特許第6165409号(P6165409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6165409両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂及びその製造方法、それを用いた樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165409
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂及びその製造方法、それを用いた樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   C08F293/00
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-99437(P2011-99437)
(22)【出願日】2011年4月27日
(65)【公開番号】特開2012-229354(P2012-229354A)
(43)【公開日】2012年11月22日
【審査請求日】2014年3月28日
【審判番号】不服2015-20604(P2015-20604/J1)
【審判請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(74)【代理人】
【識別番号】100152191
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 正人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一雅
(72)【発明者】
【氏名】森 秀晴
(72)【発明者】
【氏名】宮城 立
【合議体】
【審判長】 小柳 健悟
【審判官】 原田 隆興
【審判官】 橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−523578号公報
【文献】 特開2003−292719号公報
【文献】 特開昭62−290708号公報
【文献】 特表昭64−500198号公報
【文献】 特開2000−169531号公報
【文献】 国際公開第98/15584号
【文献】 国際公開第87/07265号
【文献】 特開2004−162075号公報
【文献】 特開2007−100020号公報
【文献】 特表2000−515181号公報
【文献】 国際公開第2003/037945号
【文献】 Macromolecules,2007,Vol.40,p.5575−5581
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F293/00-297/08
C08G 59/00
C08L 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される構造を2つむポリメタクリレート鎖の両末端にポリグリシジルメタクリレートブロックを有し、数平均分子量が2000〜1000000である、アクリル樹脂。
【化1】
【請求項2】
一般式(2)で表される構造のジチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、メタクリレートモノマを重合した後に、グリシジルメタクリレートを重合して得られることを特徴とする請求項1に記載のアクリル樹脂。
【化2】

(一般式(2)中、Zは芳香環、SCH、CH、Nピローリル基のいずれかを示し、RはH、CH、(COH)のいずれかを示す。)
【請求項3】
一般式(3)で表される構造のジチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、メタクリレートモノマを重合した後に、グリシジルメタクリレートを重合して得られることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクリル樹脂。
【化3】
【請求項4】
ポリメタクリレート鎖と、両末端のポリグリシジルメタクリレートブロックとを構成するモノマのモル比が、ポリグリシジルメタクリレート/ポリメタクリレート鎖で0.014/0.230〜0.070/0.200である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアクリル樹脂。
【請求項5】
ポリメタクリレート鎖が、炭素数1〜18のアルコールとメタクリル酸とのエステルであるメタクリレートモノマの重合により得られたものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアクリル樹脂。
【請求項6】
一般式(2)で表される構造のジチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、メタクリレートモノマを重合した後に、グリシジルメタクリレートを重合して得られる両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂の製造方法。
【化4】

(一般式(2)中、Zは芳香環、SCH、CH、N−ピローリル基のいずれかを示し、RはH、CH、(COH)のいずれかを示す。)
【請求項7】
一般式(3)で表される構造のジチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、メタクリレートモノマを重合した後に、グリシジルメタクリレートを重合して得られる請求項に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂の製造方法。
【化5】
【請求項8】
メタクリルモノマとグリシジルメタクリレートとのモル比が、グリシジルメタクリレート/ポリメタクリレートで0.014/0.230〜0.070/0.200である、請求項6又は7に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂の製造方法。
【請求項9】
