特許第6166274号(P6166274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6166274粒径に応じて固体粒子を分離する装置の効率向上
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  • 特許6166274-粒径に応じて固体粒子を分離する装置の効率向上 図000020
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166274
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】粒径に応じて固体粒子を分離する装置の効率向上
(51)【国際特許分類】
   B07B 4/08 20060101AFI20170710BHJP
   B02C 23/12 20060101ALI20170710BHJP
   C04B 7/52 20060101ALI20170710BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20170710BHJP
   C04B 24/04 20060101ALI20170710BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20170710BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20170710BHJP
   C08G 81/00 20060101ALI20170710BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20170710BHJP
   C08F 8/32 20060101ALI20170710BHJP
   C04B 103/30 20060101ALN20170710BHJP
【FI】
   B07B4/08 B
   B02C23/12
   C04B7/52
   C04B24/02
   C04B24/04
   C04B24/12 A
   C04B24/26 B
   C04B24/26 D
   C04B24/26 E
   C08G81/00
   C08F8/14
   C08F8/32
   C04B103:30
【請求項の数】16
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-547990(P2014-547990)
(86)(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公表番号】特表2015-509037(P2015-509037A)
(43)【公表日】2015年3月26日
(86)【国際出願番号】EP2012076233
(87)【国際公開番号】WO2013092763
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年12月18日
(31)【優先権主張番号】11195090.3
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】マイケル マクリン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ミュラー
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特公平02−039464(JP,B2)
【文献】 欧州特許出願公開第02336100(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0242805(US,A1)
【文献】 国際公開第2004/022237(WO,A1)
【文献】 国際公開第00/47370(WO,A1)
【文献】 特表平10−504514(JP,A)
【文献】 特開平5−177124(JP,A)
【文献】 特開平5−32438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/30
B02C 23/00−23/40
B07B 4/00− 4/08
C04B 7/36− 7/60
C04B 24/00−24/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径に応じて固体粒子を分離する装置の効率を高めるための、減水剤の使用であって、
記固体粒子が無機及び/又は鉱物固体の粒子であり、
前記粒径に応じて固体粒子を分離する装置が、粉砕装置の下流側に位置している空気分級装置であり、
前記減水剤が、ポリカルボキシレート主鎖とポリエーテル側鎖とを有する櫛形ポリマーであり、前記ポリエーテル側鎖は、エステル、エーテル及び/又はアミド基を介して前記ポリカルボキシレート主鎖に結合しているポリカルボキシレートであり、かつ
前記固体粒子が、少なくとも5wt%のセメント及び/又はセメントクリンカーを含有する、
減水剤の使用。
【請求項2】
前記粉砕装置がボールミルである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
所定の粒径を上回る固体粒子が、前記粒径に応じて固体粒子を分離する装置から前記粉砕装置へ運転中に戻される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記固体粒子の少なくとも一部が、鉱物バインダー及び/又は鉱物バインダーのための添加剤を含有するか、又はこれからなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記櫛形ポリマーは下記部分構造単位を含むか又はこれらからなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用:
a) aモル分率の以下の式(I)の部分構造単位S1:
【化1】
b) bモル分率の以下の式(II)の部分構造単位S2:
【化2】
c) cモル分率の以下の式(III)の部分構造単位S3:
【化3】
d) dモル分率の以下の式(IV)の部分構造単位S4:
【化4】
(上記式中、
Mは互いに独立してH、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価又は三価の金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基を表し、
それぞれのRは、互いに独立して、水素又はメチル基を表し、
それぞれのRは、互いに独立して、水素又はCOOMを表し、
m=0,1又は2であり、
