冷却効率が高まり、磁性流体を用いれば、ハードウェアの特性として粘性の制御が実現できる。
【0063】
図4は、電磁アクチュエータとしての駆動方式を説明するための概念図である。
【0064】
図1〜3では、電磁コイル部材110に与えられる交流としては、対称三相交流を例として説明した。
図4(a)は、このような三相交流での駆動を示す。
【0065】
これに対して、
図4(b)に示すように、可動子200には、磁力部材202aが1つ設けられ、電磁コイル部材110には、コイル112aおよび112bが、直列に接続され、かつ互い巻き方向が逆向きになるように設けられて、単相で駆動する構成とすることも可能である。
【0066】
図5は、
図4(b)での単相駆動の場合のコイル電流を説明するための概念図である。
【0067】
図5(a)、
図5(b)において、クロスの記号(○にX)は、紙面の表側から裏側に向く電流を示し、ドットの記号(○に黒丸)は、紙面の裏側から表側に向く電流を示す。
【0068】
図5(a)に示すように、コイル212aおよびコイル212bに電流を流し、単相で駆動すると、可動子は右方向に駆動され、
図5(b)に示すように、電流の向きを逆転すると、可動子は左方向に駆動される。
【0069】
図6は、制御部の制御の構成の一例を説明するための機能ブロック図である。
【0070】
図6は、出力軸に発生する力が目標の大きさとなるように制御する力制御の場合の制御部の機能ブロック図である。
【0071】
なお、エアシリンダからの出力については、事前に、圧力指令と出力との関係を計測しておき、これに基づいて算出することが可能である。たとえば、エアシリンダの出力はシリンダ内の圧力から摩擦を引き算して推定することが可能である。
【0072】
図6を参照して、制御部は、目標となる出力(力)F
*を出力指令として受けて、所定のゲイン(1/μS)で変換して、シリンダ100に供給する圧力に対する圧力指令P
*を生成するアンプ312を含む。
【0073】
ここで、Sはシリンダの断面積を、μは、エアシリンダ要素の効率を表す。
【0074】
制御部は、さらに、圧力指令P
*に応じて、エアシリンダ要素314から出力されるエアシリンダ出力(力)Fpと、出力指令F
*との差分をとる差分要素316と、差分要素316の出力である出力指令Fe
*を所定のゲイン(1/K)で変換して、リニアモータを駆動する電流値を示す電流指令I
*を生成するアンプ318と、電磁アクチュエータを制御する電流制御ループ320とを含む。最終的な出力Fとして、空電ハイブリッド型アクチュエータ装置からは、エアシリンダ出力(力)Fpと電磁アクチュエータの出力(力)Feとを合成したものが生成される。ここでも、Kは、電磁アクチュエータ要素の推力定数を表す。
【0075】
なお、電磁アクチュエータの発生力は、励磁電流に比例するので、電流を制御するだけで良い。ただし,電流を励磁しなくでも発生する力の脈動がある場合があり、この脈動は事前にモデル化しておき、指令電流に補正値として加算する構成とすることも可能である。
【0076】
図7は、制御部の制御の構成の他の例を説明するための機能ブロック図である。
【0077】
図7も、出力軸に発生する力が目標の大きさとなるように制御する力制御の場合の制御部の機能ブロック図である。
図6の構成と異なる点は、最終的な出力Fが、入力側にフィードバックされる構成となっている点である。
【0078】
なお、エアシリンダからの出力については、
図6と同様に、事前に、圧力指令と出力との関係を計測しておき、これに基づいて算出することが可能である。最終的な出力Fは、これを計測するセンサが設けられているものとする。このようなセンサとしては、たとえば、ロードセルなどを用いることができる。
【0079】
図8を参照して、制御部では、目標となる出力(力)F
*を出力指令として受けて、差分要素332により、最終的な出力(力)Fとの差分をとり、差分要素332の出力をPID制御部334に入力して、このPID制御部334の出力を、アンプ336が、所定のゲイン(1/μS)で変換して、シリンダ100に供給する圧力に対する圧力指令P
*を生成する。ここでも、Sはシリンダの断面積を、μは、エアシリンダ要素の効率を表す。
【0080】
制御部は、さらに、圧力指令P
*に応じて、エアシリンダ要素338から出力されるエアシリンダ出力(力)Fpと、出力指令F
*との差分をとる差分要素340と、差分要素340の出力である出力指令Fe
*を所定のゲイン(1/K)で変換して、リニアモータを駆動する電流値を示す電流指令I
*を生成するアンプ342と、電磁アクチュエータを制御する電流制御ループ344とを含む。最終的な出力Fとして、空電ハイブリッド型アクチュエータ装置からは、エアシリンダ出力(力)Fpと電磁アクチュエータの出力(力)Feとを合成したものが生成される。ここでも、Kは、電磁アクチュエータ要素の推力定数を表す。
【0081】
このような構成によっても、
図6の場合と同様の効果を奏することが可能である。
【0082】
図8は、
図6または
図7の制御により発生する力の時間変化を示す図である。
【0083】
図6または
図7で説明したような制御を行うと、
図8に示すように、時間応答が遅い空気圧による発生力が、所望の駆動力に到達するまでの期間は、電磁力によるリニアモータから発生する力が、空気圧による発生力(駆動力)を補うことが可能となる。
【0084】
すなわち、アクチュエータ装置1000では、力制御の場合、空気圧制御の遅れを改善するため、ハイブリッド型アクチュエータ装置の全体の目標出力とエアシリンダ要素による出力の差分を出力指令とし、空気圧制御よりもより時間応答性の高い電磁アクチュエータ要素の出力を調整する。十分に時間が経てば,エアシリンダ要素の出力が安定するため、電磁アクチュエータ要素は外乱によるエアシリンダ要素の出力変化に対して即座に対応する役割のみを担う。その結果,コイルの励磁電流が小さくてすみ、発熱が抑制される。