メタクリルモノマが炭素数1〜18のアルコールとメタクリル酸とのエステルである、請求項6〜8のいずれか一項に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂、または請求項のいずれか一項に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂の製造方法で得られた両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を必須として含む樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂及びその製造方法、それを用いた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂は、アクリルモノマをラジカル重合することで容易に製造することが可能であり、目的に応じて数種のアクリルモノマを共重合することで樹脂の特性を幅広く変えることが可能であることから広く工業的に製造されている。また、その製造方法は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合などが普及しており製造するアクリル樹脂の分子量やコストなどを鑑み選択されている。従来、アクリル樹脂は、フリーラジカル重合で製造されているため、多成分モノマから得られるアクリル樹脂はランダム共重合体であり、広い分子量分布を有している。
アクリル樹脂は、モノマ種の選択により透明性、接着性、低弾性、高硬度などの特徴を発現でき光学分野、電子材料分野、構造材料分野などに展開されている。グリシジルメタクリレートを共重合することによりさらに熱硬化反応を組み込んだり、光反応性基を導入して、光反応性を組み込んだりすることが可能であり、例えば接着剤の耐熱性を高めたり、感光性を付与することが可能である。
近年、アクリル樹脂の高性能化、高機能化を実現するためブロックポリマやグラフトポリマ、星型ポリマなどの構造制御を可能とするリビングラジカル重合が種々、開発されている。アクリル樹脂の合成法として可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT:Reversible Addition−Fragmentation Chain Transfer)重合が、リビングラジカル重合方法として開発されている。RAFT重合はチオカーボネート構造を有する連鎖移動剤を用いることでポリマ成長末端が可逆的な付加開裂を起こしモノマへの連鎖移動を起こすことでリビング重合の挙動をとる(特許文献1、2を参照)。さらに、チオカーボネート構造を中心にポリマ鎖を成長させる連鎖移動剤やこれを用いた両末端に水酸基を有するアクリル樹脂が開発されている。例えば、特許文献3を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−515181号公報
【特許文献2】特開2010−59231号公報
【特許文献3】特開2007−230947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、単独重合物が溶媒に不溶化しやすく、ブロック成分としてアクリル樹脂に取り込むことが困難なグリシジルモノマをブロック成分として高分子鎖の両末端に配置し、溶媒に可溶である両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂、及びその製造方法とそれを用いた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、[1] 両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂に関する。
また、本発明は、[2] 一般式(1)で表される構造を含む上記[1]に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂に関する。
【0006】
【化1】
また、本発明は、[3] 一般式(2)で表される構造のジチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、メタクリレートモノマを重合した後に、グリシジルメタクリレートを重合して得られることを特徴とする上記[1]または上記[2]に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂に関する。
【0007】
【化2】
(一般式(2)中、Zは芳香環、SCH3、CH3、Nピローリル基のいずれかを示し、RはH、CH3、(CO2H)のいずれかを示す。)
また、本発明は、[4] 一般式(3)で表される構造のジチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、メタクリレートモノマを重合した後に、グリシジルメタクリレートを重合して得られることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂に関する。
【0008】
【化3】
また、本発明は、[5]一般式(4)で表される構造のジチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、グリシジルメタクリレートを重合した後に、メタクリレートモノマを重合し、さらに、グリシジルメタクリレートを重合して得られることを特徴とする上記[1]または上記[2]に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂に関する。
【0009】
【化4】
(一般式(4)中、Zは芳香環、SCH3、CH3、Nピローリル基のいずれかを示し、Rは−C(CH32CN、−C(CH32Ph、−CH(COH)Ph、−C(CH32COOEtのいずれかを示す。Phは、芳香環、Etはエチル基を示す。)
また、本発明は、[6]一般式(5)で表される構造のジチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、グリシジルメタクリレートを重合した後に、メタクリレートモノマを重合し、さらに、グリシジルメタクリレートを重合して得られることを特徴とする上記[1]または上記[2]に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂に関する。
