特許第6165891号(P6165891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6165891
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】流路制御方法および細胞培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20170710BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   C12M1/00 C
   G01N1/00 101L
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-558762(P2015-558762)
(86)(22)【出願日】2014年12月24日
(86)【国際出願番号】JP2014084015
(87)【国際公開番号】WO2015111347
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2016年6月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-12071(P2014-12071)
(32)【優先日】2014年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】島瀬 明大
(72)【発明者】
【氏名】今井 一成
(72)【発明者】
【氏名】高田 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】麻生 定光
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−54603(JP,A)
【文献】 特開2012−217435(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/020458(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性または可撓性を備えたX本(X≧3)の流路のうちいずれか1本を開放する流路制御装置であって、
X本(X≧3)の流路と、
X≦2を満たす最小のN個の弁を備え、
前記弁は開放側と閉塞側の2つの流路通過部位を有し、前記開放側と前記閉塞側はそれぞれ同時に複数の流路が通過可能であって、
1個の前記弁は、流路通過部位にX本の全ての流路が通過し、
前記N個の弁すべてを同時に制御することにより、前記X本の流路のうちいずれか1本を開放する流路制御装置。
【請求項2】
請求項1の流路制御装置において、
前記N個の制御弁の駆動源がOFFとなった場合に、N個の制御弁の全てで流路が開放状態になる組合せでは使用しない、流路制御装置。
【請求項3】
流体の導入口と排出口を持つ、密閉系の培養容器に、
培養に必要な液体類を収容する供給バッグと、
使用後の液体を回収する回収バッグと、が接続され、
閉鎖された系を形成し、前記閉鎖系内で細胞の培養を行う、細胞培養装置であって、
前記供給バッグは、X≦2を満たすX個あって、これらが1つの共通流路に並列に接続された、請求項1の流路制御装置を用いる細胞培養装置。
【請求項4】
流体の導入口と排出口を持つ、密閉系の培養容器に、
培養に必要な液体類を収容する供給バッグと、
使用後の液体を回収する回収バッグと、が接続され、
閉鎖された系を形成し、前記閉鎖系内で細胞の培養を行う、細胞培養装置であって、前記培養容器は、X≦2を満たすX個あって、これらが導入口側および排出口側のそれぞれの共通流路に並列に接続された請求項1の流路制御装置を用いる細胞培養装置。
【請求項5】
流体の導入口と排出口を持つ、密閉系の培養容器に、
培養に必要な液体類を収容する供給バッグと、
使用後の液体を回収する回収バッグと、が接続され、
閉鎖された系を形成し、前記閉鎖系内で細胞の培養を行う、細胞培養装置であって、
前記回収バッグは、X≦2を満たすX個あって、これらが1つの流路に並列に接続された請求項1の流路制御装置を用いる細胞培養装置。
【請求項6】
流体の導入口と排出口を持つ、密閉系の培養容器に、
培養に必要な液体類を収容する供給バッグと、
使用後の液体を回収する回収バッグと、が接続され、
閉鎖された系を形成し、前記閉鎖系内で細胞の培養を行う、細胞培養装置であって、
前記供給バッグおよび前記培養容器が、それぞれA個、B個あって、X≦2を満たすX本の個別流路で接続された請求項1の流路制御装置を用いる細胞培養装置。
