(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、その直後に記載された基を構成する水素原子が、無置換の場合および水素原子の一部または全部が置換基によって置換されている場合の双方を含み、該置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ニトロ基、フッ素原子、炭素原子数1〜60のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜60のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数1〜60のヒドロカルビルアミノ基および架橋基が挙げられる。これらの置換基の中でも、有機化合物の溶媒への溶解性がより優れるため、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基または架橋基が好ましく、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基または炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基がより好ましく、炭素原子数1〜8のヒドロカルビル基または炭素原子数1〜8のヒドロカルビルオキシ基が更に好ましい。
【0017】
置換基であるヒドロカルビル基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1-ピレニル基、クリセニル基、テトラセニル基およびコロニル基が挙げられ、
好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基または9−フェナントリル基であり、
より好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基またはフェニル基であり、
更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはオクチル基である。
【0018】
置換基であるヒドロカルビルオキシ基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロパノキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジロキシ基、α,α-ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、アルコキシフェノキシ基、アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基およびペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられ、
好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基または3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、
より好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基またはオクチルオキシ基である。
【0019】
置換基であるヒドロカルビルアミノ基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、1−アダマンチルアミノ基、2−アダマンチルアミノ基、ノルボルニルアミノ基、トリフルオロメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、α,α-ジメチルベンジルアミノ基、2−フェネチルアミノ基、1−フェネチルアミノ基、フェニルアミノ基、アルコキシフェニルアミノ基、アルキルフェニルアミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基およびペンタフルオロフェニルアミノ基が挙げられ、
好ましくは、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基またはオクチルアミノ基であり、
より好ましくは、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基またはヘキシルアミノ基である。
【0020】
置換基である架橋基とは、熱、光、熱重合開始剤または光重合開始剤の作用で重合反応を起こすことにより、2分子以上の分子間で結合を形成することができる置換基を表す。
架橋基としては、例えば、ビニル基、エチニル基、ブテニル基、アクリロイル基、アクリラート基、アクリルアミジル基、メタクリル基、メタクリラート基、メタクリルアミド基、エテニルオキシ基、エテニルアミノ基、ヒドロキシシリル基、小員環(例えばたとえばシクロプロパン、シクロブタン、ベンゾシクロブテン、エポキシド、オキセタン、ジケテン、チイラン、ラクトン、ラクタム等)の構造を有する官能基、シロキサン誘導体の構造を有する官能基が挙げられる。
また、上記の架橋基の他に、エステル結合またはアミド結合を形成可能な基の組み合わせなども利用できる。エステル結合またはアミド結合を形成可能な基の組み合わせとしては、例えば、エステル基とアミノ基の組み合わせ、エステル基とヒドロキシル基の組み合わせが挙げられる。
【0021】
本明細書において、「芳香族基」とは、芳香族炭化水素の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子の1個以上を除いた残りの原子団、芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子の1個以上を除いた残りの原子団、および、芳香族炭化水素および芳香族複素環式化合物から選ばれる2個以上の化合物が直接またはO原子若しくはS原子を介して結合した化合物における環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子の1個以上を除いた残り原子団を表す。
【0022】
本明細書において、「芳香族アミン残基」とは、芳香族炭化水素および芳香族複素環式化合物から選ばれる2個以上の化合物がN原子を介して結合した化合物における環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子の1個以上を除いた残りの原子団を表す。
【0023】
本明細書において、「有機基」とは、炭素原子および水素原子を含む基を示し、例えば、上記の炭素原子数1〜60のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜60のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数1〜60のヒドロカルビルアミノ基が挙げられる。
【0024】
本明細書において「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味し、「繰り返し単位」(即ち、高分子化合物中に2個以上存在する単位)として高分子化合物中に存在していることが好ましい。
【0025】
本明細書において、「高分子化合物」とは、分子量が2000以上の重合体を意味する。高分子化合物は、単量体を用いた重合反応により得られる分子量分布を有する重合体であることが好ましい。高分子化合物の分子量は、分子量分布を有する重合体である場合、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算によって算出される数平均分子量およびポリスチレン換算によって算出される重量平均分子量により測定することができる。
【0026】
<高分子化合物>
前記高分子化合物は、式(1)および式(2)で表される構成単位を含む高分子化合物、式(1)および式(3)で表される構成単位を含む高分子化合物、および、式(4)で表される構成単位を含む高分子化合物である。
【0028】
<式(1)で表される構成単位>
前記m
1およびn
1は、それぞれ独立に、1以上の整数である。m
1は、1〜3の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。n
1は、1〜4の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。m
1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0029】
前記Ar
1は、置換基を有していてもよい(n
1+2)価の芳香族基または置換基を有していてもよい芳香族アミン残基である。
【0030】
前記Ar
1が、芳香族炭化水素の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+2)個を除いた(n
1+2)価の芳香族基の場合、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、ベンゼン、ピレンまたはペリレンの環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+2)個を除いた(n
1+2)価の芳香族基であることが好ましく、フルオレン、ナフタレンまたはベンゼンの環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+2)個を除いた(n
1+2)価の芳香族基であることがより好ましく、フルオレンまたはナフタレンの環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+2)個を除いた(n
1+2)価の芳香族基であることが更に好ましい。なお、これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0031】
前記Ar
1が、芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+2)個を除いた(n
1+2)価の芳香族基の場合、式H−1〜H−40のいずれかで表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+2)個を除いた残りの原子団であることが好ましい。これらの中でも、式H−3、H−5、H−8、H−12、H−19、H−23、H−31またはH−36で表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+2)個を除いた残りの原子団がより好ましく、式H−3、H−5、H−8、H−12、H−19またはH−36で表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+2)個を除いた残りの原子団が更に好ましく、式H−3、H−5またはH−36で表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+2)個を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、式H−1〜H−40で表される芳香族複素環式化合物は置換基を有していてもよい。
【0033】
前記Ar
1が、置換基を有していてもよい(n
1+2)価の芳香族アミン残基の場合、式A−1〜A−12のいずれかで表される芳香族アミンの環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+2)個を除いた残り原子団であることが好ましい。これらの中でも、式A−1、A−2、A−5、A−6、A−7、A−8またはA−9で表される芳香族アミンの環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+2)個を除いた残りの原子団がより好ましく、式A−1、A−5、A−7またはA−9で表される芳香族アミンの環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+2)個を除いた残りの原子団が更に好ましく、式A−1またはA−5で表される芳香族アミンの環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+2)個を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、式A−1〜A−12で表される芳香族アミンは置換基を有していてもよい。
【0035】
前記R
1は、単結合または(m
1+1)価の有機基であり、R
1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0036】
(m
1+1)価の有機基としては、例えば、ヒドロカルビル基を構成する炭素原子に直接結合するm
1個の水素原子を取り除いた残りの原子団、および、式1−1〜1−50で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する(m
1+1)個の水素原子を取り除いた残りの原子団が挙げられる。なお、ヒドロカルビル基は置換基を有していてもよく、式1−1〜1−50で表される化合物は置換基を有していてもよい。
【0038】
前記R
1が、ヒドロカルビル基を構成する炭素原子に直接結合するm
1個の水素原子を取り除いた残りの原子団の場合、ヒドロカルビル基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1-ピレニル基、クリセニル基、テトラセニル基およびコロニル基が挙げられ、
好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基または9−フェナントリル基であり、
より好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基またはフェニル基であり、
更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基またはフェニル基である。
【0039】
前記R
1は、式(R
1−1)〜(R
1−9)のいずれかで表される1価の有機基を置換基として有していてもよい。この場合、式(R
1−1)、(R
1−2)、(R
1−6)または(R
1−9)で表される1価の有機基を置換基として有していることが好ましく、式(R
1−1)、(R
1−2)または(R
1−6)で表される1価の有機基を置換基として有していることがより好ましく、式(R
1−1)または(R
1−2)で表される1価の有機基を置換基として有していることが更に好ましい。
【0040】
−O−(R
8O)p−R
9 (R
1−1)
−S−(R
8S)p−R
9 (R
1−3)
−C(=O)−(R
8−C(=O))p−R
9 (R
1−4)
−C(=S)−(R
8−C(=S))p−R
9 (R
1−5)
−N{(R
8)qR
9}
2 (R
1−6)
−C(=O)O−(R
8−C(=O)O)p−R
9 (R
1−7)
−C(=O)−O−(R
8O)p−R
9 (R
1−8)
−NHC(=O)−(R
8NHC(=O))p−R
9 (R
1−9)
(式(R
1−1)〜式(R
1−9)中、
R
8は、置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基である。
R
9は、水素原子、または、ヒドロカルビル基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基およびアミノ基からなる群から選ばれる1価の有機基である。
R
10は、置換基を有していてもよい3価の炭化水素基である。
pは1以上の整数であり、qは0以上の整数である。
R
8、R
9、R
10、pおよびqが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【0041】
前記R
8としては、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜60のヒドロカルビレン基であることが好ましく(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない)、ヒドロカルビレン基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、α,α−ジメチレンベンジル基、1−フェネチレン基、2−フェネチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、オレイレン基、フェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、3,5−ジフェニルフェニレン基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基およびフェナントリレン基が挙げられ、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、フェニレン基、トリレン基またはビフェニレン基が好ましく、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ビニレン基またはフェニレン基がより好ましく、
エチレン基、プロピレン基、ヘキシレン基またはフェニレン基が更に好ましい。
【0042】
前記R
9は、水素原子、または、ヒドロカルビル基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基およびアミノ基からなる群から選ばれる1価の有機基である。
【0043】
前記R
9におけるヒドロカルビル基としては、例えば、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1-ピレニル基、クリセニル基、テトラセニル基およびコロニル基が挙げられ、
好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基または9−フェナントリル基であり、
より好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基またはフェニル基であり、
更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはオクチル基である。
【0044】
前記R
9におけるカルボン酸塩基としては、例えば、式:−CO
2M
3で表される1価の有機基が挙げられ、M
3は金属カチオンを表す。M
3としては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたは3〜13族の金属元素からなる金属カチオンが好ましく、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、3〜4族の金属元素からなる金属カチオンまたは12〜13族の金属元素からなる金属カチオンがより好ましく、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたは3〜4族の金属元素からなる金属カチオンが更に好ましく、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンが特に好ましい。
【0045】
アルカリ金属カチオンおよびアルカリ土類金属カチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウムまたはカルシウムのカチオンが好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムのカチオンがより好ましい。
【0046】
前記R
9におけるスルホン酸塩基としては、例えば、式:−SO
3M
3で表される1価の有機基が挙げられ、M
3は前記と同じ意味を表す。
【0047】
前記R
9におけるアミノ基としては、式:−NH
2で表される基、および、式:−NHR
3−N(R
3)
2で表される基が挙げられ、こちらの基は置換基を有していてもよい。ここで、R
3は、後述のR
3と同じ意味を表す。
【0048】
前記R
10における3価の炭化水素基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、スチレン、メチルスチレン、エチルベンゼン、クメンまたはシメンを構成する炭素原子に直接結合する水素原子の3個を除いた残りの原子団が挙げられる。これらの炭化水素は置換基を有していてもよい。
【0049】
前記pとしては、3〜7の整数であることが好ましく、3〜5の整数であることがより好ましい。
【0050】
前記qとしては、0〜4の整数であることが好ましく、0〜2の整数であることがより好ましい。
【0051】
前記X
1は、式:−OM
1で表される基、式:−CO
2M
1で表される基、式:−BR
33M
1で表される基、式:−NR
33Z
1で表される基、式:−SO
3M
1で表される基、式:−SO
2M
1で表される基、式:−OP(=O)(OM
1)
2で表される基、または、式:−P(=O)(OR
3)
2で表される基である。X
1としては、本発明の電極形成用の組成物から形成される電極の導電性がより優れるので、式:−CO
2M
1で表される基、式:−SO
3M
1で表される基、または、式:−P(=O)(OR
3)
2で表される基であることが好ましく、式:−CO
2M
1で表される基、または、式:−P(=O)(OR
3)
2で表される基であることがより好ましく、式:−CO
2M
1で表される基であることが更に好ましい。X
1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0052】
前記Z
1は、アニオンである。Z
1としては、例えば、NO
3−、SO
42−、HCO
3−、CO
32−、F
−、Cl
−、Br
−、I
−、TfO
−、Tf
2N
−、CH
3CO
2−、CF
3CO
2−、C
6F
5CO
2−、HO
−、NC
−、TsO
−、MsO
−、R
32P(=O)O
−、{[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4B}
−、(Ph
4B)
−、[(1−Imidazoly)
4B]
−、OCl
−、O
2Cl
−、O
3Cl
−、O
4Cl
−、BF
4−およびPF
6−が挙げられる。これらの中でも、F
−、TfO
−、Tf
2N
−、CH
3CO
2−、CF
3CO
2−、C
6F
5CO
2−、TsO
−、MsO
−、R
32P(=O)O
−、{[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4B}
−、(Ph
4B)
−、[(1−Imidazoly)
4B]
−、BF
4−およびPF
6−であることが好ましく、F
−、TfO
−、{[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4B}
