(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光半導体装置の電極には、例えば銀めっき層が形成されることがある。この銀めっき層は、大気中に含まれるガスにより腐食して変色する。このような銀めっき層を有する光半導体装置を照明器具として用いたとき、LEDの動作保証時間よりも早く照度が低下する問題があった。特に、電極に形成された銀めっき層が硫化水素ガスにより硫化されると電極が黒色に変色する。従って、電極における反射率が低下して光半導体装置の照度が低下する。更に、発光素子がハイパワー化されると、発光素子が発する熱量が増大し、電極の温度が上昇する。この電極の温度上昇は、電極に形成された銀めっき層の硫化を促進させるおそれがある。
【0005】
従来は、成形体を構成する樹脂として熱可塑性樹脂が用いられていた。この熱可塑性樹脂は銀めっき層の変色よりも早く変色するものであったため、光半導体装置の照度低下の原因として銀めっき層の変色が占める影響は小さかった。しかし、近年、熱可塑性樹脂に代えて熱硬化性樹脂が成形体に用いられてきた。この熱硬化性樹脂の変色は銀めっき層の変色よりも遅い時期に現れる。このため、光半導体装置の照度低下の原因として銀めっき層の変色が占める影響が大きくなってきた。更に、このような光半導体装置に対する硫化水素ガスの評価を規格化する動きがある。
【0006】
そこで、本発明は、銀めっき層の硫化を抑制することが可能な光半導体装置の製造方法及び光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る光半導体装置の製造方法は、表面に銀めっき層が形成された基板と、銀めっき層にボンディングされた発光ダイオードと、を備えた光半導体装置の製造方法であって、銀めっき層を被覆する粘土膜を形成する膜形成工程と、膜形成工程の後に、発光ダイオードと粘土膜で被覆された銀めっき層とをワイヤボンディングして電気的に接続する接続工程と、を有する。
【0008】
本発明の一実施形態に係る光半導体装置の製造方法によれば、膜形成工程においてガスバリア性を有する粘土膜で銀めっき層を被覆するため、銀めっき層の硫化を抑制することができる。これにより、銀めっき層の変色による光半導体装置の照度の低下を抑制することができる。更に、接続工程では、ワイヤボンディングを行うことにより、粘土膜を貫通したボンディングワイヤを銀めっき層に対して電気的に接続して、銀めっき層と発光ダイオードとの導通を確保することができる。その上、本発明に係る光半導体装置の製造方法によれば、膜形成工程の後に接続工程を実施することにより、粘土膜が形成された後にワイヤボンディングが実施されるため、膜形成工程の影響を受けていないボンディングワイヤを得ることができる。また、ボンディングワイヤがない状態で膜形成工程が実施されるため、銀めっき層上に確実に粘土膜を形成することができる。
【0009】
また、本発明の一実施形態では、膜形成工程が、基板の表面側から粘土を溶媒で希釈した粘土希釈液を銀めっき層に塗布した後に粘土希釈液を乾燥させて粘土膜を形成するものとすることができる。粘土希釈液によれば、基板表面側への塗布量又は溶媒に対する粘土の割合を調整することが可能であるため、粘土膜の膜厚を制御することが可能である。これにより、所定の膜厚を有する粘土膜を容易に形成することができる。更に、膜形成工程が接続工程の前に実施されるため、ボンディングワイヤへ粘土希釈液が付着することがない。従って、粘土からボンディングワイヤへの不要なストレスの印可が防止され、ボンディングワイヤの破断を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の一実施形態は、膜形成工程の前に基板の銀めっき層へ発光ダイオードをボンディングするボンディング工程を更に有するものとすることができる。この工程によれば、ボンディング工程を実施する時に銀めっき層上には粘土膜がないため、銀めっき層に対して発光ダイオードを容易にボンディングすることができる。
【0011】
また、本発明の一実施形態は、膜形成工程と接続工程との間に、基板の銀めっき層へ発光ダイオードをボンディングするボンディング工程を更に有するものとすることができる。この工程によれば、発光ダイオードの表面に粘土膜が形成されないため、発光ダイオードの電極に対してワイヤボンディングを容易に実施することができる。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、粘土膜の膜厚が0.01μm以上500μm以下であるものとすることができる。この粘土膜の膜厚によれば、粘土膜におけるクラックの発生を抑制してガスバリア性を確保すると共に、粘土膜の透明性を確保することができる。
