(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
光源と、この光源からの光で励起されて、光源の色相とは異なる色相の光を放出可能な波長変換部材とを組み合わせることで、光の混色の原理により多様な色相の光を放出可能な発光装置が開発されている。例えば、紫外光から可視光に相当する短波長側領域の一次光を発光素子より出射して、この出射光でもって蛍光体を励起する。この結果、一次光の少なくとも一部が波長変換されて、赤色、青色、緑色等の所望の光を得ることができる。また、これらの各成分光を加色混合させることで、白色光を実現できる。
【0003】
この原理を利用して、光源に発光ダイオード(Light Emitting Diode:以下「LED」という。)を用いたLEDランプが、信号灯、携帯電話、各種電飾、車載用表示器、あるいは各種の表示装置等、多くの分野に利用されている。特にLEDと蛍光体とを組み合わせて形成した白色LED発光装置は、液晶表示器のバックライト、小型ストロボ等へと盛んに応用されており、普及が進んでいる。また、最近では照明装置への利用も試みられており、長寿命、水銀フリーといった長所を活かすことで、環境負荷を低減した、蛍光灯を代替し得る光源として期待される。
【0004】
白色LEDを用いた発光装置の構成としては、青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた構成が挙げられる(例えば特許文献1参照)。この発光装置は、LEDからの青色光と、このLEDから発せられた青色光の一部を、黄色蛍光体で変換させた黄色光とを混色することにより、白色を得ることができるようにしたものである。そのため、この発光装置に用いられる蛍光体としては、LEDから発光される420nm〜470nmの波長の青色光によって効率よく励起され、黄色に発光する特性が求められている。
【0005】
一方で、LED発光装置の発光特性を向上させる研究も盛んに行われている。例えば、白色光の輝度を高めるためには、各色味の成分光の輝度をそれぞれ向上させることが重要となる。このため、LEDからの一次光を高効率にエネルギー変換できる蛍光体が好ましい。また、白色光の演色性や色純度を高めるためには、各成分光が所定の色味に発光することが重要である。このため、所定の波長域にピーク波長を有する蛍光体が望ましい。
【0006】
このような黄色蛍光体としては、セリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体が知られている。また、この黄色蛍光体のYの一部を、Lu,Tb,Gd等で置換したり、Alの一部をGa等で置換したりした蛍光体が知られている。このセリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、組成を調整することで幅広く発光波長を調整することが可能である。
【0007】
一方で、このような酸化物蛍光体と異なる窒化物蛍光体も、酸化物蛍光体と比べると製造が容易でないものの、他の無機化合物にはない特性を持つことが知られている。特にSi
3N
4、AlN、BN、GaN等は、基板材料や半導体、発光ダイオード等様々な用途に使用されており、工業的に生産されている。また近年は、三元系以上の元素から構成される窒化物が広く研究されており、青色LEDや近紫外LEDにより励起されて、青色から赤色に発光する化合物が存在することが報告されている。
【0008】
ところで、各化合物、蛍光体により発光スペクトルが異なることから、これらの蛍光体を用いて白色LEDの特性を更に高めることが進められている。例えば、特許文献1に記載される白色LEDに、窒化物系蛍光体である(Sr,Ca)AlSiN
3:Eu蛍光体を加えて、演色性や色再現範囲の向上を図ることができる(特許文献2)。
【0009】
さらに、黄色成分であるセリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を別の蛍光体に置き換えることによって、演色性や色再現範囲を向上させることができる。このような蛍光体として、La
3Si
6N
11:Ceが報告されている(特許文献3、4)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための蛍光体及びその製造方法並びにこの蛍光体を用いた発光装置を例示するものであって、本発明は蛍光体及びその製造方法並びにこの蛍光体を用いた発光装置を以下のものに
限定しない。
【0018】
実施の形態に係る蛍光体によれば、一般式がM
xCe
ySi
6-zB
zN
8+wで表され、Mは、La,Y,Tb,Luの群から選ばれる少なくとも1種類以上の元素であり、前記w、x、y、zをそれぞれ、2.0<w<4.0、2.0<x<3.5、0<y<1.0、0<z<2.0とできる。