また、定常状態となった後にも、制御目標からの偏差の補償には、空気圧制御よりもより時間応答性の高い電磁アクチュエータ要素の出力を用いることができる。
【0085】
すなわち、定常状態になった後に外力が加わってエアシリンダの圧力センサの値に変化があった場合には、電磁アクチュエータへの出力指令が変化し、直ちに電磁アクチュエータの出力が変化する。
【0086】
この結果、アクチュエータ装置1000においては、力制御の場合も、電磁力による駆動力の発生機構と空気圧による駆動力の発生機構とを一体化することで小型化を実現しつつ、時間応答性に優れた高出力を実現することができる。
【0087】
図9は、制御部の制御の構成の他の例を説明するための機能ブロック図である。
【0088】
図9は、出力軸の位置を目的位置となるように制御する位置制御の場合の制御部の機能ブロック図である。
【0089】
なお、可動子200の位置については、たとえば、出力軸204の位置を検出するセンサなどにより検知されるものとする。このようなセンサとしては、たとえば、ホール素子を用いる磁気式のセンサや、スリットの入った板を用いる光学式のセンサを用いることができる。
【0090】
図9を参照して、制御部は、可動部200の現在位置xと、駆動する目標位置を示す位置指令x
*との差分に基づいて、PID制御により目標となる駆動力を指示する出力指令F
*を生成するPID制御部300と、出力指令F
*を所定のゲイン(1/μS)で変換して、シリンダ100に供給する圧力に対する圧力指令P
*を生成するアンプ302とを含む。
【0091】
ここで、Sはシリンダの断面積を、μは、エアシリンダ要素の効率を表す。
【0092】
制御部は、さらに、シリンダ100内の可動子200に加える圧力による駆動力Fpと、出力指令F
*との差分である出力指令Fe
*を所定のゲイン(1/K)で変換して、リニアモータを駆動する電流値を示す電流指令I
*を生成するアンプ304と、電磁アクチュエータを制御する電流制御ループ304とを含む。ここで、Kは、電磁アクチュエータ要素の推力定数を表す。
【0093】
すなわち、アクチュエータ装置1000では、位置制御の場合に、空気圧制御の遅れを改善するため、ハイブリッド型アクチュエータ装置の全体の目標出力とエアシリンダ要素による出力の差分を出力指令とし、空気圧制御よりもより時間応答性の高い電磁アクチュエータ要素の出力を調整する。十分に時間が経てば、エアシリンダ要素の出力が安定するため、電磁アクチュエータ要素は外乱によるエアシリンダ要素の出力変化に対して即座に対応する役割のみを担う。その結果,コイルの励磁電流が小さくてすみ、発熱が抑制される。また、定常状態となった後にも、制御目標からの偏差の補償には、空気圧制御よりもより時間応答性の高い電磁アクチュエータ要素の出力を用いることができる。
【0094】
この結果、アクチュエータ装置1000においては、電磁力による駆動力の発生機構と空気圧による駆動力の発生機構とを一体化することで小型化を実現しつつ、時間応答性に優れた高出力を実現することができる。
(実施の形態1の変形例)
図1に示した空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1000では、可動子200において、複数個の磁力部材202a〜202dと中間部材203a〜203cとが、シリンダ100の内面を摺動するピストンとしても機能する構成であった。
【0095】
図10は、実施の形態1の変形例の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1000´断面構造を説明するための図である。
【0096】
図10においては、複数個の磁力部材202a〜202dと中間部材203a〜203cとを総称して、磁力部材200−1と呼ぶことにする。
【0097】
図10に示すように、可動子200において、シリンダ100の内面を摺動するピストン200−2を別途設けて、このピストン200−2により、チャンバ106aとチャンバ106bとを分離する構成であってもよい。この場合は、複数個の磁力部材202a〜202dおよび中間部材203a〜203cと、シリンダ100の内面との間には、隙間があってもよい。
(パワーアシスト装置)
次に、以上説明したようなアクチュエータ装置1000を外骨格型ロボットの関節を駆動するためのアクチュエータとして使用したパワーアシスト装置の構成について説明する。
【0098】
すなわち、以下、本実施の形態において、歩行・姿勢リハビリテーションのためのハイブリッド型のアクチュエータによる外骨格型ロボットについて説明する。
【0099】
ただし、本発明のハイブリッド型外骨格型ロボットは、下肢の運動をアシストするための外骨格型ロボットに対してだけでなく、上肢の運動をアシストする外骨格型ロボットとしても使用することが可能である。
【0100】
また、以下の説明では、下肢の対としての運動をアシストする外骨格型ロボットについて説明するが、下肢のうちのいずれか一方、または、上肢のうちのいずれか一方の運動をアシストする外骨格型ロボットとして使用することも可能である。
【0101】
さらに、本発明のハイブリッド型外骨格型ロボットは、対象となる人間の筋骨格系の運動をアシストするのであれば、上述したような「下肢のうちの少なくともいずれか一方、または、上肢のうちの少なくともいずれか一方の運動」に限定されるものではなく、たとえば、対象となる人間の腰の運動のみをアシストするものであってもよいし、歩行または走行時において下肢の運動と連動して腰の運動をアシストするものであってもよい。本明細書では、このような対象となる人間の運動のアシストを総称して、「対象となる人間の筋骨格系運動の支援(アシスト)」と呼ぶことにする。
【0102】
