(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)成分が、スチレン−ブタジエン共重合体におけるブタジエンに由来する構造単位が有する不飽和二重結合に水素添加することにより得られる飽和型熱可塑性エラストマを含有する、請求項1記載の樹脂組成物。
前記シアネートエステル樹脂が、シアネート化合物と単官能フェノール化合物とをゲル化しないように反応させて得られたフェノール変性シアネートエステルプレポリマーである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記単官能フェノール化合物が、p−t−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール、p−(α−クミル)フェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項10に記載の樹脂組成物。
前記マレイミド化合物が、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン及び2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンの少なくとも一方である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記第1表面処理剤が、2〜4官能性のアルコキシシラン化合物を反応させて得られるシリコーンオリゴマー、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記第2表面処理剤が、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン及びその部分加水分解物、3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン及びその部分加水分解物、N-フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、並びにN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記(C)成分の含有量が、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して10〜1000質量部である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
(A)スチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマと、(B)エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の熱硬化性樹脂、(C)予め表面処理された球状シリカ、並びに必要に応じて配合される前記熱硬化性樹脂の硬化剤及び硬化促進剤を含む熱硬化性樹脂成分とを含有し、前記(B)成分の質量WBに対する(A)成分の質量WAの比WA/WBが0.43〜5.0であり、前記(C)成分が、第1表面処理剤で表面処理された後、さらに第2表面処理剤で表面処理する工程を経て得られたものであり、前記第1表面処理剤がシリコーンオリゴマー及びビニル系シランカップリング剤の少なくとも一方であり、前記第2表面処理剤がアミノ系シランカップリング剤である、樹脂組成物を、支持基材の片面に流延塗布し、加熱乾燥により前記樹脂組成物を半硬化又は硬化する工程を備える、印刷配線板用樹脂フィルムの製造方法。
前記樹脂ワニスが、前記(C)成分を有機溶剤中に分散させたスラリーに、前記(A)成分を添加した後、前記(B)成分を添加することによって調製されたものである、請求項23に記載の印刷配線板用樹脂フィルムの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1〜6に記載の材料であっても、ミリ波用途の印刷配線板に要求されるような、高周波領域における誘電特性(低比誘電率及び低誘電正接)を達成するものとしては十分とはいえなかった。特に、特許文献5に記載されているようなアクリルゴム又は変性ポリブタジエン系のエラストマを含有した樹脂組成物では、高周波領域における伝送損失が顕著となっていた。また、特許文献6に記載されているようなスチレン系エラストマを配合した場合でも、使用しているエラストマが極性基含有タイプのみであるため、高周波特性だけでなく、耐湿性、耐加熱変色性等がやや不十分となっていた。さらに、本発明者らの検討によれば、特許文献1〜5に記載された材料の場合、主成分であるポリフェニレンエーテルとの相溶性を確保する観点から、併用される樹脂の種類及びその配合量が制限されるため、実用上採用し得る組成の自由度が小さいことも判明した。
【0011】
また、高周波用途の印刷配線板に用いられる金属箔として、導体に起因する伝送損失(導体損失)を低減するために、表面の粗さが小さいロープロファイル箔を用いることが一般的である。しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記特許文献1〜3に記載の樹脂組成物又はフィルムをロープロファイル箔に適用した積層板は、金属箔の引きはがしにおいて、実用できるレベルの強さを確保できないことが分かった。また、特許文献4、5に記載の樹脂フィルムをロープロファイル箔に適用した場合は、十分な接着性又は耐熱性は得られるものの、高周波数領域での誘電特性が不十分であった。そのため、樹脂組成物の誘電特性による伝送損失を、ロープロファイル箔を適用することによって補っても、印刷配線板全体としての伝送損失の増大を回避することは難しい傾向にあった。
【0012】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、高周波用途の印刷配線板に求められる特性を高い水準で備える印刷配線板用フィルムを形成することができる樹脂組成物、並びに当該樹脂組成物で形成される印刷配線板用フィルム及び印刷配線板フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る樹脂組成物は、(A)スチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマと、(B)エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分と、(C)予め表面処理された球状シリカとを含有し、(B)成分の質量W
Bに対する(A)成分の質量W
Aの比W
A/W
Bが0.43〜5.0であり、(C)成分が、第1表面処理剤で表面処理された後、さらに第2表面処理剤で表面処理する工程を経て得られたものであり、第1表面処理剤がシリコーンオリゴマー及びビニル系シランカップリング剤の少なくとも一方であり、第2表面処理剤がアミノ系シランカップリング剤であることを特徴とする。なお、本発明は、上記樹脂組成物の半硬化物又は硬化物からなる樹脂層を備える印刷配線板用樹脂フィルムとすることもできる。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、上述した(A)〜(C)成分を組み合わせて含むとともに、(A)成分と(B)成分との含有比率が上記特定の条件を満たすことから、本発明の樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムは、高周波領域における比誘電率及び誘電正接がともに低いという優れた誘電特性を有する。そのため、当該印刷配線板用樹脂フィルムの表面(片面又は両面)に金属箔(銅箔)を積層して金属張硬化樹脂フィルムとした場合に、本発明の構成要件を満たさない樹脂フィルムを使用したものと比較して、高周波領域における優れた誘電特性を得ることができる。
【0015】
また、従来は、印刷配線板用の樹脂フィルムにおいてガラスクロス等を樹脂組成物中に配さない場合、樹脂フィルムの取り扱い性が悪くなり、強度も十分に保持できなくなる傾向にあった。これに対し、本発明の樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムは、特に、(A)成分と(B)成分との含有比率が特定の割合で含まれる樹脂組成物から形成されるため、ガラスクロス等を有さなくても、薄く且つ取り扱い性(タック性、割れ・粉落ち等)にも優れるものとなる。
【0016】
また、上述の如く、従来の樹脂フィルム等は、ロープロファイル箔と組み合わせて適用した場合、ロープロファイル箔に対する接着性、耐熱性、高周波数領域での誘電特性等が十分に得られないものであった。一方、本発明の樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムは、ロープロファイル箔等に対する引き剥がし強さが十分に高い。そのため、ロープロファイル箔を問題なく使用でき、さらに伝送損失を十分に低減した印刷配線板を提供できる。
【0017】
また、本発明の樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムは、優れた外観性と多層化成形性とを同時に達成できるものであるとともに、耐熱性及び耐湿性にも優れる。加えて、当該印刷配線板用樹脂フィルムを用いて得られる金属張硬化樹脂フィルムは、実装時のはんだ接続工程に耐え得る高いはんだ耐熱性を備えるとともに、耐吸湿性にも優れることから、屋外での使用用途にも適するものとなる。
【0018】
さらに、本発明の樹脂組成物において、上記(A)〜(C)成分は相溶性が高いため、(A)〜(C)を含む樹脂組成物の組成を幅広い範囲から選択することが可能である。そのため、本発明の樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムは、樹脂組成物における各成分の配合比率を適宜調節することによって、所望とする特性を得やすいものでもある。
【0019】