【0013】
また、本発明の一実施形態は、接続工程がキャピラリに印可する荷重を60gf以上150gf以下として粘土膜で被覆された銀めっき層にボンディングワイヤを押圧するものとすることができる。この荷重とすれば、粘土膜に対してボンディングワイヤを貫通させて、銀めっき層にボンディングワイヤを確実に接続することができる。
【0014】
また、本発明の一実施形態は、接続工程がキャピラリを振動させて粘土膜で被覆された銀めっき層にボンディングワイヤを押圧するものとすることができる。キャピラリを振動させることにより、粘土膜に対してボンディングワイヤを貫通させて、銀めっき層にボンディングワイヤを一層確実に接続することができる。
【0015】
本発明の一実施形態に係る光半導体装置は、表面に銀めっき層が形成された基板と、銀めっき層にボンディングされた発光ダイオードと、銀めっき層を被覆する粘土膜と、発光ダイオードと銀めっき層とにワイヤボンディングされて、発光ダイオードへ電気的に接続された第1接続部と、銀めっき層へ電気的に接続された第2接続部と、第1接続部から第2接続部まで延びた延在部と、を有するボンディングワイヤと、を備え、延在部が粘土膜から露出している。
【0016】
本発明の一実施形態に係る光半導体装置は、ガスバリア性を有する粘土膜で銀めっき層が被覆されているため、銀めっき層の硫化を抑制することができる。これにより、銀めっき層の変色による光半導体装置の照度の低下を抑制することができる。更に、ボンディングワイヤは、ワイヤボンディングにより銀めっき層に接続されているため、銀めっき層と発光ダイオードとの導通を確保することができる。その上、ボンディングワイヤの延在部が粘土膜から露出し、延在部に粘土膜が付着していないため、粘土膜からボンディングワイヤへの不要なストレスの印可が防止される。従って、ボンディングワイヤの破断を防止することができる。
【0017】
また、本発明の一実施形態は、第2接続部が銀めっき層に接している接続面と接続面の反対側にある露出面を含み、露出面が粘土膜から露出しているものとすることができる。この構成によれば、第2接続部の接続面が銀めっき層に接しているため、ボンディングワイヤと銀めっき層との間で導通を確保することができる。また、露出面が粘土膜から露出し、露出面上には粘土膜が付着していないため、粘土膜からボンディングワイヤへの不要なストレスの印可が防止される。従って、ボンディングワイヤの破断を更に抑制することができる。
【0018】
また、本発明の一実施形態は、基板上に配置されて発光ダイオードを取り囲む光反射部と、光反射部と基板とにより画成された空間に充填されて発光ダイオードを封止する透明封止部と、を更に備え、延在部が透明封止部に接しているものとすることができる。この構成によれば、延在部が直接に透明封止部に接しているため、延在部と透明封止部との間に粘土膜が存在しない。従って、粘土膜から延在部への不要なストレスの印可が防止されるため、ボンディングワイヤの破断を抑制することができる。更に、延在部が透明封止部に接しているため、延在部を保護することができる。
【0019】
また、本発明の一実施形態は、第2接続部が銀めっき層に接している接続面と接続面の反対側にある露出面を含み、露出面が透明封止部に接しているものとすることができる。第2接続部が直接に透明封止部に接しているため、第2接続部と透明封止部との間に粘土膜が存在しない。従って、粘土膜から第2接続部への不要なストレスの印可が防止されるため、ボンディングワイヤの破断を抑制することができる。更に、第2接続部が透明封止部に接しているため、第2接続部を保護することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、銀めっき層の硫化を防止すると共に、ボンディングワイヤの破断を抑制して銀めっき層と発光ダイオードとの導通を確保することが可能な光半導体装置の製造方法及び光半導体装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る光半導体装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0023】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る光半導体装置について説明する。
図1は、第1実施形態に係る光半導体装置の断面を示す図である。
図2は、
図1の一部を拡大した図である。
図3は、
