特許第6165518号(P6165518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特許6165518-プラズマ処理方法および真空処理装置 図000002
  • 特許6165518-プラズマ処理方法および真空処理装置 図000003
  • 特許6165518-プラズマ処理方法および真空処理装置 図000004
  • 特許6165518-プラズマ処理方法および真空処理装置 図000005
  • 特許6165518-プラズマ処理方法および真空処理装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165518
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法および真空処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20170710BHJP
【FI】
   H01L21/302 106
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-132210(P2013-132210)
(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-8183(P2015-8183A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】田中 一海
(72)【発明者】
【氏名】角屋 誠浩
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−235660(JP,A)
【文献】 特開平05−129238(JP,A)
【文献】 特表2013−526060(JP,A)
【文献】 特開平11−330046(JP,A)
【文献】 特開2010−056574(JP,A)
【文献】 特表平09−503103(JP,A)
【文献】 特表2004−514272(JP,A)
【文献】 特開2002−222861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/3205−21/3213
H01L 21/461
H01L 21/768
H01L 23/522
H01L 23/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含有する膜が配置された試料をプラズマ処理するプラズマ処理方法において、
ハロゲン含有ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いて前記試料をプラズマ処理し、
前記プラズマ処理された試料が後処理される表面処理室と異なるプラズマ生成室にて酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いてプラズマを生成し、
前記プラズマ生成室と前記表面処理室の間に配置された輸送経路を介して前記酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いて生成されたプラズマを前記表面処理室に輸送することにより前記プラズマ処理された試料にラジカルを照射しながら後処理し、
前記酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスに対する前記酸素ガスの割合は、1%から10%の範囲内の割合であって、
前記後処理する時の処理温度は、20℃から前記試料のガラス転移温度までの範囲内の温度であることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理方法において、
リモートプラズマ装置を用いて前記後処理を行うことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ処理方法において、
前記ハロゲン含有ガスは、HBrガスまたはClガスであることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項4】
試料がプラズマ処理されるプラズマ処理室と、前記プラズマ処理された試料を大気側に搬出するアンロードロック室と、前記プラズマ処理室と前記アンロードロック室と異なるプラズマ生成室にてプラズマを生成するリモートプラズマ装置とを備える真空処理装置において、
前記アンロードロック室は、前記リモートプラズマ装置にて生成されたプラズマを輸送する輸送経路を介して前記プラズマ生成室にて生成されたプラズマを輸送されることによりラジカル照射による前記プラズマ処理された試料の後処理が行われ、
前記輸送経路の材質は、石英または、表面が酸化処理されたアルミであって、
