(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図14は、メダルゲーム装置のゲーム空間内にメダルを投入する従来のレール式と呼ばれるメダル投入装置のメダル整列溝周りの部分斜視図である。図中右下の円内は、メダル整列溝周りの縦断面を示す拡大図である。
【0005】
遊技者(プレーヤ)は、投入前のメダル3の面同士を合わせるように積層状に纏めてメダル群3Gを作り、メダル投入装置190のメダル整列溝192に載置する。メダル整列溝192は、メダル3を縦姿勢(側面を上下にした姿勢)で挿入するメダル投入口110の開口部に隣接しており、メダル整列溝192に載置されているメダル群3Gを投入口方向へ押せば、メダル群3Gの端から順に一枚ずつメダル3が投入口へ落下し、ゲーム空間内に投入される。
【0006】
メダルゲームの攻略法の一つとして、ここぞというタイミングで一度に複数枚のメダル3を連続的に投入し、一旦中断して再び次のタイミングで連続投入する手法がある。こうした間欠の連続投入を実現する技として、メダル群3Gを押す力の増減を調整する投入操作法が知られている。具体的には、遊技者はメダル群3をメダル投入口110を挟んでメダル整列溝192とは反対側の壁部111に押しつけるようにする。そして、連続投入する際には、僅かに押しつける力を抜いてメダル投入口110の直上のメダル3を落下させつつ、次のメダルを投入口直上にスライドさせる。そして、再び押しつける力を強めることでメダル投入口110直上のメダル3が落下しないようにする。
【0007】
こうした投入操作法は、一枚ずつメダル3を投入口に挿入するのに比べると圧倒的に投入/中断の切換えのタイムラグが少なく、また素早い連続投入ができる点で優れる。しかし、メダル群3Gを壁部111に押しつける力の加減を習得するにはそれなりの慣れが必要であった。その為、慣れるまでは意図しないタイミングでメダルを投入してしまったり、反対に上手く投入できないといったことが起きる。また、メダル群3Gを押しつける力には、メダルの投入に応じた操作感が乏しいといった問題もあり、意図した枚数のメダルを投入できるようになるには、これまた慣れが必要であった。
【0008】
本発明は、こうした事情を鑑みてなされたものであり、メダルゲーム装置のゲーム空間内へのメダルの連続投入を、より簡単により操作感良く実現することを目的とする。また、メダルの連続投入の一時中断を簡単且つ思い通りに実現することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するための第1の発明は、
メダル投入口(例えば、
図2のメダル投入口110)と、複数のメダルを整列させたメダル群を前記メダル投入口方向へ移動可能なメダル載置部(例えば、
図2のメダル載置部120)と、前記メダル載置部に載置されたメダル群を前記メダル投入口の方向に押し付けるための壁部(例えば、
図2の壁部111)と、を備え、前記メダル載置部は前記メダル群の前記押し付けの際に前記メダル投入口に近づいたメダルN枚(Nは1〜3の何れか)の高さ位置を主載置面から変位させる変位部(例えば、
図2の変位部124)を有し、押し付け力を緩めた際に、当該変位部を越えたメダルが前記メダル投入口から落下することを特徴とするメダル投入装置である。
【0010】
第9の発明は、メダル投入口と、複数のメダルを整列させたメダル群を前記メダル投入口へ移動可能なメダル載置部と、一端部が前記メダル載置部の載置面と連続し、他端部が前記メダル投入口寄りに設けられ、前記一端部から前記他端部に向けてメダルの高さ位置を上昇させる傾斜面を有する変位部と、を備えたメダル投入装置である。
【0011】
第1または第9の発明によれば、メダル投入口に近づいたメダルの載置高さを変位部により変位させることができる。従来のメダル投入装置では、メダル整列溝はストレートにメダル投入口につながっているため、次に投入するメダルを投入口ぎりぎりのところで留めておくことが困難である(
図14参照)。それ故に、メダル投入口110へ一枚ずつメダル3を挿入するか、壁部111へメダル群3Gごと押しつけておいて適当に力を抜くといった投入操作法にならざるを得なかった。
【0012】
しかし、本発明では、メダルをメダル投入口に落下させるには変位部を越える必要がある。つまり、次に投入するメダルを留め置くぎりぎりの境界がそこに存在することになる。メダルが変位部を越えることは、視覚的にも確認できるし、変位部を越えるのに起因してメダル群を押す力になんらかの抵抗感が生じるため、フィードバックに相当する操作感を感じることも可能になる。
【0013】
