(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前処理部は、複数の貫通孔が厚み方向に形成されて、前記処理液又は前記被検液が該貫通孔を通過するように配置された第2のフィルタを備える請求項1に記載の細胞捕捉デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0017】
(細胞捕捉装置)
図1は第1実施形態に係る細胞捕捉デバイスを含む細胞捕捉装置の構成を説明する図である。細胞捕捉装置は、被検液である血液をフィルタによってろ過することで血液中に含まれる細胞を捕捉する装置である。また、フィルタにより捕捉された細胞について、染色液等の処理液を用いて染色することで、細胞の特定及び細胞の個体数のカウント等が行われる。以下の実施形態では、被検液が血液であり、捕捉対象となる細胞が血中循環がん細胞(Circulating Tumor Cell:CTC)である場合について説明するが、この点については限定されない。例えば、被検液としては、血液、リンパ液等が挙げられ、捕捉対象となる特定の細胞としては、CTCを始めとする希少細胞、循環内皮細胞(Circulating endothelial cells:CEC)、血管循環内皮前駆細胞(Circulating endothelial progenitor cells:CEP)等が挙げられる。
【0018】
図1に示すように、細胞捕捉装置100は、細胞を捕捉するためのフィルタが内部に設けられた細胞捕捉デバイス1、細胞捕捉デバイス1に対して処理液(試薬)を供給するための軟質チューブからなる処理液流路3、細胞捕捉デバイス1に対して血液を供給するための軟質チューブからなる被検液流路4が設けられている。処理液流路3の上流側には、互いに異なる処理液(試薬)が入れられている複数の処理液収納容器5が設けられる。処理液収納容器5に投入される処理液としては、細胞を染色するための染色液、フィルタに捕捉された細胞等を洗浄するための洗浄液、細胞を変性・変質・腐敗等から保護するための固定液、染色液が細胞内部に浸透できるようにするための透過液等が挙げられる。
図1に示す複数の処理液収納容器5は、封止部材5Aによって封止されているが、この構成は特に限定されない。
【0019】
複数の処理液収納容器5に対してはそれぞれ軟質チューブ6に接続された硬質チューブ6Aが挿入されて個別の流路(処理液流路)を形成している。そして、これらの流路が選択バルブ8に対して接続されており、選択バルブ8を回転させることにより処理液流路3に対して接続する処理液が選択され、選択された処理液が収容された処理液収納容器5に対して挿入された硬質チューブ6A及び軟質チューブ6と処理液流路3とが接続される。なお、硬質チューブ6A及び軟質チューブ6の構成は適宜変更することができる。
【0020】
細胞捕捉デバイス1に対して接続する被検液流路4には、内部に被検液として特定の細胞を含んだ血液が納められた血液収納容器10(被検液収納容器)が接続されている。細胞捕捉デバイス1に対しては、処理液及び血液を同時に供給するのではなく、いずれか一方を供給する構成となっている。処理液及び血液のいずれの液体を供給するかの制御は処理液流路3及び被検液流路4のそれぞれに対して取り付けられたバルブ21、22によって切り替える。例えば、血液を細胞捕捉デバイス1に対して供給する場合は、バルブ21を閉とし、バルブ22を開とする。バルブ21、22としては、軟質チューブを加圧変形させてその流れを遮断するピンチバルブを用いることができる。
【0021】