本実施の形態の外骨格型ロボットは、外骨格を有する。「外骨格」とは、人間の骨格構造に対応してロボットが有する骨格構造のことである。より特定的には、「外骨格」とは、外骨格型ロボットを装着する人間の体の一部を、外部から支えるフレーム(枠組み)構造のことをいう。
【0103】
このフレーム構造には、さらに、フレーム構造の各部を人間の骨格構造に基づく運動に応じて動かすための関節が設けられる。
【0104】
特に、下肢の運動をアシストする外骨格型ロボットは、ベースと下半身とを有し、足首、膝、腰の左右の位置に、能動6自由度の関節を有するロボットである。また、当該6つの関節は、空電ハイブリッド型のアクチュエータを人工の筋肉としてすることで駆動される関節である。以下、このように、外骨格型ロボットにおいて、ユーザの関節に対してサポート力を与えるためにアクチュエータにより駆動される関節のことを「能動関節」と呼ぶ。
【0105】
図11は、本実施の形態における外骨格型ロボット1の構成事例を示す図である。本外骨格型ロボット1は、10自由度である。
【0106】
なお、このような外骨格型ロボットの構成事例については、類似の構成が、上述した特許文献3にも開示されている。
【0107】
図11において、外骨格型ロボット1は、両脚に対応したフレーム構造、バックパック101、柔軟シート102、HAA拮抗筋103、HFE伸筋104、HFEモータ111、KFE伸筋105、 KFEモータ106、AFE伸筋・AAA拮抗筋107、AFE屈筋108、関節109、フレーム構造に設けられた関節110を備える。
【0108】
なお、
図11では、バックパック101が運動を支援する構造に直接とりつけられているが、バックパック101は、この構造から取り外されていてもよい。
【0109】
バックパック101には、外骨格型ロボットの駆動制御するための制御装置が設けられる。
【0110】
また、関節109には、たとえば、光学式エンコーダを回転軸に取り付け、関節角度を計測する。関節110も同様に光学式エンコーダを取り付ける。光学式エンコーダは、軸に取り付けるのではなく、軸に巻かれたベルトの移動方向と移動量を読み取る構成としてもよい。バックパック101の制御装置は、読み取られた関節角に応じて、人工筋肉(アクチュエータ)の駆動力を制御する。
【0111】
なお、エンコーダとしては、シャフトに内蔵する構成とすることも可能である。
【0112】
また、
図12は、外骨格型ロボット1の自由度の構成を示す図である。
【0113】
図12において、各関節において、「R_」との表示は、右側の関節であることを示し、「L_」との表示は、左側の関節であることを示す。
【0114】
図11および
図12を参照して、全10自由度のうち、左右のAFE関節は伸筋と屈筋による拮抗駆動を採用している。拮抗駆動以外の関節は、パッシブな駆動である。ただし、より多くの関節を拮抗駆動としてもよい。
【0115】
図11において、両脚が接続する胴体部には姿勢センサを搭載してベース部の姿勢を検出している。また、全ての関節にワイヤ式エンコーダ(またはモータ付属のエンコーダ)を取り付け、関節角度を計測できるようにしている。関節角度ならびに、たとえば、下肢の筋電位を検出することで、各関節に発生させる目標トルクが算出する構成としてもよい。
【0116】
また、足底部には、床反力センサを搭載し、接触を想定する足底部が実際に接触しているかどうかを判定したり、ヤコビ行列に含まれるモデル誤差を修正するために補助的に使用する構成としてもよい。
【0117】
また、バックパック101内には制御装置の他、空圧制御ためのバルブおよびリニアモータのドライバを内蔵している。
【0118】
また、バックパック101内に、バッテリーと圧搾した空気ボンベ(またはCO
2ガスボンベでもよい)、レギュレータを搭載し、電源ラインとエア供給が断絶した場合に備え、短時間の自律駆動を可能にする構成であってもよい。
【0119】
あるいは、バックパック101は、バッテリーを搭載し、モータ駆動用の電源およびコンプレッサ内蔵する構成であってもよい。
【0120】
図13は、下肢に対する外骨格型ロボットに対する人工筋肉(アクチュエータ装置)の配置の他の例を示す図である。
【0121】
図13に示すように、股関節の屈曲を駆動する人工筋肉として、人間の「腸骨筋+大殿筋」に相当する機能をはたすアクチュエータ装置1002が骨格に対して設けられる。
【0122】
また、股関節の屈曲や膝関節の伸展を駆動する人工筋肉として、人間の「ハムストリングス+大腿直筋」に相当する機能をはたすアクチュエータ装置1004が骨格に対して設けられる。
【0123】
さらに、膝関節の屈曲や膝関節の伸展を駆動する人工筋肉として、人間の「大腿二頭筋短頭+外側広筋」に相当する機能をはたすアクチュエータ装置1006が骨格に対して設けられる。
【0124】
また、膝関節の屈曲を駆動する人工筋肉として、人間の「腓腹筋」に相当する機能をはたすアクチュエータ装置1008が骨格に対して設けられる。
【0125】
図14は、上肢に対する外骨格型ロボットに対する人工筋肉(アクチュエータ装置)の配置の例を示す図である。
【0126】
図14に示すように、肘関節の屈曲および伸展を駆動する人工筋肉として、人間の「上腕二頭筋+上腕三等筋」に相当する機能をはたすアクチュエータ装置1012が骨格に対して設けられる。
【0127】
また、前腕の回旋を駆動する人工筋肉として、人間の「腕橈骨筋」に相当する機能をはたすアクチュエータ装置1016,1018が骨格に対して設けられる。
【0128】
このような構成のより、人間の下肢または上肢の運動をアシストする外骨格型ロボットを構成することが可能である。
【0129】
以上説明したとおり、本実施の形態のアクチュエータ装置によれば、電磁相互作用と流体圧力を出力軸へ伝達する要素と空間を一体化することで、バックドライバブルでありながらも、小型・高出力で力制御が可能である。
【0130】
