特許第6165452号(P6165452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165452
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20170710BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20170710BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   H01L21/302 101C
   H01L21/68 R
   H05H1/46 L
   H05H1/46 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-18690(P2013-18690)
(22)【出願日】2013年2月1日
(65)【公開番号】特開2014-150186(P2014-150186A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2016年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】一野 貴雅
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−123809(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128348(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/061740(WO,A1)
【文献】 特開2010−040644(JP,A)
【文献】 特開2010−062195(JP,A)
【文献】 特表2007−537582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/461
H01L 21/67−21/683
H05H 1/00−1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が減圧排気される処理室と、前記処理室に設けられ凸部形状を有した基材の当該凸部上面に被処理基板が載置される試料載置電極と、前記処理室内にプラズマを発生させるための電磁波発生装置と、前記処理室内に処理ガスを供給する供給系と前記処理室内を排気する為の真空排気系とを有するプラズマ処理装置において、
前記基材は、前記凸部を構成する上部の基材層とその下方でブレージングもしくは金属含有接着剤を介して接合され冷媒溝を有する下部の基材層とを有し、
前記凸部上面の直径は前記被処理基板の直径未満であり、
ヒータ層は前記凸部上部に配置され、
前記上部の基材層前記凸部下方の当該凸部外周側の部分の内部であって、当該凸部外周側の部分の下方の前記下部の基材層内の前記冷媒溝の上方に真空断熱層が配置されて、前記冷媒溝の垂直方向の投影面は、前記真空断熱層の垂直方向の投影面と重なることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記試料載置電極は、前記凸部上部に静電吸着膜を有しことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置において、
前記上部の基材層内であって、前記凸部内側下方に中心側真空断熱層が配置され、
前記中心側真空断熱層の垂直方向の投影面が、前記冷媒溝の投影面と重なる部分を持つことを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマエッチング装置等のプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料台を兼ねたヒータ内蔵電極(以下、試料載置電極と呼ぶ)の従来技術の一例は、冷媒流路を有する純チタン(以下、「Ti」と記載する。)基材の上部に溶射法によってヒータ層、吸着層で構成する多層膜を積層して構成した構造が知られている。冷媒としては、水やクロニナートが用いられ、冷却だけでなく200℃程度迄の加熱も可能であるが、ここでは冷媒と呼ぶ。基材に純Tiを用いるのはAlを主成分とする上層溶射膜との線膨張係数がほぼ等しく、試料載置電極温度の変化によって生じる熱応力を軽減することが主な目的である。さらに、純チタンをTi合金(Ti−6Al−4V)で構成することで均一性を向上させる技術が特許文献1で提案されている。