【文献】
L.N.Ho,"Electrical Properties of Pre-Alloyed Cu-P Containing Electrically ConductiveAdhesive",The Journal of Adhesion,Vol.86, No.8, 2010,pp.807-815
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、はんだを太陽電池用タブ線の接続に使用する場合、微細なパターンを個別に接続する必要があり、また約220℃以上の熱が加わるため、接続工程の歩留りの低下及び接続構成部品の省スペース化の限界が生じている。
【0006】
また、上述の導電材料を用いた場合には、ある程度これらの問題を解消することができる。異方導電性材料又は導電材料としては、従来、接続後の接続抵抗の低減及び安定性のため、金又はニッケルを主成分とする導電粒子が使用されている。これにより、デバイスの小型化と使用中の腐食不良を防止できる。
【0007】
しかし、金の場合、製造コストが増加するという問題がある。また、ニッケルの場合、環境への負荷が増すという問題がある。また、これら以外の金属を主成分とする導電粒子を用いた場合には、ニッケル等を用いた場合と同等の安定した接続抵抗を得ることは困難であった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、安定な接続抵抗で、かつ、低温で接続することができ、かつ製造コストの増加を抑制することができる導電材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、樹脂バインダーと、該樹脂バインダーに分散された導電粒子とを含有し、該導電粒子は、リン含有率が0.01質量%以上8質量%以下であるリン含有銅合金を含む、太陽電池セルの電極と配線部材とを接続するために用いられる導電材料を提供する。
【0010】
かかる導電材料によれば、安定な接続抵抗で、低温で精度良く接続することができ、かつ製造コストの増加を抑制することができる。
【0011】
上記導電粒子の平均粒子径は0.4μm〜30μmであることが好ましい。なお、本明細書中において「平均粒子径」とは、積算した重量が50%となるときの粒子径(以下、「D50」ともいう。)をいう。なお、導電粒子の粒子径は、導電粒子の形状が球形以外である場合には、導電粒子に外接する最小の球の直径を導電粒子の粒子径とする。
【0012】
上記導電粒子は水アトマイズ法を用いて製造された導電粒子であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、樹脂バインダーと、該樹脂バインダーに分散された導電粒子とを含有し、該導電粒子は、リン含有率が0.01質量%以上8質量%以下であるリン含有銅合金を含む組成物の、太陽電池セルの電極と配線部材とを接続するための導電材料としての応用、又は当該組成物の、太陽電池セルの電極と配線部材とを接続するための導電材料を製造するための応用に関してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安定な接続抵抗で、低温で精度良く接続することができ、かつ製造コストの増加を抑制することができる導電材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
本発明の導電材料は、樹脂バインダーと該樹脂バインダーに分散された導電粒子とを含む。
【0018】
上記導電粒子は、銅及びリンを含有するリン含有銅合金を含む。このリン含有銅合金におけるリン含有率は、0.01質量%以上8質量%以下である。上記リン含有率が8質量%以下であることで、より低い抵抗率を達成可能であり、また、リン含有銅合金の生産性に優れる。また、上記リン含有率が0.01質量%以上であることで、より優れた耐酸化性を達成できる。上記リン含有率は、耐酸化性と低抵抗率の観点から、0.5質量%以上7.8質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上7.5質量%以下であることがより好ましい。また、リン含有率は、示差熱−熱重量同時測定において最大面積を示す発熱ピークのピーク温度が280℃以上となるような含有率であるとより好ましい。
【0019】
上記リン含有銅合金は、銅とリンを含む合金であるが、他の原子をさらに含んでいてもよい。他の原子としては、例えば、Sb、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Sn、Al、Zr、W、Mo、Ti、Co、Ni、Au等を挙げることができる。これらの中では、耐酸化性、融点等の特性調整の観点から、Alが好ましい。
またリン含有銅合金が他の原子を含む場合のその含有率は、例えば、3質量%以下とすることができ、耐酸化性と低抵抗率の観点から、1質量%以下であることが好ましい。