【0010】
【化5】
【0011】
さらに、本発明は、[7] 一般式(2)で表される構造のジチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、メタクリレートモノマを重合した後に、グリシジルメタクリレートを重合して得られる両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂の製造方法に関する。
【0012】
【化6】
(一般式(2)中、Zは芳香環、SCH、CH、N−ピローリル基のいずれかを示し、RはH、CH、(COH)のいずれかを示す。)
また、本発明は、[8] 一般式(3)で表される構造のジチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、メタクリレートモノマを重合した後に、グリシジルメタクリレートを重合して得られる上記[7]に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂の製造方法に関する。
【0013】
【化7】
また、本発明は、[9]一般式(4)で表される構造のジチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、グリシジルメタクリレートを重合した後に、メタクリレートモノマを重合し、さらに、グリシジルメタクリレートを重合して得られる両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂の製造方法に関する。
【0014】
【化8】
(一般式(4)中、Zは芳香環、SCH、CH、N−ピローリル基のいずれかを示し、Rは−C(CHCN、−C(CHPh、−CH(COH)Ph、−C(CHCOOEtのいずれかを示す。Phは、芳香環、Etはエチル基を示す。)
また、本発明は、[10] 一般式(5)で表される構造のジチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、グリシジルメタクリレートを重合した後に、メタクリレートモノマを重合し、さらに、グリシジルメタクリレートを重合して得られる上記[9]に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂の製造方法に関する。
【0015】
【化9】
そして、本発明は、[11] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂、または上記[7]〜[10]のいずれかに記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂の製造方法で得られた両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を必須として含む樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により不溶解性のポリグリシジル単独重合物を生成することなく両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を簡便に製造することが可能であり、得られるアクリル樹脂は溶媒に可溶で、接着剤や光硬化用樹脂として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1で合成した両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂の1H-NMRのチャート。
図2】実施例2で合成した両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂の1H-NMRのチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂は、次のものに関する。
(1)両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂及び該アクリル樹脂を含む樹脂組成物。
(2)一般式(1)で表される構造を含む上記項(1)に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂及び該アクリル樹脂を含む樹脂組成物。
【0019】
【化10】
(3)一般式(2)で表される構造のチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、メタクリレートモノマを重合した後に、グリシジルメタクリレートを重合して得られることを特徴とする項(1)または(2)に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂及び該アクリル樹脂を含む樹脂組成物の製造方法。
【0020】
【化11】
(一般式(2)中、Zは芳香環、SCH、CH、N−ピローリル基のいずれかを示し、RはH、CH、(COH)のいずれかを示す)
(4)一般式(3)で表される構造のチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、メタクリレートモノマを重合した後に、グリシジルメタクリレートを重合して得られることを特徴とする項(1)または(2)に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂及び該アクリル樹脂を含む樹脂組成物の製造方法。
【0021】
【化12】
(5)一般式(4)で表される構造のチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、グリシジルメタクリレートを重合した後に、メタクリレートモノマを重合し、さらに、グリシジルメタクリレートを重合して得られることを特徴とする項(1)または(2)に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂及び該アクリル樹脂を含む樹脂組成物の製造方法。
【0022】
【化13】
