(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(I)および(II)で表される化合物の合計濃度が媒体に基づき40〜100質量%であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のスイッチ素子。
【背景技術】
【0002】
光学的スイッチ素子は、本発明において、建物における窓または相当する開口部において、例えばガラス張りのドア、天窓および/またはガラス屋根において、光流入の調節のために使用する。
【0003】
本発明の目的のために、液晶媒体の用語は、ある条件の下で液晶特性を示す材料または化合物を意味するものと解釈されるべきものとする。好ましくは、液晶媒体はサーモトロピック挙動を示し、より好ましくは、液晶媒体は、アイソトロピック相から液晶相への、最も好ましくはネマチック相への温度によって誘発された相転移を示す。
【0004】
本発明の目的のために、内部空間の用語は、私有の、公共の、または商業ビル、例えばオフィス目的のために使用される建物における内部空間、およびまた車両の内部空間の両方を意味するものと解釈されることを意図する。さらに、内部空間の用語はまた、純粋に商業的に使用される建物の内部空間、例えば温室を意味するものと解釈されることを意図する。
【0005】
本発明の目的のために、窓の用語は、建物における、輸送コンテナーにおける、または車両における固体材料によって密閉されたあらゆる所望の光透過性開口部を意味するものと解釈されることを意図する。
【0006】
本発明の目的のために、放射エネルギー流れは、太陽から発せられ、大気中を通過した後に地球に当たり、ガラスシートによってわずかに吸収されるに過ぎないかまたは全く吸収されない電磁放射の流れを意味するものと解釈される。電磁放射は、あるいはまた太陽以外の光源から発せられ得る。比較的短波長の放射線(UV−B光)および長波長の赤外線が大気によって、またはガラスシートによって吸収されるので、本発明の目的のために、「放射エネルギー」の用語は、UV−A光、可視領域中の光(VIS光)および近赤外線(NIR)光を含むものと理解される。
【0007】
光の用語は、より正確に定義しない限りは、同様にUV−A領域、VIS領域および近赤外線領域における電磁放射を意味するものと解釈されることを意図する。
【0008】
物理光学の分野において一般的に用いられている定義において、本発明の目的のために、UV−A光は、320〜380nmの波長の電磁放射であるものと理解される。VIS光は、380〜780nmの波長の電磁放射であるものと理解される。近赤外線光(NIR)は、780〜3000nmの波長の電磁放射であるものと理解される。
したがって、本発明の目的のために、「放射エネルギー」および「光」の用語は、320〜3000nmの波長の電磁放射であるものと理解される。
【0009】
本発明の目的のために、光学的スイッチ素子の用語は、したがって、放射エネルギーについてのより低い透過を有する状態と放射エネルギーについてのより高い透過を有する状態との間で切り替えることができるデバイスを示し、放射エネルギーの用語は、上記のように定義されている。スイッチ素子は、放射エネルギーのスペクトルの1または2以上のサブ領域(sub-region)中で選択的に切り替えられ得る。「デバイス」および「スイッチ素子」の用語を、以下において区別せずに使用する。
【0010】
本発明の光学的スイッチ素子は、熱応答性である。しかしながら、それは、1つまたは2つ以上の他の機構によって、例えば電流または機械的機構によってもさらに制御され得る。好ましくは、そのような他の機構は存在しない。
【0011】
現代の建物は、高い比率のガラス面によって識別され、それは、景観に配慮する理由のために、ならびにまた内部空間の明るさおよび快適性に関して所望される。生活もしくは商業目的のために使用される、および/または公共に使用し得る建物が高いエネルギー効率を有することは、近年同様に重要になった。これは、温帯気候帯(ここに大多数の高度に先進の工業国が位置する)における寒冷な季節においては、可能な限り少ないエネルギーを暖房目的のために消費すべきであり、温暖な季節においては、内部空間の空調は不必要であるかまたはほとんど必要ではないに過ぎないことを意味する。
【0012】
しかしながら、高い比率のガラス面によって、これらの目的の達成が妨げられる。暖かい気候帯において、および温帯気候帯における温暖な季節において、ガラス面によって、それらに太陽放射が当たる場合に内部空間の所望されない加熱がもたらされる。これは、ガラスが電磁スペクトルのVISおよびNIR領域中の放射線に対して透明であるという事実による。内部空間中の物体は、通過通過した放射線を吸収し、それによって加温され、その結果、内部空間の温度の上昇がもたらされる(温室効果)。
【0013】
温室効果と呼ばれるガラス面の裏側の内部空間の温度のこの上昇は、放射線を吸収した内部における物体がまた放射線を放つという事実による。しかしながら、これらの物体の発せられた放射線は、主として光の赤外線スペクトル(典型的には約10,000nmの波長)にある。したがって、それは、ガラスを再び通過することができず、ガラス張りの裏側の空間中に「閉じ込められる」。
【0014】
しかしながら、建物中のガラス面の上記の効果は、一般的に所望されないわけではない:特に寒帯気候帯における、または温帯気候帯における寒冷な季節における低い外部温度において、温室効果による太陽放射に起因する内部空間の加熱は、暖房のためのエネルギー必要量がそれによって低減され、これにより費用を節約することができるので、有利であり得る。
【0015】
したがって、建物のエネルギー効率の増大する重要性と共に、窓またはガラス面を通過するエネルギーの流れを制御するデバイスについての拡大している需要がある。特に、ガラス面を通過するエネルギーの流れが特定の時点において優勢な条件(熱、寒冷、高い太陽放射、低い太陽放射)と整合することを可能にするデバイスについての需要がある。
【0016】
特に興味深いのは、高い太陽放射と組み合わされた暖かい外部の温度と、低い太陽放射と組み合わされた冷涼な外部の温度との間に季節的変化が生じる、温帯気候帯におけるそのようなデバイスの提供である。
【0017】
従来技術には、エネルギー流れを制限するが可変の方式で適合させることができない、切り替え可能でないデバイス、およびまたエネルギー流れを優勢なそれぞれの条件に整合させることができる切り替え可能なデバイスの両方が開示されている。切り替え可能なデバイスの中で、周囲条件に対して自動的に適合しないデバイスと周囲条件に対して自動的に適合するデバイスとを、区別しなければならない。後者のデバイスはまた、スマートウィンドウ(smart window)として知られている。
【0018】
窓の断熱を改善するために、多重のガラス張りの(multiple-glazed)窓ユニット(絶縁されたガラスユニット(insulated glass units)、IGU)が、暫くの間知られている。環境から絶縁された1つまたは2つ以上のガス充填した空間を包囲する一連の2または3以上のガラス枠によって、単一のガラス枠と比較して、窓を通過する熱伝導を著しく低減することが可能になる。
【0019】
従来技術にはさらに、薄い金属または金属酸化物層でのガラス面のコーティングが開示されている。このようにしてコーティングされたガラスの製造は、例えば、特にUS 3,990,784およびUS 6,218,018に開示されている。
ガラス面の薄い金属または金属酸化物層でのコーティングは、多くの場合において多重枠(multipane)絶縁ガラスの使用と組み合わせられる。コーティングは、とりわけ、ガラスの近赤外線放射線に対する透明性が低下し、したがって温室効果に起因する内部空間の加熱を低減する効果を有する。
【0020】
しかしながら、放射エネルギー流れが専らこのタイプのコーティング手法によって、および/または絶縁ガラスの使用によって制御される場合には、変化する天候または季節的条件への適合は、可能ではない。例えば、暖房のためのエネルギー消費を低減するために、窓が、低温の外部温度において日光に対して完全に透明であることは、興味深いであろう。逆に、暖かい外部温度において、窓が、より少ない日光が通過することを可能にし、これにより内部空間のより少ない加熱が起こることが望ましいであろう。
【0021】
したがって、放射エネルギー流れを優勢なそれぞれの条件に整合させることができるデバイスについての需要がある。特に、周囲条件に自動的に適合することができるデバイスについての需要がある。
従来技術には、電圧の印加の際に、光透過状態から、光散乱状態またはより少ない光が透過される状態のいずれかであり得るより低い程度の光透過状態に可逆的に切り替えることができるが、透明性を維持するデバイスが開示されている。
【0022】
第1の状態を、以下において明るい状態と称し、一方、第2の状態を、暗い状態と称する。
