【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 一般社団法人 映像情報メディア学会、映像情報メディア学会 2013年年次大会講演予稿集、平成25年8月7日
【文献】
牧野 真緒,複数視差を持つ大型裸眼立体ディスプレイにおけるコンテンツ制作の指針,映像情報メディア学会技術報告 Vol.35 No.22,日本,(社)映像情報メディア学会,2011年 6月 9日,3DIT2011-62, IDY2011-28,P.45-48,ISSN 1342-6893
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記奥行再現範囲算出部は、前記奥行再現範囲における前側最大奥行知覚位置を、前記仮想カメラアレイ情報記憶部に記憶された前記奥行知覚情報に基づいてさらに算出し、
前記仮想配置であるとして、前記仮想撮像レンズの位置から前記奥行再現範囲算出部が算出した前記前側最大奥行知覚位置までに存在する被写体による第3の要素画像を、前記被写体情報記憶部に記憶された被写体情報と前記仮想カメラアレイ情報記憶部に記憶された第1のカメラ情報とに基づいて算出する前側算出部と、
前記仮想配置であるとして、前記前側最大奥行知覚位置よりも前側に存在する被写体の第4の要素画像を、前記被写体情報記憶部に記憶された被写体情報と前記仮想カメラアレイ情報記憶部に記憶された単眼カメラ情報と第1のカメラ情報とに基づいて算出する最大前側算出部と、
前記前側算出部が算出した前記第3の要素画像と、前記最大前側算出部が算出した前記第4の要素画像とを合成する前側合成部と、
前記奥側合成部が合成して得た要素画像と前記前側合成部が合成して得た要素画像とを合成する合成部と、
をさらに備える請求項1記載の画像生成装置。
仮想空間における被写体の位置および形状を表す被写体情報を記憶する被写体情報記憶部と、前記仮想空間における仮想カメラアレイの第1の位置を表す第1のカメラ情報と前記仮想空間において前記仮想カメラアレイよりも前に設けられる仮想単眼カメラの位置を表す単眼カメラ情報とインテグラルフォトグラフィ立体像の奥行きに対する知覚の度合を表す奥行知覚情報とを記憶する仮想カメラアレイ情報記憶部と、を備えたコンピュータを、
前記被写体の三次元情報を再現する奥行再現範囲における奥側最大奥行知覚位置を、前記仮想カメラアレイ情報記憶部に記憶された前記奥行知覚情報に基づいて算出する奥行再現範囲算出部、
前記インテグラルフォトグラフィ立体映像表示装置のレンズアレイの各レンズに対応した位置に仮想撮像レンズが配置され、前記仮想撮像レンズの奥側に仮想撮像面が配置された仮想配置であるとして、前記仮想撮像面の位置から前記奥行再現範囲算出部が算出した前記奥側最大奥行知覚位置までに存在する被写体による第1の要素画像を、前記被写体情報記憶部に記憶された被写体情報と前記仮想カメラアレイ情報記憶部に記憶された第1のカメラ情報とに基づいて算出する奥側算出部、
前記仮想配置であるとして、前記奥側最大奥行知覚位置よりも奥側に存在する被写体の第2の要素画像を、前記被写体情報記憶部に記憶された被写体情報と前記仮想カメラアレイ情報記憶部に記憶された単眼カメラ情報と第1のカメラ情報とに基づいて算出する最大奥側算出部、
前記奥側算出部が算出した前記第1の要素画像と、前記最大奥側算出部が算出した前記第2の要素画像とを合成する奥側合成部、
として機能させるための画像生成プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
テレビ等、映像が表示される表示画面を観視する観視者が奥行きを知覚する生理的要因は、主に、調節、輻輳、両眼視差である。一方、インテグラルフォトグラフィ(Integral Photography;IP)表示装置が十分な解像度を有していない場合、表示装置の表示面(レンズアレイの焦平面)から光軸方向に離れるにしたがってIP立体像の解像度および鮮鋭度は低下する。まず、この現象について説明する。
【0012】
図1は、IP立体像の奥行きに対する鮮鋭度および解像度を示すグラフである。具体的に、同図のグラフは、458(dot per inch;dpi)の解像度を有する液晶ディスプレイ装置にレンズアレイを組み合わせたIP立体像表示装置を液晶ディスプレイ装置の表示面から60cm離れた場所から観視した場合の、主観評価によるIP立体像の鮮鋭度、および計算上の限界解像度を示している。同図のグラフにおいて、横軸は、表示面を基準にしたIP立体像の提示位置を示す。横軸における負方向が観視者から見た場合の後方であり、正方向が前方である。同図のグラフにおいて、左側の縦軸は、“0”から“1”までの値に正規化された鮮鋭度の評価値である。また、同図のグラフにおいて、右側の縦軸は、IP立体像の空間周波数(cycle per degree;cpd)である。同図のグラフにおいて、“○”マーカは、表示面に対して後方18cmから前方18cmまで3cmごとにIP立体像を提示した場合の鮮鋭度の評価値である。また、破線は、IP方式における解像度特性である。
【0013】
図1のグラフから明らかなように、鮮鋭度の評価結果は、IP方式における解像度特性と同様に、表示面から離れるにしたがって低下する。すなわち、観視者は、表示面から離れたIP立体像を、解像度が低下したぼやけた立体像として知覚する。
【0014】
また、例えば視距離10m以下の観視条件では、両眼視差による奥行知覚が最大の生理的要因となる。すなわち、両眼視差を含めた奥行知覚の生理的要因によって奥行きが知覚されない距離に提示される立体像を二次元像に置き換えても、観視者は置き換える前と同程度の奥行感を得るものといえる。
【0015】
図2は、IP立体像の奥行きに対する奥行知覚を示すグラフである。具体的に、同図のグラフは、458(dpi)、229(dpi)、および153(dpi)の解像度を有する液晶ディスプレイ装置それぞれに同一仕様のレンズアレイを組み合わせたIP立体像表示装置を液晶ディスプレイ装置の表示面から60cm離れた場所から観視した場合の、主観評価によるIP立体像の奥行知覚を示している。同図のグラフにおいて、横軸は、