【請求項7】
流体の導入口と排出口を持つ、密閉系の培養容器に、
培養に必要な液体類を収容する供給バッグと、
使用後の液体を回収する回収バッグと、が接続され、
閉鎖された系を形成し、前記閉鎖系内で細胞の培養を行う、細胞培養装置であって、
前記培養容器および前記回収バッグが、それぞれC個、D個あって、X≦2を満たすX本の個別流路で接続された請求項1の流路制御装置を用いる細胞培養装置。
【請求項8】
請求項3乃至5の細胞培養装置であって、共通流路部に液体駆動源を備える細胞培養装置。
【請求項9】
請求項3乃至7の細胞培養装置であって、請求項2に記載の流路制御装置を用いる細胞培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養装置や自動分析装置等、複数の流路を持つ装置における、流路制御用の弁に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の試薬を1本のシリンダで分注するのに、多連切替え弁なる弁があり、これを備えた自動分析装置の一例が特開昭60−93356号公報に記載されている。
【0003】
また、弾性を備えた流路を外側から押しつぶして(ピンチして)流体を制御する、ピンチ弁なる弁があり、これを備えた細胞培養装置、自動分析装置の一例が、それぞれ、特開2011−142837号公報、特開平1−12265号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−93356号公報
【特許文献2】特開2011−142837号公報
【特許文献3】特開平1−12265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピンチ弁は、流路の内側を流れる流体に直接触れることなく流路の開閉を制御できるため、流体を汚染する可能性もなく、また、弁自身も汚れない。そのため、細胞培養装置や自動分析装置のように、コンタミネーションを気にする装置で重宝される。特に細胞培養装置では、培地等が流れて汚染された流路は使い捨てるのが基本であり、弁自身が汚れないピンチ弁は使い回すことができるため経済的でもある。
【0006】
複数の流路があり、選択的に開閉を制御しようとする場合、それぞれの流路にピンチ弁を設ければ、少なくとも制御は可能である。しかし、流路が増えればピンチ弁の数も増え、その分だけコストアップにつながり、装置も大型化してしまう。
【0007】
複数の流路の制御に、特許文献1のような多連切替え弁を使用する手も考えられるが、弁内部が接液するため、コンタミネーションの観点から使用は望ましくない。
【0008】
コンタミネーションのリスクなく、小型かつ安価な弁が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願はX≦2Nを満たすX本の流路の流路制御方法であって、N個の弁を用いて、同時に複数の流路を選択的に開閉制御することにより、X通りの流路を選択する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、コンタミネーションのリスクなく、かつ複数流路の制御に必要なピンチ弁を最小限にすることができるから、装置の小型化、低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の流路制御方法の概略説明図である。
図2】ユニバーサル型ピンチ弁の構造を示す図である。
図3】3箇所のピンチ弁に対する8本のチューブの通し方を示す図である。
図4】チューブ選択のためのピンチ弁制御方法を示す図である。
図5】各ピンチ弁でNC側になるチューブ、NO側になるチューブを、選り分けてまとめておき、一括でセットできるようにする一例を示す図である。
図6】チューブホルダの別例を示す図である。
図7】ピンチ部材と支持部材の構造の一例を示す図である。
図8】閉鎖培養系を示す図である。
図9】流路選択機構を備えた閉鎖培養系を示す図である。
図10】自動分析装置の試薬分注系を示す図である。
図11】流路選択機構を備えた試薬分注系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【0013】
図1は、8本のチューブ1を3個のユニバーサル型ピンチ弁2で制御する例である。ユニバーサル型ピンチ弁とは、1つのアクチュエータの制御で、常時開と常時閉の2通りの制御が可能で、図2のような構造をしている。以下、断りなく“ピンチ弁”と使用した時は、ユニバーサル型ピンチ弁のことを指す。