よって、メダル群3Gを壁部111へ向けて押せばメダルが変位部を越えて次々に連続投入され、メダルが変位部を越えるのを視覚的に或いは操作感から確認することで、何枚のメダルを投入したかが分るようになる。また、メダルが変位部を越えるのを見た視覚或いは感じた操作感を頼りとして力を緩めることで、次のメダルの投入を明確に中断させることも可能となる。間欠的なメダルの連続投入がより簡単により操作感良く実現される。
【0014】
第2の発明は、前記変位部が、前記メダル投入口に近づくにつれて前記主載置面から徐々にメダルを上昇させる傾斜部(例えば、
図4の傾斜部124b)を有する第1の発明のメダル投入装置である。
【0015】
第2の発明によれば、第1の発明と同様の効果が得られるとともに、メダルが傾斜部を登る際に生じる抵抗感がメダル群を押す指の感触へフィードバックし、より分かりやすい良好な操作感を生む。
【0016】
第3の発明は、前記傾斜部が、前記押し付け力を緩めた際に、当該傾斜部に差し掛かっていたメダルが滑落可能な角度を有する第2の発明のメダル投入装置である。
【0017】
第3の発明によれば、第2の発明と同様の効果が得られるとともに、押しつける力を緩めると傾斜部に差し掛かっていたメダルがメダル投入口から離れる方向へ移動し易くなる。よって、坂道を登る途中でアクセルを弱めると自動車が速やかに減速するのと同様に、メダル群を押しつける力をわずかに抜くだけで瞬間的に次のメダルの投入を確実に中断することができる。つまり、操作し易くなる。
【0018】
第4の発明は、前記変位部が、前記メダル投入口側が断崖状の側面を有する、第2又は第3の発明のメダル投入装置である。
【0019】
第4の発明によれば、第2または第3の発明と同様の効果が得られるとともに、変位部を越えたメダルを確実にメダル投入口に落下させることができる。
【0020】
第5の発明は、前記変位部が、前記主載置面より低く、メダル1枚のみ載置可能な棚部(例えば、
図11の棚部140)を有する第1の形態のメダル投入装置である。
【0021】
第5の発明によれば、第1の発明と同様の効果が得られるとともに、メダルが主載置面から棚部に落ち、そこから更にメダル投入口へ入るように姿勢が変化したり移動するのに生じる抵抗感が指先にフィードバックされ、より分りやすく良好な操作感を生む。
より好適には、棚部の棚面の形状を、当該棚部に主載置面から落ちたメダルが直前の縦姿勢から壁部へ傾いだ姿勢へ姿勢変化を促進する形状(例えば、
図11の部分拡大図に示すようなメダル投入口方向へ登る傾斜面など)を有するように構成すると良い。この場合、投入直前のメダルが傾斜姿勢となることで、壁部に向けてメダル群を押す力を緩めれば、確実に次のメダルの投入を止めることができる。また、一旦傾斜姿勢になったメダルが再び縦姿勢に戻ってからメダル落下口に落下するまでにメダルの縁のひっかかりなどにより適当な抵抗感を生み出すことができるので、操作感をより高めることができる。
【0022】
第6の発明は、前記メダル載置部が、前記主載置面に載置されたメダルの外縁に当接する凹凸部(例えば、
図8の凹凸部133)を複数有する、第1〜第5の何れかの発明のメダル投入装置である。
【0023】
第6の発明によれば、第1〜第5の何れかの発明と同様の効果が得られるとともに、メダル載置部とそこに載置されたメダルとの間に適当な引っ掛かりが生まれる。よって、縦姿勢で載置されたメダルが倒れにくくなる。例えば、まだメダル載置部にメダルが残った状態で追加のメダルを補充しようとしたときに、残っていたメダルが倒れてしまい、補充の際にその倒れたメダルを起こしたりする煩わしさが省けるといった効果を生む。つまり、操作性を向上しスムーズな遊技を実現することができる。
【0024】
第7の発明は、前記凹凸部が、当該凹凸部を越えて移動する際のメダルの移動抵抗が、前記メダル投入口方向への移動よりも、その逆方向への移動の方が大きくなる波状の形状を有する第6の発明のメダル投入装置である。
【0025】
第7の発明によれば、第6の発明と同様の効果が得られるとともに、メダルをメダル投入口方向へ移動させる場合には移動抵抗を少なくしてスムーズな操作感を維持したまま、メダル投入口から離れる方向へ移動して倒れそうな場合には移動抵抗でメダルの転倒を抑制することができる。
【0026】
第8の発明は、前記メダル投入口の開口幅を可変する可変部(例えば、
図4の可変部117、シム118、ビス119)、を更に備えた第1〜第7の何れかの発明のメダル投入装置である。
【0027】
第8の発明によれば、第1〜第7の発明の何れかと同様の効果が得られるとともに、メダルゲーム装置で使用されるメダルの厚さが、装置が設置された遊戯施設等によって異なるとしても、メダル投入口の開口幅を可変して対応することができるようになる。
【0028】