図1に示す光半導体装置の平面図である。第1実施形態に係る光半導体装置1Aは、基板10と、基板10上にボンディングされた発光ダイオードである青色LED30と、青色LED30に電圧を印可するためのボンディングワイヤ34と、青色LED30を取り囲むように基板10上に配置された光反射部であるリフレクタ20と、リフレクタ20の内部空間に充填された透明封止部である透明封止樹脂40と、を備えている。
【0024】
基板10は、絶縁性の基体12と、基体12の表面に形成された配線層13とを有している。配線層13は、基体12上に形成された銅めっき板14と、銅めっき板14上に形成された銀めっき層16とを有している。配線層13は、青色LED30の電極に電圧を印可するために、青色LED30の電極に電気的に接続される。この配線層13は、青色LED30の第1電極30aに電気的に接続される第1の部分13aと、第2電極30bに電気的に接続される第2の部分13bとを有している。第1の部分13bと第2の部分13aとは互いに離間し、電気的に絶縁されている。第1の部分13aと第2の部分13bとの間の隙間には、必要に応じて樹脂やセラミックからなる絶縁部17を形成してもよい。
【0025】
光半導体装置1Aは、銀めっき層16を被覆する粘土膜18を有している。この粘土膜18は、銀めっき層16を覆うことにより銀めっき層16の硫化を抑制するガスバリアである。粘土膜18には、天然粘土又は合成粘土の何れも用いることができ、例えば、スチーブンサイト、ヘクトサイト、サポナイト、モンモリロナイト及びバイデラナイトのうち少なくとも1つ以上を使用することができる。
図4は、粘土膜18の断面を模式的に示す図である。
図4に示すように、天然粘土のモンモリロナイトは、厚さH1が1nm以下であり、厚さH1に直交する方向の長さLが10nm以上1000nm以下である。このように天然粘土のモンモリロナイトは、アスペクト比が大きいため、ガスが粘土膜18を通過して銀めっき層16に到達するまでのパスルートが長くなる。従って、銀めっき層16の硫化を抑制することができる。
【0026】
粘土膜18の膜厚H2は、ガスバリア性と透光性の観点から0.01μm以上500μm以下であることが好ましく、0.03μm以上500μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることが更に好ましく、0.05μm以上10μm以下、0.05μm以上1μm以下であることが更に好ましい。粘土膜18の膜厚H2を0.01μm以上500μm以下とすることで、銀めっき層16に対するガスバリア性と粘土膜18の透明性とを両立させることができる。この場合、粘土膜18の膜厚H2を0.03μm以上500μm以下、0.05μm以上100μm以下、0.05μm以上10μm以下、0.05μm以上1μm以下にすることで、この効果を更に向上させることができる。
【0027】
粘土膜18の膜厚H2は、ワイヤボンディング性の観点から500μm以下であることが好ましく、0.01μm以上500μm以下であることが更に好ましい。このような範囲に設定することにより、良好なワイヤボンディング性を確保することができる。
【0028】
青色LED30は、光半導体装置1Aの光源である。
図1を参照すると、青色LED30の第1電極30aは、導電性を有するダイボンド材32により配線層13の第1の部分13aにダイボンドされている。また、青色LED30の第2電極30bは、ボンディングワイヤ34により配線層13の第2の部分13bに接続されている。
【0029】
リフレクタ20は、青色LED30が発生した光を光半導体装置1Aの外部に向けて反射させる。リフレクタ20は、青色LED30を取り囲むように基板10の表面から立設し、青色LED30を収容する内部空間22を画成している。内部空間22には青色LED30を封止するための透明封止樹脂40が充填されている。
【0030】
リフレクタ20は、白色顔料を含む熱硬化性樹脂からなる。熱硬化性樹脂には、リフレクタ20を容易に形成するために、室温(例えば25℃)で加圧成形可能なものが用いられ、特に、接着性の観点からエポキシ樹脂が好ましい。このような樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。白色顔料には、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン又は酸化ジルコニウムが用いられ、特に、光反射性の観点から酸化チタンが好ましい。
【0031】