前記後処理する時の処理温度は、20℃から前記試料のガラス転移温度までの範囲内の温度に制御されていることを特徴とする真空処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理方法および真空処理装置に係り、特に半導体素子を製造するプラズマ処理方法および真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、一般にプラズマを用いたドライエッチングが行われており、歩留まり低下の要因である異物の低減が重要な問題となっている。また、デバイスの高集積化に伴う素子の微細化に伴い、歩留まり低下を引き起こす異物の粒径も小さくなり、異物低減の要求がますます高くなってきている。
【0003】
上記の真空処理装置内で試料上へ付着する異物としては、真空装置内壁等に付着していたものや真空装置内壁材の腐食等により内壁自体から発生した異物が資料の搬送や真空排気等の過程でウェハ上に落下したもの、または、プラズマエッチング処理によって生じる残留反応生成物等が挙げられる。
【0004】
後者の要因の一つとして試料上の残留ハロゲン成分が挙げられる。試料上の残留ハロゲン成分は、試料の搬送過程で処理室以外の装置内壁の腐食を引き起こすことが一般的に知られている。また、他のガスとの混合により試料上に反応生成物による異物を発生させることが分かっている。
【0005】
例えば、処理中に窒素(N2)ガスと塩素(Cl2)ガスや臭化水素(HBr)ガス等のハロゲン含有ガスと窒素ガスを混合することで、試料表面に異物となるハロゲン化アンモニウムを生成し、次工程のエッチング処理を阻害する場合があることが知られ、また、例えば、残留した臭素(Br)が大気中に搬送後に基板上で増加して形成したパターンを埋めてしまうことが分かっている。
【0006】
搬送システムにおける腐食防止方法として、特許文献1には、チャンバー内の被処理体に対してプラズマ処理を行うプラズマ処理方法は、少なくともハロゲン元素を含むガスをプラズマ化して生成した第1のプラズマにより被処理体を処理する第1のプラズマ処理と、第1のプラズマ処理後、前記チャンバー内に酸素を含むガスを供給し、第2のプラズマを生成させて前記チャンバーおよび被処理体を処理する第2のプラズマ処理と、第2のプラズマ処理後の被処理体を、少なくともフッ素を含むガスをプラズマ化して生成した第3のプラズマにより処理する第3のプラズマ処理と、を含むことが開示されている。
【0007】
また、基板から揮発性残渣を除去するための方法として、特許文献2には、基板から揮発性残渣を除去する方法は、真空気密プラットフォームを持つ処理システムを準備するステップと、プラットフォームの処理チャンバ内で基板をハロゲンを含む化学で処理するステップと、処理された基板をプラットフォーム内で処理して、処理された基板から揮発性残渣を放出させるステップと、を含むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−270030号公報
【特許文献2】特開2008−109136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年では、半導体素子の材料として、例えば、high−k/メタルゲートのようなトランジスタ構造等において金属材料が使用されている。このような金属材料は、酸素(O2)プラズマに曝すことで金属材料の表面が酸化し、デバイスの特性を損なうこと等が懸念されるにも関わらず、特許文献1に開示されたプラズマ処理方法では金属材料表面酸化に対する配慮が行われていなかった。
【0010】
本発明は、ハロゲンガスを用いて金属材料をプラズマエッチングするプラズマ処理方法および真空処理装置において、金属材料表面酸化を抑制するとともに試料上の残留ハロゲン成分を除去することができるプラズマ処理方法および真空処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、金属を含有する膜が配置された試料をプラズマ処理するプラズマ処理方法において、ハロゲン含有ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いて前記試料をプラズマ処理し、前記プラズマ処理された試料が後処理される表面処理室と異なるプラズマ生成室にて酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いてプラズマを生成し、前記プラズマ生成室と前記表面処理室の間に配置された輸送経路を介して前記酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いて生成されたプラズマを前記表面処理室に輸送することにより前記プラズマ処理された試料にラジカルを照射しながら後処理し、前記酸素ガスと窒素ガスとの混合ガスに対する前記酸素ガスの割合は、1%から10%の範囲内の割合であって、前記後処理する時の処理温度は、