第10の発明は、第1〜第9の何れかの発明のメダル投入装置を備えたメダルゲーム装置である。第10の発明によれば、第1〜第9の発明の何れかと同様の効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔第1実施形態〕
本発明を適用した第1の実施形態として、メダルを主たる遊技媒体として使用するいわゆる「プッシャー型」と呼ばれるメダルゲーム装置について説明する。
【0031】
図1は、本実施形態におけるメダルゲーム装置2の構成例を説明するための正面斜め上から見た斜視正面図である。メダルゲーム装置2は、可動テーブルタイプ(又はプッシャータイプとも呼ばれることがある)のメダルゲーム装置としての基本構成を有する。具体的には、メダルゲーム装置2は、境界ガラス4でゲーム空間を画成し、その手前側に操作テーブル6を備える。操作テーブル6の上方には合計2台のメダル投入装置100が備えられており、最大で2人同時にメダルゲームを楽しめるように構成されている。本実施形態のメダル投入装置100は、境界ガラス4を貫通し左右に首振り自在に支持されたレールでメダルを縦姿勢に転がして案内・投入するレール式のメダル投入装置である。
【0032】
ゲーム空間の中央には、ゲームを盛り上げる様々な演出画像を表示するためのフラットパネルディスプレイ8が設置されている。そして、フラットパネルディスプレイ8の下方に、ゲーム空間の奥から手前(遊技者側;
図1の手前側)に向けて可動テーブル10と固定テーブル12とが設けられており、固定テーブル12の手前側には、更にメダル払出口14が開口している。
【0033】
可動テーブル10は、フラットパネルディスプレイ8下端の開口部から手前側(すなわちプレーヤ側)へ延出する略水平なテーブルであって、「プッシャーテーブル」と呼ばれることもある。可動テーブル10は、公知のメダルゲーム装置のそれと同様に、固定テーブル12の上面を滑るようにして、フラットパネルディスプレイ8下端の開口部から出たり引っ込んだりの往復運動をする。すなわち、可動テーブル10はメダル払出口14へ接近及び離隔する往復移動動作を繰り返す。
【0034】
可動テーブル10は、固定テーブル12より一段高くなっており、その前端部と固定テーブル12の上面との隙間はメダル3が可動テーブル10の下に潜り込まない程度に狭く設定されている。また、可動テーブル10の左右は当該テーブルより更に一段高い壁部11によって挟まれている。
【0035】
また、可動テーブル10の前端部には、チャッカー16が設けられている。チャッカー16は、例えばメダル3が可動テーブル10の上面から前端部側へ落下・通過することのできる挿通孔内にメダルを検知するメダル進入検知センサが内蔵されており、当該メダル通過センサがメダルの通過を検知すると進入検知信号を制御基板50へ出力する。
【0036】
固定テーブル12は、装置奥側から手前方向に向けて拡幅する略水平なテーブルである。固定テーブル12の装置奧側の上面に沿って可動テーブル10がスライド移動し、固定テーブル12の装置手前側にメダル払出口14が開口する。固定テーブル12の左右は、可動テーブル10と同様に一段高い壁部11によって囲まれており、可動テーブル10の前端面で押されたメダル3は、メダル払出口14へ向けて押されて移動する。
【0037】
メダル払出口14は、固定テーブル12から落下したメダルを集める横長の漏斗形状を有している。
【0038】
通常、メダルゲーム装置2は、管理者によって予め可動テーブル10及び固定テーブル12の上に多数のメダル3が載置された状態にされている。遊技者(プレーヤ)はメダル投入装置100で新たなメダルをゲーム空間内へ投入して遊ぶ。
【0039】
可動テーブル10が装置奥方向へ移動すると、その上面に載っているメダル3は当初可動テーブル10とともに装置奧方向へ移動する。しかし、可動テーブル10がフラットパネルディスプレイ8の下端開口部から装置内へ潜り込んでその突出面積が減るにつれ、可動テーブル10の上面に載置されていたメダル3は当該下端開口部の縁に当たって移動が制限される。するとそれらのメダルは相対的に可動テーブル10の前側に向かって玉突き状に押され、一部が固定テーブル12の上面に落下・載置されることになる。
【0040】
次いで可動テーブル10が装置手前方向へ移動すると、可動テーブル10から固定テーブル12に落下したメダルを、今度は可動テーブル10の前端面でメダル払出口14の方向へ押すことになる。そして、押されたメダル3はそれぞれがより前方(装置手前側)の他のメダルを押し、当該他のメダルは更にそれより前方の他のメダルを押す。結果、固定テーブル12に載置されたメダル3は、玉突き状に押されてメダル払出口14方向へ移動する。
【0041】
可動テーブル10により押されて移動したメダルが固定テーブル12からメダル払出口14へ落下すると、そのメダルはメダル回収通路20を通ってメダル貯留部22へ流下し回収される。落下メダル検知センサ24はメダル回収通路20を通るメダルを検知して制御基板50へ落下検知信号を出力する。