透明封止樹脂40は、青色LED30を封止するものであり、リフレクタ20により画成された内部空間22に充填されている。内部空間22に充填される樹脂には、少なくとも青色LED30が発する光の波長を含む波長帯の光を透過するものが用いられる。透明封止樹脂40には、透明性の観点からシリコーン樹脂又はアクリル樹脂を採用することが好ましい。また、透明封止樹脂40は、光を拡散する無機充填材や青色LED30から発生した光を励起光として光半導体装置1Aから白色光を発生させる蛍光体42を更に含んでいてもよい。
【0032】
第1実施形態に係る光半導体装置1Aは、青色LED30の第2電極30bと配線層13の銀めっき層16とを電気的に接続するボンディングワイヤ34を備えている。ボンディングワイヤ34は、青色LED30の第2電極30bにボンディングされた第1接続部35と、銀めっき層16にボンディングされた第2接続部36と、第1接続部35から第2接続部36へ延びた延在部37とを有している。ボンディングワイヤ34には、直径が5μm以上40μm以下の金、銅、又はアルミニウム製のワイヤを用いることができる。
【0033】
第1接続部35は、透明封止樹脂40と接している青色LED30の第2電極30bに接続されているため、第1接続部35も透明封止樹脂40に接している。また、第1接続部35の一部は粘土膜18と接触することなく粘土膜18から露出しており、粘土膜18から露出した第1接続部35の一部には粘土膜18の付着がない。
【0034】
図2に示すように、第2接続部36は、銀めっき層16の表面16aに接している接続面36aと、接続面36aの反対側にある露出面36bとを有している。銀めっき層16の表面16aとボンディングワイヤ34の接続面36aとが接することにより、銀めっき層16とボンディングワイヤ34との導通が確保されている。この接続面36aと銀めっき層16の表面16aとは、ボンディングワイヤ34と銀めっき層16との導通が確保されるように接続されていればよい。そのため、接続面36aの全体が銀めっき層16の表面16aと接していてもよいし、接続面36aの一部が銀めっき層16の表面16aと接していてもよい。例えば、接続面36aと銀めっき層16の表面16aとの間に、粘土膜18の一部が挟まれていてもよい。また、第2接続部36における接続面36aと露出面36bとの間の側面部分の一部又は全部は、粘土膜18に囲まれている。露出面36bの全体は、粘土膜18と接触することなく粘土膜18から露出しており、粘土膜18から露出した露出面36bには粘土膜18の付着がない。
【0035】
延在部37は、透明封止樹脂40内でワイヤループを形成している。そのため、延在部37の側面の全体が透明封止樹脂40に接している。また、延在部37の全体が粘土膜18に接触することなく粘土膜18から露出しており、粘土膜18から露出した延在部37には粘土膜18の付着がない。
【0036】
このように、本実施形態に係る光半導体装置1Aは、ガスバリア性を有する粘土膜18で銀めっき層16の表面16aが被覆されているため、銀めっき層16の硫化を抑制することができる。これにより、銀めっき層16の変色による光半導体装置1Aの照度の低下を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る光半導体装置1Aは、ボンディングワイヤ34がワイヤボンディングにより銀めっき層16に固着され、第2接続部36の接続面36aが銀めっき層16の表面16aに接している。これにより、ボンディングワイヤ34と銀めっき層16との間で導通を確保することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る光半導体装置1Aは、ボンディングワイヤ34の第1接続部35、露出面36b及び延在部37が透明封止樹脂40に接して粘土膜18の付着がないため、粘土膜18からボンディングワイヤ34への不要なストレスの印可が防止される。従って、ボンディングワイヤ34の破断を防止することができる。
【0039】
図5を参照して、光半導体装置1Aの製造方法について説明する。
図5に示すように、光半導体装置1Aの製造方法は、準備工程S10と、銀めっき層16を被覆する粘土膜18を形成する膜形成工程S20と、青色LED30を固定するボンディング工程S30と、粘土膜18で被覆された銀めっき層16と青色LED30とをワイヤボンディングして電気的に接続する接続工程S40と、リフレクタ20の内部空間22に透光性樹脂である透明封止樹脂40を充填する充填工程S50と、を有する。
【0040】
準備工程S10では、表面に銀めっき層16が形成された基板10と基板10に固定されたリフレクタ20を備えた生産物を準備する。まず、基体12に銅めっき板14が設けられた基板を準備する(工程S11)。次に、銅めっき板14上に銀めっき層16を形成する(工程S12)。そして、銀めっき層16上にリフレクタ20を固定する(工程S13)。