20℃から前記試料のガラス転移温度までの範囲内の温度であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、試料がプラズマ処理されるプラズマ処理室と、前記プラズマ処理された試料を大気側に搬出するアンロードロック室と、前記プラズマ処理室と前記アンロードロック室と異なるプラズマ生成室にてプラズマを生成するリモートプラズマ装置とを備える真空処理装置において、前記アンロードロック室は、前記リモートプラズマ装置にて生成されたプラズマを輸送する輸送経路を介して前記プラズマ生成室にて生成されたプラズマを輸送されることによりラジカル照射による前記プラズマ処理された試料の後処理が行われ、前記輸送経路の材質は、石英または、表面が酸化処理されたアルミであって、前記後処理する時の処理温度は、20℃から前記試料のガラス転移温度までの範囲内の温度に制御されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ハロゲンガスを用いて金属材料をプラズマエッチングするプラズマ処理方法および真空処理装置において、金属材料表面酸化を抑制するとともに試料上の残留ハロゲン成分を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る真空処理装置の概略図である。
図2】本発明に係るアンロードロック室の断面図である。
図3】HBrガスによる異物数とCl2ガスによる異物数を示す図である。
図4】窒化チタン膜表面に残留している元素組成を示す図である。
図5】酸素ガスの希釈率に対する、窒化チタン膜表面に残留している酸素元素の割合依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例について、以下、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明を実施した真空処理装置100の概略を、図1を用いて説明する。図1に示す真空処理装置100は、大きく分けて真空側ブロック101と大気側ブロック102とを備えている。大気側ブロック102は、大気搬送ロボット109を備えた大気搬送容器108とアライメントユニット111を有し、この大気搬送容器108の前面側には真空処理装置100において処理される対象となる半導体ウェハ等の試料を複数枚収容可能なウェハカセット110(a)、110(b)、110(c)を備えている。
【0017】
真空側ブロック101は、内部に真空搬送ロボット107を備えた真空側搬送容器112の側壁面の周囲に、内部が減圧されたその内部に試料114が搬送されエッチング処理が行われる真空処理室103(a)、103(b)と、内部が減圧されたその内部に試料が搬送されアッシングなどの後処理が行われるプラズマ後処理室104(a)、104(b)と、試料114を大気側と真空側との間でやり取りするロードロック室105とアンロードロック室106を備えている。
【0018】
本実施例における、図1に示す真空処理装置100に配置された真空処理室103(a)、103(b)は、真空容器(図示せず)と上記の真空容器に接続されたガス供給装置(図示せず)と、真空容器内の圧力を所望の値に維持する真空排気系(図示せず)と、半導体基板である試料114を載置する試料台(図示せず)と、真空処理室103(a)、103(b)内にプラズマを発生させるためのプラズマ生成手段(図示せず)とを備えている。また、真空処理室103(a)、103(b)は、プラズマ生成手段により、上記の試料台と対向するシャワープレート(図示せず)からダウンフローで真空処理室103(a)、103(b)内に供給された処理ガスをプラズマ状態とすることで、試料台上に載置された試料のプラズマ処理を行う。
【0019】
また、本実施例のプラズマ生成手段としては、真空処理室103(a)、103(b)内に導入されたマイクロ波と真空処理室103(a)、103(b)の周辺に配置されたソレノイドコイルによって生成される磁界との電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance:ECR、以下、ECRと略称する)により真空処理室103(a)、103(b)内に反応性ガスのプラズマを効率的に形成するマイクロ波ECR方式によるプラズマ生成手段を用いた。
【0020】
図1に示す真空処理装置100に配置されたプラズマ後処理室104(a)、104(b)は、真空容器(図示せず)と、上記の真空容器に接続されたガス供給装置(図示せず)と、真空容器内の圧力を所望の値に維持する真空排気手段(図示せず)と、半導体基板である試料114を載置する試料台(図示せず)と、プラズマを発生させるためのプラズマ生成手段(図示せず)とを備えている。
【0021】