暗い状態内で、デバイスが入射光を散乱し、したがって半透明であるに過ぎず、もはや透明でない暗い状態と、デバイスがより低い程度に光透過性であるが尚透明である暗い状態との間で、区別がなされるものとする。前者を、暗い半透明状態と称し、一方後者を、暗い透明状態と称する。
【0023】
したがって、2つのタイプのスイッチ素子:明るい状態と暗い透明状態との間で切り替わるもの、および明るい状態と暗い半透明状態との間で切り替わるもの、を識別することができる。
両方のタイプのスイッチ素子についての代表は、従来技術において知られている。
【0024】
電気的に切り替え可能なデバイスの可能な態様は、エレクトロクロミックデバイスであり、それは、とりわけSeeboth et al., Solar Energy Materials & Solar Cells, 2000, 263-277中に提示されている。さらなる報告は、C. M. Lampert et al., Solar Energy Materials & Solar Cells, 2003, 489-499によって提供されている。その中に提示されている電気的に切り替え可能なデバイスは、典型的には明るい状態と暗い透明状態との間で切り替えることができる。
【0025】
US 7,042,615およびUS 7,099,062には、例えば、透明状態と不透明状態との間の切り替えを、電圧の印加および結果として生じるイオンの移動によって達成するエレクトロクロミックデバイスが記載されている。
【0026】
放射エネルギー流れの制御のための従来技術から知られているさらなる電気的に切り替え可能なデバイスは、電界中で整列する、懸濁粒子、例えば有機ポリヨージドの粒子に基づくデバイス(懸濁粒子デバイス、SPD)である(US 4,919,521)。それらは、同様に典型的には明るい状態から暗い透明状態に切り替わる。
【0027】
従来技術から知られているさらなる電気的に切り替え可能なデバイスは、電界の印加の際の液晶媒体の分子の整列に基づく。
そのようなデバイスは、とりわけUS 4,268,126、US 4,641,922、US 5,940,150およびWO 2008/027031に開示されており、同様に電気的制御の下で明るい状態から暗い透明状態に切り替わる。
【0028】
上記で述べた電気的に切り替え可能なデバイスによって、放射エネルギー流れを設定することが可能になるが、それらは、電気的に制御されなければならないという欠点を有する。
周囲条件に自動的に適合し、手動で、または検出された温度偏差によってシグナルを付与することができるあらゆる追加の結合したデバイスによっても、制御する必要のないスイッチ素子を入手可能にすることが、望ましい。
【0029】
さらに、いかなる電気回路をも必要としないスイッチ素子を入手可能にすることが、望ましい。電気回路の窓中への導入は、窓の製造中の追加の作業を伴い、不具合に対する感受性の危険またはデバイスの短い耐用年数を伴う。さらに、電力供給を含む、追加の基礎構造が、かかるデバイスに必要である。
【0030】
電気的に切り替えられず、代わりに例えば温度制御されるデバイス(熱応答性デバイス)は、とりわけNitz et al., Solar Energy 79, 2005, 573-582に記載されている。そのようなデバイスの可能な態様は、ある温度より高い2つの相間の分離に基づくシステムである。さらなる態様は、ヒドロゲルの温度依存性特性に基づく。しかしながら、これらのデバイスは、典型的には透明状態と暗い半透明状態との間で切り替わり、それは、デバイスが暗い状態においても透明に維持されることが必要とされる用途のためには所望されない。
【0031】
US 2009/0015902およびUS 2009/0167971には、2つの偏光子間に液晶媒体を含む光学的スイッチ素子が開示されている。液晶媒体は、第1の温度で光の偏光面を回転させ、第2の温度で光の偏光面を回転させないかまたは本質的に回転させない特性を有する。したがって、偏光子の好適な配置によって、デバイスが、第2の温度においてよりも第1の温度において多くの光が通過するのを可能にすることが可能になる。2つの温度依存性状態は、明るい状態(第1の温度)および暗い透明状態(第2の温度)を表す。
【0032】
特に、2つの出願US 2009/0015902およびUS 2009/0167971には、ねじれネマチックセル(TNセル)を光学的スイッチ素子として使用するデバイスが開示されている。この場合において、明るい状態と暗い透明状態との間の切り替えは、ねじれネマチックセル中に存在する液晶媒体の、透明点より低い温度におけるネマチック状態から透明点より高い温度におけるアイソトロピック状態への相転移によって達成される。
【0033】
ねじれネマチックセルにおいて、第2の偏光子の偏光面は、第1の偏光子の偏光面に関して、定義された値によって回転する。さらに、ネマチック状態において、液晶媒体は、偏光した光の偏光面を、前述の値とは異なり得る定義された値によって回転させる。アイソトロピック状態において、液晶媒体は、偏光した光の偏光面を回転させない。
【0034】
US 2009/0015902およびUS 2009/0167971に開示されている好ましい態様において、2つの偏光子は、定義された量の光が第1の偏光子、そのネマチック状態における液晶媒体および第2の偏光子の組み合わせを通過することができるように互いに配置されている。液晶媒体がネマチックであるデバイスのこの状態は、デバイスの明るい状態を表す。
液晶媒体が液晶状態からアイソトロピック状態に変化する際に、より少ない光が、デバイスを通過することができる。液晶媒体がアイソトロピックであるデバイスのこの状態は、デバイスの暗い状態を表す。
【0035】
出願US 2009/0015902およびUS 2009/0167971にはさらに、低い透明点を有する液晶媒体が前記デバイスにおける使用に適していることが開示されている。液晶媒体の相転移によって引き起こされる、明るい状態から暗い透明状態への切り替えプロセスは、暖かい季節における太陽の典型的な放射強度によるデバイスの加熱に対してのみ行われることを意図する。このために、85℃より低い好ましい透明点が、開示されている。開示されている例は、加えられた4’−ヘキシル−4−シアノビフェニル(6CB)と一緒に液晶混合物E7を含み、35℃の透明点を有する液晶媒体である。上述の出願には、72℃の透明点を有する液晶混合物ZLI1132(Merck KGaA)を、代替的にまた、切り替え可能なデバイスにおける使用のための液晶媒体の製造のための基礎として使用することができることが、さらに一般的に開示されている。しかしながら、特定の例示的な態様は、この点において開示されていない。
【0036】
この点において、US 2009/0015902およびUS 2009/0167971に開示されている混合物E7の、アルキルシアノビフェニル化合物、例えば4’−ヘキシル−4−シアノビフェニルの添加による修正は、液晶媒体の低温安定性が損なわれるという欠点を有することに注意するべきである。
【0037】
しかしながら、多くの適用においてスイッチ素子が長期間にわたって低温に曝露されるので、液晶媒体の良好な低温安定性は、高度に望ましい。
【0038】
熱的に切り替え可能なデバイスにおいて使用するのに適している液晶媒体に対する需要が、引き続きある。特に、光学的スイッチ素子の動作温度範囲内にある温度においてネマチック状態からアイソトロピック状態への転移(透明点)を有する液晶媒体に対する需要がある。さらに、高い含量の混合された脂環式および芳香族二環式化合物を有する液晶媒体に対する需要があり、これは、かかる二環式化合物は費用効率的に製造することができるからである。さらに、良好な低温保存安定性を好ましくは上記で述べた特性と組み合わせて有する液晶媒体に対する需要がある。
【発明の概要】
【0039】
このために、本発明は、液晶媒体を含む熱応答性の光学的スイッチ素子であって、式(I)
【化1】
式中、
R
11、R
12は、各出現において同一に、または異なって、1〜10個のC原子を有するアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基または2〜10個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシもしくはチオアルケニルオキシ基から選択され、ここで上記で述べた基中の1個または2個以上のH原子は、FまたはClによって置き換えられていてもよく、またここで、1つまたは2つ以上のCH
2基は、OまたはSによって置き換えられてもよく、またはF、Cl、CN、NCS、R
1−O−CO−およびR
1−CO−O−を含む群から選択され;ここで
【0040】
R
1は、各出現において同一に、または異なって、1〜10個のC原子を有するアルキルまたはアルケニル基であり、ここで1個または2個以上のH原子は、FまたはClによって置き換えられていてもよく;
【0041】
【化2】
は、
【化3】
から選択され;
