特許第6165665号(P6165665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165665
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】基板の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/32 20060101AFI20170710BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20170710BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20170710BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   C11D7/32
   C11D7/26
   C11D7/50
   H01L21/304 647A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-79883(P2014-79883)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-7217(P2015-7217A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年5月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-114280(P2013-114280)
(32)【優先日】2013年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】上野 方也
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 秀好
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2009/096480(JP,A1)
【文献】 特開2014−133855(JP,A)
【文献】 特開平10−289891(JP,A)
【文献】 特開2004−133153(JP,A)
【文献】 特開2010−250268(JP,A)
【文献】 特開2004−093678(JP,A)
【文献】 特開2011−216542(JP,A)
【文献】 特開2006−063201(JP,A)
【文献】 特開2012−017465(JP,A)
【文献】 特表2012−526295(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/127941(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 7/32
C11D 7/26
C11D 7/50
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面がシリコーン系接着剤に汚染された水接触角が100度以上の基板の前記表面を、
(A)第四級アンモニウム塩:0.1〜2.0質量%
(B)水:0.1〜4.0質量%
(C)有機溶媒:94.0〜99.8質量%
を含有してなる基板の洗浄剤組成物により洗浄し、水接触角が10〜30度の基板を得る基板の洗浄方法であり、
前記有機溶媒を、分子中に少なくとも1個以上の水酸基を含有した有機溶媒であって、炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコール、炭素数2〜16のグリコール、及び炭素数4〜20のグリコールエーテルのうち少なくとも1種以上を含むものとし、
前記洗浄される基板を厚さ20〜100μmの半導体パッケージ用に薄型加工された薄型基板とすることを特徴とする基板の洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄される基板を、シリコン半導体基板とすることを特徴とする請求項1に記載の基板の洗浄方法
【請求項3】
前記第四級アンモニウム塩テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドとすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の基板の洗浄方法
【請求項4】
前記テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドテトラエチルアンモニウムヒドロキシドとすることを特徴とする請求項3に記載の基板の洗浄方法
【請求項5】
前記有機溶媒を、炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールとすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の基板の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の洗浄組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種基板の微細化や高集積化が進んでおり、例えば半導体実装においては、3次元実装することにより、より一層の高密度、大容量化を実現している。3次元半導体実装技術とは、1つの半導体チップを薄型化し、さらにこれをシリコン貫通電極(TSV;through silicon via)によって結線しながら多層積層していく半導体作製技術である。
【0003】
これを実現するためには、半導体回路を形成した基板を裏面研削によって薄型化し、さらに裏面にTSVを含む電極等を形成する電極形成工程が必要である。
【0004】
薄型化する際に、半導体回路を形成した基板をシリコン、ガラス等の支持基板に接着剤を介して接合することによって裏面研削工程、裏面電極形成工程等の加工に耐えうるシステムが提案されているが、該工程後に支持基板を簡便に剥離することが必要であり、支持基板剥離後、半導体回路を形成した基板表面に残存した接着剤を除去した後、最後に薄膜半導体基板表面の洗浄を行なう必要がある。