図1と同様に、表示面を基準にしたIP立体像の提示位置を示す。
図2のグラフにおいて、縦軸は、“−1”から“1”までの値に正規化された奥行知覚の評価値である。同図のグラフにおいて、“○”マーカは、解像度が458(dpi)である液晶ディスプレイ装置の表示面に対して後方18cmから前方18cmまで3cmごとにIP立体像を提示した場合の奥行知覚の評価値である。また、“△”マーカは、液晶ディスプレイ装置の解像度が229(dpi)である場合の奥行知覚の評価値である。また、“×”マーカは、液晶ディスプレイ装置の解像度が153(dpi)である場合の奥行知覚の評価値である。
【0016】
図2のグラフによれば、いずれの解像度においても、IP立体像の提示位置が表示面から離れるにしたがって奥行知覚の変化率が概ね小さくなる。言い換えると、表示装置の解像度によらず、IP立体像の提示位置が表示面から離れるにしたがって、観視者が知覚する奥行感が弱まる傾向にある。また、任意の提示位置における奥行知覚は、解像度が高いほど大きい(奥行感が強い)といえる。
【0017】
図2のグラフにおいて、IP立体像の奥行きの知覚可能範囲(奥行知覚可能範囲)を、危険率5%の有意差検定により求めると、解像度458(dpi)では表示面後方15cmから表示面前方15cmまで、解像度229(dpi)では表示面後方12cmから表示面前方12cmまで、解像度153(dpi)では表示面後方12cmから表示面前方6cmまでとなる。すなわち、解像度が高くなるにしたがって、奥行き知覚可能範囲は広くなるという結果が得られる。
【0018】
図1および
図2によれば、画質(例えば、鮮鋭度)はIP立体像の提示位置に応じて変化するが、奥行知覚はある一定の奥行位置に達するまでに徐々に飽和する傾向がある。また、表示装置の解像度が低いほど奥行き知覚が飽和する奥行距離が短いことがわかる。すなわち、IP立体像の提示位置が表示面から離れた場合、画質の低下は知覚され易いが奥行位置の変化は知覚され難い。
【0019】
そこで、第1実施形態では、奥行きが知覚されなくなる位置を最大奥行知覚位置とし、この位置よりも知覚されない方の位置にある被写体を最大奥行知覚位置において二次元像として表示することにより、奥行きが知覚されない場所にある被写体に対する主観的な(見かけ上の)画質の改善をはかる。
【0020】
図3は、第1の実施形態である画像生成装置を適用したIP立体映像表示システムの概略の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、IP立体映像表示システム1は、画像生成装置10と、IP立体映像表示装置20とを含む。IP立体映像表示装置20は、IP立体映像を表示する表示装置である。画像生成装置10は、IP立体映像表示装置20用のコンピュータグラフィックス(Computer Graphics;CG)による要素画像群を生成し、この要素画像群を時系列に並べて得られるIP映像信号をIP立体映像表示装置20に入力する。
【0021】
画像生成装置10は、仮想カメラアレイ情報記憶部101と、被写体情報記憶部102と、奥行再現範囲算出部103と、奥側算出部104と、最大奥側算出部105と、前側算出部106と、最大前側算出部107と、奥側合成部108と、前側合成部109と、合成部110と、映像信号生成部111とを備える。
【0022】
仮想カメラアレイ情報記憶部101は、仮想空間における第1の仮想カメラアレイの第1の位置を表す第1のカメラ情報と、この仮想空間において第1の仮想カメラアレイよりも前に設けられる仮想単眼カメラの位置を表す単眼カメラ情報とを記憶する。第1の実施形態において、第1のカメラ情報は、第1の仮想カメラアレイにおける各仮想撮像レンズの主点の位置を表す情報と各主点に対応する仮想撮像面の位置を表す情報とを含む。また、単眼カメラ情報は、仮想単眼カメラにおける仮想単眼撮像レンズの主点の位置を表す情報とその主点に対応する仮想単眼撮像面の位置を表す情報とを含む。仮想カメラアレイ情報記憶部101が記憶する第1のカメラ情報が表す各仮想撮像レンズの主点の位置は、要素画像を算出するための仮想空間にIP立体映像表示装置20を配置したときに、IP立体映像表示装置20のレンズアレイを構成する各レンズの主点の位置に対応する。また、第1のカメラ情報が表す各仮想撮像面の位置は、仮想空間にIP立体映像表示装置20を配置したときに、IP立体映像表示装置20により要素画像が表示される表示面の位置に対応する。すなわち、仮想撮像面は、IP立体映像表示装置20のレンズアレイを構成するレンズの焦点距離だけ、仮想撮像レンズから離れた場所に位置する。なお、仮想レンズの主点の位置および仮想撮像面の位置は、仮想空間における時間の経過とともに変化してもよい。
【0023】
また、仮想カメラアレイ情報記憶部101は、IP立体像の奥行きに対する知覚(奥行知覚)の度合を表す奥行知覚情報を記憶する。具体的に、仮想カメラアレイ情報記憶部101は、IP立体映像表示装置20の解像度に応じた、IP立体像の表示面からの奥行距離に対する奥行知覚の評価値(例えば、
図2に示したグラフデータ)を記憶する。
【0024】
被写体情報記憶部102は、例えば、仮想空間における被写体の位置、形状、色、輝度、光学的な特性を表す情報を記憶する。例えば、被写体の仮想空間における位置および形状として、ポリゴンや自由曲面を用いてもよいし、CAD(Computer Assisted Drafting)データを用いてもよいし、その他の形式で表してもよい。なお、被写体の仮想空間における位置、形状、色、輝度、光学的な特性は、仮想空間における時間の経過とともに変化してもよい。
【0025】