また、細胞捕捉デバイス1に対して処理液及び血液のうちのいずれかの液体を供給する場合、細胞捕捉デバイス1の下流側の軟質チューブからなる排出流路9上に設けられたポンプ24の駆動によって目的の液体を吸引することで液体の供給が行われる。ポンプ24は回転数変化により流路中の液体の流速を変えることが可能な構造となっている。ポンプ24としては、例えば軟質チューブに対する加圧による蠕動点を順次移動させる蠕動ポンプ(ペリスタルティックポンプ)を用いることができる。ポンプ14の駆動により、処理液、血液等の液体は処理液流路3又は被検液流路4の内部を細胞捕捉デバイス1に向かう方向に流れ、細胞捕捉デバイス1に供給される。そして、細胞捕捉デバイス1を通過した液体は、排出流路9を経て廃液容器16に流れ込む構造となっている。これらの構造により、血液中の細胞が細胞捕捉デバイス1内の流路上に設けられたフィルタによって捕捉されると共に、染色液により細胞が染色される。
【0022】
細胞捕捉デバイス1には、処理液又は被検液の前処理を行う前処理部が少なくとも1つ設けられる。具体的には、細胞捕捉デバイス1へ処理液を供給する処理液流路3に接続される流路上に処理液の前処理を行う第1前処理部が設けられると共に、細胞捕捉デバイス1へ血液を供給する被検液流路4に接続される流路上に、被検液の前処理を行う第2前処理部が設けられる。細胞捕捉デバイス1の詳細については後述する。
【0023】
上記の各部の制御は、制御部30(選択手段)による制御により行われる。具体的には、選択バルブ8、バルブ21、22、23及びポンプ24の駆動は、制御部30からの指示によって行われる。制御部30には、上記の各部についての駆動、停止等の制御を可能とするプログラムを入力するためのプログラム入力機能が備えられていて、これにより入力されたプログラムによって上記したように各機器を順に動作させる駆動機構が付加されている。制御部30(選択手段)によって液体を流すラインが選択され、その選択結果に基づいて、制御部30から上記のバルブの開閉及びポンプの駆動(送液手段)に係る指示が各部に対して行われる。
【0024】
(細胞捕捉デバイス)
次に、第1実施形態に係る細胞捕捉デバイス1について、
図2〜
図6を用いて説明する。
図2は、細胞捕捉デバイスの外観斜視図であり、
図3は、細胞捕捉デバイスの正面からの構成図であり、
図4は、細胞捕捉デバイスの上面からの構成図であり、
図5及び
図6は、細胞捕捉デバイスの分解斜視図である。
【0025】
細胞捕捉デバイス1は、複数の貫通孔12を有するフィルタ11を含む枠材13を蓋部材50と収納部材60とで挟み込んだ構成とされている。蓋部材50及び収納部材60が、筐体部として機能する。フィルタ11は、蓋部材50及び収納部材60を組み合わせた際にその内部に形成された空間に配置されている。フィルタ11は、例えば金属からなり、その厚み方向に複数の貫通孔12が形成されたものである。
【0026】
細胞捕捉デバイス1の寸法は、作業性及び観察性の観点から、上面視における蓋部材50の一辺の長さが10mm〜100mmであることが好ましく、15mm〜70mmであることがより好ましく、20mm〜30mmであることがさらに好ましい。また、厚みに関しては観察機器の高さ方向の可動範囲の観点から、2mm〜20mmであることが好ましく、3mm〜15mmであることがより好ましく、5〜10mmであることがさらに好ましい。なお、細胞捕捉デバイス1をクリップ等により挟んで補強する場合、上記の厚みにはクリップの厚みは含まれない。
【0027】
フィルタ11に用いられる金属の材質は、金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロム及びこれらの金属の合金が例示できるが、これらに限定するものではない。また、金属は単体で用いてもよく、機能性を付与するために他の金属との合金又は金属の酸化物として用いてもよい。価格又は入手の容易さの観点から、ニッケル、銅、金及びこれらを主成分とする金属を用いることが好ましく、特にニッケルを主成分とする金属が用いられることが好ましい。また、フィルタ57がニッケルを主成分とする材料から形成される場合、ニッケルの表面に金めっきがされていることが好ましい。金めっきによって、フィルタ表面の酸化を防止できるため、捕捉対象の特定の細胞(例えばCTC等)に対する付着性が一様となり、データの再現性を高めることができる。なお、条件が合えば、非金属のフィルタを採用してもよい。