【0041】
準備工程S10の後に、膜形成工程S20を実施する。はじめに、粘土を溶媒で希釈した粘土希釈液を作成する。まず、超純水に粉末のモンモリロナイトを混合して半透明溶液を作成して撹拌する。次に、イソプロピルアルコールを撹拌後の半透明溶液に投入して更に撹拌することにより、粘土希釈液が作成される。なお、溶媒における水とイソプロピルアルコールの比率は、例えば9:1である。溶媒としてイソプロピルアルコールを投入することにより、粘土希釈液を乾燥させるときに生じ得る粘土膜18のムラを抑制し、粘土膜18の膜厚H2を均一に近づけることができる。続いて、粘土希釈液をリフレクタ20の内部空間22に塗布する。本実施形態では、内部空間22に粘土希釈液を滴下又は散布することにより、内部空間22に粘土希釈液が塗布される。このとき、粘土希釈液が内部空間22に露出した銀めっき層16の全面を覆うように滴下量又は散布量を調整する。そして、粘土希釈液の溶媒を乾燥させる。例えば、粘土希釈液を塗布した生産物を70℃の環境に5分間曝すことにより乾燥させる。以上の工程により、粘土希釈液で覆われた領域の全体に、粘土膜18が形成される。
【0042】
なお、本実施形態の粘土膜18の厚さH2は0.01μm以上500μm以下であるため、透光性を有している。このため、内部空間22に露出する銀めっき層16以外の領域上に粘土膜18が形成されてもよい。例えば、リフレクタ20の内壁面20a上に粘土膜18が形成されてもよい。これによれば、銀めっき層16を確実に粘土膜18で覆うことが可能な量の粘土希釈液を塗布することが可能となる。従って、銀めっき層16のみを被覆するように粘土希釈液の塗布量を調整する必要がなく、少なくとも銀めっき層16上に粘土膜18を形成することができる量よりも多くなるように粘土希釈液の塗布量を調整すればよいため、粘土膜18を容易に形成することができる。
【0043】
膜形成工程S20の後に、ボンディング工程S30を実施する。ボンディング工程S30では、青色LED30を銀めっき層16上に導電性のダイボンド材32を介して固定する。この工程により、青色LED30の第1電極30aと配線層13の第1の部分13aとが互いに電気的に接続される。
【0044】
ボンディング工程S30の後に、接続工程S40を実施する。接続工程S40は、第1固着工程S41と、ワイヤループ工程S42と、第2固着工程S43とを有している。この接続工程S40に用いられるワイヤボンディング装置には、公知のものを用いることができる。ワイヤボンディング装置は、ボンディングワイヤ34が挿通されるキャピラリ(図示せず)を備えている。キャピラリを所定の位置に移動させた後に降下させて、ボンディングワイヤ34を青色LED30の電極又は粘土膜18が形成された銀めっき層16に押し付けることにより、ボンディングワイヤ34が固着される。この工程により、ボンディングワイヤ34と青色LED30の第2電極30bとが互いに電気的に接続される。
【0045】
第1固着工程S41では、第1接続部35を形成し、ボンディングワイヤ34を青色LED30の第2電極30bに固着させる。この第1固着工程S41には、ボールボンディング又はウエッジボンディングのいずれかの方法が用いられる。本実施形態では、青色LED30の表面には粘土膜18が形成されていないため、公知の条件によりボンディングワイヤ34を青色LED30の第2電極30bに固着することができる。次に、ワイヤループ工程S42を実施する。ワイヤループ工程S42では、ボンディングワイヤ34を繰り出しつつキャピラリを移動させて、ワイヤループを形成する(
図1参照)。
【0046】
第2固着工程S43では、第2接続部36を形成し、ボンディングワイヤ34を銀めっき層16に固着させる。まず、ワイヤループを形成したボンディングワイヤ34を粘土膜18上に配置し、銀めっき層16に向けて押圧する。このとき、キャピラリには、60gf以上150gf以下の荷重が印可されることが好ましい。この荷重とすれば、粘土膜18に対してボンディングワイヤ34を貫通させて、銀めっき層16にボンディングワイヤ34を確実に接続することができる。また、荷重を印可しているときにキャピラリを、超音波帯域である80kHz以上160kHz以下の周波数帯で振動させることが好ましい。この振動の印可により、粘土膜18に対してボンディングワイヤ34を貫通させて、銀めっき層16にボンディングワイヤ34を一層確実に接続することができる。そして、ボンディングワイヤ34が銀めっき層16に固着された後、キャピラリがボンディングワイヤ34を保持した状態で、キャピラリを上昇させてボンディングワイヤ34のテールを切断する。この工程により、ボンディングワイヤ34と配線層13の第2の部分13bとが互いに電気的に接続される。
