特許第6166648号(P6166648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6166648
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】アミン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/02 20060101AFI20170710BHJP
   C07C 209/10 20060101ALI20170710BHJP
   C07C 211/54 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   C08G73/02
   C07C209/10
   C07C211/54
【請求項の数】8
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2013-245356(P2013-245356)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-196464(P2014-196464A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年7月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-47154(P2013-47154)
(32)【優先日】2013年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】檜山 爲次郎
(72)【発明者】
【氏名】南 安規
(72)【発明者】
【氏名】池平 秀行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−119354(JP,A)
【文献】 特開昭61−207434(JP,A)
【文献】 特開平01−121324(JP,A)
【文献】 特開2011−207876(JP,A)
【文献】 特開2004−067970(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0241278(US,A1)
【文献】 特表2008−537560(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0265755(US,A1)
【文献】 特開平08−027275(JP,A)
【文献】 特開2012−092181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/10
C08G 73/00
C07C 209/10
C07C 211/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気圧5.5MPa以下の条件にて、遷移金属化合物及び有機溶媒の存在下、式(1)で表される化合物同士を反応させる、式(2)で表される構成単位を含む高分子化合物の製造方法。
【化1】
〔式中、
Xは、ハロゲン原子、又は、スルホン酸エステル構造を有する基を表す。
Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子2個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子2個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子2個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子2個を除いた基を表す。
は、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素から水素原子1個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基を表す。
ArとRは、直接結合して又は連結基を介して環を形成してもよい。
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。〕
【化2】
〔式中、ArとRは、前述と同じ意味を表す。〕
【請求項2】
気圧5.5MPa以下の条件にて、遷移金属化合物及び有機溶媒の存在下、式(11)で表される化合物と、式(12)で表される化合物とを反応させて、式(13)で表される化合物を製造することを含む、アミン化合物の製造方法。
【化3】
〔式中、
mは、1〜4の整数を表す。
Ar11は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子m個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子m個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子m個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子m個を除いた基を表す。
は、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素から水素原子1個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基を表す。
Ar11とRは、直接結合して又は連結基を介して環を形成してもよい。
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。〕
【化4】
〔式中、
nは、1〜4の整数を表す。
Ar12は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子n個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子n個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子n個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子n個を除いた基を表す。
Xは、ハロゲン原子、又は、スルホン酸エステル構造を有する基を表す。Xが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。〕
【化5】
〔式中、Ar11、Ar12、R、R、X、m及びnは、前述と同じ意味を表す。〕
【請求項3】
式(11)で表される化合物(式中、m=2)と、式(12)で表される化合物(式中、n=2)とを反応させて、式(14)で表される構成単位を含む高分子化合物を製造する、請求項2に記載の方法。
【化6】
〔式中、Ar11、Ar12及びRは、前述と同じ意味を表す。〕
【請求項4】
気圧5.5MPa以下の条件にて、遷移金属化合物及び有機溶媒の存在下、式(51)で表される化合物と、式(12)で表される化合物とを反応させて、式(52)で表される化合物を製造することを含む、アミン化合物の製造方法。
【化7】
〔式中、
pは、1〜4の整数を表す。
Ar51は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子p個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子p個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子p個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子p個を除いた基を表す。
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。〕
【化8】
〔式中、
nは、1〜4の整数を表す。
Ar12は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子n個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子n個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子n個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子n個を除いた基を表す。
Xは、ハロゲン原子、又は、スルホン酸エステル構造を有する基を表す。Xが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。〕
【化9】
〔式中、Ar12、Ar51、R、X、p及びnは、前述と同じ意味を表す。〕
【請求項5】
式(51)で表される化合物(式中、p=1)と、式(12)で表される化合物(式中、n=2)とを反応させて、式(53)で表される構成単位を含む高分子化合物を製造する、請求項4に記載の方法。
【化10】
〔式中、Ar51及びAr12は、前述と同じ意味を表す。〕
【請求項6】
が、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
遷移金属化合物が、パラジウム化合物又はニッケル化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
遷移金属化合物の量が、
式(1)で表される化合物のモル数に対して、式(11)で表される化合物と式(12)で表される化合物のモル数の合計に対して、又は、式(51)で表される化合物と式(12)で表される化合物のモル数の合計に対して、
0.0001〜0.1モル当量である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミン化合物は、医農薬および電子材料の原料として有用な化合物群であり、これらの化合物群は古くから銅触媒(銅化合物)を用いたウルマン(Ullmann)反応にて合成可能であることが知られている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。
【0003】
また、近年では、パラジウム触媒に、適当な配位子と、強塩基であるtert−ブトキシナトリウム(tert−BuONa)とを組み合わせる方法によって、広範なアミン化合物が合成可能であることが報告されている(例えば、特許文献2および非特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−48974号公報
【特許文献2】特開平10−139742号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chem.Lett.,pp.1145(1989)
【非特許文献2】Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,34,No.12,1348(1995)
【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc.,118,7215(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ウルマン(Ullmann)反応では、150℃以上の高温と長い反応時間を要し、目的とするアミン化合物の収率も満足のいくものではなかった。また、パラジウム触媒に、適当な配位子と、強塩基であるtert−BuONaとを組み合わせる方法においては、反応中にアミン化合物が分解して副生物が生じ、収率が低下する問題があった。
【0007】
本発明の目的は、アミン化合物の新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は第一に、気圧5.5MPa以下の条件にて、遷移金属化合物及び有機溶媒の存在下、式(1)で表される化合物同士を反応させる、式(2)で表される構成単位を含む高分子化合物の製造方法を提供する。
【化1】
〔式中、
Xは、脱離基を表す。
Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子2個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子2個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子2個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子2個を除いた基を表す。
は、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素から水素原子1個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基を表す。
ArとRは、直接結合して又は連結基を介して環を形成してもよい。
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。〕
【化2】
〔式中、ArとRは、前述と同じ意味を表す。〕
【0009】
本発明は第二に、気圧5.5MPa以下の条件にて、遷移金属化合物及び有機溶媒の存在下、式(11)で表される化合物と、式(12)で表される化合物とを反応させて、式(13)で表される化合物を製造することを含む、アミン化合物の製造方法を提供する。