【0005】
加工工程においては150℃以上の高温になることがあり、接着剤も耐熱性が求められる為シリコーン系接着剤が用いられるが、基板表面洗浄時に、接着剤を溶解する有機溶剤のみの洗浄では基板表面の水接触角が100度以上となり、充分に接着剤を除去することが困難であり、後の製造工程において封止材の接着不良等の不具合が発生することが予想された。
【0006】
その為、基板表面を腐食することなく残存した接着剤を短時間で充分に除去できる洗浄剤組成物が望まれているが、シリコーン成分に汚染された基板表面を短時間で充分に洗浄できる洗浄剤組成物は見出されていなかった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−010888
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、例えば表面がシリコーン成分によって汚染された水接触角が100度以上のシリコン半導体基板等の基板表面の洗浄に用いられる基板の洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明では、基板表面の洗浄に用いられる洗浄剤組成物であって、
(A)第四級アンモニウム塩:0.1〜2.0質量%
(B)水:0.1〜4.0質量%
(C)有機溶媒:94.0〜99.8質量%
を含有してなるものであることを特徴とする基板の洗浄剤組成物を提供する。
【0010】
このような洗浄剤組成物によって基板を洗浄することによって、基板を腐食することなく高効率で基板を洗浄できる。
【0011】
また、前記洗浄される基板が、100度以上、通常、100〜120度の水接触角を有するシリコン半導体基板とすることができる。
【0012】
これは、主にシリコーン系接着剤組成物が基板表面に残存していることに由来するであり、X線電子分光装置を用いて基板表面の元素分析を行なったところシリコーン接着剤由来のSi元素は、通常、洗浄前で検出された全元素100質量%に対して10質量%以上、特に20質量%以上の含有率となる。
【0013】
尚、本願に用いるシリコン基板は、回路を形成されたシリコン基板に金属配線等をさらに施すために用いられる小型用パッケージに用いられる薄型基板の加工の工程に用いられるものであってもよい。通常の厚さのシリコン基板に支持体上に高分子接着剤を形成した積層体を張り合わせることで、シリコン基板裏面を切削・研磨することで薄型加工することができる。
【0014】
尚、薄型加工に用いられた接着剤は薄型加工後不要であるため、有機溶剤で洗浄して除去するものであるが、特にシリコーン系接着剤であると除去が困難となり、基板上に10質量%以上残留した基板となる。
【0015】
このように、本発明の洗浄剤組成物であれば、表面がシリコーン成分に汚染された水接触角が100度以上のシリコン半導体基板表面を短時間で充分に洗浄でき、水接触角を100度未満にすることができる。具体的には、10〜30度、好ましくは10〜20度の接触角までに接触角を下げた基板を得ることがよい。
接触角を100度未満にすることにより半導体パッケージ材等の積層体に用いられる場合において、封止材との接着力等の効果が格段に向上するものを得ることができる。
【0016】
また、前記第四級アンモニウム塩がテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド特に、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドであることが好ましい。
【0017】
このように、第四級アンモニウム塩が第四級アンモニウム水酸化物であることが好ましい。
【0018】
また、前記有機溶媒が、分子中に少なくとも1個以上の水酸基を含有した有機溶媒であって、炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコール、炭素数2〜16のグリコール、及び炭素数4〜20のグリコールエーテルのうち少なくとも1種以上を含むものであることが好ましい。
【0019】
このように、本発明の基板の洗浄剤組成物は、有機溶媒として上記のようなものを用いることが出来る。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の基板の洗浄剤組成物を用いてシリコン半導体基板等の基板の洗浄を行なうことにより、短時間で良好な洗浄性が得られ、基板を腐食することなく高効率でシリコン半導体基板の洗浄が可能となり、薄型シリコン半導体基板として腐食のない耐久性のある基板を得ることができ、半導体パッケージ用に有効に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
前述のように、シリコン半導体基板等の基板を短時間で十分に洗浄することが可能で、高効率で良好な基板の洗浄が可能な洗浄剤組成物の開発が望まれていた。
【0022】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、第四級アンモニウム塩、水、有機溶媒をある所定の割合で含有する洗浄剤組成物であれば基板を腐食することなく高効率で基板を洗浄できることを見出し、本発明を完成させた。
【0023】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の基板表面の洗浄に用いられる洗浄剤組成物は、
(A)第四級アンモニウム塩:0.1〜2.0質量%
(B)水:0.1〜4.0質量%
(C)有機溶媒:94.0〜99.8質量%
を含有してなる洗浄剤組成物である。
【0024】
[第四級アンモニウム塩]