−、[(1−Imidazoly)
4B]
−、BF
4−およびPF
6−であることが更に好ましい。Z
1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0053】
前記R
3は、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基または置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシ基である。R
3が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0054】
前記R
3がヒドロカルビル基の場合、ヒドロカルビル基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1-ピレニル基、クリセニル基、テトラセニル基およびコロニル基が挙げられ、
好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基または9−フェナントリル基であり、
より好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基またはフェニル基であり、
更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはオクチル基である。
【0055】
前記R
3がヒドロカルビルオキシ基の場合、ヒドロカルビルオキシ基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロパノキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジロキシ基、α,α-ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、アルコキシフェノキシ基、アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基およびペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられ、
好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基または3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、
より好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基またはオクチルオキシ基である。
【0056】
前記M
1は、金属カチオンまたは式:NR
34で表される基である。M
1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0057】
前記M
1が金属カチオンである場合、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたは3〜13族の金属元素からなる金属カチオンが好ましく、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、3〜4族の金属元素からなる金属カチオンまたは12〜13族の金属元素からなる金属カチオンがより好ましく、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたは3〜4族の金属元素からなる金属カチオンが更に好ましく、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンが特に好ましい。
【0058】
アルカリ金属カチオンおよびアルカリ土類金属カチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウムまたはカルシウムのカチオンが好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムのカチオンがより好ましい。
【0059】
前記式(1)で表される構成単位は、式J−1〜J−72で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団であることが好ましい。これらの中でも、式J−4、J−8、J−12、J−16、J−20、J−24、J−28、J−32、J−36、J−40、J−44、J−48、J−52、J−56、J−60、J−64、J−68またはJ−72で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団がより好ましく、式J−4、J−8、J−12、J−16、J−20、J−24、J−28またはJ−32で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団が更に好ましく、式J−4、J−12、J−24またはJ−28で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた原子団が特に好ましい。なお、これらの化合物は置換基を有していてもよい。
【0064】
<式(2)で表される構成単位>
前記m
2およびn
2は、それぞれ独立に、1以上の整数である。m
2は、1〜3の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。n
2は1以上の整数を表し、1〜4の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。m
2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0065】
前記Ar
2は、置換基を有していてもよい(n
2+2)価の芳香族基である。
【0066】
前記Ar
2が、芳香族炭化水素の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
2+2)個を除いた(n
2+2)価の芳香族基の場合、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、ベンゼン、ピレンまたはペリレンの環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
2+2)個を除いた(n
2+2)価の芳香族基であることが好ましく、フルオレン、ナフタレンまたはベンゼンの環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
2+2)個を除いた(n
2+2)価の芳香族基であることがより好ましく、フルオレンまたはナフタレンの環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
2+2)個を除いた(n
2+2)価の芳香族基であることが更に好ましい。なお、これらの環は置換基を有していてもよい。
【0067】
前記Ar
2が、芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
2+2)個を除いた(n
2+2)価の芳香族基の場合、前記式H−1〜H−40のいずれかで表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
2+2)個以上を除いた残りの原子団であることが好ましい。これらの中でも、前記式H−3、H−5、H−8、H−12、H−19、H−23、H−31またはH−36で表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
2+2)個を除いた残りの原子団がより好ましく、前記式H−3、H−5、H−8、H−12、H−19またはH−36で表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
2+2)個を除いた残りの原子団が更に好ましく、前記式H−3、H−5またはH−36で表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
2+2)個を除いた原子団が特に好ましい。なお、前記式H−1〜H−40で表される芳香族複素環式化合物は置換基を有していてもよい。
【0068】
前記R
2は、(m
2+1)価の有機基であり、R
2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0069】
(m
2+1)価の有機基としては、例えば、ヒドロカルビル基を構成する炭素原子に直接結合するm
2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、ヒドロカルビルオキシ基を構成する炭素原子に直接結合するm
2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、ヒドロカルビルアミノ基を構成する炭素原子に直接結合するm
2個の水素原子を取り除いた残りの原子団、および、前記式1−1〜1−50で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する(m
2+1)個の水素原子を取り除いた残りの原子団が挙げられる。なお、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基およびヒドロカルビルアミノ基は置換基を有していてもよく、式1−1〜1−50で表される化合物は置換基を有していてもよい。
【0070】
前記R
2が、ヒドロカルビル基を構成する炭素原子に直接結合するm
2個の水素原子を取り除いた残りの原子団の場合、ヒドロカルビル基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1-ピレニル基、クリセニル基、テトラセニル基およびコロニル基が挙げられ、
好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基または9−フェナントリル基であり、
より好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基またはフェニル基であり、
更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基またはフェニル基である。
【0071】
前記R
2が、ヒドロカルビルオキシ基を構成する炭素原子に直接結合するm
2個の水素原子を取り除いた残りの原子団の場合、ヒドロカルビルオキシ基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロパノキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジロキシ基、α,α-ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、アルコキシフェノキシ基、アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基およびペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられ、
好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基または3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、
より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基またはオクチルオキシ基である。
【0072】
前記R
2が、ヒドロカルビルアミノ基を構成する炭素原子に直接結合するm
2個の水素原子を取り除いた残りの原子団の場合、ヒドロカルビルアミノ基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、1−アダマンチルアミノ基、2−アダマンチルアミノ基、ノルボルニルアミノ基、トリフルオロメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、α,α-ジメチルベンジルアミノ基、2−フェネチルアミノ基、1−フェネチルアミノ基、フェニルアミノ基、アルコキシフェニルアミノ基、アルキルフェニルアミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基およびペンタフルオロフェニルアミノ基が挙げられ、
好ましくは、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基またはフェニルアミノ基であり、
より好ましくは、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、ヘキシルアミノ基またはフェニルアミノ基である。
【0073】
前記R
2は、前記式(R
1−1)〜(R
1−9)のいずれかで表される1価の有機基を置換基として有していてもよい。この場合、前記式(R
1−1)、(R
1−2)、(R
1−6)または(R
1−9)で表される1価の有機基を置換基として有していることが好ましく、前記式(R
1−1)、(R
1−2)または(R
1−6)で表される1価の有機基を置換基として有していることがより好ましく、前記式(R
1−1)または(R
1−2)で表される1価の有機基を置換基として有していることが更に好ましい。
【0074】
また、前記R
2は、式(R)で表される2価の基を含むことが好ましい。
【0075】
【化13】
(式(R)中、
Eは、2価の有機基であり、
Aは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはリン原子であり、
rは、1以上の整数である。
Eが複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていていてもよく、Aが複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていていてもよい。)
【0076】
前記Eとしては、例えば、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜60のヒドロカルビレン基であることが好ましく(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない)、ヒドロカルビレン基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、α,α−ジメチレンベンジル基、1−フェネチレン基、2−フェネチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、オレイレン基、フェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、3,5−ジフェニルフェニレン基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基およびフェナントリレン基が挙げられ、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、フェニレン基、トリレン基またはビフェニレン基が好ましく、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ビニレン基またはフェニレン基がより好ましく、
エチレン基、プロピレン基、ブチレン基またはヘキシレン基が更に好ましい。
【0077】
前記Aとしては、酸素原子または窒素原子であることが好ましい。
【0078】
前記rとしては、2〜8の整数であることが好ましく、2〜6の整数であることがより好ましく、2〜4の整数であることが更に好ましい。
【0079】
前記R
2としては、酸素原子または窒素原子を含む(m
2+1)価の有機基であることが好ましく、例えば、式R−1〜R−40で表される化合物を構成する原子に直接結合する水素原子(m
1+1)個を除いた残りの原子団が挙げられる。これらの中でも、式R−1〜R−8、R−21〜R−24、R−29〜R−32またはR−35〜R−40で表される化合物を構成する原子に直接結合する水素原子(m
1+1)個を除いた残りの原子団であることがより好ましく、式R−1〜R−4、R−30、R−31、R−35またはR−36で表される化合物を構成する原子に直接結合する水素原子(m
1+1)個を除いた残りの原子団であることが更に好ましく、式R−2、R−3、R−30またはR−36で表される化合物を構成する原子に直接結合する水素原子(m
1+1)個を除いた残りの原子団であることが特に好ましい。なお、式R−1〜R−40で表される化合物は、置換基を有していてもよい。
【0083】
前記X
2は、窒素原子、硫黄原子およびリン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子を含む1価の有機基である。X
2としては、ラクタム構造を有する1価の有機基、アミド構造を有する1価の有機基、置換アミノ基、または、芳香族複素環構造を有する1価の有機基であることが好ましく、ラクタム構造を有する1価の有機基、または、芳香族複素環構造を有する1価の有機基であることがより好ましく、ラクタム構造を有する1価の有機基、または、同一の芳香族複素環が直接結合した構造を有する1価の有機基であることがより好ましい。X
2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0084】
前記X
2が硫黄原子を含む1価の有機基である場合、その例および好ましい形態は、後述のラクタム構造を有する1価の有機基、アミド構造を有する1価の有機基、置換アミノ基、および、芳香族複素環構造を有する1価の有機基と同様である。
【0085】
前記X
2が硫黄原子を含む1価の有機基であり、かつ、当該1価の有機基が硫黄原子を含む芳香族複素環の構造を有しない場合、下記式のいずれかで表される化合物を構成する硫黄原子以外の原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団であることが好ましい。
【0087】
前記X
2がリン原子を含む1価の有機基である場合、下記式のいずれかで表される化合物を構成するリン原子以外の原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団であることが好ましい。
【0089】
前記X
2が、ラクタム構造を有する1価の有機基である場合、ラクタム構造としては、下記式L−1〜L−72のいずれかで表される化合物を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団が挙げられる。これらの中でも、下記式L−1〜L−18のいずれかで表される化合物を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団が好ましく、下記式L−1、L−4、L−7、L−8、L−14、L−15またはL−18で表される化合物を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団がより好ましく、式L−1、L−4、L−7またはL−8で表される化合物を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団が更に好ましく、式L−4またはL−7で表される化合物を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、これらのラクタム構造は置換基を有していてもよい。
【0093】
前記X
2が、アミド構造を有する1価の有機基の場合、アミド構造としては、炭素原子数1〜20のアミド構造であることが好ましく、炭素原子数2〜18のアミド構造であることがより好ましい。
アミド構造としては、例えば、ホルムアミド、アセトアミド、プロピオアミド、ブチロアミド、ベンズアミド、トリフルオロアセトアミド、ペンタフルオロベンズアミド、ジホルムアミド、ジアセトアミド、ジプロピオアミド、ジブチロアミド、ジベンズアミド、ジトリフルオロアセトアミドおよびジペンタフルオロベンズアミドが挙げられる。これらのアミド構造は置換基を有していてもよい。
【0094】
前記X
2が、置換アミノ基の場合、炭素原子1〜60の置換アミノ基であることが好ましく、炭素原子数2〜30の置換アミノ基であることがより好ましい。
置換アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ−s−ブチルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、エチルヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、エチルフェニルアミノ基、ジ(4−メチルフェニル)アミノ基、ジ(2,3−キシリル)アミノ基、ジフェニルアミノ基、フェニルトルイルアミノ基、ジアリールアミノ基、1−ピロリジニル基、3−メチル−1−ピロリジニル、1−ピロリル、3−エチル−1−ピロリル、1−インドリル、1−ピペリジニル基、3−メチル−1−ピペリジニル基、1−ピペラジニル基、4−メチル−1−ピペラジニル基、1−イミダゾリジニル基、4−モルホリニル基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基およびヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基が挙げられる。
【0095】
前記X
2が、芳香族複素環構造を有する1価の有機基の場合、当該1価の有機基の例および好ましい形態は、後述のX
4で表される1価の有機基の例および好ましい形態と同様である。
【0096】
前記式(2)で表される構成単位は、式(5)で表される構成単位であることが好ましい。
【0097】
【化22】
(式(5)中、
m
2およびR
2は、前記と同じ意味を表す。
X
3は、ラクタム構造を有する1価の有機基、または、同一の芳香族複素環が直接結合した構造を有する1価の有機基であり、複数存在するX
3は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0098】
前記式(2)で表される構成単位の例および好ましい形態は、後述の式(7)〜(11)で表される構成単位の例および好ましい形態と同様である。
【0099】
<式(3)で表される構成単位>
前記Ar
3は、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基である。Ar