【化3】
〔式中、
mは、1〜4の整数を表す。
Ar11は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子m個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子m個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子m個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子m個を除いた基を表す。
は、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素から水素原子1個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基を表す。
Ar11とRは、直接結合して又は連結基を介して環を形成してもよい。
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。〕
【化4】
〔式中、
nは、1〜4の整数を表す。
Ar12は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子n個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子n個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子n個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子n個を除いた基を表す。
Xは、脱離基を表す。Xが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。〕
【化5】
〔式中、Ar11、Ar12、R、R、X、m及びnは、前述と同じ意味を表す。〕
【0010】
本発明はまた、気圧5.5MPa以下の条件にて、遷移金属化合物及び有機溶媒の存在下、式(51)で表される化合物と、式(12)で表される化合物とを反応させて、式(52)で表される化合物を製造する、アミン化合物の製造方法を提供する。
【化6】
〔式中、
pは、1〜4の整数を表す。
Ar51は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子p個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子p個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子p個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子p個を除いた基を表す。
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。〕
【化7】
〔式中、Ar12、Ar51、R、X、p及びnは、前述と同じ意味を表す。〕
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アミン化合物の新規な製造方法を提供することができる。
【0012】
本発明のアミン化合物の製造方法においては、N−Si構造を有するアミン化合物を使用することで、温和な条件下、目的とするアミン化合物を高収率にて製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
<用語の説明>
本明細書において、「構成単位」という用語は、高分子化合物中に1個以上存在する単位構造を意味する。
【0015】
本明細書において、「C〜C」(p及びqは正の整数であり、p<qを満たす。)という用語は、この用語の直後に記載された有機基の炭素原子数がp個〜q個であることを表す。例えば、「C〜C12アルキル基」は、アルキル基の炭素原子数が1〜12であることを示し、「C〜C12アルキルフェノキシ基」は、該基中のアルキル部分の炭素原子数が1〜12であることを示す。
【0016】
本明細書において、化合物又は基の直前に付されている「置換基を有していてもよい」という用語は、該化合物又は基の水素原子が置換基で置換されていない場合、及び、該化合物又は基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されている場合の双方を意味する。
【0017】
本明細書において、「置換基」という用語は、特に説明のない限り、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、複素環チオ基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基及びオキシ基を意味する。
【0018】
置換基として用いられるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0019】
置換基として用いられるアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。直鎖状のアルキル基の炭素原子数は、通常1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8である。分岐状及び環状のアルキル基の炭素原子数は、通常3〜20、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜8である。該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、及びドデシル基が挙げられる。
【0020】
置換基として用いられるアルコキシ基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよく、直鎖状のアルコキシ基の炭素原子数は、通常1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8である。分岐状及び環状のアルコキシ基の炭素原子数は、通常3〜20、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜8である。該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、及びドデシルオキシ基が挙げられる。
【0021】
置換基として用いられるアルキルチオ基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよく、直鎖状のアルキルチオ基の炭素原子数は、通常1〜20、好ましくは1〜10である。分岐状及び環状のアルキルチオ基の炭素原子数は、通常3〜20、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜8である。該アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、及びラウリルチオ基が挙げられる。
【0022】
置換基として用いられるアリール基は、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子を1個を除いた基である。置換基として用いられるアリール基の炭素原子数は、通常6〜60、好ましくは6〜48、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜14である。該アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナンスレニル基、ピレニル基、及びペリレニル基が挙げられる。
【0023】
置換基として用いられるアリールオキシ基の炭素原子数は、通常6〜60、好ましくは6〜20である。置換基として用いられるアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、及び2−ナフチルオキシ基が挙げられる。
【0024】
置換基として用いられるアリールチオ基の炭素原子数は、通常6〜60、好ましくは6〜30である。該アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、及び2−ナフチルチオ基が挙げられる。
【0025】
置換基として用いられるアリールアルキル基の炭素原子数は、通常7〜60、好ましくは7〜30である。該アリールアルキル基としては、例えば、フェニル−C〜C12アルキル基、ナフチル−C〜C12アルキル基、及びアントラセニル−C〜C12アルキル基が挙げられる。
【0026】
置換基として用いられるアリールアルコキシ基の炭素原子数は、通常7〜60、好ましくは7〜20である。該アリールアルコキシ基としては、例えば、フェニル−C〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C〜C12アルコキシ基、及び2−ナフチル−C〜C12アルコキシ基が挙げられる。
【0027】
置換基として用いられるアリールアルキルチオ基の炭素原子数は、通常7〜60、好ましくは7〜30である。該アリールアルキルチオ基としては、例えば、フェニル−C〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基、及び2−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基が挙げられる。
【0028】
置換基として用いられるアリールアルケニル基の炭素原子数は、通常8〜60、好ましくは8〜30である。該アリールアルケニル基としては、例えば、フェニル−C〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C〜C12アルケニル基、及び2−ナフチル−C〜C12アルケニル基が挙げられる。なお、C〜C12アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、及び1−オクテニル基が挙げられる。
【0029】
置換基として用いられるアリールアルキニル基の炭素原子数は、通常8〜60、好ましくは8〜30である。該アリールアルキニル基としては、例えば、フェニル−C〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C〜C12アルキニル基、及び2−ナフチル−C〜C12アルキニル基が挙げられる。なお、C〜C12アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、及び1−オクチニル基が挙げられる。
【0030】
置換基として用いられる1価の複素環基とは、複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基をいう。1価の複素環基の炭素原子数は、通常3〜60、好ましくは3〜20である。該1価の複素環基には、1価の芳香族複素環基も含まれる。該1価の複素環としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピロリジル基、ピペリジル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、モルフォリニル基、カルバゾリル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、キノリル基、及びイソキノリル基が挙げられる。
【0031】
置換基として用いられる複素環チオ基の炭素原子数は、通常3〜60、好ましくは3〜20である。該複素環チオ基としては、例えば、チエニルチオ基、ピロリルチオ基、フリルチオ基、ピリジルチオ基、ピリダジニルチオ基、ピリミジルチオ基、ピラジニルチオ基、トリアジニルチオ基、ピロリジルチオ基、ピペリジルチオ基、キノリルチオ基、及びイソキノリルチオ基が挙げられる。
【0032】
置換基として用いられるアシル基の炭素原子数は、通常2〜20、好ましくは2〜18である。該アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、及びベンゾイル基が挙げられる。
【0033】
置換基として用いられるアシルオキシ基の炭素原子数は、通常2〜20、好ましくは2〜18である。該アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0034】
置換基として用いられるイミン残基は、式:H−N=C<又は式:−N=CH−で表される構造を有するイミン化合物から、この構造中の水素原子を1個除いた基を意味する。