【0042】
【化4】
は、
【化5】
から選択され;
【0043】
Z
11は、−CO−O−および−O−CO−から選択され;
Xは、各出現において同一に、または異なって、F、Cl、CNまたは1〜10個のC原子を有するアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基であり、ここで上記で述べた基中の1個または2個以上のH原子は、FまたはClによって置き換えられていてもよく、またここで、1つまたは2つ以上のCH
2基は、OまたはSによって置き換えられていてもよく;
Yは、各出現において同一に、または異なって、HおよびXから選択される、
で表される1種または2種以上の化合物を含む、前記熱応答性の光学的スイッチ素子を提供する。
【0044】
優先的に、液晶媒体はさらに、式(II)で表される1種または2種以上の化合物を含み、
【化6】
【0045】
式中、
R
21、R
22は、上記のR
11およびR
12について示した意味を有し;
【化7】
は、同一に、または異なって
【化8】
から選択され;
【0046】
ここでXおよびYは、上記のように定義され;
Z
21は、−CO−O−、−O−CO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−OCH
2−、−CH
2O−および単結合から選択され;
【0047】
ただし、
【化9】
の一方が
【化10】
であり、Z
21が−CO−O−および−O−CO−から選択される場合には、
【化11】
の他方の1つは、
【化12】
から選択されてはならず、
XおよびYは、上記のように定義される。
【0048】
優先的に、液晶媒体はさらに、式(III)および(IV)で表される化合物から選択された1種または2種以上の化合物を含み、
【化13】
【0049】
式中、
R
31、R
32、R
41およびR
42は、上記のR
11およびR
12について示した意味を有し;
【化14】
は、各出現において同一に、または異なって
【化15】
から選択され;
ここで、XおよびYは、上記のように定義され;また
【0050】
【化16】
は、各出現において同一に、または異なって
【化17】
から選択され;
ここでXおよびYは、上記のように定義され;
【0051】
Z
31およびZ
32は、各出現において同一に、または異なって、−CO−O−、−O−CO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−OCH
2−、−CH
2O−および単結合から選択され;また
Z
41、Z
42およびZ
43は、各出現において同一に、または異なって、−CO−O−、−O−CO−および単結合から選択される。
【0052】
本発明の好ましい態様において、液晶媒体は、上記で定義した式(I)で表される1種または2種以上の化合物ならびに式(II)で表される1種または2種以上の化合物ならびに式(III)および(IV)で表される化合物から選択された1種または2種以上の化合物を含む。
【0053】
本発明の好ましい態様において、Xは、各出現において同一に、または異なって、F、Cl、CNおよび1〜8個のC原子を有するアルキル基から選択される。XがFおよびClから選択されるのが、特に好ましく、XがFであるのが、極めて特に好ましい。
【0054】
さらに、R
11およびR
12が、各出現において同一に、または異なって、1〜10個のC原子を有する直鎖状アルキルもしくはアルコキシ基および2〜10個のC原子を有するアルケニルもしくはアルケニルオキシ基から選択され、ここで上記で述べた基中の1個もしくは2個以上のH原子が、FもしくはClによって置き換えられていてもよく、またはF、Cl、CN、R
1−O−CO−およびR
1−CO−O−を含む群から選択され;ここでR
1が上記のように定義されるのが、好ましい。
【0055】
式(I)による化合物については、R
11が、1〜10個のC原子を有する直鎖状アルキルまたはアルコキシ基、R
1−O−CO−およびR
1−CO−O−から選択され;ここでR
1が上記のように定義されるのが、好ましい。
【0056】
式(I)による化合物については、R
12が1〜10個のC原子を有する直鎖状アルキルもしくはアルコキシ基であり、ここで上記で述べた基中の1個もしくは2個以上のH原子がFもしくはClによって置き換えられていてもよく、またはR
12がF、Cl、R
1−O−CO−およびR
1−CO−O−から選択され;ここでR
1が上記のように定義されるのが、さらに好ましい。
【0057】
式(I)による化合物については、Z
11が−CO−O−であるのが、さらに好ましい。
さらなる好ましい態様において、
【化18】
は、
【化19】
に等しい。
【0058】
本発明の特に好ましい態様において、式(I)による化合物は、以下の式(I−1)および(I−2):
【化20】
式中、R
11、R
12およびXは、上記のように定義される、
で表される化合物である。
【0059】
尚より好ましい態様において、式(I−1)による化合物は、以下の式(I−1a)〜(I−1b)
【化21】
【0060】
式中、R
11およびR
12は、各出現において同一に、または異なって1〜10個のC原子を有するアルキル基であり、
R
1は、1〜10個のC原子を有するアルキル基であり、ここで1個または2個以上のH原子は、FまたはClによって置き換えられていてもよい、
で表される化合物である。
【0061】
さらなる尚より好ましい態様において、式(I−2)による化合物は、以下の式(I−2a)
【化22】
式中、R
11は、1〜10個のC原子を有するアルキル基であり、
R
1は、1〜10個のC原子を有するアルキル基である、
で表される化合物である。
【0062】
好ましい態様において、式(II)による化合物において、
【化23】
は、
【化24】
から選択され;
【0063】
【化25】
は、
【化26】
から選択され;
ここでXは、上記のように定義され、
【0064】
ただし、
【化27】
の一方が
【化28】
であり、Z
21が−CO−O−および−O−CO−から選択される場合には、
【化29】
の他方の1つは、
【化30】
から選択されてはならず、
Xは、上記のように定義される。
【0065】
さらなる好ましい態様において、Z
21は、−CO−O−または単結合である。
さらなる好ましい態様において、R
21およびR
22は、各出現において同一に、または異なって、F、Cl、CNまたは、1〜10個のC原子を有し、ここで1個もしくは2個以上のH原子がFもしくはClによって置き換えられていてもよいアルキルもしくはアルコキシ基、または2〜10個のC原子を有するアルケニル基である。
【0066】
特に好ましい態様において、式(II)による化合物は、以下の式(II−1)〜(II−2)で表される化合物であり、
【化31】
式中、R
21、R
22、
【化32】
は、上記のように定義され、
【0067】
ただし、式(II−1)による化合物について、
【化33】
の一方が
【化34】
である場合には、
【化35】
の他方の1つは、
【化36】
から選択されてはならず、
XおよびYは、上記のように定義される。
【0068】
好ましい態様において、式(II−1)による化合物において、
【化37】
は、
【化38】
に等しく、
【化39】
は、
【化40】
であり、ここで
Xは、上記のように定義される。
【0069】
さらなる好ましい態様において、式(II−2)による化合物において、
【化41】
は、
【化42】
であり、
【化43】
は、
【化44】
であり、ここで
Xは、上記のように定義されている。
【0070】
式(II−1)による化合物の特に好ましい態様は、以下の式(II−1a)〜(II−1d)
【化45】
式中、R
1、R
21およびR
22は、上記のように定義される、
で表される化合物である。
【0071】
好ましい態様において、式(II−1a)〜(II−1d)による化合物において、R
1、R
21およびR
22は、各出現において同一に、または異なって、1〜10個のC原子を有するアルキル基である。
【0072】
式(II−2)による化合物の特に好ましい態様は、以下の式(II−2a)〜(II−2g)
【化46】
式中、R
1、R
21およびR
22は、上記のように定義される、
で表される化合物である。
【0073】
好ましい態様において、式(II−2a)〜(II−2g)による化合物において、R
1、R
21およびR
22は、各出現において同一に、または異なって、1〜10個のC原子を有するアルキル基である。
【0074】
さらなる好ましい態様において、式(III)による化合物において、
【化47】
は、各出現において同一に、または異なって
【化48】
から選択され、ここで
Xは、上記のように定義される。
【0075】
さらなる好ましい態様において、式(III)による化合物において、
Z
31およびZ
32は、各出現において同一に、または異なって、−CO−O−、−O−CO−、−CH