【0042】
制御基板50は、CPU(Central Processing Unit)52やGPU(Graphics Processing Unit)などの各種マイクロプロセッサ、ICメモリ54、外部装置とデータ通信を実現する通信装置56、各種センサからの信号入出力を制御するI/OコントローラICなどを備え、メダルゲーム装置2の動作を統合的に制御する。
【0043】
制御基板50は、落下メダル検知センサ24から落下検知信号を受信すると、装置下部に内蔵されているメダル払出装置26を制御して、落下メダル検知センサ24で検知したのと同数のメダルを、メダル貯留部22から操作テーブル6の下方に開口するメダル取出口30へ搬送させ払い出させる。
【0044】
また、制御基板50は、チャッカー16から出力された進入検知信号を受信すると、付属ゲーム装置800でプレイするプレイ権を獲得するための補助抽選処理を実行する。具体的には、CPU52の演算による内部抽選処理を実行するとともに、抽選過程と抽選結果を示す演出表示をフラットパネルディスプレイ8に表示させる制御を行う。演出表示としては、例えば複数の図柄がロール状に配置されて縦回転する仮想リールを横3列に表示し、抽選開始とともに3つのリールをそれぞれ回転させ、一定時間経過後に抽選の結果を示す図柄で停止するように表示させる。
【0045】
内部抽選で当選すると、制御基板50は、フラットパネルディスプレイ8の側に設けられたボーナスメダル排出装置32を制御して、当選した賞に応じた数のメダルを可動テーブル10や固定テーブル12の上へ払い出させる。そして、もし付属ゲーム装置800でプレイするプレイ権を付与する特賞に当選した場合には、制御基板50は付属ゲーム装置800を作動させて付属ゲームを実行させる。そして、制御基板50はこの付属ゲームの成績に応じて、更にボーナスメダル排出装置32を制御してボーナスメダルを排出させる。
【0046】
[メダル投入装置の説明]
次に、本実施形態におけるメダル投入装置100の詳細な構成について説明する。
図2は、本実施形態におけるメダル投入装置100の構成例を示す把持部周りの拡大斜視図である。
図3は、同把持部周りの(1)上面図、(2)側面図である。
【0047】
本実施形態におけるメダル投入装置100は、境界ガラス4における支持構造及びメダル3を投入するレール構造については、公知のレール式メダル投入装置と同様に実現される。
【0048】
例えば、境界ガラス4を挟持する一対の固定プレート102と、一方の固定プレートに備えられた揺動軸104で枢支されたガイドレール部106とを備える。ガイドレール部106は、境界ガラス4を貫通し、揺動軸104により左右に揺動自在で、且つ先端(装置奥側端)が下向きを維持する姿勢で枢支されている。そして、ガイドレール部106の後端部(装置手前側;遊技者側;境界ガラス4の外側)には遊技者がメダル投入装置100の向きを操作するために把持する把持部108が設けられている。そして、把持部108の上面にはメダル3を縦姿勢(メダルの面の法線を横向きにする起立姿勢)でガイドレール部106へ挿入するためのメダル投入口110が開口する。
【0049】
本実施形態におけるメダル投入装置100では、把持部108のメダル投入口110の一側方には、投入予定のメダル3を縦姿勢で積層状に横方向に重ねて整列させたメダル群3Gを載せることができる樋状のメダル載置部120が設けられ、メダル投入口110の他側方には、メダル載置部120に載せられたメダル3を押し当てることのできる壁部111が設けられている。
メダルの投入方向を
図2のY軸プラス方向とする右手直交座標系を仮定すると、
図2及び
図3の例ではメダル載置部120はメダル投入口110からX軸方向に沿って長手の樋を形成している。
【0050】
図4は、本実施形態におけるメダル投入装置100の前後方向(Y軸)に直交するメダル載置部120を含む縦断面図であって、(1)分解状態、(2)組み付け状態をそれぞれ示している。
メダル載置部120は、把持部108に対して着脱自在である。例えば、メダル載置部120の側部に、把持部108のメダル投入口110の側方に形成された段差部112と凹凸嵌着する形状が形成されており、ビス119にて把持部108が装着される。尚、把持部108とメダル載置部120との間には、適宜シム118を挟むことで、メダル投入口110の開口幅Weを調整し、厚みTmが異なるメダル3にも対応できるように考慮されている。つまり、シム118とビス119とでメダル投入口110の開口幅Weを可変する可変部117として機能する。メダル投入口110の開口幅Weは、1枚のメダル3のみが通過できる大きさに設定される。
【0051】