【0047】
続いて、充填工程S50を実施する。充填工程S50では、リフレクタ20の内部空間22に透明封止樹脂40を充填し、この樹脂により青色LED30と、ボンディングワイヤ34の第1接続部35、第2接続部36及び延在部37とを封止する。以上の工程により、光半導体装置1Aが製造される。
【0048】
このように、本実施形態に係る光半導体装置1Aの製造方法によれば、膜形成工程S20においてガスバリア性を有する粘土膜18で銀めっき層16を被覆するため、銀めっき層16の硫化を抑制することができる。これにより、銀めっき層16の変色による光半導体装置1Aの照度の低下を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る光半導体装置1Aの製造方法によれば、接続工程S40では、ワイヤボンディングを行うことにより、粘土膜18を貫通したボンディングワイヤ34を銀めっき層16に対して電気的に接続して銀めっき層16と青色LED30との導通を確保することができる。
【0050】
ところで、
図6は比較例に係る製造方法により製造した光半導体装置の一部を拡大したSEM像である。本実施形態に係る製造方法では膜形成工程S20を実施した後に接続工程S40を実施するが、比較例に係る製造方法では接続工程S40を実施した後に膜形成工程S20を実施する点で本実施形態に係る製造方法と相違する。すなわち、比較例に係る製造方法では、膜形成工程S20を実施するときに青色LED30と銀めっき層16とに接続されたボンディングワイヤ34が存在している。この状態で銀めっき層16に対して粘土希釈液を塗布した場合にはボンディングワイヤ34にも粘土希釈液が付着する。そして、延在部37に粘土希釈液が付着した状態で粘土希釈液を乾燥させると、
図6に示すように、ボンディングワイヤ34の延在部37に粘土膜が付着し、粘土希釈液の組成や濃度によっては、延在部37に付着した粘土膜37aが幕状に広がることもある。この延在部37に付着した粘土膜37aは、ボンディングワイヤ34に対して不要なストレスを与えるため、ボンディングワイヤ34が破断する虞がある。
【0051】
一方、本実施形態に係る光半導体装置1Aの製造方法によれば、膜形成工程S20が接続工程S40の前に実施されるため、ボンディングワイヤ34へ粘土希釈液が付着することがなく、ボンディングワイヤ34への粘土膜18の付着が防止される。従って、粘土膜18からボンディングワイヤ34への不要なストレスの印可が防止され、ボンディングワイヤ34の破断を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る光半導体装置1Aの製造方法によれば、ボンディングワイヤ34がない状態で膜形成工程S20が実施されるため、銀めっき層16上に確実に粘土膜18を形成することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る光半導体装置1Aの製造方法によれば、粘土希釈液を用いて粘土膜18を形成する。粘土希釈液は、基板10への塗布量及び溶媒に対する粘土の割合を調整することが可能であるため、粘土希釈液を用いて粘土膜18を形成することで粘土膜18の膜厚H2を制御することが可能である。これにより、所定の膜厚H2を有する粘土膜18を容易に形成することができる。
【0054】
その上、本実施形態に係る光半導体装置1Aの製造方法によれば、膜形成工程S20と接続工程S40との間に、ボンディング工程S30を実施する。これら工程の順番によれば、青色LED30の表面に粘土膜18が形成されないため、青色LED30の第2電極30bに対してボンディングワイヤ34のボンディングを容易に実施することができる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る光半導体装置について説明する。
図7は、第2実施形態に係る光半導体装置の断面を示す図である。
図8は、
図7の一部を拡大した図である。第2実施形態に係る光半導体装置1Bは、銀めっき層16の表面16a、青色LED30の表面を覆う粘土膜19と、粘土膜19を貫通して青色LED30の第2電極30bに固着された第1接続部38を有するボンディングワイヤ34と、を備えている点で第1実施形態に係る光半導体装置1Aと相違する。その他の構成は、光半導体装置1Aと同様である。
【0056】