奥行再現範囲算出部103は、仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された奥行知覚情報に基づいて、被写体の三次元情報を再現する奥行再現範囲を算出する。具体的に、奥行再現範囲算出部103は、奥行知覚情報に基づいて、奥行方向の前側最大奥行知覚位置および奥側最大奥行知覚位置を算出する。前側最大奥行知覚位置は、第1の仮想カメラアレイの各仮想撮像レンズよりも手前側に位置する奥行再現範囲の限界位置である。奥側最大奥行知覚位置は、第1の仮想カメラアレイの各仮想撮像面よりも奥側に位置する奥行再現範囲の限界位置である。より具体的に、例えば、奥行再現範囲算出部103は、仮想カメラアレイ情報記憶部101から奥行知覚情報を読み込み、この奥行知覚情報に基づく奥行知覚可能範囲を危険度5%の有意差検定により計算し、前側最大奥行知覚位置および奥側最大奥行知覚位置を得る。奥行再現範囲算出部103は、奥側最大奥行知覚位置を示す情報を奥側算出部104および最大奥側算出部105に供給する。また、奥行再現範囲算出部103は、前側最大奥行知覚位置を示す情報を前側算出部106および最大前側算出部107に供給する。
【0026】
前側算出部106は、奥行再現範囲算出部103が供給する前側最大奥行知覚位置を示す情報を取り込み、仮想撮像レンズの位置から前側最大奥行知覚位置までに存在する被写体による前側要素画像(第3の要素画像)を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された第1のカメラ情報とに基づいて算出する。前側要素画像は、第1の仮想カメラの仮想撮像レンズよりも前側、且つ前側最大奥行知覚位置よりも奥側に位置する被写体による要素画像である。前側算出部106は、前側要素画像の各画素の画素値を、仮想撮像面における当該画素と仮想撮像レンズの主点とを通る直線が、その仮想撮像レンズの主点より手前側で被写体と交差する点のうち、当該仮想撮像レンズの主点から最も遠い点に関する情報を参照して算出する。これは、通常の陰面処理とは逆の処理となる。第1の実施形態では、最も遠い点に関する情報を参照して画素値を算出する方法の一例として、最も遠い点における被写体の色を、被写体情報記憶部12から読み出し、その色を表す値を画素値とする方法を用いる。前側算出部106は、1フレーム分の前側要素画像群を算出する。
【0027】
なお、前側算出部106は、上述のように、仮想撮像レンズの主点から最も遠い点の色を表す値を画素値とする際に、デプスマップ(Depth Map)を用いるようにしてもよい。まず、前側算出部106は、仮想撮像面あるいは仮想撮像レンズから無限遠の場合が“1.0”であり、仮想撮像面あるいは仮想撮像レンズに近づくにしたがって小さくなる値(ただし、“0”より大きい値)をデプス値として被写体の表面に対して割り当てておく。前側算出部106は、被写体の表面を走査して、その表面の色を表す画素値を、前側要素画像の各画素の画素値とする。
【0028】
通常の陰面処理では、デプス値を“1.0”に初期化しておき、画素値を取得した被写体のデプス値が、当該画素値を書き込むべき画素の、デプスマップにおけるデプス値よりも小さいときのみ、取得した画素値で更新する。しかし、第1の実施形態では、通常の陰面処理とは逆の処理を行うので、前側算出部106は、前側要素画像の各画素に対応するデプス値を有するデプスマップのデプス値を全て“0”に予め初期化しておく。そして、前側算出部106は、画素値を取得した被写体のデプス値が、当該画素値を書き込むべき画素の、デプスマップにおけるデプス値よりも大きいときのみ、前側要素画像における画素の画素値を取得した画素値で更新し、デプスマップにおける画素のデプス値を当該被写体のデプス値で更新する。
【0029】
最大前側算出部107は、奥行再現範囲算出部103が供給する前側最大奥行知覚位置を示す情報を取り込み、この前側最大奥行知覚位置よりも前側に存在する被写体の最大前側要素画像(第4の要素画像)を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された単眼カメラ情報と第1のカメラ情報とに基づいて算出する。最大前側算出部107は、1フレーム分の最大前側要素画像群を算出する。
【0030】
奥側算出部104は、奥行再現範囲算出部103が供給する奥側最大奥行知覚位置を示す情報を取り込み、仮想撮像面の位置から奥側最大奥行知覚位置までに存在する被写体による奥側要素画像(第1の要素画像)を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された第1のカメラ情報とに基づいて算出する。奥側要素画像は、第1の仮想カメラの仮想撮像面よりも奥側、且つ奥側最大奥行知覚位置よりも前側に位置する被写体による要素画像である。奥側算出部104は、仮想撮像面におけるある画素を通った後に、仮想撮像レンズの主点を通る光線を、公知の手法(例えば、レイトレーシング法、フォトンマッピング法)により算出し、当該光線の色を表す値を、要素画像における該画素の画素値とする。奥側算出部104は、1フレーム分の奥側要素画像群を算出する。
【0031】
最大奥側算出部105は、奥行再現範囲算出部103が供給する奥側最大奥行知覚位置を示す情報を取り込み、この奥側最大奥行知覚位置よりも奥側に存在する被写体の最大奥側要素画像(第2の要素画像)を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された単眼カメラ情報と第1のカメラ情報とに基づいて算出する。最大奥側算出部105は、1フレーム分の最大奥側要素画像群を算出する。
【0032】
前側合成部109は、前側算出部106が算出した前側要素画像に、最大前側算出部107が算出した最大前側要素画像を重ねて合成し、合成前側要素画像を生成する。前側合成部109は、1フレーム分の合成前側要素画像群を生成する。ただし、前側合成部109が前側要素画像に重ねる最大前側要素画像は、同じ仮想カメラに対応するものである。具体的に、前側合成部109は、最大前側要素画像において“0”でない画素値で前側要素画像を上書きする。
