特許第6165686号(P6165686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6165686支持基材付封止材、封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、半導体装置、及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165686
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】支持基材付封止材、封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、半導体装置、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20170710BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20170710BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   H01L23/30 R
   B32B5/24
【請求項の数】11
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-156155(P2014-156155)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-33951(P2016-33951A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2016年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 朋陽
(72)【発明者】
【氏名】山口 伸介
(72)【発明者】
【氏名】塩原 利夫
【審査官】 豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−151451(JP,A)
【文献】 特開2013−197327(JP,A)
【文献】 特開2014−103176(JP,A)
【文献】 特開2014−103187(JP,A)
【文献】 特開2014−103178(JP,A)
【文献】 特開昭62−093992(JP,A)
【文献】 特開2004−335661(JP,A)
【文献】 特開平06−298965(JP,A)
【文献】 特開平06−138312(JP,A)
【文献】 特開2014−012762(JP,A)
【文献】 特開2013−229613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/28−23/31
B32B 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が搭載された基板の半導体素子搭載面又は半導体素子が形成されたウエハの半導体素子形成面を一括封止する封止材であって、
有機ケイ素化合物により表面処理された繊維フィルムを1枚もしくは複数枚積層させたものを含む支持基材と、該支持基材の片面上に形成された熱硬化性樹脂からなる樹脂層を有するものであることを特徴とする支持基材付封止材。
【請求項2】
前記表面処理繊維フィルムが、 JIS R 3420記載の方法で測定した前記表面処理繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値が未処理の繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値に対して3倍から100倍のものであることを特徴とする請求項1に記載の支持基材付封止材。
【請求項3】
前記表面処理繊維フィルムの100質量%に対して、表面処理に用いた前記有機ケイ素化合物が2質量%以上90質量%以下であり、前記繊維フィルムを構成する繊維の束の一部又は全部が前記表面処理により結束しているものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の支持基材付封止材。
【請求項4】
前記有機ケイ素化合物が、アルコキシシラン、ポリシラザン、及びこれらの部分加水分解縮合物あるいはシリコーン変性ワニスからなる群から選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の支持基材付封止材。
【請求項5】
前記表面処理繊維フィルムが、JIS C 6481記載の方法で測定されるガラス転移温度を250℃以下の範囲に有さないものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の支持基材付封止材。
【請求項6】
前記支持基材が表面にプラズマ処理又はコロナ処理が施されたものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の支持基材付封止材。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シアネートエステル樹脂、及びこれらの混成樹脂からなる群から選ばれる樹脂であり、前記樹脂層が未硬化の状態のものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の支持基材付封止材。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の支持基材付封止材の有する樹脂層により半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面を被覆し、前記樹脂層を加熱、硬化することで、前記支持基材付封止材により一括封止されたものであることを特徴とする封止後半導体素子搭載基板。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の支持基材付封止材の有する樹脂層により半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆し、前記樹脂層を加熱、硬化することで、前記支持基材付封止材により一括封止されたものであることを特徴とする封止後半導体素子形成ウエハ。
【請求項10】
請求項8に記載の封止後半導体素子搭載基板又は請求項9に記載の封止後半導体素子形成ウエハをダイシングして、個片化したものであることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
半導体装置を製造する方法であって、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の支持基材付封止材の有する樹脂層により、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆する被覆工程、
前記樹脂層を加熱、硬化することで、前記半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は前記半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板又は封止後半導体素子形成ウエハとする封止工程、及び
該封止後半導体素子搭載基板又は該封止後半導体素子形成ウエハをダイシングし、個片化することで、半導体装置を製造する個片化工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持基材付封止材、該封止材を用いた封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハ、それらより製造された半導体装置、及び該半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造分野において、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面のウエハレベルの封止方法としては、種々の方式が検討されており、スピンコ−ティングによる封止やスクリ−ン印刷による封止(特許文献1)、フィルム状の支持体に熱溶融性エポキシ樹脂をコ−ティングさせた複合シ−トを用いた方法が提案されている(特許文献2及び特許文献3)。
【0003】
上記の方法は、200mm(8インチ)程度の小径ウエハや無機、有機あるいは金属等の小面積基板を使用した場合は大きな問題もなく封止できるが、300mm(12インチ)以上の大面積基板や大口径ウエハを封止した場合では、封止硬化時のエポキシ樹脂等の収縮応力により、基板やウエハに反りが生じてしまうことがあり、特に、大口径で薄いウエハを封止する場合は反りが生じやすいという問題があった。また、半導体素子を搭載した大面積基板の半導体素子搭載面を封止する場合には、封止硬化時のエポキシ樹脂等の収縮応力により半導体素子が基板などから剥離するといった問題が発生した。これらの問題から封止後の大面積基板や大口径ウエハを量産化できないという大きな問題が生じていた。
【0004】
このような半導体素子を搭載した基板や半導体素子を形成したウエハの大面積化に伴う問題を解決する方法として、封止用樹脂組成物にフィラーを90質量%近く充填することや、封止用樹脂組成物の低弾性化で硬化時の収縮応力を小さくすることが挙げられる(特許文献1、2、3)。
【0005】
しかし、フィラーを90質量%近く充填すると封止用樹脂組成物の粘度が上昇し、封止用樹脂組成物を流し込み成型、封止する時に基板に搭載された半導体素子に力が加わり、半導体素子が基板から剥離するといった問題が新たに発生した。また、封止用樹脂を低弾性化すると、封止された半導体素子を搭載した基板や半導体素子を形成したウエハの反りは改善されるが耐熱性や耐湿性等の信頼性の低下が新たに発生した。そのため、これらの解決方法では、大面積基板や大口径ウエハの封止における問題の根本的な解決に至っていなかった。
【0006】
繊維含有基板等の基板に封止用の樹脂層を形成した基板付封止材(特許文献4、5)の活用で、大口径ウエハや無機、有機あるいは金属基板等の大面積基板を封止する試みがなされている。繊維含有基板は低膨張係数特性が求められる傾向にあり、そのため、多くの場合、無機系充填材を高充填した有機樹脂組成物をガラス繊維等の繊維に含浸した基板が採用されている。しかしながら、有機樹脂組成物を高粘度とするためガラス繊維に力が加わり、目開きや縒れを引き起こし、その結果、基板の均一、均質性が損なわれるとともに、内在する応力によってパッケージの反りを引き起こすといった問題があった。また、繊維含有基板は有機樹脂組成物を含浸後、高温真空プレス等により成型するため生産性が悪かった。更に、目開きや縒れ、反り等を低減するために繊維含有基板を厚くすると、パッケージ後の最終製品が高背な部品となる欠点があった。
【0007】
以上のように、大口径ウエハや無機、有機あるいは金属基板等の大面積基板を封止した場合であっても、基板やウエハに反りが生じたり、半導体素子が無機、有機あるいは金属基板等の基板から剥離したりすることなく、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面をウエハレベル一括封止でき、また、薄い基板でも繊維の目開きや縒れのない均一、均質性を有するものとなり、さらに、封止後には耐熱性や電気絶縁性、耐湿性等の信頼性、また汎用性、量産性、経済性に優れる封止材が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−179885号公報
【特許文献2】特開2009−060146号公報
【特許文献3】特開2007−001266号公報