(一般式(4)中、Zは芳香環、SCH、CH、N−ピローリル基のいずれかを示し、Rは−C(CHCN、−C(CHPh、−CH(COH)Ph、−C(CHCOOEtのいずれかを示す。Phは、芳香環、Etはエチル基を示す。)
(6)一般式(5)で表される構造のチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、グリシジルメタクリレートを重合した後に、メタクリレートモノマを重合し、さらに、グリシジルメタクリレートを重合して得られることを特徴とする項(1)または(2)に記載の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂及び該アクリル樹脂を含む樹脂組成物の製造方法。
【0023】
【化14】
【0024】
本発明の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂は一般式(1)で表されるチオカーボネート構造を有する。
【0025】
【化15】
本発明の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂は、一般式(2)で表される構造のチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、ラジカル開始剤とともにメタクリレートモノマをリビングラジカル重合し、所定の分子量、重合率まで重合した後に、続けてグリシジルメタクリレートをリビングラジカル重合することで得られる。
【0026】
【化16】
(一般式(2)中、Zは芳香環、SCH、CH、N−ピローリル基のいずれかを示し、RはH、CH、(COH)のいずれかを示す。)
連鎖移動剤としては一般式(3)で表されるチオカーボネート化合物を用いることでより単分散でポリメタクリレート鎖長やポリグリシジルブロック鎖長の制御されたアクリル樹脂を製造することが可能であり好ましい。一般式(3)で表される化合物として、1,4−ビス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(チオベンゾイルチオ)プロパン−2−イル)ベンゼン等が挙げられる。
【0027】
【化17】
また、一般式(4)で表される構造のチオカーボネート化合物を連鎖移動剤として用い、ラジカル開始剤とともにグリシジルメタクリレートをリビングラジカル重合して所定の分子量または重合率まで重合した後に、続けてメタクリレートモノマを所定の分子量または重合率まで重合し、さらに、続けてグリシジルメタクリレートを所定の分子量または重合率まで重合して得ることにより両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂及び該アクリル樹脂を含む樹脂組成物とすることができる。
【0028】
【化18】
(一般式(4)中、Zは芳香環、SCH、CH、N−ピローリル基のいずれかを示し、Rは−C(CHCN、−C(CHPh、−CH(COH)Ph、−C(CHCOOEtのいずれかを示す。Phは、芳香環(フェニル基が好ましい)、Etはエチル基を示す。)
例えば、具体的に一般式(4)を例示すると、2−フェニルプロパン−2−イルジチオベンゾエート、2−(エトキシカルボニル)プロパン−2−イルジチオベンゾエート、2−シアノプロパンー2−イルジチオベンゾエート、2−フェニルプロパン−2−イルージチオナフタレート、2−フェニルプロパン−2−イルジチオアセテート、2−(エトキシカルボニル)プロパン−2−イルジチオアセテートなどが挙げられる。
この中でも、連鎖移動剤としては一般式(5)で表されるチオカーボネート化合物を用いることでより単分散でポリメタクリレート鎖長やポリグリシジルブロック鎖長の制御されたアクリル樹脂を製造することが可能であり好ましい。
【0029】
【化19】
【0030】
メタクリルモノマ及びグリシジルメタクリレートと一般式(2)、(3)、(4)または(5)で表されるチオカーボネート化合物のモル比を制御することで、得られる樹脂の分子量やポリメタクリレート及びポリグリシジルメタクリレートブロックの鎖長を調整することが可能である。一般式(2)、(3)、(4)または(5)で表される化合物とラジカル開始剤のモル比率は20/1〜1/5が好ましく10/1〜1/4がより好ましい。一般式(2)、(3)、(4)または(5)で表される化合物とラジカル開始剤の比率が20/1より大きいと単分散性になる半面、重合反応が遅くなり工業的に好ましくない。また1/5より小さいとラジカル開始剤から直接メタクリルモノマへの連鎖移動が起こり一般式(1)の構造を持たない樹脂が副生しブロックの効果が低下する。
【0031】
重合反応の温度は、使用するラジカル開始剤の分解温度により異なり、特に制限するものではないが、一般的に半減期分解温度マイナス2℃からプラス20℃で行うことが好ましい。温度を半減期分解温度よりも高くすることで反応時間を短くしたり、分子量を大きくすることが可能であるが、分子量分布が大きくなるほか一般式(1)の構造を持たない樹脂が副生しブロックの効果を低下することがある。
【0032】
両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を合成するためのラジカル開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化ジt−ブチル、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシドなどの過酸化物開始剤、AIBN(2,2′−アゾビスイソブチロニトリル)、V−65(アゾビスジメチルバレロニトリル)などのアゾ開始剤などがあげられる。中でもAIBN(2,2′−アゾビスイソブチロニトリル)が好ましい。
【0033】
両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、固相重合などで合成することが可能であるが、数平均分子量で2000〜300000の樹脂を得るには溶液重合が好ましく、数平均分子量で300000〜1000000の樹脂を得るには懸濁重合が好ましい。用いるモノマの極性や反応性により重合方法は適宜選択されるがポリグリシジルメタクリレートの溶解性の点から溶媒に可溶なアクリル樹脂を合成するには溶液重合で行うことが好ましい。