2−CH
2−または単結合である。
さらなる好ましい態様において、式(III)による化合物において、R
21およびR
22は、各出現において同一に、または異なって、F、ClもしくはCNまたは、1〜10個のC原子を有するアルキル基であり、ここで1個または2個以上のH原子はFまたはClによって置き換えられていてもよい。
【0076】
特に好ましい態様において、式(III)による化合物は、以下の式(III−1)〜(III−3)
【化49】
式中、基R
31、R
32、Z
31、Z
32および
【化50】
は、上記のように定義される、
で表される化合物である。
【0077】
好ましい態様において、式(III−1)による化合物において、
【化51】
は、各出現において同一に、または異なって
【化52】
から選択され、ここで
Xは、上記のように定義される。
【0078】
さらなる好ましい態様において、式(III−2)による化合物において、
【化53】
は、各出現において同一に、または異なって
【化54】
から選択される。
【0079】
さらなる好ましい態様において、式(III−3)による化合物において、
【化55】
は、各出現において同一に、または異なって
【化56】
から選択され、ここで
Xは、上記のように定義される。
【0080】
本発明の特に好ましい態様において、式(III−1)で表される化合物は、以下の式(III−1a)〜(III−1e)
【化57】
式中、R
31およびR
32は、上記のように定義される、
で表される化合物である。
【0081】
本発明の特に好ましい態様において、式(III−1a)〜(III−1e)による化合物において、R
31およびR
32は、各出現において同一に、または異なって、1〜10個のC原子を有するアルキル基である。
【0082】
本発明のさらなる特に好ましい態様において、式(III−2)で表される化合物は、以下の式(III−2a)
【化58】
式中、R
31は、上記のように定義される、
で表される化合物である。
本発明の特に好ましい態様において、式(III−2a)による化合物において、R
31は、1〜10個のC原子を有するアルキル基である。
【0083】
本発明のさらなる特に好ましい態様において、式(III−3)で表される化合物は、以下の式(III−3a)〜(III−3c)
【化59】
で表される化合物であり、
【0084】
式中、
【化60】
は、各出現において同一に、または異なって
【化61】
から選択され、ここで
Xは上記のように定義され、R
31およびR
32は上記のように定義される。
【0085】
本発明の最も好ましい態様において、式(III−3a)で表される化合物は、以下の式(III−3a−1)〜(III−3a−6)
【化62】
式中、R
31およびR
32は、上記のように定義される、
で表される化合物である。
【0086】
好ましくは、式(III−3a−1)〜(III−3a−6)による化合物において、R
31およびR
32は、各出現において同一に、または異なって、1〜10個のC原子を有するアルキル基である。
【0087】
本発明のさらなる最も好ましい態様において、式(III−3b)で表される化合物は、以下の式(III−3b−1)
【化63】
式中、R
31およびR
32は、上記のように定義される、
で表される化合物である。
好ましくは、式(III−3b−1)による化合物において、R
31およびR
32は、各出現において同一に、または異なって、1〜10個のC原子を有するアルキル基である。
【0088】
本発明のさらなる最も好ましい態様において、式(III−3c)で表される化合物は、以下の式(III−3c−1)〜(III−3c−3)
【化64】
式中、R
31およびR
32は、上記のように定義される、
で表される化合物である。
【0089】
好ましくは、式(III−3c−1)〜(III−3c−3)による化合物において、R
31およびR
32は、各出現において同一に、または異なって、1〜10個のC原子を有するアルキル基であり、ここで1個または2個以上のH原子は、FまたはClによって置き換えられていてもよい。
【0090】
さらなる好ましい態様において、式(IV)による化合物において、
【化65】
は、各出現において同一に、または異なって
【化66】
から選択され、ここで
Xは、上記のように定義される。
【0091】
さらなる好ましい態様において、式(IV)による化合物において、
Z
41〜Z
43は、各出現において同一に、または異なって−CO−O−または単結合である。
さらなる好ましい態様において、式(IV)による化合物において、
R
41およびR
42は、各出現において同一に、または異なって、1〜10個のC原子を有するアルキル基である。
【0092】
本発明の好ましい態様において、式(IV)による化合物は、以下の式(IV−1)および(IV−2)
【化67】
式中、R
41およびR
42ならびに
【化68】
は、上記のように定義される、
で表される化合物である。
【0093】
本発明の特に好ましい態様において、式(IV−1)による化合物は、以下の式(IV−1a)〜(IV−1b)
【化69】
式中、R
41およびR
42は、上記のように定義される、
で表される化合物である。
好ましい態様において、式(IV−1a)〜(IV−1b)におけるR
41およびR
42は、各出現において同一に、または異なって、1〜10個のC原子を有するアルキル基である。
【0094】
本発明のさらなる特に好ましい態様において、式(IV−2)による化合物は、以下の式(IV−2a)
【化70】
式中、R
41およびR
42は、上記のように定義される、
で表される化合物である。
好ましい態様において、式(IV−2a)におけるR
41およびR
42は、各出現において同一に、または異なって、1〜10個のC原子を有するアルキル基である。
【0095】
本発明の好ましい態様において、式(I)で表される化合物の合計濃度は、5〜95%である。
より好ましくは、式(I)による化合物の濃度は、6〜60%、最も好ましくは7〜55%である。
【0096】
式(II)で表される化合物の合計濃度が1〜75%であるのが、さらに好ましい。より好ましくは、式(II)による化合物の濃度は、10〜75%、尚より好ましくは20〜55%および最も好ましくは30〜75%である。
式(II−2g)による化合物の合計濃度が0〜40%、より好ましくは0〜30%および最も好ましくは0〜25%であるのが、さらに好ましい。
【0097】
式(I)および(II)で表される化合物の合計濃度が40〜100%であるのが、さらに好ましい。より好ましくは、それは50〜100%であり、最も好ましくは、それは70〜100%である。
式(III)および(IV)で表される化合物の合計濃度が0〜30%であるのが、さらに好ましい。
【0098】
本発明はさらに、上記で定義した式(I)で表される1種または2種以上の化合物を5〜95%の合計濃度で、および上記で定義した式(II)で表される少なくとも1種のさらなる化合物を、式(I)および(II)で表される化合物の合計濃度が40〜100%であるように含む液晶媒体に関する。
【0099】
本発明の好ましい態様において、液晶媒体は、式(I)〜(IV)で表される化合物から選択された少なくとも5種の異なる化合物を含む。特に好ましい態様において、液晶媒体は、式(I)〜(IV)で表される化合物から選択された少なくとも6種の異なる化合物を含む。尚より好ましい態様において、液晶媒体は、式(I)〜(IV)で表される化合物から選択された少なくとも7種の異なる化合物を含む。
【0100】
任意に、本発明の媒体は、さらなる液晶化合物を含んで、物理的特性を調整してもよい。そのような化合物は、専門家に知られている。本発明の媒体中でのそれらの濃度は、好ましくは0%〜30%、より好ましくは0.1%〜20%および最も好ましくは1%〜15%である。
【0101】
本発明の液晶媒体は、キラルなドーパントをさらなる添加剤として通常の濃度において含んでもよい。好ましいキラルなドーパントを、以下の表Eに列挙する。これらのさらなる構成要素の合計濃度は、全混合物を基準として0%〜10%、好ましくは0.1%〜6%の範囲内にある。使用する個々の化合物の濃度は、各々好ましくは0.1%〜3%の範囲内にある。これらの、および同様の添加剤の濃度は、本出願における液晶構成成分および液晶媒体の化合物の濃度の値および範囲のためには考慮しない。
【0102】
本発明の液晶媒体は、染料をさらなる添加剤として通常の濃度において含んでもよい。好ましい態様において、灰色または黒色をもたらす染料または染料の組み合わせを、使用する。さらなる好ましい態様において、染料を、高い光安定性および良好な可溶性を有する染料、例えばアゾ染料またはアントラキノン染料から選択する。これらのさらなる構成要素の合計濃度は、全混合物を基準として0%〜10%、好ましくは0.1%〜6%の範囲内にある。使用する個々の化合物の濃度は、各々、好ましくは0.1%〜9%の範囲内にある。これらの、および同様の添加剤の濃度は、本出願における液晶構成成分および液晶媒体の化合物の濃度の値および範囲のためには考慮しない。