また、本発明の樹脂組成物において、(C)成分としては、予め表面処理された球状シリカであって、表面処理剤は第1表面処理剤と第2表面処理剤からなり、第1表面処理剤で表面処理された後、さらに第2表面処理剤で表面処理する工程を経て得られたものである。ここで、第1表面処理剤がシリコーンオリゴマー及びビニル系シランカップリング剤の少なくとも一方であり、第2表面処理剤がアミノ系シランカップリング剤である球状シリカが用いられる。単に球状シリカを配合することによっても、フィルムの高周波特性、熱膨張特性等が向上する傾向にあるが、予め上記のような構成の表面処理剤及び処理工程で表面処理することによって、シリコーンオリゴマー及びビニル系シランカップリング剤による低吸湿性(高周波特性における吸湿時のドリフト安定性を含む)と、更にアミノ系シランカップリング剤による球状シリカと樹脂との反応性及び接着性向上効果による高耐熱性及び耐薬品性(プリント配線板製造工程で使用される各種酸性並びに塩基性の水溶液に対する耐薬液汚染性)との両立を図ることができる。また、アミノ系シランカップリング剤のみで表面処理した球状シリカを含有する樹脂組成物を溶剤に溶解若しくは分散させてワニスとする場合、又はアミノ系シランカップリング剤のみで表面処理した球状シリカのみを溶剤に分散させた球状シリカスラリーとして使用する場合、ワニス中又はスラリー中で表面処理された球状シリカが凝集しやすいために沈降しやすい傾向にある。しかしながら、上記の処理工程を採用することによって、球状シリカの凝集及び沈降を効果的に抑止することができる。
【0020】
本発明の樹脂組成物において、上記(A)成分は、飽和型熱可塑性エラストマとして、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体を含有していてもよい。上記(A)成分がスチレン−エチレン−ブチレン共重合体を含有すると、本発明の樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムの誘電特性、耐吸湿性及び導体との接着性が特に優れたものとなる。
【0021】
また、(A)成分は、飽和型熱可塑性エラストマとして、スチレン−ブタジエン共重合体におけるブタジエンに由来する構造単位が有する不飽和二重結合に水素添加することにより得られた飽和型熱可塑性エラストマを含有していてもよい。このような方法で製造された飽和型熱可塑性エラストマは、スチレンとブチレンとエチレンとを共重合させて得られたものよりも安定して製造できる傾向にあると共に、コスト面においても優れる。また、水添してビニル基及び内部オレフィンをなくしたもののほうが低極性となりやすく、誘電特性の向上及び低吸湿性を得ることができる。
【0022】
上記(A)成分が、数平均分子量6万未満の飽和型熱可塑性エラストマを含有していてもよい。また、数平均分子量6万未満の飽和型熱可塑性エラストマの含有量は、(A)成分の全質量中、50質量%以上とすることができる。これらの条件を満たすと、本発明の樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムは、導体又は他の樹脂基板材料と接着させた場合に高い接着性が得られるだけでなく、回路又はビアホール付きの基板に接着させて多層板を製造する際の多層化成形性にも優れる。
【0023】
さらに、(A)成分は、数平均分子量6万以上の飽和型熱可塑性エラストマを含有してもよく、特に、数平均分子量6万未満の飽和型熱可塑性エラストマと数平均分子量6万以上の飽和型熱可塑性エラストマとを組み合わせて含有することが好ましい。(A)成分が、数平均分子量6万未満の飽和型熱可塑性エラストマと数平均分子量6万以上の飽和型熱可塑性エラストマとを含む場合、本発明の樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムは、ロープロファイル箔などの表面粗さの小さい金属箔との引き剥がし強さが大きく、また、タックフリーで且つ割れ又は粉落ちが少ないものとなるほか、支持基材としてPETフィルムなどを用いる場合に、支持基材との離形性にも優れるものとなる傾向がある。
【0024】
上記(A)成分は、側鎖又は末端に無水マレイン酸基を有する化学変性飽和型熱可塑性エラストマを含有してもよい。(A)成分がかかる飽和型熱可塑性エラストマを含有した場合、導体又は他の樹脂基板材料との接着性と高周波領域での誘電特性とのバランスが良好な印刷配線板用樹脂フィルムが得られやすい。また、化学変性飽和型熱可塑性エラストマの含有量は、上記(A)成分の全質量を基準として20〜50質量%であると好ましい。(A)成分における化学変性飽和型熱可塑性エラストマの含有量が上記範囲内であると、上記の効果がさらに良好に得られる傾向にある。
【0025】
上記(B)成分がシアネートエステル樹脂を含有する場合、シアネートエステル樹脂は、シアネート化合物と単官能フェノール化合物とをゲル化しないように反応させて得られたフェノール変性シアネートエステルプレポリマーであってもよい。シアネートエステル樹脂がこのような態様であると、未硬化(Bステージ)の状態のフィルムの外観及び取り扱い性、及びフィルムを硬化する際の硬化性が良好となる。
【0026】
フェノール変性シアネートエステルプレポリマーを得るための単官能フェノール化合物は、p−t−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール及びp−(α−クミル)フェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であってもよい。これらの化合物を用いることで、印刷配線板用樹脂フィルムの誘電特性、耐湿性及び耐熱性を更に向上させることができる。
【0027】
上記(B)成分がマレイミド化合物を含有する場合、マレイミド化合物は、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン及び2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンの少なくとも一方であってもよい。マレイミド化合物としてこれらの化合物を用いることで、吸湿性、熱膨張係数、破壊強度及び金属箔に対する引き剥がし強さをさらに向上させることができる。
【0028】
上記第1表面処理剤が、2〜4官能性のアルコキシシラン化合物を反応させて得られるシリコーンオリゴマー、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0029】
上記第2表面処理剤が、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン及びその部分加水分解物、3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン及びその部分加水分解物、N-フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、並びにN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0030】
上記球状シリカの平均粒子径は、0.01〜30μmとすることができる。球状シリカの平均粒子径がこの範囲内であると、本発明の樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムは、良好な成形性(内層回路充填性)を有するものとなる。
【0031】
(C)成分の含有量は、上記(A)成分及び上記(B)成分との合計100質量部に対して10〜1000質量部とすることができる。これにより、上述の(C)成分を含むことにより得られる効果が一層良好に得られるようになる。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、(D)成分として下記の式(1)〜(3)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のフェノール系酸化防止剤を更に含有してもよい。かかる酸化防止剤を含むことにより、本発明の樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムは、良好な誘電特性、耐湿性、耐熱性等を有するとともに、誘電特性の経年変化が小さく、しかも高い絶縁信頼性を有するものとなる。
【化1】
【化2】
【化3】
【0033】
本発明に係る樹脂組成物は、上記(B)成分の硬化剤及び/又は硬化促進剤を含んでいてもよい。これにより、印刷配線板用フィルムを得る際の反応を円滑に進めることができるとともに、得られる印刷配線用樹脂フィルムの物性を適度に調節することが可能となる。
【0034】
本発明の印刷配線板用樹脂フィルムは、支持基材と、この支持基材上に形成された、請上記樹脂組成物の半硬化物又は硬化物からなる樹脂層とを備える構成を有していてもよい。この場合、支持基材は、金属箔又はPETフィルムの少なくとも一方であると好ましい。印刷配線板用樹脂フィルムが支持基材を備えることにより、保管性、及び印刷配線板の製造に用いる際の取り扱い性が良好となる傾向にある。
【0035】
本発明の印刷配線板用樹脂フィルムは、上記樹脂層の厚さが1〜200μmであってもよい。樹脂層の厚さをそのような範囲とすることにより、本発明の印刷配線板用樹脂フィルムを用いて得られる印刷配線板の薄型化を図れるだけでなく、高周波特性が優れ、且つ膜厚精度の高い絶縁層を形成することができる。
【0036】
また、本発明の印刷配線板用樹脂フィルムの製造方法は、(A)スチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマと、(B)エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の熱硬化性樹脂、(C)予め表面処理された球状シリカ、並びに必要に応じて配合される前記熱硬化性樹脂の硬化剤及び硬化促進剤を含む熱硬化性樹脂成分とを含有し、前記(B)成分の質量W
Bに対する(A)成分の質量W
Aの比W
A/W