【0014】
ピンチ部材3は、可動鉄心4に固定され、可動鉄心4の動きに合わせて動くようになっている。ピンチ部材3と可動鉄心4を合わせて、アクチュエータともいう。支持部材5はケース6に固定され、こちらの部材は動かない。支持部材5は、NC(Normal Close)側部材5aと、NO(Normal Open)側部材5bからなり、支持部材5とピンチ部材3の間に制御したいチューブを通す。
【0015】
アクチュエータは、ばね7による力と、コイル8によって発生させた磁力により、この図において上下に動く。コイル8に通電しないと、ばね7の力によりアクチュエータは押し上げられ、NC側に設置したチューブがつぶされる(ピンチされる)。コイル8に通電すると、アクチュエータが固定鉄心9側に吸引され、NO側のチューブがつぶされる。このとき、NC側のチューブは弾性により元に戻る。なお、アクチュエータの駆動源としては、本図のような電磁気を利用する以外に、圧力(空圧、液圧)、あるいはカムのように機械的な力を利用してもよい。
【0016】
ピンチ部材3および支持部材5は、NC側、NO側それぞれ、同時に複数本のチューブを設置できる形状を備え、設置されたチューブを同時に制御することが可能となっている。
【0017】
図3に3箇所のピンチ弁に対する8本のチューブの通し方を示す。8本のチューブi〜viiiは、3箇所のピンチ弁A、B、Cに対し、(a)の状態で通されている。チューブ毎にピンチ弁のNC/NO状態をまとめると、(b)のようになる。
【0018】
図4はチューブ選択のためのピンチ弁制御方法を示す。選択するチューブに対し、3箇所のピンチ弁を(a)のON/OFF組合せで制御すると、開放状態にすることができる。
(b)はその詳細を図示したものである。(i)は全てのピンチ弁がOFFの状態で、このとき、iのチューブが開放状態である。ここで、Aのピンチ弁をONすると、(ii)のようになり、iのチューブは閉塞し、iiのチューブが開放状態となる。同様にして、3箇所のピンチ弁を制御して、8本のチューブのいずれかを開放にすることができる。
【0019】
3個のピンチ弁の組合せで8通りの制御ができるが、チューブの数をそれ以下で使用してもよい。例えば、3個のピンチ弁で1本少ない7本のチューブを選択制御しようとした場合、それぞれのチューブは制御できるし、もしその存在しない1本が選択されたとしても、残りの7本のチューブの開閉に影響が出るわけではない。チューブの数は、ピンチ弁の制御の組合せの数より少なければ問題ない。ピンチ弁の数Nに対して、2N通りの制御が可能だから、X≦2Nを満たすX本の流路選択に、N個のピンチ弁があればよいことになる。
【0020】
また、敢えて1本を未使用とし、全てのピンチ弁でNO側を通過する組合せでは使用しないようにすれば、電源を落としたときに、必ず全てのチューブが閉塞している状態が得られる。停電などで、意図せずチューブが開放状態となることが回避でき、フェイルセーフにもなる。
【0021】
なお、ユニバーサル型ではなく、1つのアクチュエータで、開閉のどちらかを切替えるNC型またはNO型ピンチ弁を使用する場合、2つの組合せでユニバーサル型と同じ機能が実現できるから、X≦2Nを満たすX本の流路選択に、NC型またはN型ピンチ弁を2N個用意しても、上記の流路選択は可能である。
【実施例1】
【0022】
以下実施例では、ピンチ弁にチューブをセットする方法について、説明する。
【0023】
本発明の流路(チューブ)選択方法は、複数あるチューブの、ピンチ弁への通し方が重要であるが、一方で複雑なため、その場で1本1本セットしようとすると、時間がかかる。また、通し間違いの可能性も排除できない。そこで、あらかじめ、各ピンチ弁でNC側になるチューブ、NO側になるチューブを、選り分けてまとめておき、一括でセットできるようにするとよい。
【0024】
図5にその一例を示す。チューブホルダ10は、2つのチューブ保持部10a、10bを持ち、それぞれ、NC用、NO用にチューブを受け持つ。チューブホルダ10は、ピンチ弁の支持部材5にスライドしてはめ込むことができるように、勘合部10cを持つ。チューブ1はあらかじめチューブホルダ10にNC用/NO用選り分けて通されており、チューブホルダ10をピンチ弁の支持部材5にはめ込むことで、チューブ1がピンチ弁にセットされる。2N本のチューブ1がN個のチューブホルダ10に、あらかじめ正しい組合せで通されたチューブセットが用意されていてもよい。ユーザはチューブを通す煩わしさから開放される。
【0025】