【特許文献4】特開2012−151451号公報
【特許文献5】特開2013−197327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、大口径ウエハや無機、有機あるいは金属等の大面積基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止でき、また、薄い基板でも繊維の目開きや縒れのない均一、均質性を有するものとなり、さらに、封止後には耐熱性や電気絶縁性、耐湿性等の信頼性に優れるとともに、非常に汎用性、量産性、経済性に優れる支持基材付封止材を提供することを目的とする。
【0010】
また、該支持基材付封止材により封止された封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハ、該封止後半導体素子搭載基板及び該封止後半導体素子形成ウエハを個片化した半導体装置、及び前記支持基材付封止材を用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため、本発明は、
半導体素子が搭載された基板の半導体素子搭載面又は半導体素子が形成されたウエハの半導体素子形成面を一括封止する封止材であって、
有機ケイ素化合物により表面処理された繊維フィルムを1枚もしくは複数枚積層させたものを含む支持基材と、該支持基材の片面上に形成された熱硬化性樹脂からなる樹脂層を有するものである支持基材付封止材を提供する。
【0012】
このような支持基材付封止材であれば、大口径ウエハや無機、有機あるいは金属等の大面積基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止できる。また、繊維含浸基板よりも薄い表面処理繊維フィルムを用いていることから、繊維の目開きや縒れのない均一、均質性を有するものとなる。さらに、有機ケイ素化合物を表面処理に用いていることから、封止後には耐熱性や電気絶縁性、耐湿性等の信頼性に優れるとともに、非常に汎用性、量産性、経済性に優れる支持基材付封止材となる。
【0013】
このうち、前記表面処理繊維フィルムが、 JIS R 3420記載の方法で測定した前記表面処理繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値が未処理の繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値に対して3倍から100倍のものである支持基材付封止材であることが好ましい。
【0014】
このような支持基材付封止材であれば、寸法安定性、電気絶縁性、耐熱性、耐候性、柔軟性により優れたものとすることができる。
【0015】
また、前記表面処理繊維フィルムの100質量%に対して、表面処理に用いた前記有機ケイ素化合物が2質量%以上90質量%以下であり、前記繊維フィルムを構成する繊維の束の一部又は全部が前記表面処理により結束しているものであることが好ましい。
【0016】
このような支持基材付封止材であれば、耐熱性、電気絶縁性、寸法安定性、自立性、柔軟性がさらに優れたものとすることができる。
【0017】
また、前記有機ケイ素化合物が、アルコキシシラン、ポリシラザン、及びこれらの部分加水分解縮合物あるいはシリコーン変性ワニスからなる群から選ばれる1種以上の化合物であることが好ましい。
【0018】
また、前記表面処理繊維フィルムが、JIS C 6481記載の方法で測定されるガラス転移温度を250℃以下の範囲に有さないものであることが好ましい。
【0019】
このような表面処理繊維フィルムを用いた支持基材付封止材であれば、耐熱性や電気絶縁性がさらに良好なものとすることができる。
【0020】
さらに、前記支持基材が表面にプラズマ処理又はコロナ処理が施されたものであることが好ましい。
【0021】
このような支持基材付封止材であれば、支持基材と樹脂層との濡れ性、接着性、密着性を向上させることができる。
【0022】
さらに、前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シアネートエステル樹脂、及びこれらの混成樹脂からなる群から選ばれる樹脂であり、前記樹脂層が未硬化の状態のものであることが好ましい。
【0023】
このような熱硬化性樹脂からなる樹脂層を有する支持基材付封止材であれば、封止後に耐熱性や耐湿性等の優れた封止性能を示すものとなる。
【0024】
また、本発明は、
前記支持基材付封止材の有する樹脂層により半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面を被覆し、前記樹脂層を加熱、硬化することで、前記支持基材付封止材により一括封止された封止後半導体素子搭載基板を提供する。
【0025】
このような封止後半導体素子搭載基板であれば、基板の反りが生じたり、基板から半導体素子が剥離したりすることが抑制された封止後半導体素子搭載基板となる。
【0026】
また、本発明は、
前記支持基材付封止材の有する樹脂層により半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆し、前記樹脂層を加熱、硬化することで、前記支持基材付封止材により一括封止された封止後半導体素子形成ウエハを提供する。
【0027】
このような封止後半導体素子形成ウエハであれば、基板やウエハの反りが生じたりすることが抑制された封止後半導体素子形成ウエハとなる。
【0028】
さらに、本発明は、
前記封止後半導体素子搭載基板又は前記封止後半導体素子形成ウエハをダイシングして、個片化した半導体装置を提供する。
【0029】
このような半導体装置であれば、耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる支持基材付封止材により封止され、かつ反りが抑制された基板やウエハから半導体装置を製造できるため、高品質な半導体装置となる。
【0030】
さらに、本発明は、
半導体装置を製造する方法であって、
前記支持基材付封止材の有する樹脂層により、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆する被覆工程、
前記樹脂層を加熱、硬化することで、前記半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は前記半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板又は封止後半導体素子形成ウエハとする封止工程、及び
該封止後半導体素子搭載基板又は該封止後半導体素子形成ウエハをダイシングし、個片化することで、半導体装置を製造する個片化工程を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【0031】
このような半導体装置の製造方法であれば、より簡便に、充填不良なく半導体素子搭載面又は半導体素子形成面を被覆することができ、薄型で大口径ウエハや金属等の大面積基板を一括封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板又は封止後半導体素子形成ウエハを得ることができ、さらに、このような基板又はウエハを個片化することで、耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れた高品質な半導体装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明の支持基材の片面上に形成された熱硬化性樹脂からなる樹脂層を有する支持基材付封止材であれば、封止材硬化時の樹脂層の収縮応力を抑制することができるため、大径ウエハや大面積基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止できる。また、繊維含浸基板よりも薄い表面処理繊維フィルムを用いていることから、繊維の目開きや縒れのない均一、均質性を有するものとなる。さらに、封止後には表面処理に用いた有機ケイ素化合物や樹脂層に由来するシリコーン樹脂等の特徴を生かした耐熱性や電気絶縁性、耐光性、耐湿性等の信頼性に優れ、非常に汎用性かつ寸法安定性、印字性などの量産性、生産性、経済性に優れた封止材となる。
また、支持基材付封止材により封止された封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハは、基板やウエハに反りが生じたり、半導体素子が無機、有機あるいは金属基板等の基板から剥離したりすることが抑制されたものとなる。さらに、耐熱性や電気絶縁性、耐光性、耐湿性等の信頼性に優れる支持基材付封止材により封止され、かつ反りが抑制された封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハを個片化した半導体装置は高品質なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の支持基材付封止材の断面図の一例である。
図2】本発明の支持基材付封止材により封止された(a)封止後半導体素子搭載基板及び(b)封止後半導体素子形成ウエハの断面図の一例である。
図3】(a)封止後半導体素子搭載基板から作製された本発明の半導体装置、及び(b)封止後半導体素子形成ウエハから作製された本発明の半導体装置の断面図の一例である。
図4】本発明の封止材積層複合体を用いて半導体素子を搭載した基板から半導体装置を製造する方法のフロー図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の支持基材付封止材及びその製造方法、該支持基材付封止材により封止された封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハ、該封止後半導体素子搭載基板及び該封止後半導体素子形成ウエハを個片化した半導体装置、及び前記基板付封止材を用いた半導体装置の製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
前述のように、半導体素子を搭載した無機、有機あるいは金属等の大面積基板や半導体素子を形成した大口径ウエハを封止した場合であっても、基板やウエハに反りが生じたり、半導体素子が金属等の基板から剥離したりすることが抑制でき、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止でき、また、薄い基板でも繊維の目開きや縒れのない均一、均質性を有するものとなり、さらに、封止後には耐熱性や耐湿性等の信頼性に優れる汎用性の高い封止材が求められていた。
【0036】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を重ねた結果、有機ケイ素化合物により表面処理された繊維フィルムを含む支持基材と、その支持基材の片面上に形成された熱硬化性樹脂からなる樹脂層とを有する支持基材付封止材であれば、薄い基材であっても繊維の目開きや縒れが起こらず均一、均質なものとなり、基板及びウエハと支持基材との膨張係数の差が少なく、樹脂層の硬化時の収縮応力を抑制して、基板やウエハの反りを低減できることを見出した。
【0037】
この収縮応力の抑制作用により、大口径ウエハや無機、有機あるいは金属基板等の大面積基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制できることを見出した。さらに、本発明の支持基材付封止材を用いれば半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止でき、かつ封止後には耐熱性や電気絶縁性、耐光性、耐湿性等の信頼性に優れ、非常に汎用性かつ寸法安定性、印字性などの量産性、経済性に優れる封止材となることを見出して、本発明の支持基材付封止材を完成させた。