なお、前側合成部109は、最大前側要素画像において被写体が存在する領域の画素値が“1”であり、被写体が存在しない領域の画素値が“0”であるマスク画像を生成し、このマスク画像において画素値が“0”である画素の前側要素画像の画素値を、最大前側要素画像に上書きすることで要素画像を合成してもよい。
【0033】
奥側合成部108は、最大奥側算出部105が算出した最大奥側要素画像に、奥側算出部104が算出した奥側要素画像を重ねて合成し、合成奥側要素画像を生成する。奥側合成部108は、1フレーム分の合成奥側要素画像群を生成する。ただし、奥側合成部108が最大奥側要素画像に重ねる奥側要素画像は、同じ仮想カメラに対応するものである。具体的に、奥側合成部108は、奥側要素画像において“0”でない画素値で最大奥側要素画像を上書きする。
なお、奥側合成部108は、奥側要素画像において被写体が存在する領域の画素値が“1”であり、被写体が存在しない領域の画素値が“0”であるマスク画像を生成し、このマスク画像において画素値が“0”である画素の最大奥側要素画像の画素値を、奥側要素画像に上書きすることで要素画像を合成してもよい。
【0034】
合成部110は、奥側合成部108が合成して得た合成奥側要素画像に、前側合成部109が合成して得た合成前側要素画像を重ねて合成し、要素画像を生成する。合成部110は、1フレーム分の要素画像群を生成する。ただし、合成部110が合成奥側要素画像に重ねる合成前側要素画像は、同じ仮想カメラに対応するものである。具体的に、合成部110は、合成前側要素画像において“0”でない画素値で合成奥側要素画像を上書きする。
なお、合成部110は、合成前側要素画像において被写体が存在する領域の画素値が“1”であり、被写体が存在しない領域の画素値が“0”であるマスク画像を生成し、このマスク画像において画素値が“0”である画素の合成奥側要素画像の画素値を、合成前側要素画像に上書きすることで要素画像を合成してもよい。
【0035】
映像信号生成部111は、合成部110が生成した要素画像群を時系列に並べたIP映像信号を生成し、このIP映像信号をIP立体映像表示装置20に供給する。
【0036】
図4は、IP立体映像表示装置20の構成を示す分解模式図である。同図に示すように、IP立体映像表示装置20は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro−Luminescence)ディスプレイ等の画像表示デバイスである表示パネル210と、表示パネル210の前面に配置されるレンズアレイ220とを含む。表示パネル210は、IP立体映像表示装置20に入力されたIP映像信号にしたがって、要素画像21−1〜21−Nからなる要素画像群を表示する。
【0037】
レンズアレイ220は、要素画像21−1〜21−Nの各々に対応する凸レンズ22−1〜22−Nを含んで構成される。レンズアレイ220は、表示パネル210から凸レンズ22−1〜22−Nの焦点距離だけ離した前面に設置される。これにより、観視者からは、要素画像21−1〜21−Nそれぞれの、視点に応じた一部分のみが見えるようになる。
【0038】
なお、第1の実施形態では、凸レンズ22−1〜22−Nの配列および要素画像21−1〜21−Nの配列は、デルタ配置としたが、正方格子配置やこれ以外の配置としてもよい。また、IP立体映像表示装置20は、表示パネル210に代えて、それぞれが要素画像を投射する複数のプロジェクタおよび当該要素画像が投射されるスクリーンを備えるもの等、IP立体映像を表示するものであれば、その他の構成であってもよい。
【0039】
図5および
図6は、奥側算出部104および最大奥側算出部105の動作を説明する模式図である。
図5は、図中右手方向に向かってIP立体映像表示装置20が表示する要素画像を算出するための仮想空間の上面図である。被写体O(オー)1は、仮想撮像面P1よりも奥側、且つ奥側最大奥行知覚位置を含む仮想平面Kよりも手前にある。詳細には、被写体O1は、仮想撮像レンズの主点L1および仮想撮像面P1(第1の仮想カメラ)によって形成される第1の仮想撮像領域を、仮想平面Kで切った場合の奥側算出領域A内にある。奥側算出部104は、仮想撮像面P1における画素を通った後、仮想撮像レンズの主点L1を通る光を逆に追跡することによって被写体O1に対する奥側要素画像を算出する。
【0040】
被写体O(オー)2は、仮想平面Kよりも奥側、つまり、奥行再現範囲外にある。詳細には、被写体O2は、仮想撮像面P1を含む全ての仮想撮像面の最も外側の光線が対応する主点を通って交差する点に仮想単眼撮像レンズの主点L’を設けるとともに、その主点L’に対応する位置に仮想単眼撮像面P’を設けた場合に、仮想単眼撮像レンズの主点L’および仮想単眼撮像面P’によって形成される仮想単眼撮像領域のうち仮想平面Kよりも奥側の領域Bにある。第1の実施形態では、仮想単眼撮像レンズの主点L’および仮想単眼撮像面P’(仮想単眼カメラ)によって被写体O2を仮想的に撮像する。具体的に、
図6を参照して説明する。
【0041】
図6において、符号Sは、仮想平面K上に設けられた仮想板(テクスチャ)を指す。最大奥側算出部105は、仮想単眼撮像レンズの主点L’および仮想単眼撮像面P’によって仮想的に撮像した被写体O2を仮想板Sに写す(テクスチャマッピング)。この状態で、奥側算出部104は、仮想撮像面P1における画素を通った後、仮想撮像レンズの主点L1を通る光を逆に追跡することによって被写体O1および仮想板Sに対する奥側要素画像を算出する。
【0042】