メダル載置部120の上面には、個々のメダル3を縦姿勢の状態で積層状に横方向に重ねたメダル群3Gを整列させて載置可能なメダル整列溝122が形成されている。そして、本実施形態のメダル載置部120では、このメダル整列溝122のメダル投入口110側の端部にメダル整列溝122内でのメダル3の載置位置(より具体的には高さ)を変位させる変位部124を備える。換言すると、メダル整列溝122は、載置しているメダルの大部分を載置する主載置面125のメダル投入口110側端部に変位部124を備える。また別の言い方をするならば、変位部124は、一端部がメダル載置部120の載置面と連続し、他端部がメダル投入口110寄りに設けられ、一端部から他端部に向けてメダルの高さ位置を上昇させる傾斜面を有する。
【0052】
図3及び
図4に示すように、本実施形態の変位部124は、メダル整列溝122の底面と側面に亘って形成されている。そして、本実施形態の変位部124は、メダル整列溝122の長手方向断面(X軸方向断面)の形状が三角形を成している。より具体的には、メダル投入口110側が略垂直な断崖状の切り立ち側面124aを成し、頂部が尖り、メダル投入口110から離れる方向へ下る傾斜部124bを有する。
【0053】
三角形の底辺つまり変位部124のX軸方向の幅は、メダル整列溝122の底部において、使用が想定されるメダル3の厚さTmの0.5〜2.5倍程度の幅を有する。図では、変位部124の存在が明確となるようにメダルの厚さTmより広く示しているが、望むらくは略1.0倍とするのが好適である。換言すると、変位部124上には、1〜3枚のメダル3が差し掛かれる程度の幅を有し、1枚のメダルが差し掛かるのが好適である。
そして、傾斜部124bの傾斜角は、当該部に差し掛かっていたメダル3が滑落可能な角度、より好適には角度40度〜60度程度を有し、好適には40〜50度の範囲とするように構成されている。傾斜部124bと主載置面125との接続部は、なだらかに繋がる連続面でも良いが、本実施形態では明確に面の角度が切り替わるように不連続にしてある。
【0054】
[投入動作の説明]
図5〜
図6は、本実施形態のメダル投入装置100におけるメダルの投入動作を説明する連続状態図である。
図5(1)〜
図5(2)及び
図6(3)〜
図6(4)は、何れも
図4と同じ断面図に相当する。
【0055】
先ず、
図5(1)に示すように、遊技者はこれから投入しようとするメダル3を纏めてメダル群3Gを作ってメダル載置部120のメダル整列溝122の主載置面125に載置する。メダル投入口110に最寄りのメダル3(3a)の上部は、壁部111に寄り掛かる格好となる。
【0056】
次に、
図5(2)に示すように、指などでメダル群3Gのメダル投入口110とは反対側の面にメダル投入口110方向への力F1をかけると、メダル群3Gのメダルは徐々に起立姿勢へと姿勢を変えつつメダル同士が互いに密着し、やがてメダル3(3a)の下部が変位部124の傾斜部124bの下端に当接する。この当接による反力が、メダル群3Gを押す指への最初のフィードバックとなる。
【0057】
ここからは、メダル投入口110に最寄りのメダル3(3a)から順に変位部124の傾斜部124bに押し上げられることになる。これにより、メダル3はメダル投入口110に近づくにつれてメダル整列溝122の底面(主載置面125)から徐々に上昇させられる。従って、
図6(3)にて示すように、変位部124に押し上げられているメダル3(3a)には、部分拡大図中の小白矢印で示すように、傾斜部124bを滑り落ちる方向の力、すなわち当該メダルをメダル投入口110から離す方向の力(傾斜部124bを滑落させる力)F2が作用する。メダルを投入するためには、力F2に対抗するだけメダルを押す力を増やす必要があり、この押す力の変化(
図5(2)の力F1→
図6(3)の力F3への変化)が、あたかもプッシュスイッチを押すときの抵抗感やトリガーを引くときの抵抗感に似た操作感を生む。そして、メダルを押す力F3が十分に強ければこの離す方向の力F2に打ち勝ち、メダルは傾斜部124bを登りきる。ここで、メダルを押す力F1が十分に強ければ、(大体はそうなるのだが)変位部124の頂部を越えたメダル3(3a)は、メダル投入口110の対岸にある壁部111に押しつけられた格好となり、この段階ではメダル投入口110へ落下はしない。また、この段階では、次のメダル3(3b)が傾斜部124bに差し掛かっていることになる。
【0058】
ここで、
図6(4)に示すように、僅かにメダル群3Gを押す力を緩めると(力F3→力F1)、壁部111に押しつけられていたメダル3(3a)はメダル投入口110へ自然落下し、変位部124に差し掛かっていた次のメダル3(3b)は、傾斜部124bを滑落させる力F2により、メダル群3Gがメダル投入口110から離れる方向へ僅かに押し戻され、