p=0又は1であり、
及びRは、互いに独立して、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、又は[AO]−Rを表し、
A=C〜Cアルキレンであり、Rは、H、C〜C20アルキル基、シクロヘキシル基、又はアルキルアリール基を表し、
そしてn=2〜250であり、
は、互いに独立して、NH、−NR、−ORNRを表し、
及びRは、互いに独立して、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、若しくはアリール基を表し、又は
ヒドロキシアルキル基、アセトキシエチル(CH−CO−O−CH−CH−)、ヒドロキシ−イソプロピル(HO−CH(CH)−CH−)、若しくはアセトキシイソプロピル基(CH−CO−O−CH(CH)−CH−)を表し、
あるいは、
及びRは、窒素をその一部として共に環を形成することにより、モルホリン又はイミダゾリン環を形成し;
は、C〜Cアルキレン基であり、
及びRは、互いに独立して、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、アリール基、又はヒドロキシアルキル基を表し、
そして、a,b,c及びdは、それぞれの部分構造単位S1,S2,S3及びS4のモル分率を表し、
a/b/c/d=(0.1〜0.9)/(0.1〜0.9)/(0〜0.8)/(0〜0.8)であり、そしてa+b+c+d=1であることを条件とする)。
【請求項6】
前記ポリカルボキシレート中、
a) 残基R及びRは、水素を表し、
b) m=0であり、
c) p=1であり、
d) R及びRは、いずれの場合にも互いに独立して−[AO]−Rを表し、n=20〜70であり、そしてA=Cアルキレンであり、
e) Rはメチル基を表し、かつ/又は
f) a/b/c/d=(0.5〜0.8)/(0.2〜0.4)/(0.001〜0.005)/0である
ことを特徴とする、請求項に記載の使用。
【請求項7】
前記減水剤が、少なくとも1種の粉砕助剤を含む組成物の形態で使用される、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記粉砕助剤は、グリコール、有機アミン、及び有機アミンとカルボン酸とのアンモニウム塩を含む群から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記少なくとも1種の粉砕助剤が、アルカノールアミンを含む、請求項に記載の使用。
【請求項10】
前記少なくとも1種の粉砕助剤はグリコールを含む、請求項に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物は:
a) 5〜99wt%の減水剤;
b) 1〜80wt%の少なくとも1種の粉砕助剤;
c) 0〜90wt%の少なくとも1種の付加的な成分;
d) 0〜90wt%の水
を含有するか、又はこれらからなることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物は:
a) 5〜30wt%の減水剤;
b) 1〜30wt%の少なくとも1種の粉砕助剤;
c) 1〜20wt%の少なくとも1種の付加的な成分;
d) 10〜60wt%の水
を含有するか、又はこれらからなることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記減水剤は、前記固体粒子の重量に対して0.001〜1wt%の量で使用されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記減水剤は、前記固体粒子の重量に対して0.05〜0.07wt%の量で使用されることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記減水剤又は前記組成物が液体凝集状態で使用される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
固体粒子のための粉砕プロセス前及び/又は粉砕プロセス中に、前記減水剤又は前記組成物が添加される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒径に応じて固体粒子を分離する装置の効率を高めるための物質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱物バインダー、具体的にはセメントの製造時の主要な工程及び考慮すべきコスト要因は、粗粒状鉱物固体を微粉末に粉砕することである。このように、セメント製造時には、例えばクリンカー、そして製造しようとするセメントのタイプに応じて任意の添加剤、例えばスラグ砂又は石灰石も微粉末に粉砕される。原則としては、セメント及び添加剤はここでは一緒に粉砕することができ、又は別個に粉砕することもできる。粉砕後、鉱物バインダーの粒径は、<50μmの範囲であることが典型的である。
【0003】
鉱物バインダーの微粉度は、ここでは重要な品質基準である。例えば、微細に粉砕された鉱物バインダーを有する硬化されたモルタル又はコンクリートの混合物は、一般に比較的粗く粉砕された鉱物バインダーに基づく対応する混合物よりも、圧縮強度が高い。
【0004】
粉砕装置内の固体の破砕を容易にするために、いわゆる粉砕助剤(grinding aids)を使用することができる。これらは粉砕継続時間、及び粉砕に必要とされるエネルギー消費量を大幅に低減することを可能にする。1960年代以降、有機液体、具体的にはグリコール及びアミノアルコール、並びにこれらの混合物が粉砕助剤として有効であることが証明されている。これらは被粉砕材料に対して約0.2%までの量で、前記材料とともにセメントミル内に添加される。
【0005】
例えば分散剤を粉砕助剤として使用することも知られている。これに関して、特許文献1には、粉砕効率を改善するために、ポリカルボキシレートエーテルを使用することが記載されている。
【0006】
大規模な設備、例えばセメント工場において、粉砕装置の下流側には通常、いわゆる粒径に応じて固体粒子を分離する装置が配置されている。このような装置は分級装置(セパレータ、separators)とも呼ばれる。分級装置の目的は、粒径に応じて固体粒子を分離する装置内で、粉砕された固体を、分類又は分離することである。十分に微細な固体粒子を粉砕プロセスの生成物として取り出す一方、過度に粗い粒子をミルに戻してさらに破砕する。これは連続運転で行うことができ、そして具体的には、粉砕固体の狭い粒径分布を高い生産能力で保証する。
【0007】