Bが0.43〜5.0であり、前記(C)成分が、第1表面処理剤で表面処理された後、さらに第2表面処理剤で表面処理する工程を経て得られたものであり、前記第1表面処理剤がシリコーンオリゴマー及びビニル系シランカップリング剤の少なくとも一方であり、前記第2表面処理剤がアミノ系シランカップリング剤である、樹脂組成物を、支持基材の片面に流延塗布し、加熱乾燥により樹脂組成物を半硬化又は硬化する工程を備える。このような方法により、上記構成を有する本発明の印刷配線板用樹脂フィルムを良好に得ることができる。
【0037】
上記樹脂組成物は、樹脂ワニスであってもよい。樹脂組成物を、樹脂ワニスの状態で支持基材上に流延塗布して樹脂組成物からなる層を形成することにより、本発明の印刷配線板用樹脂フィルムを容易に製造することが可能となる。
【0038】
また、上記樹脂ワニスは、(C)成分を有機溶剤中に分散させたスラリーに、(A)成分を添加した後、(B)成分を添加することによって調製することができる。これにより、(C)成分のその他の成分への分散性が高められ、球状シリカの凝集が生じ難くなるので、得られる印刷配線板用樹脂フィルムの耐熱性、耐吸湿性、絶縁信頼性等が良好となる傾向にある。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、高周波領域における良好な誘電特性を有し、且つ、金属箔との十分な接着性も有する印刷配線板用樹脂フィルムを形成することが可能な樹脂組成物、並びに印刷配線板用樹脂フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、必要に応じて図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、高周波領域とは、300MHz〜300GHzの領域を指すものとする。
【0041】
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)スチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマと、(B)エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の成分と、(C)予め表面処理された球状シリカとを含有し、(B)成分に対する(A)成分の質量比W
A/W
Bが0.43〜5.0である。
【0042】
本実施形態に係る樹脂組成物が、上記(A)〜(C)成分を必須成分として組み合わせて含むことにより、当該樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムは、フッ素樹脂系に匹敵し、ポリフェニレンエーテル樹脂系を超える高周波特性と耐湿性を併せ持つのみならず、高接着性、高耐熱性、耐薬液汚染性を具備するものとなる。その結果、かかる印刷配線板用樹脂フィルムは、ミリ波信号を含む高周波領域のアプリケーションへの適用が可能なものとなる。以下、本実施形態の樹脂組成物における各成分について詳述する。
【0043】
[樹脂組成物]
((A)成分)
(A)成分は、分子中にスチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマである。なお、本明細書において、スチレンユニットとは、重合体における、スチレン単量体に由来する単位を指す。本実施形態において、飽和型熱可塑性エラストマとは、スチレンユニットの芳香族炭化水素部分以外の脂肪族炭化水素部分が、いずれも飽和結合基によって構成された構造を有するものをいう。(A)成分は、分子中にスチレンユニットを有する飽和型熱可塑性エラストマであれば、特に限定されない。樹脂組成物がこのような(A)成分の飽和型熱可塑性エラストマを含むことにより、樹脂組成物がフィルム形成能を有するようになるとともに、印刷配線板用樹脂フィルムは、誘電特性、耐吸湿性及び導体との接着性に優れるものとなる。
【0044】
飽和型熱可塑性エラストマにおけるスチレンユニットの含有比率は、特に限定されないが、飽和型熱可塑性エラストマの全質量に対するスチレンユニットの質量百分率で、20〜80質量%であると好ましく、30〜70質量%であるとより好ましい。スチレンユニットの含有比率が上記範囲内であると(B)成分との相容性が良好となり、フィルム外観、耐熱性、及び接着性に優れるため好ましい。
【0045】
(A)成分の具体例としては、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(以下、SEBSと呼ぶ。)が挙げられる。上記SEBSは、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエンに由来する構造単位が有する不飽和二重結合に水素添加を行うことにより得ることができる。
【0046】
(A)成分は、数平均分子量6万未満の飽和型熱可塑性エラストマを含有することが好ましい。(A)成分がこのような飽和型熱可塑性エラストマを含むと、上記樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムを、導体又は他の樹脂基板材料と接着させた場合に、両者の接着性を高めることができる。また、印刷配線板用樹脂フィルムを回路又はビアホール付きの基板に接着させて多層板を製造する際の多層化成形性が良好となる。さらに、印刷配線板用樹脂フィルムが、ロープロファイル箔などの表面粗さの小さい金属箔との引き剥がし強さが大きいものとなるほか、タックフリーで、且つ割れ又は粉落ちがないものとなり、また支持基材としてPETフィルムなどを用いる場合の離形性にも優れるようになる。
【0047】
(A)成分における数平均分子量6万未満の飽和型熱可塑性エラストマの含有量は、(A)成分の全質量を基準として、50質量%以上であることが好ましく、60〜100質量%であるとより好ましい。このような含有量であれば、(A)成分が、数平均分子量6万未満の飽和型熱可塑性エラストマを含有するときに得られる作用効果をさらに良好に得られる。さらに、(A)成分は、数平均分子量6万以上の飽和型熱可塑性エラストマを含んでいてもよく、数平均分子量6万未満の飽和型熱可塑性エラストマと数平均分子量6万以上の飽和型熱可塑性エラストマとを組み合わせて含むこともできる。
【0048】
また、(A)成分は、側鎖又は末端に無水マレイン酸基を有する化学変性飽和型熱可塑性エラストマを含有することが好ましい。(A)成分における化学変性飽和型熱可塑性エラストマの含有量は、(A)成分の全質量を基準として、20〜50質量%であることが好ましく、20〜35質量%であるとより好ましい。樹脂組成物がこのような割合で化学変性飽和型熱可塑性エラストマを含有すると、上記樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムの、導体又は他の樹脂基板材料との接着性、及び高周波領域での誘電特性が更にバランス良く良好に得られる。樹脂組成物は、このような無水マレイン酸基を有する化学変性飽和型熱可塑性エラストマとともに、化学変性されていない非変性飽和型熱可塑性エラストマを組み合わせて含んでいてもよい。
【0049】
ここで、化学変性飽和型熱可塑性エラストマとしては、無水マレイン酸で変性されたSEBSが挙げられる。その具体例としては、タフテックM1911、M1913、M1943等(旭化成ケミカルズ社製、)が挙げられる。一方、非変性飽和型熱可塑性エラストマとしては、非変性のSEBSが挙げられる。その具体例としては、タフテックH1041、H1051、H1043、H1053等(旭化成ケミカルズ社製、)等が挙げられる。
【0050】
((B)成分)
(B)成分は、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分である。樹脂組成物は、必要に応じて、これらの(B)成分の硬化剤及び/又は硬化促進剤を含有することができる。このような(B)成分を、(A)成分と組み合わせて含有することにより、耐熱性及び耐溶剤性を向上させることができる。
【0051】
(B)成分として、エポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するものであればどのようなものでもよい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、2官能ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体又はハロゲン化物が挙げられる。これらは一種類単独で用いてもよいが、又は二種類以上を混合して用いてもよい。なお、高周波特性を考慮すると、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、2官能ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂又はジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を用いることがより好ましい。
【0052】
エポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂の硬化剤及び/又は硬化促進剤を使用することもできる。エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤としては、例えば、多官能フェノール化合物、アミン化合物、イミダゾール化合物、酸無水物、有機リン化合物及びこれらのハロゲン化物が挙げられる。多官能フェノール化合物としては、クレゾールノボラック樹脂が挙げられ、その具体例としては、KA1165(DIC製)、フェノール−アラルキル型XLCシリーズ(三井化学製)、ビフェニルアラルキル型のMEH7800(明和化成製)、ビフェニルアラルキル型のMEH7800(明和化成製)等が挙げられる。また、アミン化合物としては、ジフェニルジアミノメタン、ビス[4−(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)等の芳香族ジアミン類(和歌山精化工業製)、イミダゾール化合物としては、キュアゾールシリーズ(2MZ、2PZ、2E4MZ、2MZ−CN、2E4MZ−CN、2PZ−CN、2PZ−CNS等)(四国化成製)、有機リン化合物としては、TPP(トリフェニルフォスフィン)が挙げられる。