ここで、「Al」はアルミニウム、「V」はバナジウムを示す。これらの技術ではヒータの加熱による温度上昇(以下ΔTと記載する)はせいぜい50℃程度であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−62195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体集積回路の集積度が高くなるにつれて素子構造の微細化が進み、近年では従来使用されていなかった新たな材料を用いたデバイスが多数検討されており、特にメモリの分野においては従来の主流であったDRAM構造の代替メモリの開発が盛んであり、例えばMRAM(Magnetic Random Access Memory)等の開発が積極的に行われている。
【0005】
しかしながら、近年の被エッチング材料等の被処理材料の材質の変化によって、材料によっては試料載置電極表面温度への要求は高温化しており、例えば200〜400℃程度まで試料載置電極の温度を上昇させての処理が求められている。従来の構造では冷媒温度とヒータの出力によって試料載置電極表面の温度が決まるが、冷媒温度の上限値は実用的な材料では200℃程度であり、400℃程度迄加熱するためには、ヒータの加熱による温度上昇ΔTを200℃程度まで上昇させる必要がある。この際、有効なのはヒータと冷媒溝両者の距離を長くして加熱領域を増やすことと、基材の熱伝導率を悪くして加熱された電極からの放熱を低減することである。但し、熱伝導率については前記の上層溶射膜との関連もあり、従来材料から変更するのは難しい。また、距離を長くする方法も、ΔT(200℃)から推定すると、従来(ΔT:50℃)と比べて4倍程度にする必要があり、基材全体寸法の大型化、及びコスト上昇を招いてしまう。
【0006】
また、ヒータでこれまで以上の高温に加熱した場合に生じる大きな熱フラックスに対して、冷媒溝での熱交換レートのわずかな違いがウエハでの温度ムラとして現れ、加工寸法精度が低下してしまうという問題が危惧される。特に、試料載置電極の構造として、被エッチング材料を載せる部分は凸状で被エッチング材料よりも小さい必要がある。これは、試料載置電極自身のエッチングを低減・防止するためである。また、ヒータ層はプラズマ、あるいは試料載置電極から絶縁されている必要があるため、最外周までヒータを配置することが困難である。特に凸状の形状の肩部にはヒータが配置されていないため、試料載置電極の表面温度が200℃程度以下の場合には被エッチング材料であるウエハは、エッチングの際、中心部よりも周辺部で温度が高くなることが知られていた。しかしながら、発明者が検討した結果、試料載置電極の表面温度をこれまで以上に高めた場合には、ウエハの中心部分よりも周辺部で温度が上がりにくいことを見出した。したがって、試料載置電極の温度を高めた場合には、従来用いられていた均一化の手法が使えないことが分かった。
【0007】
本発明の目的は、被処理材料を高温で均一に加熱することのできるプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一実施形態として、内部が減圧排気される処理室と、前記処理室に設けられ凸部形状を有した基材の当該凸部上面に被処理基板が載置される試料載置電極と、前記処理室内にプラズマを発生させるための電磁波発生装置と、前記処理室内に処理ガスを供給する供給系と前記処理室内を排気する為の真空排気系とを有するプラズマ処理装置において、
前記基材は、前記凸部を構成する上部の基材層とその下方でブレージングもしくは金属含有接着剤を介して接合され冷媒溝を有する下部の基材層とを有し、
前記凸部上面の直径は前記被処理基板の直径未満であり、
ヒータ層は前記凸部上部に配置され、
前記上部の基材層前記凸部下方の当該凸部外周側の部分の内部であって、当該凸部外周側の部分の下方の前記下部の基材層内の前記冷媒溝の上方に真空断熱層が配置されて、前記冷媒溝の垂直方向の投影面は、前記真空断熱層の垂直方向の投影面と重なることを特徴とするプラズマ処理装置とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被処理材料を高温で均一に加熱することのできるプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の各実施例に係るプラズマエッチング装置の全体概略構成図である。
図2】本発明の実施例1に係るプラズマエッチング装置における試料載置電極の詳細構成断面図である。