本発明の目的を達しうる第四級アンモニウム塩は、第四級アンモニウム水酸化物、第四級アンモニウム塩化物等が挙げられ、この第四級アンモニウム水酸化物としては炭素数1〜5の直鎖状アルキル基を有するテトラアルキルアンモニウム、炭素数1〜5のアルキル基及び炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を有するトリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられ、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、トリメチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド(通称:コリン)、トリエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。上述の第四級アンモニウム塩の中で、洗浄性、洗浄液の安定性などの理由から、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、特にテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)が好ましい。
【0025】
[有機溶媒]
本発明の目的を達しうる有機溶媒は、特に限定されないが、例えば分子中に少なくとも1個以上の水酸基を含有しており、例えば炭素数1〜8、好ましくは炭素数2〜7、さらに好ましくは炭素数3〜6の飽和脂肪族アルコール類、炭素数2〜16、好ましくは炭素数3〜14、好ましくは炭素数5〜12のグリコール類、炭素数4〜20、炭素数4〜18、炭素数4〜15のグリコールエーテル類等が挙げられ、1種または2種以上混合して
用いることができる。飽和脂肪族1価アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、2−エチルヘキシルアルコール等が挙げられる。グリコール類としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。グリコールエーテル類としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等が挙げられる。
なかでも炭素数6〜12の高級有機溶剤を用いることが好ましく、特にプロピレングリコールモノブチルエーテルが好ましく用いることができる。
【0026】
本発明の基板の洗浄剤組成物を得るには、特に限定されず洗浄剤組成物の構成成分を混合することが出来る。混合順序も任意であり、塩基性洗浄剤組成物の構成成分の内、2成分又は3成分以上を予め配合し、次いで残りの成分を混合してもよいし、一度に全部を混合してもよい。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物を製造する際は、沈殿の発生や液の分離等の不具合が発生しない範囲であることが好ましい。
【0028】
具体的には、成分(A):第四級アンモニウム塩の濃度は組成物全量に対し、0.1〜2.0質量%であり、好ましくは0.2〜1.5質量%、更に好ましくは0.3〜1.2質量%である。成分(A)は0.1質量%未満では薄型半導体基板表面の洗浄性が不十分となる恐れがあり、2.0質量%を超えた場合、洗浄効果が得られず、シリコン半導体基板の腐食等が予想される。
【0029】
成分(B):水の濃度は0.1〜4.0質量%であり、好ましくは0.1〜3.0質量%、更に好ましくは0.5〜2.5質量%である。成分(B)は0.1質量%未満では薄型半導体基板表面の洗浄性が不十分となる恐れがあり、4.0質量%を超えた場合、洗浄効果が得られず、シリコン半導体基板の腐食等が予想される。
【0030】
成分(C):分子中に少なくとも1個以上の水酸基を有する有機溶媒の濃度は94.0〜99.8質量%であり、好ましくは95.5〜99.7質量%、更に好ましくは96.3〜99.6質量%である。成分(C)は94.0質量%未満では微量の接着剤成分を溶解出来ず洗浄性が不足する可能性があり、99.8質量%を超えた場合、効果は得られない。
【0031】
上述のように、各成分の濃度を最適となるように調整して製造することができ、また、その他の成分を任意で添加することもできる。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物はシリコン半導体基板に限定されず、ゲルマニウム基板、ガリウム−ヒ素基板、ガリウム−リン基板、ガリウム−ヒ素−アルミニウム基板、アルミメッキシリコン基板、銅メッキシリコン基板、銀メッキシリコン基板、金メッキシリコン基板、チタンメッキシリコン基板、窒化珪素膜形成シリコン基板、酸化珪素膜形成シリコン基板、ポリイミド膜形成シリコン基板、ガラス基板、石英基板、液晶基板、有機EL基板等でも洗浄可能である。
【0033】
本発明では、通常の厚さの基板を洗浄できるが、特に加工切削処理された薄型基板に対し有効であり、厚さとして好ましくは20〜100μm、より好ましくは20〜70μmである基板の洗浄に有効である。
【0034】
洗浄方法としては、シリコーン樹脂等の有機物が残留した基板を、本発明の洗浄剤組成物に浸漬または噴霧処理に洗浄することが可能であり、好ましくは30秒〜30分、より好ましくは1分〜10分程度洗浄、水洗、乾燥処理する。尚、場合によって洗浄剤の分散性の点から加温しても構わない。
【0035】
尚、このように得られた腐食のない薄型基板は、さら該基板上にメッキ、スパッタ処理等を施し、小型半導体パッケージに有効に用いることが可能となる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[基板の製造]
シリコーン樹脂ノナン溶液接着剤を用い、直径8インチシリコン半導体基板(直径200mm、厚さ:725μm)上にスピンコートにて10μmの膜厚で接着層を形成した。8インチガラス基板(ガラスウエハ)を支持基板とし、この支持基板と、接着層を有するシリコン半導体基板を真空接合装置内で200℃にて接合し、ウエハ、接着層、及び支持基板からなる積層体を作製した。その後グラインダーを用いてシリコン半導体基板の裏面研削を行った。最終基板厚50μmまでグラインドした。続いて積層基板のうちシリコン半導体基板を水平に固定しておき、支持基板を剥離した後、ノナンに6分間浸漬し、接着層を除去した後乾燥させることにより、洗浄試験用シリコン半導体基板を作製した。この時、基板表面の水接触角は108であり、X線電子分光装置で基板表面の元素分析を行なった結果、Si含有率は23%であった。なお、Si含有率は、シリコン基板由来のSiは除く。
【0037】