【0020】
上記導電粒子の粒子径としては、平均粒子径(D50)が0.4μm〜30μmであることが好ましく、1μm〜10μmであることがより好ましい。0.4μm以上とすることでより効果的に耐酸化性が向上する。また30μm以下であることで長期の接続安定性が、より効果的に得られる。
また導電粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等のいずれであってもよい。導電粒子の形状は、耐酸化性と低抵抗率の観点から、略球状、扁平状又は板状であることが好ましい。
【0021】
リン含有銅合金は、通常用いられる方法で製造することができる。また、導電粒子は、所望のリン含有率となるように調製したリン含有銅合金を用いて、金属粉末を調製する通常の方法を用いて調製することができ、例えば、水アトマイズ法を用いて定法により製造することができる。なお、水アトマイズ法の詳細は金属便覧(丸善(株)出版事業部)等に記載されている。
【0022】
具体的には例えば、リン含有銅合金を溶解し、これをノズル噴霧によって粉末化した後、得られた粉末を乾燥、分級することで、所望の導電粒子を製造することができる。また、分級条件を適宜選択することで所望の粒子径を有する導電粒子を製造することができる。
【0023】
また、上記導電粒子は、上述のリン含有合金から製造される導電粒子の外側に、銀、銀、パラジウム、金等の金属又は金属合金を被覆したものであってもよい。被覆する金属は、コストの観点から、銀を主成分とする金属が好ましい。被覆の方法としては、めっき、蒸着等、従来の手法を適用することができる。被覆の厚みは、特に限定されるものはではないが、例えば、コストの観点から、1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下とすることができる。
【0024】
また上記導電粒子は1種単独でも、2種以上でも、あるいは、リン含有銅合金以外の導電粒子を含む2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記導電材料に含まれる上記導電粒子の含有率は、例えば、0.1〜20体積%とすることができ、1〜20体積%であることが好ましく、1〜15体積%であることがより好ましい。上記含有率が0.1体積%未満であると、上記範囲内にある場合と比較して、導電材料としての接続抵抗の初期値が増す。また、上記含有率が20体積%を超えると、上記範囲内にある場合と比較して導電材料としての長期の接続安定性が低下する。
さらに、上記含有率が1〜15体積%である場合には、太陽電池セルのバスバーが細い場合又はない場合(バスバーレス)、あるいはバスバーがなく、かつフィンガー電極が細い場合であっても、長期の接続安定性をより十分に発揮することが可能となる。
【0026】
上記樹脂バインダーとしては、接着性を示すものであれば特に限定されないが、接続性を一層高める観点から、熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物であることが好ましい。
【0027】
熱硬化性樹脂としては、公知のものを用いることができ、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、接続信頼性をさらに向上させる観点から、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂が好ましい。
【0028】
また、接着剤成分としての樹脂組成物は、上記の熱硬化性樹脂以外に任意成分として、公知の硬化剤及び硬化促進剤を含有してもよい。
【0029】
また、この樹脂組成物は、被接着体に対する接着性及び濡れ性を改善するために、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等の改質材料を含有してもよく、導電粒子の均一分散性を向上させるために、リン酸カルシウム、及び炭酸カルシウム等の分散剤を含有してもよい。
さらにこの樹脂組成物は、弾性率やタック性を制御するために、アクリルゴム、シリコンゴム、ウレタン等のゴム成分を含有してもよく、被接着体に含まれる金属、及び導電粒子に含まれる金属(特には銀及び銅)のマイグレーションを抑制するために、キレート材料等を含有してもよい。
【0030】
導電材料には、上述の樹脂バインダー及び導電粒子とともに、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、増量剤、軟化剤(可塑剤)、粘接着性向上剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、有機溶媒等の各種添加剤の1種又は2種以上が併用されてもよい。
【0031】