【0038】
また、本発明者らは、上述の支持基材付封止材により一括封止された封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハであれば、基板やウエハの反りが生じたり、基板から半導体素子が剥離したりすることが抑制された封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハとなることを見出し、さらに、このように反りや半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハを個片化することで、高品質の半導体装置が得られることを見出し、本発明の封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、及び半導体装置を完成させた。
【0039】
さらに、本発明者らは、上述の支持基材付封止材を用いることで簡便に半導体素子搭載面又は半導体素子形成面を被覆することができることを見出し、支持基材付封止材の樹脂層を加熱、硬化することで半導体素子搭載面又は半導体素子形成面を一括封止することができることを見出し、さらに、このように信頼性に優れる支持基材付封止材により封止され、反り、半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板又は封止後半導体素子形成ウエハをダイシングし、個片化することで、高品質な半導体装置を製造することができることを見出して、本発明の半導体装置の製造方法を完成させた。
【0040】
即ち、本発明は、
半導体素子が搭載された基板の半導体素子搭載面又は半導体素子が形成されたウエハの半導体素子形成面を一括封止する封止材であって、
有機ケイ素化合物により表面処理された繊維フィルムを1枚もしくは複数枚積層させたものを含む支持基材と、該支持基材の片面上に形成された熱硬化性樹脂からなる樹脂層を有するものである支持基材付封止材である。
以下、本発明の支持基材付封止材の有する支持基材及び樹脂層について詳述する。
【0041】
<支持基材>
本発明で用いる支持基材は、繊維フィルムの表面にケイ素原子を含む有機化合物(以下、有機ケイ素化合物)を処理した表面処理繊維フィルムであり、その片面上に封止材に相当する熱硬化性樹脂からなる樹脂層を設けるものである。
【0042】
支持基材で用いる表面処理繊維フィルムは、有機ケイ素化合物で表面処理されたものであり、JIS R 3420記載の方法で測定した慣用曲げ剛性の値が、未処理の繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値に対して、3倍から100倍の範囲内となるものであることが好ましい。
【0043】
この慣用曲げ剛性の値は、JIS R 3420記載の方法で測定した値であり、この倍数は、1枚の繊維フィルムを表面処理することによって、いわゆる「織布」状態から「フィルム」状態に変化する程度を示す指標として用いるものであり、好ましくは5倍から60倍であり、更に好ましくは10倍から50倍である。
【0044】
3倍以上であれば、本発明が目的とする寸法安定性や繊維の固定化すなわち捩れ防止や目開き、縒れ防止効果が得られ、またシロキサン特性に起因する電気絶縁性、耐熱性、耐候性などが十分なものとなる。また100倍以下であれば、曲げ剛性は固くなりすぎないためクラックは発生せず、フレキシブル性は失われないため、作業性、量産性、採算性、経済性の低下を防止できる。
【0045】
電気絶縁性、耐熱性、耐候性、寸法安定性、柔軟性といった特性をより良好に満たすために、支持基材に使用する繊維処理フィルムへの有機ケイ素化合物の付着量は、表面処理後の繊維フィルムの質量100質量%に対して、2質量%以上90質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上60質量%以下である。
【0046】
2質量%以上の付着量であれば、寸法安定性や繊維の固定化、すなわち捩れ防止や目開き防止、縒れ防止効果を十分に得ることができる。また、後述する樹脂層を硬化させた時の収縮応力を抑制することができ、本発明の支持基材付封止材により大口径ウエハや無機、有機あるいは金属等の大面積基板を封止した場合、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制する効果を十分に得ることができる。さらにシロキサン特性に起因する電気絶縁性、耐熱性、耐候性などの特性も良好となる。
【0047】
また、90質量%以下であれば、表面処理繊維フィルムが固くなり過ぎることがなく、クラックの発生を抑制することができ、フレキシブル性を十分に得ることができる。このことから、作業性、量産性、採算性、経済性が良好となる。また、基板が厚くなりすぎることも起こらないため、支持基材に好適な素材となる。
【0048】
本発明で用いる繊維フィルムとしては、ガラス繊維フィルムを例示できる。ガラス繊維フィルムを用いる場合は、柱状流或いは高周波振動法による水流で開繊加工することが可能である。さらに、本発明では、Eガラス、Aガラス、Dガラス、Sガラス等のいずれのガラス繊維でも使用できる。コスト及び入手のしやすさから一般用のEガラスが好ましいが、より高度な特性を要求される場合(例えば、低誘電率、高耐熱性、低不純物など)には石英ガラスが好ましい。
【0049】
また、ガラス繊維フィルムとしては、繊維の織り密度は10〜200本/25mmが好ましく、より好ましくは15〜100本/25mmであり、質量は5〜400g/mが好ましく、より好ましくは10〜300g/mである。この範囲であれば、表面処理ガラス繊維フィルムとした際に上述の作用効果を容易に得ることができる。
【0050】
織りかたは、特に制限はなく、平織り、朱子織り、綾織り、ななこ織り等を使用できる。また、双方または一方がテクスチャード加工を施されたガラス繊維で製織されたフィルムであっても良い。更に三軸組布されたガラス繊維フィルムはより強度が強く、信頼性の高い表面処理繊維フィルムとなる。また、不織布や長繊維を一定方向に配列させた織物も使用可能である。
【0051】
また、有機ケイ素化合物による表面処理を行うに当たり、ガラス繊維に集束剤が塗布されている場合、有機ケイ素化合物による処理が阻害される場合があるので、予め除去しておくことが望ましい。
【0052】
本発明では、繊維フィルムとして、上記で説明したガラス繊維に限定されず、炭素繊維、セラミック系などの無機繊維、ホウ素繊維、スチールファイバー、タングステン繊維などの金属繊維、アラミド、フェノール系などの新耐熱繊維などの繊維を用いた織布なども用いることができる。
【0053】
本発明で用いる表面処理繊維フィルムを得るために、繊維フィルムを表面処理する有機ケイ素化合物としては、アルコキシシラン、ポリシラザン、及びこれらの部分加水分解縮合物、あるいはシリコーン変性ワニスからなる群から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0054】
アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンなどのアルキルアルコキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランなどのアリールアルコキシシラン、ヒドロキシトリメトキシシラン、ヒドロキシトリエトキシシランなどのヒドロキシアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルケニルアルコキシシラン,3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有アルコキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(N−ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N−(N−ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びその塩酸塩などのアミノ基含有アルコキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアネートアルコキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリスエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のアルコキシシラン化合物が挙げられ、これらのアルコキシシランは1種あるいは2種以上混合して使用しても良い。また、これらに限定するものではない。
【0055】
ポリシラザンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザンなどの化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
シリコーン変性ワニスとしては、アルキッド変性ワニスやポリエステル変性ワニス、エポキシ変性ワニス、アクリル変性ワニスなど多様なシリコーン変性ワニスが使用されるが、最終用途、目的により適宜選択すればよい。
【0057】
好ましい有機ケイ素化合物としては、アルコキシシランが挙げられる。中でも好ましいアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシランや官能基を有するアルコキシシランで一般にシランカップリング剤と称されるタイプから選択される。例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が例示される。
【0058】
また、アルコキシシランの部分加水分解縮合物も好ましい有機ケイ素化合物である。特に、上記シランカップリング剤を部分加水分解縮合した官能基とアルコキシシリル基を併せ持つアルコキシシランオリゴマーは、好ましい有機ケイ素化合物である。具体的には、エポキシ基含有アルコキシシランオリゴマーX−41−1059A(信越化学工業(株)製)、アミノ基含有アルコキシシランオリゴマーX−40−2651(信越化学工業(株)製)などが好ましい。
【0059】
本発明で用いる表面処理繊維フィルムのX−Y方向の線膨張係数は、0.5〜25ppm/℃が好ましく、より好ましくは1〜20ppm/℃である。X−Y方向の線膨張係数の測定方法としては、幅3mm、長さ25mm、厚み50〜300μmにサンプルを切り出し、熱機械的分析(TMA)装置にて5℃/minの昇温速度で−60℃から200℃の温度範囲で引張り試験により測定する方法を例示できる。
【0060】
25ppm/℃以下の低線膨張係数であれば、耐熱衝撃性に強く、大口径ウエハや大面積基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制することができるものとなり、軽薄短小化等への高度な要求に対応可能となる。尚、X−Y方向とは、支持基材とした際の面方向のことをいう。また、X−Y方向の線膨張係数とは、支持基材の面方向に任意にX軸、Y軸をとって測定した膨張係数のことをいう。
【0061】
一般に、半導体素子搭載基板と支持基材とは、類似した物理特性を持ったものであることが好ましく、特に、両基板の膨張係数が実質的に同等か、両基板共に25ppm/℃以下、更には20ppm/℃以下で差の少ないもの同士を使用することがより好ましい。両基板間の物理特性が類似であれば、熱硬化性樹脂からなる樹脂層で成形封止した後の半導体装置の反りの発生をより抑制することができる。