(実施例1)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた500mlフラスコに、TMAH・五水和物4g、水1g、1−ブトキシ−2−プロパノール95gを仕込み、室温で撹拌し、TMAH・五水和物を溶解させ洗浄剤組成物Aを得た。
【0038】
(実施例2)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた500mlフラスコに、25%TPAH水溶液4g、1−プロポキシ−2−プロパノール96gを仕込み、室温で均一になるまで撹拌し、洗浄剤組成物Bを得た。
【0039】
(実施例3)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた500mlフラスコに、37%TBAHメタノール溶液2.7g、水0.3g、1−ブタノール97gを仕込み、室温で均一になるまで撹拌し、洗浄剤組成物Cを得た。
【0040】
(実施例4)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた500mlフラスコに、35%TEAH水溶液1.5g、1−ブトキシ−2−プロパノール98.5gを仕込み、室温で均一になるまで撹拌し、洗浄剤組成物Dを得た。
【0041】
(実施例5)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた500mlフラスコに、35%TEAH水溶液1.5g、水0.5g、1−ヘキサノール49g、1−ブトキシ−2−プロパノール49gを仕込み、室温で均一になるまで撹拌し、洗浄剤組成物Eを得た。
【0042】
(実施例6)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた500mlフラスコに、35%TEAH水溶液2.86g、水0.14g、ジプロピレングリコール48.5g、1−ブトキシ−2−プロパノール48.5gを仕込み、室温で均一になるまで撹拌し、洗浄剤組成物Fを得た。
【0043】
(実施例7)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた500mlフラスコに、35%TEAH水溶液5.71g、水0.09g、メタノール47.15g、1−プロポキシ−2−プロパノール47.15gを仕込み、室温で均一になるまで撹拌し、洗浄剤組成物Gを得た。
【0044】
(比較例1)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた500mlフラスコに、35%TEAH水溶液0.14g、水0.86g、1−ブトキシ−2−プロパノール99gを仕込み、室温で撹拌し洗浄剤組成物Hを得た。
【0045】
(比較例2)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた500mlフラスコに、TMAH・五水和物6g、水2g、1−ブトキシ−2−プロパノール92gを仕込み、室温で撹拌し、TMAH・五水和物を溶解させ洗浄剤組成物Iを得たが、水層が分離し、良好な洗浄剤組成物を得ることはできなかった。
【0046】
(比較例3)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた500mlフラスコに、水3g、1−プロポキシ−2−プロパノール97gを仕込み、室温で均一になるまで撹拌し、洗浄剤組成物Jを得た。
【0047】
(比較例4)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた500mlフラスコに、10%TEAHプロピレングリコール溶液5g、1−ブトキシ−2−プロパノール95gを仕込み、室温で均一になるまで撹拌し、洗浄剤組成物Kを得た。
【0048】
(実施例1〜7、比較例1〜4)
前記シリコン半導体基板を洗浄剤組成物A〜Kを用いて浸漬により6分間洗浄を行なった。洗浄剤組成物の評価として下記評価を行なった。各組成物の組成比と結果を表1に示す。
【0049】
[外観]
洗浄剤組成物の外観を目視にて確認した。沈殿物の析出や、水層の分離等の不具合を確認し、異常が確認されなかった場合は○、異常が確認された場合は×で示す。
【0050】
[基板表面洗浄性評価]
製造されたシリコン半導体基板を、洗浄剤組成物A〜H及びJそしてKを用いて洗浄を行なった。具体的には洗浄液組成物A〜H及びJそしてKに任意の時間浸漬後、1分間純水で洗い流し、乾燥させたシリコン半導体基板表面の水接触角を確認した。洗浄前の水接触角は108°であり、接触角が30°未満となるまでに要した時間が、6分未満の場合は◎、6分以上10分未満の場合は○、10分以上場合は×で示す。
測定装置:協和界面科学(株)製 接触角計 DM−301
【0051】
[基板表面洗浄後水接触角]
製造されたシリコン半導体基板を、洗浄剤組成物A〜H及びJそしてKを用いて洗浄を行なった。具体的には洗浄液組成物A〜H及びJそしてKに6分間浸漬後、1分間純水で洗い流し、乾燥させたシリコン半導体基板表面の水接触角を上記装置を用いて確認した。
【0052】
[洗浄後基板表面分析]
製造されたシリコン半導体基板を、洗浄剤組成物A〜H及びJそしてKを用いて洗浄を行なった。具体的には洗浄液組成物A〜H及びJそしてKに6分間浸漬後、1分間純水で洗い流し、乾燥させたシリコン半導体基板表面をX線電子分光装置を用いて洗浄後基板表面の元素分析を行い、Si含有率を分析した。
測定装置:KRATOS製 AXIS−Ultra DLD
【0053】
【表1】
【0054】
表1の結果より、本発明の基板の洗浄剤組成物の構成要件を満たす実施例1〜実施例7において、短時間で良好な洗浄性が得られ、基板の腐食は見られなかった。
一方、本発明の基板の洗浄剤組成物の構成要件を満たさない比較例1〜比較例4において、良好な洗浄性を得ることはできず、また、基板の腐食も発生した。
これより、本発明の基板の洗浄剤組成物であれば、薄型基板でも短時間で良好な洗浄性が得られ、基板を腐食することなく高効率でシリコン半導体基板の洗浄が可能となることが確認された。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。