このようなイミン化合物としては、例えば、アルジミン、ケチミン及びアルジミン中の窒素原子に結合した水素原子がアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基等で置換された化合物が挙げられる。イミン残基の炭素原子数は、通常2〜20、好ましくは2〜18である。該イミン残基としては、例えば、一般式:−CRβ=N−Rγ又は一般式:−N=C(Rγ(式中、Rβは水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、又はアリールアルキニル基を表し、Rγはアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、又はアリールアルキニル基を表す。ただし、Rγが2個存在する場合、2個のRγは相互に結合して2価の基(例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素原子数2〜18のアルキレン基)として環を形成してもよい。)で表される基が挙げられる。イミン残基としては、例えば、以下の式で表される基が挙げられる。
【化8】
〔式中、Meはメチル基を表す。以下、同様である。〕
【0035】
置換基として用いられるアミド基の炭素原子数は、通常1〜20、好ましくは2〜18である。該アミド基としては、例えば、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、及びジベンズアミド基が挙げられる。
【0036】
置換基として用いられる酸イミド基は、酸イミドからその窒素原子に結合した水素原子1個を除いた基を意味する。該酸イミド基の炭素原子数は、通常4〜20、好ましくは4〜18である。酸イミド基としては、例えば、以下の式で表される基が挙げられる。
【化9】
【0037】
上述の置換基は、さらに置換基(以下、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。二次置換基としては、特に記載のない限り、上述の置換基と同じものを用いてよい。
【0038】
[アミン化合物の製造方法]
【0039】
<第1実施形態>
本発明のアミン化合物の製造方法の第1実施形態は、気圧5.5MPa以下の条件にて、遷移金属化合物及び有機溶媒の存在下、式(1)で表される化合物同士を反応させる、式(2)で表される構成単位を含む高分子化合物の製造方法である。
【化10】
〔式中、
Xは、脱離基を表す。
Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子2個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子2個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子2個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子2個を除いた基を表す。
は、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素から水素原子1個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基を表す。
ArとRは、直接結合して又は連結基を介して環を形成してもよい。
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。〕
【化11】
〔式中、ArとRは、前述と同じ意味を表す。〕
【0040】
式(1)中、Xは脱離基を表す。脱離基としては、例えば、ハロゲン原子、スルホン酸エステル構造を有する基が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。スルホン酸エステル構造を有する基としては、例えば、式:RSO−で表される基(式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)が挙げられ、式:R’SO−で表される基(式中、R’は、C〜C12アルキル基、ハロゲン原子で置換されたC〜C12アルキル基、C〜C12アリール基、又はハロゲン原子で置換されたC〜C12アリール基を表す。)が好ましく、トリフルオロメタンスルホネート基(CFSO−)、メタンスルホネート基(CHSO−)、エタンスルネート基(CSO−)、ベンゼンスルホネート基(CSO−)、p−トルエンスルホネート基(CHSO−)、ベンジルスルホネート基(CCHSO−)がより好ましい。中でも、脱離基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホネート基(CFSO−)、p−トルエンスルホネート基(CHSO−)が好ましい。
【0041】
式(1)中、Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子2個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子2個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子2個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子2個を除いた基を表す。Arとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子2個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子2個を除いた基が好ましい。
【0042】
Arにおいて、芳香族炭化水素の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60、好ましくは6〜48、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜14である。芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニル、インデン、フルオレン、フルオレノン、ピレン、ペリレン、フェナンスレンが挙げられ、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、フルオレンが好ましい。
【0043】
Arにおいて、複素環式化合物の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2〜60、好ましくは2〜48、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜14である。複素環式化合物としては、例えば、ピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、インドール、カルバゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、ホスホール、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、ジベンゾシロール、ジベンゾホスホール、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ベンゾピランが挙げられる。
【0044】
Arにおいて、芳香族アミン化合物の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常5〜100、好ましくは6〜80、より好ましくは10〜60、さらに好ましくは12〜40である。芳香族アミン化合物としては、1級アミン、2級アミン、3級アミンのいずれであってもよいが、2級アミン、3級アミンが好ましい。芳香族アミン化合物としては、例えば、N−アルキルアミノアリール化合物、N−アリールアミノアリール化合物、N,N−ジアルキルアミノアリール化合物、N−アルキル−N−アリールアミノアリール化合物、N,N−ジアリールアミノアリール化合物、N,N−ジアリールアミノアリール化合物、カルバゾール及びフェノキサジンに代表される渡環構造含有芳香族アミン化合物が挙げられる。
【0045】
Arにおいて、脂肪族不飽和炭化水素の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2〜60、好ましくは2〜30、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは2〜10である。脂肪族不飽和炭化水素としては、二重結合又は三重結合(好ましくは二重結合)を少なくとも1つ有する脂肪族炭化水素である限り特に限定されず、例えば、アルケン、アルキン、アルカジエン、アルカジイン、アルカトリエン、及びアルカトリインが挙げられ、アルケン、アルカジエン、及びアルカトリエンが好ましく、アルケンがより好ましい。アルケンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、及びヘキセンが挙げられ、好ましくはエチレン、プロピレン、ブテンである。
【0046】
式(1)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素から水素原子1個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基を表す。Rとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基、又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基が好ましい。
【0047】
において、脂肪族炭化水素の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜60、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10である。脂肪族炭化水素としては、脂肪族飽和炭化水素であっても脂肪族不飽和炭化水素であってもよい。脂肪族炭化水素としては、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、アルカジエン、アルカジイン、アルカトリエン、及びアルカトリインが挙げられ、アルカン、アルケン、アルカジエン、及びアルカトリエンが好ましく、アルカン、及びアルケンがより好ましい。アルカンとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、及びヘキサンが挙げられ、好ましくは、メタン、エタン、プロパン、ブタンである。
アルケンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、及びヘキセンが挙げられ、好ましくはエチレン、プロピレン、ブテンである。
【0048】
において、芳香族炭化水素及び複素環式化合物の例としては、Arについて例示した芳香族炭化水素及び複素環式化合物が挙げられる。
【0049】
ArとRは、直接結合して又は連結基を介して環を形成してもよい。
【0050】
ArとRとを連結する連結基としては、例えば、下記式で表される2価の基が挙げられる。該連結基としてはまた、下記式で表される2価の基が2つ以上結合した2価の基も挙げられる。
【0051】
【化12】
〔式中、Rは置換基を表し、Arは炭素原子数が6〜60の炭化水素基を表す。〕
【0052】
上記式中、Rとしては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、1価の複素環基が好ましい。Arとしては、芳香族炭化水素、複素環式化合物が好ましい。Rにおいて、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、1価の複素環基の例としては、<用語の説明>で置換基として例示したハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、1価の複素環基が挙げられる。また、Arにおいて、芳香族炭化水素、複素環式化合物の例としては、Arについて例示した芳香族炭化水素及び複素環式化合物が挙げられる。
【0053】
式(1)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。Rとしては、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基が好ましく、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1〜60、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜12である。アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6〜60、好ましくは6〜49、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜14である。Rにおいて、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基の例としては、<用語の説明>で置換基として例示したハロゲン原子、アルキル基、アリール基が挙げられる。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。
【0054】
式(1)において、以下の式(31):
【化13】