【0062】
本発明で用いる表面処理繊維フィルムは、JIS C 6481記載の方法で測定されるガラス転移温度を250℃以下の範囲に有さないものであることが好ましく、300℃以下にガラス転移点を有さないものであることが特に好ましい。250℃以下にガラス転移点を有さないことにより、耐熱性、電気絶縁性、柔軟性に優れ、熱時の反りが抑制された基板が得られるため、軽薄短小化等への高度な要求に対応可能となる。
【0063】
本発明で用いる表面処理繊維フィルムの製造方法は、一般的なガラス繊維の処理方法が適用できる。
このうちの繊維フィルムへの有機ケイ素化合物の塗布方法としては、一般的なガラス繊維への塗布方法(コーティング方式)が適用できる。代表的なコーティング方式としては、ダイレクトグラビアコーター、チャンバードクターコーター、オフセットグラビアコーター、一本ロールキスコーター、リバースキスコーター、バーコーター、リバースロールコーター、スロッタダイ、エアードクターコーター、正回転ロールコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、含浸コーター、MBコーター、MBリバースコーターなどがある。中でもダイレクトグラビアコーター、オフセットコーター、含浸コーター塗布方式が本発明の支持基材、特に表面処理繊維フィルムの製造には好ましい。
【0064】
使用する有機ケイ素化合物により条件は異なるが、塗布後、乾燥、硬化目的で室温から300℃で1分から24時間加熱する条件を例示できる。生産性やコスト、作業性を考慮して好ましくは室温から250℃で3分から4時間、より好ましくは室温から230℃で5分から1時間の処理で本発明の支持基材付封止材を製造する。
尚、本明細書において室温とは25℃±10℃を意味する。
【0065】
上述の塗布方法で用いる塗布液は、上記有機ケイ素化合物を溶媒で希釈したものである。溶媒の例としては、水あるいは有機溶剤をそれぞれ単独あるいは2種以上混合して用いることができる。有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールエーテル類、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。この希釈液に、更にギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、などの有機酸やアンモニア水などのpH調整剤、顔料、充填剤、界面活性剤、増粘剤などを添加することもできる。
【0066】
また、アルコキシ基の縮合触媒を添加してもよく、例えば有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ビスマス化合物のような有機金属化合物系、アミン系化合物などが挙げられる。
【0067】
有機金属化合物系の縮合触媒として、具体的には、ジブチルスズジメトキサイド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)、ジブチルスズビス(ベンジルマレート)、ジメチルスズジメトキサイド、ジメチルスズジアセテート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジラウレート、スズジオクテート、及びスズジラウレート等の有機スズ化合物、並びに、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラノルマルプロピルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、ジイソプロピルジターシャリーブチルチタネート、ジメトキシチタンビスアセチルアセトナート、ジイソプロポキシチタンビスエチルアセトアセテート、ジターシャーリーブトキシチタンビスエチルアセトアセテート、及びジターシャリーブトキシチタンビスメチルアセトアセテート等の有機チタン化合物、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)又はビスマストリス(ネオデカノエート)等の有機ビスマス化合物などの金属ルイス酸等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
アミン系化合物の例として、具体的には、ヘキシルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。
これら縮合触媒の中では、有機チタン化合物が特に好ましい。
【0069】
塗布液は、塗布環境への影響を考慮して、水系の塗布液が好ましい。アミノ基含有シランカップリング剤(商品例:KBM−903(信越化学工業(株)製))は水系での安定性に優れ、溶解性もよいことから好ましい有機ケイ素化合物である。
【0070】
本発明では、上述のような表面処理繊維フィルムを1枚、もしくは複数枚積層させたものをベースとして支持基材を作製する。
【0071】
従来、基材として用いられていた繊維含浸基板は、ガラス繊維に無機系充填材を高充填した樹脂組成物を含浸させ、高温真空プレス成型で半硬化又は硬化状態にして製造しているため、基板内のガラス繊維が目開き、縒れ、捩れなどが発生した。そのため、封止の際に内部応力が発現し、封止後の基板やウエハに反りや基板と半導体素子との間に剥離が生じる等の欠点があった。
【0072】
本発明の支持基材は、上述の表面処理繊維フィルムを用いるため、薄く、繊維の目開き、捩れ、縒れなどもなく、内部応力のない均一、均質な支持基材となる。また、有機ケイ素化合物由来のシロキサン特性を生かした電気絶縁性、耐熱性、耐光性など封止材特性に優れる。さらに、高温真空プレス成型等を必要としないため簡便に製造することができ、支持基材付封止材が連続生産可能であり、生産性、量産性、経済性に優れたものとすることができる。
【0073】
<樹脂層>
本発明の支持基材付封止材は熱硬化性樹脂からなる樹脂層を有する。該樹脂層は、上述の支持基材の片面上に形成された熱硬化性樹脂からなるものである。この樹脂層は、半導体素子を封止するための封止材として利用できる。
【0074】
樹脂層の厚みは20μm〜5000μmであることが好ましい。樹脂層の厚みは、半導体素子の厚みに依存し、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を封止するのに充分な量であればよい。20μm以上の厚みがあれば、薄すぎることにより充填性の不良が生じることがないため好ましい。また、5000μm以下の厚みであれば、封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハが必要以上に厚くなることを抑制できる量となるので、信頼性の高い半導体装置が得られる。
【0075】
前記熱硬化性樹脂は、特に制限はされないが、通常、半導体素子の封止に使用される固形エポキシ樹脂や液状のエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、又はエポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなる混成樹脂、及びシアネートエステル樹脂からなる未硬化の熱硬化性樹脂であることが好ましい。特に、前記樹脂層は、50℃未満で固形化し、かつ50℃以上150℃以下で溶融するエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、及びエポキシシリコーン混成樹脂、及びシアネートエステル樹脂のいずれかを含むものであることが好ましい。
【0076】
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂としては、特に制限はされないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂又は4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂のようなビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂、及びフェノールジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂の芳香環を水素化したエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂など室温で液状や固体の公知のエポキシ樹脂が挙げられる。また、上記以外のエポキシ樹脂を本発明の目的に応じて一定量併用することができる。
【0077】
エポキシ樹脂からなる樹脂層は、半導体素子を封止する樹脂層となることから塩素等のハロゲンイオン、またナトリウム等のアルカリイオンは極力減らしたものであることが好ましい。各イオンを減らす方法としては、イオン交換水50mlに試料10gを添加し、密封して120℃のオーブン中に20時間静置した後、加熱抽出する方法を挙げることができ、120℃での抽出でいずれのイオンも10ppm以下とすることが望ましい。
【0078】
エポキシ樹脂からなる樹脂層にはエポキシ樹脂の硬化剤を含ませることができる。このような硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、各種アミン誘導体、酸無水物や酸無水物基を一部開環させカルボン酸を生成させたものなどを使用することができる。なかでも本発明の支持基材付封止材を用いて製造される半導体装置の信頼性を確保するためにフェノールノボラック樹脂が望ましい。特に、エポキシ樹脂とフェノールノボラック樹脂の混合比をエポキシ基とフェノール性水酸基の比率が1:0.8〜1.3となるように混合することが好ましい。
【0079】
さらに、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進するため、反応促進剤としてイミダゾール誘導体、フォスフィン誘導体、アミン誘導体、有機アルミニウム化合物などの金属化合物等を使用しても良い。
【0080】
エポキシ樹脂からなる樹脂層には、さらに必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、樹脂の性質を改善する目的で種々の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、シリコーン系等の低応力剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤等の添加剤を挙げることができ、本発明の目的に応じて添加配合することができる。
【0081】
[シリコーン樹脂]
シリコーン樹脂としては、熱硬化性のシリコーン樹脂等が使用可能である。特に、シリコーン樹脂からなる樹脂層は付加硬化型シリコーン樹脂組成物を含むことが望ましい。付加硬化型シリコーン樹脂組成物としては、(A)非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物、(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び(C)白金系触媒を構成成分とするものが特に好ましい。以下、これら(A)〜(C)成分について説明する。
【0082】
(A)成分:非共役二重結合を有する有機ケイ素化合物
(A)成分としては、下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンが例示できる。
SiO−(RSiO)a−(RSiO)b−SiR ・・・(1)