可動子とピストン(要素)および可動域とチャンバ(空間)の一体化構造により,同体積の高効率の電磁アクチュエータに比べて、高出力を確保できる。
(駆動方式の他の例)
図15は、電磁アクチュエータの駆動方式の変形例を示す断面図である。
【0131】
図15(a)に示すように、電磁コイル部材110としては、コイル212aのみを設け、可動子200には、シリンダの軸方向に直交する方向に磁場を発生する磁力部材(永久磁石)202aを設ける。単相の交流をコイル212aに励磁することにより駆動する。
【0132】
あるいは、
図15(b)のように、磁力部材として、永久磁石202aの代わりに、軟磁性体205を設ける構成とすることも可能である。
【0133】
この場合は、電磁アクチュエータは、ソレノイドアクチュエータとして機能して駆動力を生じることになる。たとえば、磁性体205の少なくとも一部がコイル212aの外部にあるときに、コイル212aを励磁することで、コイル内部への引き込み力を生じさせることができる。ここで、コイル212aは、軟磁性体のケースの中に納められる。
【0134】
図15のような構成の場合も、目標方向へ可動子を駆動する際には、電磁コイル部材の励磁により可動子が相対移動するのと同一の方向へ可動子を駆動するように流体の供給が制御される。
【0135】
図16は、
図15(a)の構成で、単相駆動の場合のコイル電流を説明するための概念図である。
【0136】
図16(a)に示すように、コイル212aに電流を流し、単相で駆動すると、可動子は右方向に駆動され、
図16(b)に示すように、電流の向きを逆転すると、可動子は左方向に駆動される。
【0137】
図17は、
図15(b)の構成で、コイルの発生磁場を説明するための概念図である。
【0138】
コイルに電流を励磁すると、図中の矢印のように磁束が流れる。この時チャンバ106bの部分は空気のため透磁率低く、磁気抵抗が高い。この部分の磁気抵抗を小さくするように可動子が右方向に駆動される。
【0139】
これまでの説明は、シリンダの外周にコイルが設けられ、可動子が永久磁石である構成を基本として、説明してきたが、このような構成に必ずしも限定はされない。たとえば、
i)可動子が電磁コイルであり、シリンダ側に配置される固定子が、所定の異なる方向の磁場を発生させる複数の永久磁石が順次配置された構成であってもよい。
【0140】
ii)また、シリンダも単に単一の円筒の形状であるばかりでなく、外円筒の内部に同一の中心軸を有する内円筒が配置される構成であってもよい。この場合、内円筒の内側および外円筒の外周に所定の異なる方向の磁場を発生させる複数の永久磁石が順次配置され、可動子は、この外円筒と内円筒の間の空間を移動可能な円筒形状の電磁コイルであり、ピストンとしても機能する構成とすることができる。
【0141】
したがって、「磁力部材」との用語は、最も広い意味では、電磁コイルも含むものであってもよい。
【0142】
この構造では、コイルを内外の強力な磁石で挟み込むことで,コイル中に大きな磁束が発生する。また、全てのコイルが常に出力に寄与することができる。さらに、可動子と固定子両方に鉄心を用いるモデルでは電流を励磁しない場合も推力の脈動(ディテント力)が発生するが,可動子がコイルのみであるためこのモデルでは発生しない、という利点がある。
【0143】
本実施の形態のアクチュエータ装置は、電磁・空気圧の両ダイレクトドライブアクチュエータのバックドライバビリティを維持しつつ、電磁力による力制御と作動流体の粘性・コンプライアンス特性とを組み合わせ、外力にやわらかく応答できるリニア駆動のアクチュエータを実現することが可能である。
【0144】
また、本実施の形態の本実施の形態のアクチュエータ装置は、上述したような「対象となる人間の筋骨格系運動の支援(アシスト)」だけでなく、一般的な工業製品の駆動機構への応用することも可能である。
【0145】
また、上述したような「対象となる人間の筋骨格系運動の支援(アシスト)」の構成は、ロボット単体としての利用も可能であり、例えばヒューマノイド型ロボットとしても応用できる。
(実施の形態2)
図1に示した空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1000では、チャンバ106aには、制御弁を有する配管108aを介して、所定の圧力の空気が供給され、または、空気の排気が行われ、チャンバ106bには、制御弁を有する配管108bを介して、所定の圧力の空気が供給され、または、空気の排気が行われる、との構成を説明した。
【0146】
以下に説明する、実施の形態2の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1100では、チャンバ106aとチャンバ106bに、流体圧、たとえば、空気圧を供給する構成の点で、実施の形態1の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1000または1000´の構成とは異なる。
【0147】
以下に説明するように、実施の形態2においても、流体として空気を例にして説明する。
【0148】
図18は、実施の形態2の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1100の断面構造を説明するための図である。
図18は、
図1と対比されるべき図である。
【0149】
以下、主として、
図1との相違点を説明することとし、同一部分には、同一符号を付して説明を繰り返さない。
【0150】
図18を参照して、空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1100では、シリンダ100および電磁コイル部材110とを覆う外筒部400が設けられる。シリンダ100および電磁コイル部材110の外表面と、外筒部400との内表面で囲まれる空間は、気密性を有し、外部からの所定の空気圧の空気を伝送する機能を有する。この点で、この囲まれた空間を「流体伝達路402」と呼ぶことにする。