【0019】
また他の実施の形態に係る蛍光体によれば、前記x、y、zをそれぞれ、2.0<x<3.0、0<y<0.5、0<z<1.2とできる。
【0020】
さらに他の実施の形態に係る蛍光体によれば、前記蛍光体に、さらに10〜10000ppmのフッ素を含めることができる。
【0021】
さらにまた他の実施の形態に係る蛍光体によれば、前記蛍光体に、さらに100〜10000ppmの酸素を含めることができる。
【0022】
さらにまた他の実施の形態に係る蛍光体によれば、前記蛍光体の50重量%以上が結晶相を有することができる。
【0023】
さらにまた他の実施の形態に係る蛍光体によれば、粒径を2μm〜30μmとできる。
さらにまた他の実施の形態に係る蛍光体によれば、一般式がLa
3Si
6N
11:Ceで表される蛍光体であって、少なくともホウ素を含むことができる。
【0024】
さらにまた他の実施の形態に係る発光装置によれば、さらに前記励起光源からの光の少なくとも一部を吸収し、前記第一蛍光体と異なるピーク波長を有する蛍光を発する1種類以上の第二蛍光体を備えることができる。
【0025】
さらにまた他の実施の形態に係る蛍光体の製造方法によれば、焼成後の生成物を酸性溶液中で処理することにより、生成物に含まれる不純物相の含有量を低減させることができる。
【0026】
さらにまた他の実施の形態に係る蛍光体の製造方法によれば、前記酸性溶液に、塩酸を含めることができる。
【0027】
さらにまた他の実施の形態に係る蛍光体の製造方法によれば、前記原料中にフッ化物を含有させることができる。
【0028】
色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。具体的には、380nm〜455nmが青紫色、455nm〜485nmが青色、485nm〜495nmが青緑色、495nm〜548nmが緑色、548nm〜573nmが黄緑色、573nm〜584nmが黄色、584nm〜610nmが黄赤色、610nm〜780nmが赤色である。
【0029】
実施の形態1に係る蛍光体は、珪素、窒素を含み、紫外線乃至青色光を吸収して発光可能な蛍光体であって、M
xCe
ySi
6-zB
zN
8+wで表され、Mは、La,Y,Tb,Luの群から選ばれる少なくとも1種類以上の元素であり、w、x、yおよびzは、それぞれ、2.0<w<4.0、2.0<x<3.5、0<y<1.0、0<z<2.0を満たす。
【0030】
ここで、Laの組成xについて、好ましくは2.0<x<3.3、さらに好ましくは2.0<x<3.0とする。このようにxの範囲に下限を設けた理由は、効率よく目的の組成の蛍光体を得るためである。例えば、目的とする組成の蛍光体La
3Si
6N
11を得たいのに、それとは別の不純物LaSi
3N
5が得られることがある。この場合、分級工程その他の方法により、目的とする組成の蛍光体と、それ以外の組成の蛍光体を分離する工程が別に必要となる。その一方、本発明では、上記xの範囲とすることにより、そのような製造の手間暇をかけることなく、蛍光体の組成を調整するだけで、容易に目的とする組成の蛍光体が得られる確率を高くすることができる。また、xの範囲に上限を設けた理由は、その値以上のLaを加えても、目的とする蛍光体の生成には殆ど関係しないので、折角加えたLaが無駄となってしまうためである。
【0031】
また、Ceの組成yについて、好ましくは0<y<0.8、より好ましくは0<y<0.5とする。このようにyの範囲を規定した理由は、目的とする波長の発光を得るためにある程度のCeの量は必要であるが、その一方、Ceの量を多くし過ぎると、付活剤であるCe元素がお互いに干渉し合うことによって、蛍光体の輝度が低下する虞があるためである。
【0032】
また、Bの組成zについて、好ましくは0<z<1.5、より好ましくは0<z<1.2とする。このようにzの範囲を規定した理由は、輝度を向上させるためにある程度のBの量は必要であるが、その一方、あまりBの量を多くしすぎても、蛍光体の輝度がある程度向上すれば、それ以上の輝度の向上が見込めないからである。
【0033】
これによって、近紫外から青色光により効率よく励起され、緑色から黄色を主としながら幅広く成分を含む発光を有する蛍光体を実現することができる。さらに、この蛍光体を近紫外光から青色光を発する発光素子を組み合わせて用いることで、発光効率を高め、演色性や色再現範囲の優れた発光装置を構成できる。また必要に応じて、別の蛍光体を組み合わせることにより更なる発光組成の改善が可能である。
【0034】