(式中、Rは非共役二重結合含有一価炭化水素基を示し、R〜Rはそれぞれ同一又は異種の一価炭化水素基を示し、a及びbは0≦a≦500、0≦b≦250、かつ0≦a+b≦500を満たす整数である。)
【0083】
上記一般式(1)中、Rは非共役二重結合含有一価炭化水素基であり、好ましくは炭素数2〜8、特に好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基で代表される脂肪族不飽和結合を有する非共役二重結合含有一価炭化水素基である。
【0084】
上記一般式(1)中、R〜Rはそれぞれ同一又は異種の一価炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。また、このうちR〜Rは、より好ましくは脂肪族不飽和結合を除く一価炭化水素基であり、特に好ましくはアルケニル基等の脂肪族不飽和結合を持たないアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。さらに、このうちR、Rは芳香族一価炭化水素基であることが好ましく、フェニル基やトリル基等の炭素数6〜12のアリール基等であることが特に好ましい。
【0085】
上記一般式(1)中、a及びbは0≦a≦500、0≦b≦250、かつ0≦a+b≦500を満たす整数であることが好ましく、aは10≦a≦500であることがより好ましく、bは0≦b≦150であることがより好ましく、またa+bは10≦a+b≦500を満たすことがより好ましい。
【0086】
上記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンは、例えば、環状ジフェニルポリシロキサン、環状メチルフェニルポリシロキサン等の環状ジオルガノポリシロキサンと、末端基を構成するジフェニルテトラビニルジシロキサン、ジビニルテトラフェニルジシロキサン等のジシロキサンとのアルカリ平衡化反応によって得ることができるが、この場合、アルカリ触媒(特にKOH等の強アルカリ)による平衡化反応においては、少量の触媒で不可逆反応で重合が進行するため、定量的に開環重合のみが進行し、末端封鎖率も高いため、通常、シラノール基及びクロル分は含有されない。
【0087】
上記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンとしては、具体的に下記のものが例示される。
【化1】
(上記式において、k、mは、0≦k≦500、0≦m≦250、かつ0≦k+m≦500を満足する整数であることが好ましく、より好ましくは5≦k+m≦250、かつ0≦m/(k+m)≦0.5を満足する整数である。)
【0088】
(A)成分としては、上記一般式(1)で示される直鎖構造を有するオルガノポリシロキサンの他、必要に応じて、3官能性シロキサン単位、4官能性シロキサン単位等を含む三次元網目構造を有するオルガノポリシロキサンを併用することもできる。(A)非共役二重結合を有するケイ素化合物は1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0089】
(A)非共役二重結合を有するケイ素化合物中の非共役二重結合を有する基(Si原子に結合する二重結合を有する一価炭化水素基)の量は、全一価炭化水素基(Si原子に結合する全ての一価炭化水素基)のうち1〜50モル%であることが好ましく、より好ましくは2〜40モル%、特に好ましくは5〜30モル%である。非共役二重結合を有する基の量が1モル%以上であれば硬化させたときに良好な硬化物を得ることができ、50モル%以下であれば硬化させたときの機械的特性が良いため好ましい。
【0090】
また、(A)非共役二重結合を有するケイ素化合物は芳香族一価炭化水素基(Si原子に結合する芳香族一価炭化水素基)を有することが好ましく、芳香族一価炭化水素基の含有量は、全一価炭化水素基(Si原子に結合する全ての一価炭化水素基)の0〜95モル%であることが好ましく、より好ましくは10〜90モル%、特に好ましくは20〜80モル%である。芳香族一価炭化水素基は樹脂中に適量含まれた方が、硬化させたときの機械的特性が良く製造もしやすいという利点がある。
【0091】
(B)成分:オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分としては、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば、架橋剤として作用し、(B)成分中のSiH基と(A)成分のビニル基、アルケニル基等の非共役二重結合含有基とが付加反応することにより、硬化物を形成することができる。
【0092】
また、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、芳香族一価炭化水素基を有することが好ましい。このように、芳香族一価炭化水素基を有する(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば、上記の(A)成分との相溶性を高めることができる。(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよく、例えば、芳香族炭化水素基を有する(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンを(B)成分の一部又は全部として含ませることができる。
【0093】
(B)成分としては、これに限られるものではないが、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−グリシドキシプロピル−5−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリメトキシシラン重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0094】
また、下記構造で示される単位を使用して得られるオルガノハイドロジェンポリシロキサンも用いることができる。
【化2】
【0095】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(又は重合体の場合は重合度)は2以上が好ましく、より好ましくは2〜1,000、特に好ましくは2〜300程度のものを使用することができる。
【0096】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のアルケニル基等の非共役二重結合を有する基1個当たり(B)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)が0.7〜3.0個となる量であることが好ましい。
【0097】
(C)成分:白金系触媒
(C)成分には、白金系触媒が用いられる。白金系触媒としては、例えば塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、キレート構造を有する白金錯体等が挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0098】
(C)成分の配合量は、硬化有効量であり所謂触媒量でよく、通常、(A)成分及び(B)成分の総質量100質量部あたり、白金族金属の質量換算で0.1〜500ppmであることが好ましく、特に0.5〜100ppmの範囲であることが好ましい。
【0099】
前記シリコーン樹脂からなる樹脂層は、半導体素子を封止する樹脂層となることから塩素等のハロゲンイオン、またナトリウム等のアルカリイオンは極力減らしたものであることが好ましい。各イオンを減らす方法としては、エポキシ樹脂と同様の方法を例示でき、120℃での抽出でいずれのイオンも10ppm以下であることが望ましい。
【0100】
[エポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなる混成樹脂]
前記混成樹脂に含まれるエポキシ樹脂とシリコーン樹脂としては、前述のエポキシ樹脂と前述のシリコーン樹脂が挙げられる。
【0101】
混成樹脂からなる樹脂層は、半導体素子を封止する樹脂層となることから塩素等のハロゲンイオン、またナトリウム等のアルカリイオンは極力減らしたものであることが好ましい。各イオンを減らす方法としては、エポキシ樹脂及びシリコーン樹脂と同様の方法を例示でき、120℃での抽出でいずれのイオンも10ppm以下であることが望ましい。
【0102】
[シアネートエステル樹脂]
シアネートエステル樹脂の成分としては、下記(A’)成分のシアネートエステル化合物のシアネート基1モルに対して、下記(B’)成分のフェノール化合物又はジヒドロキシナフタレンもしくは両方の水酸基を0.05〜0.4モルの割合で配合した樹脂組成物を好ましく用いることができる。以下、(A’)成分及び(B’)成分について説明する。
【0103】
[(A’)成分]
(シアネートエステル化合物又はそのオリゴマー)
本発明で用いるシアネートエステル樹脂の(A’)成分として、下記一般式(2)で示されるシアネートエステル化合物又はそのオリゴマーを好ましく用いることができる。
【化3】
(式中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
【化4】
のいずれかを示し、n=0〜30の整数である。Rは水素原子又はメチル基である。)
【0104】
このシアネートエステル化合物は、1分子中にシアネート基を2個以上有するものであり、具体的には、多芳香環の2価フェノールのシアン酸エステル、例えばビス(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)メタン、ビス(4−シアネートフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアネートフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−シアネートフェニル)メタン、ビス(4−シアネートフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−シアネートフェニル)−2,2−プロパン、ジ(4−シアネートフェニル)エーテル、ジ(4−シアネートフェニル)チオエーテル、多価フェノールのポリシアン酸エステル、例えばフェノールノボラック型シアネートエステル、クレゾールノボラック型シアネートエステル、フェニルアラルキル型シアネートエステル、ビフェニルアラルキル型シアネートエステル、ナフタレンアラルキル型シアネートエステルなどが挙げられる。
【0105】
前述のシアネートエステル化合物はフェノール類と塩化シアンを塩基性下、反応させることにより得ることができる。このようなシアネートエステル化合物は、その構造より軟化点が106℃の固形のものから、常温で液状のものまでの幅広い特性を有するものを得ることができ、その中から用途に合せて適宜選択することができる。
【0106】
このうち、シアネート基の当量が小さいもの、即ち官能基間分子量が小さいものは硬化収縮が小さく、低熱膨張であり、ガラス転移温度の高い硬化物を得ることができる。シアネート基当量が大きいものは若干ガラス転移温度が低下するが、トリアジン架橋間隔がフレキシブルになり、低弾性化、高強靭化、低吸水化が期待できる。
【0107】
なお、シアネートエステル化合物中に結合あるいは残存している塩素は好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下であることが好適である。50ppm以下であれば長期高温保管時熱分解により遊離した塩素あるいは塩素イオンが酸化されたCuフレームやCuワイヤー、Agメッキを腐食させ、剥離や電気的不良を引き起こす可能性がないため好ましい。また、樹脂の絶縁性も低下することがないため好ましい。