で表される、Rと結合して形成されるシリル基(以下、単に「式(31)で表される基」ともいう。)としては、例えば、トリメチルシリル基(TMS)、トリエチルシリル基(TES)、トリn−プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基(TIPS)、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基(TBDMS)、n−ペンチルジメチルシリル基、n−ヘキシルジメチルシリル基、n−ヘプチルジメチルシリル基、n−オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシルジメチルシリル基、n−ノニルジメチルシリル基、n−デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチルジメチルシリル基、n−ラウリルジメチルシリル基、フェニル−C〜C12アルキルシリル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルシリル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルシリル基、1−ナフチル−C〜C12アルキルシリル基、2−ナフチル−C〜C12アルキルシリル基、フェニル−C〜C12アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が挙げられる。式(31)で表される基としては、トリメチルシリル基(TMS)、トリエチルシリル基(TES)、トリイソプロピルシリル基(TIPS)、tert−ブチルジメチルシリル基(TBDMS)が好ましく、トリメチルシリル基(TMS)、トリエチルシリル基(TES)がより好ましい。
【0055】
式(1)で表される化合物としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
〔式中、X、R及びRは、前述と同じ意味を表す。YはC−Rまたは窒素原子を表す。
【0056】
上記式中、「(R)」は、芳香環上の5個の水素原子がそれぞれRで置換されていることを表す。同様に、「(R)」は、芳香環上の4個の水素原子がそれぞれRで置換されていることを表し、「(R)」は、芳香環上の3個の水素原子がそれぞれRで置換されていることを表す。
【0057】
第1実施形態の製造方法においては、気圧5.5MPa以下の条件にて、遷移金属化合物及び有機溶媒の存在下、式(1)で表される化合物同士を反応させる。
【0058】
反応時の気圧は、5.5MPa以下であれば特に限定されないが、好ましくは3.0MPa以下、より好ましくは1.0MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下、さらにより好ましくは0.3MPa以下、特に好ましくは0.2MPa以下である。反応時の気圧の下限は特に限定されないが、通常、0.1MPaである。好適な一実施形態において、反応時の気圧は、常圧(大気圧)である。斯かる温和な気圧条件にて反応を行う場合にも、本発明の製造方法によれば、目的とするアミン化合物を収率よく製造することができる。
【0059】
遷移金属化合物としては、例えば、パラジウム化合物、ルテニウム化合物、ロジウム化合物、ニッケル化合物、鉄化合物、及び銅化合物が挙げられ、パラジウム化合物、ロジウム化合物、又はニッケル化合物が好ましく、パラジウム化合物又はニッケル化合物がより好ましい。遷移金属化合物は、一般に触媒として使用される。
【0060】
遷移金属化合物の使用量は、式(1)で表される化合物のモル数に対して、好ましくは0.00001〜0.1モル当量、より好ましくは0.0001〜0.1モルモル当量、さらに好ましくは0.0005〜0.07モルモル当量、さらにより好ましくは0.001〜0.05モルモル当量、特に好ましくは0.005〜0.01モルモル当量である。
【0061】
パラジウム化合物としては、例えば、4価、2価又は0価のパラジウムを含む化合物(錯体化合物)が挙げられる。パラジウム化合物の具体例としては、特に限定されないが、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム四水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナート、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(II)、パラジウム(II)トリフルオロアセテート、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、ビス(アセテート)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロパラジウム(II)、トランス−ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、シス−ジクロロビス(ジメチルフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(II)、及びジクロロビス(トリ−o−メトキシホスフィン)パラジウム(II)が挙げられる。中でも、テトラキス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリ−o−トリルホスフィン)パラジウム(II)、又はジクロロビス(トリ−o−メトキシホスフィン)パラジウム(II)が好ましい。
【0062】
ニッケル化合物としては、例えば、2価、1価又は0価のニッケルを含む化合物(錯体化合物)が挙げられる。ニッケル化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロニッケル(II)、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)、ジクロロビス(トリメチルホスフィン)ニッケル(II)、ジクロロビス(トリブチルホスフィン)ニッケル(II)、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル(II)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロニッケル(II)、クロロ(シクロペンタジエニル)(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ジクロロニッケル(II)エチレングリコールジメチルエーテル錯体、ジクロロニッケル(II)ヘキサアンモニエート、ニッケル(II)クロリド、ニッケル(II)クロリドハイドレート、ニッケル(II)クロリドヘキサハイドレート、ビス(エチレンジアミン)ニッケル(II)クロリドハイドレート、トリス(エチレンジアミン)ニッケル(II)クロリドハイドレート、ニッケル(II)ブロミド、ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ジブロモビス(トリブチルホスフィン)ニッケル(II)、ジブロモニッケル(II)エチレングリコールジメチルエーテル錯体、ジブロモニッケル(II)ヘキサアンモニエート、ニッケル(II)ブロミドハイドレート、ニッケル(II)ブロミドトリハイドレート、[2,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニルホスフィノ)ブタン]ジブロモニッケル(II)、及びジヨードニッケル(II)が挙げられる。中でも、汎用性、価格の観点から、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロニッケル(II)、ビス[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル(II)、ニッケル(II)クロリド、又はニッケル(II)ブロミドが好ましい。
【0063】
遷移金属化合物がホスフィン等の配位子を含まない場合、配位子として作用する化合物を添加することが好ましい。
【0064】
配位子として作用する化合物としては、例えば、アルキル基を有するホスフィン化合物、アリール基を有するホスフィン化合物、又はアルキル基及びアリール基の両方を有するホスフィン化合物が挙げられる。配位子として作用する化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス(p−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(o−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(m−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリ(m−クロロフェニル)ホスフィン、トリ(p−クロロフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−2−フリルホスフィン、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル(Cy-Johnphos)、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル(Johnphos)、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2’−メチルビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル(Sphos)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,6’−ジイソプロポキシ−1,1’−ビフェニル(Ruphos)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−3,6−ジメトキシ−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル(Brettphos)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル(Davephos)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−メチル−ビフェニル(Mephos)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,4’,6’−トリ−イソプロピル−1,1’−ビフェニル(Xphos)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1−ジフェニル−1−プロペン(Cy-vBRIDP)、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1,1−ジフェニル−1−プロペン(vBRIDP)、1−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2,2−ジフェニル−1−シクロプロパン(Cy-cBRIDP)、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1’−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン(Qphos)、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウムクロリド(SIPr・HCl)が好ましく、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル(Cy-Johnphos)、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル(Johnphos)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル(Sphos)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,6’−ジイソプロポキシ−1,1’−ビフェニル(Ruphos)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−3,6−ジメトキシ−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル(Brettphos)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル(Davephos)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−メチル−ビフェニル(Mephos)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,4’,6’−トリ−イソプロピル−1,1’−ビフェニル(Xphos)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1−ジフェニル−1−プロペン(Cy-vBRIDP)、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1,1−ジフェニル−1−プロペン(vBRIDP)、1−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2,2−ジフェニル−1−シクロプロパン(Cy-cBRIDP)、1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1’−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン(Qphos)、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウムクロリド(SIPr・HCl)がより好ましい。