チューブホルダを支持部材にはめ込む際に、NC側とNO側を間違えないように、勘合部の形状を非対称にして、逆はめ込み防止の仕掛けを設ける工夫があってもよい。チューブホルダおよびピンチ弁が複数ある場合、対となるチューブホルダとピンチ弁の支持部材が分かるように、色分けする工夫もよい。
【0026】
チューブをあらかじめ選り分けておくことが重要なので、チューブホルダ10のような形ではなく、チューブをNC側/NO側に分けて、それぞれをテープや接着剤で束ねたような形でもよい。
【0027】
ピンチ弁のNC側は狭く、チューブを通しづらいので、ピンチ部材3の位置を切替えながらNO側とNC側を順に通すようにしてもよい。図6のチューブホルダ11は2つのチューブ保持部11a、11bと、可撓部分11cを持ち、先にNO側のチューブを通し、次にアクチュエータを駆動してNC側を開放し、NC側のチューブを通すようにするとよい。NC側とNO側は誤挿入を防ぐ工夫があるとよい。例えば、誤挿入できない形状を有してもよいし、あるいは、色分けすることで、誤挿入を起きにくくする工夫でもよい。
【0028】
ピンチ弁から、ピンチ部材と支持部材を着脱可能な構造とし、チューブにピンチ部材、支持部材を組み込んだ状態で、チューブセットとしてもよい。図7(a)のように、ピンチ弁12は本体12aとピンチ部材12b、支持部材12cに分解でき、支持部材12cは、更に12c1、12c2に分解可能である。(b)のように、支持部材12c2とピンチ部材12bの間にNO用チューブを通し、その上にNC用のチューブを通し、支持部材12c1と12c2を結合させる。このような状態でチューブセットとして用意してもよい。結合の方法として、スナップフィット構造を採用すれば、安価かつ容易な結合が可能である。使用するときは、(c)のように、支持部材12c2とピンチ弁本体12a、ピンチ部材12bとアクチュエータ12dを結合させて使用する。なお、ピンチ部材12bとアクチュエータ12dの結合にあたっては、アクチュエータの上下の動きがピンチ部材に伝達できるようになってなければならない。例えば、凹部に凸部が嵌り込み両者の位置関係が拘束されるようなスナップフィットを採用するとよい。
なお、本発明で取り扱う流路は円管構造に限らない。チューブ以外に、フィルムを張り合わせて成形した流路等にも適用できる。ピンチ弁のピンチ力に対し変形可能な、弾性ないし可撓性を備えた流路であればよい。
【実施例2】
【0029】
以下実施例は、本流路制御方法を細胞培養装置に適用した例である。
【0030】
細胞培養装置の中には、流体の導入口と排出口を持つ密閉型の培養容器に、培地の入った供給バッグや回収バッグを接続して一つの密閉した系を形成し(以下、閉鎖培養系)、その系の内部で培地交換等を行うことで、細胞を培養するものがあり、例えば前出特許文献2にその方法が記載されている。密閉系であるから、外部からのコンタミネーションのリスクがないといった利点があるが、基本的には系の外側から液体の制御を行わなければならないという制約がある。ピンチ弁は、系の外部から制御できるため、本装置に適した制御部材である。
【0031】
図8に閉鎖培養系を示す。入口と出口を備えた培養容器13は、供給バッグ14、回収バッグ15がチューブ(上流側16、下流側17)を介して接続され、密閉された状態にある。液体の駆動力は系の外側から与える必要があり、しごきポンプ18により、チューブを外側からしごいて送液する。なお、しごきポンプ18は上流側と下流側のどちらのチューブに設置してもよい。
【0032】
図8のように培養容器や供給バッグ、回収バッグが単数で分岐がない場合は、流路を制御する必要はないが、これらが複数あって並列に接続されている場合、流路を選択しながら送液しなければならない。流路の選択に、本発明の流路選択方法を適用する。
【0033】
図9(a)に供給バッグが並列に接続される例を示す。細胞培養に必要な液種として、細胞懸濁液をはじめ、培地、洗浄液、酵素液、などがあり、細胞培養装置としては、同時に複数の供給バッグを扱えることが望ましい。複数の供給バッグ14は、それぞれ個別流路19で共通流路16に接続されている。個別流路19が並ぶ箇所に、流路選択機構20を置く。流路選択機構20は、N個のユニバーサル型のピンチ弁を備えた機構で、2N本の流路の選択が可能な機構である。流路選択機構20は、どれか1本が開放となるように制御する。
【0034】
ペリスタポンプ18は上流または下流の共通流路部分に設置され、流路選択後、ペリスタポンプを駆動することで、選択した液種が培養容器へ送られる。