【0108】
[(B’)成分]
本発明で用いるシアネートエステル樹脂は、硬化剤として(B’)成分を含有するものであることが好ましい。一般に、シアネートエステル化合物の硬化剤や硬化触媒としては、金属塩、金属錯体や活性水素を持つフェノール性水酸基や一級アミン類などが用いられるが、本発明では、フェノール化合物やジヒドロキシナフタレン化合物といったものが好適に用いられる。
【0109】
(フェノール化合物)
(B’)成分として、下記一般式(3)で示される1分子中に2個以上の水酸基を持つフェノール化合物を好ましく用いることができる。
【化5】
(式中、R及びRは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
【化6】
のいずれかを示し、m’=0〜30の整数である。Rは水素原子又はメチル基である。)
【0110】
このフェノール化合物としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を持つフェノール樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールA型樹脂,フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル型樹脂、ビフェニルアラルキル型樹脂、ナフタレンアラルキル型樹脂が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0111】
このフェノール化合物は、フェノール水酸基当量が小さいもの、例えば、水酸基当量120以下のものはシアネート基との反応性が高く、120℃以下の低温でも硬化反応が進行する。この場合はシアネート基に対する水酸基のモル比を小さくすると良い。好適な範囲はシアネート基1モルに対し0.05〜0.11モルである。この場合、硬化収縮が少なく、低熱膨張で高Tgの硬化物が得られる。
【0112】
一方、フェノール水酸基当量が大きいもの、例えば水酸基当量175以上のものはシアネート基との反応が抑えられ保存性が良く、流動性が良い組成物が得られる。好適な範囲はシアネート基1モルに対し0.1〜0.4モルである。この場合、Tgは若干低下するが吸水率の低い硬化物が得られる。希望の硬化物特性と硬化性を得る為にこれらフェノール樹脂は2種類以上併用することもできる。
【0113】
(ジヒドロキシナフタレン化合物)
(B’)成分として、下記一般式(4)で表されるジヒドロキシナフタレン化合物を好ましく用いることができる。
【化7】
【0114】
上記のジヒドロキシナフタレン化合物としては、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンなどが挙げられる。
融点が130℃の1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレンは非常に反応性が高く少量でシアネート基の環化反応を促進する。融点が200℃以上の1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレンは比較的反応が抑制される。
【0115】
これらジヒドロキシナフタレン化合物を単独で使用した場合、官能基間分子量が小さく、かつ剛直な構造である為硬化収縮が小さく、高Tgの硬化物が得られる。また水酸基当量の大きい1分子中に2個以上の水酸基を持つフェノール化合物と併用することにより硬化性を調整することもできる。
【0116】
尚、上記フェノール化合物及びジヒドロキシナフタレン化合物中のハロゲン元素やアルカリ金属などは120℃、2気圧下での抽出で10ppm以下であることが好ましく、特に5ppm以下であることが望ましい。
【0117】
本発明で用いるシアネートエステル樹脂は、(B’)成分として上記のフェノール化合物及び上記のジヒドロキシナフタレン化合物のいずれかまたは両方を含有することが好ましい。
【0118】
[無機充填剤]
上述の樹脂層となる熱硬化性樹脂には無機充填剤を配合することができる。配合される無機充填剤としては、例えば、煙霧質シリカ(ヒュームドシリカ)、沈降シリカ、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミノシリケート、ボロンナイトライド、ガラス繊維、三酸化アンチモン等が挙げられる。これら無機充填剤の平均粒径や形状は特に限定されない。
【0119】
特にエポキシ樹脂からなる熱硬化性樹脂に添加する無機充填剤としては、エポキシ樹脂と無機充填剤との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等のカップリング剤で予め表面処理したものを配合してもよい。
【0120】
このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシラン等を用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0121】
シリコーン樹脂組成物からなる熱硬化性樹脂に添加する場合も、無機質充填材の表面を上記のようなカップリング材で処理したものを配合しても良い。
【0122】
無機充填剤の配合量は、熱硬化性樹脂の総質量100質量部に対し、100〜2000質量部が好ましく、特に150〜1000質量部が好ましい。100質量部以上であれば十分な強度を得ることができ、2000質量部以下であれば増粘による流動性の低下が抑制され、流動性低下による充填性の不良が抑制され、結果としてウエハに形成された半導体素子及び基板上に配列・搭載された半導体素子を良好に封止することができる。
【0123】
<支持基材付封止材>
本発明の支持基材付封止材の断面図の一例を図1に示す。本発明の支持基材付封止材10は、有機ケイ素化合物で表面処理された表面処理繊維フィルムを含む支持基材1と、支持基材1の片面上に形成された熱硬化性樹脂からなる樹脂層2とを有するものである。
【0124】
このような支持基材付封止材であれば、大口径ウエハや無機、有機あるいは金属等の大面積基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止できる。また、繊維含浸基板よりも薄い表面処理繊維フィルムを用いていることから、繊維の目開きや縒れのない均一、均質性を有するものとなる。さらに、有機ケイ素化合物を表面処理に用いていることから、封止後には耐熱性や電気絶縁性、耐湿性等の信頼性に優れるとともに、非常に汎用性、量産性、経済性に優れる支持基材付封止材となる。
【0125】
[支持基板付封止材の作製方法]
本発明の支持基材付封止材を作製する方法として、支持基材の片面上に、室温で固体のエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等を加熱しながら加圧成形する方法やエポキシ樹脂組成物にアセトン等の極性溶剤を適量添加することで液状化し印刷やディスペンス等で薄膜を形成し、溶剤を減圧下で加熱するなどの方法で除去することで均一に支持基材の片面上に樹脂層を形成する方法を挙げることができる。
【0126】
尚、支持基材(表面処理繊維フィルム)の表面にプラズマ処理やコロナ処理が施し、その後、熱硬化性樹脂からなる樹脂層を形成すると、支持基材と熱硬化性樹脂との濡れ性、接着性、密着性が向上するため好ましい。
【0127】
いずれの方法でも支持基材の片面上にボイドや揮発成分のない、厚みが20〜5000μm程度の未硬化の熱硬化性樹脂からなる樹脂層を形成することができる。
【0128】
[半導体素子を搭載した基板及び半導体素子を形成したウエハ]
本発明の支持基材付封止材は半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、及び半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止するための支持基材付封止材である。半導体素子を搭載した基板としては、例えば図2(a)中の一個以上の半導体素子3を接着剤4で無機、金属あるいは有機基板5上に搭載した基板が挙げられる。また、半導体素子を形成したウエハとしては、例えば図2(b)中のウエハ7上に半導体素子6が形成されたウエハが挙げられる。尚、半導体素子を搭載した基板とは、基板5としてシリコンウエハ等の各種ウエハ、有機基板、ガラス基板、金属基板等を用いたものや、半導体素子を搭載し配列等した半導体素子アレイを含むものである。
【0129】
<封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハ>
本発明の支持基材付封止材により封止された封止後半導体素子搭載基板及び封止後半導体素子形成ウエハの断面図の一例を図2(a)及び(b)に示す。本発明の封止後半導体素子搭載基板11は、支持基材付封止材10の樹脂層2(図1参照)により半導体素子3を搭載した基板5の半導体素子搭載面を被覆し、樹脂層2(図1参照)を加熱、硬化することで硬化後の樹脂層2’とし、支持基材付封止材10により一括封止されたものである(図2(a))。また、本発明の封止後半導体素子形成ウエハ12は、支持基材付封止材10の樹脂層2(図1参照)により半導体素子6を形成したウエハ7の半導体素子形成面を被覆し、該樹脂層2(図1参照)を加熱、硬化することで硬化後の樹脂層2’とし、支持基材付封止材10により一括封止されたものである(図2(b))。
【0130】
このように、支持基材付封止材の樹脂層により、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆し、該熱硬化性樹脂層を加熱、硬化することで、支持基材付封止材により一括封止された封止後半導体素子搭載基板又は封止後半導体素子形成ウエハであれば、基板やウエハの反りが生じたり、基板から半導体素子が剥離したりすることが抑制された封止後半導体素子搭載基板又は封止後半導体素子形成ウエハとなる。
【0131】
<半導体装置>
本発明の半導体装置の一例を図3(a)、(b)に示す。本発明の半導体装置13、14は封止後半導体素子搭載基板11(図2参照)又は封止後半導体素子形成ウエハ12(図2参照)をダイシングして、個片化したものである。このように、耐熱性や電気絶縁性、耐光性、耐湿性等の信頼性に優れる支持基材付封止材により封止され、かつ基板やウエハの反り、基板からの半導体素子3の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板11(図2参照)又は封止後半導体素子形成ウエハ12(図2参照)をダイシングし、個片化して作製された半導体装置13、14は高品質な半導体装置となる。封止後半導体素子搭載基板11(図2(a)参照)をダイシングして個片化した場合、半導体装置13は基板5上に接着剤4を介して半導体素子3が搭載され、その上から硬化後の樹脂層2’と支持基材1からなる支持基材付封止材10により封止された半導体装置となる(図3(a))。また、前記封止後半導体素子形成ウエハ12(図2(b)参照)をダイシングして個片化した場合、半導体装置14はウエハ7に半導体素子6が形成され、その上から硬化後の樹脂層2’と支持基材1からなる支持基材付封止材10により封止された半導体装置となる(図3(b))。
【0132】
<半導体装置の製造方法>
本発明では、以下の半導体装置の製造方法を一態様として例示できる。
前記支持基材付封止材の有する樹脂層により半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆する被覆工程、