【0103】
本発明の液晶媒体は、安定剤をさらなる添加剤として通常の濃度において含んでもよい。好ましい安定剤を、以下の表Fに列挙する。安定剤の合計濃度は、全混合物を基準として0%〜10%、好ましくは0.0001%〜1%の範囲内にある。
【0104】
本発明の好ましい態様において、透明点(ネマチック状態からアイソトロピック状態への相転移の温度、T(N,I))は、60℃より低い。特に好ましい態様において、T(N,I)は、50℃より低い。尚より好ましい態様において、T(N,I)は、40℃より低く、最も好ましくは30℃より低い。
【0105】
本発明の熱応答性光学的スイッチ素子において使用するための好ましい液晶媒体(好ましい液晶媒体I)は、
・5〜95%の合計濃度における、式(I−1a)、(I−1b)または(I−2a)による1種または2種以上の化合物、
・1〜40%の合計濃度における、式(II−2g)による1種または2種以上の化合物、
【0106】
・0〜70%の合計濃度における、式(II−2c)〜(II−2f)または(II−1a)〜(II−1d)による1種または2種以上の化合物、ならびに
・0〜30%の合計濃度における、式(III−1a)〜(III−1e)、(III−2a)、(III−3a−1)〜(III−3a−6)、(III−3b−1)、(III−3c−1)〜(III−3c−3)、(IV−1a)〜(IV−1b)および(IV−2a)による1種または2種以上の化合物、
を含み、
ここで、式(I)および(II)で表される化合物の合計濃度は、40〜100%である。
【0107】
本発明の他の好ましい態様において、液晶媒体(好ましい液晶媒体II)は、
・5〜95%の合計濃度における、式(I−1a)、(I−1b)または(I−2a)による1種または2種以上の化合物、
・0〜70%の合計濃度における、式(II−2c)〜(II−2f)による1種または2種以上の化合物、
【0108】
・1〜70%の合計濃度における、式(II−1a)〜(II−1d)による1種または2種以上の化合物、ならびに
・0〜30%の合計濃度における、式(III−1a)〜(III−1e)、(III−2a)、(III−3a−1)〜(III−3a−6)、(III−3b−1)、(III−3c−1)〜(III−3c−3)、(IV−1a)〜(IV−1b)および(IV−2a)による1種または2種以上の化合物、
を含み、
ここで、式(I)および(II)で表される化合物の合計濃度は、40〜100%である。
【0109】
本発明の他の好ましい態様において、液晶媒体(好ましい液晶媒体III)は、
・5〜95%の合計濃度における、式(I−1a)、(I−1b)または(I−2a)による1種または2種以上の化合物、
・5〜70%の合計濃度における、式(II−2a)〜(II−2f)による1種または2種以上の化合物、
【0110】
・0〜30%の合計濃度における、式(III−1a)〜(III−1e)、(III−2a)、(III−3a−1)〜(III−3a−6)、(III−3b−1)、(III−3c−1)〜(III−3c−3)、(IV−1a)〜(IV−1b)および(IV−2a)による1種または2種以上の化合物、
を含み、
ここで、式(I)および(II)で表される化合物の合計濃度は、40〜100%である。
【0111】
本発明の他の好ましい態様において、液晶媒体(好ましい液晶媒体IV)は、
・5〜95%の合計濃度における、式(I−1a)、(I−1b)または(I−2a)による1種または2種以上の化合物、
・5〜70%の合計濃度における、式(II−2c)〜(II−2f)による1種または2種以上の化合物、
【0112】
・0〜30%の合計濃度における、式(III−1a)〜(III−1e)、(III−2a)、(III−3a−1)〜(III−3a−6)、(III−3b−1)、(III−3c−1)〜(III−3c−3)、(IV−1a)〜(IV−1b)および(IV−2a)による1種または2種以上の化合物、
を含み、
ここで、式(I)および(II)で表される化合物の合計濃度は、40〜100%である。
【0113】
本発明の液晶媒体は、数種の化合物、好ましくは5〜30種、より好ましくは6〜20種および最も好ましくは6〜16種の化合物からなる。これらの化合物を、当該分野において知られている方法に従って混合する。通例、より少ない量において使用する化合物の所要量を、より多い量において使用する化合物に溶解する。温度が、より高い濃度において使用する化合物の透明点より高い場合において、溶解のプロセスの完了を観察することが特に容易である。しかしながらまた、媒体を、他の慣用の方法によって、例えば、化合物の同族混合物もしくは共融混合物であり得る例えばいわゆる前混合物(pre-mixture)を使用して、またはその構成要素が直ちに使用可能な混合物自体であるいわゆるマルチボトル系(multi-bottle-system)を使用して製造することが可能である。
【0114】
本発明はさらに、上記で定義した液晶媒体の製造方法であって、式(I)で表される1種または2種以上の化合物を式(II)で表される1種または2種以上の化合物と、ならびに任意に1種または2種以上のさらなるメソゲン性化合物および/または添加剤と混合することを特徴とする、前記方法に関する。
【0115】
本発明の好ましい態様において、光学的スイッチ素子は、
・薄層の形態である液晶媒体、および
・1つが液晶媒体の層の一方の側面に配置され、他のものが液晶媒体の層の反対側上に配置されている、少なくとも2つの好ましくは薄層の形態である偏光子、
を含む
【0116】
偏光子は、直線偏光子または円偏光子、好ましくは直線偏光子であり得る。
直線偏光子については、2つの偏光子の偏光の方向が定義された角度によって互いに関して回転しているのが、好ましい。
【0117】
さらなる層および/または素子、例えば1つまたは2つ以上の別個の整列層、1つまたは2つ以上のガラスシート、1つまたは2つ以上のバンドブロック(bandblock)フィルターおよび/またはある波長の光、例えばUV光を遮断するためのカラーフィルターが、存在してもよい。さらに、1つまたは2つ以上の絶縁層、例えば低放射率フィルムが、例えば存在してもよい。さらに、1つまたは2つ以上の接着剤層、1つまたは2つ以上の保護層、1つまたは2つ以上の不動態化層および1つまたは2つ以上の障壁層が、存在してもよい。任意に、金属酸化物が2種または3種以上の異なる金属を含んでもよく、金属酸化物がハロゲン化物イオン、好ましくはフッ化物でドープされていてもよい金属酸化物層が、存在してもよい。好ましいのは、以下の1種または2種以上を含む金属酸化物層である:酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンスズ(ATO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、SnO
2およびSnO
2:F(フッ素がドープされたSnO
2)。特に好ましいのは、ITOを含む金属酸化物層である。
【0118】
液晶媒体の層中に、スペーサーが存在してもよい。前述の素子およびそれらの機能の典型的な態様は、当業者に知られている。
【0119】
本出願の目的のために、用語「偏光子」は、1つの偏光方向の光を遮断し、他の偏光方向の光を透過するデバイスまたは物質を指す。同様に、用語「偏光子」は、1種の円偏光(右回りまたは左回り)の光を遮断し、一方それが、他種の円偏光(左回りまたは右回り)の光を透過するデバイスまたは物質を指す。
【0120】
遮断は、反射および/または吸収によって生じ得る。反射偏光子は、したがって1つの偏光方向または1種の円偏光の光を反射し、反対の偏光方向または他種の円偏光の光を透過する;また吸収偏光子は、1つの偏光方向または1種の円偏光の光を吸収し、反対の偏光方向または他種の円偏光の光を透過する。反射または吸収は、典型的には定量的ではなく、完全ではない偏光子による光の偏光をもたらす。
【0121】
本発明において、吸収偏光子および反射偏光子の両方を、光学的スイッチ素子において使用してもよい。好ましくは、本発明の偏光子は、光学的薄層を表す。本発明において使用することができる反射偏光子の例は、DRPF(拡散性反射偏光子フィルム、3Mによる)、DBEF(二重明るさ増強フィルム、3Mによる)、US 7,038,745およびUS 6,099,758に記載されている層状ポリマー分布ブラッグ反射器(DBR)およびAPF(高度偏光子フィルム、3Mによる)である。
【0122】