3としては、式H3−1〜H3−40のいずれかで表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた2価の芳香族複素環基であることが好ましい。これらの中でも、式H3−3、H3−5、H3−6、H3−7、H3−8、H3−12、H3−19、H3−23、H3−31またはH3−36で表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた2価の芳香族複素環基がより好ましく、式H3−3、H3−5、H3−6、H3−7、H3−8、H3−12、H3−19またはH3−36で表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた2価の芳香族複素環基が更に好ましく、式H3−3、H3−5、H3−6、H3−7、H3−8またはH3−36で表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた2価の芳香族複素環基が特に好ましい。なお、式H3−1〜H3−40で表される芳香族複素環式化合物は置換基を有していてもよい。
【0101】
<式(4)で表される構成単位>
前記m
1、n
1、R
1、X
1、Z
1、R
3、M
1、m
2、n
2、R
2およびX
2の例および好ましい形態は、前記式(1)および(2)におけるm
1、n
1、R
1、X
1、Z
1、R
3、M
1、m
2、n
2、R
2およびX
2の例および好ましい形態と同様である。
【0102】
前記Ar
4は、置換基を有していてもよい(n
1+n
2+2)価の芳香族基である。
【0103】
前記Ar
4が、芳香族炭化水素の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+n
2+2)個を除いた(n
1+n
2+2)価の芳香族基の場合、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、ベンゼン、ピレンまたはペリレンの環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+n
2+2)個を除いた(n
1+n
2+2)価の芳香族基であることが好ましく、フルオレン、ナフタレンまたはベンゼンの環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+n
2+2)個を除いた(n
1+n
2+2)価の芳香族基であることがより好ましく、フルオレンまたはナフタレンの環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+n
2+2)個を除いた(n
1+n
2+2)価の芳香族基であることが更に好ましい。なお、これらの環は置換基を有していてもよい。
【0104】
前記Ar
4が、芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+n
2+2)個を除いた(n
1+n
2+2)価の芳香族基の場合、式H4−1〜H4−40のいずれかで表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+n
2+2)個以上を除いた残りの原子団であることが好ましい。これらの中でも、式H4−3、H4−5、H4−8、H4−12、H4−19、H4−23、H4−31またはH4−36で表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+n
2+2)個を除いた残りの原子団であることがより好ましく、式H4−3、H4−5、H4−8、H4−12、H4−19またはH4−36で表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+n
2+2)個を除いた残りの原子団であることが更に好ましく、式H4−3、H4−5またはH4−36で表される芳香族複素環式化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子(n
1+n
2+2)個を除いた残りの原子団が特に好ましい。なお、式H−1〜H−40で表される芳香族複素環式化合物は置換基を有していてもよい。
【0106】
前記式(4)で表される構成単位は、式4−1〜4−72で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残り原子団であることが好ましい。これらの中でも、4−4、4−8、4−12、4−16、4−20、4−24、4−28、4−32、4−36、4−40または4−44で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団であることがより好ましく、式4−4、4−8、4−20、4−24、4−28または4−32で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子の2個を除いた原子団が更に好ましい。なお、これらの化合物は置換基を有していてもよい。
【0114】
前記式(1)で表される構成単位の割合は、高分子化合物に含まれる全構成単位に対して、通常5モル%以上であり、10モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましい。
【0115】
前記式(2)で表される構成単位の割合は、高分子化合物に含まれる全構成単位に対して、通常0.5モル%以上であり、1モル%以上であることが好ましく、1.5モル%以上であることがより好ましい。
【0116】
前記式(3)で表される構成単位の割合は、高分子化合物に含まれる全構成単位に対して、通常90モル%以下であり、75モル%以下であることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましい。
【0117】
前記式(4)で表される構成単位の割合は、高分子化合物に含まれる全構成単位に対して、通常5モル%以上であり、10モル%以上の範囲であることが好ましい。
【0118】
高分子化合物が、前記式(1)および前記式(2)で表される構成単位を含む場合、式(2)で表される構成単位の割合は、式(1)で表される構成単位に対して、49モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、35モル%以下であることが更に好ましい。
【0119】
高分子化合物が、前記式(1)および前記式(3)で表される構成単位を含む場合、式(3)で表される構成単位の割合は、式(1)で表される構成単位に対して、0.5モル%以上であることが好ましく、1.0モル%以上であることがより好ましく、1.5モル%以上であることが更に好ましい。
【0120】
高分子化合物が、前記式(1)、前記式(2)および前記式(3)で表される構成単位を含む場合、式(2)で表される構成単位の割合は、式(1)で表される構成単位に対して、49モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、35モル%以下であることが更に好ましい。また、式(3)で表される構成単位の割合は、式(1)で表される構成単位に対して、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが更に好ましい。
【0121】
高分子化合物が、前記式(3)および前記式(4)で表される構成単位を含む場合、式(3)で表される構成単位の割合は、式(4)で表される構成単位に対して、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが更に好ましい。
【0122】
高分子化合物において、前記式(1)〜前記式(4)で表される構成単位の合計の割合は、高分子化合物に含まれる全構成単位に対して、通常20モル%以上であり、高分子化合物が簡便に合成できるので、30モル%以上であることが好ましい。
【0123】
高分子化合物は、前記式(1)〜前記式(4)で表される構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。式(1)〜式(4)で表される構成単位以外の構成単位としては、式CC−1〜CC−18のいずれかで表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団が好ましい。これらの中でも、式CC−1、CC−2、CC−12、CC−14、CC−15、CC−16またはCC−18で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団がより好ましく、CC−1、CC−2、CC−12、CC−15またはCC−16で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団が更に好ましい。なお、これらの化合物は置換基を有していてもよい。
【0125】
前記式CC−1〜CC−18からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位の割合は、高分子化合物に含まれる全構成単位に対して、70モル%以下であり、高分子化合物が簡便に合成できるので、50モル%以下であることが好ましい。
【0126】
高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、溶媒に対する溶解性が良好となるので、2×10
3以上1×10
6以下であることが好ましく、2×10
3以上5×10
5以下であることがより好ましく、2×10
3以上4×10
5以下であることが更に好ましい。
【0127】
高分子化合物は、1種類のみ用いても2種類以上を併用してもよい。
【0128】
<金属材料および炭素材料>
前記金属材料および炭素材料としては、例えば、アルミニウム、金、白金、銀、銅等の金属およびそれらの合金、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズおよびそれらを含む複合体であるインジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、スズアンチモン酸化物、NESA等の金属酸化物、並びに、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン等の炭素材料が挙げられる。これらの材料は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0129】
前記金属材料である金属としては、本発明の電極形成用の組成物から形成される電極の導電性が良好となるので、遷移金属が好ましく、周期表第11族金属がより好ましく、銀が更に好ましい。銀は、銀粒子または銀ワイヤーであることが好ましい。
【0130】
前記金属材料である金属酸化物としては、酸化亜鉛、ITOまたはIZOが好ましい。
【0131】
前記炭素材料としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブまたはグラフェンが好ましい。
【0132】
前記金属材料および炭素材料は、ナノ構造体であることが好ましい。ナノ構造体とは、ナノ単位の径を有する金属材料若しくは炭素材料、または、これらの組み合わせである。ナノ構造体の最も短い径は、通常1nm以上、10000nm未満である。ナノ構造体の最も短い径は、ナノ構造体の導電性および分散性が良好となるので、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは500nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。
【0133】
ナノ構造体の最も長い径は、ナノ構造体の溶媒に対する分散性が良好となるので、好ましくは100000nm以下であり、より好ましくは50000nm以下、更に好ましくは20000nm以下、特に好ましくは10000nm以下である。
【0134】
金属材料および炭素材料が粒子状の場合、数平均のフェレー径は、好ましくは50000nm以下であり、より好ましくは30000nm以下、更に好ましくは20000nm以下である。なお、フェレー径とは、粒子を挟む一定方向の二本の平行線の間隔(一定方向径)を意味し、金属材料および炭素材料のフェレー径は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)による写真から測定することができる。
【0135】
金属材料および炭素材料は、市販品でもよいし、従来公知の方法で製造してもよい。金属材料および炭素材料の製造には、液相法、気相法等の製造方法を用いることができる。
【0136】
ナノ構造体の製造方法は、例えば、「Material Matters 2010,vol.5,No.2」や「Material Matters 2010,vol.4,No.1」に開示されている。
【0137】
本発明の電極形成用の組成物に含まれる高分子化合物と、金属材料および炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料の比率は、高分子化合物を100重量部とした場合、金属材料および炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料は10000重量部以下であることが好ましく、5000重量部以下であることがより好ましく、2000重量部以下であることが更に好ましい。
【0138】
本発明の電極形成用の組成物から形成される電極は、積層構造体における電極として好適に使用することができ、具体的には、発光素子および光電変換素子における電極に好適に使用することができる。本発明の電極形成用の組成物から形成される電極は、発光素子および光電変換素子の陰極として使用することが好ましい。
【0139】
本発明の電極形成用の組成物は、式(6)で表されるイオン性化合物をさらに含んでいることが好ましい。本発明の電極形成用の組成物から形成される電極の導電性がより優れるためである。
【0140】
【化33】
(式(6)中、
aおよびbは、それぞれ独立に、1以上の整数である。
M
2は、金属カチオンまたは式:NR
34で表されるアンモニウムカチオンであり、R
3は、前記と同じ意味を表し、
Z
2は、アニオンであり、
M
2およびZ
2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。)
【0141】
前記M
2が金属カチオンである場合、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたは周期表第3〜13族の金属元素からなる金属カチオンが好ましく、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、周期表第3〜4族の金属元素からなる金属カチオンまたは周期表第12〜13族の金属元素からなる金属カチオンがより好ましく、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたは周期表第3〜4族の金属元素からなる金属カチオンが更に好ましく、アルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンが特に好ましい。
【0142】
前記金属カチオンおよび前記アルカリ土類金属カチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウムまたはカルシウムのカチオンが好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたはセシウムのカチオンがより好ましい。
【0143】
前記Z
2としては、例えば、NO
3−、SO
42−、HCO
3−、CO
32−、F
−、Cl
−、Br
−、I
−、TfO
−、Tf
2N
−、CH
3CO
2−、CF
3CO
2−、C
6F
5CO
2−、HO
−、NC
−、TsO
−、MsO
−、R
32P(=O)O
−、{[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4B}
−、(Ph
4B)
−、[(1−Imidazoly)
4B]
−、OCl
−、O
2Cl
−、O
3Cl
−、O
4Cl
−、BF
4−およびPF
6−が挙げられる。これらの中でも、F
−、TfO
−、Tf
2N
−、CH
3CO
2−、CF
3CO
2−、C
6F
5CO
2−、TsO
−、MsO
−、R
32P(=O)O
−、{[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4B}
−、(Ph
4B)
−、[(1−Imidazoly)
4B]
−、BF
4−およびPF
6−であることが好ましく、F
−、TfO
−、{[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4B}
−、[(1−Imidazoly)
4B]
−、BF
4−およびPF
6−であることが更に好ましい。Z
2が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0144】
前記aは、1〜6の整数であることが好ましく、1〜4の整数であることがより好ましく、1〜3の整数であることが更に好ましく、1または2であることが特に好ましい。
【0145】
前記bは、1〜6の整数であることが好ましく、1〜4の整数であることがより好ましく、1〜3の整数であることが更に好ましく、1または2であることが特に好ましい。
【0146】
前記式(6)で表されるイオン性化合物としては、CsOH、Cs
2CO
3、CsF、CsOTf、CsB[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4、CsB[1−Imidazoly]
4、RbOH、Rb
2CO
3、RbF、RbOTf、RbB[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4、RbB[1−Imidazoly]
4、KOH,K
2CO
3、KF、KOTf、KB[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4、KB[1−Imidazoly]]
4、NaOH、Na
2CO
3、NaF、NaOTf、NaB[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4、NaB[1−Imidazoly]
4、LiOH、Li
2CO
3、LiF、LiOTf、LiB[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4またはLiB[1−Imidazoly]
4が好ましく、CsOH、Cs
2CO
3、CsF、CsOTf、CsB[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4、CsB[1−Imidazoly]
4、Li
2CO
3、LiF、LiOTf、LiB[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4またはLiB[1−Imidazoly]
4がより好ましく、CsOH、Cs
2CO
3、CsF、CsOTf、CsB[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4またはCsB[1−Imidazoly]
4が更に好ましく、CsOH、Cs
2CO
3またはCsFが特に好ましく、Cs
2CO
3がとりわけ好ましい。
【0147】
本発明の電極形成用の組成物に含まれる前記式(6)で表されるイオン性化合物の割合と、高分子化合物に対して、通常0.01〜1000重量部であり、好ましくは1〜500重量部であり、より好ましくは10〜500重量部であり、更に好ましくは50〜200重量部である。
【0148】
<発光素子>
本発明の発光素子は、陽極、陰極、および、陽極と陰極との間に設置された発光層を有しており、陽極および陰極の少なくとも一方が本発明の電極形成用の組成物から形成される電極であり、さらに任意の層(陽極と発光層の間に設けられた層、および/または、陰極と発光層の間に設けられた層)を有していてもよい。なお、該発光素子は、通常、基板を有している。
【0149】
本発明の発光素子の一態様としては、基板上に陽極が設けられ、その上に発光層が積層され、さらにその上に陰極が積層されたものが挙げられる。他の一態様としては、陰極を基板上に設け、その上に発光層が積層され、さらに上に陽極が積層されたものが挙げられる。該発光素子は、任意の保護膜、バッファー膜、反射層などの他の機能を有する層が設けられていてもよく、封止膜または封止基板が覆い被せられることで、外気と遮断された態様であることが好ましい。また、本発明の発光素子は、基板側から採光する所謂ボトムエミッションタイプ、基板と反対側から採光する所謂トップエミッションタイプ、または両面採光型のいずれのタイプであってもよい。
【0150】
本発明の電極形成用の組成物から電極を形成する方法としては、例えば、溶媒をさらに含む組成物(以下、溶液)を用いて成膜する方法が挙げられる。
【0151】
このような溶液からの成膜に用いる溶媒としては、溶解度パラメーターが9.3以上の「極性の高い溶媒」であることが好ましい。これは該溶媒に溶解しない化合物から成る層の上に、該化合物と該溶媒を含む溶液を塗布することで、積層構造体を作製する方法できるためである。極性の高い溶媒としては、具体的には、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブチルアルコール、アセトニトリル、1,2−エタンジオール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、ニトロベンゼン、ニトロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジオキサン、炭酸プロピレン、ピリジン、二硫化炭素およびこれらの混合溶媒等が挙げられ、これらの中でも、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトニトリル、1,2−エタンジオール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはこれらの混合溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはこれらの混合溶媒が更に好ましく、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合溶媒が特に好ましい。
【0152】
溶液からの成膜方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ノズルコート法等の塗布法が挙げられる。
【0153】