【0065】
配位子として作用する化合物を添加する場合、その添加量は、特に限定されないが、式(1)で表される化合物のモル数に対して、0.001〜0.5モル当量であることが好ましい。
【0066】
遷移金属化合物がホスフィン等の配位子を含む場合にも、上記の配位子として作用する化合物を添加してもよい。
【0067】
第1実施形態の製造方法において、塩基の存在下で反応を行ってもよい。塩基としては、例えば、無機塩基、有機塩基、及び無機塩が挙げられる。塩基の具体例としては、特に限定されないが、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、リン酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム、tert−ブトキシリチウム(LiOBu)、tert−ブトキシナトリウム(NaOBu)、tert−ブトキシカリウム(KOBu)、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、酢酸ナトリウム、及び酢酸カリウムが挙げられる。これらのうち、反応性及び経済性の観点から、NaOBu、KOBu、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムが好ましく、KOBu、フッ化カリウム及び酢酸ナトリウムがより好ましい。
【0068】
塩基は、必要に応じて有機溶媒に溶解、または分散して使用する。塩基を使用する場合、その使用量は、式(1)で表される化合物のモル数に対して、好ましくは0.1〜50モル当量、より好ましくは1〜20モル当量である。
【0069】
第1実施形態の製造方法において、相間移動触媒の存在下で反応を行ってもよい。中でも、反応に使用する塩基の有機溶媒への溶解度が低い場合、相間移動触媒を用いることが好ましい。
【0070】
相間移動触媒としては、例えば、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、テトラアルキルアンモニウムヘキサハロホスフェート、及びテトラアルキルアンモニウムテトラハロボレートが挙げられる。相間移動触媒の種類や量は、式(1)で表される化合物の種類、有機溶媒の種類、有機溶媒の量に応じて適宜選定してよい。相間移動触媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、テトラアルキルアンモニウムヘキサハロホスフェート及びテトラアルキルアンモニウムテトラハロボレートにおいて、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基及びn−オクチル基が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0072】
テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物の具体例としては、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム、フッ化テトラ−tert−ブチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化テトラ−tert−ブチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、臭化テトラ−tert−ブチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウム、ヨウ化テトラ−tert−ブチルアンモニウム、フッ化テトラ−n−ペンチルアンモニウム、塩化テトラ−n−ペンチルアンモニウム、臭化テトラ−n−ペンチルアンモニウム、ヨウ化テトラ−n−ペンチルアンモニウム、フッ化テトラ−n−ヘキシルアンモニウム、塩化テトラ−n−ヘキシルアンモニウム、臭化テトラ−n−ヘキシルアンモニウム、ヨウ化テトラ−n−ヘキシルアンモニウム、フッ化テトラ−n−ヘプチルアンモニウム、塩化テトラ−n−ヘプチルアンモニウム、臭化テトラ−n−ヘプチルアンモニウム、ヨウ化テトラ−n−ヘプチルアンモニウム、フッ化テトラ−n−オクチルアンモニウムフルオライド、塩化テトラ−n−オクチルアンモニウム、臭化テトラ−n−オクチルアンモニウム、ヨウ化テトラ−n−オクチルアンモニウム、及び塩化トリ−n−オクチルメチルアンモニウムが挙げられる。
【0073】
テトラアルキルアンモニウムヘキサハロホスフェートの具体例としては、テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラメチルアンモニウムヘキサクロロホスフェート、テトラメチルアンモニウムヘキサブロモホスフェート、及びテトラメチルアンモニウムヘキサヨードホスフェートが挙げられる。テトラアルキルアンモニウムテトラハロボレートの具体例としては、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラメチルアンモニウムテトラクロロボレート、テトラメチルアンモニウムテトラブロモボレート、及びテトラメチルアンモニウムテトラヨードボレートが挙げられる。
【0074】
相間移動触媒を使用する場合、その使用量は、式(1)で表される化合物のモル数に対して、好ましくは0.01〜20モル当量である。
【0075】
反応に使用する有機溶媒としては、例えば、非極性芳香族溶媒、極性含酸素溶媒、極性含窒素溶媒、及び極性含硫黄溶媒等が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジオン(DMI)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)、N,N’−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、及びテトラメチルウレア(TMU)が挙げられる。好ましくは、トルエン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジオン(DMI)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)、N,N’−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、テトラメチルウレア(TMU)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)である。有機溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
有機溶媒の使用量は、式(1)で表される化合物の重量に対して、好ましくは1〜1000重量倍である。
【0077】
有機溶媒は、使用する有機溶媒の種類によっても異なるが、一般的に、副反応を抑制するために、反応に使用する前に十分に脱酸素処理を施すことが好ましい。
【0078】
式(1)で表される化合物の反応は、アルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0079】
遷移金属化合物(及び必要に応じて使用される配位子、塩基及び相間移動触媒)を反応系中に添加する方法としては、式(1)で表される化合物を有機溶媒に溶解した溶液を不活性ガス雰囲気下で攪拌しながら、遷移金属化合物(及び必要に応じて使用される配位子、塩基及び相間移動触媒)を有機溶媒に溶解した溶液を添加する方法が例示される。
別の方法として、遷移金属化合物(及び必要に応じて使用される配位子、塩基及び相間移動触媒)を有機溶媒に溶解した溶液を不活性ガス雰囲気下で攪拌しながら、式(1)で表される化合物を有機溶媒に溶解した溶液を添加する方法が例示される。
【0080】
反応は、使用する有機溶媒の融点以上沸点以下の温度で行うことができる。反応温度は、通常、室温(25℃)〜250℃、好ましくは30〜200℃、より好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは40〜130℃、さらにより好ましくは40〜120℃である。斯かる温和な温度条件にて反応を行う場合にも、本発明の製造方法によれば、目的とするアミン化合物を収率よく製造することができる。
【0081】
反応時間は、好ましくは0.5〜100時間、より好ましくは1〜50時間、更に好ましくは2〜25時間である。
【0082】
第1実施形態の製造方法において製造される、式(2)で表される構成単位を含む高分子化合物は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、さらに好ましくは3,000以上である。ポリスチレン換算のMnの上限は特に制限されないが、1,000,000以下が好ましい。また、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、さらに好ましくは3,000以上である。ポリスチレン換算のMwの上限は特に制限されないが、1,000,000以下が好ましい。ポリスチレン換算のMn及びMwは、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
【0083】
第1実施形態の製造方法において製造される、式(2)で表される構成単位を含む高分子化合物は、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。高分子化合物が共重合体である場合には、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。第1実施形態の製造方法で製造される高分子化合物には、主鎖に枝分かれがあり、末端部が3つ以上あるブランチポリマー(デンドリマー含む)も含まれる。
【0084】
<第2実施形態>
本発明のアミン化合物の製造方法の第2実施形態は、気圧5.5MPa以下の条件にて、遷移金属化合物及び有機溶媒の存在下、式(11)で表される化合物と、式(12)で表される化合物とを反応させて、式(13)で表される化合物を製造することを含む、アミン化合物の製造方法である。
【化20】
〔式中、
mは、1〜4の整数を表す。
Ar11は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子m個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子m個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子m個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子m個を除いた基を表す。
は、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素から水素原子1個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基を表す。
Ar11とRは、直接結合して又は連結基を介して環を形成してもよい。
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。〕
【化21】
〔式中、
nは、1〜4の整数を表す。
Ar12は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子n個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子n個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子n個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子n個を除いた基を表す。
Xは、脱離基を表す。Xが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。〕
【化22】
〔式中、Ar11、Ar12、R、R、X、m及びnは、前述と同じ意味を表す。〕
【0085】
式(11)中、Ar11は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子m個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子m個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子m個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子m個を除いた基を表す。Ar11としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子m個を除いた基、又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子m個を除いた基が好ましい。