【0028】
フィルタ11の厚みは、3μm〜100μmであることが好ましい。フィルタ11の膜厚を上記の範囲とした場合、フィルタの取り扱いが容易であり、精密加工にも適している。また、フィルタ11において貫通孔12が設けられる領域(これは被検液又は処理液が通過可能な領域に相当する)の大きさは25mm
2〜1000mm
2が好ましい。25mm
2〜400mm
2がより好ましく、25mm
2〜250mm
2が更に好ましい。フィルタ11において貫通孔12が設けられる領域の大きさが1000mm
2を超えると、デッドスペースが多くなる。また、フィルタ11において貫通孔12が設けられる領域の大きさが25mm
2未満だと処理時間が長くなり、フィルタ閉塞等の問題も発生する可能性がある。
【0029】
フィルタ11の貫通孔の開口形状は、楕円、円、長方形、正方形、角丸長方形及び多角形が例示できるが、これらに限定するものではない。角丸長方形とは、端部の角が丸められている長方形のことをいう。角丸長方形の一例として、2つの等しい長さの長辺と2つの半円形からなり、長方形の2つの短辺の外側に長方形の短辺の中点を中心とする半円形状が設けられた形状が挙げられる。なお、捕捉する細胞の種類によって大きさが異なるため、フィルタ57の貫通孔の孔径は、捕捉する細胞の種類に応じて適宜選択することができる。
【0030】
フィルタ11の周囲に設けられる枠材13は、蓋部材50と収納部材60とによって挟み込まれたときに、密封性を保つことができる部材であれば特に限定されず、例えば、シリコーンゴム等を適用することができる。また、密封性を保つという観点において、コーキング剤等を枠材13として適用してもよい。
【0031】
細胞捕捉デバイス1には、軟質チューブで形成された処理液流路3に接続される処理液側導入流路31と、被検液流路4に接続される被検液側導入流路41とが形成される。また、細胞捕捉デバイス1の蓋部材50には、処理液側導入流路31及び被検液側導入流路41と連通してフィルタ11の上方に形成されて液体をフィルタ11の貫通孔12に対して誘導するための空間となる導入領域51とが設けられる。すなわち、本実施形態において「導入流路」とは、流路のうち細胞捕捉デバイス1の内部に設けられた処理液側導入流路31及び被検液側導入流路41を指す。また、「処理液流路」、「血液流路」とは、細胞捕捉デバイス1の処理液側導入流路31及び被検液側導入流路41の上流側にそれぞれ接続される処理液流路3、被検液流路4を指す。
【0032】
細胞捕捉デバイス1において、処理液を導入する処理液側導入流路31上には、処理液の前処理を行うための第1前処理部70が設けられる。また、被検液を導入する被検液側導入流路41上には、被検液の前処理を行うための第2前処理部80が設けられる。以下の説明では、第1前処理部70よりも前段の導入流路を処理液側導入流路31Aとし、第1前処理部70よりも後段の導入流路を処理液側導入流路31Bとすることがある。また、第2前処理部80よりも前段の導入流路を被検液側導入流路41Aとし、第2前処理部80よりも後段の導入流路を被検液側導入流路41Bとすることがある。
【0033】
細胞捕捉デバイス1のうち、収納部材60には、フィルタ11の下方に形成されて中央部の深さが周縁部よりも深く形成され、フィルタ11の貫通孔12を通過した液体を外部に排出するための空間となる排出領域61が設けられる。更に、収納部材60には、排出領域61に対して連通すると共に排出流路9に対して接続され、排出領域61の液体を外部に排出するための排出流路91が設けられる。蓋部材50と収納部材60とにより挟み込まれるフィルタ11に設けられた貫通孔12は、捕捉対象となる細胞が通過できない程度の大きさとされる。
【0034】
細胞捕捉デバイス1に対する処理液流路3、被検液流路4及び排出流路9の取付け位置は、
図2〜