【0053】
(B)成分は、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であれば、特に限定されるものではないが、中でも誘電特性、耐熱性、接着性の観点から、シアネートエステル樹脂が好ましい。さらに上記シアネートエステル樹脂が、単官能フェノール化合物を併用したもの、又は予め単官能フェノール化合物で変性したフェノール変性シアネートエステル樹脂であると、誘電特性、耐湿性、耐熱性の観点から特に好ましい。
【0054】
シアネートエステル樹脂としては、分子内にシアナト基を2つ以上有するシアネートエステル化合物であれば、特に限定せずに使用することができる。具体例としては、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物、フェノールノボラック型シアネートエステル化合物及びクレゾールノボラック型シアネートエステル化合物等が挙げられる。これらは一種類単独で用いてもよいが、又は二種類以上を混合して用いてもよい。
【0055】
(B)成分として、シアネートエステル樹脂を用いる場合、シアネートエステル樹脂の硬化剤及び/又は硬化促進剤が含まれていてもよい。シアネートエステル樹脂の硬化剤又は硬化促進剤としては、例えば、単官能フェノール化合物、多官能フェノール化合物、アミン化合物、酸無水物、有機金属化合物等が挙げられる。なお、上記樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムの高周波特性、耐湿性、耐熱性等を考慮すると、単官能フェノール化合物及び有機金属化合物を併用することがより好ましい。また、耐熱性を考慮すると上述したエポキシ樹脂を併用することも好ましい。
【0056】
シアネートエステル樹脂の硬化剤として単官能フェノール化合物を用いる場合、シアネートエステル樹脂は、特に、以下のような態様とすることができる。すなわち、シアネートエステル化合物と単官能フェノール化合物とを加熱することにより、ゲル化しないように反応させてシアネートエステル樹脂のプレポリマーを合成し、当該プレポリマーをシアネートエステル樹脂として使用する。(B)成分として、このようなプレポリマーを用いることによって、樹脂組成物の未硬化(Bステージ)状態のフィルムの外観及び取り扱い性、並びにフィルムを硬化する際の硬化性の観点から好ましい。配合する単官能フェノール化合物はプレポリマーを合成する際に規定量全てを配合してもよいが、ワニスの保存安定性の観点からは、プレポリマーを合成する前後で規定量を分割して配合する方が好ましい。
【0057】
単官能フェノール化合物としては、例えば、p−t−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール及びp−(α−クミル)フェノールが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの化合物は、安価で、且つシアネートエステル化合物との反応性及び硬化後の樹脂の耐熱性に優れるため好ましい。また、単官能フェノール化合物の配合量は、シアネートエステル樹脂のシアナト基に対するフェノール化合物の水酸基の当量比で0.01〜1.00の範囲であると好ましい。単官能フェノール化合物の配合量が上記範囲であると、上記樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムの誘電特性、耐湿性及び耐熱性が向上するため好ましい。
【0058】
また、他の硬化剤である有機金属錯体としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の2−エチルヘキサン酸塩、ナフテン酸塩、アセチルアセトン錯体などが挙げられる。これらの中でも、特にマンガン又は亜鉛のナフテン酸塩は活性が高く、シアネートエステルのプレポリマ合成時の反応性及び硬化性が良好であるため好ましい。これらは一種類単独で用いてもよいが、又は二種類以上を混合して用いてもよい。
【0059】
(B)成分として、マレイミド化合物を用いる場合、分子内にマレイミド基を2個以上含有するポリマレイミド化合物が好ましい。ポリマレイミド化合物の具体例としては、1,2−ジマレイミドエタン、1,3−ジマレイミドプロパン、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,7−ジマレイミドフルオレン、N,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−(1,3−(4−メチルフェニレン))ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)エ−テル、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(3−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(2−(3−マレイミドフェニル)プロピル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル)−1−プロピル)ベンゼン、ビス(マレイミドシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ) フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(マレイミドフェニル)チオフェン等が挙げられる。これらの中でも、上記樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムの吸湿性及び熱膨張係数がさらに低下することから、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを用いることがより好ましい。あるいは、上記樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムの破壊強度及び金属箔引き剥がし強さがさらに高まることから、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパンを用いることがより好ましい。
【0060】
本実施形態において、マレイミド化合物を用いる場合、マレイミド化合物の硬化剤及び/又は硬化促進剤を併用してもよい。マレイミド化合物の硬化剤又は硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物、有機過酸化物等が挙げられる。アミン化合物としては、エポキシ樹脂の硬化剤として挙げた前述のジアミン化合物が好ましい。また、有機過酸化物としては、例えば、パーブチルP又はパーヘキシン25Bが挙げられ、これらは硬化性が良好であるため好ましい。
【0061】
本実施形態において、樹脂組成物における(A)成分と(B)成分との質量比W
A/W
Bは、0.43〜5.0であり、0.7〜2.0であるとより好ましく、0.8〜1.5であると更に好ましい。W
A/W
Bが上記範囲内であると、上記樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムは、フィルム形成能、取り扱い性及び高周波帯域での誘電特性に優れるとともに、高い耐熱性、耐湿性及び接着性を有するものとなる。
【0062】
((C)成分)
(C)成分は、予め表面処理された球状シリカであって、該球状シリカは第1表面処理剤で表面処理された後、さらに第2表面処理剤で表面処理する工程を経て得られたものである。ここで、第1表面処理剤は、シリコーンオリゴマー及びビニル系シランカップリング剤の少なくとも一方であり、第2表面処理剤は、アミノ系シランカップリング剤である。
【0063】
球状シリカの最初の表面処理剤である第1表面処理剤は、シリコーンオリゴマー及びビニル系シランカップリング剤の少なくとも一方である。シリコーンオリゴマーとしては特に限定されるものではく、例えば、2〜4官能性の各種アルコキシシラン化合物の少なくとも一種を重合させて得られる2次元又は3次元架橋したシリコーンオリゴマーが挙げられる。2官能性アルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等、3官能性アルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等、4官能性アルコキシシランとしてはテトラメトキシシラン等がそれぞれ挙げられる。これらを1種類又は2種類以上組み合わせて重合反応させることによりシリコーンオリゴマーを製造できる。上記シリコーンオリゴマーの中でも、ジメチルジメトキシシランとテトラメトキシシランとを重合させて得られるものが特に好ましい。
【0064】
また、上記シリコーンオリゴマーの重合度は2〜7000が好ましく、より好ましい重合度は3〜1000、特に好ましい重合度は3〜100である。このような重合度のシリコーンオリゴマーは、公知の方法により製造することができ、例えば、上記アルコキシシラン化合物を加水分解及び重縮合する方法が挙げられる。この際の触媒として、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、フッ酸等の無機酸、シュウ酸、マレイン酸、スルホン酸、ギ酸等の有機酸を使用することが好ましく、アンモニア、トリメチルアンモニウム等の塩基性触媒を用いることもできる。これら触媒は、上記アルコキシシラン化合物の量に応じて適当量用いられるが、好適には、シラン化合物1モルに対して0.001〜0.5モルの範囲で用いられる。
【0065】