Ar11において、芳香族炭化水素、複素環式化合物、芳香族アミン化合物及び脂肪族不飽和炭化水素は、Arについて説明したものと同様である。
【0086】
式(11)中、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素から水素原子1個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基を表す。Rとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基、又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基が好ましい。
脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素及び複素環式化合物は、式(1)中のRについて説明したものと同様である。
【0087】
式(11)中、Ar11とRは、直接結合して又は連結基を介して環を形成してもよい。Ar11とRとを連結する連結基は、式(1)中のArとRとを連結する連結基と同様である。
【0088】
式(11)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基は、式(1)中のRについて説明したものと同様である。
【0089】
式(11)において、Rと結合して形成されるシリル基の例は、式(1)中の式(31)で表される基について説明したものと同様である。
【0090】
式(11)で表される化合物としては、例えば、下記構造を有する化合物が挙げられる。
【化23】
【化24】
【化25】
〔式中、R及びRは、前述と同じ意味を表す。YはC−Rまたは窒素原子を表す。〕
【0091】
式(12)中、Ar12は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子n個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子n個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子n個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子n個を除いた基を表す。Ar12としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子m個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子n個を除いた基が好ましい。
Ar12において、芳香族炭化水素、複素環式化合物、芳香族アミン化合物及び脂肪族不飽和炭化水素は、Arについて説明したものと同様である。
【0092】
式(12)中、Xは脱離基を表す。脱離基は、式(1)中のXについて説明したものと同様である。Xが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。
【0093】
式(12)で表される化合物としては、例えば、下記構造を有する化合物が挙げられる。
【化26】
【化27】
【化28】
〔式中、R及びXは、前述と同じ意味を表す。〕
【0094】
上記式中、「(R)」は、芳香環上の5個の水素原子がそれぞれRで置換されていることを表し、「(X)」は、芳香環上の4個の水素原子がそれぞれXで置換されていることを表す。「(R)」、「(R)」、「(R)」、「(X)」及び「(X)」についても同様である。
【0095】
第2実施形態の製造方法においては、気圧5.5MPa以下の条件にて、遷移金属化合物及び有機溶媒の存在下、式(11)で表される化合物と、式(12)で表される化合物とを反応させる。
【0096】
第2実施形態の製造方法において、反応時の気圧、反応温度、反応時間、遷移金属化合物及び有機溶媒は、第1実施形態の製造方法について説明したものと同様である。第2実施形態の製造方法においても、必要に応じて、配位子、塩基及び相間移動触媒からなる群から選択される1種以上を使用してもよい。配位子、塩基及び相間移動触媒は、第1実施形態の製造方法について説明したものと同様である。第2実施形態の製造方法によれば、温和な条件にて、目的とするアミン化合物を収率よく製造することができる。
【0097】
遷移金属化合物の使用量は、式(11)で表される化合物と式(12)で表される化合物のモル数の合計に対して、好ましくは0.00001〜0.1モル当量、より好ましくは0.0001〜0.1モル当量、さらに好ましくは0.001〜0.05モル当量、さらにより好ましくは0.005〜0.01モル当量である。
【0098】
式(11)で表される化合物と式(12)で表される化合物の使用量は、特に限定されないが、式(11)で表される化合物中の式(31)で表される基のモル数に対して、式(12)で表される化合物中の脱離基が0.5〜8モル当量の範囲内であることが好ましい。経済性および反応後の精製の簡便さの観点から、式(11)で表される化合物中の式(31)で表される基のモル数に対して、式(12)で表される化合物中の脱離基は、より好ましくは0.6〜4モル当量の範囲内、さらに好ましくは0.8〜2モル当量の範囲内である。
【0099】
第2実施形態の製造方法において、式(11)中のmは1〜4の整数を表し、式(12)中のnは1〜4の整数を表す。
【0100】
m=1である場合、式(11)で表される化合物と式(12)で表される化合物から、式(13−1)で表される化合物を製造することができる。なお、n≧2である場合、式(13−1)で表される化合物は、最終的に得られる化合物である。
【化29】
〔式中、Ar11、Ar12、R、nは、前述と同じ意味を表す。〕
【0101】
n=1である場合、式(11)で表される化合物と式(12)で表される化合物から、式(13−2)で表される化合物を製造することができる。なお、m≧2である場合、式(13−2)で表される化合物は、最終的に得られる化合物である。
【化30】
〔式中、Ar11、Ar12、R、mは、前述と同じ意味を表す。〕
【0102】
m≧2及びn≧2である場合、式(11)で表される化合物と式(12)で表される化合物から、式(13)で表される化合物を製造することができ、更に式(13)で表される化合物に対して、式(11)で表される化合物及び/又は式(12)で表される化合物がさらに反応した化合物(高分子化合物であってもよい)を製造することができる。
【0103】
ここで、m=2及びn=2のとき、式(11)で表される化合物と式(12)で表される化合物から、高分子化合物又は環状化合物を製造することができる。
【0104】
好適な一実施形態において、式(11)で表される化合物(式中、m=2)と、式(12)で表される化合物(式中、n=2)とを反応させて、式(14)で表される構成単位を含む高分子化合物を製造することができる。
【化31】
〔式中、Ar11、Ar12及びRは、前述と同じ意味を表す。〕
【0105】
他の好適な一実施形態において、式(11)で表される化合物(式中、m=2)と、式(12)で表される化合物(式中、n=2)とを反応させて、式(15)で表される環状化合物を製造することができる。
【化32】
〔式中、Ar11、Ar12及びRは、前述と同じ意味を表す。fは、1〜30の整数を表す。〕
【0106】
式(13)で表される化合物が、更に式(11)で表される化合物及び/又は式(12)で表される化合物と反応して高分子化合物となる場合、該高分子化合物のポリスチレン換算のMnは、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは3,000以上である。ポリスチレン換算のMnの上限は特に制限されないが、1,000,000以下が好ましい。また、ポリスチレン換算のMwは、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは3,000以上である。ポリスチレン換算のMwの上限は特に制限されないが、1,000,000以下が好ましい。
該高分子化合物は、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。高分子化合物が共重合体である場合には、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。第2実施形態の製造方法で製造される高分子化合物には、主鎖に枝分かれがあり、末端部が3つ以上あるブランチポリマー(デンドリマー含む)も含まれる。
【0107】
<第3実施形態>
本発明のアミン化合物の製造方法の第3実施形態は、気圧5.5MPa以下の条件にて、遷移金属化合物及び有機溶媒の存在下、上記式(1)で表される化合物を反応させる、環状化合物の製造方法である。
【0108】
式(1)で表される化合物において、同一分子内の脱離基と式(31)で表される基との間で反応して分子内環化、または複数個の分子が連結して分子間環化することにより式(41)で表される環状化合物を製造することができる。
【0109】
【化33】
〔式中、ArとRは、前述と同じ意味を表す。gは、1〜30の整数を表す。〕
【0110】
第3の実施形態の製造方法において、反応時の気圧、反応温度、反応時間、遷移金属化合物及び有機溶媒は、第1実施形態の製造方法について説明したものと同様である。第3実施形態の製造方法においても、必要に応じて、配位子、塩基及び相間移動触媒からなる群から選択される1種以上を使用してもよい。配位子、塩基及び相間移動触媒は、第1実施形態の製造方法について説明したものと同様である。
【0111】
<第4実施形態>
本発明のアミン化合物の製造方法の第4実施形態は、気圧5.5MPa以下の条件にて、遷移金属化合物及び有機溶媒の存在下、式(51)で表される化合物と、式(12)で表される化合物とを反応させて、式(52)で表される化合物を製造することを含む、アミン化合物の製造方法である。
【化34】
〔式中、
pは、1〜4の整数を表す。
Ar51は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子p個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子p個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子p個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子p個を除いた基を表す。
は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。〕
【化35】
〔式中、Ar12、Ar51、R、X、p及びnは、前述と同じ意味を表す。〕
【0112】
式(51)中、Ar51は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子p個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子p個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子p個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子p個を除いた基を表す。Ar51としては、式(51)で表される化合物の反応性の観点から、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子p個を除いた基であることが好ましい。
Ar51において、芳香族炭化水素、複素環式化合物、芳香族アミン化合物及び脂肪族不飽和炭化水素は、Arについて説明したものと同様である。
【0113】
式(51)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数個あるRは、同一でも相異なってもよい。ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基は、式(1)中のRについて説明したものと同様である。
【0114】
式(51)において、Rと結合して形成されるシリル基の例は、式(1)中の式(31)で表される基について説明したものと同様である。
【0115】
式(51)で表される化合物としては、例えば、下記構造を有する化合物が挙げられる。
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
〔式中、R及びRは、前述と同じ意味を表す。〕
【0116】
第4実施形態の製造方法において、反応時の気圧、反応温度、反応時間、遷移金属化合物及び有機溶媒は、第1実施形態の製造方法について説明したものと同様である。第4実施形態の製造方法においても、必要に応じて、配位子、塩基及び相間移動触媒からなる群から選択される1種以上を使用してもよい。配位子、塩基及び相間移動触媒は、第1実施形態の製造方法について説明したものと同様である。第4実施形態の製造方法によれば、温和な条件にて、目的とするアミン化合物を収率よく製造することができる。