しかしながら前述のように、このような設備の生産能力をできる限り低い費用で高めることが原則としては望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2005/123624号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、微粉砕された固体、具体的には鉱物バインダーの製造を改善すること、又は製造をより効率的になるように設計することである。この場合、具体的には生産能力を高めなければならない。このことはできる限り経済的に行われるべきであり、可能ならば、粉砕固体の特性に目立った影響を及ぼすべきではない。この改善は具体的には、現存の設備を用いて、できる限り僅かな改造を加えるだけで実現可能であることが望ましい。具体的にはバインダーの場合、生産能力の改善がバインダーの特性、例えば凝結又は固化挙動又は加工性に大きく不都合な影響を及ぼしてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、本発明の課題は、下記態様1に基づいて解決できることが判った。したがって、本発明の本質は、粒径に応じて固体粒子を分離する装置の効率を高めるために減水剤を使用することにある。
すなわち、本発明の実施態様としては以下を挙げることができる:
〈態様1〉
粒径に応じて固体粒子を分離する装置の効率を高めるための、減水剤の使用。
〈態様2〉
前記粒径に応じて固体粒子を分離する装置が、空気分級装置であることを特徴とする、態様1に記載の使用。
〈態様3〉
前記粒径に応じて固体粒子を分離する装置が、粉砕装置の下流側に、特にセメントミルの下流側に位置している、態様1又は2に記載の使用。
〈態様4〉
所定の粒径を上回る固体粒子が、前記粒径に応じて固体粒子を分離する装置から前記粉砕装置へ運転中に戻される、態様3に記載の使用。
〈態様5〉
前記固体粒子が、無機及び/又は鉱物固体の粒子であり、特に前記固体粒子の少なくとも一部が、鉱物バインダー及び/又は鉱物バインダーのための添加剤を含有するか、又はこれからなる、態様1〜4のいずれか一項に記載の使用。
〈態様6〉
前記減水剤が、ポリカルボキシレートであり、特に前記ポリカルボキシレートは、ポリカルボキシレート主鎖とポリエーテル側鎖とを有する櫛形ポリマーであり、前記ポリエーテル側鎖は、エステル、エーテル及び/又はアミド基を介して前記ポリカルボキシレート主鎖に結合されている、態様1〜5のいずれか一項に記載の使用。
〈態様7〉
前記ポリカルボキシレート又は櫛形ポリマーは下記部分構造単位を含むか又はこれらからなることを特徴とする、態様6に記載の使用:
a) aモル分率の以下の式(I)の部分構造単位S1:
【化1】
b) bモル分率の以下の式(II)の部分構造単位S2:
【化2】
c) cモル分率の以下の式(III)の部分構造単位S3:
【化3】
d) dモル分率の以下の式(IV)の部分構造単位S4:
【化4】
(上記式中、
Mは互いに独立してH、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価又は三価の金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基を表し、
それぞれのRは、互いに独立して、水素又はメチル基を表し、
それぞれのRは、互いに独立して、水素又はCOOMを表し、
m=0,1又は2であり、
p=0又は1であり、
及びRは、互いに独立して、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、又は[AO]−Rを表し、
A=C〜Cアルキレンであり、Rは、H、C〜C20アルキル基、シクロヘキシル基、又はアルキルアリール基を表し、
そしてn=2〜250であり、
は、互いに独立して、NH、−NR、−ORNRを表し、
及びRは、互いに独立して、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、若しくはアリール基を表し、又は
ヒドロキシアルキル基、アセトキシエチル(CH−CO−O−CH−CH−)、ヒドロキシ−イソプロピル(HO−CH(CH)−CH−)、若しくはアセトキシイソプロピル基(CH−CO−O−CH(CH)−CH−)を表し、
あるいは、
及びRは、窒素をその一部として共に環を形成することにより、モルホリン又はイミダゾリン環を形成し;
は、C〜Cアルキレン基であり、
及びRは、互いに独立して、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、アリール基、又はヒドロキシアルキル基を表し、
そして、a,b,c及びdは、それぞれの部分構造単位S1,S2,S3及びS4のモル分率を表し、
a/b/c/d=(0.1〜0.9)/(0.1〜0.9)/(0〜0.8)/(0〜0.8)であり、
特にa/b/c/d=(0.3〜0.9)/(0.1〜0.7)/(0〜0.6)/(0〜0.4)であり、
好ましくはa/b/c/d=(0.5〜0.9)/(0.1〜0.3)/(0.001〜0.005)/0であり、そしてa+b+c+d=1であることを条件とする)。
〈態様8〉
前記ポリカルボキシレート中、
a) 残基R及びRは、水素を表し、
b) m=0であり、
c) p=1であり、
d) R及びRは、いずれの場合にも互いに独立して−[AO]−Rを表し、n=20〜70であり、そしてA=Cアルキレンであり、
e) Rはメチル基を表し、かつ/又は
f) a/b/c/d=(0.5〜0.8)/(0.2〜0.4)/(0.001〜0.005)/0である
ことを特徴とする、態様7に記載の使用。
〈態様9〉
前記減水剤が、少なくとも1種の粉砕助剤を含む組成物の形態で使用され、特に前記粉砕助剤は、グリコール、有機アミン、及び有機アミンとカルボン酸とのアンモニウム塩を含む群から選択される、態様1〜8のいずれか一項に記載の使用。
〈態様10〉
前記少なくとも1種の粉砕助剤が、アルカノールアミン、特にトリエタノールアミン及び/又はトリイソプロピルアミンを含む、態様9に記載の使用。
〈態様11〉
前記少なくとも1種の粉砕助剤はグリコール、特にジエチレングリコールを含む、態様9又は10に記載の使用。
〈態様12〉
前記組成物は:
a) 5〜99wt%、好ましくは5〜50wt%、より好ましくは5〜30wt%の減水剤;
b) 1〜80wt%、好ましくは5〜60wt%、より好ましくは5〜30wt%の少なくとも1種の粉砕助剤;
c) 0〜90wt%、特に1〜20wt%の少なくとも1種の付加的な成分;
d) 0〜90wt%、特に10〜60wt%の水
を含有するか、又はこれらからなることを特徴とする、態様9〜11のいずれか一項に記載の使用。
〈態様13〉