また、上記加水分解及び重縮合は、溶剤中で行うことが好ましい。溶剤としては特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル系、N−メチルピロリドン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ニトリル類、水などの溶剤が好適に用いられ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上の混合溶剤として用いてもよい。溶剤を使用する場合、その使用量に特に制限はないが、通常不揮発分濃度が0.01〜99質量%、好ましくは0.01〜90質量%が好適である。また、溶剤として水を使用する場合、水の量は適宜決めることができるが、多すぎる場合には塗布液の保存安定性が低下するなどの問題があるため、水の量はシラン化合物1モルに対して0〜5モルが好ましく、0.5〜4モルの範囲とすることがより好ましい。
【0066】
ビニル系シランカップリング剤としては、特に限定されるものではく、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ビニルトリ(βメトキシエトキシ)シラン等が挙げられ、特にビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。これらの中でも特に、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランが好ましい。
【0067】
第2表面処理剤であるアミノ系シランカップリング剤としては、特に限定されるものではなく、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物、3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物、N-フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等が挙げられるが、(A)成分及び(B)成分を含む樹脂中における球状シリカの分散性の観点からは、N-フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが、球状シリカと樹脂との反応性及び接着性の観点からは、3−アミノプロピルトリメトキシシラン又は3−アミノプロピルトリエトキシシランが特に好適に用いられる。
【0068】
球状シリカの表面処理の方式としては、例えば、(A)成分及び(B)成分を含む樹脂組成物中に球状シリカを配合した後、この組成物中に表面処理剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式、及び球状シリカに乾式又は湿式で直接表面処理剤を付与する方式が知られている。しかしながら、本実施形態においては、後者の方式で表面処理された球状シリカのほうが、前者の方式で表面処理された球状シリカよりも、下記の様々な特徴を有効に発現し易い傾向にある。
【0069】
本実施形態において、球状シリカに表面処理する方法としては、具体的には、まず第1表面処理剤で、球状シリカを乾式又は湿式で直接表面処理した後、第2表面処理剤で、当該表明処理された球状シリカを乾式又は湿式で直接表面処理する工程が用いられる。ここで、第1表面処理剤で処理した後、第2表面処理剤による処理が開始されるまでの経過時間としては、1時間〜100時間保持されるのが望ましく、10〜70時間がより望ましく、24〜50時間が更に望ましい。かかる表面処理方法により、球状シリカの凝集等の欠陥を抑制しつつ、低吸湿性(高周波特性における吸湿時のドリフト安定性を含む)と、高耐熱性、耐薬品性(プリント配線板製造工程で使用される各種酸性並びに塩基性の水溶液に対する耐薬液汚染性)との両立を図ることができる。
【0070】
球状シリカの平均粒子径は、0.01〜30μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましく、0.3〜7μmであることが更に好ましい。好適な平均粒子径であるほど、上記樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムは、良好な成形性(内層回路充填性)を有するようになる。なお、本明細書において、球状シリカの平均粒子径は、上記第1表面処理剤及び第2表面処理剤による表面処理を施す前の球状シリカ単体の平均粒子径を指す。また、球状シリカの平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布計によって測定される体積平均粒子径を指す。
【0071】
本実施形態において、(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、10〜1000質量部であることが好ましい。(C)成分の含有量がこのような範囲内であると、上記樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムは、良好な成形性(内層回路充填性)、取り扱い性、低熱膨張性、耐熱性、導体又はコア基板との接着性等を有するものとなる。
【0072】
また、本実施形態における(C)成分において、第1表面処理剤及び第2表面処理剤の配合量ともに特に制限されるものではないが、表面処理前の球状シリカの質量に対して0.1〜5質量%で表面処理されること好ましく、この範囲であれば、上記樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムの耐熱性等を損なうことなく、上記(C)成分による特長を効果的に発揮できる。
【0073】
((D)成分)
本実施形態において、樹脂組成物は、(D)成分として特定のフェノール系酸化防止剤を含むことができる。このフェノール系酸化防止剤としては、上記式(1)〜式(3)で表される化合物の群より選ばれる少なくとも一種のフェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。上記式(1)〜(3)で表される化合物は、比較的対称性が高い構造を有し、且つ、フェノール性水酸基に隣接するt−ブチル基が嵩高いため(バルキーな構造のため)、誘電特性の悪化を招くことなく、効率的に酸化抑制効果と絶縁劣化抑制効果を発現できる。
【0074】
また、(D)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.01〜5質量部であると好ましい。(D)成分の含有量をそのような範囲とすることにより、上記樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムの誘電特性、耐湿性、耐熱性等を悪化させることなく、高温処理による誘電特性の酸化劣化の抑制及び絶縁信頼性を向上させることができる。特に(A)成分として化学変性SEBSを用いる場合に、加熱酸化による誘電特性の経年変化を抑制する効果を発揮できる。
【0075】
また、本実施形態において、上記樹脂組成物に、難燃剤等の各種添加剤を必要に応じて更に配合してもよい。これらの添加物は、印刷配線板用樹脂フィルムの取り扱い性、誘電特性、耐熱性、導体及び他の樹脂材料との接着性、耐湿性、Tg、熱膨張特性等のフィルム特性を悪化させない範囲の配合量で配合することができる。
【0076】
難燃剤としては、特に限定されないが、臭素系、リン系、金属水酸化物等の難燃剤が好適に用いられる。臭素系難燃剤としては、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン等の臭素化添加型難燃剤、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化スチレン等の不飽和二重結合基含有の臭素化反応型難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
リン系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族系リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル、フェニルホスホン酸ビス(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物、赤リン等のリン系難燃剤などを例示できる。金属水酸化物難燃剤としては水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が例示される。これらの難燃剤は一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
難燃剤の配合割合は、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、10〜200質量部とすることが好ましく、15〜150質量部とすることがより好ましく、20〜100質量部とすることが更に好ましい。難燃剤の配合割合が10質量部未満では、上記樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムの耐燃性が不十分となる傾向があり、200質量部を超えると、上記樹脂組成物から形成される印刷配線板用樹脂フィルムの耐熱性、接着性、フィルム形成能及び成形性が低下する傾向にある。
【0079】
各種添加剤としては、特に限定されないが、例えば、アミノ系以外のシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0080】
本実施形態に係る印刷配線板用樹脂フィルムは、上述した樹脂組成物の半硬化物又は硬化物からなる樹脂層を少なくとも備えるものであり、当該樹脂層のみを備えていてもよく、当該樹脂層と他の層とを組み合わせて有していてもよい。例えば、印刷配線板用樹脂フィルムは、支持基材と、この支持基材上に形成された上記樹脂層を備える構成を有していてもよい。この支持基材は、製造時に下地として使用される基材でもよく、製造後に取り付けたものであってもよい。支持基材としては、金属箔又はPETフィルムが挙げられる。
【0081】
[印刷配線板用樹脂フィルムの製造方法]
(樹脂組成物及び樹脂ワニスの調製)
次に、印刷配線板用樹脂フィルムの製造方法の好適な例について説明する。本実施形態において、印刷配線板用樹脂フィルムを形成するための樹脂組成物を調製する方法は、特に制限されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0082】