また、プラズマ後処理室104(a)、104(b)は、プラズマ生成手段により、上記の試料台に対向するシャワープレート(図示せず)からダウンフローでプラズマ後処理室104(a)、104(b)内に供給された処理ガスをプラズマ状態とすることで、試料台上に載置された試料のプラズマ処理を行う。尚、上記のプラズマ生成手段は、真空処理室103(a)、103(b)内に生成されたプラズマとは異なるプラズマを生成させるためのプラズマ生成手段である。また、アッシング処理による脱離反応を促進するため、上記の試料台は内部にヒーターを備えている。また、本実施例のプラズマ後処理室104(a)、104(b)のプラズマ生成手段として、誘導結合型プラズマ源のプラズマ生成手段を用いた。
【0022】
さらに、アンロードロック室106にリモートプラズマ装置113を搭載している。本実施例におけるリモートプラズマ装置113とは、プラズマを生成する装置であり、リモートプラズマ装置113で試料114へのプラズマ処理は行わない。また、リモートプラズマ装置113は、例えば、試料114を配置するアンロードロック室106とは異なる耐食性に優れた石英や酸化処理等の表面処理されたアルミ等の材料を内壁材料とするプラズマ生成室(図示せず)を備えている。上記プラズマ生成室は、所定の流量の所定のガスが供給され、所定の圧力において所定の高周波電力が供給されることによりプラズマを生成する。
【0023】
上記プラズマ生成室で生成されたプラズマは、真空配管(図示せず)を介して試料が配置されたアンロードロック室106に輸送され、ラジカルである活性化された反応性ガスが試料114上に到達する。これは、上記プラズマ生成室で生成されたプラズマには、イオンとラジカルが存在しているが、上記プラズマ生成室で生成されたプラズマが真空配管を介してアンロードロック室に輸送される過程において、荷電粒子であるイオンは、真空配管の壁との衝突等により概ね消失するため、主にラジカルがアンロードロック室106に到達する。
【0024】
また、上記プラズマ生成室の圧力を例えば、100Pa以上の比較的高い圧力にしてプラズマを生成することにより、アンロードロック室106へのイオンの到達を低減し易くなり、効率良くラジカルをアンロードロック室106に輸送することが可能となる。また、上記プラズマ生成室のプラズマ生成手段としては、直流放電、容量結合型高周波放電、誘導結合型高周波放電、またはマイクロ波放電などの各種プラズマ源が使用可能であるが、放電による不純物の混入が低い観点から、誘導結合型高周波放電またはマイクロ波放電といった、プラズマ生成室内に電極がない無電極放電形式が好ましい。
【0025】
さらに、上記プラズマ生成室でのプラズマ生成時の圧力は、1Pa以下の低圧から大気圧などあらゆる圧力範囲で生成可能であるが、上述のようにラジカル発生効率およびアンロードロック室106へのイオンの到達率低減の観点から、100Pa以上の比較的高圧力領域の圧力とすることが望ましい。
【0026】
次に図2にリモートプラズマ装置113を備えるアンロードロック室106の断面とその周辺の構成を示す。アンロードロック室106は、アルミ、もしくは表面を酸化処理されたアルミ製の真空容器201、被処理物である試料を載置するための試料台202とそれに対向して設置された石英製のシャワープレート203が配置される。尚、シャワープレート203は、アルミまたは表面を酸化処理されたアルミで製作されても良い。
【0027】
また、アンロードロック室106には、真空容器201を減圧するための排気装置204を備え、排気装置204とアンロードロック室106間に設けられた可動弁205によって排気装置204の排気速度を制御し、真空容器201内の圧力を制御する。ここで、本実施例では、排気装置204は、ドライポンプとする。
【0028】
さらに、アンロードロック室106には、ガスディフューザ206、ベント用バルブ207およびレギュレータ208を介して、ベント用ガス209が導入される。また、アンロードロック室106は、大気搬送容器108とは大気側ゲートバルブ220を閉鎖するとともに真空側搬送容器112とは真空側ゲートバルブ221を閉鎖することにより密閉可能である。
【0029】
また、リモートプラズマ装置113は、アンロードロック室106上部に搭載され、さらにリモートプラズマ装置113には、マスフローコントローラ210およびガスバルブ211を介してプロセスガス供給装置212からプロセスガスが導入されてプラズマを生成させ、主にラジカルがアンロードロック室106に到達する。リモートプラズマ装置113内で生成されたラジカルは、上記のシャワープレート203を介して、試料上に照射される。本実施例では、リモートプラズマ装置113がアンロードロック室106に搭載された例を説明したが、リモートプラズマ装置113がプラズマ後処理室104(a)、104(b)に搭載されても本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0030】