この蛍光体は原料の一部に焼成温度にて液相を生成するフラックス化合物を添加することを特徴し、また焼成後の生成物を酸性溶液中で処理することにより、生成物に含まれる不純物相の含有量を低減させるものである。
【0035】
また蛍光体は、少なくとも一部が結晶を有することが好ましい。例えばガラス体(非晶質)は構造がルーズなため、蛍光体中の成分比率が一定せず色度ムラを生じる虞がある。したがって、これを回避するため生産工程における反応条件を厳密に一様になるよう制御する必要が生じる。一方、実施の形態1に係る蛍光体は、ガラス体でなく結晶性を有する粉体あるいは粒体とできるため、製造及び加工が容易である。また、この蛍光体は有機媒体に均一に溶解でき、発光性プラスチックやポリマー薄膜材料の調整が容易に達成できる。具体的に、実施の形態1に係る蛍光体は、少なくとも50重量%以上、より好ましくは80重量%以上が結晶を有している。これは、発光性を有する結晶相の割合を示し、50重量%以上、結晶相を有しておれば、実用に耐え得る発光が得られるため好ましい。ゆえに結晶相が多いほど良い。これにより、発光輝度を高くすることができ、かつ加工性が高まる。
(粒径)
【0036】
発光装置に搭載することを考慮すれば、蛍光体の粒径は1μm〜50μmの範囲が好ましく、より好ましくは2μm〜30μmとする。また、この平均粒径値を有する蛍光体が、頻度高く含有されていることが好ましい。さらに、粒度分布においても狭い範囲に分布しているものが好ましい。粒径、及び粒度分布のバラツキが小さく、光学的に優れた特徴を有する粒径の大きな蛍光体を用いることにより、より色ムラが抑制され、良好な色調を有する発光装置が得られる。したがって、上記の範囲の粒径を有する蛍光体であれば、光の吸収率及び変換効率が高い。一方、2μmより小さい粒径を有する蛍光体は、凝集体を形成しやすい傾向にある。
(製造方法)
【0037】
以下に、実施の形態に係る蛍光体の製造方法について説明する。実施の形態1の蛍光体は、その組成に含有される元素の単体や酸化物、炭酸塩あるいは窒化物等を原料とし、各原料を所定の組成比になるように秤量する。これらの原料にさらにフラックス等の添加材料を適宜加えることもできる。
【0038】
具体的な蛍光体原料に関して、蛍光体組成のSiは窒化物化合物、酸化物化合物を使用することが好ましいが、イミド化合物、アミド化合物等を使用することができる。例えばSi
3N
4、SiO
2、Si(NH)
2等が挙げられる。一方、Si単体のみを使用しても安価で結晶性のよい蛍光体を合成することもできる。原料の純度は2N以上のものが好ましいが、Li,Na,K,B等の異なる元素が含有されていてもよい。更にSiの一部をAl,Ga,In,Tl,Ge,Sn,Ti,Zr,Hfで置換することもできる。
【0039】
また蛍光体組成のLaも窒化物化合物、酸化物化合物等を使用することが好ましいが、その他の化合物、あるいは単体も使用することができる。例えばLaN、La
2O
3、LaSi、LaSi
2等が挙げられる。原料の純度は2N以上のものが好ましいが、他の希土類元素が含有されていてもよい。
【0040】
さらに付活剤のCeとは窒化物化合物、酸化物化合物等を使用することが好ましいが、その化合物、あるいは単体を使用することができる。ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。
【0041】
各々の原料の混合は混合機を用いて乾式又は湿式で行うことができる。混合機は工業的に通常用いられているボールミルの他、振動ミル、ロールミル、ジェットミル、乳鉢-乳棒等の粉砕機を用いて粉砕して比表面積を大きくする方法と、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機と組み合わせたりして、混合することができる。また、粉末の比表面積を一定範囲とするために、工業的に通常用いられている沈降槽、ハイドロサイクロン、遠心分離器等の湿式分離機、サイクロン、エアセパレータ等の乾式分級機を用いて分級することもできる。原料が大気中で不安定なものに関してはアルゴン雰囲気中若しくは窒素雰囲気中等のグローブボックス内で混合を行う。
【0042】
上記の混合した原料をSiC、石英、アルミナ、BN等の坩堝に詰め、N
2、H
2の還元雰囲気中にて焼成を行う。焼成雰囲気はアルゴン雰囲気、アンモニア雰囲気、一酸化炭素雰囲気、炭化水素雰囲気等も使用することができる。焼成は1000から2000℃の温度で1〜30時間行う。焼成圧力は大気圧から10気圧以下である。焼成は、管状炉、高周波炉、メタル炉、雰囲気炉、ガス加圧炉等を使用することができる。
【0043】