図6に示す位置に制限されない。すなわち、処理液流路3及び被検液流路4は互いに対向して配置される必要はなく、例えば、細胞捕捉デバイス1を構成する4つの側面のうちの1つにおいて処理液流路3及び被検液流路4が接続される構成としてもよい。また、上面に処理液流路3及び被検液流路4が接続される構成とすることもできる。同様に、排出流路9についてもその取付け位置は適宜変更することができる。処理液流路3、被検液流路4及び排出流路9の取付け位置は、細胞捕捉デバイス1の処理液側導入流路31、被検液側導入流路41及び排出流路91に応じて変更されるので、細胞捕捉デバイス1の処理液側導入流路31、被検液側導入流路41及び排出流路91の配置についても適宜変更することができる。また、流路の数についても適宜変更することができる。
【0035】
細胞捕捉デバイス1に設けられる前処理部について、さらに説明する。前処理部は、流路を流れる液体中の気泡の除去を行うために設けられる。上述したように、細胞捕捉デバイス1による測定の被検液は血液等であることから、より少量の被検液で精度よく測定することが求められる。また、被検液又は処理液中に気泡が混入した場合、デバイスに導入する体積の精度が低下する。また、気泡がフィルタ上に滞留した場合には、フィルタ上の導入領域51を十分に活用することができず、フィルタ11において細胞を好適に捕捉することが困難となる可能性がある。そこで、本実施形態における細胞捕捉デバイスでは、処理液側導入流路31上及び被検液側導入流路41上のそれぞれに前処理部を設け、フィルタ11が設けられる導入領域よりも前段で気泡を除去する構成とした。なお、前処理部は、フィルタ11が設けられる導入領域よりも前段であり、且つ、導入領域とは離間して設けられる。すなわち、前処理部と導入領域との間はこれらの領域よりも径が小さい流路によって接続されている。フィルタ及び前処理部は1つの被検液の測定毎に交換する必要がある。このように細胞捕捉デバイス1の内部に細胞を捕捉するためのフィルタ11と被検液又は処理液の前処理を行う前処理部とを備えることによって、複数の被検液の測定を連続的に行う際の作業の効率を飛躍的に高めることができる。また、細胞捕捉装置をよりコンパクトな構成にすることができる。
【0036】
図3、
図5、及び
図6等によって示されるように、細胞捕捉デバイス1において、第1前処理部70は、蓋部材50及び収納部材60によって形成される空間領域として形成される。第1前処理部70は、その径が処理液側導入流路31よりも大きいことを特徴とする。前段の処理液側導入流路31Aと、後段の処理液側導入流路31Bとの間でその径が異なる場合、そのうちの径が大きい方の流路の流路径よりも第1前処理部70の径が大きくなるように設定される。また、流路に気泡が混入する際に第1前処理部70において気泡が滞留できるように、第1前処理部70の容積に応じて変更され、第1前処理部70の容積が1つの気泡の体積の2倍以上とすることが好ましく、5倍以上であることが更に好ましい。具体的には、処理液側導入流路31Aの径が1mmである場合、流路内での気泡の長さが1mm〜3mm程度となる場合がある。したがって、第1前処理部70の容積は、10mm
3以上であることが好ましい。
【0037】
第1前処理部70は、処理液の出口である処理液側導入流路31Bに対して、上方に気泡を貯留する空間領域が形成されていることが好ましい。細胞捕捉デバイス1では、第1前処理部70の上方に上流側の処理液側導入流路31Aが設けられ、処理液側導入流路31Aから第1前処理部70内に処理液が導入される。また、第1前処理部70の下方に処理液側導入流路31Bが設けられる。すなわち、第1前処理部70内において処理液は上方から下方へと移動する。このときに、第1前処理部70は、処理液側導入流路31Bへの入口よりも上方となる位置に設けられるため、処理液が気泡を含んだまま第1前処理部70から処理液側導入流路31Bへ流入することを抑制している。
【0038】