次に本発明のプラズマ処理方法について説明する。予め付着した異物数測定した処理対象の試料(本実施例はシリコン)を、臭化水素(HBr)や塩素(Cl2)等のハロゲン含有ガスと不活性ガスである窒素(N2)及びアルゴン(Ar)を混合したエッチング条件にて処理を行った後に再度異物数を測定し、異物発生の有無を確認する。エッチング処理後の異物数測定は処理直後と24時間後の計2回行う。
【0031】
本実施例においては、例えば上記の臭化水素(HBr)や塩素(Cl2)のハロゲン含有ガスの流量を150ml/min、不活性ガスであるアルゴン(Ar)及び窒素(N2)の流量を50ml/minとした。図3に上記、臭化水素(HBr)及び塩素(Cl2)に不活性ガスである窒素(N2)及びアルゴン(Ar)を混合したエッチングを行った後の異物数測定結果を示す。ハロゲン含有ガスと窒素(N2)の組み合わせにおいては、処理直後からオーバーフロー(測定不能)となった。
【0032】
また、ハロゲン含有ガスとアルゴン(Ar)の組み合わせにおいては、塩素(Cl2)は異物が発生しないが、臭化水素(HBr)は処理直後の測定では数十個程度の増加であったが、24時間後の測定ではオーバーフロー(測定不能)となり、ハロゲン種により発生傾向が異なることが分かった。また、詳細は省略するが発生する異物粒型が異なるということが分かった。上記の異物について、前者は臭素(Br)もしくは塩素(Cl)と窒素(N2)による反応生成物として真空処理室103(a)内にて発生したと考えられ、また後者は試料に付着した残留臭素(Br)が水分等の大気中の成分を吸着して異物として成長したと考えられる。
【0033】
上記のハロゲン(Br,Cl等)と窒素(N2)による反応生成物は同一ステップで使用した場合だけでなく、真空処理室103(a)内や試料上に残留した極僅かな残留ハロゲンに対して、窒素(N2)を使用することでも発生することが分かっている。尚、エッチング条件は、一つのステップまたは、複数のステップから構成される。また、上記の異物は、シリコンだけでなく、例えばシリコン酸化膜やシリコン窒化膜、チタン窒化膜などエッチング処理される試料が有する各膜の材料によらず発生することが分かっている。
【0034】
つまり、ハロゲン含有ガスと窒素ガスの混合ガスを用いて真空処理室103(a)でプラズマ処理された試料が後処理等を行わずに大気に晒されると成長性異物が発生する。さらにハロゲン含有ガスと窒素ガスの混合ガスを用いてプラズマ処理された試料が金属を含有する膜を有する場合、さらに上記金属が酸化しないように注意を払う必要がある。これらを踏まえ、ここから、残留ハロゲンによる成長性異物を抑制するとともに金属酸化を抑制する本発明の一連のプラズマ処理手順を説明する。
【0035】
図1に示す真空処理装置100において、大気搬送ロボット109は、窒化チタン(TiN)膜を有する試料114を、ウェハカセット110(a)、110(b)、110(c)のいずれかから搬出し、アライメントユニット111に搬出、試料114のアライメント実施後、ロードロック室105搬送される。ロードロック室105に搬入された試料114は、ロードロック室105内の試料台(図示せず)上に載置され、ロードロック室105内部が減圧された後、真空ロボット107は真空搬送容器112を介して、真空処理室103(a)に搬送する。試料114は真空処理室103(a)でハロゲン含有ガスと窒素ガスの混合ガスを用いてエッチング処理される。
【0036】
その後、真空ロボット107により真空搬送容器112を介して、リモートプラズマ装置113を搭載したアンロードロック室106に搬送される。リモートプラズマ装置113で酸素ガスと窒素ガスの混合ガスによりプラズマを生成し、主に酸素ラジカルをアンロードロック室に載置された試料114に晒す後処理を行う。尚、上記の酸素ガスと窒素ガスの混合ガスにおける酸素ガスの割合は、1%であり、窒素ガスは、酸素ガスを希釈するために用いた。
【0037】
次にアンロードロック室106をベント後、大気搬送ロボット109によりアンロードロック室106から最初に設置されていたウェハカセットに戻される。このような本発明のプラズマ処理を行うことにより、金属表面の酸化を抑制することができた。このことは、図4の(d)は、本発明のプラズマ処理を行った場合の金属表面に残留する元素組成を示しているが、図4の(d)の酸素の割合は、何もプラズマ処理が施されていない窒化チタン膜表面に残留している元素組成を示す図4の(a)の酸素割合とほぼ同程度であることからわかる。
【0038】
ここで、図4の(b)は、真空処理室103(a)でのハロゲン含有ガスと窒素ガスの混合ガスを用いたエッチングだけの場合の窒化チタン膜表面に残留している元素組成を示し、図4の(c)は、図4の(b)の場合にさらにプラズマプラズマ後処理室104(a)で酸素ガスが1%に希釈された、酸素ガスと窒素ガスの混合ガスを用いて後処理を行った場合の窒化チタン膜表面に残留している元素組成を示す。図4の(b)の場合は、窒化チタン膜の酸化の抑制に対しては効果があったが、成長性異物の抑制に効果が見られなかった。また、図4の(c)の場合は、窒化チタン膜の酸化の抑制に対しては効果が見られなかったが、成長性異物の抑制に対しては効果が見られた。