図5(2)の状態へ戻る。
【0059】
そして、再びメダル群3Gを押す力を強めれば、次のメダル3(3b)が変位部124を登り切って壁部111に押しつけられて、再び
図6(3)の状態となり、押す力を僅かに緩めると、当該メダル3(3b)がメダル投入口110へ落下し、
図6(4)の状態となる。つまり、遊技者はメダル整列溝122に載置しているメダル群3Gをメダル投入口110方向へ押し、壁部111へ押しつけるようにしつつ、力を抜き、また力を込める連続動作により、連続的にメダルをゲーム空間内へ投入することが可能となる。
【0060】
メダル群3Gを押す力に着目すると、遊技者は、メダル群3Gを壁部111に向けて指で押し始めると、メダル投入口110に最寄りのメダルが傾斜部124bに接触して乗り上げるときの抵抗を感じることができるため、メダル3が投入される予感を得ることができる。そこから、あたかもプッシュスイッチを押し込んで離す操作をするかのように、力を込めて後、少し緩めると(力F3→力F1)メダルを1枚だけ投入することができる。つまり、遊技者にとってみれば、メダル群3Gを押す指先でメダルを1枚投入する毎に1回クリックに似た心地よい操作感を感じることができる。この指先の感触の変化が、メダルを投入する/しないの境を認識し易くする。
【0061】
このように、本実施形態のメダル投入装置100によれば、メダル載置部120に載置されているメダル群3Gをあたかもプッシュスイッチを押し込んで離す操作をするかのように連続操作することで、「1プッシュで1メダル投入」の感覚でメダルを連続的に投入することができる。当然、次の1プッシュをしなければ、容易に次の投入を止めることができる。つまり、思い通りのところでメダルの連続投入を中断することが可能である。
こうした「1プッシュで1メダル投入」の操作感覚は、従来のビデオゲームにおけるプッシュ操作(例えば、シューティングゲームの発射操作においてゲームコントローラのプッシュスイッチを押す操作)とよく似ており、メダルゲームに慣れない遊技者でも容易にメダルの連続投入操作を会得できる。
【0062】
図7は、本実施形態におけるメダル載置部120の変形例を示す図であって、把持部108への取付面側の斜め上から見た斜視図に相当する。
図7(1)に示すように、変位部124は一つに限らず、例えば第1の変位部124C及び第2の変位部124Dのように、メダル整列溝122の底面と側面とにそれぞれ別体を設けることで実現することができる。さらには、第1の変位部124Cと、第2の変位部124Dの何れか一種のみで構成することもできる。
【0063】
また、一つの傾斜部の形状に着目すれば、変位部124の切り立ち側面124aは略垂直に限らず、
図7(2)の変位部124Eのように、頂部を越えたメダルがスムーズにメダル投入口110へ滑落できるのであれば、切り立ち側面124aは垂直よりも緩い傾斜角度を有していても構わない。また、頂部も、メダルが乗り上た状態で保持される状態が頻発しなければ若干の丸みを帯びていても構わない。また、傾斜部124bの傾斜角は、メダル載置部120の材質、表面処理、メダル3の側面の形状などを考慮して、投入時にメダル群3Gを押す力F3(
図6(3)参照)と、投入を中断するべくそれより緩めた力F1(
図6(4)参照)との差が適当な操作感を生むように適宜設定することができる。それに伴い、傾斜部124bも平面に限らず、適宜曲面(例えば、メダル投入口110へ凹む凹曲面)であっても良い。
【0064】
また、変位部124は中実体に限らず、
図7(3)の変位部124Fに示すように、傾斜部124bを形成する板をメダル整列溝122に設けることで実現することもできる。
【0065】
〔第2実施形態〕
次に、本発明を適用した第2実施形態について説明する。本実施形態は、基本的には第1実施形態と同様に実現されるが、メダル載置部120が、主載置面125に載置されたメダルの外縁に当接する凹凸部を有する。
尚、ここでは主に第1実施形態との差異について述べることとし、第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与し、詳細な説明は省略する。また、向きの理解を容易にするために、第1実施形態と同様にメダルの投入方向をY軸とする右手直交座標系を仮定する。
【0066】
図8は、本実施形態におけるメダルゲーム装置2のメダル投入装置100Bのメダル載置部120Bの構成例を示す斜視外観図である。メダル載置部120Bは、メダル整列溝122の内側面に、変位部124から離れる方向へ傾いた立面130が単数または複数に設けられている。望むらくは、立面130はメダル3の厚さにして数枚分の間隔をおいて複数設けると好適である。
【0067】