なお、図示しないが、被写体O(オー)3が、前側最大奥行知覚位置を含む仮想平面K’よりも前側、つまり、奥行再現範囲外にある場合、最大前側算出部107は、仮想単眼撮像レンズの主点L’および仮想単眼撮像面P’によって仮想的に撮像した被写体O2を仮想平面K’上に設けられた仮想板S’に写す。この状態で、前側算出部106は、前側要素画像の各画素の画素値を、仮想撮像面P1における画素と、仮想撮像レンズの主点L1とを通る直線が、この主点L1より前側で被写体O3と交差する点のうち、主点L1から最も遠い点に関する情報を参照して算出する。
【0043】
図7は、第1の実施形態である画像生成装置10の処理手順を示す概略のフローチャートである。
ステップS1において、奥行再現範囲算出部103は、仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された奥行知覚情報に基づいて、被写体の三次元情報を再現する奥行再現範囲を示す前側最大奥行知覚位置(最大前:Zf)および奥側最大奥行知覚位置(最大奥:Zb)を算出する。
次に、奥行再現範囲算出部103は、奥側最大奥行知覚位置を示す情報を奥側算出部104および最大奥側算出部105に供給する。また、奥行再現範囲算出部103は、前側最大奥行知覚位置を示す情報を前側算出部106および最大前側算出部107に供給する。
【0044】
ステップS2において、最大奥側算出部105は、奥行再現範囲算出部103が供給する奥側最大奥行知覚位置を示す情報を取り込み、この奥側最大奥行知覚位置よりも奥側に存在する被写体の最大奥側要素画像(Bim_max)を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された単眼カメラ情報と第1のカメラ情報とに基づいて算出する。最大奥側算出部105は、1フレーム分の最大奥側要素画像群を算出する。
【0045】
ステップS3において、奥側算出部104は、奥行再現範囲算出部103が供給する奥側最大奥行知覚位置を示す情報を取り込み、仮想撮像面の位置から奥側最大奥行知覚位置までに存在する被写体による奥側要素画像(Bim)を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された第1のカメラ情報とに基づいて算出する。奥側算出部104は、1フレーム分の奥側要素画像群を算出する。
【0046】
ステップS4において、前側算出部106は、奥行再現範囲算出部103が供給する前側最大奥行知覚位置を示す情報を取り込み、仮想撮像レンズの位置から前側最大奥行知覚位置までに存在する被写体による前側要素画像(Fim)を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された第1のカメラ情報とに基づいて算出する。前側算出部106は、1フレーム分の前側要素画像群を算出する。
【0047】
ステップS5において、最大前側算出部107は、奥行再現範囲算出部103が供給する前側最大奥行知覚位置を示す情報を取り込み、この前側最大奥行知覚位置よりも前側に存在する被写体の最大前側要素画像(Fim_max)を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された単眼カメラ情報と第1のカメラ情報とに基づいて算出する。最大前側算出部107は、1フレーム分の最大前側要素画像群を算出する。
【0048】
ステップS6において、奥側合成部108は、最大奥側算出部105が算出した最大奥側要素画像に、奥側算出部104が算出した奥側要素画像を重ねて合成し、合成奥側要素画像(Bim_fin)を生成する。具体的に、奥側合成部108は、奥側要素画像において“0”でない画素値で最大奥側要素画像を上書きする。奥側合成部108は、1フレーム分の合成奥側要素画像群を生成する。
【0049】
ステップS7において、前側合成部109は、前側算出部106が算出した前側要素画像に、最大前側算出部107が算出した最大前側要素画像を重ねて合成し、合成前側要素画像(Fim_fin)を生成する。具体的に、前側合成部109は、最大前側要素画像において“0”でない画素値で前側要素画像を上書きする。前側合成部109は、1フレーム分の合成前側要素画像群を生成する。
【0050】
ステップS8において、合成部110は、奥側合成部108が合成して得た合成奥側要素画像に、前側合成部109が合成して得た合成前側要素画像を重ねて合成し、要素画像を生成する。具体的に、合成部110は、合成前側要素画像において“0”でない画素値で合成奥側要素画像を上書きする。合成部110は、1フレーム分の要素画像群を生成する。
次に、映像信号生成部111は、合成部110が生成した要素画像群を時系列に並べたIP映像信号を生成し、このIP映像信号をIP立体映像表示装置20に供給する。
【0051】
なお、
図7のフローチャートにおいて、最大奥側算出部105が実行するステップS2の処理と、奥側算出部104が実行するステップS3の処理とは、並列であってもよいし、直列であってもよい。同様に、前側算出部106が実行するステップS4の処理と、最大前側算出部107が実行するステップS5の処理とは、並列であってもよいし、直列であってもよい。同様に、ステップS2、ステップS3、およびステップS6の処理群と、ステップS4、ステップS5、およびステップS7の処理群とは、並列であってもよいし、直列であってもよい。
【0052】
図8は、奥側算出部104の動作を説明する模式図である。同図は、表示方向Ar1が示す方向(右手方向)に向かってIP立体映像表示装置20が表示する要素画像を算出するための仮想空間の上面図である。被写体O1,O2は、仮想撮像面P1〜P5よりも奥側にあり、被写体O3は、仮想撮像レンズの主点L1〜L5よりも手前側にある。奥側算出部104が、仮想撮像面における画素を通った後、仮想撮像レンズの主点を通る光を、逆に追跡するレイトレーシング法を用いる形態を例に説明する。
【0053】
例えば、