前記樹脂層を加熱、硬化することで、前記半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は前記半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板又は封止後半導体素子形成ウエハとする封止工程、及び
該封止後半導体素子搭載基板又は該封止後半導体素子形成ウエハをダイシングし、個片化することで、半導体装置を製造する個片化工程を有する半導体装置の製造方法を提供する。
以下、図4を用いて本発明の半導体装置の製造方法について説明する。
【0133】
[被覆工程]
本発明の半導体装置の製造方法に係る被覆工程は、支持基材1と樹脂層2を有する支持基材付封止材10の樹脂層2により、接着剤4を介して半導体素子3を搭載した基板5の半導体素子搭載面、又は半導体素子(不図示)を形成したウエハ(不図示)の半導体素子形成面を被覆する工程である(図4(A))。
【0134】
[封止工程]
本発明の半導体装置の製造方法に係る封止工程は、前記支持基材付封止材10の樹脂層2を加熱、硬化して硬化後の樹脂層2’とすることで、前記半導体素子3を搭載した基板5の半導体素子搭載面又は前記半導体素子(不図示)を形成したウエハ(不図示)の半導体素子形成面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板11又は封止後半導体素子形成ウエハ(不図示)とする工程である(図4(B))。
【0135】
[個片化工程]
本発明の半導体装置の製造方法に係る個片化工程は、前記封止後半導体素子搭載基板11又は前記封止後半導体素子形成ウエハ(不図示)をダイシングし、個片化することで、半導体装置13、14(図3(b)参照)を製造する工程である(図4(C)、(D))。
【0136】
以下、より具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。上述の被覆工程、封止工程においては、真空圧縮成形装置や真空ラミネータ装置等を使用することで、ボイドも反りもない被覆、封止を行うことができる。ラミネーションの方式としてはロールラミネーションやダイアフラム式真空ラミネーション、エアー加圧式ラミネーション等いずれの方式も使用することができる。なかでも、真空ラミネーションとエアー加圧式の併用が好ましい。
【0137】
ここでは例として、ニチゴーモートン社製の真空ラミネーション装置を用いて、厚み50μmのガラスクロス(繊維基材)にメチルトリメトキシシラン(KBM−13;信越化学工業(株)製)で表面処理させた表面処理ガラス繊維フィルム(支持基材)と片面に厚み50μmの熱硬化性シリコーン樹脂からなる樹脂層を有する支持基材付封止材で、厚み100μm、直径300mm(12インチ)のシリコンウエハを封止する場合について説明する。
【0138】
上下にヒーターが内蔵され150℃に設定されたプレートのうち、上側プレートにはダイアフラムラバーが減圧された状態でヒーターと密着している。下側プレート上に300mm(12インチ)のシリコンウエハをセットし、その上に片面に支持基材付封止材の樹脂層を有する面をシリコンウエハの半導体形成面に合わせてセットする。その後、下側プレートが上昇し、下側プレート上にセットされたシリコンウエハを囲むように設置されたOリングにより上下のプレートが密着して真空チャンバーが形成され、該真空チャンバー内が減圧される。真空チャンバー内が十分に減圧されたら、上側プレートのダイアフラムラバーとヒーターの間から真空ポンプにつながる配管の弁を閉じ、圧縮空気を送り込む。それにより、上側のダイアフラムラバーが膨張しシリコンウエハと基板付封止材を上側のダイアフラムラバーと下側のプレートで挟み、真空ラミネーションを行うと同時に熱硬化性シリコーン樹脂の硬化が進行し、封止が完了する。硬化時間としては3〜20分程度あれば十分である。真空ラミネーションが完了したら真空チャンバー内を常圧に戻し、下側プレートを下降させ、封止したシリコンウエハを取り出す。上記工程によりボイドや反りのないウエハの封止を行うことができる。取り出したシリコンウエハは通常、150〜180℃の温度で1〜4時間ポストキュアすることで電気特性や機械特性を安定化させることができる。
【0139】
上記の真空ラミネーション装置を用いた被覆、封止工程は例示のように繊維基材としてガラス繊維及び熱硬化性樹脂としてシリコーン樹脂を用いた場合に限らず、繊維基材として炭素繊維や金属繊維を用いた場合や、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂やエポキシとシリコーンの混成樹脂を用いた場合でも適用することができる。
【0140】
このような半導体装置の製造方法であれば、被覆工程においては支持基材付封止材の樹脂層により簡便に、充填不良なく半導体素子搭載面又は半導体素子形成面を被覆することができる。また、支持基材付封止材を使用するので、支持基材が樹脂層の硬化時の収縮応力を抑制できるため、封止工程においては半導体素子搭載面又は半導体素子形成面を一括封止することができ、薄型の大口径ウエハや無機、有機あるいは金属等の大面積基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板又は封止後半導体素子形成ウエハを得ることができる。さらに、個片化工程においては耐熱性や耐湿性等の信頼性に優れる支持基板付封止材により封止され、かつ反りが抑制された封止後半導体素子搭載基板又は封止後半導体素子形成ウエハから半導体装置をダイシングし、個片化することができるため、高品質な半導体装置を製造することができる半導体装置の製造方法となる。
【実施例】
【0141】
以下、調製例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0142】
[調製例1]支持基材−1の調製
有機ケイ素化合物として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−903、信越化学工業製)を用いて、ガラスクロス(使用糸:D450、密度:タテ糸53本/25mm、ヨコ糸53本/25mm、厚さ:42μm、質量:47g/m)に含浸させ、100℃×10分で加熱乾燥させることで表面処理した。その後100℃×1時間及び200℃×1時間加熱処理して支持基材−1を作製した。
尚、この支持基材−1の有機ケイ素化合物の付着量は38.9重量%であった。
【0143】
・機械的特性
1.慣用曲げ剛性
得られた支持基材についてJIS R 3420(ガラス繊維一般試験方法)に記載の方法で測定を行い、縦糸方向での測定値を用いて、慣用曲げ剛性倍率(*)を求めた。
*慣用曲げ剛性倍率=表面処理ガラス繊維フィルムの慣用曲げ剛性/未処理ガラス繊維フィルムの慣用曲げ剛性
【0144】
2.線膨張係数
得られた支持基材について、幅3mm、長さ25mm、厚み50〜300μmにサンプルを切り出し、熱機械的分析(TMA)装置(装置名:TMA/SS6000、(株)セイコーインスツルメンツ)にて5℃/minの昇温速度で−60℃から200℃の温度範囲で引張り試験を行った。温度に対する支持基材の伸び量から線膨張係数を測定した。
【0145】
3.ガラス転移温度
得られた支持基材について、幅4〜6mm、長さ30〜40mm、厚み50〜300μmにサンプルを切り出し、JIS C 6481記載の方法に従って、動的粘弾性測定装置(装置名:Q800、TA Instruments社製)により、−100℃〜300℃の範囲にわたって、前記基材に対して平行な方向(X−Y軸方向)のガラス転移温度(℃)を測定した。
【0146】
上記の測定の結果から、支持基材−1の慣用曲げ剛性倍率は14.4であり、線膨張係数は9ppm/℃であり、ガラス転移温度は検出されなかった。
【0147】
[調製例2]支持基材−2の調製
有機ケイ素化合物として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−903、信越化学工業製)の代わりに、アミノ基含有オルガノアルコキシシランオリゴマー(X−40−2651、信越化学工業製)50gとトルエン50gとの混合液を塗布液として用いたほかは、調製例1と同様の方法で支持基材−2を作製した。
調製例1と同様の評価を行った。有機ケイ素化合物の付着量は56.5重量%、慣用曲げ剛性倍率は29.5、線膨張係数は13ppm/℃であり、ガラス転移温度(℃)は検出されなかった。
【0148】
[調製例3]支持基材−3の調製
有機ケイ素化合物として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業製)を用いて、ガラスクロス(使用糸:E250、密度:タテ糸59本/25mm、ヨコ糸57本/25mm、厚さ:87μm、質量:95g/m)に含浸させ、100℃×10分で加熱乾燥させることで表面処理を行った。その後100℃×1時間及び200℃×1時間加熱処理して支持基材−3を作製した。
調製例1と同様な評価を行った。有機ケイ素化合物の付着量は4.5重量%、慣用曲げ剛性倍率は6.3、線膨張係数は8ppm/℃であり、ガラス転移温度(℃)は検出されなかった。
【0149】
[調製例4]支持基材−4の調製
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業製)を0.5質量部、界面活性剤として、HLBが13.6であるポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル0.02質量部、酢酸0.05質量部を水100質量部に加え、塗布液を調製した。その塗布液を用いて調製例3で使用したガラス繊維を表面処理し、同様な方法で支持基材−4を作製した。
調製例1と同様な評価を行った。有機ケイ素化合物の付着量は0.05重量%、慣用曲げ剛性倍率は1.7、線膨張係数は6ppm/℃であり、ガラス転移温度(℃)は検出されなかった。
【0150】
[調製例5]支持基材−5の調製
有機ケイ素化合物として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−903、信越化学工業製)を用いて、ガラスクロス(使用糸:D450、密度:タテ糸53本/25mm、ヨコ糸53本/25mm、厚さ:42μm、質量:47g/m)に含浸させ、100℃×10分で加熱乾燥させた。その後100℃×1時間及び200℃×1時間加熱処理して支持基材−5を作製した。
調製例1と同様の評価を行った。有機ケイ素化合物の付着量は85.0重量%、慣用曲げ剛性倍率は95.5、線膨張係数は18ppm/℃であり、ガラス転移温度(℃)は検出されなかった。
【0151】
[半導体素子を搭載した基板]
半導体素子搭載の有機樹脂基板:厚み100μm、縦240mm、横240mmのBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂基板(線膨張係数:10ppm/℃)に、7.3×7.3mm角のチップが168個搭載可能となるようにCu配線を形成したもの(フルエリア部パッド:パッド径100μm、パッドピッチ300μm ペリフェラル部リード:リード幅20μm、リードピッチ80μm)を準備した。この基板のCu配線形成面に、Cuピラー高さ30μm+SnAg15μmを上記配線に接続可能となるように配置した厚み100μm、7.3×7.3mm角のシリコンチップを168個フリップチップボンディングした。接続後にチップと基板の間に形成された空間の高さはおよそ48μmであった。
【0152】
[実施例1]
−エポキシ樹脂組成物の調製−