前記減水剤は、前記固体粒子の重量に対して0.001〜1wt%、特に0.003〜0.2wt%、より好ましくは0.003〜0.1wt%、さらにより好ましくは0.005〜0.07wt%の量で使用されることを特徴とする、態様1〜12のいずれか一項に記載の使用。
〈態様14〉
前記減水剤又は前記組成物が液体凝集状態で使用される、態様1〜13のいずれか一項に記載の使用。
〈態様15〉
固体粒子のための粉砕プロセス前及び/又は粉砕プロセス中に、前記減水剤又は前記組成物が添加される、態様1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【発明の効果】
【0011】
驚くべきことに、減水剤を使用すると、粒径に応じて固体粒子を分離する装置の効率を有意に改善できることが試験において見いだされた。減水剤は通常の粉砕添加剤、例えばアルカノールアミン又はグリコール化合物よりも効果的である。これは当業者にとっては予期せぬことである。それというのも、原則的に減水剤は、液化用水性液体系のために設計されているのであって、粉砕プロセスから生じる乾燥又は粉末状固体粒子のために設計されているのではないからである。
【0012】
具体的には、減水剤を使用すると、粒径に応じて固体粒子を分離する装置又は分級装置の選択性を改善することができる。具体的にはこのことは、過剰に粗いものとして誤分類される固体粒子の比率を低減できることを意味している。例えば既に十分に微粉砕されている複数の固体粒子の緩い凝集が、このような誤分類を引き起こすことがある。別の誤分類源は、十分に微粉砕された固体粒子の集積に起因する凝塊形成である。このような凝塊は、例えば粉砕固体の移動中、輸送中、及び後処理中に加えられる機械的作用に基づいて、いずれの場合にも分解する。そして最終生成物に関する限り、これらは目立った問題を示すことはない。他方において、もしこれらが誤って廃棄されるか、又は粉砕装置内に戻され、この場所で再び不要な粉砕を施されるのであれば、生産能力はかなり低減される。
【0013】
したがって、減水剤を本発明に基づいて使用すると、具体的には、下流側の粒径に応じて固体粒子を分離する装置によって粉砕装置の生産能力を高めることができる。具体的には、粉砕装置内に不必要に戻される固体粒子(「戻り材料(return material)」又は「グリット(grit)」とも呼ばれる)の比率を低減することができる。
【0014】
加えて、本発明による解決手段は、現存の設備を改造又は改変する必要がない。それというのも、減水剤は、粉砕しようとする材料又は固体粒子とシンプルに混和できるからである。結果として、フレキシブルで経済的な解決手段を利用することができる。この解決手段は、現存の設備内でシンプルに実現することができる。
【0015】
本発明の別の更なる態様は、更なる独立的態様の対象である。本発明の特に好ましい実施態様は、従属的態様の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、下流側の空気分級装置を備えた連続ボールミルの装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1の態様は、減水剤の使用であって、粒径に応じて固体粒子を分離する装置の効率を高めるための減水剤の使用に関する。
【0018】
「粒径に応じて固体粒子を分離する装置(device for separating solid particles according to size)」という表現は具体的には、固体粒子をその粒径に基づいて分離する装置を意味する。このような装置は分級装置とも呼ばれる。したがって、このような装置又は分級装置の目的は、例えば粉砕装置内で粉砕された固体粒子をその粒径に基づいて分類又は分離することである。
【0019】
この文脈における「減水剤(water reducing admixture)」という用語は具体的に述べれば、水で調製されるモルタル組成物及び/又はコンクリート組成物の流動性を改善し、かつ/又はこのような組成物の水需要量を低減することができる物質を意味する。このような物質は「可塑剤(plasticizer)」とも呼ばれる。例えば、減水剤はリグニンスルホネート、グルコネート、ナフタリンスルホネート、メラミンスルホネート、ビニルコポリマー、ポリカルボキシレート、具体的にはポリカルボキシレートエーテル、又はこれらの混合物を含むことができる。
【0020】
この文脈において、「固体粒子(solid particles)」は具体的には無機及び/又は鉱物固体粒子である。これらは具体的には乾燥及び/又は粉末状形態を成している。具体的には、固体粒子は建造物のために使用される無機物質から成っている。これらの無機物質は、例えばセメント、モルタル、及び/又はコンクリートの組成物のための成分として使用することができる。固体粒子は鉱物バインダー及び/又は鉱物バインダーのための添加剤であることが好ましい。典型的には、固体粒子の粒径は0.01〜1000μm、具体的には0.1〜100μmである。
【0021】
ここでは「鉱物バインダー」は、水の存在において、任意には適宜の励起とともに水和反応の形で反応することによって、固形の水和物又は水和物相を形成するバインダー、具体的には無機バインダーである。これは例えば水硬性バインダー(例えばセメント又は水硬性石灰)、潜在水硬性バインダー(例えばスラグ又はスラグ砂)、ポゾランバインダー(例えばフライアッシュ、トラス、又はもみ殻灰)及び/又は複合的な特性を有するバインダー、例えば焼成粘土又は粘板岩であり得る。バインダーは別個のもの、又は任意の組み合わせであってよい。
【0022】
「鉱物バインダーのための添加剤」は例えば不活性鉱物物質、例えば石灰石、石英粉末、及び/又はピグメントである。
【0023】
固体粒子の少なくとも一部が鉱物バインダー及び/又は鉱物バインダーのための添加剤を含むか、或いは固体粒子の少なくとも一部がこれからなることが好ましい。固体粒子全てに対する固体粒子の前記少なくとも一部の含有率は具体的には少なくとも50wt%、具体的には少なくとも75wt%、特に少なくとも90wt%である。
【0024】
具体的には、固体粒子の前記少なくとも一部は少なくとも5wt%、好ましくは少なくとも25wt%、具体的には≧50wt%の水硬性バインダー、好ましくはセメント及び/又はセメントクリンカーを含有する。
【0025】
更なる有利な実施態様では、固体粒子の前記少なくとも一部は少なくとも5〜100wt%、具体的には5〜65wt%の潜在水硬性及び/又はポゾランバインダー、具体的にはスラグ及び/又はフライアッシュを含有する。
【0026】
固体粒子の前記少なくとも一部は鉱物バインダーのための添加剤、及び/又は不活性成分を含有するか、又はこれからなることも可能である。