【0151】
流体伝達路402には、吸入孔410より所定の圧力の空気が供給される。また、流体伝達路402の排気孔420からは、この空気が排出され、後に説明するように、排気孔420から排出された所定の圧力の空気が、空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1100と同様の構成を有する他のアクチュエータ装置1100´の吸気孔に供給される。
【0152】
制御弁部450aおよび制御弁部450bは、それぞれ、配管108aおよび配管108bに対応して設けられる。
【0153】
制御弁部450aは、図示しない制御部に制御されて、所定の空気圧の空気を流体伝達路402からチャンバ106aに供給し、あるいは、チャンバ106aからの空気を排気孔452aより排気する。
【0154】
制御弁部450bも、同様に、図示しない制御部に制御されて、所定の空気圧の空気を流体伝達路402からチャンバ106bに供給し、あるいは、チャンバ106bからの空気を排気孔452bより排気する。
【0155】
制御部は、目標方向へ可動子を駆動する際には、複数個のコイル112a〜112lの励磁により可動子200が相対移動するのと同一の方向へ可動子200を駆動する駆動力を与えるように空気の吸排気を制御する。
【0156】
図19は、空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1100と同種のアクチュエータ装置を、複数個、骨格に対して配置した場合の空気の供給経路を説明するための図である。
【0157】
図19は、
図13と対比される図であり、
図13と同様に、下肢に対する外骨格型ロボットに対する人工筋肉(アクチュエータ装置)の配置の例を示す。
【0158】
図19に示すように、股関節の屈曲や膝関節の伸展を駆動する人工筋肉として、人間の「ハムストリングス+大腿直筋」に相当する機能をはたすアクチュエータ装置1004が骨格に対して設けられ、また、膝関節の屈曲を駆動する人工筋肉として、人間の「腓腹筋」に相当する機能をはたすアクチュエータ装置1008が骨格に対して設けられる。
【0159】
また、股関節の屈曲を駆動する人工筋肉として、人間の「腸骨筋+大殿筋」に相当する機能をはたすアクチュエータ装置1002が骨格に対して設けられ、さらに、膝関節の屈曲や膝関節の伸展を駆動する人工筋肉として、人間の「大腿二頭筋短頭+外側広筋」に相当する機能をはたすアクチュエータ装置1006が骨格に対して設けられる。
【0160】
アクチュエータ装置1004の吸気孔410には、チューブAST1を介して、圧縮空気源(たとえば、ボンベ)から圧縮空気が供給され、排気孔420からチューブAST2を介して、アクチュエータ装置1008の吸気孔410に圧縮空気が供給される。たとえば、アクチュエータ装置1008の排気孔420は、封止されているものとする。
【0161】
同様にして、アクチュエータ装置1002の吸気孔410には、チューブAST3を介して、圧縮空気源(たとえば、ボンベ)から圧縮空気が供給され、排気孔420からチューブAST4を介して、アクチュエータ装置1006の吸気孔410に圧縮空気が供給される。たとえば、アクチュエータ装置1006の排気孔420は、封止されているものとする。
【0162】
あるいは、特に限定されないが、たとえば、アクチュエータ装置1004の排気孔420からの空圧を、アクチュエータ装置1002の吸気孔410に供給する構成とし、圧縮空気源からは、チューブAST1のみにより、外骨格型ロボットの一方の下肢に圧縮空気が供給される構成としてもよい。
【0163】
以上の構成により、複数のアクチュエータ装置に空圧を供給する場合に、アクチュエータ装置に個別に空圧を供給する構成と比べて、圧縮空気源からの空圧の供給経路を簡略化することが可能となる。
【0164】
また、圧縮空気源からの空気が電磁コイル部材110の外部に供給される構成となるため、電磁コイル部材110を空冷する効果もある。
(実施の形態3)
図20は、実施の形態3の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1200の断面構造を説明するための図である。
図20は、
図1と対比されるべき図である。
【0165】
実施の形態3においても、流体として空気を例にして説明する。
【0166】
実施の形態1では、シリンダ100は、真っ直ぐな円筒形状であるものとして説明した。
【0167】
ただし、シリンダの形状としては、このようなものに限定されず、たとえば、
図20に示すように、シリンダの軸が、円形に湾曲する構成であってもよい。
【0168】
シリンダ形状が湾曲していることを除いては、実施の形態1の構成と同様であるので、同一部分には同一符号を付して、説明は繰り返さない。
(実施の形態4)
図21は、実施の形態4の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1300の外観を示す図である。
【0169】
空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1300は、回転運動を駆動する。
【0170】
図21を参照して、アクチュエータ装置1300は、互いに同一の径を有する、円筒形のケース101bと円筒形のケース101dとが積層された構成である。ケース101bと101dとの中心部分には、ケース101bの内部の可動子の回転の駆動力を外部に伝達するための出力軸(回転子)201が配置されている。
【0171】
下部のケース101dの内部には、後に説明するように、複数の扇型の芯部材に線材がそれぞれ巻かれた電磁コイルが、出力軸の回りを囲むように配置される。
【0172】