さらに、例えば、US 4,512,638に記載されている、赤外光を反射するワイヤグリッド偏光子(WGP)を、使用してもよい。スペクトルの可視および紫外線部において反射するワイヤグリッド偏光子は、例えばUS 6,122,103に記載されており、また本発明において使用してもよい。本発明において使用してもよい吸収偏光子の例は、Itos XP38偏光フィルムまたはNitto Denko GU-1220DUN偏光フィルムである。本発明において使用することができる円偏光子の例は、American Polarizers IncからのAPNCP37-035-STD(左回り)およびAPNCP37-035-RH(右回り)である。
【0123】
本発明において、光学的スイッチ素子は熱応答性であり、その切り替え状態が温度によって決定されることを示す。本発明の好ましい態様において、電気配線、電気回路および/または切り替えネットワークは、光学的切り替え素子中に存在しない。
【0124】
光学的スイッチ素子の切り替えは、より高い比率の放射エネルギーが透過される光学的スイッチ素子の明るい状態または開状態と、より小さい比率の放射エネルギーが透過される光学的スイッチ素子の暗い状態または閉状態との間で起こる。
【0125】
放射エネルギーは、上記のように定義され、UV−A領域、VIS領域および近赤外線領域における電磁放射を含むものと理解される。当然、スイッチ素子は、上記で定義した放射エネルギーの全スペクトルにわたって等しく有効ではない。好ましくは、スイッチ素子は、閉状態において高い比率のNIRおよびVIS光、特に好ましくは高い比率のNIR光を遮断する。
【0126】
また好ましいのは、VISまたはNIRの範囲の一方のみにおいて切り替えられるスイッチ素子、ならびに一方の範囲において切り替え、他方を永久に遮断する、例えばVISを切り替え、NIRを永久に遮断する組み合わせである。
【0127】
本発明の好ましい態様において、切り替えを、液晶媒体の物理的状態の変化によって行う。液晶媒体の物理的状態のこの変化は、温度依存性である。好ましくは、それは相転移である。本発明の特に好ましい態様において、切り替えを、特定の温度で起こる液晶相からアイソトロピック相への液晶媒体の相転移によって行う。尚より好ましくは、切り替えを、ネマチック相からアイソトロピック相への液晶媒体の相転移によって行う。
【0128】
典型的には、液晶媒体は、相転移温度より高い温度においてアイソトロピック状態にあり、相転移温度より低い温度において液晶、好ましくはネマチック状態にある。
デバイスの切り替えが、液晶媒体の物理的状態の温度依存性変化によるので、液晶媒体は、光学的スイッチの熱応答性素子を表す。しかしながら、さらなる熱応答性素子が、存在してもよい。
【0129】
内部空間と環境との間の、好ましくは建物の室内と外部との間の放射エネルギー流れを調節するための光学的スイッチの使用のために、建物の外部について典型的である温度でスイッチが動作することが望ましい。好ましくは、光学的スイッチの切り替え温度は、−20〜80℃、より好ましくは10〜60℃および最も好ましくは20〜50℃である。
【0130】
切り替え温度を、光学的スイッチの温度であると定義する。典型的には、この温度は、外気温度に類似する。しかしながら、いくつかの条件の下で、例えば日光への直接的な露光の下で、それは、外気温度と著しく異なり得る。また、あるデバイス組立の場合において、例えば光学的スイッチが絶縁されたガラスユニットの内部に位置する場合には、光学的スイッチの温度は、外気温度と著しく異なり得る。
【0131】
本発明の好ましい態様において、上記で述べたように、光学的スイッチの切り替えを、液晶媒体の物理的状態の変化によって行う。より好ましくは、物理的状態のこの変化は、ある相転移温度で起こる相転移を表す。好ましくは、相転移温度は、−20〜80℃、より好ましくは10〜60℃および最も好ましくは20〜50℃である。
【0132】
本発明の高度に好ましい態様において、偏光した光の偏光面は、液晶媒体が液晶状態にある場合には、液晶媒体によって定義された値によって回転する。対照的に、偏光した光の偏光面は、液晶媒体がアイソトロピック状態にある場合には、液晶媒体によって回転しない。偏光子の偏光の方向が互いに同一ではなく、定義された角度によって互いに対して回転することは、この好ましい態様のさらなる観点である。
【0133】
この好ましい態様において、デバイスの2つの状態を、以下のように特徴づけする:
明るい状態または開状態において、入射光は、第1の偏光子によって直線的に偏光する。直線偏光は、次にその液晶状態にある液晶媒体を通過し、それによって、その偏光の方向が定義された角度によって回転するに至る。
【0134】
液晶媒体を通過した後に、直線偏光は、次に第2の偏光子に当たる。偏光子に当たる光の定義された部分は、偏光子を透過する。好ましくは、2つの偏光子の偏光面が互いに対して回転する値と、偏光した光の偏光面がそのネマチック状態にある液晶媒体によって回転する値との同一性または比較的小さい相違のみ、最も好ましくは同一性がある。
【0135】
ここで、偏光した光の偏光面が液晶媒体によって回転する値は、媒体に進入する前の偏光面と媒体から進出した後の偏光面の間で形成される角度であるものと理解される。この角度は、原則的に0°〜180°であり得る。これにしたがい、180°より大きい角度Xによる回転は、X引くn
*180°による回転に等しく、整数nは、得られた角度X’が0°≦X’>180°の範囲内にあるように選択される。
【0136】
しかしながら、液晶媒体が、180°より大きい絶対値を有する、それを通過する偏光した光の偏光面のねじれを生じ得ることに注意するべきである。1回の完全な回転(360°)より多い回転、例えば2と1/4回転または3と3/4回転さえも、本発明において生じ得る。しかしながら、偏光した光の偏光面が液晶媒体への進入から進出までに回転する正味の値は、尚いずれの場合においても、上記で説明したように0°〜180°である。
【0137】
明らかに、使用する基準系に依存して、偏光面が回転する角度をまた、−90°〜90°の範囲内であり、負の値が右回転を意味し、正の値が左回転を意味することとして表すことができる。
【0138】
明るい状態において、2つの偏光子の偏光面が互いに対して回転する値と、偏光した光の偏光面が液晶媒体によって回転する値との間の小さい相違により、第1の偏光子を通過した光の大部分はまた、第2の偏光子を通過する。
【0139】
上記の明るい状態が生じるために、液晶媒体がその液晶状態にあることが、必要である。典型的には、これは、相転移温度より低い温度における場合である。したがって、この好ましい態様において、光学的スイッチ素子は、それが切り替え温度より低い温度にある場合には明るい状態にある。
【0140】
暗い透明状態または閉状態が生じるために、液晶媒体がアイソトロピック状態にあることが、必要である。この場合において、入射光は、再び第1の偏光子によって直線的に偏光する。偏光した光は、次にそのアイソトロピック状態にある液晶媒体を通過する。アイソトロピック状態にある液晶媒体は、直線偏光した光の偏光の方向を回転させない。
【0141】
液晶媒体を通過した後に、その偏光の方向が維持された直線偏光は、第2の偏光子に当たる。第2の偏光子の偏光の方向は、上記で記載したように第1の偏光子の偏光の方向に対して回転し、それは、この場合において、上記で説明したように、また第2の偏光子に当たる直線偏光した光の偏光の方向である。
【0142】
一致しないが、2つの偏光子が互いに対して回転する値と同一である定義された値によって互いに対して回転する、偏光した光および偏光子の偏光の方向により、光のごく一部のみが、ここで透過する。この状態において透過する光の量は、明るい状態において透過する光の量より少ない。
【0143】
上記で記載したように、暗い状態または閉状態において、液晶媒体は、そのアイソトロピック状態にある。典型的には、これは、相転移温度より高い温度における場合である。したがって、この好ましい態様において、光学的スイッチ素子は、それが切り替え温度より高い温度にある場合には暗い状態または閉状態にある。
【0144】
2つの偏光子の偏光の方向を、暗い透明状態にあるスイッチ素子の所望の透過に依存して、互いに関してあらゆる任意の値によって回転させてもよい。好ましい値は、45°〜135°、より好ましくは70°〜110°、最も好ましくは80°〜100°の範囲内にある。
【0145】
そのネマチック状態にある液晶媒体が偏光した光の偏光面を回転させる値は、2つの偏光子の偏光の方向が互いに関して回転する値と同一である必要はない。好ましくは、当該値は類似しており、好ましい偏差は、極めて好ましくは30°より小さく、最も好ましくは20°より小さい。
【0146】
そのネマチック状態にある液晶媒体が偏光した光の偏光面を回転させる値は、好ましくは0°〜360°の範囲内にある。しかしながら、360°より大きい値もまた、本発明において存在し得る。
【0147】
建物の内部の温度を調節する目的のために、上記で記載した組立が、一般的に好ましい。低温において、光学的スイッチが開状態にあるので、放射エネルギー流れが可能になる。これによって、建物の熱吸収の増大がもたらされ、暖房コストが低減される。高温において、光学的スイッチは閉状態にあり、放射エネルギーの建物中への流れが制限される。これによって、高温における所望されない熱吸収が減少し、空調のためのコストが低下する。