【0027】
具体的には、固体粒子の少なくとも一部は水硬性バインダー、具体的にはセメントクリンカー、及び潜在水硬性及び/又はポゾランバインダー及び/又は鉱物バインダーのための添加剤の混合物であり得る。例えばセメントクリンカー、スラグ及び/又はフライアッシュ及び/又は石灰石の混合物が好ましい。この場合、潜在水硬性及び/又はポゾランバインダーの含有率は具体的には5〜95wt%、具体的には好ましくは5〜65wt%、具体的には好ましくは15〜35wt%であるのに対して水硬性バインダーは少なくとも35wt%、特に少なくとも65wt%である。さらに、混合物はこれに加えて不活性物質、例えば石灰石を含有することができる。粉砕後、このような混合物を例えばモルタル混合物及びコンクリート混合物中のバインダー成分として使用することができる。
【0028】
粒径に応じて固体粒子を分離する装置又は分級装置は、具体的には固体粒子を乾燥状態で分離し得るように設計される。
【0029】
具体的には、装置は、粒径に対応して固体粒子を分離するように設計され、かつ/又は装置は具体的には、分離限界が約10〜40μmとなるように操作される。これは、粒径が分離限界を上回る固体粒子が、粒径が分離限界を下回る固体粒子から分離されることを意味する。
【0030】
粒径に応じて固体粒子を分離する装置は、空気分級装置であることが特に好ましい。空気分級装置の場合、固体粒子はガス流中の流れ抵抗、重力、及び/又は遠心力の比に基づいて分離される。
【0031】
実際には、種々異なるタイプの空気分級装置が使用される。具体的には静的空気分級装置と動的空気分級装置との間で区別される。動的空気分級装置にはこれらの設計に基づいて3つの異なる世代が割り当てられる(第1、第2、及び第3世代)。
【0032】
第1及び第2世代の動的空気分級装置の場合、分離されるべき固体粒子は概ね上方から回転分配板上に導かれる。その結果として粒子は、分配板の近くに配置された分離ゾーン内に水平方向に投影される。分離ゾーン内では空気は鉛直方向に上方に向かって流れる。流れ抵抗、重力、及び遠心力の比により、粒径又は重量が分離限界を上回る粒子は下方に向かって沈み、これに対して粒径又は重量が分離限界を下回る粒子は空気流によって運び去られる。結果として、粒径に対応した所期の分離が達成される。第1世代空気分級装置と第2世代空気分級装置との差異は、具体的には、第2世代空気分級装置の場合、内部循環空気流が使用されず、その代わりに外側から供給された空気流が使用されることにある。結果として、効率を改善することができる。
【0033】
動的第3世代空気分級装置の場合、分離されるべき固体粒子は、回転板から回転ケージ構造体の周りで鉛直方向に流れる空気流中に導かれる。分離されるべき固体粒子は、流れ抵抗及び遠心力の比に応じて、ケージ構造体の内部に達する(粒径又は重量が分離限界を下回る粒子)、又はケージから半径方向に離れる(粒径又は重量が分離限界を上回る粒子)。このような空気分級装置は特にコンパクトであり、高い選択性及び効率を有する。
【0034】
実際には、空気分級装置は、粉砕された鉱物バインダー中、及び/又はこのようなバインダーの添加剤中に存在する固体粒子を分離するのに有効であることが具体的に証明されている。原則として、本発明はタイプ及び/又は建造物とは無関係にあらゆる空気分級装置と協働する。
【0035】
空気分級装置は、この場合、具体的には非循環空気流を有する高効率分級装置として設計される。循環空気流を有する空気分級装置と比較して、このような高効率分級装置は、戻り材料又はグリットの問題に関して特に効率的である。空気分級装置は第3世代空気分級装置であることが特に好ましい。
【0036】
しかし、原則的には粒径に応じて固体粒子を分離する装置は、種々異なる形態で、例えば遠心分離器、重力分離器、測定サイクロン、ジェット偏向分離器、インパクタ、又プランシフタとして設計することもできる。
【0037】
粒径に応じて固体粒子を分離する装置は、具体的には粉砕装置、好ましくはセメントミルの下流側に配置される。粉砕装置は例えばボールミル(ball mill)、ボウルミル(bowl mill){英語でvertical roller mill(垂直ローラミル)とも呼ばれる}、材料床ローラミル{英語でroller press mill(ローラプレスミル)とも呼ばれる}、又はHOROミル{英語でhorizontal roller mill (水平ローラミル)とも呼ばれる}であってよい。原則的にはミルのタイプは重要でない。
【0038】
ここでは、所定の粒径又は分離限界を超えた固体粒子を粒径に応じて固体粒子を分離する装置から粉砕装置へ戻すことが有利である。このことは具体的には運転中に連続的に行うことができる。粉砕装置と粒径に応じて固体粒子を分離する装置との相互作用はこうして、定義された粒径分布を有する粉砕固体粒子を特に効率的に生産するのを可能にする。
【0039】
原則としては、粉砕装置と粒径に応じて固体粒子を分離する装置とは分離していてもよい。したがって、粉砕プロセスと固体粒子の篩い分けとを互いに独立して行うこともできる。この場合に粒径に応じて固体粒子を分離する装置内で過剰に大きいものとして分類された固体粒子を例えば別個の工程で、再粉砕のために粉砕装置へ供給することができる。しかしながら、これでは概ね効率が低くなる。
【0040】
「粉砕(grinding)」又は「粉砕プロセス(grinding process)」はここでは具体的には、固体又は種々異なる固体の混合物の平均粒径を低下させる方法を意味する。このことは粉砕装置、具体的にはミル内、特にセメントミル内で行うことができる。
【0041】
粉砕プロセスは例えば、クリンカーを任意には不活性及び/又は活性添加剤、例えば石膏、硬石膏、α−半水和物、β−半水和物、潜在水硬性バインダー、ポゾランバインダー及び/又は不活性充填剤と一緒に粉砕することを含むことができる。
【0042】
典型的には、固体、又は種々異なる固体の混合物、具体的には鉱物バインダーは粉砕中に、少なくとも500cm2/g、具体的には少なくとも1000cm2/g、好ましくは少なくとも2000cm2/g、そしてより好ましくは少なくとも2500cm2/gのブレーン(Blaine)値まで粉砕される。
【0043】
減水剤は、ポリカルボキシレートであることが好ましい。さらに、ポリカルボキシレートは、ポリカルボキシレート主鎖とポリエーテル側鎖とを有する櫛形ポリマーであり、ポリエーテル側鎖は、エステル、エーテル及び/又はアミド基を介してポリカルボキシレート主鎖に結合されていることが好ましい。このような減水剤は、この文脈において極めて有利であることが判っている。加えて、このような減水剤は、バインダーと適合性が高く、部分的には利点を有し得ることも知られている。