下部のケース101dの底部は、磁性材料からなり円盤状であるバックヨーク材101eでふさがれている。また、下部のケース101dの上部開口と上部のケース101bの下部開口とは、円盤状の隔壁101cで隔離されている。上部のケース101bの上部開口は、上蓋101aでふさがれている。上蓋101aの中心部には、出力軸201が貫通するための円形の開口が設けられており、ベアリング102により出力軸201と開口との間がシールされるとともに、出力軸201が回動可能となっている。後に説明するように、ケース101b内に配管108aおよび108bにより、所定の圧力の空気により空圧を印加できるように、ケース101b、隔壁101cおよび上蓋101aにより気密が保たれる構成となっている。
【0173】
上蓋101a、ケース101b、隔壁101c、ケース101dおよびバックヨーク材101eを総称して、可動子と対比して、固定子150と呼ぶ。
【0174】
図22は、固定子150の内部を説明するための概念図である。
【0175】
また、
図23は、空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1300の構成を説明するための斜視図である。
【0176】
図23においては、アクチュエータ装置1300の内部構造が視認しやすいように、仮想的に、上蓋101aが透明であり、隔壁101cが半透明であるものとして図示している。
【0177】
図22(a)は、バックヨーク材101eを上面から見た図である。バックヨーク材101eの中央には、出力軸201を回動自在に支持するための軸受け152が設けられる。
【0178】
図22(b)は、ケース101dの内部を上面から見た図である。
【0179】
図22(b)および
図23に示されるように、上述したとおり、ケース101dの内部には、複数の扇型の芯部材に線材がそれぞれ巻かれた電磁コイル112a〜112lが、出力軸201の回りを囲むように配置される。
【0180】
電磁コイル112a〜112lには、特に限定はされないが、たとえば、3相交流UVWが印加されて励磁され、可動子を駆動する。
【0181】
図22(c)は、ケース101bの内部を上面から見た図である。
【0182】
図22(c)および
図23に示されるように、ケース101bの内部には、上面から見た形状が扇型である可動子200(回転運動をすることから、以下「ロータ200」と呼ぶ)が設けられ、ロータ200は出力軸201と一体となって回転するように構成される。ロータ200内には、たとえば、2つの扇形の永久磁石202aと202bが隣り合って設けられる。永久磁石202aと202bは、たとえば、単一の磁性部材に対して、以下に説明するような磁場方向となるように、領域ごとに着磁することで形成されてもよい。永久磁石202aと202bは、出力軸201に平行であって、互いに逆方向となるように着磁されている。
図22(c)では、永久磁石202aの上面側がNで、永久磁石202bの上面側がSとなるように着磁されているものとする。永久磁石の個数は、隣接するものが互いに逆方向に着磁されている限り、2つより多くてもよい。なお、
図22(c)では、図示省略しているが、
図23に示すように、永久磁石202aと202bの上部には、これらを覆う磁性部材158が設けられている。
【0183】
また、ケース101bの内部には、隔壁154が設けられており、ロータ200の一端面と隔壁154の一方面とで囲まれる空間が、第1のチャンバ106a(空気室とも呼ぶ)として機能し、可動子200の他方端面と隔壁154の他方面とで囲まれる空間が、第2のチャンバ106b(空気室とも呼ぶ)として機能する。
【0184】
図22(d)は、上蓋101aを上面から見た図である。上蓋101aの中央には、出力軸201が貫通する円形の開口156が設けられる。
【0185】
図24は、空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1300の動作を説明するための概念図である。
【0186】
図24においても、アクチュエータ装置1300の内部構造が視認しやすいように、仮想的に、上蓋101aが透明であるものとして図示している。
【0187】
また、
図25は、電磁コイル112a〜112lとロータ200との配置の関係を説明するための図である。
【0188】
図25においては、ロータ200と電磁コイルとの位置関係が見やすいように、上蓋101a、ケース101bは、仮想的に取り除き、隔壁101cおよびケース101dは、半透明であるものとして図示している。
【0189】
まず、
図25を参照して、複数個のコイル112a〜112lは、それぞれ、独立に供給される電流で、独立な極性の方向に励磁される。より特定的には、複数個のコイル112a〜112lは、それぞれ、互いに位相の異なる交流電流が流れるように構成されている。たとえば、図示するように、3個おきに、複数個のコイル112a〜112lを、3組に分け、各組ついては、互いに(2π/3)だけ位相のずれた交流電流(対称三相交流、各位相をU,V,Wで表す)を流すなどして、ロータ200に回転の推進力を与える。
【0190】
一方、
図24を参照して、第1のチャンバ106aは、隔壁154の一方面とロータ200の一方端面との間の空間である。第2のチャンバ106bは、隔壁154の他方面とロータ200の他方端面との間の空間である。チャンバ106aには、制御弁を有する配管108aを介して、所定の圧力の空気が供給され、または、空気の排気が行われる。チャンバ106bには、制御弁を有する配管108bを介して、所定の圧力の空気が供給され、または、空気の排気が行われる。
【0191】
以上のような電磁力による回転の駆動と、チャンバ106aおよびチャンバ106bへの空気の吸排気は、図示しない制御部により制御される。制御部は、目標方向へロータ200を駆動する際には、複数個のコイル112a〜112lの励磁によりロータ200が相対移動するのと同一の方向へロータ200を駆動する駆動力を与えるように空気の吸排気を制御する。