本発明の電極形成用の組成物から形成される電極の膜厚としては、用いる化合物によって最適値が異なるため、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜選択すればよく、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であることが好ましい。発光素子の駆動電圧を低くする観点からは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。
【0154】
本発明の発光素子は、陽極、陰極および発光層を有するが、前述のように、さらに任意の層を有していてもよい。例えば、陽極と発光層との間には正孔注入層、正孔輸送層のうちの1層以上を有することができる。正孔注入層が存在する場合は、発光層と正孔注入層との間に正孔輸送層を有することができる。
一方、陰極と発光層との間には電子注入層、電子輸送層のうちの1層以上を有することができる。電子注入層が存在する場合は、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を有することができる。
【0155】
ここで、陽極とは、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等に正孔を供給するものであり、陰極とは、電子注入層、電子輸送層、発光層等に電子を供給するものである。
発光層とは、電界を印加した際に、陽極側で発光層と隣接する層より正孔を受け取る機能、陰極側で発光層と隣接する層より電子を受け取る機能、受け取った電荷(正孔および電子)を電界の力で移動させる機能、および、正孔と電子の再結合を発光につなげる機能を有する層をいう。
正孔注入層および正孔輸送層とは、陽極から正孔を受け取る機能、正孔を輸送する機能、発光層へ正孔を供給する機能、陰極から注入された電子をブロックする機能のいずれかを有する層をいう。電子注入層および電子輸送層とは、陰極から電子を受け取る機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔をブロックする機能のいずれかを有する層をいう。なお、電子輸送層と正孔輸送層は、総称して電荷輸送層と呼ばれる。また、電子注入層と正孔注入層は、総称して電荷注入層と呼ばれる。
【0156】
即ち、本発明の発光素子は、例えば、下記の層構成(a)を有することができ、または、層構成(a)から、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層の1層以上を省略した層構成を有することができる。なお、符号「−」は各層が隣接して積層されていることを表す。
(a)陽極−正孔注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−電子注入層−陰極
【0157】
本発明の発光素子の層構成の好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。下記層構成において、陽極および陰極の少なくとも一方が本発明の電極形成用の組成物から形成される電極である。
(b)陽極−正孔輸送層−発光層−陰極
(c)陽極−発光層−電子輸送層−陰極
(d)陽極−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−陰極
【0158】
本発明において、電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた発光素子としては、陰極に隣接して電子注入層を設けた発光素子、陽極に隣接して正孔注入層を設けた発光素子が挙げられる。具体的には、例えば、以下の(e)〜(p)の構造が例示される。
(e)陽極−正孔注入層−発光層−陰極
(f)陽極−発光層−電子注入層−陰極
(g)陽極−正孔注入層−発光層−電子注入層−陰極
(h)陽極−正孔注入層−正孔輸送層−発光層−陰極
(i)陽極−正孔輸送層−発光層−電子注入層−陰極
(j)陽極−正孔注入層−正孔輸送層−発光層−電子注入層−陰極
(k)陽極−正孔注入層−発光層−電子輸送層−陰極
(l)陽極−発光層−電子輸送層−電子注入層−陰極
(m)陽極−正孔注入層−発光層−電子輸送層−電子注入層−陰極
(n)陽極−正孔注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−陰極
(o)陽極−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−電子注入層−陰極
(p)陽極−正孔注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−電子注入層−陰極
【0159】
本発明の電極形成用の組成物から形成される電極は、陰極であることが好ましい。
【0160】
本発明の発光素子は、さらに電極との密着性向上や電極からの電荷(即ち正孔または電子)の注入の改善のために、電極に隣接して絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層(正孔輸送層および電子輸送層)または発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。積層する層の順番や数、および、各層の厚さについては、発光素子の発光効率や素子寿命を勘案して適宜用いることができる。
【0161】
次に、本発明の発光素子を構成する各層の材料および作製方法について、より具体的に説明する。
【0162】
<基板>
本発明の発光素子を構成する基板は、通常電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、金属フィルム、シリコン基板、これらを積層したものなどが用いられる。該基板としては、市販のものが入手可能であり、または公知の方法により製造することができる。
本発明の発光素子がディスプレイ装置の画素を構成する場合には、当該基板上に画素駆動用の回路が設けられていてもよいし、当該駆動回路上に平坦化膜が設けられていてもよい。平坦化膜が設けられる場合には、該平坦化膜の中心線平均粗さ(Ra)が「Ra<10nm」を満たすことが好ましい。Raは、日本工業規格JISのJIS−B0601−2001に基づいて、JIS−B0651からJIS−B0656およびJIS−B0671−1等を参考に計測できる。
【0163】
<陽極>
本発明の発光素子を構成する陽極は、本発明の電極形成用の組成物から形成される電極ではない場合、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等で用いられる有機半導体材料への正孔供給の観点から、かかる陽極の発光層側表面の仕事関数が4.0eV以上であることが好ましい。陽極の材料には、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物等の電気伝導性化合物、または、これらの混合物等を用いる事ができる。具体的には、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化モリブデン等の導電性金属酸化物、または、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの導電性金属酸化物と金属との混合物等が挙げられる。
該陽極は、これら材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。多層構造である場合は、仕事関数が4.0eV以上である材料を発光層側の最表面層に用いることがより好ましい。
【0164】
前記陽極の作製方法としては、特に限定されず公知の方法が利用でき、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
【0165】
前記陽極の膜厚は、通常10nm〜10μmであり、好ましくは40nm〜500nmである。また、短絡等の電気的接続の不良を防止する観点から、陽極の発光層側表面の中心線平均粗さ(Ra)は「Ra<10nm」を満たす事が望ましく、より好ましくは「Ra<5nm」である。
【0166】
前記陽極は、前記方法にて作製された後に、UVオゾン、シランカップリング剤、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンなどの電子受容性化合物を含む溶液などで表面処理を施される場合がある。表面処理によって該陽極に接する有機層との電気的接続が改善されるためである。
【0167】
本発明の発光素子において、陽極を光反射電極として用いる場合には、かかる陽極が、高光反射性金属からなる光反射層と4.0eV以上の仕事関数を有する材料を含む高仕事関数材料層を組み合わせた多層構造であることが好ましい。
該陽極の具体的な構成例としては、以下が例示される。十分な光反射率を得る為に、Al、Ag、Al合金、Ag合金、Cr合金等の高光反射性金属層の膜厚は50nm以上である事が好ましく、より好ましくは80nm以上である。ITO、IZO、MoO
3などの高仕事関数材料層の膜厚は通常、5nm〜500nmの範囲である。
(i) Ag−MoO
3
(ii) (Ag-Pd-Cu合金)−(ITOおよび/またはIZO)
(iii) (Al-Nd合金)−(ITOおよび/またはIZO)
(iV) (Mo-Cr合金)−(ITOおよび/またはIZO)
(V) (Ag-Pd-Cu合金)−(ITOおよび/またはIZO)−MoO
3
【0168】
<正孔注入層>
本発明の発光素子において、正孔注入層を構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、スターバースト型アミン、フタロシアニン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、および、これらを含む重合体が挙げられる。
また、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の導電性金属酸化物、ポリアニリン、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子およびオリゴマー、ポリ(3、4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルフォン酸、ポリピロール等の有機導電性材料およびこれらを含む重合体、アモルファスカーボンを挙げることができる。
さらに、テトラシアノキノジメタン誘導体(例えば2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)、1,4−ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ポリニトロ化合物等のアクセプター性有機化合物、オクタデシルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤等も好適に使用できる。
前記材料は、単一の成分であっても複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記正孔注入層は、前記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0169】
正孔注入層の作製方法としては、公知の種々の方法が利用できる。無機化合物材料の場合は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられ、低分子有機材料の場合は、真空蒸着法、レーザー転写や熱転写等の転写法、溶液からの成膜による方法(後述の高分子バインダーとの混合溶液を用いてもよい)等が挙げられる。また、高分子有機材料では、溶液からの成膜による方法が挙げられる。
【0170】
正孔注入材料が、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等の低分子化合物の場合には、真空蒸着法を用いて正孔注入層を作製する事ができる。
【0171】
また、前記低分子正孔注入材料と高分子化合物バインダーとを分散させた混合溶液を用いて正孔注入層を成膜する事もできる。混合する高分子化合物バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。具体的には、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0172】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、前記正孔注入材料を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒としては、例えば、水、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の含塩素溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル溶媒等が挙げられる。
【0173】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の印刷法等の塗布法を用いることができる。パターン形成が容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の印刷法またはノズルコート法が好ましい。
【0174】
正孔注入層に続いて、正孔輸送層、発光層等を積層する場合、特に、両方の層を塗布法によって作製する場合には、先に塗布した層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解して積層構造を作製できない場合がある。この場合には、下層を溶媒不溶にする方法を用いることができる。溶媒不溶にする方法としては、高分子化合物に架橋基を付け、架橋させて不溶化する方法、芳香族ビスアジドに代表される芳香環を有する架橋基を持った低分子化合物を架橋剤として混合し、架橋させて不溶化する方法、アクリレート基に代表される芳香環を有しない架橋基を持った低分子化合物を架橋剤として混合し、架橋させて不溶化する方法、下層を紫外光に感光させて架橋させ、上層の製造に用いる有機溶媒に対して不溶化する方法、下層を加熱して架橋させ、上層の製造に用いる有機溶媒に対して不溶化する方法などが挙げられる。下層を加熱する場合の加熱の温度は通常100℃〜300℃程度であり、時間は通常1分〜1時間程度である。
また、架橋以外で下層を溶解させずに積層するその他の方法として、隣り合った層の製造に異なる極性の溶液を用いる方法があり、例えば、下層に、水、アルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロジノンに代表される親水性溶媒には可溶であり、かつ、キシレン、トルエンなどの親油性溶媒には不溶な高分子化合物を用い、上層に親油性溶媒に可溶の高分子化合物を用いて、塗布しても下層が溶解しないようにする方法などがある。
【0175】
正孔注入層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、発光素子の駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、厚すぎると、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔注入層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは10nm〜100nmである。
【0176】
<正孔輸送層>
本発明の発光素子において、正孔輸送層を構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、およびこれらの構造を含む重合体が挙げられる。また、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子およびオリゴマー、ポリピロール等の有機導電性材料も挙げることができる。
前記材料は、単一の成分であっても複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記正孔輸送層は、前記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0177】
具体的には、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報、特開平5−263073号公報、特開平6−1972号公報、WO2005/52027、特開2006−295203号公報等に開示される化合物が正孔輸送層の材料として使用できる。中でも、繰り返し単位として2価の芳香族アミン残基を含む重合体が、好適に用いられる。
【0178】
繰り返し単位として2価の芳香族アミンを含む重合体は、さらに他の繰り返し単位を有していてもよい。他の繰り返し単位としては、フェニレン基、フルオレンジイル基等のアリーレン基等が挙げられる。また、該重合体としては、架橋基を繰り返し単位として含んでいるものがより好ましい。
【0179】
正孔輸送層の作製方法としては、正孔注入層の作製と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、前述のスピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法等の塗布法および印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法等が挙げられる。溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、前述の正孔注入層の成膜方法で例示したものと同様の溶媒が挙げられる。
【0180】
正孔輸送層に続いて、発光層などの化合物層を塗布法にて作製する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、前述の正孔注入層の成膜方法で例示したものと同様の方法が挙げられる。
【0181】
正孔輸送層の膜厚は、用いる材料によって最適値が異なり、発光素子の駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、厚すぎると、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。
【0182】
<発光層>
本発明の発光素子における発光層が、高分子化合物を含む場合、該高分子化合物材料としては、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール、ポリアルキルチオフェン等の共役高分子化合物を好適に用いることができる。
【0183】
本発明の発光素子における発光層は、非共役高分子化合物と前記有機色素や前記金属錯体などの発光性化合物との組成物から構成されてもよい。非共役高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。前記の非共役高分子化合物は、側鎖に、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン化合物、ポルフィリン化合物および有機シラン誘導体からなる群から選ばれる1つ以上の誘導体若しくは化合物で表される構造を有していてもよい。
【0184】
本発明の発光素子における発光層が、低分子化合物を含む場合、該低分子化合物としては、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、カルバゾール、キナクリドン等の低分子色素化合物、ナフタレン誘導体、アントラセン若しくはその誘導体、ペリレン若しくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系、インジゴ系などの色素類、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、フタロシアニン若しくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン若しくはその誘導体、または、テトラフェニルブタジエン若しくはその誘導体等が挙げられる。
【0185】
本発明の発光素子における発光層が燐光を発光する金属錯体を含む場合、該金属錯体としては、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、チエニルピリジン配位子含有イリジウム錯体、フェニルキノリン配位子含有イリジウム錯体、トリアザシクロノナン骨格含有テルビウム錯体等が挙げられる。
【0186】
前記発光層に用いられる高分子化合物の具体例としては、例えば、WO97/09394、WO98/27136、WO99/54385、WO00/22027、WO01/19834、GB2340304A、GB2348316、US573636、US5741921、US5777070、EP0707020、特開平9−111233号公報、特開平10−324870号公報、特開平2000−80167号公報、特開2001−123156号公報、特開2004−168999号公報、特開2007−162009号公報、「有機EL素子の開発と構成材料(シーエムシー出版、2006年発行)」等に開示されているポリフルオレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体および共重合体、芳香族アミン、その誘導体および共重合体が挙げられる。また、前記発光層に用いられる低分子化合物の具体例としては、例えば、特開昭57−51781号公報、「有機薄膜仕事関数データ集[第2版](シーエムシー出版、2006年発行)」、「有機EL素子の開発と構成材料(シーエムシー出版、2006年発行)」等に記載されている化合物が挙げられる。
高分子化合物および低分子化合物は、単成分であっても複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記発光層は、高分子化合物および低分子化合物の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0187】
前記発光層の成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法等の前記塗布法および印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法などが挙げられる。溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0188】
前記発光層に続いて、電子輸送層等の層を塗布法にて成膜する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法での例示と同様の方法で下層を溶媒不溶にすることができる。
【0189】