【0044】
減水剤は、具体的には、ポリカルボキシレート又は櫛形ポリマーであって、下記部分構造単位を含むか又はこれらからなる、ポリカルボキシレート又は櫛形ポリマーである:
a) aモル分率の下記式(I)の部分構造単位S1:
【化1】
b) bモル分率の下記式(II)の部分構造単位S2:
【化2】
c) cモル分率の下記式(III)の部分構造単位S3:
【化3】
d) dモル分率の下記式(IV)の部分構造単位S4:
【化4】
(上記式中、
Mは互いに独立してH、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価又は三価の金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基を表し、
それぞれのRは、互いに独立して、水素又はメチル基を表し、
それぞれのRは、互いに独立して、水素又はCOOMを表し、
m=0,1又は2であり、
p=0又は1であり、
及びRは、互いに独立して、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、又は[AO]−Rを表し、
A=C〜Cアルキレンであり、Rは、H、C〜C20アルキル基、シクロヘキシル基、又はアルキルアリール基を表し、
そしてn=2〜250であり、
は、互いに独立して、NH、−NR、−ORNRを表し、
及びRは、互いに独立して、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、若しくはアリール基を表し、又は
ヒドロキシアルキル基、アセトキシエチル(CH−CO−O−CH−CH−)、ヒドロキシ−イソプロピル(HO−CH(CH)−CH−)、若しくはアセトキシイソプロピル基(CH−CO−O−CH(CH)−CH−)を表し、
あるいは、
及びRは、窒素をその一部として共に環を形成することにより、モルホリン又はイミダゾリン環を形成し;
は、C〜Cアルキレン基であり、
及びRは、互いに独立して、C〜C20アルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、アリール基、又はヒドロキシアルキル基を表し、
そして、a,b,c及びdは、それぞれの部分構造単位S1,S2,S3及びS4のモル分率を表し、
a/b/c/d=(0.1〜0.9)/(0.1〜0.9)/(0〜0.8)/(0〜0.8)であり、
特にa/b/c/d=(0.3〜0.9)/(0.1〜0.7)/(0〜0.6)/(0〜0.4)であり、
好ましくはa/b/c/d=(0.5〜0.9)/(0.1〜0.3)/(0.001〜0.005)/0であり、そしてa+b+c+d=1であることを条件とする)。
【0045】
部分構造単位S1,S2,S3及びS4は、交互、ブロック、又はランダムに配列されていてよい。原則的には、部分構造単位S1,S2,S3及びS4に加えて更なる構造単位が存在することも可能である。
【0046】
構造単位S1,S2,S3及びS4は一緒の状態で、総櫛形ポリマー重量に対して、少なくとも50wt%、具体的には少なくとも90wt%、最も好ましくは少なくとも95wt%の重量含有率を構成することが好ましい。
【0047】
櫛形ポリマーの製造は、それ自体は当業者に知られており、例えばそれぞれ式(I),(II),(III)及び(IV)の対応するモノマーをラジカル重合することによって行うことができる。その結果、部分構造単位S1,S2,S3及びS4を有する櫛形ポリマーKPがもたらされる。残基R,R,R,R,R,M,m及びpは上述の通りである。
【化5】
【0048】
式(V)
【化6】
のポリカルボン酸のポリマー類似反応によってコポリマーを製造することもできる。
【0049】
ポリマー類似反応の際には、式(V)のカルボン酸を、対応するアルコール又はアミン(例えばHO−R、HN−R、H−R)でエステル化又はアミド化し、次いで(残基Mのタイプに応じて、例えば金属水酸化物又はアンモニアで)中和又は部分中和する。ポリマー類似反応に関する詳細は、欧州特許第1 138 697号明細書第7頁第20行〜第8頁第50行並びにその例、又は欧州特許第1 061 089号明細書第4頁第54行〜第5頁第38行並びにその例に開示されている。この反応の変更形の場合、欧州特許第1 348 729号明細書第3頁〜第5頁並びにその例に記載されているように、櫛形ポリマーを、固体の凝集状態で製造することができる。引用されたこれらの特許明細書の開示内容は具体的に参照することにより、本明細書中に組み入れられる。ポリマー類似反応による調製が好ましい。
【0050】
このような櫛形ポリマーはまたSika Schweiz AGによってViscoCrete(登録商標)という一連のブランドで商業的に供給されている。
【0051】
は具体的には水素を表し、そしてRは好ましくは水素及び/又はメチル基を表す。
【0052】
m=0でありp=1であることが好ましい。
【0053】
m=1〜2でありp=0であっても有利である。
【0054】
具体的には、Rは水素と等しく、Rはメチル基を表し、m=1〜2であり、そしてp=0である。
【0055】
及び/又はRはいずれの場合にも互いに独立して、有利には−[AO]−Rを表し、n=8〜200であり、具体的には20〜70であり、そしてAはC〜Cアルキレンである。
【0056】
はいずれの場合にも互いに独立して、好ましくは水素又はメチル基である。
【0057】
ポリカルボキシレート又は櫛形ポリマーであって、
a) 残基R及びRは水素を表し、
b) m=0であり、
c) p=1であり、
d) R及びRはいずれの場合にも互いに独立して−[AO]−Rを表し、n=20〜70であり、そしてA=Cアルキレンであり、
e) Rはメチル基を表し、かつ/又は
f) a/b/c/d=(0.5〜0.8)/(0.2〜0.4)/(0.001〜0.005)/0である
ポリカルボキシレート又は櫛形ポリマーを使用することが特に好ましい。
【0058】
ポリカルボキシレート又は櫛形ポリマーであって、
a) p=0であり、そしてm=1〜2であり、
b) Rは、いずれの場合にも互いに独立して−[AO]−Rを表し、n=8〜200、具体的には20〜70であり、
c) Rは水素又はメチル基、具体的には水素を表し、かつ/又は
d) AはC〜Cアルキレン、具体的にはCアルキレンを表す、
ポリカルボキシレート又は櫛形ポリマーを使用することも有利である。
【0059】