【0117】
遷移金属化合物の使用量は、式(51)で表される化合物と式(12)で表される化合物のモル数の合計に対して、好ましくは0.00001〜0.1モル当量、より好ましくは0.0001〜0.1モル当量、さらに好ましくは0.001〜0.05モル当量、さらにより好ましくは0.005〜0.01モル当量である。
【0118】
式(51)で表される化合物と式(12)で表される化合物の使用量は、特に限定されないが、式(51)で表される化合物中の式(31)で表される基のモル数に対して、式(12)で表される化合物中の脱離基が0.5〜8モル当量の範囲内であることが好ましい。経済性および反応後の精製の簡便さの観点から、式(51)で表される化合物中の式(31)で表される基のモル数に対して、式(12)で表される化合物中の脱離基は、より好ましくは0.6〜4モル当量の範囲内、さらに好ましくは0.8〜2モル当量の範囲内である。
【0119】
第4実施形態の製造方法において、式(51)中のpは1〜4の整数を表し、式(12)中のnは1〜4の整数を表す。
【0120】
第4実施形態の製造方法において、式(51)で表される化合物と式(12)で表される化合物から、式(52)で表される化合物を製造することができる。式(52)で表される化合物と、式(12)で表される化合物とを反応させることで、式(54)で表される化合物を製造することができる。
【化40】
〔式中、Ar12、Ar51、R、X、p及びnは、前述と同じ意味を表す。〕
【0121】
また、p≧2である場合、式(52)で表される化合物と、式(12)で表される化合物とを反応させることで、式(55)で表される化合物を製造することができる。
【化41】
〔式中、Ar12、Ar51、R、X、p及びnは、前述と同じ意味を表す。〕
【0122】
また、n≧2である場合、式(52)で表される化合物と、式(51)で表される化合物及び/又は式(12)で表される化合物とを反応させることで、高分子化合物又は環状化合物を製造することができる。
【0123】
ここで、p=1及びn=2のとき、式(51)で表される化合物と式(12)で表される化合物とを反応させることで、高分子化合物又は環状化合物を製造することができる。
【0124】
好適な一実施形態において、式(51)で表される化合物(式中、p=1)と、式(12)で表される化合物(式中、n=2)とを反応させて、式(53)で表される構成単位を含む高分子化合物を製造することができる。
【化42】
〔式中、Ar51及びAr12は、前述と同じ意味を表す。〕
【0125】
他の好適な一実施形態において、式(51)で表される化合物(式中、p=1)と、式(12)で表される化合物(式中、n=2)とを反応させて、式(56)で表される環状化合物を製造することができる。
【化43】
〔式中、Ar51及びAr12は、前述と同じ意味を表す。hは、1〜30の整数を表す。〕
【0126】
式(52)で表される化合物と、式(51)で表される化合物及び/又は式(12)で表される化合物とを反応させることで高分子化合物を製造する場合、該高分子化合物のポリスチレン換算のMnは、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは3,000以上である。ポリスチレン換算のMnの上限は特に制限されないが、1,000,000以下が好ましい。また、ポリスチレン換算のMwは、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは3,000以上である。ポリスチレン換算のMwの上限は特に制限されないが、1,000,000以下が好ましい。
該高分子化合物は、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。高分子化合物が共重合体である場合には、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。第2実施形態の製造方法で製造される高分子化合物には、主鎖に枝分かれがあり、末端部が3つ以上あるブランチポリマー(デンドリマー含む)も含まれる。
【0127】
[化合物]
好適な一実施形態において、式(1)で表される化合物は、以下の式(21−1)又は式(21−2)で表される化合物である。
【0128】
【化44】
〔式中、
kは、0又は1を表す。
21は、脱離基を表す。
Ar21は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子3個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子3個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子3個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子3個を除いた基を表す。
Yは、連結基を表す。
Ar22は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素から水素原子2個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子2個を除いた基又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子2個を除いた基を表す。
a21は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。複数個あるRa21は、同一でも相異なってもよい。〕
【0129】
【化45】
〔式中、
21とRa21は、前述と同じ意味を表す。
Ar23は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子2個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子2個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子2個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子2個を除いた基を表す。
Ar24は、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素から水素原子1個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基を表す。〕
【0130】
式(21−1)及び(21−2)中、X21は脱離基を表す。脱離基は、式(1)中のXについて説明したものと同様である。
【0131】
式(21−1)及び(21−2)中、Ra21は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。Ra21は、式(1)中のRについて説明したものと同様である。複数個あるRa21は、同一でも相異なってもよい。
【0132】
式(21−1)及び(21−2)中、Ra21と結合して形成されるシリル基の例は、式(1)中の式(31)で表される基について説明したものと同様である。
【0133】
Ar21及びAr23において、芳香族炭化水素、複素環式化合物、芳香族アミン化合物及び脂肪族不飽和炭化水素は、式(1)中のArについて説明したものと同様である。
【0134】
Ar22及びAr24において、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素及び複素環式化合物は、式(1)中のRについて説明したものと同様である。
【0135】
式(21−1)中、kは、0又は1を表す。k=0である場合、Ar21とAr22とは直接結合して環を形成する。k=1である場合、Ar21とAr22とは、Yを介して環を形成する。Yは連結基を表す。連結基は、式(1)中のArとRとを連結する連結基と同様である。
【0136】
式(21−1)で表される化合物としては、例えば、式(1)で表される化合物として例示した、式Carb−1〜Carb−4、式POZ−1〜POZ−4、式PTZ−1〜PTZ−4、式Phena−1〜Phena−4、式DBAZE−1〜DBAZE−4、式DHDBAZE−1〜DHDBAZE−4、式BCarb−1〜BCarb−6、式DBCarb−1〜DBCarb−2、式HeCarb−1〜HeCarb−4、式Am−5〜Am−6で表される化合物が挙げられる。
【0137】
式(21−2)で表される化合物としては、例えば、式(1)で表される化合物として例示した、式Am−1〜Am−4、式Am−7〜Am-12で表される化合物が挙げられる。
【0138】
好適な一実施形態において、式(11)で表される化合物は、以下の式(21−3)で表される化合物である。
【化46】
〔式中、
jは、2〜4の整数を表す。
a21は、前述と同じ意味を表す。
Ar25は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子j個を除いた基、置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子j個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物から芳香環上の水素原子j個を除いた基又は置換基を有していてもよい脂肪族不飽和炭化水素から水素原子j個を除いた基を表す。
Ar26は、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素から水素原子1個を除いた基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基又は置換基を有していてもよい複素環式化合物から複素環上の水素原子1個を除いた基を表す。〕
【0139】
式(21−3)中、jは、2〜4の整数を表す。式(21−3)で表される化合物を用いて高分子化合物を製造する場合、jは2であることが好ましい。
【0140】
Ar25において、芳香族炭化水素、複素環式化合物、芳香族アミン化合物及び脂肪族不飽和炭化水素は、式(1)中のArについて説明したものと同様である。
【0141】
Ar26において、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素及び複素環式化合物は、式(1)中のRについて説明したものと同様である。
【0142】
式(21−3)で表される化合物としては、式(11)で表される化合物として例示した、式Am11−16〜Am11-20で表される化合物が挙げられる。
【実施例】
【0143】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例及び比較例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0144】
下記の実施例及び比較例で製造したアミン化合物のNMR分析は、アジレント・テクノロジー(株)製「varian Mercury400」を用いて行った。
【0145】
下記の実施例及び比較例で製造したアミン化合物のIR分析は、日本分光(株)製「FT/IR−4200」を用いて行った。
【0146】
下記の実施例及び比較例で製造した高分子化合物のMALDI−TOF−MASSによる分子量分析は、(株)島津製作所製「AXIMA−CFR」を用いて行った。
【0147】
下記の実施例及び比較例で製造した高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及びポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、下記のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置を用いて行った。
カラム:ポリマーラボラトリーズ製「PLgel MIXED−B」
検出器:(株)島津製作所製UV−VIS検出器「SPD−10Avp」
移動相:THF
【0148】
化合物CM1は、下記2通りの製造方法により合成した。
[合成例1](化合物CM1の合成)
−方法1−
下記スキームに従って、化合物CM1を合成した。
【化47】
反応容器内の気体をアルゴンガスで置換し、加熱乾燥した反応容器に、化合物S1(9H−カルバゾール、5.01g、30.0mmol)及びTHF(35mL)を加え、−78℃に冷却した。その後、そこにn−ブチルリチウム(n−BuLi、2.65M、13.6mL、36mmol)を滴下し、2時間攪拌した。得られた反応溶液にクロロトリメチルシラン(TMSCl、5.20mL、60.0mmol)を滴下した後、徐々に昇温し、室温で18時間攪拌した。得られた反応溶液を減圧留去し、熱ヘキサンで溶解させた後、濾過により沈殿物を取り除いた。得られた濾液を減圧留去し、化合物CM1(7.04g、29.4mmol、収率98%)を得た。
−方法2−
下記スキームに従って、化合物CM1を合成した。
【化48】