光半導体装置1Bは、銀めっき層16を被覆すると共に青色LED30を被覆する粘土膜19を有している。この粘土膜19は、青色LED30の表面及び側面にも形成されているほかは、粘土膜18と同様の構成を有する。
【0057】
光半導体装置1Bは、青色LED30の第2電極30bと配線層13の銀めっき層16とを電気的に接続するボンディングワイヤ34を備えている。ボンディングワイヤ34は、青色LED30の第2電極30bにボンディングされた第1接続部38と、銀めっき層16にボンディングされた第2接続部36と、第1接続部35から第2接続部36まで延びた延在部37とを有している。
【0058】
図8に示すように、第1接続部38は、粘土膜19が形成された青色LED30の第2電極30bに接続されている。第1接続部38は、青色LED30の第2電極30bに接している接続面38aと、接続面38aの反対側にある露出面38bとを有している。第2電極30bと接続面38aとが接することにより、青色LED30の第2電極30bとボンディングワイヤ34との導通が確保されている。この接続面38aと第2電極30bとは、ボンディングワイヤ34と第2電極30bとの導通が確保されるように接続されていればよい。そのため、接続面38aの全体が第2電極30bと接していてもよいし、接続面38aの一部が第2電極30bと接していてもよい。例えば、接続面38aと第2電極30bとの間に、粘土膜19の一部が挟まれていてもよい。また、第1接続部38における接続面38aと露出面38bとの間の側面部分の一部又は全部は、粘土膜19に囲まれている。露出面38bの全体は、粘土膜19と接触することなく粘土膜19から露出しており、露出面38bには粘土膜19の付着がない。
【0059】
次に、第2実施形態に係る光半導体装置1Bの製造方法について説明する。
図9は、第2実施形態に係る光半導体装置1Bの製造工程を示すフローチャートである。
図9に示すように、第2実施形態に係る製造方法は、膜形成工程S20の前にボンディング工程S30を実施する点で、第1実施形態に係る光半導体装置1Aの製造方法と相違する。このため、第1固着工程S41bでは、粘土膜19が形成された第2電極30bにボンディングワイヤ34を固着する。その他の工程は、第1実施形態に係る製造方法と同様である。なお、第1固着工程S41bにおけるボンディング条件は、第2固着工程S43において粘土膜19が形成された銀めっき層16にボンディングワイヤ34を固着するときのボンディング条件と同じである。
【0060】
第2実施形態に係る光半導体装置1Bの製造方法によれば、ボンディング工程S30を実施する時に銀めっき層16の表面16a上には粘土膜18がない。従って、銀めっき層16に対して青色LED30を容易にボンディングすることができる。
【0061】
以上、本発明の一側面の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0062】
例えば、上記実施形態では、発光ダイオードとして青色LEDを採用するものとして説明したが、青色以外の光を発生する発光ダイオードを採用してもよい。
【実施例】
【0063】
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
実施例1では、粘土層を貫通して銀めっき層に固着されたボンディングワイヤが機械的及び電気的に接続されているかを確認した。実施例1では、銀めっき層上に粘土膜が形成された第1試験片と第2試験片を備え、それぞれの試験片が互いに電気的に絶縁された試験体を準備した。実施例1のそれぞれの試験片には、銀めっき層に粘土希釈液を5回滴下して厚さ700nmの粘土膜を形成した。また、第1試験片にボンディングワイヤの一端をボンディングし、第2試験片にボンディングワイヤの他端をボンディングした。ワイヤボンディングの実施条件は、キャピラリに印可する荷重を80gfとし、キャピラリを振動させる周波数を120kHzとした。なお、実施例1では、直径が25μmの田中電子工業株式会社製(SR−25)のワイヤを用いた。
【0065】
ボンディングワイヤと銀めっき層との機械的な接続は、引張試験を実施して各試験片からボンディングワイヤが剥がれたときの引張荷重をプル強度として評価した。引張試験では、延在部にフックを引掛けた後にフックを上方に移動させることによりボンディングワイヤに引張荷重を与えた。また、ボンディングワイヤと銀めっき層との電気的な接続は、第1試験片と第2試験片との間の導通抵抗を測定して評価した。その結果、
図10に示すようにプル強度は5.2gfであり、導通抵抗は0.2Ωであった。
【0066】
[実施例2]