【0039】
以上の結果は、プラズマ後処理室104(a)、104(b)を用いた酸素(O2)ガスプラズマを用いた後処理では、イオン等の荷電粒子によるスパッタ効果(物理的エネルギー)により窒化チタン(TiN)のチタン(Ti)と窒素(N)の結合を切断し、窒素(N)と酸素(O)の置換を進行、結果的に表面の酸化反応を促進させると考えられる。このことから、リモートプラズマにおいては、主にラジカルが試料表面に到達するため、試料表面の酸化を促進することなく、表面に付着した残留物のみを除去できたと考える。
【0040】
本実施例では、アンロードロック室106での後処理に酸素ガスを1%に希釈した酸素ガスと窒素ガスの混合ガスを用いたが、本発明の酸素ガスの希釈率は、1%に限定されず、図5に示すように1%から10%の範囲の希釈率でも良い。また、本実施例では、酸素ガスの希釈用ガスとして窒素ガスを用いたが、本発明は、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガス、クリプトンガス等の不活性ガスでも良い。
【0041】
以上、上述した通り、本実施例では誘導結合型プラズマまたはマイクロ波プラズマを生成するリモートプラズマ装置とリモートプラズマ装置に導入するガス比率により、試料表面に到達するイオンとラジカルの量を制御したが、本発明は、容量結合型プラズマ源においても、イオンを試料表面に到達させず(消失を促す)、且つラジカルを効率よく試料表面に輸送するような処理条件、構造を採用することで本実施例と同等の効果を得ることができる。
【0042】
また、上述のリモートプラズマ処理装置でのプラズマ生成のための圧力を例えば、100Pa〜1kPa程度の高圧とすることでイオンの消失を促進できる。さらにラジカルを試料上に輸送する経路の経路長、輸送経路の断面の断面積またはアスペクト比等をラジカルの輸送に影響を及ぼさない最低限の寸法にしたり、輸送経路の壁の材質を例えば酸素ラジカル衝突時の消滅率の低い材質である石英または表面を酸化処理されたアルミ等を用いることにより、ラジカルを効率的に試料に輸送できる。
【0043】
さらに、アンロードロック室106での後処理の試料温度は、試料表面の残留成分とラジカルとの反応性を考慮すると20℃以上、且つ試料の材料特性が変化する転移温度(例えば、ガラス転移温度Tg等)以下で行うことが望ましい。これは、20℃以下だとラジカルとハロゲン含有異物との反応が低下し、転移温度より高い温度で試料を処理するとかえって酸化が促進されるからである。
【0044】
また、本実施例は、真空処理室103(a)、103(b)のプラズマ生成手段としてECR方式を用いた場合で説明したが、本発明は、誘導結合型プラズマ、容量結合型プラズマをプラズマ生成手段として用いても良い。
【0045】
また、本実施例は、リモートプラズマ装置をアンロードロック室106上に搭載した例を説明したが、本発明は、リモートプラズマ装置をロードロック室105上に搭載したり、リモートプラズマをプラズマプラズマ後処理室104(a)、104(b)のプラズマ源として用いても良い。
【0046】
以上、上述した通り、本発明は、金属を含有する膜を有する試料をプラズマ処理するプラズマ処理方法において、ハロゲン含有ガスと窒素ガスとの混合ガスを用いて前記試料をプラズマ処理し、前記プラズマ処理された試料が後処理される後処理室と異なるプラズマ生成室にて酸素ガスと不活性ガスとの混合ガスによりプラズマを生成し、前記プラズマ生成室と前記後処理室の間に配置された輸送経路を介して前記生成されたプラズマを後処理室に輸送しながら前記試料を後処理することである。
【符号の説明】
【0047】
100…真空処理装置
101…真空側ブロック
102…大気側ブロック
103(a)、103(b)…真空処理室
104(a)、104(b)…プラズマ後処理室
105…ロードロック室
106…アンロードロック室
107…真空搬送ロボット
108…大気搬送容器
109…大気搬送ロボット
110(a)、110(b)、110(c)…ウェハカセット
111…アライメントユニット
112…真空搬送容器
113…リモートプラズマ装置
114…試料
201…真空容器
202…試料台
203…シャワープレート
204…排気装置
205…可動弁
206…ガスディフューザ
207…ベント用バルブ
208…レギュレータ
209…ベント用ガス
210…マスフローコントローラ
211…ガスバルブ
212…プロセスガス供給装置
220…大気側ゲートバルブ
221…真空側ゲートバルブ
図1
図2
図3
図4
図5