図3等に示すように、処理液側導入流路31Bの導入領域51への導入口(処理液側導入流路31Bの出口)と、処理液側導入流路31Aの第1前処理部70への導入口(処理液側導入流路31Aの出口)とは、略同一の高さとされている。したがって、第1前処理部70よりも後段の処理液側導入流路31Bは、収納部材60側に設けられている入口よりも蓋部材50側に設けられている出口が高くなっている。したがって、処理液側導入流路31Bは、収納部材60、枠材13及び蓋部材50を連通するような開口によって形成される(
図3参照)。なお、処理液側導入流路31Bの形成方法は特に限定されず、例えば、蓋部材50、枠材13及び収納部材60を形成する際の金型に流路に対応する構造を設けることで製造してもよいし、貫通孔を設けた後に貫通孔の一部を栓等で塞ぐことで流路を形成してもよい。
【0039】
なお、第2前処理部80も第1前処理部70と同様に設けられる。すなわち、第2前処理部80は、蓋部材50及び収納部材60によって形成される空間領域として形成される。また、第2前処理部80の上方に上流側の被検液側導入流路41Aの出口(第2前処理部への導入口)が設けられ、被検液側導入流路41Aから第2前処理部80内に処理液が導入される。また、第2前処理部80の下方に被検液側導入流路41Bが設けられる。被検液側導入流路41Bの導入領域51への導入口(被検液側導入流路41Bの出口)と、被検液側導入流路41Aの第2前処理部80への導入口(被検液側導入流路41Aの出口)とは、略同一の高さとされている。したがって、第2前処理部80よりも後段の被検液側導入流路41Bは、収納部材60側に設けられている入口よりも蓋部材50側に設けられている出口が高くなっている。したがって、被検液側導入流路41Bは、収納部材60、枠材13及び蓋部材50を連通するような開口によって形成される(
図3参照)。
【0040】
処理液側導入流路31A、31B及び被検液側導入流路41A、41Bの配置及び形状は、液体をフィルタ11の貫通孔12に対して誘導するための空間となる導入領域51の配置と、第1前処理部70及び第2前処理部80の配置と、によって決定されることから、適宜変更することができる。
【0041】
この細胞捕捉デバイス1は、フィルタ11を含む枠材13を挟んだ状態で、蓋部材50と収納部材60とを重ね合わせることで構成される。このとき、各部材の位置合わせを行った上で、クリップ等で外周側からこれらを固定する構成としてもよいし、これらを熱圧着等により固定する構成としてもよい。そして、処理液側導入流路31、被検液側導入流路41、及び排出流路91に対して、それぞれ処理液流路3、被検液流路4及び排出流路9を接続することで細胞捕捉装置100に対して取り付けられる。
【0042】
細胞捕捉デバイス1を含む細胞捕捉装置100では、処理液収納容器5から供給される処理液は、細胞捕捉デバイス1の第1前処理部70を経てフィルタ11の導入領域51へ供給される。このとき、処理液中の気泡は第1前処理部70の上方へ滞留するため、処理液内から気泡が除去される。気泡が除去された処理液は、細胞捕捉デバイス1内の処理液側導入流路31Bを経て導入領域51、フィルタ11及び排出領域61を経て、排出流路91から細胞捕捉デバイス1外へ排出される。
【0043】
また、血液収納容器10から供給される血液は、細胞捕捉デバイス1の第2前処理部80を経てフィルタ11の導入領域51へ供給される。このとき、処理液中の気泡は第2前処理部80の上方へ滞留するため、処理液内から気泡が除去される。気泡が除去された処理液は、細胞捕捉デバイス1内の被検液側導入流路41Bを経て導入領域51、フィルタ11及び排出領域61を経て、排出流路91から細胞捕捉デバイス1外へ排出される。
【0044】
なお、本発明の実施形態に係る細胞捕捉デバイスは、これらの各装置内及びこれらを接続するために設けられた流路内を、予め洗浄液、生理食塩水、又は純水等で充填した状態で用いることが好ましい。
【0045】