【0148】
2つの偏光子が互いに対して相殺される角度に依存して、およびまた偏光子が入射光の全部を偏光させるのか、またはその一部のみを偏光させるかに依存して、より多い、またはより少ない光が、閉状態にある光学的スイッチを通過して透過される。「交差した」位置(互いに対して90°によって回転した偏光の方向)にある完全な偏光子では、光は、閉状態において透過されない。偏光子の偏光の方向が90°とは異なる角度によって回転する場合には、いくらかの光が、閉状態においても透過される。そのような配置は、本発明において望ましい。
【0149】
同様に、開状態にある光学的スイッチを通過して透過される光の量は、他の要因の中でも、偏光子の効率および、液晶媒体が直線偏光した光の偏光の方向を回転させる角度と、2つの偏光子の偏光の方向が互いに対して回転する角度との間の差異に依存する。完全な偏光子および回転の角度の正確な一致と共に、50%までの光が、開状態にあるデバイスを通過して透過され、理想的には、0%の光が、閉状態において透過される。
【0150】
光の50%の排除は、完全な直線偏光子が入射する偏光していない光の50%を(吸収または反射によって)排除するという事実による。デバイスを通過しての光の透過を、したがって、完全でない偏光子を使用する場合に著しく高めることができ、それは望ましい場合がある。
【0151】
ここで、偏光子配向および液晶媒体による偏光の方向の回転の多数の他の組み合わせを、本発明に従って使用することができることを、述べるべきである。
【0152】
本発明の他の態様は、それが第1の温度範囲内にある場合には光を散乱し、第2の温度範囲内では透明であり、一方この第2の温度範囲が、第1の温度範囲より高いかまたは低い場合がある液晶媒体を含む。本発明の他の態様において、液晶媒体は、円偏光した光の偏光状態に影響し得る。
【0153】
本発明のさらなる態様において、液晶媒体は、1種または2種以上の液晶化合物に加えて染料分子または吸収特性もしくは反射特性を示す他の物質を含む、ゲスト−ホスト系を表す。この態様において、液晶媒体は、液晶状態(低温)にある場合には染料分子に配向を供給するが、アイソトロピック状態(高温)にある場合にはそのような配向を供給しない。
【0154】
染料分子がそれらの配向の程度に依存して異なる方式で光と相互作用するので、ゲスト−ホスト系は、温度依存性の透過特性を示す。本発明において、液晶媒体がゲスト−ホスト系を表す場合には、本発明のデバイスにおいて、偏光子を1つのみ使用するか、またはさらに偏光子を全く使用しないことが、好ましい場合がある。さらに、本発明において、液晶媒体がゲスト−ホスト系を表す場合には、液晶媒体のねじれネマチック配向または液晶媒体の垂直に整列した配向を、好ましくは使用する。
【0155】
本発明の好ましい態様において、液晶状態にある液晶媒体による偏光した光の回転は、液晶媒体の分子の整列によって生じる。本発明において、この整列を、典型的には液晶媒体と直接接触した整列層によってもたらす。優先的に、整列層は、液晶媒体層の2つの外部の境界を表す。例えば、互いに面している2つの整列層を、液晶媒体を包囲する区画の内部に取り付けてもよい。他の好ましい態様において、整列層は、液晶媒体を包囲する区画を構成する。整列層を、ポリマーまたはポリマーフィルムをラビング布、紙やすりまたはある他の好適な材料でラビングすることにより製造してもよい。ポリイミドフィルムは、これに特に適しているが、配向は、他の種類のポリマー上でも達成され得る。
【0156】
さらなる好ましい態様において、整列層および偏光子層は、離れておらず、1つの単一の層を形成する。それらを、例えば一緒に接着させるかまたは積層させてもよい。液晶分子の整列を誘発する特性を、例えば偏光子層をラビングし、スクラッチし、かつ/またはマイクロパターン化することにより、偏光子に付与してもよい。詳細については、特許出願US 2010/0045924を参照し、その開示は、参照によって本明細書中に組込まれる。
【0157】
本発明の光学的スイッチ素子の好ましい態様は、液晶媒体を透明な材料のコンテナー、好ましくは透明なポリマーまたはガラス内に含む。
【0158】
さらに、光学的スイッチ素子は、液晶媒体と直接接触する、2つまたは3つ以上の整列層を含む。例えば、整列層を、前述のコンテナーの内面に取り付けることができる。他の好ましい態様において、内部のコンテナー表面は、整列層自体としての役割を果たすことができる。さらに、光学的スイッチ素子は、上記で開示したように、偏光箔の形態で存在し得る2つまたは3つ以上の偏光子を含む。さらなる剛性であるかまたは柔軟な層、例えば追加のガラスシート、バンドブロックフィルター、例えばUV遮断フィルムおよび/または絶縁層、例えば低放射率フィルムが、存在してもよい。本発明のこの態様において、剛性材料の層の存在により、光学的スイッチ素子は剛性であり、保存および/または輸送のために曲げるかまたは丸めることができない。
【0159】
本発明の他の好ましい態様において、液晶媒体を、柔軟なポリマーシートによって包囲する。この柔軟なポリマーシートは、偏光子および/または整列層を表し得る。例えば上記で記載したような、さらなる層が、さらに存在してもよい。詳細については、特許出願US 2010/0045924を参照し、その開示は、参照によって本明細書中に組込まれる。この態様において、光学的スイッチ素子は柔軟であり、曲げること、および/または丸めることができる。
【0160】
本発明の他の好ましい態様において、液晶媒体は、固体の、またはゲル様のコンシステンシーを有する。この態様において、液晶媒体のための硬質のコンテナーは、必要ではなく、ガラスおよび/または剛性のポリマーシートが光学的スイッチ素子中に存在する必要性が解消される。本発明のこの態様の利点は、光学的スイッチ素子が損傷を受けにくいこと、丸めることができる薄い柔軟なシートの形態で製造することができることである。光学的スイッチ素子を、次にこのロールから任意の形状または大きさにおいて切断することができ、それによってデバイスの保存、輸送および製造が単純化される。
【0161】
液晶媒体の前述の固体の、またはゲル様のコンシステンシーを得るために、以下の手順を、本発明において使用することができる。
【0162】
液晶媒体を、例えば別個の区画、例えば液晶媒体の微液滴の形態で、光学的に透明な媒体内に埋め込んでもよい。光学的に透明な媒体は、好ましくはポリマー材料、特に好ましくはアイソトロピックな熱可塑性、デュロプラスチック(duroplastic)またはエラストマーポリマーである。特に好ましくは、ポリマー材料は、熱可塑性またはエラストマーポリマーである。
【0163】
このための例は、NCAPフィルム(NCAP=ネマチック曲線整列相)およびPDLCフィルム(PDLC=ポリマー分散液晶)である。NCAPフィルムを、カプセル封入ポリマー材料、例えばポリビニルアルコール、液晶媒体、および水などの担体材料をコロイドミル中で十分に混合するプロセスによって得ることができる。その後、担体材料を、例えば蒸発によって除去する。NCAPフィルムの形成のための詳細な手順は、US 4,435,047に記載されている。
【0164】
例えばUS 4,688,900;WO 89/06264;EP 0272585およびMol. Cryst. Liq. Cryst. Nonlin. Optic, 157, (1988), 427 - 441に記載されているPDLCフィルムを、液晶媒体をモノマーおよび/またはオリゴマーと均質に混合し、それを後にポリマーマトリックスと反応させることにより得ることができる。重合後に、相分離が誘発され、ここで液晶媒体の区画または微液滴が生成し、それをポリマーマトリックス内に分散させる。
【0165】
本発明の他の態様において、液晶媒体は、連続相として高分子網目(PN系)内に存在する。そのような系は、例えばEP 452460、EP 313053およびEP 359146に詳細に記載されている。高分子網目は、典型的には多孔質構造を有し、ここで液晶媒体は、自由に浮遊することができる。好ましい態様において、それを、モノまたはポリアクリレートモノマーの重合によって生成する。
【0166】
好ましくは、液晶媒体は、PN系中に60%より高い割合で、特に好ましくは70〜95%の割合で存在する。高分子網目系を、液晶媒体ならびに三次元高分子網目を形成するそれぞれのモノマーおよび/またはオリゴマーを含む混合物中での重合反応を誘発することにより製造することができる。好ましい態様において、重合を、光開始によって開始する。
【0167】
本発明の他の態様において、ポリマーは、網目を形成せず、PN網目系におけるような連続相として存在する液晶媒体内に小粒子の形態で分散する。
本発明の液晶媒体は、前述のPDLC-、NCAP-およびPN-系において使用するのに特に適している。