座標系を元に記述するならば、立面130は、法線がZ軸マイナス方向且つX軸マイナス方向を向き、メダル整列溝122の内側面の上部から下部へかけて、X軸プラス方向へ向かって伸長されたように全体として細長い縦帯状の面と言える。そして、隣接する一の立面130の内側端と、次に隣接する立面130の外側端とは連結面132で結ばれている。すなわち、立面130と連結面132とで、主載置面125に載置されたメダル3の外縁に当接する凹凸部133が構成されている。
図8の例では、メダル整列溝122の左右両内側面に、各4箇所ずつの凹凸部133が設けられているが、その数は適宜増減できる。
【0068】
図8中の拡大表示部W1に示すように、メダル載置部120Bのメダル整列溝122の内側面は、メダル投入口110側へ切り立った鋸刃状を有しているとも言える。メダル群3Gを押した場合の移動抵抗に着目して記述すれば、立面130と連結面132とは、凹凸部133を越えて移動する際のメダル3の移動抵抗がメダル投入口110方向への移動よりも、その逆方向への移動の方が大きくなる波状(より具体的には、メダル投入口110へ進行する進行波状)の形状をなしているとも言える。
【0069】
図9は、凹凸部133の効果を説明するための図である。
図9(1)に示すように、第1実施形態のメダル載置部120では、メダル整列溝122の側面には立面130が設けられていない。従って、メダル3をメダル整列溝122に残したまま、更にメダルを追加しようとしてメダル群3Gに添えていた指を離すと、縦姿勢で載置されていたメダル3が倒れることがある。この場合、追加するメダルを載せるためには、既に倒れたメダルを起こしながら載せる必要があり手間である。場合によっては、メダル3は倒れた勢いでメダル整列溝122からこぼれ落ちるかも知れない。
【0070】
しかし、本実施形態のメダル載置部120Bには、
図9(2)に示すように、立面130が設けられているので、メダル整列溝122に残されていたメダル3が倒れようとしても、その外縁部が立面130に引っ掛かる。メダル3は、縦姿勢から僅かに傾斜するのみで、
図9(1)のように倒れ切ることは稀になる。よって、メダル3を追加する際に、倒れたメダルを起こす手間が省けてスムーズなゲーム進行が可能となる。また、メダル3が倒れる勢いでメダル整列溝122からこぼれ落ちる可能性もぐんと低くなる。
【0071】
尚、立面130は、
図10(1)に示すように、メダル整列溝122の側面のみならず底面にも設けることも可能である。この場合、上記のような作用効果がより高まる。勿論、メダル整列溝122の底面のみに設けるとしても良い。
【0072】
また、
図10(2)に示すように、メダル整列溝122の側面に立面130を設けるとともに、メダル整列溝122の底面をメダル投入口110から離れるほど高くなるように、メダル投入口110へ向けて傾斜するように構成することもできる。この場合、メダル整列溝122に残されていたメダル3が倒れようとした場合、倒れを抑制する効果が高まる。こうした構成は、立面130を有しない第1実施形態にもそのまま適用することもできる。
【0073】
〔第3実施形態〕
次に、本発明を適用した第3実施形態について説明する。本実施形態は、基本的には第1実施形態と同様に実現されるが、変位部としてメダル載置部のメダル整列溝のメダル投入口側に段差が設けられている点が異なる。尚、ここでは主に第1実施形態との差違について述べることとし、第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付与し、詳細な説明は省略する。また、向きの理解を容易にするために、第1実施形態と同様に、メダルの投入方向をY軸とする右手直交座標系を仮定する。
【0074】
図11は、本実施形態におけるメダルゲーム装置2のメダル投入装置100Cのメダル載置部120Cを含む縦断面図である。本実施形態のメダル載置部120Cは、メダル整列溝122のメダル投入口110側に、本実施形態における変位部としてメダル整列溝122の主載置面125の高さより低い棚部140を有する。棚部140は、メダル整列溝122の少なくとも底部に設けられており、厚さWs(
図4参照)は第1実施形態と同様でよく、例えばメダル3の1枚程度のX軸方向幅を有する。そして、棚部140の上面すなわちメダルが載る棚面は、第1実施形態の変位部124の傾斜部124bに相当する傾斜面140bを形成している。
【0075】
図12は、本実施形態のメダル投入装置におけるメダルの投入動作を説明する連続状態図であって、何れも
図11と同じ断面図に相当する。
図12(1)に示すように、遊技者は、これから投入しようとするメダル3を縦姿勢にして複数枚を面同士を密着させるように連ねてメダル群3Gを作り、メダル載置部120Cのメダル整列溝122の主載置面125に載置する。そして、メダル群3Gのメダル投入口110とは反対側の面から押す力F4(左向き白矢印)をかけると、メダル投入口110側の先頭メダル3(3c)から順に棚部140に落下する。