図3】径方向における試料載置電極の表面温度の計算結果であり、(a)は従来試料載置電極の場合、(b)は実施例1で用いた試料載置電極の場合を示す。
図4】本発明の実施例2のプラズマエッチング装置における試料載置電極の詳細構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明者は、試料載置電極の表面温度をこれまで以上に高めた場合には、従来と異なり、ウエハの中心部分よりも周辺部で温度が上がり難い理由について検討した。ウエハの温度は、プラズマによる加熱と試料載置電極による加熱とのバランスにより決定されると考えられる。この場合、ウエハが試料載置電極に接触している部分では試料載置電極表面の温度で主に調整されるが、試料載置電極からはみ出したウエハの周辺部は、試料載置電極の温度よりもプラズマの影響を受け易くなる。試料載置温度が低い場合には、プラズマによる加熱によりウエハ周辺部の温度が上がり、試料載置温度が高い場合には、プラズマによる加熱効果が十分ではなくウエハ周辺部の温度が上がり難くなったものと思われる。しかしながら、プラズマ発生条件は、プラズマ処理工程の内容により決定されており、自由に変更することはできない。そこで、発明者は、試料載置電極の周辺部における放熱(冷却)を低減することにより、相対的に中心部よりも周辺部の温度を上げられるのではないかと考えた。試料載置電極周辺の放熱(冷却)を低減するための手段として、試料載置電極の周辺内部に真空断熱層を設けたところ、試料載置電極の周辺部における放熱を低減でき、従来と同等の寸法で従来よりも大きいΔTを得ることが出来、なおかつ径方向の温度均一性を改善できることが分かった。なお、放熱を低減する手段として、真空断熱層が好適であるが、試料載置電極を鉛直上方から見てヒータ層形成領域の内部に納まるように冷媒溝の形成領域をヒータ層形成領域よりも一回り小さくした構成とすることもできる。
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の第1の実施例を図1図3を用いて説明する。図1は本実施例に係るプラズマ処理装置(プラズマエッチング装置)の全体概略断面図である。本実施例に係るプラズマ処理装置は、真空排気されるプラズマ処理室101と、被処理体1を載置する試料載置電極2と、プラズマ生成用高周波電力が供給されるアンテナ102と、整合器103と、プラズマ生成用高周波電源104と、処理ガス供給系105と、直流電源106と、高周波バイアス電源107を有する。
【0014】
真空容器内のプラズマ処理室101の中に誘導結合によりプラズマを生成するため、処理ガス供給系105によりプラズマ処理室101に処理ガスが供給されると共に、アンテナ102にはプラズマ生成用高周波電源104より整合器103を介して高周波電力が供給され、ウィンドウ108を介してプラズマ処理室101内部の処理ガスと誘導結合される。
【0015】
被処理体1を載置して保持する試料載置電極2には直流電源106が接続されている。これにより、試料載置電極2の中の静電吸着膜(絶縁膜)を介して被処理体1と試料載置電極2の間に作用するクーロン力により被処理体1が試料載置電極2上に吸着保持される。また、試料載置電極2には400KHz−4MHzの周波数の高周波バイアス電源107が接続されている。さらに、試料載置電極2には加熱のためのヒータ電源3と、加熱・冷却等の熱交換のための冷媒導入系4が接続されており、試料載置電極2の表面を所望の温度(例えば、200℃〜400℃)に調節することが出来る。さらに冷却ガス導入系5より冷却ガス、例えばHeを導入することで、被処理体1と試料載置電極2の間の熱伝導を促進し、被処理体1を所望の温度に制御することが出来る。なお、ウエハ等の被処理体1の直径は凸状の試料載置電極の凸部直径よりも大きな寸法を有する。
【0016】
次に図2を用いて試料載置電極の詳細構造を説明する。図2は本実施例に係るプラズマエッチング装置の試料載置電極の詳細構成断面図である。試料載置電極基材は、TiあるいはTi合金で形成された3層構造を有する。基材第1層8の凸部上部にはヒータ層7が埋め込まれた絶縁膜(溶射膜)6が溶射等の方法で形成されている。このとき、絶縁の必要から、ヒータ層7は凸部内部にのみに形成されている。また、溶射膜6の内部には、被処理体を静電吸着するための直流電力が供給される複数の膜状の電極が設置されている(図示せず)。
【0017】