【0192】
なお、流体として、圧縮空気のような気体だけではなく、水、油や磁性流体アクチュエータの適用が可能である。水や油を用いればコイル冷却効率が高まり、磁性流体を用いれば、ハードウェアの特性として粘性の制御が実現できる。
【0193】
図26は、電磁コイル112a〜112lおよびロータ200内の磁束の流れを説明するための図である。
【0194】
図26は、
図25において、さらに、電磁コイルおよびロータの一部を切り取った断面を仮想的に示す。
【0195】
電磁コイル112a〜112lが励磁され、ロータ200が回転すると、たとえば、ある時点では、電磁コイル112cで生成される磁束とロータ200内の永久磁石202aの磁束とが同方向となり、永久磁石202aから出た磁束は磁性材料158内を通り、永久磁石202bの上面に入り、永久磁石202bの磁束と電磁コイル112dで生成される磁束とが同方向となり、電磁コイル112dから出た磁束は、バックヨーク材101eを通り、電磁コイル112cに入るというような、磁束の流れが生じる。
【0196】
以上のような構成とすることで、アクチュエータ装置1300においても、実施の形態1と同様にして、電磁力による駆動力の発生機構と空気圧による駆動力の発生機構とを一体化することで小型化を実現しつつ、空圧のみならず電磁力の駆動力も利用することで、時間応答性に優れた高出力を実現することができる。
(実施の形態4の変形例1)
図21〜
図26では、ロータ200側に永久磁石を設け、ケース101d内に電磁コイルを設ける構成として説明した。
【0197】
ただし、ロータ200側に電磁コイルを設け、その上下に、永久磁石を設ける構成とすることも可能である。
【0198】
図27は、このような実施の形態4の変形例1の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1300´の構成を説明するための概念図である。
【0199】
また、
図28は、実施の形態4の変形例1の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1300´の回転軸に対して垂直な断面の構造を説明するための図である。
図28(b)は、
図28(a)中の仮想面Vでの断面を示す。
【0200】
図27(a)を参照して、最下段には、バックヨークを設けることは、実施の形態4と同様である。
【0201】
次に、
図27(b)に示すように、バックヨーク上の第1のケース内には、出力軸201のまわりに、複数の扇型の永久磁石を、磁束方向が出力軸方向であって、隣合う永久磁石で交互に着磁方向が反転するように配置する。
図27(b)では、例示として、8個の永久磁石が交互に並ぶ構成としている。
【0202】
図27(c)に示すように、この第1のケースのさらに上段の第2のケースには、
図23のケース101bと同様に、可動子(ロータ)が回動可能なように設けられる。ロータ内には、UVWの交流が独立に印加可能なように3つの扇型の芯部材にそれぞれ線材を巻いた電磁コイルが設けられている。ただし、電磁コイルの個数は、3個に限られず、より多くの個数であってもよい。
【0203】
第2のケースは、
図23のケース101bと同様に、気密構造となっており、第1および第2の空気室に所定の圧力の空圧を独立に印加する構成となっている。
【0204】
図27(d)に示すように、第2のケース上の第3のケース内には、出力軸201のまわりに、複数の扇型の永久磁石を、磁束方向が出力軸方向であって、隣合う永久磁石で交互に着磁方向が反転するように配置する。
図27(d)では、
図27(b)の構成に合わせて、8個の永久磁石が交互に並ぶ構成としている。
図27(d)の各永久磁石の着磁方向は、
図28に示すように、第1のケース内の対応する位置にある永久磁石とは、同じ方向に着磁されている。
【0205】
図27(e)に示すように、最上段にも、バックヨーク材が上蓋として設けられる。上蓋のバックヨーク材には、中央に出力軸201が貫通する開口が設けられる。
【0206】
このような構成でも、実施の形態4の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1300と同様の効果を奏する。
(実施の形態4の変形例2)
実施の形態4の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1300では、ロータ200内の永久磁石に対して駆動力を発生させる電磁コイル112a〜112l(総称して電磁コイル112と呼ぶことにする)は、ロータ200の格納されるケース101bの下層のケース101d内に設けられる構成であった。
【0207】
図29は、実施の形態4の変形例2の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1302の構成を説明するための図である。
【0208】
図29(a)は、斜視図であり、上蓋101aを仮想的に半透明として示している。
図29(b)は、
図29(a)の構成を上面から見た図である。
【0209】
電磁コイル112は、ロータ200の格納されるケース101bの外周にそって配置される。これに応じて、ロータ200内の永久磁石の着磁方向は、回転軸に垂直な方向(ロータの半径方向)とする。
【0210】
実施の形態4の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1300または実施の形態4の変形例の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1300´、1302は、実施の形態1と同様の制御を行うことで、電磁・空気圧の両ダイレクトドライブアクチュエータのバックドライバビリティを維持しつつ、電磁力による力制御と作動流体の粘性・コンプライアンス特性とを組み合わせ、外力にやわらかく応答できる回転駆動のアクチュエータを実現することが可能である。