【0034】
両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を合成するモノマは、メタクリレートモノマ、グリシジルメタクリレート、他のアクリルモノマである。
メタクリレートモノマとして、炭素数1〜18のアルコールとメタクリル酸とのエステル、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等のメタクリル酸アルキルエステル、そして、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ノルボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸トリシクロデシル等のメタクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ナフチル等のメタクリル酸芳香族エステル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸パーフルオロt−ブチル、メタクリル酸ペンタフルオロフェニル、メタクリル酸ペンタクロルフェニル、メタクリル酸ペンタブロムフェニル等のメタクリル酸ハロゲン化エステル、メタクリル酸トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカ−8−イル等のメタクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸2−シアノエチル、メタクリル酸シアノノルボルニル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0035】
グリシジルメタクリレートは、別名2,3−エポキシプロピルメタクリレートである。グリシジルメタクリレートの代わりに、または、共に、ビニル基とオキセタンを有する、例えば、3−エチル−3−(4−ビニロキシシクロヘキシルオキシメチル)オキセタンなどのモノマを使用することもできる。
【0036】
他のアクリルモノマとして、アクリル酸エステル系のものとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ノルボルニル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸トリシクロデシル等のアクリル酸シクロアルキルエステル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ナフチル等のアクリル酸芳香族エステル、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロt−ブチル、アクリル酸ペンタフルオロフェニル、アクリル酸ペンタクロルフェニル、アクリル酸ペンタブロムフェニル等のアクリル酸ハロゲン化エステル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−シアノエチル、アクリル酸シアノノルボルニルなどが挙げられる。
また、他にスチレン、クロルスチレン、ブロムスチレン、メチルスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、N−ビニルカルバゾール等の芳香族ビニル化合物、α−クロルアクリル酸メチル、α−フルオロアクリル酸メチル等のα−ハロゲン化アクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソボルニルマレイミド、N−アダマンチルマレイミド、N−メンチルマレイミド、N−ノルボルニルマレイミド、N−トリシクロデシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−クロルフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド等のN−置換マレイミド、アクリル酸、メタクリル酸などがある。これらは、単独でも2種以上に組み合わして用いてもよい。
【0037】
溶液重合は、上記のメタクリレートモノマ、グリシジルメタクリレート、及び他のアクリルモノマと連鎖移動剤としてジチオカーボネート化合物とラジカル開始剤及び生成する樹脂を溶解可能な溶剤に溶かし、ラジカル開始剤によって決まる温度まで加温することで行われる。このとき空気下でも重合を行うことは可能であるが、窒素下で行うことが好ましい。
溶液重合で使用する溶剤は、メタクリレートモノマ、グリシジルメタクリレート、及び他のアクリルモノマと連鎖移動剤としてジチオカーボネート化合物とラジカル開始剤及び生成する樹脂を溶解可能であれば特に制限されないが、重合を行う温度以上の沸点を有することが好ましい。重合を行う温度が、使用する溶剤の沸点よりも高い場合には、加圧下での反応により行う。
用いる有機溶媒としては、例えば、メトキシエタノール、エトキシエタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノール、酢酸ブチル、クロルベンゼン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが用いられる。
RAFT重合では、一般的にアクリル成長末端からメタクリレートモノマへの連鎖移動は起こらない。このため複数のモノマを共重合するときのモノマの配合手順や組合せは重要である。複数のモノマを同時に仕込む場合にはアクリルモノマのみの組合せ、又はメタクリレートモノマのみの組合せで行うのが好ましい。またブロック重合で段階的にポリマを成長させるには、アクリルモノマのみの組合せ、又はメタクリレートモノマのみの組合せで混在させるには、メタクリレートモノマを重合させた後にアクリレートモノマを重合することが好ましい。
【0038】