前記発光層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、発光素子の駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、また、厚すぎると素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、発光層の膜厚としては、例えば5nm〜1μmであり、好ましくは10nm〜500nmであり、さらに好ましくは30nm〜200nmである。
【0190】
<電子輸送層>
本発明の発光素子において、電子輸送層を構成する材料としては、公知のものが使用でき、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、8−キノリノール誘導体の金属錯体、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体等が挙げられる。
これらの中でも、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、8−ヒドロキシキノリン誘導体若しくはその金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましい。
前記材料は、単一成分であっても複数の成分からなる組成物であってもよい。また、電子輸送層は、前記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0191】
電子輸送層の作製方法としては、正孔注入層の作製と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法等の前記塗布法および印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法などが挙げられる。
溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、前述の正孔注入層の成膜方法で例示した溶媒と同様のものが挙げられる。
【0192】
電子輸送層に続いて、電子注入層などの化合物層を塗布法にて作製する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、前述の正孔注入層の成膜方法で例示したものと同様の方法が挙げられる。
【0193】
電子輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、発光素子の駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発しないような厚さが必要であり、厚すぎると、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。
【0194】
<電子注入層>
本発明の発光素子において、電子注入層を構成する材料としては、公知のものが使用でき、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、8−キノリノール誘導体の金属錯体、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等が挙げられる。
前記材料は、単成分であっても複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記電子注入層は、前記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0195】
電子注入層の作製方法に制限はなく、正孔注入層の作製方法と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法等の塗布法および印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法等が挙げられる。
溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、前述の正孔注入層の成膜方法で例示した溶媒と同様のものが挙げられる。
【0196】
電子注入層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、発光素子の駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発しないような厚さが必要であり、厚すぎると、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子注入層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。
【0197】
<陰極>
本発明の発光素子を構成する陰極は、本発明の電極形成用の組成物から形成される電極であることが好ましいが、本発明の電極形成用の組成物から形成される電極ではない場合、単一の材料または複数の材料からなる単層構造であってもよいし、複数層からなる多層構造であってもよい。多層構造である場合、第1陰極層およびカバー陰極層の2層構造、または、第1陰極層、第2陰極層およびカバー陰極層の3層構造が好ましい。ここで、第1陰極層は、陰極の中で最も発光層側にある層をいい、カバー陰極層は2層構造の場合は第1陰極層を、3層構造の場合は第1陰極層と第2陰極層を覆う層をいう。電子供給能の観点からは、第1陰極層の材料の仕事関数が3.5eV以下であることが好ましい。また、仕事関数が3.5eV以下の金属の酸化物、フッ化物、炭酸化物、複合酸化物等も第1陰極層材料として好適に用いることができる。カバー陰極層の材料には、抵抗率が低く、水分への耐腐食性が高い金属、金属酸化物等が好適に用いられる。
【0198】
前記第1陰極層材料の具体例としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、該金属を1種類以上含む合金、該金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、複合酸化物およびこれらの混合物からなる群より選択される1つ以上の材料等が挙げられる。
アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物および複合酸化物の例としては、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、モリブデン酸カリウム、チタン酸カリウム、タングステン酸カリウム、モリブデン酸セシウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属の例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、複合酸化物の例としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸化バリウム、モリブデン酸バリウム、タングステン酸バリウム等が挙げられる。
アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選択される金属を1種類以上含む合金の例としては、Li−Al合金、Mg−Ag合金、Al−Ba合金、Mg−Ba合金、Ba−Ag合金、Ca−Bi−Pb−Sn合金等が挙げられる。
第2陰極層の材料としては、第1陰極層の材料と同様の材料が例示される。なお、第1陰極層材料として例示した材料と前記電子注入層を構成する材料として例示した材料との組成物も、第1陰極層として使用することができる。
【0199】
前記カバー陰極層材料の具体例としては、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、スズ、鉛、ニッケル、チタン等の低抵抗金属、および、これらを含む合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化モリブデン等の導電性金属酸化物が挙げられ、さらに、該導電性金属酸化物と金属との混合物、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ等の導電性炭素等も挙げられる。
【0200】
陰極が多層構造である場合の具体例としては、Mg/Al、Ca/Al、Ba/Al、NaF/Al、KF/Al、RbF/Al、CsF/Al、Na
2CO
3/Al、K
2CO
3/Al、Cs
2CO
3/Al等の2層構造(第1陰極層/カバー陰極層)、LiF/Ca/Al、NaF/Ca/Al、KF/Ca/Al、RbF/Ca/Al、CsF/Ca/Al、Ba/Al/Ag、KF/Al/Ag、KF/Ca/Ag、K
2CO
3/Ca/Ag等の3層構造(第1陰極層/第2陰極層/カバー陰極層)が挙げられる。ここで、符号「/」は各層が隣接している事を表す。
なお、第2陰極層の材料が第1陰極層の材料に対して還元作用を有することが好ましい。
ここで、材料間の還元作用の有無および程度は、例えば、化合物間の結合解離エネルギー(D
0)から見積もることができる。即ち、第2陰極層を構成する材料による、第1陰極層を構成する材料に対する還元反応において、結合解離エネルギーが正であるような組み合わせである場合、第2陰極層の材料が第1陰極層の材料に対して還元作用を有する。
結合解離エネルギーは、「電気化学便覧第5版(丸善、2000年発行)」、「熱力学データベースMALT(科学技術社、1992年発行)」等で参照できる。
【0201】
陰極の作製方法は、公知の種々の方法が利用でき、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
金属、金属の酸化物、フッ化物、炭酸化物を陰極として用いる場合は、真空蒸着法が多用され、高沸点の金属酸化物、金属複合酸化物、インジウムスズ(ITO)に代表される導電性金属酸化物等を陰極として用いる場合は、スパッタリング法、イオンプレーティング法が多用される。
異種材料との組成物を成膜する場合には、共蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が多用される。特に、低分子有機物、および、金属、金属の酸化物、フッ化物若しくは炭酸化物との組成物を成膜する場合には、共蒸着法が好ましい。
【0202】
陰極の膜厚は用いる材料、層構造によって最適値が異なり、発光素子の駆動電圧、発光効率、素子寿命が適度な値となるよう選択すればよい。通常、第1陰極層の膜厚は0.5nm〜20nmの範囲であり、カバー陰極層の膜厚は10nm〜1μmの範囲である。例えば、第1陰極層にBaまたはCaを、カバー陰極層にAlを用いる場合、BaまたはCaの膜厚は2nm〜10nmであり、Alの膜厚は10nm〜500nmであることが好ましく、第1陰極層にNaFまたはKF、カバー陰極層にAlを用いる場合、NaFまたはKFの膜厚は1nm〜8nmであり、Alの膜厚は10nm〜500nmであることが好ましい。
【0203】
本発明の発光素子において、陰極を光透過性電極として用いる場合、カバー陰極層の可視光透過率は40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。該可視光透過率は、カバー陰極層材料として酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化モリブデン等の透明導電性金属酸化物を用いることで達成される。また、該可視光透過率は、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、スズ、鉛等の低抵抗金属およびこれらを含む合金を用いたカバー陰極層の膜厚を30nm以下にすることでも達成される。例えば、第1陰極層にBaを5nm、カバー陰極層にAgを15nm、とした陰極構造では、50%以上の可視光透過率が達成される。
【0204】
また、前記可視光透過率を向上させる事を目的として、前記カバー陰極層上に反射防止層を設ける事もできる。該反射防止層に用いることができる材料としては、屈折率が1.8〜3.0程度であることが好ましく、例えば、ZnS,ZnSe,WO
3等が挙げられる。反射防止層の膜厚は材料の組み合せによって異なるが、通常10nm〜150nmの範囲である。例えば、陰極として、第1陰極層としてBaを5nm、カバー陰極層としてAgを15nmとした陰極構造に、さらに反射防止層としてWO
3を21nm積層させると、可視光透過率は10%程度改善される。
【0205】
<絶縁層>
本発明の発光素子が、任意に有しうる膜厚5nm以下の絶縁層は、電極との密着性向上、電極からの電荷(即ち正孔または電子)注入改善、隣接層との混合防止などの機能を有するものである。絶縁層の材料としては、例えば、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料(ポリメチルメタクリレート等)が挙げられる。膜厚5nm以下の絶縁層が設けられた発光素子としては、陰極に隣接して膜厚5nm以下の絶縁層を設けたもの、および、陽極に隣接して膜厚5nm以下の絶縁層を設けたものが挙げられる。
【0206】
本発明の発光素子は、例えば、基板上に各層を順次積層することによる製造することができる。具体的には、基板上に陽極を設け、その上に正孔注入層、正孔輸送層等の層を必要に応じて設け、その上に発光層を設け、その上に電子輸送層、電子注入層等の層を必要に応じて設け、さらにその上に、陰極を積層することにより製造することができる。
【0207】
本発明の発光素子を用いてディスプレイ装置を製造することができる。該ディスプレイ装置は、発光素子を1画素単位として備える。画素単位の配列の態様は、特に限定されず、テレビ等のディスプレイ装置で通常採られる配列とすることができ、多数の画素が共通の基板上に配列された態様とすることができる。本発明の装置において、基板上に配列される画素は、必要に応じて、バンクで規定される画素領域内に形成することができる。
【0208】
前記装置はさらに、必要に応じて、発光層等を挟んで基板と反対側に、封止部材を有していてもよい。また、必要に応じて、カラーフィルターまたは蛍光変換フィルター等のフィルター、画素の駆動に必要な回路および配線等、ディスプレイ装置を構成するための任意の構成要素を有していてもよい。
【0209】
<光電変換素子>
本発明の積層構造体を用いた光電変換素子は、陰極、陽極、および、陰極と陽極との間に設置された電荷分離層を有しており、陽極および陰極の少なくとも一方が本発明の電極形成用の組成物から形成される電極であり、さらに任意の層(陰極と電荷分離層の間に設けられた層、および/または、陽極と電荷分離層の間に設けられた層)を有していてもよい。
【0210】
本発明の光電変換素子の電荷分離層には、電子供与性化合物と電子受容性化合物とが含まれている。電子供与性化合物としては、共役高分子化合物があげられ、具体的には、チオフェンジイル基を含む高分子化合物、フルオレンジイル基を含む高分子化合物等があげられる。また、電子受容性化合物としては、フラーレンおよびフラーレン誘導体等があげられる。
【0211】
本発明の光電変換素子は、通常支持基板上に作製される。該支持基板としては有機光電変換素子としての特性を阻害しなければ材質は特に制限されないが、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板も用いることができる。
【0212】
本発明の光電変換素子は、公知の方法、例えば、「Synth.Met.,102,982(1999)」に記載の方法や「Science,270,1789(1995)」に記載の方法により製造することができる。
【0213】
本発明の電極形成用の組成物に含まれる高分子化合物としては、式(7)で表される構成単位を含む高分子化合物を好適に使用することができる。
【0214】
【化34】
(式(7)中、
m
3は、1以上の整数である。
R
4は、(m
3+1)価の有機基であり、
X
4は、ラクタム構造を有する1価の有機基、または、同一の芳香族複素環が直接結合した構造を有する1価の有機基である。
複数存在するR
4、X
4およびm
3は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0215】
前記m
3およびR
4の例および好ましい形態は、前記式(2)におけるm
2およびR
2の例および好ましい形態と同様である。
【0216】
前記X
4がラクタム構造を有する1価の有機基である場合、ラクタム構造としては、3〜10員環のラクタム構造が好ましく、4〜7員環のラクタム構造がより好ましく、5〜6員環のラクタム構造が更に好ましく、5員環であるピロリドン構造が特に好ましい。
【0217】
前記式(7)で表される構成単位は、式(8)、式(9)または式(10)で表される構成単位が好ましい。
【0218】
【化35】
(式(8)中、
R
5およびR
6は、それぞれ独立に、2価の有機基であり、複数存在するR
5およびR
6は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
(式(9)中、
R
5およびR
6は、それぞれ独立に、2価の有機基であり、複数存在するR
5およびR
6は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
(式(10)中、R
5は、2価の有機基であり、複数存在するR
5は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0219】
前記R
5としては、例えば、置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基が挙げられ、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜60のヒドロカルビレン基であることが好ましく(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない)、ヒドロカルビレン基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、α,α−ジメチレンベンジル基、1−フェネチレン基、2−フェネチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、オレイレン基、フェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、3,5−ジフェニルフェニレン基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基およびフェナントリレン基が挙げられ、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、フェニレン基、トリレン基またはビフェニレン基が好ましく、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ビニレン基またはフェニレン基がより好ましく、
エチレン基、プロピレン基、ヘキシレン基またはフェニレン基が更に好ましい。
【0220】
前記R
5は、前記式(R)で表される2価の基であってもよい。
【0221】
前記R
5が前記式(R)で表される2価の基の場合、前記Eとしては、例えば、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜60のヒドロカルビレン基であることが好ましく(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない)、ヒドロカルビレン基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、α,α−ジメチレンベンジル基、1−フェネチレン基、2−フェネチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、オレイレン基、フェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、3,5−ジフェニルフェニレン基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基およびフェナントリレン基が挙げられ、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、フェニレン基、トリレン基またはビフェニレン基が好ましく、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ビニレン基またはフェニレン基がより好ましく、
エチレン基、プロピレン基、ブチレン基またはヘキシレン基が更に好ましい。
【0222】
前記R
5が前記式(R)で表される2価の基の場合、前記Aとしては、酸素原子または窒素原子であることが好ましい。
【0223】
前記R
5が前記式(R)で表される2価の基の場合、前記rとしては、2〜8の整数であることが好ましく、2〜6の整数であることがより好ましく、2〜4の整数であることが更に好ましい。
【0224】
前記R
6としては、例えば、置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基が挙げられ、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜60のヒドロカルビレン基であることが好ましく(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない)、ヒドロカルビレン基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、α,α−ジメチレンベンジル基、1−フェネチレン基、2−フェネチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、オレイレン基、フェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、3,5−ジフェニルフェニレン基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基およびフェナントリレン基が挙げられ、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、フェニレン基、トリレン基またはビフェニレン基が好ましく、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ビニレン基またはフェニレン基がより好ましく、
エチレン基、プロピレン基、ヘキシレン基またはフェニレン基が更に好ましい。
【0225】
前記X