次に基材第1層8とブレージング(ろう付け)等で接着された基材第2層10の試料載置電極肩部の下方には真空断熱層9が形成されている。また、基材第2層10とブレージング等で接着された基材第3層12には冷却等のための冷媒溝11が生成されている。このとき、真空断熱層9の投影面と外周部の冷媒溝11の投影面が重なる場合が好適であるが、基材層内であって、試料載置電極肩部(凸部外周)と凸部外周に隣接する冷媒溝との間に真空断熱層を配置することにより、効果を得ることができる。
【0018】
本実施例はこの真空断熱層9を有することを最大の特徴とする。この効果について図3で説明する。図3(a)は肩部の下方に真空断熱層が無い場合の試料載置電極の表面温度分布の計算結果を示す。なお、この温度分布は公知の三次元シミュレータで求めることができる。肩部のヒータは中央部のヒータに比べて加熱する電極基材の体積が大きくなるため、放熱が大きく、どうしても外周部の温度が低下してしまう。図3(b)は肩部の下方に真空断熱層(放熱低減手段)を設けた場合の試料載置電極の表面温度分布の計算結果を示す。図3(b)のように断熱層がある場合には、肩部のヒータが加熱する体積が減少し、到達温度は断熱層が無い場合に比べて高くなる。この効果により、従来の図3(a)と比べて、電極温度分布を均一にすることが出来る。更に、肩部の下方に真空断熱層が無い場合には第2層を介して冷媒により冷却され易く、肩部での放熱が大きくなる。一方、肩部の下方に真空断熱層(放熱低減手段)がある場合には冷媒までの熱流路が遮断されるため冷却され難く、肩部での放熱が小さくなる。
【0019】
そこで、図1に示すドライエッチング装置の試料載置電極として図2に示す試料載置電極を用い、試料載置電極の表面温度を300℃以上の所望の温度でドライエッチングを行ったところ、良好な均一性が得られた。
以上本実施例によれば、試料載置電極の肩部下方に真空断熱層を設けることにより、被処理材料を高温で均一に加熱することのできるプラズマ処理装置を提供することができる。また、試料載置電極の肩部下方に形成された冷媒溝に重なる位置に真空断熱層を設けることにより、より被処理材料を均一に加熱することができる。
【実施例2】
【0020】
次に本発明の第2の実施例について、図4を用いて説明する。なお、実施例1に記載され本実施例に未記載の事項は特段の事情が無い限り本実施例にも適用することができる。図4は本実施例2のプラズマエッチング装置における試料載置電極の詳細構成断面図であり、図2に示した試料載置電極の肩部下方の真空断熱層に加えて、中心部にも断熱層(中心側真空断熱層)を有することを特徴とする。本構成においては、肩部に関しては実施例1の効果が期待できるため、外周部の温度が極端に低下することが無い。さらに、本実施例の試料載置電極は断熱層の投影面は冷媒溝の投影面と重なる部分を持つことを特徴とする。これは、試料載置電極の温度分布を向上させる役割を持つ。従来の試料載置電極の上面の温度プロファイルは、実際には波打っており、冷媒溝がある箇所は冷却されやすく、無い箇所は加熱されやすい。一方、本実施例の試料載置電極のでは、冷媒溝と投影面と断熱層の投影面が重なっていることで冷媒溝までの熱伝導率を悪化させる効果があり、従来構造では冷えすぎていた箇所が周囲の冷媒溝が無い箇所と同程度の温度で安定する。
【0021】
以上のように、本実施例を用いることで電極肩部の温度低下を無くし、均一な温度分布を持つ電極を実現することが可能となる。
そこで、図1に示すドライエッチング装置の試料載置電極として図4に示す試料載置電極を用い、試料載置電極の表面温度を300℃以上の所望の温度でドライエッチングを行ったところ、良好な均一性が得られた。
以上本実施例によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、試料載置電極の中心部に真空断熱層を形成することにより、試料載置電極の中央部における温度が安定する。
【0022】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1…被処理体、2…試料載置電極、3…ヒータ電源、4…冷媒導入系、5…冷却ガス導入系、6…絶縁膜(溶射膜)、7…ヒータ層、8…基材第1層、9…真空断熱層、10…基材第2層、11…冷媒溝、12…基材第3層、101…プラズマ処理室、102…アンテナ、103…整合器、104…プラズマ生成用高周波電源、105…処理ガス供給系、106…直流電源、107…高周波バイアス電源、108…ウィンドウ。
図1
図2
図3
図4