ここで、本実施形態に係る細胞捕捉デバイス1では、処理液側導入流路31上に第1前処理部70を備えると共に、被検液側導入流路41上に第2前処理部80を備える。これにより、第1前処理部70又は第2前処理部80において、処理液又は被検液の内圧が一時的に下がることで、処理液側導入流路31を流れる処理液又は被検液側導入流路41を流れる被検液に混在する気泡が分離して前処理部の空間領域に貯留される。ここで、気泡の比重が液のそれよりも小さいので、分離した気泡は液の上部に移動して貯留される。したがって、第1前処理部70又は第2前処理部80よりも後段に配置されるフィルタ11近傍へ向けて気泡が混在した処理液又は被検液の供給を抑制し、細胞の捕捉に係る処理を再現性よく行うことが可能となる。
【0046】
また、細胞捕捉デバイス1では、第1前処理部70及び第2前処理部80が、フィルタ11が設けられる導入領域との接続部分とは離間して設けられていることで、分離された気泡が導入領域51側へ流れることを抑制していることから、細胞の捕捉に係る処理を再現性よく行うことが可能となる。
【0047】
また、細胞捕捉デバイス1では、フィルタ11が設けられる導入領域51及び排出領域61と、第1前処理部70と、第2前処理部80と、が同一の筐体部(蓋部材50及び収納部材60)に収容されている構成である。この場合、処理液側導入流路31及び被検液側導入流路41の長さをより短くすることができる。この細胞捕捉デバイス1を用いて細胞の捕捉に係る処理を行う場合、気泡の除去の観点からも流路内を全て被検液又は処理液で満たした上で処理を行うことが必要である。したがって、流路が長い構成とすると、結果として測定に必要な液量が増加することが考えられる。これに対して、前処理部を一体化した細胞捕捉デバイス1では、前処理部を設けることによる流路の長大化を防ぐことができる。また、前処理部を設けることによる部品点数の増加を防ぐことができるため、取り扱い性も向上する。さらに、前処理部を別体の構成とした場合と比較して、前処理部を設けるためのコストも抑制することができる。
【0048】
なお、フィルタ11上面における気泡の除去をさらに確実に行う場合には、フィルタ上方の導入領域51における端部(側面同士の境界部及び側面と天面との境界部)が湾曲していることが好ましい。これらの部位に角部があると気泡が残留する可能性がある。したがって、導入領域51上方側の端部を湾曲した形状とすることにより、導入領域51に気泡が貯留することを更に防ぐことができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る細胞捕捉デバイスについて、
図7〜
図11を参照しながら説明する。
図7は、細胞捕捉デバイスの外観斜視図であり、
図8は、細胞捕捉デバイスの正面からの構成図であり、
図9は、細胞捕捉デバイスの上面からの構成図であり、
図10及び
図11は、細胞捕捉デバイスの分解斜視図である。
【0050】
第2実施形態に係る細胞捕捉デバイス1Aが第1実施形態に係る細胞捕捉デバイスと異なる点は以下の点である。すなわち、第1前処理部70と導入領域51との間の処理液側導入流路31B、及び、第2前処理部80と導入領域51との間の被検液側導入流路41Bが筐体部としての蓋部材50及び収納部材60から外方に突出して取り付けられている点と、第1前処理部70及び第2前処理部80に異物除去フィルタ(第2のフィルタ)が設けられている点と、が第1実施形態に係る細胞捕捉デバイス1と相違する。
【0051】
第1実施形態に係る細胞捕捉デバイスは、筐体部の内部に流路が設けられるため、よりコンパクトな形状を実現することができる。一方で、内部の流路構成が複雑となる可能性があるため、製造コストが上昇することが考えられる。第2実施形態に係る細胞捕捉デバイスは、処理液側導入流路31B及び被検液側導入流路41Bについて筐体部の外方を経由する構成とすることで、筐体部の製造コストの低減が図られている。また、処理液側導入流路31B及び被検液側導入流路41Bは、外方を経由する構成とすることで取り外し可能な構成となるため、操作性の向上が図られる。
【0052】
図7〜