したがって、本発明のさらなる主題は、上記で定義した液晶媒体およびポリマー、好ましくは微孔性ポリマーを含む複合系である。
【0168】
本発明において、光学的スイッチ素子を、私有の、公共の、および商業ビル中に、輸送、保存および居住のためのコンテナー中に、ならびにあらゆる車両中に存在するものを含む、あらゆる種類の透明な窓、ファサード、ドアまたは屋根に取り付けることができる。特に好ましいのは、絶縁ガラスユニット(IGU)もしくは多重枠窓への取り付けおよび/または絶縁ガラスユニットもしくは多重枠窓の集積素子としての使用である。本発明の好ましい態様において、光学的スイッチ素子を、窓、ファサード、ドアまたは屋根の外部に面する側に取り付ける。他の好ましい態様において、光学的スイッチ素子を、IGUの内側に配置し、ここでそれを、悪影響、例えば極端な天候条件から、およびUV露光による劣化から保護する。代替の態様において、光学的スイッチ素子を、窓、ファサード、ドアまたは屋根の内部に面する側に取り付ける。
【0169】
本発明の1つの態様において、光学的スイッチ素子は、窓の表面の全面を覆う。この場合において、放射エネルギー流れに対するデバイスの切り替えによる制御は、最大化される。
【0170】
本発明の他の態様において、光学的スイッチ素子は、窓の表面の一部のみを覆い、したがって光学的スイッチ素子によって覆われない残留したすき間がある。これらのすき間は、縞、小領域および/またはより大きい領域の形態を採り得る。これによって、窓のいくつかの部分を明るい状態と暗い状態との間で切り替え、一方他の部分を常に明るく維持することが可能になり得る。これによって、特に閉状態における窓の透明性が増大するに至る。
【0171】
光学的スイッチ素子を、本発明において、内部空間と環境との間の放射エネルギー流れを調節するために使用してもよい。特に好ましくは、それを、VIS光およびNIR光、またはVIS光のみ、または調節されたVIS光と永久に遮断されたNIR光との組み合わせの形態におけるエネルギー流れを調節するために使用する。光学的スイッチ素子が、手動での制御を必要とせずに、開状態と閉状態との間の温度依存性の切り替えのその能力によって、放射エネルギー流れを自動的に調節するのが、さらに好ましい。本発明の特に好ましい態様において、光学的スイッチ素子を使用して、建物および/または車両の内部温度を調節する。
【0172】
本発明の目的のために、すべての濃度を、他に明確に注記しない限り、質量パーセントにおいて示し、他に明確に注記しない限り、対応する混合物または混合物成分に関する。
液晶混合物の透明点を、毛管中で決定する。好適な機器は、Mettler Toledo FP90である。典型的には、液晶混合物は、透明範囲を示す。本発明者らの定義において、透明点は、材料全体が尚ネマチックである当該範囲の最低の温度である。
【0173】
あるいはまた、ディスプレイ中の混合物の透明点を、通常は白色モードのTNセルにおいて、顕微鏡ホットステージ中で決定することができる。ネマチック状態からアイソトロピック状態への転移の開始によって、TNセル中の黒色小領域がもたらされる。加熱した際に、そのような小領域が最初に生じる温度を、透明点であると決定する。
【0174】
本発明における適用に、ディスプレイにおける液晶媒体の長期間保存挙動が関連する。ディスプレイにおける長期間保存挙動の決定のために、液晶混合物を、5〜6μmの厚さを有するいくつかのTNセル中に満たす。TNセルは、末端シール(end-seal)を受け、偏光子を通常の白色モード組立のために取り付けられ、冷蔵庫中で所与の温度で1000時間まで保存する。定義した時間間隔において、TNセルを、結晶またはスメクチック−ネマチック転移を示す暗い小領域について視覚的に検査する。TNセルが試験期間の終了時に小領域を示さない場合には、試験を通過する。他の場合には、最初の小領域が検出されるまでに経過した時間を、長期間保存安定性の評価基準として記録する。
【0175】
本出願において、および特に以下の例において、液晶化合物の構造を、略語によって表し、それをまた、「頭字語」と称する。表A〜Cは、化合物の構造的要素をそれらの対応する略語と一緒に示す。
【0176】
すべての基C
nH
2n+1、C
mH
2m+1、C
pH
2p+1およびC
kH
2k+1は、好ましくは、それぞれn、m、pおよびk個のC原子を有する直鎖状アルキル基である。すべての基C
nH
2n、C
mH
2m、C
pH
2pおよびC
kH
2kは、好ましくは、それぞれ(CH
2)
n、(CH
2)
m、(CH
2)
pおよび(CH
2)
kであり;−CH=CH−は、好ましくは、それぞれトランス−Eビニレンである。指数n、m、pおよびkは、好ましくは1〜10の値を有する。
【0177】
注:化学構造において左側から右側まで、使用した指数は、1つのみの指数が出現する場合にはn;2つの指数が出現する場合にはnおよびm;3つの指数が出現する場合にはn、mおよびp;また4つの指数が出現する場合にはn、m、pおよびkである。この命名法を、所要に応じて拡張してもよい。
【0178】
したがって、頭字語命名法(以下を参照)による−nに対応する右側のアルキル基−C
nH
2n+1はまた、選択した指数に依存して−mに対応する基−C
mH
2m+1、または−pに対応する基−C
pH
2p+1、または−kに対応する基−C
kH
2k+1であり得る。同一のことが、表Cのすべての他の基に該当し、ここで文字nを使用し、n個の炭素原子および2n+1個の水素原子を有するアルキル基またはn個の炭素原子および2n個の水素原子を有するアルキレン基を表す。
【0179】
表Aは、環要素のために使用した記号を列挙し、表Bは、結合基のためのものを列挙し、表Cは、分子の左側および右側末端基についての記号のためのものを列挙する。
【0184】
【表5】
ここで、nおよびmは、各々整数であり、3つの点「...」は、この表の他の記号が当該位置において存在し得ることを示す。
【0196】
表D2:さらなる例示的な構造
【化82】
【0201】
表Eは、キラルなドーパントを列挙し、それを、好ましくは本発明の液晶媒体において使用する。
表E
【化87】
【0204】
本発明の好ましい態様において、本発明の媒体は、表Eの化合物の群から選択された1種または2種以上の化合物を含む。
表Fは、本発明の液晶媒体において好ましく使用する安定剤を列挙する。
【0205】
表F
注:この表において、「n」は、1〜12の範囲内の整数を意味する。
【化90】
【0211】
本発明の好ましい態様において、本発明の媒体は、表Fの化合物の群から選択された1種または2種以上の化合物を含む。
【0212】
例
以下の例示的な液晶混合物を、本発明を例示する目的のために列挙し、いかなる方法においてもそれを限定するものと理解するべきではない。
【0213】
液晶混合物の組成を、それらの透明点およびそれらの長期保存挙動と一緒に以下に列挙する。当業者は、以下に示したデータから、いずれの特性を本発明の混合物で得ることができるかを知る。当該当業者はさらに、いかにして混合物の組成を修正して、所望の特性、特に透明点の定義された温度および高い長期間安定性を得ることができるかを教示される。
【0214】
以下の表に列挙した組成を有する液晶混合物を製造し、それらの透明点および長期間保存挙動を、決定する。
【0215】
本出願の記載の部において述べたように、本発明の液晶媒体の透明点は、好ましくは−20〜80℃、より好ましくは10〜60℃および最も好ましくは20〜50℃である。
比較的高い透明点(>70℃、特に>80℃)を有する例示的な混合物を、好ましくはいわゆる2本ビン系(two-bottle system)として、より低い透明点を有する混合物と組み合わせて使用する。
【0216】
1)好ましい液晶媒体Iについての例
【表6】
【0219】
2)好ましい液晶媒体IIについての例
【表9】
【0221】
3)好ましい液晶媒体IIIについての例
【表11】
【0223】
4)好ましい液晶媒体IVについての例
【表13】
【0225】
5)熱応答性光学的スイッチ素子における液晶媒体の使用
本発明の混合物1〜18を、US 2009/0015902の手順に従って、光学的スイッチ素子において液晶媒体として使用する。
【0226】
光学的スイッチ素子を組み立てるために、当該出願に開示されている混合物(5部の6CB(4’−ヘキシル−4−シアノビフェニル)、1.25部の混合物E7および0.008部の811)の代わりに本発明の例示的な混合物の1種を使用した(例1〜18)以外は、上述の特許出願のパラグラフ[0050]〜[0055]に記載されている手順を繰り返す。
【0227】
本発明の混合物を使用して、長い稼働寿命を有するサーモトロピック光学的スイッチ素子を、得ることができる。スイッチ素子は、混合物の透明点(10℃〜80℃、それは当該素子の好ましい動作範囲内にある)に近似している切り替え温度を有する。
これは、高いデバイス安定性、これと共に制御可能な透明点を本発明の混合物で得ることができることを示す。