4がラクタム構造を有する1価の有機基である場合、前記式(7)で表される構成単位は、式FL−1〜FL−36のいずれかで表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団であることが好ましい。これらの中でも、式FL−1、FL−3、FL−5、FL−7、FL−9、FL−11、FL−13、FL−15、FL−17、FL−19、FL−21、FL−23、FL−25、FL−27またはFL−29で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団であることがより好ましく、式FL−1、FL−3、FL−5、FL−19、FL−21、FL−23、FL−25、FL−27またはFL−29で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団であることが更に好ましく、式FL−1、FL−25またはFL−29で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団であることが特に好ましい。なお、これらの化合物は置換基を有していてもよい。
【0232】
前記X
4が同一の芳香族複素環が直接結合した構造を有する1価の有機基である場合、該芳香族複素環としては、前記式H−1〜H−40のいずれかで表される芳香族複素環式化合物が好ましい。これらの中でも、前記式H−3、H−5、H−6、H−7、H−8、H−11またはH−12で表される芳香族複素環式化合物であることがより好ましく、前記式H−5またはH−36で表される芳香族複素環式化合物であることが更に好ましい。なお、前記式H−1〜H−40で表される芳香族複素環式化合物は置換基を有していてもよい。
【0233】
前記X
4が同一の芳香族複素環が直接結合した構造を有する1価の有機基である場合、前記式(7)で表される構成単位は、式7−1〜7−28のいずれかで表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団であることが好ましい。これらの中でも、式7−1、7−2、7−4、7−5、7−8、7−11、7−12、7−15、7−16、7−17、7−18、7−19、7−27または7−28で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団であることがより好ましく、式7−2、7−4、7−11、7−15、7−17、7−18、7−27または7−28で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団であることが更に好ましく、式7−4、7−17、7−18または7−28で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団であることが特に好ましい。なお、式7−1〜7−28で表される化合物は置換基を有していてもよい。
【0239】
前記X
4が同一の芳香族複素環が直接結合した構造を有する1価の有機基である場合、前記式(7)で表される構成単位は、式(11)で表される構成単位であることが好ましい。なお、式(11)で表される構成単位は置換基を有していてもよい。
【0240】
【化47】
(式(11)中、R
5は、2価の有機基であり、複数存在するR
5は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0241】
前記式(11)で表される構成単位におけるピリジン環は置換基を有していてもよく、置換基としてはヒドロカルビル基が好ましい。ヒドロカルビル基としては、ヒドロカルビル基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
置換基であるヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1-ピレニル基、クリセニル基、テトラセニル基およびコロニル基が挙げられ、
好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基または9−フェナントリル基であり、
より好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基またはフェニル基であり、
更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基またはフェニル基である。
【0242】
前記式(11)で表される構成単位の割合は、高分子化合物に含まれる全構成単位に対して、通常0.1モル%以上100モル%以下であり、本発明の高分子化合物が簡便に合成できるので、1モル%以上80モル%以下であることが好ましく、2.5モル%以上50モル%以下であることがより好ましい。
【0243】
本発明の高分子化合物は、前記式(7)で表される構成単位以外の構成単位を含んでいてもよい。式(7)で表される構成単位以外の構成単位としては、前記式(1)、前記式(3)および前記式(4)で表される構成単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位挙げられ、式(1)で表される構成単位を含むことが好ましい。式(1)、式(3)および式(4)で表される構成単位の合計の割合は、高分子化合物に含まれる全構成単位に対して、通常50モル%以上であり、70モル%以上であることが好ましい。
【0244】
本発明の高分子化合物は、前記式(7)で表される構成単位以外の構成単位として、前記式CC−1〜CC−18のいずれかで表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団を含んでいてもよい。これらの中でも、式CC−1、CC−2、CC−12、CC−14、CC−15、CC−16またはCC−18で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団を含んでいることが好ましく、式CC−1、CC−2、CC−12、CC−15またはCC−16で表される化合物の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団を含んでいることがより好ましい。前記式CC−1〜CC−18で表される化合物は置換基を有していてもよい。
【0245】
本発明の高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、溶媒に対する溶解性が良好となるので、2×10
3以上1×10
6以下であることが好ましく、2×10
3以上5×10
5以下であることがより好ましく、2×10
3以上4×10
5以下であることが更に好ましい。
【0246】
前記式(7)で表される高分子化合物の原料として、式(12)で表される化合物を好適に使用することができる。
【0247】
【化48】
(式(12)中、
m
4は、1以上の整数である。
R
7は、(m
4+1)価の有機基であり、
X
5は、ラクタム構造を有する1価の有機基、または、同一の芳香族複素環が直接結合した構造を有する1価の有機基であり、
Yは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、パラトルエンスルホナート基、トリフルオロメタンスルホナート基、メタンスルホナート基、ホウ酸残基またはホウ酸エステル基である。
複数存在するR
7、X
5、Yおよびm
4は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0248】
前記R
7の例および好ましい形態は、前記式(7)におけるR
4の例および好ましい形態と同様である。また、前記X
5の例および好ましい形態は、前記式(7)におけるX
4の例および好ましい形態と同様である。また、前記m
4の例および好ましい形態は、前記式(7)におけるm
3の例および好ましい形態と同様である。
【0249】
前記Yとしては、本発明の化合物を簡便に合成できるので、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であることが好ましく、臭素原子またはヨウ素原子であることがより好ましく、臭素原子であることが更に好ましい。
【0250】
前記Yとしては、本発明の化合物を簡便に合成できるので、ホウ酸残基またはホウ酸エステル基であることも好ましい。ホウ酸残基とは、ホウ酸残基とは、−B(OH)
2で表される基を意味する。ホウ酸エステル基とは、例えば、下記式で表される基を意味する。
【0252】
前記X
5がラクタム構造を有する1価の有機である場合、前記式(12)で表される化合物としては、式(13)〜式(15)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0253】
【化50】
(式(13)中、
R
11およびR
12は、それぞれ独立に、2価の有機基であり、複数存在するR
11およびR
12は、互いに同一でも異なっていてもよい。
Yは、前記と同じ意味を表す。)
(式(14)中、
R
11およびR
12は、それぞれ独立に、2価の有機基であり、複数存在するR
11およびR
12は、互いに同一でも異なっていてもよい。
Yは、前記と同じ意味を表す。)
(式(15)中、R
11は、2価の有機基であり、複数存在するR
11は、互いに同一でも異なっていてもよい。
Yは、前記と同じ意味を表す。)
【0254】
前記R
11の例および好ましい形態は、前記式(8)〜(10)におけるR
5の例および好ましい形態と同様である。また、前記R
12の例および好ましい形態は、前記式(8)〜(10)におけるR
6の例および好ましい形態と同様である。
【0255】
前記X
5がラクタム構造を有する1価の有機基である場合、前記式(12)で表される化合物としては、式BL−1〜BL−36のずれかで表される化合物であることが好ましい。これらの中でも、式BL−1、BL−3、BL−5、BL−7、BL−9、BL−11、BL−13、BL−15、BL−17、BL−19、BL−21、BL−23、BL−25、BL−27またはBL−29で表される化合物であることがより好ましく、BL−1、BL−3、BL−5、BL−19、BL−21、BL−23、BL−25、BL−27またはBL−29で表される化合物であることが更に好ましく、BL−1、BL−25またはBL−29で表される化合物であることが特に好ましい。なお、式BL−1〜BL−36で表される化合物は置換基を有していてもよい。
【0262】
前記X
5が同一の芳香族複素環が直接結合した構造を有する1価の有機基である場合、同一の芳香族複素環が直接結合した構造を有する1価の有機基としては、前記式H−1〜H−40のいずれかで表される芳香族複素環式化合物が直接結合した構造の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団であることが好ましい。これらの中でも、前記式H−1、H−5、H−8、H−12、H−19、H−23、H−31またはH−36で表される芳香族複素環式化合物が直接結合した構造の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団であることがより好ましく、前記式H−1、H−5、H−8、H−12、H−19またはH−36で表される芳香族複素環式化合物が直接結合した構造の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団であることが更に好ましく、前記式H−5で表される芳香族複素環式化合物が直接結合した構造の環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団であることが特に好ましい。なお、前記式H−1〜H−40で表される芳香族複素環式化合物は置換基を有していてもよい。
【0263】
前記式(12)で表される化合物は、式BP−1〜BP−28のいずれかで表される化合物であることが好ましく、式BP−1、BP−2、BP−4、BP−5、BP−8、BP−11、BP−12、BP−15、BP−16、BP−17、BP−18、BP−19、BP−27またはBP−28で表される化合物であることがより好ましく、式BP−2、BP−4、BP−11、BP−15、BP−17、BP−18、BP−27またはBP−28で表される化合物であることが更に好ましく、式BP−4、BP−17、BP−18またはBP−28で表される化合物であることが特に好ましい。なお、これらの化合物は置換基を有していてもよい。
【0271】
前記X
5が同一の芳香族複素環が直接結合した構造を有する1価の有機基である場合、前記式(12)で表される化合物としては、式(16)で表される化合物であることが好ましい。なお、式(16)で表される化合物は置換基を有していてもよい。
【0272】
【化64】
(式(16)中、R
11およびYは前記と同じ意味を表す。)
【実施例】
【0273】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0274】
<分析方法>
化合物の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製、商品名:HLC−8220GPC)を用いて、ポリスチレン換算の数平均分子量および重量平均分子量として求めた。また、測定する試料は、約0.5重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに50μL注入した。更に、GPCの移動相としてはテトラヒドロフランを用い、0.5mL/分の流速で流した。検出波長を254nmに設定した。
【0275】
化合物の構造分析は、300MHzNMRスペクトロメーター(Varian社製)を用いた、
1H−NMR解析によって行った。また、
1H−NMR解析は、20mg/mLの濃度になるように試料を可溶な重溶媒に溶解させて行った。
【0276】
<合成例1>化合物(A)の合成
2,7−ジブロモ−9−フルオレノン52.5g(0.16mol)、サリチル酸エチル154.8g(0.93mol)およびメルカプト酢酸1.4g(0.016mol)をフラスコに加え、該フラスコ内の気体を窒素ガスで置換した後、メタンスルホン酸(630mL)を加え、得られた混合物を75℃で終夜撹拌した。得られた反応液を放冷し、これを氷水に加えて1時間撹拌したところ固体が生じた。生じた固体をろ別し、加熱したアセトニトリルで洗浄した。洗浄した固体をアセトンに溶解させ、得られたアセトン溶液から固体を再結晶させて、ろ別した。得られた固体(62.7g)、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ−p−トルエンスルホネート86.3g(0.27mol)、炭酸カリウム62.6g(0.45mol)および1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサシクロオクタデカン(「18−クラウン−6」と呼ばれることもある。)7.2g(0.027mol)を、N,N−ジメチルホルムアミド(「DMF」と呼ばれることもある。)(670mL)に溶解させ、得られた溶液をフラスコへ移して105℃で終夜撹拌した。得られた反応液を室温まで放冷した後、氷水を加え、1時間撹拌した。得られた反応液にクロロホルムを加えて分液抽出を行い、得られた溶液を濃縮することで、下記式で表される2,7−ジブロモ−9,9−ビス[3−エトキシカルボニル−4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]フェニル]−フルオレン(化合物(A))(51.2g)を得た。収率は31%であった。
【0277】
【化65】
(A)
【0278】
<合成例2>化合物(B)の合成
内部の気体をアルゴンガスで置換したフラスコに、化合物(A)(15g)、ビス(ピナコラート)ジボロン(8.9g)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(0.8g)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.5g)、酢酸カリウム(9.4g)およびジオキサン(400mL)を加えて混合し、110℃に加熱して、10時間加熱して還流させた。放冷後、得られた反応液をろ過し、得られたろ液を減圧濃縮した。得られた濃縮物をメタノールで3回洗浄した。洗浄された濃縮物をトルエンに溶解させ、得られた溶液に活性炭を加えて攪拌した。その後、得られた混合物をろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することで、下記式で表される2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル-1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ビス[3−エトキシカルボニル−4−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]フェニル]−フルオレン(化合物(B))(11.7g)を得た。
【0279】
【化66】
(B)
【0280】
<合成例3>高分子化合物(Poly−Comp2)の合成
フラスコに、化合物(A)(0.49g)、化合物(B)(0.50g)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(0.35mg)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(5.1mg)、17.5wt%炭酸ナトリウム水溶液(10mL)およびトルエン(20mL)を加え、105℃で6時間反応させた。その後、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(0.35mg)、トルエン(3mL)およびフェニルボロン酸(24mg)を加え、105℃で6時間反応させた。その後、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物(0.45g)および水(9mL)を添加して、85℃で2時間攪拌し、得られた混合物をメタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥した。得られた固体をクロロホルムに溶解させ、アルミナおよびシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、得られた溶出液を濃縮、乾燥させた。得られた濃縮物をトルエンに溶解させて、メタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥し、高分子化合物(Poly−9)を510mg得た。高分子化合物(Poly−Comp1)のポリスチレン換算の数平均分子量は3.6×10
4で、ポリスチレン換算の重量平均分子量は6.6×10
4であった。高分子化合物(Poly−Comp1)は、単量体の仕込み比から、以下の高分子化合物と推定される。
【0281】
【化67】
(Poly−Comp1)
【0282】
高分子化合物(Poly−Comp1)(200mg)をフラスコに加え、テトラヒドロフラン(21mL)、メタノール(6mL)、水(1.0mL)および水酸化セシウム一水和物(120mg)を添加し、65℃で2時間攪拌し、その後、メタノール(11mL)を添加し、更に2時間攪拌した。得られた溶液を濃縮、乾燥させた後、メタノール(6mL)に溶解させ、イソプロピルアルコール(200mL)を用いて再沈殿を行い、残渣を集めた。得られた固形物を乾燥させることで、高分子化合物(Poly−Comp2)203mgを得た。
【0283】
【化68】
(Poly−Comp2)
【0284】
<合成例4>化合物(C)の合成
「特開2012−216821」に記載の方法に従って、化合物(C)を合成した。
【0285】
【化69】
(C)
【0286】
<合成例5>化合物(D)の合成
「特開2012−216821」に記載の方法に従って、化合物(D)を合成した。
【0287】
【化70】
(D)
【0288】
<合成例6>化合物(E)の合成
「Macromolecules 2005, 38, 745−751」に記載の方法に従って、化合物(E)を合成した。
【0289】
【化71】
(E)
【0290】
<合成例7>化合物(F)の合成
フラスコに、N−(3−ヒドロキシプロピル)−2−ピロリドン(109g)を加え、クロロホルム(450mL)に溶解させた。その後、塩化チオニル(157g)を溶解させたクロロホルム(90mL)を加え、室温で6時間攪拌した。得られた溶液に水(1L)を添加し、飽和食塩水で分液洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を減圧留去させることで、N−(3−クロロプロピル)−2−ピロリドン(化合物(F))(78g)を得た。
【0291】
【化72】
(F)
【0292】
<実施例1>化合物(G)の合成
化合物(E)(3g)、化合物(F)(4g)、炭酸ナトリウム(5.27g)、ヨウ化ナトリウム(3.9g)およびアセトニトリル(100mL)をフラスコに加え、30時間還流攪拌した。得られた混合液に水を添加し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を減圧留去させた。得られた粗生成物をシリカゲルカラムにより精製させることで、化合物(G)(2.1g)を得た。
【0293】
【化73】
(G)
【0294】
<実施例2>化合物(H)の合成
フラスコ内の気体をアルゴンガスで置換した後、6,6’−ビ−3−ピコリン(20.3g、110mmol)をテトラヒドロフラン(500ml)に溶解させた溶液を−78℃に冷却した。その後、この溶液にリチウムジイソプロピルアミド(1.08M、THF溶液、関東化学社製、100ml)をテトラヒドロフラン(100ml)で希釈した溶液を滴下した。滴下終了後、0℃まで昇温し、更に1.5時間攪拌した。その後、テトラヒドロフラン(200ml)を加えた後、−78℃まで冷却し、1,3−ジブロモプロパン(50g、248mmol)を加え、攪拌しながら室温まで昇温し、室温にて更に1時間攪拌した。その後、そこへ、水(34ml)を加え攪拌してから、溶媒を減圧留去した後、ジエチルエーテルで抽出した。得られた抽出液を、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液、15重量%食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、固体をろ過により除き、得られたろ液を濃縮し、56.6gの油状物を得た。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製することにより、固体(21.6g)を得た。得られた固体を更に、n−ヘキサンを用いて再結晶し、室温にて減圧乾燥することにより、5−(4−ブロモブチル)−5’−メチル−2,2’−ビピリジル(17.1g)を得た。
【0295】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ(ppm)=8.49(2H)、8.26(2H)、7.61(2H)、3.43(2H)、2.39(3H)、1.81−1.95(4H).