本発明は、前記で得られる両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を必須として含む樹脂組成物である。両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂以外の成分として、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含むことができる。ポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を効果的に利用する観点から熱硬化性樹脂の配合が好ましい。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性の化合物、樹脂などが挙げられる。
また、両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂のエポキシ基と反応する、水酸基、フェノール性水酸基、チオール基、イソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基等を2個以上有する化合物を配合することもできる。ポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂の溶剤溶液や、他の化合物を配合し接着剤や光硬化性樹脂とすることができる。
【0039】
エポキシ樹脂としては、硬化可能な1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限はなく、電子部品用樹脂組成物に一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができる。たとえば、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂や、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
エポキシ樹脂を用いる場合、その硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されているものを用いることができる。
たとえば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、チオジフェノール、アミノフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、フェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック構造とフェノール・アラルキル構造がランダム、ブロック又は交互に繰り返された共重合型フェノール・アラルキル樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。
【0041】
エポキシ樹脂を用いる場合、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、エポキシ樹脂に一般に使用されているもので特に制限はない。たとえば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2―フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類及びこれらのホスフィン類に無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムエチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
また、潜在性の熱硬化剤であるブロックイソシアネート化合物を用いることもできる。ブロックイソシアネート化合物としては、例えば、アルコール化合物、フェノール化合物、ε−カプロラクタム、オキシム化合物、活性メチレン化合物等のブロック剤によりブロック化されたポリイソシアネート化合物が挙げられる。ブロック化されるポリイソシアネート化合物としては、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられ、耐熱性の観点からは芳香族ポリイソシアネートが、着色防止の観点からは脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤を用いる。
【0043】
熱硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物中の固形分の含有量が、10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることがより好ましい。
【0044】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、染料、顔料、可塑剤、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン等の充填剤、消泡剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、酸化防止剤、香料、カップリング剤(各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等)などを含有させることができる。これらの成分は、樹脂組成物中の含有量として、各々0.01〜20質量%程度含有させることが好ましい。また、上記の成分は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
更に、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解し、固形分30〜70質量%程度の溶液として種々の形態に適用することができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