【0211】
実施の形態4の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1300または実施の形態4の変形例の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1300´、1302は、
図13や
図14に示したような外骨格型ロボットの関節部分の回転運動のためのアクチュエータ装置として利用することが可能であり、「対象となる人間の筋骨格系運動の支援(アシスト)」に使用できるだけでなく、一般的な工業製品の駆動機構へ応用することも可能である。
【0212】
また、このような「対象となる人間の筋骨格系運動の支援(アシスト)」の構成は、ロボット単体としての利用も可能であり、例えばヒューマノイド型ロボットとしても応用できる。
(実施の形態5)
実施の形態4では、ロータ200は円弧状の運動をするものであった。実施の形態5では、ロータ200が連続回転する構成について、説明する。
【0213】
図30は、実施の形態5の空電ハイブリッド型アクチュエータ装置1400の構成を説明するための概念図である。
【0214】
差渡しの幅が常に一定となる図形は、「定幅図形」と呼ばれる。円は典型的な定幅図形であるが、それ以外にも、定幅図形としては、有名なものに、ルーローの多角形などが知られている。
【0215】
特に、ルーローの三角形をロータの断面形状とするローターリーエンジンが、知られている。この場合、ロータは、ロータを格納するロータハウジングのトロコイド曲線に内接する3葉の内包絡線で構成される。ロータの中心にはロータベアリングを介してエキセントリックシャフトがはめられる丸い穴部があり、その縁にはサイドハウジングのギヤ部とかみ合う内歯の歯型(インターナルギヤ)が設けられている。ロータハウジングは、内側面が2ノードのペリトロコイド曲線というまゆ型である。
【0216】
より一般に、定幅図形の断面形状を有するロータは、そのロータの断面形状に適合する内包絡線形状のハウジング内で、常に、ハウジングの内面と接しながら滑らかに回転することが可能なことが知られている。
【0217】
図30においては、一例として、五角形をもとにする定幅図形の断面形状を有するロータ200を円回転させた軌道に沿ったペリトロコイド曲線を、その内面の断面形状として有するハウジング101b、および、ロータ200による駆動力を外部に伝達するための回転軸201が設けられる。
【0218】
ロータ200の内部には、永久磁石が複数個設けられ、それぞれの永久磁石は隣接する永久磁石とは、着磁方向が逆となるように配置される。
【0219】
出力軸201は、偏心しているため、たとえば、上蓋101aには、出力軸が偏心して回転可能な開口が設けられ、この開口部分ではロータ200の上面側で気密をシールする構成とする。そして、クランク機構によりロータ200の回転の駆動力を外部に伝達する構成とすることができる。
【0220】
この結果、ロータ200の回転方向とは同方向に出力軸201は回転することになる。
【0221】
あるいは、上述したロータリーエンジンの場合と同様に、エキセントリックシャフトにより外部に駆動力を伝達する構成とすることも可能である。
【0222】
このロータ200の回転に合わせて、配管108a〜108bから、それぞれ、所定のタイミングで、所定圧力の空気を供給(給気と呼ぶ)し、あるいは、排気することで、電磁力による駆動力に加えて、空圧による駆動力も生じさせることができる。
【0223】
たとえば、
図30では、ハウジング101bの断面の第1葉に相当する内面とロータ200の外側面とは、第1接触部分で接触している。また、ハウジング101bの断面のこの第1葉に隣接する第2葉に相当する内面とロータ200の外側面とは、第2接触部分で接触している。このようにして、第1接触部分から第2接触部分に至るロータ200の外側面と、対応するハウジング101bの内面によって、空気室106aおよび106bが形成される。このような空気室の体積は、ロータ200の回転に伴って変化する。空気室106a〜106bへ/から、配管108a〜108bにより、所定のタイミングで、給気または排気が行われるように制御される。
【0224】
たとえば、
図30に示した時点では、空気室106bから配管108bにより排気する(図中白矢印)タイミングで、配管108aから空気室106aへ給気する動作が行なわれる(図中黒矢印)。給排気のタイミングを制御することで、上述のとおり、電磁力による駆動力に加えて、空圧による駆動力も生じさせることができる。
【0225】
ここで、給気および排気を行う配管は、ハウジング101bの断面の他の葉にも対応して設ける構成としてもよく、
図30のように、2本に限られるわけではない。
【0226】
なお、
図30では、
図22などと同様に、ロータ200の格納されるハウジング101bの下段に、電磁コイルを設ける構成とする。
【0227】
ただし、上述した実施の形態4の変形例2のように、ロータ200の格納されるハウジング101bの外周に沿って電磁コイルが配置される構成であってもよい。この場合は、ロータ200内の永久磁石の着磁方向は、実施の形態4の変形例2と同様に、回転軸に垂直な方向となる。
【0228】
以上のような実施の形態5の構成により、空電ハイブリッド型アクチュエータ装置に連続回転動作を行わせ、駆動力を外部に取り出すことが可能である。
【0229】
今回開示された実施の形態は、本発明を具体的に実施するための構成の例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲および均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。