【0296】
フラスコ内の気体をアルゴンガスで置換した後、2,7−ジブロモフルオレノン(9.72g、30mmol)、5−(4−ブロモブチル)−5’−メチル−2,2’−ビピリジル(18.77g、61.5mmol)およびジメチルスルホキシド(100ml)を加え、攪拌した。その後、そこへ、ヨウ化カリウム0.51g(3mmol)および水酸化カリウム(14.3g、255mmol)を加え、室温にて6時間攪拌した後、水で希釈し、2M塩酸水で中和し、酢酸エチルで抽出した。得られた抽出液を、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液、水、15重量%食塩水の順で洗浄した後、活性白土(Fuller’s earth、関東化学社製)を加え攪拌した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過により固体を除き、得られたろ液を濃縮することにより、油状物(85g)を得た。得られた油状物に酢酸エチル(55g)を加え、加熱還流下で攪拌した後に、エタノール(140g)を滴下することにより、固体を析出させた。室温まで冷却後、得られた固体をろ過により取り出し、減圧乾燥し、再結晶(クロロホルムーヘキサン)により、化合物(H)(5.48g)を得た。
【0297】
【化74】
(H)
【0298】
1H−NMR(300MHz、THF−d
8):δ(ppm)=8.42(2H)、8.33−8.28(6H)、7.66−7.64(4H)、7.59−7.56(2H)、7.50−7.44(4H)、2.44−2.38(4H)、2.33(6H)、1.43(4H)、0.80−0.69(4H).
【0299】
<実施例3>高分子化合物(Poly−1)の合成
フラスコに、化合物(A)(0.63g)、化合物(B)(0.63g)、化合物(G)(0.042g)、ビス(トリオルトアニシルホスフィン)ジクロロパラジウム(0.62mg)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(7.1mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(10mL)およびトルエン(20mL)を加え、105℃で4時間反応させた。その後、ビス(トリオルトアニシルホスフィン)ジクロロパラジウム(0.62mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(3mL)、トルエン(3mL)およびフェニルボロン酸(34mg)を加えて2時間攪拌した。その後、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物(0.630g)および水(13mL)を添加して、85℃で2時間攪拌し、得られた混合物をメタノールに滴下し析出物をろ過で回収して乾燥した。得られた固体をクロロホルムに溶解させ、アルミナおよびシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、溶出液を濃縮、乾燥させた。得られた濃縮物をトルエンに溶解させて、メタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥し、高分子化合物(Poly−1)を510mg得た。高分子化合物(Poly−1)のポリスチレン換算の数平均分子量は7×10
3であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は2.5×10
4であった。高分子化合物(Poly−1)は、単量体の仕込み比から、以下の構成単位およびモル比率を有する高分子化合物と推定される。
【0300】
【化75】
(Poly−1)
【0301】
<実施例4>高分子化合物(Poly−2)の合成
高分子化合物(Poly−1)(450mg)をフラスコに加えた後、テトラヒドロフラン(20mL)、メタノール(20mL)、水(0.5mL)および水酸化セシウム一水和物(385mg)を加え、65℃で1.5h攪拌した。その後、メタノール(20mL)を加え、更に2.5h攪拌した。得られた溶液を濃縮・乾燥した後、メタノール(10mL)に溶解させ、イソプロピルアルコール(200mL)を用いて再沈殿を行い、残渣を集めた。得られた固形物を乾燥させることで、高分子化合物(Poly−2)を501mg得た。
【0302】
【化76】
(Poly−2)
【0303】
<実施例5>高分子化合物(Poly−3)の合成
フラスコに、化合物(A)(0.52g)、化合物(B)(0.55g)、化合物(H)(0.047g)、ビス[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル−ジtert−ブチルホスフィン]ジクロロパラジウム(0.85mg)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(6.1mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(10mL)およびトルエン(20mL)を加え、105℃で11時間反応させた。その後、フェニルボロン酸(8mg)を加えて3時間攪拌した後、ビス[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル−ジtert−ブチルホスフィン]ジクロロパラジウム(0.85mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(3mL)、トルエン(3mL)およびフェニルボロン酸(22mg)を加え、4時間攪拌した。その後、そこへ、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物(0.540g)および水(11mL)を加え、85℃で2時間攪拌し、得られた混合物をメタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥した。得られた固体をクロロホルムに溶解させ、アルミナおよびシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、得られた溶出液を濃縮・乾燥させた。得られた濃縮物をトルエンに溶解させた後、メタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥し、高分子化合物(Poly−3)を476mg得た。高分子化合物(Poly−3)のポリスチレン換算の数平均分子量は1.2×10
4であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3.2×10
4であった。高分子化合物(Poly−3)は、単量体の仕込み比から、以下の構成単位およびモル比率を有する高分子化合物と推定される。
【0304】
【化77】
(Poly−3)
【0305】
<実施例6>高分子化合物(Poly−4)の合成
高分子化合物(Poly−3)(440mg)をフラスコに加えた後、テトラヒドロフラン(20mL)、メタノール(10mL)、水(0.4mL)および水酸化セシウム一水和物(376mg)を加え、65℃で0.5時間攪拌した。その後、メタノール(30mL)を加え、更に3時間攪拌した。得られた溶液を濃縮・乾燥した後、メタノール(6mL)に溶解させ、イソプロピルアルコール(180mL)を用いて再沈殿を行い、残渣を集めた。得られた固形物を乾燥させることで、高分子化合物(Poly−4)を446mg得た。
【0306】
【化78】
(Poly−4)
【0307】
<実施例7>高分子化合物(Poly−5)の合成
フラスコに、化合物(A)(0.43g)、化合物(B)(0.70g)、2,6−ジブロモピリジン(0.072g)、ビス(トリオルトアニシルホスフィン)ジクロロパラジウム(0.66mg)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(7.6mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(10mL)およびトルエン(20mL)を加え、105℃で6時間反応させた。その後、ビス(トリオルトアニシルホスフィン)ジクロロパラジウム(0.66mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(3mL)、トルエン(3mL)およびフェニルボロン酸(37mg)を加えて3時間攪拌した後、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物(0.68g)および水(14mL)を加え、85℃で2時間攪拌し、得られた混合物をメタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥した。得られた固体をクロロホルムに溶解させ、アルミナおよびシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、得られた溶出液を濃縮・乾燥させた。得られた濃縮物をトルエンに溶解させた後、メタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥し、高分子化合物(Poly−5)を575mg得た。高分子化合物(Poly−5)のポリスチレン換算の数平均分子量は2.2×10
4であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は6.3×10
4であった。高分子化合物(Poly−5)は、単量体の仕込み比から、以下の構成単位およびモル比率を有する高分子化合物と推定される。
【0308】
【化79】
(Poly−5)
【0309】
<実施例8>高分子化合物(Poly−6)の合成
高分子化合物(Poly−5)(500mg)をフラスコに加えた後、テトラヒドロフラン(20mL)、メタノール(10mL)、水(0.4mL)および水酸化セシウム一水和物(522mg)を加え、65℃で1.5時間攪拌した。その後、メタノール(20mL)を加え、更に2.5時間攪拌した。得られた溶液を濃縮・乾燥した後、メタノール(10mL)に溶解させ、イソプロピルアルコール(200mL)を用いて再沈殿を行い、残渣を集めた。得られた固形物を乾燥させることで、高分子化合物(Poly−6)を580mg得た。
【0310】
【化80】
(Poly−6)
【0311】
<実施例9>高分子化合物(Poly−7)の合成
フラスコに、化合物(B)(0.81g)、2,6−ジブロモピリジン(0.26g)、ビス[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル−ジtert−ブチルホスフィン]ジクロロパラジウム(0.78mg)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(11.1mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(10mL)およびトルエン(20mL)を加え、105℃で3時間反応させた。その後、ビス[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル−ジtert−ブチルホスフィン]ジクロロパラジウム(0.78mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(3mL)、トルエン(3mL)およびフェニルボロン酸(37mg)を加え、3時間攪拌した後、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物(0.12g)および水(5mL)を加え、85℃で2時間攪拌し、得られた混合物をメタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥した。得られた固体をクロロホルムに溶解させ、アルミナおよびシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、得られた溶出液を濃縮・乾燥させた。得られた濃縮物をトルエンに溶解させた後、メタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥し、高分子化合物(Poly−7)を436mg得た。高分子化合物(Poly−7)のポリスチレン換算の数平均分子量は1.6×10
4であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3.6×10
4であった。高分子化合物(Poly−7)は、単量体の仕込み比から、以下の構成単位およびモル比率を有する高分子化合物と推定される。
【0312】
【化81】
(Poly−7)
【0313】
<実施例10>高分子化合物(Poly−8)の合成
高分子化合物(Poly−7)(400mg)をフラスコに加えた後、テトラヒドロフラン(30mL)、メタノール(15mL)、水(0.5mL)および水酸化セシウム一水和物(312mg)を加え、65℃で4時間攪拌した。その後、メタノール(20mL)を加え、更に2.5時間攪拌した。得られた溶液を濃縮・乾燥した後、メタノール(8mL)に溶解させ、イソプロピルアルコール(200mL)を用いて再沈殿を行い、残渣を集めた。得られた固形物を乾燥させることで、高分子化合物(Poly−8)を403mg得た。
【0314】
【化82】
(Poly−8)
【0315】
<実施例11>高分子化合物(Poly−9)の合成
フラスコに、化合物(A)(0.38g)、化合物(B)(0.75g)、化合物(H)(0.062g)、2,6−ジブロモピリジン(0.077g)、ビス[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル−ジtert−ブチルホスフィン]ジクロロパラジウム(0.57mg)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(8.1mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(10mL)およびトルエン(20mL)を加え、105℃で5時間反応させた。その後、ビス[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル−ジtert−ブチルホスフィン]ジクロロパラジウム(1.1mg)を加え、105℃で3.5時間反応させた後、フェニルボロン酸(8mg)を加え、105℃で5.5時間反応させた。その後、そこへ、ビス[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル−ジtert−ブチルホスフィン]ジクロロパラジウム(0.57mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(3mL)、トルエン(3mL)およびフェニルボロン酸(39mg)を加え、3時間攪拌した。得られた混合物に、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物(0.12g)および水(10mL)を加え、85℃で3時間攪拌し、得られた混合物をメタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥した。得られた固体をクロロホルムおよびメタノールの混合溶媒に溶解させ、アルミナおよびシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、得られた溶出液を濃縮・乾燥させた。得られた濃縮物をトルエンに溶解させた後、メタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥し、高分子化合物(Poly−9)を780mg得た。高分子化合物(Poly−9)のポリスチレン換算の数平均分子量は1.9×10
4であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3.8×10
4であった。高分子化合物(Poly−9)は、単量体の仕込み比から、以下の構成単位およびモル比率を有する高分子化合物と推定される。
【0316】
【化83】
(Poly−9)
【0317】
<実施例12>高分子化合物(Poly−10)の合成