図8の符号R1が付された矢印は、仮想撮像面P3のある画素を通った後、仮想撮像面P3に対応する仮想撮像レンズの主点L3を通る光線である。奥側算出部104は、光線R1を、何かに突き当たるまで逆に辿る。ここでは、被写体O2に突き当たるので、奥側算出部104は、被写体O2の突き当たった点P21における光学的な特性(反射率、拡散率、透過率、屈折率等)を、被写体情報記憶部102から読み出す。そして、奥側算出部104は、読み出した特性に基づき、当該突き当たった点における反射、拡散、透過、屈折等により光線R1となる光線の方向を算出する。
【0054】
図8では、点P21で鏡面反射が起きている場合の例であり、反射により光線R1となる光線R2を、さらに逆に辿るというようにして、光の光量や色が予め与えられている領域(例えば、光源)に到達するまで、逆に辿ることを繰り返す。このようにすることで、奥側算出部104は、光線R1に含まれる光の成分を求め、光線R1の色を算出することができる。奥側算出部104は、このような処理を全ての仮想撮像面の全ての画素に対して行うことで、全ての奥側要素画像を算出する。
【0055】
図9は、前側算出部106の動作を説明するフローチャートである。同図に示すフローチャートは、1フレーム分の前側要素画像を生成する処理のフローチャートである。まず、前側算出部106は、1フレーム分の前側要素画像の全ての画素値を初期化する(Sa1)。そして、前側算出部106は、それまでに未選択の仮想撮像面の中から一つを以降の処理対象の仮想撮像面として選択する(Sa2)。次に、前側算出部106は、処理対象の仮想撮像面の画素のうち、未選択のものの中から一つを以降の処理対象の画素として選択する(Sa3)。
【0056】
次に、前側算出部106は、処理対象の画素と、処理対象の仮想撮像面に対応する仮想撮像レンズの主点とを通る直線と、仮想撮像レンズより手前側の被写体との交差点を検出する(Sa4)。次に、前側算出部106は、ステップSa4にて交差点が検出されたか否かを判定する(Sa5)。交差点が検出されていないと判定したときは(Sa5:NO)、ステップSa6を飛ばして、ステップSa7に進む。
【0057】
一方、ステップSa5にて、交差点が検出されたと判定したときは(Sa5:YES)、前側算出部106は、検出した交差点のうち、仮想撮像レンズから最も遠いものを選択する。そして、前側算出部106は、選択した交差点における被写体の色を示す値を、被写体情報記憶部12から読み出し、当該値を、対象の画素の画素値とし(Sa6)、ステップSa7に進む。ステップSa7では、処理対象の仮想撮像面に、ステップSa3にて未選択の画素があるときは、ステップSa3に戻り、ないときはステップSa8に進む。
【0058】
ステップSa8では、ステップSa2にて未選択の仮想撮像面があるときは、ステップSa2に戻り、ないときは、処理を終了する。これにより、ステップSa5において、交差点があると判定された画素の画素値は、ステップSa6にて決定した値となり、ステップSa5において、交差点がないと判定された画素の画素値は、ステップSa1にて初期化された値となる。
【0059】
図10は、前側算出部106の動作を説明する模式図である。同図は、
図9のフローチャートにおけるステップSa4,Sa6の処理を説明する模式図である。
図10は、
図8と同様に、表示方向Ar1が示す方向(右手方向)に向かってIP立体映像表示装置20が表示するための要素画像を算出するための仮想空間の上面図である。被写体O1,O2、仮想撮像面P1〜P5、仮想撮像レンズの主点L1〜L5は、
図8と同様である。
【0060】
前側算出部106が仮想撮像面P3の一画素PEを処理対象としているときを考える。
図10において、主点L3の仮想撮像レンズが仮想撮像面P3に対応しているので、矢印R1’が、処理対象の画素と、処理対象の仮想撮像面に対応する仮想撮像レンズの主点とを通る直線である。したがって、ステップSa4の処理において前側算出部106が検出する、直線R1’と仮想撮像レンズL3より手前側の被写体O3との交差点は、点P31と点P32となる。
【0061】
ステップSa6では、前側算出部106は、これらの交差点P31,P32のうち、仮想撮像レンズL3から最も遠いものを選択し、その点における色を表す値を、被写体情報記憶部12から読み出し、処理対象の画素の画素値とする。このように、交差点のうち最も遠いものを選択することで、矢印R1’の先に視点があったときに、その視点から見て、被写体O3の陰面となって見えない領域RO3に属する交差点P31ではなく、当該視点から見える交差点P32を選択することができる。
【0062】
以上、説明したように、第1の実施形態である画像生成装置10は、IP立体映像表示装置20用の要素画像を生成する装置である。そして、画像生成装置10は、仮想空間における被写体の位置および形状を表す被写体情報を記憶する被写体情報記憶部102を備える。また、画像生成装置10は、仮想空間における仮想カメラアレイの第1の位置を表す第1のカメラ情報と仮想空間において仮想カメラアレイよりも前に設けられる仮想単眼カメラの位置を表す単眼カメラ情報とインテグラルフォトグラフィ立体像の奥行きに対する知覚の度合を表す奥行知覚情報とを記憶する仮想カメラアレイ情報記憶部101を備える。また、画像生成装置10は、被写体の三次元情報を再現する奥行再現範囲を示す、前側最大奥行知覚位置および奥側最大奥行知覚位置を、仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された奥行知覚情報に基づいて算出する奥行再現範囲算出部103を備える。また、画像生成装置10は、IP立体映像表示装置20のレンズアレイの各レンズに対応した位置に仮想撮像レンズが配置され、この仮想撮像レンズの奥側に仮想撮像面が配置された仮想配置であるとして、仮想撮像レンズの位置から奥行再現範囲算出部103が算出した前側最大奥行知覚位置までに存在する被写体による第3の要素画像を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された第1のカメラ情報とに基づいて算出する前側算出部106を備える。