櫛形ポリマー又はポリカルボキシレートの重量平均分子量(M)は具体的には5000〜150,000g/mol、特に10,000〜100,000g/mol、特に20,000〜90,000g/molである。重量平均分子量(M)はゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によって割り出され、ポリエチレングリコール(PEG)が基準として使用される。
【0060】
減水剤は、具体的には単独の添加剤として、更なる成分を用いずに使用することができる。
【0061】
さらに、少なくとも1種の添加剤、例えば粉砕添加剤、コンクリート添加剤、及び/又はモルタル添加剤を含む組成物の形態で減水剤を使用すれば有利である。
【0062】
前記少なくとも1種の添加剤は具体的には、更なる減水剤、粉砕助剤、クロム還元剤、消泡剤、色素、保存剤、減水剤、遅延剤、促進剤、空気連行剤、収縮低減剤、腐食防止剤、又はこれらの混合物を含む。
【0063】
具体的に述べるならば、下記のもの、例えば:
a) 1種又は2種以上のアルカノールアミン及び/又はこれらの塩
b) 1種又は2種以上のアルカリ及び/又はアルカリ土類硝酸塩
c) 1種又は2種以上のアルカリ及び/又はアルカリ土類亜硝酸塩
d) 1種又は2種以上のアルカリ及び/又はアルカリ土類チオシアン酸塩
e) 1種又は2種以上のα−ヒドロキシカルボン酸
f) 1種又は2種以上のアルカリ及び/又はアルカリ土類ハロゲン化物
g) グリセロール及び/又はグリセロール誘導体
h) 1種又は2種以上のグリコール及び/又はグリコール誘導体
i) 1種又は2種以上のアルミニウム塩
j) 1種又は2種以上のアルカリ及び/又はアルカリ土類水酸化物
k) 1種又は2種以上のグルコン酸塩
l) 1種又は2種以上のリグニン化合物
m) 糖蜜
n) 1種又は2種以上のスクロース
o) 1種又は2種以上のモノカルボン酸、例えば酢酸
を使用することができる。
【0064】
この場合a)〜o)で述べた物質の混合物が存在することも可能である。
【0065】
更なる有利な実施態様によれば、減水剤は、少なくとも1種の粉砕助剤を含む組成物の形態で使用される。具体的には、粒径に応じて固体粒子を分離する装置又は分級装置が粉砕装置の下流側に配置されると、結果として申し分のない粉砕効率を達成することができる。加えて、粉砕助剤が分級装置効率の改善に関して適合性があることも判っている。
【0066】
前記少なくとも1種の粉砕助剤は、具体的には、グリコール、有機アミン、及び有機アミンとカルボン酸とのアンモニウム塩を含む群から選択される。
【0067】
有利な実施態様によれば、前記少なくとも1種の粉砕助剤は、アルカノールアミンを含み、アルカノールアミンは、具体的にはトリエタノールアミン及び/又はトリイソプロピルアミンである。
【0068】
別の有利な実施態様によれば、前記少なくとも1種の粉砕助剤はグリコール、具体的にはジエチレングリコールを含む。
【0069】
このような組成物は、粉砕効率及びバインダー特性に照らして特に有利である。
【0070】
特に好ましい組成物は:
a) 5〜99wt%、好ましくは5〜50wt%、より好ましくは5〜30wt%の減水剤;
b) 1〜80wt%、好ましくは5〜60wt%、より好ましくは5〜30wt%の少なくとも1種の粉砕助剤;
c) 0〜90wt%、具体的には1〜20wt%の少なくとも1種の付加的な成分;
d) 0〜90wt%、具体的には10〜60wt%の水
を含有するか、又はこれらからなる。
【0071】
この場合の減水剤は、具体的には上記のポリカルボキシレート又は櫛形ポリマーである。特に好ましい粉砕助剤は、具体的に上述したようなアミノアルコール及び/又はグリコールである。
【0072】
少なくとも1種の付加的な成分、モノカルボン酸、例えば酢酸が特に有利である。
【0073】
減水剤は、固体粒子の重量に対して0.001〜1wt%、具体的には0.003〜0.2wt%、より好ましくは0.003〜0.1wt%、さらにより好ましくは0.005〜0.07wt%の量で使用される。結果として、最適な効果が得られる。これらの指示内容は、考えられ得る付加的な成分を含まない純粋な減水剤の含有率に関する。付加的な成分は例えば、組成物の形態で減水剤を使用する場合には存在することが可能である。
【0074】
減水剤又は組成物は、液体凝集状態で使用されると有利である。結果として、固体粒子の分散及び湿潤を改善することができる。例えば減水剤又は組成物は、溶液又は分散体の形態となることができる。具体的にはこれは水溶液又は分散体として形成することができる。
【0075】
しかしながら、原則的には減水剤又は組成物は、溶融物(melt)として又は固形凝集状態で、例えば粉末、ペレット、又はスケールの形態で使用することも可能である。
【0076】
減水剤又は組成物は、具体的には、固体粒子のための粉砕プロセス前又は粉砕プロセス中にこれらの粒子に添加される。結果として最適な混合が達成される。
【0077】
しかしながら原則的には、添加は粉砕プロセス後に行うこともできる。とはいえ、減水剤又は化合物の十分な分散を保証しなければならない。これは、例えば噴霧によって行うことができる。
【0078】
下記実施例に基づいて、本発明の更なる有利な実施例が当業者に明らかになる。
【0079】
実施態様を説明するために図面を用いる。
【実施例】
【0080】
1.空気分級装置を備えた粉砕装置
図1は、連続ボールミル10と空気分級装置20とからなる、使用する装置を示す概略図である。連続ボールミル10に被粉砕固体11、例えばセメントクリンカーを供給し、そこでそれ自体周知の形式で粉砕する。粉砕された固体粒子12、例えば粉砕されたセメントクリンカーを、続いて下流側の空気分級装置20に供給する。空気分級装置20において、粉砕された固体粒子12は、回転分配板21上に導かれ、その結果粒子は、回転分配板21に隣接して配置された分離ゾーン22内に水平方向に投影される。分離ゾーン22内では空気23は、鉛直方向に上方に向かって流れる。粒径又は重量が分離限界を上回る粗い粒子25は下方に向かって沈み、これに対して粒径又は重量が分離限界を下回る微細な粒子24は、空気流23によって運び去られ、そして空気分級装置20から生成物27として放出される。空気分級装置20内で過剰に粗いものとして分類された粗い粒子25は、コンベヤ装置26を介してボールミル10に連続して戻され、そして再び粉砕される。結果として、連続運転が可能になる。
【0081】
2.使用材料
2.1 減水剤
以下の試験のために、ポリアクリル酸(M=4500g/mol)と、HO−Rタイプのアルコール、及びHN−Rタイプのアミンとをポリマー類似反応させる(97%を上回る変換率)ことによって、櫛形ポリマーKP1の形態を成す減水剤をそれ自体周知の形式で調製した。これを目的として使用される原材料は種々の供給元から商業的に入手可能である。こうして生成された櫛形ポリマーKP1の構造は、部分構造単位S1,S2及びS3を有する上記櫛形ポリマーに相当する。ここで:
− R及びRは水素を表し、
− m=0、そしてp=1であり、
− Rは、重量M=1000g/molのメトキシ末端ポリエチレングリコール(PEG1000−OCH)と、重量M=3000g/molのメトキシ末端ポリエチレングリコール(PEG3000−OCH)との混合物を表す。PEG1000−OCHとPEG3000−OCHとのモル比はここでは、0.205/0.153であり、
− Rは、重量M=2000g/molのメトキシ末端エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマーであり、エチレンオキシド単位とプロピレンオキシド単位とのモル比は50:50であり、
− a/b/c/d=0.640/0.205/0.153/0.002/0であり、そして
− 櫛形ポリマーの分子量Mwは約60,000g/molである。
【0082】
水中に40wt%の櫛形ポリマーを含有する溶液を得た。
【0083】
このような櫛形ポリマーはまたViscocreteという名称でSika Schweizから商業的に供給されている。
【0084】
2.1 組成物Z1
10wt%(固形分含有率)の櫛形ポリマーKP1、30wt%のジエチレングリコール、及び5wt%の酢酸(水中60wt%)を55wt%の水中で混合することにより、第1組成物Z1を調製した。
【0085】
2.2 組成物Z2
10wt%の櫛形ポリマーKP1、20wt%のトリイソプロパノールアミン(水中85wt%)、10wt%のトリエタノールアミン(水中80wt%)、及び5wt%の酢酸(水中60wt%)を55wt%の水中で混合することにより、第2組成物Z2を調製した。
【0086】
2.3 組成物Z3
組成物Z1とほぼ同様に第3組成物Z3を調製した。ただしここでは、櫛形ポリマーは混和せず、その代わりにジエチレングリコールの量を対応して増やした。
【0087】
2.4 組成物Z4
組成物Z2とほぼ同様に第3組成物Z4を調製した。ただしここでは、櫛形ポリマーは混和せず、その代わりにトリエタノールアミン及びトリイソプロピルアミンの量を対応して増やした。
【0088】
3. 分級装置なしの粉砕試験(バッチ法)
比較のために、粉砕試験(M1及びM2)における添加剤として組成物Z1及びZ3を使用した。ここではいずれの場合にも、等しい量のセメントクリンカーを、ラボ用ボールミルにおいて同一の条件下で粉砕した。粉砕試験はここではバッチ法として実施した。試験R1は添加剤なしの参照試験である。組成物Z1及びZ3はいずれの場合にもセメントクリンカーに対して0.025wt%の添加率で、粉砕プロセス前にセメントクリンカーに添加した。粉砕継続時間及び粉砕速度を全ての粉砕試験において一定に保った。
【0089】
粉砕プロセスが完了した後、ブレーンによる微粉度を割り出した。表1は、実施された粉砕試験の概要、及び対応する結果を示している。
【表1】
【0090】
表1から具体的に明らかなのは、減水剤を有する組成物Z1、及び減水剤を有さない組成物Z3は両方とも、添加剤なしの粉砕(R1)と比較して粉砕微粉度を有意に改善することである。しかし、組成物Z3(減水剤なし)は、組成物Z1(減水剤有り)よりも約6%高い粉砕微粉度を達成することができた。このように、純粋に粉砕効率に関しては、減水剤の使用は利点をもたらさない。
【0091】
4. 分級装置なしの粉砕試験(連続法)
やはり比較のために、分級装置が接続されていない連続ボールミル(開回路)における粉砕試験に際して組成物Z2及びZ4を使用した。セメントクリンカーを、それぞれの添加剤又はそれぞれの組成物Z2又はZ4と一緒に連続ボールミルに供給した。組成物Z2及びZ4の添加率はいずれの場合にも、セメントクリンカーに対して0.07wt%であった。
【0092】
セメントクリンカーをいずれの場合にも、約4000cm/gの一定のブレーン微粉度まで粉砕した。
【0093】
続いて、単位時間当たりの生産能力、並びに粒径が45μmを上回る粒子の含有率を測定した。45μmを上回る粒子は、空気ジェット篩を用いて篩残留物を測定することにより、それ自体周知の形式で割り出した。
【0094】
表2は、実施された試験(M3及びM4)の概要、及び対応する結果を示している。
【表2】
【0095】
表2から具体的に明らかなのは、下流側の分級装置を有さない粉砕装置の生産能力に関しては、減水剤の使用が、アミノアルコールと比較して利点をもたらすことがないことである。加えてこの場合、>45μmの粗い粒子の比率を、減水剤によってさらに低減することはできない。
【0096】
5. 分級装置を用いた粉砕試験
分級装置を用いた粉砕試験において、図1に概略的に示された、閉回路の連続ボールミルと下流側の分級装置とを用いてセメントクリンカーを粉砕した。任意に使用される添加剤又はそれぞれの組成物Z1又はZ3と一緒に、セメントクリンカーを連続ボールミルに供給した。組成物Z1又はZ3の添加率はいずれの場合にも、セメントクリンカーに対して0.025wt%であった。
【0097】
セメントクリンカーをいずれの場合にも、約3500cm2/gの一定のブレーン微粉度まで粉砕した。
【0098】
続いて、単位時間当たりの生産能力を測定した。
【0099】
表3は、実施された粉砕試験(S1及びS2)の概要、及び対応する結果を示している。R2は添加剤なしの参照試験である。
【表3】
【0100】
また、閉回路の連続ボールミルと下流側の空気分級装置とを用いた同様の試験を、相異なる濃度の組成物Z2及びZ4を用いて別の設備で実施した。表4は、実施された試験(S3〜S5)の概要、及び関連する結果を示している。
【表4】
【0101】
表4からも判るのは、減水剤を使用する(試験S4及びS5)ことによって生産能力の明らかな増大が可能であることである。
【0102】
要約すると、減水剤の使用は、通常の粉砕助剤と比較して、粉砕効率又は粉砕プロセス自体には顕著な影響を与えないと言える(表1及び2の結果参照)。しかし、減水剤を使用することによって、下流側の分級装置を使用する場合に、通常の粉砕助剤と比較して生産能力を大幅に高めることができる(表3及び4参照)。このことから直ちに出せる結論は、減水剤を使用する結果、粒径に応じて固体粒子を分離する装置又は分級装置の効率が高くなることである。
【0103】
しかしながら、言うまでもなく上記実施態様は一例にすぎず、これを本発明との関連において所望の通りに改変できる。
【0104】
具体的には、図1に示された空気分級装置を異なる形態で、例えば上記のような動的第3世代空気分級装置として設計することもできる。
図1