焼成されたものを粉砕、分散、濾過等して目的の蛍光体粉末を得る。固液分離は濾過、吸引濾過、加圧濾過、遠心分離、デカンテーション等の工業的に通常用いられる方法により行うことができる。乾燥は、真空乾燥機、熱風加熱乾燥機、コニカルドライヤー、ロータリーエバポレーター等の工業的に通常用いられる装置により行うことができる。また、目的の結晶相以外の部分を除去するために酸溶液で処理することにより、より発光効率を改善させることができる。
(発光装置)
【0044】
以下に、本実施の形態に係る蛍光体を搭載した発光装置の例を示す。発光装置には、例えば蛍光ランプ等の照明器具、ディスプレイやレーダ等の表示装置、液晶用バックライト等が挙げられる。また、励起光源としては近紫外から可視光の短波長領域の光を放つ発光素子が好ましい。特に半導体発光素子は、小型で電力効率が良く鮮やかな色の発光をする。他の励起光源として、既存の蛍光灯に使用される水銀灯等を適宜利用できる。
【0045】
発光素子を搭載した発光装置として、いわゆる砲弾型や表面実装型など種々のタイプがある。本実施の形態では、
図1を参照しながら、表面実装型の発光装置について例示して説明する。
【0046】
図1は、本実施の形態に係る発光装置100の模式図である。本実施の形態にかかる発光装置100は、凹部を有するパッケージ110と、発光素子101と、発光素子101を被覆する封止部材103とから構成されている。発光素子101は、パッケージ110に形成された凹部の底面112に配置されており、パッケージ110に配置された正負一対のリード電極111に導電性ワイヤ104によって電気的に接続されている。封止部材103は、凹部内に充填されており、蛍光体102を含有する樹脂によって形成されている。さらに、正負一対のリード電極111は、その一端がパッケージ110の外側面に突出されて、パッケージ110の外形に沿うように屈曲されている。これらのリード電極111を介して外部から電力の供給を受けて発光装置100が発光する。以下に、本実施の形態に係る発光装置を構成する部材について説明する。
【0047】
以下に、本実施の形態に係る発光装置を構成する部材について説明する。
(発光素子)
【0048】
発光素子101は、紫外線領域から可視光領域までの光を発することができる。発光素子101から発する光のピーク波長は、240nm乃至520nmが好ましく、420nm乃至470nmがさらに好ましい。この発光素子101は、例えば、窒化物半導体素子(In
XAl
YGa
1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いることができる。窒化物半導体素子を用いることで機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
(蛍光体)
【0049】
本実施の形態に係る蛍光体102は、封止部材103中で部分的に偏在するよう配合されている。このとき封止部材は、発光素子や蛍光体を外部環境から保護するための部材としてではなく、波長変換部材としても機能する。このように発光素子101に接近して載置することにより、発光素子101からの光を効率よく波長変換することができ、発光効率の優れた発光装置とできる。なお、蛍光体を含む部材と、発光素子との配置は、それらを接近して配置させる形態に限定することなく、蛍光体への熱の影響を考慮して、発光素子と蛍光体を含む波長変換部材との間隔を空けて配置することもできる。また、蛍光体102を封止部材
103中にほぼ均一の割合で混合することによって、色ムラのない光を得るようにすることもできる。
【0050】
また、蛍光体102は2種以上の蛍光体を用いてもよい。例えば、本実施の形態に係る発光装置
100において、青色光を放出する発光素子101と、これに励起される本発明の蛍光体と、赤色光を発する蛍光体を併用することで、演色性に優れた白色光を得ることができる。赤色光を発する蛍光体としては、(Ca
1-xSr
x)AlSiN
3:Eu(0≦x≦1.0)又は(Ca
1-x-ySr
xBa
y)
2Si
5N
8:Eu(0≦x≦1.0、0≦y≦1.0)等の窒化物蛍光体、K
2(Si
1-x-yGe
xTi
y)F
6:Mn(0≦x≦1.0、0≦y≦1.0)等のハロゲン化物蛍光体を、本実施の形態に係る蛍光体と併用して用いることができる。これらの赤色光を発する蛍光体を併用することで、三原色に相当する成分光の半値幅を広くできるため、より暖色系に富んだ白色光を得られる。
【0051】
その他、さらに併用できる蛍光体の一例として、赤色光を発する蛍光体としては、(La,Y)
2O
2S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)
10(PO
4)
6Cl
2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、Lu
2CaMg