すなわち、まず、上記(A)〜(C)成分及び必要に応じて併用されるその他の成分を混合して、樹脂組成物を得る。この際、(A)〜(C)成分及びその他の成分の混合方法としては、例えば、これらの成分に有機溶媒を加えて公知の方法で攪拌し、これらの成分を有機溶媒に溶解又は分散させる方法が挙げられる。これにより、樹脂組成物は、(A)〜(C)成分及びその他の成分が、有機溶媒に溶解又は分散した樹脂ワニスとなる。
【0083】
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類などの溶媒が挙げられる。特に、(A)成分の良溶媒であるトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、及びこれらの芳香族炭化水素類とアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類との混合溶媒が、フィルムとした時の外観が良好となるため好ましい。これらの溶媒は、一種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
本実施形態において樹脂ワニスを調製する場合、樹脂ワニス中の(C)成分の分散性を良好にする観点から、(C)成分を有機溶剤中に分散させて球状シリカスラリーを調製することが好ましい。そして、この球状シリカスラリーに、(A)成分を添加し、(A)成分が溶解又は均一に分散した後に、(B)成分を添加する手順にて、樹脂ワニスを製造することが好ましい。
【0085】
また、樹脂組成物をワニスとする際には、ワニス中の固形分(不揮発分)濃度が、5〜80質量%となるように溶媒の使用量を調節することが好ましい。なお、後述の印刷配線板用樹脂フィルムを製造する工程において、樹脂組成物を塗布した後に溶媒を蒸発等させることによって溶媒量を調節することもできる。この場合には、樹脂ワニスを、良好な外観及び所望の膜厚が得られるような固形分(不揮発分)濃度及びワニス粘度に調製することができる。
【0086】
(印刷配線板用樹脂フィルムの製造)
本実施形態では、上記のような樹脂ワニスを用いて、公知の方法により印刷配線板用樹脂フィルムを製造することができる。例えば、上記樹脂ワニスを、金属箔、PETのような耐熱性フィルム等の支持基材上に、キスコーター、ロールコーター、コンマコーター等を用いて塗布した後、加熱乾燥炉中等で、例えば70〜250℃(溶媒を使用した場合は溶媒の揮発可能な温度以上)、好ましくは70〜200℃の温度で、1〜30分間、好ましくは3〜15分間乾燥する。これにより、樹脂組成物が半硬化(Bステージ化)した状態の樹脂層を備える印刷配線板用樹脂フィルムを得ることができる。さらに、この半硬化した状態の樹脂層を備える印刷配線板用樹脂フィルムを、加熱炉で更に170〜250℃、好ましくは185〜230℃の温度で、60〜150分間加熱させることによって樹脂組成物が硬化した状態の樹脂層を備える印刷配線板用樹脂フィルムが得られる。なお、ワニスの形態にしていない樹脂組成物からであっても、同様の方法で印刷配線板用樹脂フィルムを作製することができる。
【0087】
[金属張硬化樹脂フィルムの製造]
上記の印刷配線板用樹脂フィルムを用い、金属張硬化樹脂フィルムを製造することができる。印刷配線板用樹脂フィルムとしては、支持基材である金属箔若しくは耐熱性フィルム上に半硬化状態の樹脂組成物からなる樹脂層を備える印刷配線板用樹脂フィルム、又はこれから支持基材を剥離してなり、半硬化の樹脂組成物からなる樹脂層のみから構成される印刷配線板用樹脂フィルムを用いることができる。
【0088】
これらの印刷配線板用樹脂フィルムを1枚又は複数枚重ね、その片面又は両面に金属箔を配置し、170〜250℃、好ましくは185〜230℃の温度及び0.5〜5.0MPaの圧力で60〜150分間加熱・加圧することにより、樹脂層の両面又は片面に金属箔を備える金属張樹脂フィルムが得られる。加熱・加圧は、真空中で行うことが好ましく、例えば、真空度は10kPa以下、好ましくは5kPa以下とすることができる。加熱・加圧は、開始から30分間〜成形終了時間まで実施することが好ましい。
【0089】
[多層印刷配線板の製造]
さらに、上記の印刷配線板用樹脂フィルムは、ビルドアップ配線板等の多層印刷配線板の製造に用いることもできる。印刷配線板用樹脂フィルムとしては、支持基材である金属箔若しくは耐熱性フィルム上に半硬化状態の樹脂組成物からなる樹脂層を備える印刷配線板用樹脂フィルム、及びこれから支持基材を剥離してなり、半硬化の樹脂組成物からなる樹脂層のみから構成される印刷配線板用樹脂フィルムを用いることができる。
【0090】
まず、回路形成加工されたコア基板の片面又は両面に、印刷配線板用樹脂フィルムを配置するか、あるいは複数枚のコア基板の間に印刷配線板用樹脂フィルムを配置し、加圧・加熱ラミネート成形又は加圧・加熱プレス成形を行って各層を接着した後、公知の方法によって、レーザー穴開け加工、ドリル穴開け加工、金属めっき加工、金属エッチング等による回路形成加工を行うことで、多層印刷配線板を製造することができる。コア基板上又はコア基板間に印刷配線板用樹脂フィルムを配置する際、印刷配線板用樹脂フィルムが支持基材を有している場合、支持基材は、事前に剥離しておくか、或いは、樹脂層をコア基板に張り付けた後に剥離することができる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
[樹脂ワニスの調製]
下記手順に従って、各種の樹脂ワニスを調製した。調製例1〜16及び比較調製例1〜12の樹脂ワニスの調製に用いた各原材料の使用量は、表1及び2にまとめて示す。
【0093】
(調製例1)
(シリコーンオリゴマーの合成)
温度計、還流冷却管及び攪拌装置を備えた300ミリリットル容の4つ口フラスコに、ジメチルジメトキシシラン25g、テトラメトキシシラン25g及びメタノール29gを入れ、酢酸0.2g及び蒸留水4gを添加し、50℃で8時間攪拌して、シロキサン単位の重合度が20のシリコーンオリゴマー溶液(固形分:60質量%)を合成した。
【0094】
((C)成分:球状シリカスラリーの調製)
温度計、還流冷却器及び減圧濃縮装置及び撹拌装置を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに、メチルイソブチルケトン(MIBK)、及び第1表面処理剤として上記シリコーンオリゴマー溶液を投入した。次いで球状シリカ(O−25R、平均粒径:0.5μm、アドマテックス社製)を配合後(球状シリカに対する第1表面処理剤の処理量:1質量%)、60℃で1時間攪拌を続けた。この分散液を冷却し、更に24時間経過後、第2表面処理剤としてN-フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−573、信越化学工業社製)を配合し(球状シリカに対する第2表面処理剤の処理量:1質量%)、60℃で1時間攪拌を続けた後、ナノマイザー分散機による強制分散処理を実施し、予め第1表面処理剤及び第2表面処理剤で表面処理した球状シリカのスラリー(分散媒:メチルイソブチルケトン、固形分:70質量%)を得た。
【0095】
(樹脂ワニスの調製)
温度計、還流冷却器及び減圧濃縮装置及び撹拌装置を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに、トルエン、及び(A)成分としてスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(タフテックH1051、スチレン含有比率:42%、Mn:66,000、旭化成ケミカルズ社製)を投入し、フラスコ内の温度を80℃に設定して撹拌溶解した。次いで、(B)成分としてビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000H、日本化薬製)及びクレゾールノボラック樹脂(KA1165、DIC製)を配合して溶解確認後、フラスコを室温まで冷却した。その後、上記で調製した(C)成分及び硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成製)を添加後、メチルエチルケトンを配合・攪拌して固形分濃度約45質量%の樹脂ワニスを調製した。
【0096】
(調製例2)
調製例1において、(A)成分のタフテックH1051の1/2量を、数平均分子量が6万未満のスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(タフテックH1041、スチレン含有比率:30%、Mn:58,000、旭化成ケミカルズ社製)に置き換えたこと以外は調製例1と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0097】
(調製例3)
調製例2において、(A)成分のタフテックH1051の一部を、マレイン酸変性スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(タフテックM1913、スチレン含有比率:30%、Mn:55,000、旭化成ケミカルズ社製)に置き換えたこと以外は調製例2と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0098】
(調製例4)
調製例3において、(D)成分として、上記式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤(アデカ社製アデカスタブAO−20)を表1に示す配合量で配合したこと以外は調製例3と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0099】
(調製例5)
調製例1において、(C)成分の第1表面処理剤として、シリコーンオリゴマーの代わりにビニルトリメトキシシラン(KBM−1003、信越化学工業社製)を表1に示す配合量で用いたこと以外は調製例1と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0100】