実施例2では、銀めっき層に粘土希釈液を10回滴下して厚さ1800nmの粘土膜を形成した点を除き、実施例1と同じ条件とした。そして、実施例1と同様の評価を行った。その結果、
図10に示すようにプル強度は5.8gfであり、導通抵抗は0.3Ωであった。
【0067】
[比較例]
比較例は、銀めっき層上に粘土膜を形成していない点を除き、実施例1と同じ条件とした。そして、実施例1と同様の評価を行った。その結果、
図10に示すようにプル強度は7.7gfであり、導通抵抗は0.2Ωであった。
【0068】
上述した結果より、粘土膜により被覆された銀めっき層に対して、ボンディングワイヤが問題なく機械的及び電気的に接続されていることが確認された。また、粘土膜を貫通させて銀めっき層にボンディングワイヤを固着した場合(実施例1,2)と、粘土膜が形成されていない銀めっき層にボンディングワイヤを固着した場合(比較例)とでは、プル強度及び導通抵抗において有意な差異がないことが確認された。
【0069】
[実施例3]
次に、実施例3では、粘土膜を貫通して銀めっき層にワイヤボンドされた第2接続部の断面の状態を確認した。
図11〜
図15は、第2接続部のSEM像である。まず、銀めっき層上に形成された粘土膜の厚さが3μmである試験体を準備した。ワイヤボンディングの実施条件は、キャピラリに印可する荷重を80gfとし、キャピラリを振動させる周波数を120kHzとした(
図11の(a)部参照)。なお、実施例3では、直径が25μmの金製のワイヤを用いた。次に、第2接続部に対して集束イオンビーム加工(FIB加工)を実施し第2接続部の断面を形成した(
図11の(b)部参照)。
【0070】
図12は、
図11の(b)の領域Aを拡大したSEM像である。層L1が銅めっき板であり、層L2が銀めっき層である。そして、層L3が粘土膜である。領域A1を確認すると、ボンディングワイヤWと銀めっき層L2とが直接に接触していることがわかった。一方、領域A2を確認するとボンディングワイヤWと銀めっき層L2との間に粘土膜L3が残留していることがわかった。
【0071】
図13の(a)部及び
図13の(b)部は、
図12に示す領域A1の一部を更に拡大したSEM像である。
図13の(c)部及び
図13の(d)部は、
図12に示す領域A2の一部を更に拡大したSEM像である。
図13の(a)部のSEM像によれば、銀めっき層L2とボンディングワイヤWとの間に粘土膜L3が存在せず、ボンディングワイヤWの接触面が銀めっき層に直接に固着されていることが確認された。また、ボンディングワイヤWの結晶に僅かな変形があることが確認された。
図13の(b)部のSEM像では、
図13の(a)部のSEM像と同様に、銀めっき層L2とボンディングワイヤWとの間に粘土膜L3が存在せず、ボンディングワイヤWの接触面が銀めっき層に直接に固着されていることが確認された。また、ボンディングワイヤWの結晶に僅かな変形があることが確認された。一方、
図13の(c)部のSEM像では、銀めっき層L2とボンディングワイヤWとの間に粘土膜L3が存在することが確認された。この領域では、ボンディングワイヤWの接触面と銀めっき層とは部分的に固着されていることが確認された。また、ボンディングワイヤWの結晶の変形は確認されなかった。
図13の(d)部のSEM像は、第2接続部の中心付近の断面である。そのため、ボンディングワイヤWは確認されなかった。
【0072】
図14は、
図11の(b)部の領域Bを拡大したSEM像である。層L1が銅めっき板であり、層L2が銀めっき層である。そして、層L3が粘土膜である。領域B1,B3を確認するとボンディングワイヤWと銀めっき層L2との間に粘土膜L3が残留していることがわかった。一方、領域B2を確認すると、ボンディングワイヤWと銀めっき層L2とが部分的に接触していることがわかった。
【0073】
図15の(a)部は、
図14に示す領域B1の一部を更に拡大したSEM像である。
図15の(b)部は、
図14に示す領域B2の一部を更に拡大したSEM像である。
図15の(c)部は、
図14に示す領域B3の一部を更に拡大したSEM像である。
図15の(a)部のSEM像によれば、ボンディング痕がわずかに確認されるものの、ボンディングワイヤWの存在は確認できなかったが、粘土膜が点在していることが確認された。
図15の(c)部のSEM像は、ボンディングワイヤが固着されていない領域の断面を示している。ボンディングされていない領域では、均一な膜厚を有する粘土膜が形成されていることが確認された。
【0074】
図11〜
図15に示したSEM像によれば、銀めっき層とボンディングワイヤとは、部分的に粘土膜を含んだ状態で互いに固着されていることがわかった。