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂60質量部、フェノールノボラック樹脂30質量部、平均粒径0.6μm、粒径10μm以上が0.08質量%の球状シリカ350質量部、触媒TPP(トリフェニルホスフィン)0.8質量部、シランカップリング剤KBM403(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業製)0.5質量部を高速混合装置で十分混合した後、連続混練装置で加熱混練して厚み約150μmのシート状に成形し冷却した。
【0153】
−支持基材の作製−
調製例1で作製した支持基材−1を230mm×230mmに切り出し、アルゴンプラズマ処理した。
【0154】
−支持基材付封止材の作製−
上記支持基材の片側に、上記エポキシ樹脂組成物からなるシートを積層させ、該エポキシ樹脂組成物積層面にフッ素樹脂処理を施したPETフィルム(剥離フィルム)を積層した。この積層物を50℃で圧着して、厚さ150μmの未硬化のエポキシ樹脂組成物からなる樹脂層を支持基材−1の片面上に形成した支持基材付封止材(I−b)を作製した。
【0155】
−半導体素子を搭載した基板の被覆及び封止−
上記で作製した支持基材付封止材(I−b)を用いて上記半導体素子を搭載した基板を、真空ラミネーション装置(ニチゴーモートン社製)を用いて封止した。予め上下プレート温度を150℃に設定し、上記半導体素子搭載基板を設置し、その上に剥離フィルムを除去した支持基材付封止材(I−b)の樹脂層であるエポキシ樹脂組成物層が半導体素子搭載面上に載置されるようにして下側プレート上に設置した。続いて下側プレートを上昇させて上側プレートと密着させることで形成された真空チャンバー内を減圧して50Paとした後、上側プレートとダイアフラムラバーの間を大気開放すると共に0.5MPaの圧縮空気を送り込んで、5分間加圧成形した。成形後180℃で4時間ポストキュアして封止後半導体素子搭載基板(I−c)を得た。封止後の総厚みは約325μmであった。この基板をダイシングテープに貼り付け、ダイシングを行い個片化して、16mm×16mm角の半導体装置を製造した。
【0156】
[実施例2]
実施例1の使用した調製例1で作製した支持基材−1の代わりに、調製例2で作製した支持基材−2を用いた以外は同様にして支持基材付封止材(II−b)を作製した。ついで、封止後半導体素子搭載基板(II−c)を得た。
【0157】
[実施例3]
実施例1の使用した調製例1で作製した支持基材−1の代わりに、調製例3で作製した支持基材−3を用いた以外は同様にして支持基材付封止材(III−b)を作製した。ついで、封止後半導体素子搭載基板(III−c)を得た。
【0158】
[実施例4]
−非共役二重結合を有するケイ素化合物(A1)の合成−
PhSiClで示されるオルガノシラン:27mol、ClMeSiO(MeSiO)33SiMeCl:1mol、MeViSiCl:3molをトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、非共役二重結合を有するケイ素化合物(A1)を合成した。
この化合物は、構成する単位の構成比が式:[PhSiO3/20.27[−SiMeO−(MeSiO)33−SiMeO−]0.01[MeViSiO2/20.03で示される。この化合物の重量平均分子量は62,000、融点は60℃であった。尚、ここで組成式中のViは(−C=C)で示されるビニル基を示す。
【0159】
−オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の合成−
PhSiClで示されるオルガノシラン:27mol、ClMeSiO(MeSiO)33SiMeCl:1mol、MeHSiCl:3molをトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)を合成した。
この樹脂は、構成する単位の構成比が式:[PhSiO3/20.27[−SiMeO−(MeSiO)33−SiMeO−]0.01[MeHSiO2/20.03で示される。この樹脂の重量平均分子量は58,000、融点は58℃であった。
【0160】
−未硬化のシリコーン樹脂組成物からなる樹脂層を形成するための組成物の調製−
前述の非共役二重結合を有するケイ素化合物(A1):50質量部、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1):50質量部、反応抑制剤としてアセチレンアルコール系のエチニルシクロヘキサノール:0.2質量部、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液:0.1質量部を加えた組成物に対して、さらに平均粒径5μmの球状シリカを350質量部加え60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく撹拌し、シリコーン樹脂組成物(IV−a)を調製した。この組成物は、室温(25℃)で固体であった。
【0161】
−支持基材−
調製例1で作製した支持基材−1を230mm×230mmに切り出し、アルゴンプラズマ処理した。
【0162】
−支持基材付封止材の作製−
シリコーン樹脂組成物(IV−a)を、処理後支持基材−1(9ppm/℃)とフッ素樹脂コートしたPETフィルム(剥離フィルム)との間に挟み、熱プレス機を用いて80℃で5tの圧力下で5分間圧縮成型を行い、厚さ150μmの未硬化のシリコーン樹脂組成物からなる樹脂層を支持基材−1の片面上に形成した支持基材付封止材(IV−b)を作製した。
【0163】
−半導体素子を搭載した基板の被覆及び封止−
実施例1で使用した支持基材付封止材(I−b)の代わりに、上記支持基材付封止材(IV−b)を用いて上記半導体素子を搭載した基板を、真空ラミネーション装置(ニチゴーモートン社製)を用いて封止した。その際上下プレート温度を130℃に設定した。成形後のポストキュアを150℃で2時間として封止後半導体素子搭載基板(IV−c)を得た。封止後の総厚みは約325μmであった。この基板をダイシングテープに貼り付け、ダイシングを行い個片化して、16mm×16mm角の半導体装置を製造した。
【0164】
[実施例5]
実施例1の使用した調製例1で作製した支持基材−1の代わりに、調製例4で作製した支持基材−4を用いた以外は同様にして支持基材付封止材(V−b)を作製した。ついで、封止後半導体素子搭載基板(V−c)を得た。
【0165】
[実施例6]
実施例1の使用した調製例1で作製した支持基材−1の代わりに、調製例5で作製した支持基材−5を用いた以外は同様にして支持基材付封止材(IX−b)を作製した。ついで、封止後半導体素子搭載基板(IX−c)を得た。
【0166】
[比較例1]
実施例1の使用した調製例1で作製した支持基材−1の代わりに、膜厚60μmのガラスエポキシ樹脂基板を用いた以外は同様にしてガラスエポキシ樹脂基板付封止材(VI−b)を作製した。ついで、封止後半導体素子搭載基板(VI−c)を得た。
【0167】
[比較例2]
−封止用シートの作製−
実施例1で調製したエポキシ樹脂組成物を厚み約200μmのシート状に成形し、エポキシ樹脂のみからなる封止用シート(VII−b)を作製した。成形後、230mm×230mmに切断した。
【0168】
−半導体素子を搭載した基板の被覆及び封止−
上記で作製した封止用シート(VII−b)を用いて上記半導体素子を搭載した基板を、真空ラミネーション装置(ニチゴーモートン社製)を用いて封止した。その際上下プレート温度を150℃に設定した。成形後のポストキュアを180℃で4時間として封止後半導体素子搭載基板(VII−c)を得た。封止後の総厚みは約325μmであった。この基板をダイシングテープに貼り付け、ダイシングを行い個片化して、16mm×16mm角の半導体装置を製造した。
【0169】
[比較例3]
−封止用シートの作製−
実施例4で調製したシリコーン樹脂組成物(IV−a)をPETフィルム(加圧用ベースフィルム)とフッ素樹脂コートしたPETフィルム(剥離フィルム)との間に挟み、熱プレス機を用いて80℃で5tの圧力下で5分間圧縮成型を行い、厚さ200μmのシート状に成形し、シリコーン樹脂のみからなる封止用シート(VIII−b)を作製した。成形後、230mm×230mmに切断した。
【0170】
−半導体素子を搭載した基板の被覆及び封止−
上記で作製した封止用シート(VIII−b)を用いて上記半導体素子を搭載した基板を、真空ラミネーション装置(ニチゴーモートン社製)を用いて封止した。予め上下プレート温度を130℃に設定し、上記半導体素子搭載基板を設置し、その上に剥離フィルムを除去したシリコーン樹脂組成物(IV−a)のみからなる封止用シート(VIII−b)を積層した。その後、PETフィルム(加圧用ベースフィルム)も剥離した後、プレートを閉じ5分間加圧成形することで硬化封止した。硬化封止後、150℃で2時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載基板(VIII−c)を得た。この基板をダイシングテープに貼り付け、ダイシングを行い個片化して、16×16mm角の半導体装置を製造した。
【0171】
以上、実施例1〜6、比較例1〜3において封止された封止後半導体素子搭載基板(I−c)〜(IX−c)の反り、外観、樹脂と基板の接着状態、基板からの半導体素子の剥離の有無を調査した。その結果を表1に示す。ここで、外観についてはボイド、未充填の有無をしらべ、これらがなければ良好とした。また、接着状態については成型時に剥離がなければ良好とした。
また、上記実施例1〜6、及び比較例1〜3の封止後半導体素子搭載基板をダイシングして、個片化し以下の耐熱性試験と耐湿性試験を行った。耐熱性試験では、この試験片に対してヒートサイクル試験(−25℃で10分保持、125℃で10分保持を1000サイクル繰り返す)を行い、試験後にも導通がとれるかを評価した。また、耐湿性試験では、この試験片に対して温度85℃、相対湿度85%の条件下で回路の両極に10Vの直流電圧を印加し、マイグレーションテスター(IMV社製、MIG−86)を用いて短絡が生じるかを評価した。
【0172】
【表1】
【0173】
表1に示すように、表面処理繊維フィルムを用いていない比較例1〜3において半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面を一括封止した場合には、作製される封止後半導体素子搭載基板の反りが実施例に比べて大きくなることがわかった。さらに、比較例2,3では、反りが大きすぎるため、基板からの半導体素子の剥離があることが明らかとなった。一方で、本発明の支持基材付封止材を用いた実施例1〜6は、基板の反りが著しく抑制されており、外観、接着状態が良好でボイドや未充填なども生じないことが明らかとなった。さらに個片化した半導体装置の信頼性評価の結果、実施例1〜6では差異はなく優れた耐熱性、耐湿性を有することが明らかとなった。
【0174】
以上により、本発明に係る基板付封止材は樹脂層を硬化させた時の収縮応力を抑制することができ、それにより基板の反り、基板からの半導体素子の剥離が抑制されることが示され、高品質な半導体装置が得られることが明らかになった。
【0175】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0176】
1…支持基材、 2…樹脂層、 2’…硬化後の樹脂層、 3…半導体素子、
4…接着剤、 5…基板、 6…半導体素子、 7…ウエハ、
10…支持基材付封止材、 11…封止後半導体素子搭載基板、
12…封止後半導体素子形成ウエハ、 13…半導体装置、 14…半導体装置。
図1
図2
図3
図4