2(Si,Ge)
3O
12:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、α型サイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体を用いることができる。
【0052】
また、緑色蛍光体や青色蛍光体も組み合わせることができる。本願の蛍光体と発光ピーク波長が微妙に異なる緑色に発光する蛍光体や青色に発光する蛍光体をさらに追加することで、色再現性や演色性を更に向上させることができる。また、紫外線を吸収して青色に発光する蛍光体を追加することにより、青色に発光する発光素子に代わりに紫外線を発光する発光素子を組み合わせることで、色再現性や演色性を向上させることもできる。
【0053】
緑色光を発する蛍光体としては、例えば、(Ca,Sr,Ba)
2SiO
4:Eu、Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce等のケイ酸塩蛍光体、Ca
8MgSi
4O
16Cl
2-δ:Eu,Mn等のクロロシリケート蛍光体、(Ca,Sr,Ba)
3Si
6O
9N
4:Eu、(Ca,Sr,Ba)
3Si
6O
12N
2:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si
2O
2N
2:Eu等の酸窒化物蛍光体、Si
6-zAl
zO
zN
8-z:Euのβ型サイアロン等の酸窒化物蛍光体、(Y,Lu)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa
2S
4:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、CaSc
2O
4:Ce等の酸化物蛍光体を用いることができる。
【0054】
また、青色光を発する蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca,Ba)Al
2O
4:Eu、(Sr,Ca,Ba)
4Al
14O
25:Eu、(Ba,Sr,Ca)MgAl
10O
17:Eu、BaMgAl
14O
25:Eu,Tb,Sm等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl
10O
17:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa
2S
4:Ce、CaGa
2S
4:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca,Mg)
2SiO
4:Eu等のEu付活シリケート蛍光体(Sr,Ca,Ba,Mg)
10(PO
4)
6Cl
2:Eu等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体を用いることができる。
(封止部材)
【0055】
封止部材103は、発光装置100の凹部内に載置された発光素子101を覆うように透光性の樹脂やガラス樹脂で充填されて形成される。製造のし易さを考慮すると、封止部材の材料は、透光性樹脂が好ましい。透光性樹脂は、シリコーン樹脂組成物を使用することが好ましいが、エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等の絶縁樹脂組成物を用いることもできる。また、封止部材103には蛍光体102が含有されているが、さらに適宜、添加部材を含有させることもできる。例えば光拡散材を含むことで、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。
【0056】
以下に本発明に係る蛍光体の実施例1〜3を示す。実施例1〜3において、原料は、窒化ランタン(LaN)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、フッ化セリウム(CeF
3)、窒化硼素(BN)を共通して使用し、これらの原料を以下の各仕込み組成比になるように秤量し、蛍光体をそれぞれ得た。ただし、これらの実施例は本発明の技術思想を具体化するための蛍光体及びその製造方法を例示するものであって、本発明に係る蛍光体及びその製造方法を下記のものに特定しない。
[実施例1]
【0057】
実施例1では、仕込み組成比において、La:Si:B:Ce=3:5.85:0.15:0.15となるように各原料を秤量する。具体的には、実施例1の蛍光体原料として以下の粉末を計量した。ただし、各蛍光体原料の純度を100%と仮定している。
窒化ランタン(LaN)・・・・5.99g
窒化珪素(Si
3N
4)・・・・3.57g
窒化硼素(BN)・・・・0.05g