還流冷却器,窒素導入管,撹拌装置及び温度計を備えた0.3リットルのセパラブルフラスコにアクリルモノマとしてメタクリル酸メチル20g(0.20モル)、連鎖移動剤としてBTBTPB(1,4−ビス(2−チオベンジルチオ)プロプ−2−イル)ベンゼン)1.165g(0.003モル)、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.82g(0.005モル)、溶剤としてメチルエチルケトン40ml、トルエン20mlを入れ、窒素ガスを15分間バブリングした後、水浴により温度を72℃に上げた。6時間反応させたのち反応液をメタノールに投入して沈殿物を回収した。沈殿物のGPC測定から数平均分子量は10108であった。次に還流冷却器、窒素導入管、撹拌装置及び温度計を備えた0.3リットルのセパラブルフラスコに沈殿物12g(0.001モル)、グリシジルメタクリレート10g(0.070モル)、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.40g(0.002モル)、溶剤としてメチルエチルケトン20mlを入れ、窒素ガスを15分間バブリングした後、水浴により温度を72℃に上げた。6時間反応させたのち反応液をメタノールに投入して両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を沈殿物として回収した。沈殿物のGPC測定から数平均分子量は、16853、Mw/Mnは1.89であった。ここで得られた両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂のH-NMRチャートを図1に示した。
【0047】
(実施例2)
表1に示したように、開始剤と連鎖移動剤の比率を変えた以外は実施例1と同様にして両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を得た。GPC測定から数平均分子量は、14077、Mw/Mnは1.32であった。ここで得られた両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂のH-NMRチャートを図2に示した。
【0048】
(実施例3)
表1に示したように、開始剤をV−65(アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル)に変え、重合温度を65℃とした以外は実施例1と同様にして両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を得た。GPC測定から数平均分子量は、9494、Mw/Mnは1.32であった。
【0049】
(実施例4)
還流冷却器、窒素導入管、撹拌装置及び温度計を備えた0.3リットルのセパラブルフラスコにグリシジルメタクリレート13g(0.092モル)、連鎖移動剤としてクミルジチオベンゾエート0.414g(0.002モル)、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.171g(0.001モル)、溶剤としてメチルイソブチルケトン35mlを入れ、窒素ガスを15分間バブリングした後、水浴により温度を72℃に上げた。5時間反応させた後、メタクリル酸メチル26g(0.026モル)、を加えて、さらに10時間、反応した後、反応液をメタノールに投入して沈殿物を回収した。沈殿物のGPC測定から数平均分子量は13039であった。
還流冷却器、窒素導入管、撹拌装置及び温度計を備えた0.3リットルのセパラブルフラスコに沈殿物37.4g(0.003モル)、グリシジルメタクリレート14g(0.099モル)、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.091g(0.0006モル)、溶剤としてメチルエチルケトン50mlを入れ、窒素ガスを15分間バブリングした後、水浴により温度を72℃に上げた。6時間反応させたのち反応液をメタノールに投入して両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を沈殿物として回収した。沈殿物のGPC測定から数平均分子量は、18722、Mw/Mnは1.52であった。
【0050】
(実施例5)
表2に示したように、開始剤と連鎖移動剤の比率を変えた以外は実施例4と同様にして両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を得た。GPC測定から数平均分子量は、14568、Mw/Mnは1.74であった。
【0051】
(実施例6)
還流冷却器、窒素導入管、撹拌装置及び温度計を備えた0.5リットルのセパラブルフラスコにアクリルモノマとしてメタクリル酸ラウリル60g(0.265モル)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(ファンクリルFA513MS日立化成工業株式会社製商品名)30g(0.136モル)、連鎖移動剤としてBTBTPB0.472g(0.001モル)、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.451g(0.003モル)、溶剤としてメチルエチルケトン45ml、トルエン45mlを入れ,窒素ガスを15分間バブリングした後、水浴により温度を72℃に上げた。9時間反応させたのち反応液にメタノールに投入してゴム状の沈殿物を回収した。沈殿物のGPC測定から数平均分子量は64511であった。次に回収した沈殿物85gとグリシジルメタクリレート9.0g(0.063モル)、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.3g(0.0018モル)、溶剤としてメチルエチルケトン180gを加え72℃で7時間反応し、両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を得た。沈殿物のGPC測定から数平均分子量は37366、Mw/Mnは1.82であった。
【0052】
(実施例7)
表3に示したように、一段階目の反応の後に、メタノールを投入しなかった以外は実施例6と同様にして両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂を得た。GPC測定から数平均分子量は38053、Mw/Mnは1.76であった。
【0053】
(比較例1)