【0076】
棚部140の上面は傾斜面140bを成していている。加えて、このメダル3(3c)は横から隣接する他のメダルで押されているので棚部140と接する下端(部分拡大図中の黒丸)を支点にしてメダル投入口110側へ倒れる。そして、メダル3(3c)上端部が対岸の壁部111に当り、メダル110は棚部140から落ちることなく傾いたまま維持される。
【0077】
図12(2)に示すように、押す力F5を少し強めると、棚部140に載っていたメダル3(3c)は押されて傾斜面140bを登り、傾斜面140bを越えてメダル投入口110へ自然落下する。その頃には、次に続くメダル3(3d)が新たに棚部140に落下し傾いて止まる。もし、ここから更に押す力F5をかけ続けると、このメダル3(3d)も直ぐに傾斜面140bを越えてメダル投入口110へ自然落下する。つまり、遊技者はメダル整列溝122に載置しているメダル群3Gをメダル投入口110方向へ押し続ければ、簡単且つ連続的にメダルをゲーム空間内へ投入することが可能である。
【0078】
もし、メダル3を押す力F5を緩めると、
図12(3)に示すように、棚部140のメダル3(3d)は傾斜面140bを越え切らず棚部140に載ったままとなる。つまり、メダル3の投入が止まる。
【0079】
遊技者がメダル3を押す力に着目すると、棚部140に載ったメダル3を傾斜面140bを登らせて越えさせるための抵抗が生じる。それがメダル投入の心地よい操作感を有む。
【0080】
このように、本実施形態のメダル投入装置100によれば、メダル載置部120Cに載置されているメダルを押すだけで、メダルを連続投入可能であり、押す力を少し弱めると投入を直ぐに止めることができる。従来のように、メダル投入口110を挟んで反対側の壁部に押しつけるようにしてメダル載置部120に載置されているメダルを押しつける力の加減でメダルの投入/停止を操作するのに比べて、格段に操作がし易くなる。
【0081】
尚、棚部140の傾斜面140bに代えて、乗り越えるべき微細な突起を設けるとしても良い。或いは、傾斜面140bを省略して略平坦面としても良い。この場合、棚部140に載って傾いているメダルが傾斜姿勢から起立するまでの間にその下端と棚部140の上面とで生じる抵抗感がメダル投入の操作感を生む。適度な抵抗感を発生させるために、例えば、棚部140の上面を梨地状にするなど抵抗増大の表面処理をすると好ましい。
【0082】
また、第2実施形態で説明した立面130に係る構成は、本実施形態においても同様に適用することができる。
【0083】
〔変形例〕
以上、本発明を適用した実施形態について説明したが、本発明の適用がこれらの形態に限定されるものではなく、適宜構成要素の追加・省略・変更などを施すことができる。例えば、上記実施形態では、メダル投入装置をレール式として説明したが、回転式(カルセル式とも呼ばれる)のメダル投入装置750に適用することもできる。
【0084】
例えば、
図13は、第1実施形態を適用した回転式メダル投入装置750の構成例を示す縦断面図であって、図面の右方向がゲームフィールド方向を示し、左方向が遊技者側を示している。回転式メダル投入装置750は、操作テーブル6より上に突出したハンドル部752にメダル3を縦姿勢で挿入するメダル投入口110を備える。そして、メダル載置部120は、ハンドル部752に取り付けられる。
【0085】
メダル投入口110の下端は、メダル3が通過可能なメダル通路756の始端部に連結されている。メダル通路756は、略鉛直下向きに伸びた後、円弧を描いて反転し、終端部に仰角可変なノズル758を備える。但し、ノズル758の仰角はメダルゲーム装置2の管理者或いは装置メーカによって適当な角度に設定・固定されている。メダル通路756の反転部分の内周側には、モータ760にベルトで連結された回転体764の外周面が露出している。回転体764は、モータ760により単位時間当り常時一定の回転数で駆動されている。そして、これらの要素(ハンドル部752、メダル通路756、ノズル758、モータ760、回転体764、及びメダル通過センサ766)は、ケース部768に一体に取り付けられている。ケース部768には、揺動シャフト770が内設されており、揺動シャフト770がベアリング772によってメダルゲーム装置2のフレーム2fに対して垂直に、左右方向に所定角度範囲内で首振り自在に枢支されている。
【0086】
このように回転式のメダル投入装置750に本発明を適用しても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。