フッ化セリウム(CeF
3)・・・・0.39g
【0058】
秤取した原料を乾式で十分に混合し、さらに坩堝に詰め、還元雰囲気中にて1500℃、10時間焼成する。焼成されたものを粉砕及び塩酸溶液の処理を行い、蛍光体粉末を得た。
[実施例2〜3、比較例1]
【0059】
実施例1と同じ方法で、表1の配合比になるように原料を調整して合成した蛍光体について、粒径や粉体特性、強度等を測定した。表1において、Dmは平均粒径(μm)を示す指標である。なお、粒径はコールター原理、細孔電気抵抗法(電気的検知帯法)を用いた電気抵抗を利用した粒子測定法で行った。具体的には、溶液に蛍光体を分散させ、アパーチャーチューブの細孔を通過する時に生じる電気抵抗をもとにして粒径を求めた。また、以上得られた実施例1〜3及び比較例1に係る蛍光体の発光スペクトルを
図2に、励起スペクトルを
図3に、それぞれ示す。また実施例3に係る蛍光体の1000倍のSEM写真を
図4に、それぞれに示す。さらに、分析値からSi+B=6として計算した組成比を、表2に示す。なお、表2において、Bの分析値は、分析装置の検出限界以下であったため、表中「−」で示している。表1、
図2に示すように比較例1の蛍光体と比較して、実施例に係る蛍光体は相対輝度が高く、珪素の一部を硼素で置換することによって蛍光体の輝度を向上できることが確認された。また、
図3に示すように、420nm〜470nmの波長の青色光によって、効率よく励起されていることが確認できた。さらに表1、
図4に示すように2μm〜30μmの粒径値を有する蛍光体が含有されていることが確認できた。
【0061】
【表2】
[
参考例4、比較例2、3]
【0062】
次に蛍光体組成中のLaの組成比を、実施例2を基準として増減させた場合の相対輝度等の変化を確認した。この結果を
参考例4、比較例2、3として表3〜表4、
図5〜
図6に示す。ここでも実施例1等と同じ方法で、表3の配合比になるように原料を調整して合成した蛍光体について、粒径や粉体特性、強度等を測定した。表3においても表1と同様、Dmは平均粒径を示す指標である。得られた
参考例4及び比較例2〜3に係る蛍光体の発光スペクトルを
図5に、励起スペクトルを
図6に、それぞれ示す。また分析値からSi+B=6として計算した組成比を、表4に示す。表3、
図5に示すように比較例2〜3の蛍光体と比較して、
参考例4に係る蛍光体は相対輝度が高く、蛍光体の輝度を向上できることが確認された。いいかえると、Laの配合比を2以下又は3.5以上にすると、相対輝度が著しく低下するため、Laの配合比は、2より大きく、3.5未満とすることが好ましい。また
図6に示すように、蛍光体は、420nm〜470nmの波長の青色光によって、効率よく励起されていることが確認できた。
【0064】
【表4】
[
参考例5
、実施例6、参考例7、比較例4]
【0065】
さらに蛍光体組成中のCeの組成比を、実施例2を基準として増減させた場合の相対輝度等の変化を測定し、この結果を
参考例5
、実施例6、参考例7、比較例4として表5〜表6、
図7〜
図8に示す。ここでも実施例1等と同じ方法で、表5の配合比になるように原料を調整して合成した蛍光体について、粒径や粉体特性、強度等を測定した。得られた
参考例5
、実施例6、参考例7、比較例4に係る蛍光体の発光スペクトルを
図7に、励起スペクトルを
図8に、それぞれ示す。また分析値からSi+B=6として計算した組成比を、表6に示す。表5、
図7に示すように比較例4の蛍光体と比較して、
参考例5
、実施例6、参考例7に係る蛍光体は相対輝度が高く、蛍光体の輝度を向上できることが確認された。いいかえると、Ceの配合比を1以上にすると、相対輝度が著しく低下するため、Ceの配合比は1未満とすることが好ましい。また、
図8に示すように、蛍光体は、420nm〜470nmの波長の青色光によって、効率よく励起されていることが確認できた。
【0067】
【表6】
[実施例1〜3、比較例1を用いた発光装置]
【0068】
さらに、上記実施例1〜3、比較例1の蛍光体を用いて実際に発光装置を作成した結果を、表7、
図9〜
図10に示す。これらの図表に示す各実施例及び比較例は、上述した実施例1〜3、比較例1に係る蛍光体に、発光素子としてLED素子を組み合わせたものである。LED素子は、そのサイズが500μm×290μm、ピーク波長が450nmの青色光を発光する。このLED素子を用いて発光装置を構成し、蛍光体を含有するシリコーン樹脂で封止した。また
図9は、得られた発光装置の発光スペクトル、
図10は
図9の内、発光強度1〜1500の領域を拡大したグラフを、それぞれ示している。これらの図表に示すように、いずれの実施例も比較例1に比べ、光束の向上が確認できた。