還流冷却器、窒素導入管、撹拌装置及び温度計を備えた1.0リットルのセパラブルフラスコにアクリルモノマとしてメタクリル酸メチル50g(0.50モル)、グリシジルメタクリレート50g(0.352モル)、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1.1g(0.0067モル)、溶剤としてメチルイソブチルケトン110mlを入れ、窒素ガスを30分間バブリングした後、水浴により温度を72℃に上げた。8時間反応させアクリル樹脂ワニスを得た。GPC測定から数平均分子量は18532、Mw/Mnは3.13であった。
【0054】
(比較例2)
還流冷却器、窒素導入管、撹拌装置及び温度計を備えた1.0リットルのセパラブルフラスコにアクリルモノマとしてメタクリル酸ラウリル60g(0.265モル)、メタクリル酸ジシクロペンタニル30g(0.136モル)、グリシジルメタクリレート10g(0.07モル)、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1.3g(0.0079モル)、溶剤としてメチルイソブチルケトン300mlを入れ,窒素ガスを30分間バブリングした後、水浴により温度を72℃に上げた。12時間反応させアクリル樹脂ワニスを得た。GPC測定から数平均分子量は84770、Mw/Mnは3.21であった。
【0055】
(評価)
(分子量の測定)
実施例及び比較例のアクリル樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及びMw/Mnは、アクリル樹脂の分子量分布のクロマトグラムをGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定し、25℃における標準ポリスチレンの溶離時間から換算して求めた。なお、GPCの溶離液としては、テトラヒドロフランを使用し、カラムは、TSK−gel Super HZ−3000及びHZ−2000(東ソー株式会社製、商品名)を直結したものを使用した。
【0056】
(アクリル樹脂アミン硬化物の動的粘弾性測定)
上記で合成した実施例1〜5、比較例1のアクリル樹脂のエポキシ当量の理論値に対して0.2当量のテトラメチルヘキサミンを配合し、直ちに離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(ピューレックスA−63、帝人株式会社製商品名)上に、乾燥後の厚みが約100ミクロン以上になるように塗布し、130℃で10分間、乾燥した後、さらに150℃で1時間加熱した。得られた樹脂板を幅5mm、長さ30mmに切り出し試料とした。レオロジー株式会社製動的粘弾性測定装置Reogel4000を用い30℃〜250℃の弾性率変化を測定し、室温弾性率(30℃)、Tg(tanδmax)、及び試料が熱溶融した温度(溶断温度)をそれぞれ求め、それらの測定結果を表4・表5に示した。
(ワニス粘度)
東京計器株式会社製E型粘度計を用いてワニスの粘度を測定した。25℃に調整した測定カップにワニス1.5mlを入れ、3分経過後の値を読み取った。
(NV)
アルミカップの重量aを精秤した後、ワニス約1gを入れたアルミカップの重量bを精秤し試料とする。試料を140℃で30分加熱したのち再度、試料の重量cを精秤し以下の式で樹脂分(NV)を求めた。
100×c/(b−a)
【0057】
(アクリル樹脂エポキシフェノール硬化物の動的粘弾性測定)
上記で合成した実施例6〜7、比較例2のアクリル樹脂7部に対してエポキシ樹脂(NC3000H、多官能ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製商品名)を2部、フェノール樹脂(KA1165、オルトクレゾールノボラック型フェノール樹脂、大日本インキ化学工業株式会社(DIC株式会社)製商品名)を1部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.03部を配合し、電解銅箔(F3−WS−18、古河サーキットフォイル株式会社製商品名)の粗化面上に、乾燥後の厚みが約100ミクロン以上になるように塗布し、130℃で15分間、乾燥した。樹脂面と別の電解銅箔(F3−WS−18)の粗化面が合わさるようにして重ね、185℃、2MPa、90分の条件で真空プレスを行い両面銅張り積層板を作製した。両面銅張り積層板の銅をエッチングして得られた樹脂板を幅5mm、長さ30mmに切り出し試料とした。レオロジー株式会社製動的粘弾性測定装置Reogel4000を用い30℃〜250℃の弾性率変化を測定した。
(アクリル樹脂と、エポキシ樹脂−フェノール樹脂との相溶性)
上記の組成物を塗布・乾燥した後、目視で組成物の表面を観察し、表面状態により、相溶性を評価した。相溶性の評価は、艶があり、白濁が認められないものを「○」、艶がほとんどなく、白濁が認められるもの「×」とした。結果を表5に示した。
【0058】
(接着フィルムの接着強度測定)
上記で作製した両面銅張り積層板の銅箔を幅5mmの短冊状に引き剥がし樹脂と銅箔の間の接着強度を測定した。
【0059】
(評価結果)
本発明で得られた実施例1から5の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂は比較例1と同程度の弾性率、Tgを有するとともに比較例1に比べ、溶断温度が高く、同じ樹脂分(NV)のワニスでは低粘度を示した。
また、実施例6、7の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂はエポキシ樹脂、フェノール樹脂との相溶性が高く、接着剤としたときの銅箔に対する接着強度が向上した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
本発明で得られた実施例1から5の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂は比較例1と同程度の弾性率、Tgを有するとともに比較例1に比べ、溶断温度が高く、同じ樹脂分(NV)のワニスでは低粘度を示した。
また、実施例6、7の両末端にポリグリシジルブロックを有するアクリル樹脂はエポキシ樹脂、フェノール樹脂との相溶性が高く、接着剤としたときの銅箔に対する接着強度が向上した。
図1
図2