反応容器内の気体をアルゴンガスで置換し、加熱乾燥した反応容器に、水素化ナトリウム(NaH、480mg、12.0mmol)及びヘキサン(25mL)を加えて攪拌した後、デカンテーションでヘキサンを取り除いた。その後、同様のデカンテーション操作を3回繰り返した。その後、NaHを真空乾燥させ、次いで、THF(10mL)を加え、0℃に冷却した。その後、そこにTHF(15mL)に溶解させた化合物S1(9H−カルバゾール、1.67g、10.0mmol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。得られた反応溶液にTMSCl(1.73mL、20.0mmol)を滴下し、さらに室温で18時間攪拌した。得られた反応溶液を減圧留去し、熱ヘキサンで溶解させた後、濾過により沈殿物を取り除いた。得られた濾液を減圧留去し、化合物CM1(2.04g、8.52mmol、収率98%)を得た。
【0149】
[実施例1](化合物CM2の合成)
下記スキームに従って、化合物CM2を合成した。
【化49】
化合物S1に代えて化合物S2(3.58mg、10.0mmol)を使用した以外は、上記方法2と同様にして反応を行った。TMSClとの反応終了後、得られた反応溶液を減圧留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)で精製し、化合物CM2(2.80g、6.51mmol、収率65%)を得た。
【0150】
H NMR(400 MHz、CDCl) δ 8.15 (s、1H)、7.80 (s、1H)、 7.50 (d、J = 8.4 Hz、1H)、7.38−7.45 (m、2H)、7.22 (d、J = 8.4 Hz、1H)、2.75 (t、J = 7.6 Hz、2H)、1.65−1.72 (m、2H)、1.20−1.42 (m、10H)、 0.88 (t、J = 7.0 Hz、3H)、 0.67 (s、9H);
13C NMR (100 MHz、CDCl) δ 143.2、143.0、134.7、128.2、127.9、127.1、125.3、122.8、119.6、114.5、113.0、112.4、35.9、32.3、32.1、29.7、29.52、29.45、22.85、14.3、1.7;
IR (neat) 2954、2925、2853、1482、1467、1467、1440、1274、1257、1218、1138、1063、1024、971、843、802、763、699、634 cm−1
【0151】
[実施例2](化合物CM3の合成)
下記スキームに従って、化合物CM3を合成した。
【化50】
反応容器内の気体をアルゴンガスで置換し、加熱乾燥した反応容器に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(Ni(cod)、6.9mg、25μmol、5mol%)、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウムクロリド(SIPr・HCl、10.7mg、25μmol、5mol%)、tert−ブトキシカリウム(KOBu、2.8mg、25μmol、5mol%)及びシクロペンチルメチルエーテル(CPME、0.30mL)を加え、100℃で1時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却した後、上記方法2で合成した化合物CM1(150.7mg、0.63mmol)、化合物S3(61.5μL、0.50mmol)、酢酸ナトリウム(NaOAc、69.7mg、0.85mmol)およびCPME(0.2mL)を加え、100℃で24時間攪拌した。得られた反応溶液をジクロロメタンで希釈し、フロリジルを用いて濾過した。得られた濾液を減圧留去し、室温で真空乾燥することにより粗生成物を得た。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=5:1)で精製し、化合物CM3(123.4mg、収率96%)を得た。
【0152】
[実施例3](化合物CM4の合成)
下記スキームに従って、化合物CM4を合成した。
【化51】
反応容器内の気体をアルゴンガスで置換し、加熱乾燥した反応容器に、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(Pd(dba)、5.8mg、10μmol、2mol%)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,4’,6’−トリ−イソプロピル−1,1’−ビフェニル(Xphos、9.5mg、20μmol、4mol%)及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジオン(DMI、0.30mL)を加え、1時間攪拌した。その後、そこに上記方法2で合成した化合物CM1(131.7mg、0.55mmol)、化合物S4(70.0μL、0.50mmol)、フッ化カリウム(KF、145.3mg、2.50mmol)及びDMI(0.2mL)を加え、100℃で18時間加熱攪拌した。得られた反応溶液をジクロロメタンで希釈し、フロリジルを用いて濾過した。得られた濾液を減圧留去し、室温で真空乾燥することにより粗生成物を得た。この粗生成物をクロロホルムで再結晶を行い、得られた結晶を濾過により分離し、化合物CM4(89.0mg)を得た。別途、得られた濾液を薄層カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=5:1)で精製し、化合物CM4(65.7mg)を得た。得られたサンプル2点を合わせ、化合物CM4(154.7mg、合計収率99%)を得た。
【0153】
[実施例4](高分子化合物P1の合成)
下記スキームに従って、高分子化合物P1を合成した。
【化52】
反応容器内の気体をアルゴンガスで置換し、加熱乾燥した反応容器に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(Ni(cod)、6.9mg、25μmol、5mol%)、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウムクロリド(SIPr・HCl、10.7mg、25μmol、5mol%)、tert−ブトキシカリウム(KOBu、2.8mg、25μmol、5mol%)及びシクロペンチルメチルエーテル(CPME、0.30mL)を加え、100℃で1時間攪拌した。得られた溶液を室温まで冷却した後、化合物CM2(215.3mg、0.50mmol)、酢酸ナトリウム(NaOAc、69.7mg、0.85mmol)及びCPME(0.2mL)を加え、100℃で46時間攪拌した。得られた反応溶液に水を加え反応停止させた。その後、ジクロロメタン(20mL)を用いて水層を3回抽出し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウム(MgSO)で脱水後、濾過した。得られた濾液を減圧留去し、室温で真空乾燥することで、粗生成物(158.5mg)を得た。この粗生成物をジエチルエーテル(EtO、1mL)に溶解させ、メタノール(MeOH)に滴下し固体を沈殿させた。得られた固体を濾取し、高分子化合物P1(78.0mg)を得た。高分子化合物P1は、MALDI TOF−MASS測定により、10量体(n=10)までの成分を確認した。得られた高分子化合物P1のGPC装置で測定されたポリスチレン換算のMnは2,300、Mwは3,850であった。
【0154】
[比較例1](化合物CM3の合成)
下記スキームに従って、化合物CM3を合成した。
【化53】
化合物CM1に代えて化合物S1を使用した以外は、実施例2と同様にして反応を行った。化合物CM3のNMR収率は4%だった。
【0155】
[比較例2](高分子化合物P1の合成)
下記スキームに従って、高分子化合物P1を合成した。
【化54】
化合物CM2に代えて化合物S2(179.6mg、0.50mmol)を使用した以外は、実施例4と同様にして反応を行った。得られた生成物をH NMRで測定したところ、実施例4で合成した高分子化合物P1で検出されたピークは確認されなかった。
【0156】
[実施例5](化合物CM5の合成)
下記スキームに従って、化合物CM5を合成した。
【化55】
反応容器内の気体をアルゴンガスで置換し、加熱乾燥した反応容器に、化合物S5(N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、7.81g、30.0mmol)及びTHF(80mL)を加え、−78℃に冷却した。その後、そこにn−BuLi(2.65M、26.8mL、72.0mmol)を滴下し、5時間攪拌した。得られた反応溶液にTMSCl(10.4mL、120mmol)を滴下した後、徐々に昇温し、室温で14時間攪拌した。得られた反応溶液を減圧留去し、熱ヘキサンで溶解させた後、濾過により沈殿物を取り除いた。得られた濾液を減圧留去し、化合物CM5(8.64g、21.0mmol、収率70%)を得た。
【0157】
[実施例6](化合物CM6の合成)
下記スキームに従って、化合物CM6を合成した。
【化56】
反応容器内の気体をアルゴンガスで置換し、加熱乾燥した反応容器に、Pd(dba)(2.9mg、5.0μmol、1mol%)、Xphos(4.8mg、10μmol、2mol%)、DMI(0.50mL)、化合物CM5(201.4mg、0.50mmol)、化合物S6(235.5mg、1.50mmol)、フッ化セシウム(CsF、227.9mg、1.50mmol)及びDMI(0.50mL)を加え、100℃で14時間加熱攪拌した。得られた反応溶液をジクロロメタンで希釈し、フロリジルを用いて濾過した。得られた濾液を減圧留去し、室温で真空乾燥することにより粗生成物を得た。この粗生成物をクロロホルムで再結晶を行い、得られた結晶を濾過により分離し、化合物CM6(201.6mg、収率98%)を得た。
【0158】
[実施例7](高分子化合物P2の合成)
下記スキームに従って、高分子化合物P2を合成した。
【化57】
反応容器内の気体をアルゴンガスで置換し、加熱乾燥した反応容器に、Pd(dba)(2.9mg、5.0μmol、1mol%)、Xphos(4.8mg、10μmol、2mol%)、CsF(227.9mg、3.0eq、1.50mmol)、DMI(0.50mL)、S7(277.5mg、0.5060mmol)及びCM5(203.8mg、0.5060mmol)を加え、100℃で22時間攪拌した。反応溶液をクロロホルムで希釈し、メタノール(MeOH)に滴下し沈殿物をろ過し、高分子化合物P2(296.0mg)を得た。得られた高分子化合物P2のGPC装置で測定されたポリスチレン換算のMnは5,950、Mwは12,000であった。
【0159】
[反応例5](化合物CM7の合成)
下記スキームに従って、化合物CM7を合成した。
【化58】
反応容器内の気体をアルゴンガスで置換し、加熱乾燥した反応容器に、化合物S8(アニリン、2.79g、30.0mmol)及びTHF(30mL)を加え、−78℃に冷却した。
その後、そこにn−BuLi(2.56M、25.0mL、66.0mmol)を滴下し、2時間攪拌した。得られた反応溶液にTMSCl(10.4mL、120.0mmol)を滴下した後、徐々に昇温し、室温で14時間攪拌した。得られた反応溶液を減圧留去し、熱ヘキサンで溶解させた後、濾過により沈殿物を取り除いた。得られた濾液を減圧留去し、化合物CM7(7.04g、29.6mmol、収率99%)を得た。
【0160】
[実施例8](化合物CM8の合成)
下記スキームに従って、化合物CM8を合成した。
【化59】
反応容器内の気体をアルゴンガスで置換し、加熱乾燥した反応容器に、Pd(dba)(2.9mg、5.0μmol、1mol%)、Xphos(4.8mg、10μmol、2mol%)、DMI(0.50mL)、化合物CM7(136.7mg、0.58mmol)、化合物S3(256.5mg、1.50mmol)、CsF(227.9mg、1.50mmol)及びDMI(0.50mL)を加え、100℃で14時間加熱攪拌した。得られた反応溶液をジクロロメタンで希釈し、フロリジルを用いて濾過した。得られた濾液を減圧留去し、室温で真空乾燥することにより粗生成物を得た。この粗生成物をクロロホルムで再結晶を行い、得られた結晶を濾過により分離し、化合物CM8(145.1mg、収率98%)を得た。
【0161】
[実施例9](高分子化合物P3の合成)
下記スキームに従って、高分子化合物P3を合成した。
【化60】
反応容器内の気体をアルゴンガスで置換し、加熱乾燥した反応容器に、Pd(dba)(2.9mg、5.0μmol、1mol%)、Xphos(4.8mg、10μmol、2mol%)、CsF(227.9mg、3.0eq、1.50mmol)、DMI(0.50mL)、S7(274.5mg、0.5005mmol)及びCM7(118.8mg、0.5004mmol)を加え、100℃で22時間攪拌した。反応溶液をクロロホルムで希釈し、メタノール(MeOH)に滴下し沈殿物をろ過し、高分子化合物P3(202.9mg)を得た。得られた高分子化合物P3のGPC装置で測定されたポリスチレン換算のMnは4,400、Mwは9,900であった。