また、画像生成装置10は、前記の仮想配置であるとして、前側最大奥行知覚位置よりも前側に存在する被写体の第4の要素画像を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された単眼カメラ情報と第1のカメラ情報とに基づいて算出する最大前側算出部107を備える。また、画像生成装置10は、前記の仮想配置であるとして、仮想撮像面の位置から奥行再現範囲算出部103が算出した奥側最大奥行知覚位置までに存在する被写体による第1の要素画像を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された第1のカメラ情報とに基づいて算出する奥側算出部104を備える。また、画像生成装置10は、前記の仮想配置であるとして、奥側最大奥行知覚位置よりも奥側に存在する被写体の第2の要素画像を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された単眼カメラ情報と第1のカメラ情報とに基づいて算出する最大奥側算出部105を備える。また、画像生成装置10は、前側算出部106が算出した第3の要素画像と、最大前側算出部107が算出した第4の要素画像とを合成する前側合成部109と、奥側算出部104が算出した第1の要素画像と、最大奥側算出部105が算出した第2の要素画像とを合成する奥側合成部108とを備える。また、画像生成装置10は、前側合成部109が合成して得た要素画像と、奥側合成部108が合成して得た要素画像とを合成する合成部110を備える。
【0063】
この構成により、画像生成装置10は、奥行再現範囲内のIP立体像を高精度に再生するとともに、奥行再現範囲外において奥行きを圧縮して再生させるため、IP再生像の解像度の低下を抑えて且つ奥行感を観視者に与えることができる。
【0064】
[第2の実施形態]
第2の実施形態におけるIP立体映像表示システムは、
図3のIP立体映像表示システム1と同様の構成を有する。よって、第2の実施形態の説明においては、
図3の構成図を用いることとする。第2の実施形態におけるIP立体映像表示システム1では、画像生成装置10における最大奥側算出部105および最大前側算出部107の動作が第1の実施形態と一部異なる。また、仮想カメラアレイ情報記憶部101が記憶する情報の一部が第1の実施形態と異なる。
【0065】
第2の実施形態である画像生成装置10は、奥行再現範囲外の三次元モデルおよびセットに対し、奥行きを圧縮して最大奥側要素画像および最大前側要素画像を生成する。
【0066】
第2の実施形態において、仮想カメラアレイ情報記憶部101は、第1の実施形態における第1の仮想カメラアレイの第1の位置よりも前側にある第2の仮想カメラアレイの第2の位置を表す第2のカメラ情報を、さらに記憶する。第2の実施形態において、第2のカメラ情報は、第2の仮想カメラアレイにおける各仮想撮像レンズの主点の位置を表す情報と各主点に対応する仮想撮像面の位置を表す情報とを含む。
【0067】
図11は、第2の実施形態における最大奥側算出部105の動作を説明する模式図である。同図は、図中右手方向に向かってIP立体映像表示装置20が表示する要素画像を算出するための仮想空間の上面図である。被写体O(オー)1は、仮想撮像面P1よりも奥側、且つ奥側最大奥行知覚位置を含む仮想平面Kよりも手前にある。詳細には、被写体O1は、仮想撮像レンズの主点L1および仮想撮像面P1(第1の仮想カメラ)によって形成される第1の仮想撮像領域を、仮想平面Kで切った場合の奥側算出領域A内にある。
【0068】
被写体O(オー)2は、第1の仮想カメラよりも前側に設けた、仮想撮像レンズの主点L1’および仮想撮像面P1’(第2の仮想カメラ)によって形成される第2の仮想撮像領域を仮想平面Kで切った場合の、最大奥側算出領域B’内にある。ただし、奥側算出領域Aが仮想平面Kに接する面と、最大奥側算出領域B’が仮想平面Kに接する面とは同一である。
【0069】
第1の仮想カメラおよび被写体O1を取り除いた状態で、最大奥側算出部105は、最大奥側要素画像を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された第2のカメラ情報とに基づいて算出する。具体的に、最大奥側算出部105は、仮想撮像面P1’における画素を通った後、仮想撮像レンズの主点L1’を通る光を逆に追跡することによって被写体O2に対する最大奥側要素画像を算出する。
【0070】
第1の仮想カメラアレイの各仮想撮像レンズは、IP立体映像表示装置20のレンズアレイの各レンズに対応している。よって、第2実施形態である画像生成装置10が生成したIP映像信号をIP立体映像表示装置20が取り込んでIP映像を表示した場合、最大奥側算出領域B’内の被写体O2の奥行きが圧縮される。
【0071】
なお、図示しないが、被写体O(オー)3が、前側最大奥行知覚位置を含む仮想平面K’よりも前側、つまり、奥行再現範囲外にある場合、最大前側算出部107は、最大前側要素画像を、被写体情報記憶部102に記憶された被写体情報と仮想カメラアレイ情報記憶部101に記憶された第2のカメラ情報とに基づいて算出する。具体的に、最大前側算出部107は、最大前側要素画像の各画素の画素値を、仮想撮像面P1’における画素と、仮想撮像レンズの主点L1’とを通る直線が、この主点L1’より前側で被写体O3と交差する点のうち、主点L1’から最も遠い点に関する情報を参照して算出する。
【0072】
[第2の実施形態の第1変形例]
第1の変形例である画像生成装置10は、奥行再現範囲外の三次元モデルおよびセットに対し、段階的に圧縮率を変えて奥行きを圧縮し、最大奥側要素画像および最大前側要素画像を生成する。具体的に、最大奥側算出部105は、仮想撮像面から離れるほど奥行きが圧縮されるように最大奥側要素画像を生成する。また、最大前側算出部107は、仮想撮像レンズの主点から離れるほど奥行きが圧縮されるように最大前側要素画像を生成する。