(調製例6)
温度計、還流冷却器及び減圧濃縮装置及び撹拌装置を備えた1リットル容のセパラブルフラスコにトルエン、(B)成分として、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(BADCY、ロンザ製)及びp−(α−クミル)フェノール(東京化成工業製)を投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸マンガン(和光純薬工業製)を配合し、約3時間加熱反応させてフェノール変性シアネートプレポリマー溶液を得た。次いで反応液を冷却し、内温が80℃になったら、(A)成分としてタフテックH1051、トルエン及びメチルエチルケトンを攪拌しながら配合して溶解を確認後にフラスコを室温まで冷却した。その後、成分(C)として調製例1と同様の球状シリカスラリーを配合し、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)を配合して固形分濃度約45質量%の樹脂ワニスを調製した。
【0101】
(調製例7)
調製例6において、(A)成分のタフテックH1051の一部を、数平均分子量が6万未満のスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(タフテックH1043、スチレン含有比率:67%、Mn:47,000、旭化成ケミカルズ社製)及びマレイン酸変性スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物(タフテックM1913、スチレン含有比率:30%、Mn:55,000、旭化成ケミカルズ社製)に置き換えて表1に示す配合量で配合したこと以外は調製例6と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0102】
(調製例8)
調製例6において、(D)成分として、上記式(2)で表されるフェノール系酸化防止剤(アデカ社製アデカスタブAO−80)を表1に示す配合量で配合したこと以外は調製例6と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0103】
(調製例9)
調製例7において、(D)成分として、上記式(3)で表されるフェノール系酸化防止剤(アデカ社製アデカスタブAO−330)を表1に示す配合量で配合したこと以外は調製例7と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0104】
(調製例10)
温度計、還流冷却器及び減圧濃縮装置及び撹拌装置を備えた1リットル容のセパラブルフラスコに、トルエン、及び(A)成分としてタフテックH1051を投入し、フラスコ内の温度を80℃に設定して撹拌溶解した。次いで、(B)成分としてビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(BMI−5100、大和化成製)を配合して溶解確認後、フラスコを室温まで冷却した。その後、成分(C)として調製例1と同様の球状シリカスラリーを配合し、硬化促進剤として1,1’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製)を添加後、メチルエチルケトンを配合・攪拌して固形分濃度約45質量%の樹脂ワニスを調製した。
【0105】
(調製例11)
調製例10において、(A)成分のタフテックH1051の一部を、タフテックH1041及びタフテックM1913で置き換えて表1に示す配合量で配合したこと以外は調製例10と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0106】
(調製例12)
調製例11において、(D)成分として、AO−20を表1に示す配合量で配合し、さらに成分(C)として調製例5と同様の球状シリカスラリーに置き換えたこと以外は調製例11と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0107】
(調製例13)
調製例6において、(A)成分のタフテックH1051の一部を、タフテックH1043に置き換え、希釈溶媒をトルエンのみにして、用いた材料を表1に示す配合量で配合したこと以外は調製例6と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0108】
(調製例14)
調製例10において、(A)成分のタフテックH1051の一部を、タフテックH1031及びM1913に置き換えて、用いた材料を表1に示す配合量で配合したこと以外は調製例10と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0109】
(調製例15)
(フェノール変性シアネートプレポリマーの調製)
温度計、還流冷却器及び減圧濃縮装置及び撹拌装置を備えた1リットル容のセパラブルフラスコにトルエン、(B)成分としてBADCY、及びp−(α−クミル)フェノールを投入し、溶解確認後に液温を110℃に保った後で反応促進剤としてナフテン酸マンガンを配合し、約3時間加熱反応させた後、反応液を冷却しフェノール変性シアネートプレポリマー溶液を得た。
【0110】
(樹脂ワニスの調製)
1リットルのポリビンに、成分(C)として調製例1と同様の球状シリカスラリーを投入し、次いで、(A)成分として予めトルエンに溶解させたタフテックH1051を配合した。次に、この溶液に上記で調製したフェノール変性シアネートプレポリマー溶液を配合・攪拌後、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛、メチルエチルケトンを配合して固形分濃度約45質量%の樹脂ワニスを調製した。
【0111】
(調製例16)
調製例10において、H1051の配合量及びBMI−5100及びパーブチルPの合計量との比率を表1に示すように変更したこと以外は調製例10と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0112】
(調製例17)
調製例10において、(C)成分の第2表面処理剤として、KBM−573の代わりに3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903、信越化学工業社製)を用いたこと以外は調製例10と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0113】
(調製例18)
調製例17において、(C)成分の第1表面処理剤として、シリコーンオリゴマーの代わりにビニルトリメトキシシラン(KBM−1003、信越化学工業社製)を用いて表1に示す配合量で配合したこと以外は調製例17と同様にして樹脂ワニスを調製した。
【0114】
(調製例19)
調製例10において、H1051の配合量及びBMI−5100及びパーブチルPの合計量との比率を表1に示すように変更したこと以外は調製例10と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0115】
(比較調製例1)
温度計、還流冷却器及び撹拌装置を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、トルエン、及びポリフェニレンエーテル樹脂(S202A、旭化成ケミカルズ社製、Mn:16000)を投入し、フラスコ内の温度を90℃に設定して撹拌溶解した。次いで、トリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成社製)を配合し、溶解又は均一分散したことを確認後、室温まで冷却した。次いで、撹拌しながら室温まで冷却後、ビニルトリメトキシシラン(KBM−1003、信越化学工業社製)を処理量1質量%で予め表面処理した球状シリカのスラリー(分散媒:メチルイソブチルケトン、固形分:70質量%、ナノマイザー分散機による強制分散処理実施)と、硬化促進剤として1,1’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製)を添加した後、メチルエチルケトンを配合して樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0116】
(比較調製例2)
調製例1において、タフテックH1051の代わりにS202Aを用い、比較調製例1と同様の球状シリカスラリーを用いて表2に示す配合量で配合したこと以外は、調製例1と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0117】
(比較調製例3)
調製例6において、H1051の代わりにM1913を用い、比較調製例1と同様の球状シリカスラリーを用いて表2に示す配合量で配合したこと以外は、調製例6と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0118】
(比較調製例4)
比較調製例3において、フェノール変性シアネートエステルプレポリマーの代わりにBADCYを用いて表2に示す配合量で配合したこと以外は、比較調製例3と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0119】
(比較調製例5)
温度計、還流冷却器及び撹拌装置を備えた1リットルのセパラブルフラスコに、トルエン及びS202Aを投入し、フラスコ内の温度を90℃に設定して撹拌溶解した。次いで、BADCY、p−tert−オクチルフェノール(和光純薬工業株式会社製)を投入、溶解後、ナフテン酸マンガンを配合して約3時間加熱反応させた。次いで、トルエン及びメチルエチルケトンを攪拌しながら配合した後、フラスコを室温まで冷却した後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシ(KBM−403、信越化学工業社製)を処理量1質量%で予め表面処理した球状シリカのスラリー(分散媒:メチルイソブチルケトン、固形分:70質量%、ナノマイザー分散機による強制分散処理実施)を配合し、硬化促進剤としてナフテン酸亜鉛(和光純薬工業製)を配合して樹脂ワニス(固形分濃度=45質量%)を製造した。