図11に示すように、細胞捕捉デバイス1Aでは、処理液側導入流路31B及び被検液側導入流路41Bが蓋部材50及び収納部材60から外方に突出している。処理液側導入流路31B及び被検液側導入流路41Bの取り付け位置(第1前処理部70、第2前処理部80及び導入領域51に対する接続位置)は、細胞捕捉デバイス1と同じである。この場合、処理液側導入流路31B及び被検液側導入流路41Bは、例えば、シリコーンチューブ等によって構成されていてもよいし、金属管等によって構成されていてもよい。このように、処理液側導入流路31B及び被検液側導入流路41Bが外方に突出して取り付けられている場合であっても、第1前処理部70又は第2前処理部80よりも後段に配置されるフィルタ11近傍へ向けて気泡が混在した処理液又は被検液の供給を抑制することができ、細胞の捕捉に係る処理を再現性よく行うことが可能となる。
【0053】
処理液側導入流路31B及び被検液側導入流路41Bがシリコーンチューブ等の柔軟性のある材料によって構成されている場合、例えば、処理液側導入流路31B及び被検液側導入流路41Bを外部から押圧するバルブ機構等を設ける構成とすることもできる。また、外部に突出している処理液側導入流路31B及び被検液側導入流路41Bを蓋部材50及び収納部材60により構成される筐体部から取り外し可能な構成とすることもできる。この場合、フィルタ11を備える筐体部のみを測定装置から取り外して、処理液側導入流路31B及び被検液側導入流路41Bは装置側に取り付けた状態とする等の構成を採用することも可能となる。
【0054】
なお、処理液側導入流路31B及び被検液側導入流路41Bのいずれか一方のみが外方に突出した構成であってもよい。この点に関しては適宜変更することができる。例えば、処理液側導入流路31Bを細胞捕捉デバイス1外に設けることも可能である。すなわち、細胞捕捉デバイス1を取付ける装置側に処理液側導入流路31Bと同等の流体回路を設ける構成とすることができる。この方式を採用することにより細胞捕捉デバイス1の形状を単純化することが可能となる。さらに必要な場合にはこの流路の制御をすることも可能となる。
【0055】
なお、細胞捕捉デバイス1Aでは、第1前処理部70及び第2前処理部80にそれぞれ異物除去フィルタ75、85が設けられている。異物除去フィルタ85の厚み方向に形成されて、被検液が通過するように配置された複数の貫通孔について、その孔径は、フィルタ11の孔径よりも十分大きく且つ捕捉対象の細胞が捕捉されない大きさとされることが好ましい。この場合、被検液中の異物のみを好適に除去することができると共に、捕捉対象の細胞を誤って捕捉することを防止できる。また、処理液が複数の貫通孔を通過するように配置される異物除去フィルタ75については、孔径等に特に制限はなく、処理液中の異物除去が可能であればよいが、細胞の捕捉の妨げとなるような大きさの異物は予め除去されることが好ましい。すなわち、細胞を捕捉するフィルタの孔径と同等又はそれ以下であることが好ましい。
【0056】
異物除去フィルタ75、85に用いられる金属の材質は、金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロム及びこれらの金属の合金が例示できるが、これらに限定するものではない。また、金属は単体で用いてもよく、機能性を付与するために他の金属との合金又は金属の酸化物として用いてもよい。価格又は入手の容易さの観点から、ニッケル、銅、金及びこれらを主成分とする金属を用いることが好ましく、特にニッケルを主成分とする金属が用いられることが好ましい。また、異物除去フィルタ75、85がニッケルを主成分とする材料から形成される場合、ニッケルの表面に金めっきがされていることが好ましい。金めっきによって、フィルタ表面の酸化を防止できるため、異物除去性能を高く維持することができる。また、細胞に対して無害なポリマでフィルタの表面を被覆することが好ましい。ただし、この場合細胞に対する接着性は求められない。
【0057】