【0035】
図9(b)は、培養容器が複数あって並列に接続されている場合である。収量を上げるために、培養容器を増やすことはよく行われる。また、移植用と別に検査用に供するために複数枚培養することもある。複数の培養容器13は並列で置かれ、それぞれ個別流路21で共通流路に接続される。個別流路21が並ぶ箇所に、流路選択機構20を置けば、送液する培養容器を選択できる。流路選択機構20は、培養容器の上流側に設置しても、下流側に設置してもよい。
【0036】
図9(c)は、回収バッグが複数あって、並列に接続されている場合である。回収物を分離したい場合に、このような接続方法が使用できる。共通流路17から、個別流路22に分岐し、その箇所に流路選択機構20を設置すれば、回収先の選択が可能となる。
【0037】
図9(d)のように、これらを組合せてもよい。例えば、供給バッグ14、培養容器13、回収バッグ15が、それぞれ複数あり、上下の共通流路16、17を介して接続されている。それぞれの個別流路の箇所に流路選択機構20を設置すれば、任意の液種を、任意の培養容器に送り、任意の回収先に回収することができる。
【0038】
図9(e)のように、M個の供給バッグと、N個の培養容器が、M×Nの組合せで接続されている場合もある。流路は複雑になるが、流路を共用しないので、上流において異なる液種のキャリーオーバーが発生しないメリットがある。M個の供給バッグ14と、N個の培養容器13が、それぞれ(M×N)本の個別流路23で接続され、その箇所に流路選択機構20を設置すればよい。なお、上流側の本数が多くとも、下流側を一つにまとめれば、駆動源(しごきポンプ)は一つで済む。
培養容器から複数の回収物を分離したい場合、もしこれらの回収物にキャリーオーバーが全くあってはならない場合、(f)のように回収側で分けてもよい。P個の培養容器13と、Q個の回収バッグ15が、それぞれ(P×Q)本の個別流路24で接続され、その箇所に流路選択機構20を設置すればよい。上流側を一つにまとめれば、駆動源は一つで済む。
【実施例3】
【0039】
以下実施例は、本流路制御方法を自動分析装置に適用した例である。
【0040】
自動分析装置において、例えば、図10のような試薬分注系がある。三方切替え弁30の一方は、試薬容器31につながる流路32、他方はノズル33につながる流路34が接続される。三方切替え弁30の共通ポートは流路35を介しシリンジ36に接続されている。三方切替え弁30を試薬容器31側に向け、シリンジ36を引くと、試薬をシリンジ側に吸引できる。三方切替え弁30をノズル33側に切替え、シリンジ36を押すと、ノズルから試薬を吐出することができる。
【0041】
複数の試薬を扱うには、この試薬分注系を複数持てばよいが、1本のシリンジで制御する方法として、多連切替え弁を用いる方法があり、例えば、前出特許文献1に記載されている。多連切替え弁の一方に複数の試薬分注系の流路が接続され、もう一方にシリンジが接続され、試薬分注系を選択してシリンジを制御することで、任意の試薬分注が可能となる。
特許文献1に記載の多連切替え弁は、すべり弁同士を押し当てて切替えることで、リークなく切替えているが、押し当てている構造上、この部分からのリークが0ではない。リークを極力抑えるためには、メンテナンスが非常に重要であり、かつ手間であった。
【0042】
図11のように、複数の試薬分注系の三方切替え弁の共通ポートから延びた各流路35を共通流路37にまとめ、その先に共通のシリンジ38を接続する。複数の個別流路35の箇所に本発明の流路選択機構20を設置する。流路選択機構20で流路を選択した後に、シリンジ38を操作することで、任意の試薬の分注が行える。この方法だと、試薬分注系は閉じた系のままのため、リークは起こりえず、メンテナンスが容易になる利点がある。
【符号の説明】
【0043】
1 チューブ、2 ピンチ弁、3 ピンチ部材、4 可動鉄心、5 支持部材、6 ケース、7 ばね、8 コイル、9 固定鉄心、10 チューブホルダ、11 チューブホルダ、12 ピンチ弁、13 培養容器、14 供給バッグ、15 回収バッグ、16 上流側チューブ、17 下流側チューブ、18 しごきポンプ、19 個別流路、20 流路選択機構、21 個別流路、22 個別流路、23 個別流路、24 個別流路、30 三方切替え弁、31 試薬容器、32 流路、33 ノズル、34 流路、35 流路、36 シリンジ、37 共通流路、38 シリンジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11