【0120】
(比較調製例6)
比較調製例5において、エポキシ変性ポリブタジエン系エラストマ(ダイセル化学工業社製、PB―3600)を表2に示す配合量で追加配合したこと以外は、比較調製例5と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0121】
(比較調製例7)
調製例10において、H1051の配合量、BMI−5100及びパーブチルPの合計量との比率を表2に示すように変更したこと以外は調製例10と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0122】
(比較調製例8)
調製例10において、H1051の配合量、BMI−5100及びパーブチルPの合計量との比率を表2に示すように変更したこと以外は調製例10と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0123】
(比較調製例9)
調製例10において、H1051の代わりに、スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエン部分の不飽和二重結合基を水素添加していない不飽和型熱可塑性エラストマ(タフプレン125、旭化成ケミカルズ社製)に変更したこと以外は調製例10と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0124】
(比較調製例10)
調製例6において、比較調製例1と同様の球状シリカに変更して表2に示す配合量で配合したこと以外は調製例6と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0125】
(比較調製例11)
比較調製例10において、KBM-1003の代わりに、3−グリシドキシプロピルトリメトキシ(KBM−403)に変更したこと以外は比較調製例10と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0126】
(比較調製例12)
比較調製例10において、KBM-1003の代わりに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシ(KBM−503)に変更したこと以外は比較調製例10と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0127】
(比較調製例13)
調製例6において、予め、それぞれ処理量1質量%のシリコーンオリゴマー及びKBM-573で同時に表面処理した球状シリカのスラリー(分散媒:メチルイソブチルケトン、固形分:70質量%、ナノマイザー分散機による強制分散処理実施)に変更して表2に示す配合量で配合したこと以外は調製例6と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0128】
(比較調製例14)
調製例6において、シリコーンオリゴマーによる表面処理とKBM-573による表面処理との順序を入れ替えた工程で調製した球状シリカに変更して表2に示す配合量で配合したこと以外は調製例6と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0129】
(比較調製例15)
調製例6において、シリコーンオリゴマーをKBM−403に変更して表2に示す配合量で配合したこと以外は調製例6と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0130】
(比較調製例16)
調製例6において、KBM−573をKBM−403に変更して表2に示す配合量で配合したこと以外は調製例6と同様にして樹脂ワニス(固形分濃度約45質量%)を調製した。
【0131】
調製例1〜19及び比較調製例1〜16の樹脂ワニスの調製に用いた各原材料の使用量を表1及び2に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
[半硬化(Bステージ)状態の樹脂層を備える樹脂フィルムの作製]
調製例1〜19及び比較調製例1〜16で得られた樹脂ワニスを、コンマコータを用いて、支持基材として厚さ38μmのPETフィルム(G2−38、帝人製)上に塗工し(乾燥温度:130℃)、膜厚50μmのPETフィルム付き樹脂フィルムを作製した。なお、調製例1〜19の樹脂ワニスを用いて作製した半硬化樹脂フィルムが実施例1〜19、比較調製例1〜16の樹脂ワニスを用いて作製した半硬化樹脂フィルムが比較例1〜16にそれぞれ相当する。
【0135】
[樹脂フィルムの評価]
実施例1〜19及び比較例1〜16の半硬化樹脂フィルムの外観及び取り扱い性を評価した。評価結果を表3に示す。外観は目視により評価し、樹脂フィルムの表面に多少なりともムラ、スジ等があり、表面平滑性に欠けるものを×、ムラ、スジ等がなく、均一なものを○とした。また取り扱い性は、25℃において表面に多少なりともべたつき(タック)があるもの又はカッターナイフで切断しても樹脂割れ又は粉落ちがあるものを×、それ以外を○とした。
【0136】
回路パターンが形成されたガラス布基材エポキシ樹脂銅張積層板を内層回路基板とし、その両面に、PETフィルムを剥離した上記の樹脂フィルムを1枚乗せ、その上に厚さ12μmの電解銅箔(YGP−12、日本電解製)を配置し、その上に鏡板を乗せ、200℃/3.0MPa/70分のプレス条件で加熱加圧成形して、4層配線板を作製した。この4層配線板の最外層の銅箔をエッチングし、回路埋め込み性(多層化成形性)を評価した。評価結果を表3に示す。多層化成形性は目視により評価し、ボイド、カスレが多少なりともあるものを×、回路に均一に樹脂が充填されており均一なものを○とした。
【0137】
[両面金属張硬化樹脂フィルムの作製]
上述の樹脂フィルムのPETフィルムを剥離し、これを2枚重ね、その両面に、厚さ18μのロープロファイル銅箔(F3−WS、M面Rz:3μm、古河電気工業社製)をその粗化(M)面が接するように配置し、その上に鏡板を乗せ、200℃/3.0MPa/70分のプレス条件で加熱加圧成形して、両面金属張硬化樹脂フィルム(厚さ:0.1mm)を作製した。
【0138】
[両面金属張硬化樹脂フィルムの特性評価]
上述の実施例1〜19及び比較例1〜16の両面金属張硬化樹脂フィルムについて、取り扱い性、誘電特性、銅箔引きはがし強さ、はんだ耐熱性、吸水率及び絶縁信頼性を評価した。その評価結果を表3に示す。両面金属張硬化樹脂フィルムの特性評価方法は以下のとおりである。
【0139】
[取り扱い性の評価]
取り扱い性は、両面金属張硬化樹脂フィルムの外層銅箔をエッチングしたものを180度折り曲げることにより評価した。折り曲げた際、割れ又はクラックが多少なりとも発生したものを×、折り曲げを止めた際、変化がなかったものを○とした。
【0140】
[誘電特性(比誘電率、誘電正接)の測定]
誘電特性は、硬化樹脂フィルムの外層銅箔をエッチングしたものを空洞共振器摂動法により測定した。条件は、周波数:1GHz、測定温度:25℃とした。また、105℃の恒温槽で1000時間放置後、及び85℃/85%RHの恒温恒湿槽で500時間放置後のサンプルについても同様に測定した。結果を表3に示す。なお、表中の加熱処理後は常態からの変動量を示した。
【0141】
[銅箔引きはがし強さの測定]
両面金属張硬化樹脂フィルムの銅箔引きはがし強さは、銅張積層板試験規格JIS−C−6481に準拠して測定した。
【0142】
[はんだ耐熱性の評価]
はんだ耐熱性は、50mm角に切断した上述の両面金属張硬化樹脂フィルムの片側の銅箔をエッチングし、その常態及びプレッシャークッカーテスト(PCT)装置(条件:121℃、2.2気圧)において、所定時間(1、3、5及び8時間)処理した後のものを、288℃の溶融はんだ上に20秒間フロートし、処理時間が異なる3枚の硬化樹脂フィルムのそれぞれの外観を目視で調べた。なお、表中の数字は、はんだフロート後の硬化樹脂フィルム3枚のうち、フィルム内部及びフィルムと銅箔間に膨れ又はミーズリングの発生が認められなかったものの枚数を意味する。
【0143】
[吸水率の測定]
吸水率は、50mm角に切断した上述の両面金属張硬化樹脂フィルムの両面の銅箔をエッチングし、その常態及びプレッシャークッカーテスト(PCT)装置(条件:121℃、2.2気圧)中に所定時間(5時間)処理した後のものの質量差から算出した。
【0144】
[絶縁信頼性の評価]
絶縁信頼性は、両面金属張硬化樹脂フィルムの片面の銅箔をエッチングすることにより、L/S=100/100(μm)のくし型パターンを形成して、85℃/85%RHの恒温高湿下で100V印加/1000時間処理前後のライン間の絶縁抵抗を測定した。表中の数字は評価したn数=5のうち、抵抗値が1×10
13Ω以上を確保したものの数を意味する。
【0145】
【表3】
【0146】
表3に示した結果から明らかなように、本発明の半硬化樹脂フィルム(実施例1〜19)によれば、比較例1〜16の樹脂フィルムと比較して、外観性(表面均一性)、取り扱い性(タック性、割れ、粉落ち等)に問題がなく、多層化成形性も良好であることが確認された。
【0147】
また、本発明の半硬化樹脂フィルムを用いて作製した硬化樹脂フィルムは、いずれも比誘電率2.91以下、誘電正接0.006以下と優れていた。加えて、はんだ耐熱性、銅箔引きはがし強さ、及び吸水率に関しても実用特性を満足している。さらに、(D)成分を配合した系は絶縁信頼性が特に優れ、配合していない同様配合系と比較して、誘電特性の加熱ドリフト性が良好となった。
【0148】
一方、比較例1〜16では、外観性又は取り扱い性に問題があったり、実施例と比較して誘電特性、はんだ耐熱性、銅箔引きはがし強さ、吸水率、誘電特性の吸湿ドリフト性等が比較的劣る結果が示された。