高分子化合物(Poly−9)(550mg)をフラスコに加えた後、テトラヒドロフラン(30mL)、メタノール(30mL)、水(0.5mL)および水酸化セシウム一水和物(873mg)を加え、65℃で4時間攪拌した。得られた溶液を濃縮・乾燥した後、メタノール(15mL)に溶解させ、イソプロピルアルコール(300mL)を用いて再沈殿を行い、残渣を集めた。得られた固形物を乾燥させることで、高分子化合物(Poly−10)を648mg得た。
【0318】
【化84】
(Poly−10)
【0319】
<実施例13>高分子化合物(Poly−11)の合成
フラスコに、化合物(A)(0.43g)、化合物(B)(0.68g)、2,5−ジブロモピリミジン(0.077g)、ビス(トリオルトアニシルホスフィン)ジクロロパラジウム(0.66mg)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(7.6mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(10mL)およびトルエン(20mL)を加え、105℃で1.5時間反応させた。その後、ビス(トリオルトアニシルホスフィン)ジクロロパラジウム(0.66mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(3mL)、トルエン(3mL)およびフェニルボロン酸(37mg)を加え、3時間攪拌した後、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物(0.12g)および水(5mL)を加え、85℃で2時間攪拌し、得られた混合物をメタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥した。得られた固体をクロロホルムおよびメタノールの混合溶媒に溶解させ、アルミナおよびシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、得られた溶出液を濃縮・乾燥させた。得られた濃縮物をトルエンに溶解させた後、メタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥し、高分子化合物(Poly−11)を686mg得た。高分子化合物(Poly−11)のポリスチレン換算の数平均分子量は1.3×10
4であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は3.5×10
4であった。高分子化合物(Poly−11)は、単量体の仕込み比から、以下の構成単位およびモル比率を有する高分子化合物と推定される。
【0320】
【化85】
(Poly−11)
【0321】
<実施例14>高分子化合物(Poly−12)の合成
高分子化合物(Poly−11)(550mg)をフラスコに加えた後、テトラヒドロフラン(15mL)、メタノール(25mL)、水(0.5mL)および水酸化セシウム一水和物(835mg)を加え、65℃で4時間攪拌した。得られた溶液を濃縮・乾燥した後、メタノール(10mL)に溶解させ、イソプロピルアルコール(250mL)を用いて再沈殿を行い、残渣を集めた。得られた固形物を乾燥させることで、高分子化合物(Poly−12)を580mg得た。
【0322】
【化86】
(Poly−12)
【0323】
<実施例15>高分子化合物(Poly−13)の合成
フラスコに、化合物(C)(0.49g)、化合物(D)(0.80g)、2,5−ジブロモピリジン(0.12g)、ビス(トリオルトアニシルホスフィン)ジクロロパラジウム(1.1mg)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(13mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(10mL)およびトルエン(20mL)を加え、105℃で1.5時間反応させた。その後、化合物(D)(25mg)を加えて、105℃で1時間反応させた。その後、化合物(D)(218mg)追加し、更に1.5時間攪拌した。得られた混合物に対して、ビス(トリオルトアニシルホスフィン)ジクロロパラジウム(1.1mg)、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液(3mL)、トルエン(3mL)およびフェニルボロン酸(61mg)を加え、2時間攪拌した後、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物(0.12g)および水(5mL)を加え、85℃で2時間攪拌し、得られた混合物をメタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥した。得られた固体をクロロホルムおよびメタノールの混合溶媒に溶解させ、アルミナおよびシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、得られた溶出液を濃縮・乾燥させた。得られた濃縮物をトルエンに溶解させた後、メタノールに滴下し、得られた析出物をろ過で回収して乾燥し、高分子化合物(Poly−13)を686mg得た。高分子化合物(Poly−13)のポリスチレン換算の数平均分子量は9.0×10
3であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は2.9×10
4であった。高分子化合物(Poly−13)は、単量体の仕込み比から、以下の構成単位およびモル比率を有する高分子化合物と推定される。
【0324】
【化87】
(Poly−13)
【0325】
<実施例16>高分子化合物(Poly−14)の合成
高分子化合物(Poly−13)(500mg)をフラスコに加えた後、テトラヒドロフラン(30mL)、メタノール(30mL)、水(0.5mL)および水酸化セシウム一水和物(620mg)を加え、65℃で2時間攪拌した。その後、メタノール(10mL)を加え、更に2時間攪拌した。得られた溶液を濃縮・乾燥した後、メタノール(20mL)に溶解させ、イソプロピルアルコール(250mL)を用いて再沈殿を行い、残渣を集めた。得られた固形物を乾燥させることで、高分子化合物(Poly−14)を552mg得た。
【0326】
【化88】
(Poly−14)
【0327】
<実施例D1>(発光素子D1の作製)
ガラス基板表面に成膜パターニングされたITO陽極(膜厚:45nm)上に、正孔注入材料溶液を塗布し、スピンコート法によって膜厚が60nmになるように正孔注入層を成膜した。
【0328】
正孔注入層が成膜されたガラス基板を窒素ガス雰囲気下で、200℃で10分間加熱した後、ガラス基板を室温まで自然冷却させ、正孔注入層形成済み基板を得た。
【0329】
ここで正孔注入材料溶液としては、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸(H.C.Starck製、PEDOT:PSS溶液、商品名:CLEVIOS(登録商標) P VP AI 4083)を用いた。
【0330】
次に、正孔輸送性高分子材料をキシレンに溶解させることで、0.7重量%の正孔輸送性高分子材料を含む正孔輸送層形成用組成物を得た。
【0331】
ここで、正孔輸送性高分子材料は、以下の方法で合成した。
【0332】
フラスコ内の気体を不活性ガスで置換した後、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(1.4g)、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(6.4g)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N’,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(4.1g)、ビス(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブテンアミン(0.6g)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(1.7g)、酢酸パラジウム(4.5mg)、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン(0.03g)およびトルエン(100mL)を加え、得られた混合物を100℃で2時間加熱攪拌した。その後、ここへ、フェニルボロン酸(0.06g)を加え、得られた混合物を10時間撹拌した。放冷後、水層を除去し、次いで、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え攪拌した後、水層を除去し、得られた有機層を水、酢酸水の順で洗浄した。得られた有機層をメタノールに滴下することで固体を沈殿させ、ろ取、乾燥させることにより、固体を得た。得られた個体をトルエンに溶解させ、シリカゲルおよびアルミナのカラムに通液した。得られた溶液をメタノールに滴下することで固体を沈殿させ、ろ取、乾燥させることにり、正孔輸送性高分子材料(12.1g)を得た。正孔輸送性高分子材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は3.0×10
5であった。
【0333】
正孔輸送性高分子材料は、下記式:
【0334】
【化89】
で表される構成単位と、下記式:
【0335】
【化90】
で表される構成単位と、下記式:
【0336】
【化91】
で表される構成単位を、62.5:30:7.5のモル比(原料の仕込量からの理論値)で有する共重合体である。
【0337】
上記で得た正孔注入層形成済み基板に、正孔輸送層形成用組成物を塗布し、スピンコート法によって膜厚が20nmになるように正孔輸送層を成膜した。正孔輸送層が成膜されたガラス基板を窒素ガス雰囲気下で、180℃で60分間加熱した後、ガラス基板を室温まで自然冷却させ、正孔輸送層形成済み基板を得た。
【0338】
次に、発光性高分子材料をキシレンに溶解させることで、1.4重量%の発光性高分子材料を含む発光層形成用組成物を得た。
【0339】
ここで、発光性高分子材料は、以下の方法で合成した。
【0340】
フラスコ内の気体を不活性ガスで置換した後、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(9.0g)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)1,4−フェニレンジアミン(1.3g)、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ(4−ヘキシルフェニル)フルオレン(13.4g)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(43.0g)、酢酸パラジウム(8mg)、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン(0.05g)およびトルエン(200mL)を加え、得られた混合物を、90℃で8時間加熱攪拌した。その後、そこへ、フェニルボロン酸(0.22g)を加え、得られた混合物を14時間撹拌した。放冷後、水層を除去し、次いで、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え撹拌した後、水層を除去し、得られた有機層を水、酢酸水の順で洗浄した。得られた有機層をメタノールに滴下することで固体を沈殿させ、ろ取、乾燥させることにより固体を得た。得られた個体をトルエンに溶解させ、シリカゲルおよびアルミナのカラムに通液した。得られた溶駅をメタノールに滴下することで固体を沈殿させ、ろ取、乾燥させることにより、発光性高分子材料(12.5g)を得た。発光性高分子材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は3.1×10
5であった。
【0341】
発光性高分子材料は、下記式:
【0342】
【化92】
で表される構成単位と、下記式:
【0343】
【化93】
で表される構成単位と、下記式:
【0344】
【化94】
で表される構成単位を、50:45:5のモル比(原料の仕込量からの理論値)で有する共重合体である。
【0345】
上記で得た正孔輸送層形成済み基板に、発光層形成用組成物を塗布し、スピンコート法によって膜厚が80nmになるように発光層を成膜した。発光層が成膜されたガラス基板を窒素ガス雰囲気下で、130℃で10分間加熱した後、ガラス基板を室温まで自然冷却させ、発光層形成済み基板を得た。
【0346】
次に、4.0重量部の銀ナノ構造体に、0.8重量部の高分子化合物(Poly−2)、0.8重量部の炭酸セシウムおよび94.4重量部のメタノールを混合させ、1時間攪拌を行うことで、陰極形成用組成物を得た。この陰極形成用組成物には、金属材料である銀ナノ構造体と、高分子化合物である高分子化合物(Poly−2)と、イオン性化合物である炭酸セシウムが分散している。
【0347】
ここで、銀ナノ構造体は、下記の方法により合成した。
【0348】
フラスコに、ポリビニルピロリドン(重量平均分子量:5.5×10
4)4.2g、N−ブチルピリジニウム塩化銅0.14gおよびエチレングリコール250mLを加え、ポリビニルピロリドンを溶解させた。その後、そこへ、硝酸銀4.2gを加え、得られた混合液を160℃で120分間攪拌したところ、銀ナノ構造体の分散液が得られた。得られた分散液を40℃まで冷却した後、エチレングリコールを留去し、銀ナノ構造体を得た。
【0349】
上記で得た発光層形成済み基板に、陰極形成用組成物を塗布し、スピンコート法によって陰極を形成することにより、本発明の電極を含む積層構造体1を得た。
【0350】
上記で得た積層構造体1を、封止ガラスと2液混合型エポキシ樹脂にて封止することで、発光素子D1を作製した。
【0351】
発光素子D1に順方向電圧を印加し、輝度半減寿命を測定した結果、2.1時間であった。結果を表1に示す。ここで、輝度半減寿命とは、2000cd/m
2の輝度から、1000cd/m
2に減少するまでの時間を意味する。
【0352】
<実施例D2>(発光素子D2の作製)
実施例D1において、高分子化合物(Poly−2)の代わりに高分子化合物(Poly−4)を用いたこと以外は、実施例D1と同様にして、発光素子D2を作製した。発光素子D2に順方向電圧を印加し、輝度半減寿命を測定した結果、2.7時間であった。結果を表1に示す。
【0353】
<実施例D3>(発光素子D3の作製)
実施例D1において、高分子化合物(Poly−2)の代わりに高分子化合物(Poly−6)を用いたこと以外は、実施例D1と同様にして、発光素子D3を作製した。発光素子D3に順方向電圧を印加し、輝度半減寿命を測定した結果、2.0時間であった。結果を表1に示す。
【0354】
<実施例D4>(発光素子D4の作製)
実施例D1において、高分子化合物(Poly−2)の代わりに高分子化合物(Poly−8)を用いたこと以外は、実施例D1と同様にして、発光素子D4を作製した。発光素子D4に順方向電圧を印加し、輝度半減寿命を測定した結果、5.5時間であった。結果を表1に示す。
【0355】
<実施例D5>(発光素子D5の作製)
実施例D1において、高分子化合物(Poly−2)の代わりに高分子化合物(Poly−10)を用いたこと以外は、実施例D1と同様にして、発光素子D5を作製した。発光素子D5に順方向電圧を印加し、輝度半減寿命を測定した結果、4.8時間であった。結果を表1に示す。
【0356】
<実施例D6>(発光素子D6の作製)
実施例D1において、高分子化合物(Poly−2)の代わりに高分子化合物(Poly−12)を用いたこと以外は、実施例D1と同様にして、発光素子D6を作製した。発光素子D6に順方向電圧を印加し、輝度半減寿命を測定した結果、4.8時間であった。結果を表1に示す。
【0357】
<実施例D7>(発光素子D7の作製)
実施例D1において、高分子化合物(Poly−2)の代わりに高分子化合物(Poly−14)を用いたこと以外は、実施例D1と同様にして、発光素子D7を作製した。発光素子D7に順方向電圧を印加し、輝度半減寿命を測定した結果、4.8時間であった。結果を表1に示す。
【0358】
<比較例CD1>(発光素子CD1の作製)
実施例D1において、高分子化合物(Poly−2)の代わりに高分子化合物(Poly−Comp2)を用いたこと以外は、実施例D1と同様にして、発光素子CD1を作製した。発光素子CD1に順方向電圧を印加し、輝度半減寿命を測定した結果、0.98時間であった。結果を表1に示す。
【0359】
【表1】