【0073】
図12は、第2の実施形態の第1変形例における最大奥側算出部105の動作を説明する模式図である。同図は、図中右手方向に向かってIP立体映像表示装置20が表示する要素画像を算出するための仮想空間の上面図である。被写体O(オー)1は、仮想撮像面P1よりも奥側、且つ奥側最大奥行知覚位置を含む仮想平面K1よりも手前にある。詳細には、被写体O1は、仮想撮像レンズの主点L1および仮想撮像面P1(第1の仮想カメラ)によって形成される第1の仮想撮像領域を、仮想平面K1で切った場合の奥側算出領域A内にある。
【0074】
被写体O(オー)2は、第1の仮想カメラよりも前側に設けた、仮想撮像レンズの主点L1’および仮想撮像面P1’(第2の仮想カメラ)によって形成される第2の仮想撮像領域を仮想平面K1と仮想平面K1より奥側の仮想平面K2とで切り取った場合の、第1の最大奥側算出領域B’内にある。ただし、奥側算出領域Aが仮想平面K1に接する面と、第1の最大奥側算出領域B’が仮想平面K1に接する面とは同一である。
【0075】
被写体O(オー)3は、第2の仮想カメラよりも前側に設けた、仮想撮像レンズの主点L1’’および仮想撮像面P1’’(第3の仮想カメラ)によって形成される第3の仮想撮像領域を仮想平面K2で切った場合の、第2の最大奥側算出領域B’’内にある。ただし、第1の最大奥側算出領域B’が仮想平面K2に接する面と、第2の最大奥側算出領域B’’が仮想平面K2に接する面とは同一である。
【0076】
第1の仮想カメラおよび被写体O1を取り除いた状態で、最大奥側算出部105は、仮想撮像面P1’における画素を通った後、仮想撮像レンズの主点L1’を通る光を逆に追跡することによって被写体O2に対する第1の最大奥側要素画像を算出する。
【0077】
また、第1の仮想カメラ、被写体O1、第2の仮想カメラ、および被写体O2を取り除いた状態で、最大奥側算出部105は、仮想撮像面P1’’における画素を通った後、仮想撮像レンズの主点L1’’を通る光を逆に追跡することによって被写体O3に対する第2の最大奥側要素画像を算出する。
【0078】
第1の仮想カメラアレイの各仮想撮像レンズは、IP立体映像表示装置20のレンズアレイの各レンズに対応している。よって、第2の実施形態の第1変形例である画像生成装置10が生成したIP映像信号をIP立体映像表示装置20が取り込んでIP映像を表示した場合、第1の最大奥側算出領域B’内の被写体O2の奥行きが圧縮され、第2の最大奥側算出領域B’’内の被写体O3の奥行きがさらに圧縮される。
【0079】
なお、図示しないが、前側最大奥行知覚位置を含む仮想平面K1’よりも前側、つまり、奥行再現範囲外にある場合についても、第2の実施形態および第1変形例と同様に、最大前側算出部107は、最大前側要素画像の各画素の画素値を算出する。
【0080】
[第2の実施形態の第2変形例]
第2の実施形態では、最大奥側算出部105が被写体O2に対する最大奥側要素画像を算出する際に、第1の仮想カメラおよび被写体O1を取り除く必要があった。第2の実施形態の第2変形例では、
図13に示す上面図のように、表示方向と垂直の方向に第2の仮想カメラCを設け、表示方向から45度傾けて仮想的なハーフミラーMを設けることにより、第1の仮想カメラを取り除く必要がなくなる。
【0081】
図2に示したように、奥行知覚は、ある一定の奥行位置に達するまでに徐々に飽和する傾向があるため、第2の実施形態である画像生成装置10が、奥行知覚の度合に応じて奥行きを圧縮することにより、IP再生像の見かけ上の画質の劣化を防ぐことができる。また、CGによる要素画像の生成の際に、被写体の奥行位置の検出精度を高めることができる。
【0082】
なお、上述した実施形態である画像生成装置10の一部の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、その機能を実現するための画像生成プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録された画像生成プログラムをコンピュータシステムに読み込ませて、このコンピュータシステムが実行することにより、当該機能を実現してもよい。なお、このコンピュータシステムとは、オペレーティングシステム(Operating System;OS)や周辺装置のハードウェアを含むものである。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに備えられる磁気ハードディスクやソリッドステートドライブ等の記憶装置のことをいう。さらに、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、インターネット等のコンピュータネットワーク、および電話回線や携帯電話網を介してプログラムを送信する場合の通信回線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、さらには、その場合のサーバ装置やクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持するものを含んでもよい。また上記の画像生成プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
【0083】
各実施形態および変形例によれば、画像生成装置は、インテグラルフォトグラフィ立体像の解像度を劣化させることなく、観視者に奥行感を知覚させることができる。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はその実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。