第1前処理部70及び第2前処理部80に、それぞれ異物除去フィルタ75、85が設けられている場合、第1前処理部70及び第2前処理部80において異物を除去できるため、フィルタ11における細胞の捕捉に係る処理を再現性よく行うことが可能となる。また、異物除去フィルタ75、85を第1前処理部70及び第2前処理部80に設けることにより、第1前処理部70及び第2前処理部80における気泡の除去効果も向上する。これは、処理液又は被検液が異物除去フィルタ75、85を通過することで、異物除去フィルタ75、85によって気泡の分離が促進されるものと考えられる。したがって、異物除去フィルタ75、85を備える場合、気泡の除去効果が向上し、細胞の捕捉に係る処理の精度も向上する。
【0058】
なお、第2実施形態における細胞捕捉デバイス1では、フィルタ11と異物除去フィルタ75、85とが1枚のシート11Aによって構成されていて、シート11Aの外周に枠材13が設けられている(
図10参照)。このように、フィルタ11、異物除去フィルタ75、85をどのように構成するかは、適宜変更することができる。なお、このように、1枚のシート11Aにより構成する場合、シート11Aの上面側又は下面側で第1前処理部70、第2前処理部80、導入領域51、及び排出領域61が接続することのないように、弾性部材等を更に配置する構成としてもよい。また、第1前処理部70及び第2前処理部80のいずれか一方のみに異物除去フィルタを配置する構成としてもよい。
【0059】
図12は、細胞捕捉デバイス1においてフィルタ部分の構成の変形例を示す図である。
図12では、フィルタ用の開口が3カ所に設けられた枠材13Aに対して、それぞれ貫通孔12を有するフィルタ11B、異物除去フィルタ75A、85Aが設けられたものである。このように、フィルタ、異物除去フィルタの構成については種々の変更をすることができる。
【0060】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る細胞捕捉デバイスについて、
図13〜
図16を参照しながら説明する。
図13は、細胞捕捉デバイスの正面からの構成図であり、
図14は、細胞捕捉デバイスの上面からの構成図であり、
図15及び
図16は、細胞捕捉デバイスの分解斜視図である。
【0061】
第3実施形態に係る細胞捕捉デバイス1Bが第1実施形態に係る細胞捕捉デバイスと異なる点は以下の点である。すなわち、第2前処理部80を備えない点が第1実施形態に係る細胞捕捉デバイス1と相違する。
【0062】
細胞捕捉デバイス1Bは、被検液側導入流路41が第2前処理部を経由することなく直接導入領域51に接続されている。このため、被検液は、第2前処理部等を経由することなく、被検液流路4から導入領域51に導入される。
【0063】
例えば、被検液に関しては気泡が十分に除去されている等の理由から前処理が不要である場合が考えられる。この場合、細胞捕捉デバイス1Bのように、第2前処理部を設けない構成を採用することで、流路をより短くすることができ、被検液の使用量を減らすことができる。このように、複数の導入流路を有する細胞捕捉デバイスにおいて、一部の導入流路上においてのみ前処理部を設ける構成としてもよい。その場合であっても、前処理部を通過した液体からの気泡を除去することができるため、細胞の捕捉に関して再現性を向上させることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明に係る細胞捕捉デバイスは上記に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0065】
例えば、上記実施形態では、細胞捕捉デバイス1が蓋部材50と収納部材60とにより構成されている場合について説明したが、蓋部材50及び収納部材60により構成された筐体部の形状は適宜変更することができる。また、導入流路の数は1以上であればよく、特に限定されない。
【0066】
また、細胞捕捉デバイス1の処理液側導入流路、被検液側導入流路、及び排出流路上にバルブ等をさらに設けて、デバイス内の液の流れを制御する構成としてもよい。