導電材料は、その形状については特に限定されない。その具体例としては、(異方)導電ペースト、(異方)導電インク、(異方)導電粘接着剤、(異方)導電フィルム、(異方)導電シートが挙げられる。
【0032】
図1〜3は、本発明の導電材料により接続可能な太陽電池セルの受光面を示す模式的平面図である。
【0033】
図1に示すように、太陽電池セル100は、複数が電気的に直列又は並列に接続されて1つの太陽電池モジュールを形成するものであり、基板2を有している。この基板2は略正方形状を呈しており、その四隅は円弧状となっている。基板2の一方面は受光面21となっている。基板2は、例えば、シリコン単結晶セル、多結晶セル、アモルファスシリコンセル、及びヘテロジャンクションセルのうち少なくとも一つからなるものである。基板2は、受光面21側がn型半導体であってもよく、p型半導体であってもよい。基板2は、例えば、対向する2辺の距離が125mmとなっている。
【0034】
受光面21の表面には、複数本(例えば48本)の直線状のフィンガー電極3が、互いに平行に離間して配置されている。さらに、フィンガー電極3と直交するようにバスバー6Aが配置されている。フィンガー電極3及びバスバー6Aは銀等の金属ペースト、電解析出導電膜、導電薄膜などにより形成される。
【0035】
このような太陽電池セル100を、上述の導電材料を用いて接続する場合には、接着領域SFに導電材料を配置し、さらにその上に配線部材を配置する。さらに、必要に応じて、加熱加圧を行ってもよい。加熱加圧の条件としては、例えば、140〜220℃、1〜30分間、0.1〜0.3MPaの条件が挙げられる。
【0036】
なお、導電材料が液状である場合には、導電材料をディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法等によって塗布して配置してもよい。
【0037】
配線部材(タブ線)としては、特に限定されない。具体的には、厚み0.1mm〜0.4mmで、幅が0.5mm〜10.0mmの銅を主とするリボンの表面を、有鉛はんだ、無鉛はんだ、銀、錫等で被覆してあるタブ線などを用いることができる。また、表面の形状を光拡散面とし、タブ線に照射される太陽光線を拡散反射させ、太陽電池モジュールのガラスと大気の界面で、再帰反射させるタイプのタブ線を用いることもできる。
【0038】
なお、
図2の太陽電池セルは、バスバーを細くしたもの(バスバー6B)であり、
図3の太陽電池セルは、バスバーをなくしたものである。いずれの場合にも、接着領域SFに導電材料を配置することにより、太陽電池セルの電極と配線部材との接続をすることが可能である。
【0039】
上述の方法により、複数の太陽電池セルを接続すると、
図4の模式的斜視図に示すように、複数の太陽電池セルが接続された接続体を得ることができる。
図4の接続体においては、太陽電池セル100A〜Dが配線部材4を介して接続されており、太陽電池セルの電極と配線部材4とは上述の導電材料により接続されている。
【実施例】
【0040】
以下実施例でさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0041】
<導電粒子1>
リン含有銅合金を調製し、これを溶解して水アトマイズ法により粉末化した後、乾燥、分級した。分級した粉末をブレンドして、脱酸素・脱水分処理し、1質量%のリンを含むリン含有銅合金粒子(導電粒子1)を作製した。なお、リン含有銅合金粒子の平均粒子径(D50)は1.5μmであった。
【0042】
<導電粒子2>
リン含有銅合金を調製し、これを溶解して水アトマイズ法により粉末化した後、乾燥、分級した。分級した粉末をブレンドして、脱酸素・脱水分処理し、6.57質量%のリンを含むリン含有銅合金粒子(導電粒子2)を作製した。なお、リン含有銅合金粒子の平均粒子径(D50)は4.4μmであった。
【0043】
<導電粒子3>
リン含有銅合金を調製し、これを溶解して水アトマイズ法により粉末化した後、乾燥、分級した。分級した粉末をブレンドして、脱酸素・脱水分処理し、7.95質量%のリンを含むリン含有銅合金粒子(導電粒子3)を作製した。なお、リン含有銅合金粒子の平均粒子径(D50)は4.8μmであった。
【0044】
<導電粒子4>
導電粒子1に銀を0.1μmの厚さでめっきした、銀被覆リン含有銅合金粒子(導電粒子4)を作製した。
【0045】
<導電粒子5>
市販されている平均粒子径(D50)5μmのニッケル粒子(導電粒子5)を準備した。
【0046】
<導電粒子6>
市販されている粒子径6μmの銀コート銅粒子(導電粒子6)を準備した。銅にはリンが0.01質量%未満しか含有されていないものである。
【0047】
実施例1
(1)導電材料層の作製:
フェノキシ樹脂(高分子量エポキシ樹脂)とマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(エポキシ当量185)の質量比を30/70とし、これらを酢酸エチルに溶解させて、酢酸エチルの30質量%溶液を得た。
この溶液に、上記導電粒子1を8質量%(液状導電材料全量基準)添加し、混合分散し、液状導電材料を得た。この液状導電材料をセパレータ(シリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み50μm)にバーコータで塗布し、80℃で10分間乾燥し、厚み25μmの導電材料層が形成された積層体を得た。
その後、この積層体を1.5mm幅に裁断して、帯状のセパレータ上に導電材料層(厚み25μm)が設けられた導電材料を得た。
【0048】
(2)接続:
太陽電池セル(シリコン基板、125mm角、厚み0.2mm、表面及び裏面バスバー各2本)の全バスバーと、タブ線(はんだめっき銅線、幅1.5mm、厚み0.2mm)を、セパレータを剥がした上記導電材料を介し挟み電気的に接続した。接続方法は、各材料を配置し、その後、圧着ツール(日化設備エンジニアリング社製、商品名「AC−S300」)を用いて、加熱温度180℃、加圧圧力2MPa、加熱・加圧時間10秒間の条件で、加熱及び加圧を施した。太陽電池セルの全てのバスバーに対し、導電材料で接続をして、タブ線付き太陽電池セルを得た。
【0049】
(3)評価:
得られたタブ線付き太陽電池セルのIV曲線を、ソーラーシミュレータ(株式会社ワコム電創製、商品名:WXS−155S−10、AM:1.5G)を用いて測定し、曲線因子(フィルファクタ、以下F.Fと略す)を導出した。さらにこのときに併せて変換効率(η)も導出した。さらに、長期の接続安定性を、85℃、85RH%の恒温恒室環境への暴露1000時間の試験前後で、変換効率(η)の変動が5%以内に収まる場合を「良」、5%を超える場合を「不良」として判定した。その結果を表1に示す。
【0050】
実施例2
上記導電粒子1に代えて、上記導電粒子2を4質量%(液状導電材料全量基準)添加した以外は、実施例1と同様にして、導電材料を得た。その後、実施例1と同様にして、接続、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0051】
実施例3
上記導電粒子1に代えて、上記導電粒子2を15質量%(液状導電材料全量基準)添加した以外は、実施例1と同様にして、導電材料を得た。その後、実施例1と同様にして、接続、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0052】
実施例4
上記導電粒子1に代えて、上記導電粒子3を1質量%(液状導電材料全量基準)添加した以外は、実施例1と同様にして、導電材料を得た。その後、実施例1と同様にして、接続、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0053】
実施例5
上記導電粒子1に代えて、上記導電粒子2を9質量%(液状導電材料全量基準)添加し、かつ導電材料層の厚みを35μmとした以外は、実施例1と同様にして、導電材料を得た。
その後、表面にバスバーがない太陽電池セルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、接続、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0054】
実施例6
上記導電粒子1に代えて、上記導電粒子4を3質量%(液状導電材料全量基準)添加した以外は、実施例1と同様にして、導電材料を得た。その後、実施例1と同様にして、接続、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0055】
比較例1
上記導電粒子1に代えて、上記導電粒子5を10質量%(液状導電材料全量基準)添加した以外は、実施例1と同様にして、導電材料を得た。その後、実施例1と同様にして、接続、評価を行った。その結果を表2に示す。
【0056】
比較例2
表面にバスバーがない太陽電池セルにはんだを用いてタブ線の接続を試みた。具体的には、フィンガー電極上にタブ線を直行配置し、300℃のはんだごてで、はんだを供給しながら、かつ、タブ線表面に被覆されるはんだを溶融しながら、接続を試みた。しかし、タブ線の浮きが部分的に生じ接続できなかった。
【0057】
比較例3
上記導電粒子1に代えて、上記導電粒子6を10質量%(液状導電材料全量基準)添加した以外は、実施例1と同様にして、導電材料を得た。その後、実施例1と同様にして、接続、評価を行った。その結果を表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
なお、上記実施形態では、導電材料としてフィルム状の導電材料が用いられているが、液状導電材料が太陽電池セルに直接塗布されてもよい。